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 国土交通省は3月13日、東洋ゴム工業が平成15年から23年にかけて製造した免震材料に建築基準法の基準を満たさないものがあると同社から報告があったと発表した。

 現時点で大臣認定不適合が判明したのは55棟(販売された免震材料は2,052基)。

 物件の所在は宮城県5棟、福島県1棟、茨城県2棟、埼玉県3棟、東京都5棟、神奈川県6棟、新潟県1棟、長野県1棟、静岡県4棟、岐阜県2棟、愛知県5棟、三重県4棟、京都府1棟、大阪府2棟、香川県1棟、愛媛県2棟、高知県9棟、福岡県1棟。物件の用途は共同住宅25棟、庁舎12棟、病院6棟、倉庫4棟、データセンター2棟、工場2棟、研究施設1棟、個人住宅1棟、事務所1棟、複合施設1棟。物件の規模は15階建て以上のものが10棟程度。

 同省は同日付で、免震材料の大臣認定を取り消し、同社に構造安全性の検証などを行ない、報告することを求めた。

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 詳細は分からないが、たいへんな事件だ。一部は不正であることを承知して大臣認定を取得したというから悪質だ。業界は姉歯で懲りているはずだが…。

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掘削機(本体は直径250ミリ、長さは6m)

 ポラスグループのポラスは3月12日、同社グループが担当してした地盤改良事業を分離して新会社「シバテック」を設立し、新たに開発したオリジナルの地盤改良工事を武器に他社にも販売していくと発表した。

 新たに開発した地盤改良工法は「SF-Raft工法(エス・エフ・ラフト)」で、既存の「柱状地盤改良工法」と比べ地盤に影響されず、工期が短縮できるなど10~40%のコストダウンが可能という。すでにグルーブの戸建て約200棟の施工実績があり、掘削機を増強して他社にも販売していく計画だ。特許申請中。

 発表会に臨んだシバテック取締役・上島正彦氏は「現在、掘削機は2機しかないが、9月にはもう1機できる。来期の他社販売目標は20棟。将来的には大きな会社にしたい」と抱負を語った。事業開始は2014年11月。中内晃次郎氏が社長。従業員数は13名。

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 専門的なことは省くが、技術を開発したのは同社グループのポラス暮し科学研究所生産グループG係長・菊地康明氏ともう一人の女性スタッフの二人。菊地氏は現場説明会で「2人がメインで開発した。地盤改良には選択肢が一つしかなかった。結果、過剰なコストがかかるものもあった。新しい技術はこれまで100万円かかったものが50万円で済ませるケースもある」と自信満々に語った。

 従来工法は地盤を掘削し、セメントスラムと地盤を混合・撹拌する作業に手間がかかるのに対し、新たに開発した工法は最深部まで掘削したあと、固めの特殊なセメントミルクを吐き出しながら掘削機を引き上げるもので、残土もほとんど出なかった。

 菊地氏は、毎年行われる木造耐力壁ジャパンカップのメンバーでもあり、同社RBA野球出場チームの主軸のひとり。野球は確実に走者を進める安打や進塁打を放つ打撃が持ち味。

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施工方法を説明する菊地氏

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 新会社・施工方法現地説明会と同時に行われた4つのリゾートをテーマにした「パレットコート越谷レイクタウン」(98戸)のモデルルーム見学会では地中海をモチーフにした〝オリーブ・カーサ〟2棟が公開された。

そのうちの1棟は、土地面積約150㎡、建物面積約101㎡、価格4,380万円。土間収納・下部収納、中2階のリビングスペース(7畳大)が付いているのが特徴。

「パレットコート越谷レイクタウン」は昨年11月から分譲開始。これまで42戸を供給し、26棟が契約済み。

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公開されたモデルハウス

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「住まいから社会を変える」(左)と「片づく家の収納レシピ」

大和ハウスは収納に関する書籍「片づく家の収納レシピ」

 積水ハウスと大和ハウス関連の新刊本がそれぞれ発刊された。前者は積水ハウス会長兼CEO・和田勇氏が著した「住まいから社会を変える」(出版:日本経済新聞出版社、四六判256 ページ、本体価格1600円)と、大和ハウスが監修した収納に関する書籍「片づく家の収納レシピ『収納』と『動線』でつくるここちよい家」(出版:学研マーケティング、B判変形95ページ、本体価格1000円)だ。

 「住まいから社会を変える」は、筆者がトップ営業マンから、「環境」で時代をリードする経営者へ。日経連載「私の履歴書」に独自のオピニオンを加筆したもの。

 第Ⅰ部は、2013年11月に日経新聞「私の履歴書」に掲載されたものに1話追加し、第Ⅱ部は社長就任から現在まで日経新聞に掲載されたものを再録、第Ⅲ部は住宅の未来像を綴ったもの。

 記者が注目したのは、筆者が1998年4月に社長に就任したあとのバブル処理だ。バブルは1990年にはじけるのだが、業界には楽観論が蔓延していた。地価が下がり続けるなど露ほども思わなかった。同社もそうだったようだ。

 ところが筆者は「これは危ない」と「営業的な直観」を感じ、「分厚い資料より現地だ」と「負の遺産は早めに処理して、財務体質を強くする」ことを決断。2000年1月期に多額の評価損を計上するのだが、負の遺産を一掃するのに10年。バブルの底の深さを改めて思い知らされる。営業本部長会で、「私の判断が間違っていたら、この本部長会が私の送別会になるかもしれない」と話した生々しい場面も紹介されている。

 もう一つ、第Ⅲ部の「パッション」に関する記述だ。筆者は「成長経済を知らない今の若者たちは、社会に対してどこか委縮…殻にこもったまま、内向きのまま、井の中の蛙でいると、この狭い島国に未来はありません。…結局は、人と人です。私もまだまだ、いろんな出会いの中で、『パッション』を感じてビジネスがしたい。そんな私と『パッション』を感じ合える若い日本人ビジネスマンの登場に期待しています」と締めくくっている。若いサラリーマンにお勧めの本だ。

 「片づく家の収納レシピ」は、同社オリジナルの収納システム「しまいごこちイージークローク(ダイワハウス×近藤典子)」をはじめ、生活や家事の動線に沿った収納配置など、これまでお客さまの収納に関するお悩みをもとに快適な住まいを提案してきたノウハウを「収納レシピ」として紹介している。

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「梅田町復興公営住宅」

 三菱地所レジデンスは3月11日、仙台市に16事業ある仙台市復興公営住宅公募買取事業のうち2 棟目、仙台市青葉区では1 棟目となる「梅田町復興公営住宅」(66 戸)が竣工し、仙台市に引き渡したと発表した。

 建物は鉄筋コンクリート造10階建て。専用面積は35.72~75.20㎡。同社が建設した建物を仙台市が買取ったもの。

 防災力・省エネルギー・低炭素化に配慮した建物とするだけでなく、入居者のコミュニティと周辺地域の既存コミュニティの円滑な融合を図るため、趣味の集いなどで周辺住民とともに利用ができる集会所を1 階に配置。集会所へのアプローチは住居へのアプローチと分けることで周辺住民も利用しやすい計画としている。

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 復興公営住宅についてはまったく知らない。福島県は原子力災害に関する災害公営住宅の計画戸数が一部未確定だが、決まっているものだけで被災3県全体で約53,000戸が計画されている。1件当たり数戸規模から100戸単位の大規模なものまである。地域、住民の実情にあわせなければならないだろうから、それだけきめ細かな計画が必要なのは十分理解できる。

 素人の考えでは、入居者は自力で住宅再建が困難な低所得者や高齢者が多いのだろうから、住宅プランもバリアフリーはもちろん、コミュニティ形成に配慮したものにしなければならないと思う。

 参考になるのは、先に竣工した岩手県釜石市の「釜石市上中島町復興公営住宅」210戸だろう。「民設市買取型スキーム」により新日鐵住金が所有する敷地に新日鉄興和不動産が建設し、建設後に釜石市が買い取ったものだ。

 スチールハウス工法と鉄骨造を組み合わせて工期短縮とコストを抑制したのが特徴だが、記者はプランに注目した。隣接する住戸のバルコニー間の隔て板を取り払ったコモンバルコニーを設置し、隣接する居住者間で「見守り」を兼ねたコミュ二ティの醸成を図ろうという試みが斬新だ。

 似たものでは積水ハウスが未来住宅として提案したのを見ているが、それは開放廊下側にコモンスペースを設けたものだった。バルコニー側に設置した共同住宅など過去にないはずだ。公営住宅だから踏み切れたのだろうが、よくぞ実現した。

 きちんと検証して結果を報告して欲しい。これが成功すれば分譲マンションにも応用できるかもしれない。

 業界紙の「住宅新報」が最新号でこの公営住宅について特集しているようなのでしっかり読みたい。

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「釜石市上中島町復興公営住宅」
 

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復興は進むが…(女川町のホームページから) 

 マスコミにも報じられているが、東日本大震災の被害を受けた太平洋岸の市町村人口が仙台都市圏を除き減り続けている。

 太平洋岸に面している岩手-宮城-福島と一部茨城県北の39市町村の今年2月と昨年同月の人口増減を調べた。全体では約252万人で、昨年比約28,000人、1.1%減少した。

 増加したのは仙台市とその周辺の3市のみ。仙台市は約4,000人が増加し、周辺3市合計では昨年比約5,800人、10.0%の増加。

 他の市町村では女川町が9.4%減少したほか、南三陸町が9.0%、大槌町が8.6%減少した。

 震災前と比較すると、全体では3.0%、約79,000人減少した。減少率が大きいのは女川町の32.3%を筆頭に、大槌町23.8%、山元町24.3%、南三陸町22.4%、陸前高田市20.5%が20%以上減少している。

3.11からもうすぐ3年 人口は震災前より2.0%、6万人減少(2014/2/6)

震災から4年、「希望」はあるのか 陸前高田に見る復興事業(2015/3/4)

 

 

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「セドール笹塚」(後ろの建物が敷地分割した既存建物)

 青木茂建築工房は3月10日、東京都杉並区のリファイニングマンション「セドール笹塚」の竣工見学会をおこなった。築38年の3階建て6戸の狭小マンションで、予約見学を受け付けたところ申し込みが殺到。急きょ見学枠を増やし、予定を50名超える約250名を受け入れた。

 現地は、京王新線代田橋駅から徒歩7分、杉並区方南1丁目の環7通りと水道通りが交差する商業地。建物は昭和52年建設で、3階建て延べ床面積約200㎡の6戸の賃貸マンション。

 まず経緯だが、平成23年に公布された都の条例により環7は特定緊急輸送道路に指定され、建物は耐震改修化の対象になり、設備・間取りの陳腐化、老朽化が進行したため所有者が改修を決断してリファイニングは始まった。

 物件は既存建物の増築として存在しており、建築確認図書と検査済証がなかったため復元。所有者の希望もあり既存建物と敷地分割し、杉並区と協議を重ねて適法性を確保。

 工事は耐震診断のほか設備の更新を行い、開口部の大きい窓は遮音性を高めるために二重サッシにし、床は無垢のオーク・カバのフローリングとした。外壁はガリバリウム鋼板とすることで、躯体保護と断熱性を高めている。

 一連のリファイニングによって、耐用年数は税法上では残り12年となっていたものを今回の改修時を基準に新築並みの50年に復活させた。

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青木氏(完成した建物の前で)

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 同工房は、今回のリファイニングについてA3の紙を8つ割り16面にしたリーフレットを作成している。小さな文字で写真、図面も付けて詳細に全体像を説明している。もらえるかどうかは分からないが、入手したい方は同工房に頼んでみてはどうか。

 さらに勉強したい方は、日経アーキテクチュアが主催する「資産価値を高める改修設計のテクニック」セミナーが3月16日に行われ、青木氏が講義するのでそちらに参加していただきたい(ただし有料)。

 記者が改めて驚いたのは参加者の数だ。同工房が見学申し込みを受け付けたのが2月24日だ。申し込み締め切りは3月2日だった。ところが、28日の段階で「参加希望者数が200名を超え、全ての各時間帯においても50名を超えました。そのため、狭小マンションであり敷地に余裕がないこと、また、近隣のみなさまへの影響と見学の際の安全上の観点から、検討の結果、受付を締め切らせていただくことにいたしました」とのメールが送られてきた。

 それでも、見学希望が絶えなかったため、同工房はもう一枠見学時間帯を設けて約250人まで受け入れた。

 敷地はわずか60坪しかない。そんな極小敷地に250人だ。ハウスメーカーもデベロッパーもこれほどの数を集めた見学会はどれだけあるだろうか。リフォームでもない建て替えでもない「リファイニング」に熱い視線が注がれている。

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最上階はペントハウス付き

「再生建築学の設置を」 青木茂氏、三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)

リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷緑苑ハウス」完成(2014/3/24)

 

 

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 わが国の6割の経営幹部は5年前と比べストレス増-ルクセンブルグに本社を置くリージャスの日本法人・日本リージャスがこんな調査結果を発表した。世界100カ国、2万2,000人以上の経営者や経営幹部に「働き方」についてアンケート調査したもの。

 「5年前と比べて職場でストレスを感じるようになった」と回答した割合は日本がアメリカとともに57%。他の主要国でストレスが多いのは中国78%、サウジアラビア64%、ベルギー62%。少ないのはオランダ32%、フランス・デンマーク44%、カナダ46%、イギリス48%。グローバル平均は53%。

 日本の回答者がストレスを感じる理由は「1位:人手が足りない(24%)」「2位:雇用が不安定(20%)」「3位:自身の能力不足(16%)」。ストレス解消の方法では74%の人が「いつもと異なる場所で仕事をする」と回答した。

 日本リージャスは、「メインのデスクやオフィスから離れて働くことがストレス解消に効果を発揮していることが明らかになった」としている。

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 このリリースだけではよく分からない部分も多い。「ストレス」の定義が難しく、文化や個人によっても感じ方が異なるからだ。わが国の経営者は「ストレス」をバネに「やる気」に置き換える人が多いような気がするがどうだろう。

 それにしてもベネルクス三国のベルギーとオランダとでは30ポイントもの差があるのはなぜ? 中国が突出して高いのも気になる。

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「江古田三丁目地区(A・C街区)」完成予想図

 積水ハウスは3月5日、都市再生機構(UR都市機構)と協働して中野区「江古田三丁目地区(A・C街区)」の公務員住宅跡地で子育て世帯向け賃貸マンション、多世代向け分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、有料老人ホーム、保育所などを整備し、子どもを軸にした持続可能な街づくりを進めることで合意したと発表した。

 計画地は、広大な「江古田の森公園」に隣接した「江古田三丁目地区」(約4.4ha)の一角。A、B、C街区のうちA街区(約1.7ha)は同社が14階建て分譲マンション532戸を建設し、C街区(約1.5ha)は同社がUR都市機構から一般定期借地として借り受け、賃貸マンション260戸、学生寮130室、サ高住122戸、介護付き有料老人ホーム100室を建設。このほか認可保育所、学童クラブ、コンビニ、レストラン、地域住民の活動拠点なども整備する。B街区には夜間・休日診療、病児・病後児保育機能を備えた医療法人による医療施設が建設される予定。

 今後、同社、UR都市機構、医療法人で「江古田三丁目地区まちづくり協議会」を発足させ、平成28年4月頃に着工、平成30年の竣工を目指す。

 A、C街区は、UR都市機構が企画提案と価格を総合的に評価する総合評価方式で公募したもので、応募した4者の中から同社が選定された。伊藤滋・東大名誉教授が事業企画審査委員長を務めた。

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 記者がこのニュースを知ったのは、翌日の6日に行われた同社恒例の決算・事業計画説明会の会場だった。リリースが配布されていた。

 阿部俊則・代表取締役社長兼COOは駆け足で決算、事業計画について説明した後、このプロジェクトに触れた。「これは画期的なこと。当社のグループ力の成果。これからの街づくりのモデルケースにしたい」とスタッフの労をねぎらい、同時に「記事にしていたのは1社くらい。皆さんの見解が聞きたい」と、あまり報じられていないことに不満も漏らした。

 記者は、関心がないどころか「さすが積水」と提案力に喝采を送った。阿部社長が話をしている間中ずっと〝どんな街になるのか、分譲はいくらになるか〟を考えていた。他の話はほとんど聞いていなかった。この種の複合プロジェクトは都心部では似たものがあるが、準都心部では初めてではないか。地域再生・活性化のモデルケースにもなるはずで、同社が他社を大きくリードしたのは間違いない。

 さて、分譲の価格。UR都市機構の意向を考え価格は抑制するとみた。そこで「坪単価は〇〇〇万円くらいでどうですか」と聞いたら、阿部社長は「言えないが、いい線だ」と話した。記者の予想通りだったら申し込みが殺到するはずだ。隣接する江古田の森公園などと合わせると全体で10haくらいの複合タウンになる。

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陸前高田市(岩手県の資料より)

 2011年3月11日の東日本大震災からもうすぐ4年目の春を迎える。岩手県陸前高田市は、県内でもっとも多くの多くの死者1,559人を出し、いまだに行方不明者が215人いる。死者・行方不明者の1,814人は人口の7.78%に達する。また、日本の白砂青松100選にも選ばれていた「高田松原」の砂州と約7万本の松が消滅した。「奇跡の一本松」は「希望」のシンボルとして〝全国区〟になった。

 そしていま、陸前高田市は「IPPON MATSU」を合言葉に急速に復興への街づくりを進めている。数字から過去-現在-未来へアプローチする。

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 別表は陸前高田市の震災前の平成22年と震災後の26年の数字を比較したものだ。人口は約3,000人減少し約2万人になった。市町村税も約1割減少した。その一方で、一般会計は120億円から1,293億円へ約11倍に膨れ上がった。予算規模は、人口約32万人の東京都中野区の1,206億円を上回る。

 歳出を目的別にみると、災害復旧費が約223倍、土木費が約46倍、総務費が約27倍と激増した。もちろん、増加した分はほとんど国や県からの支出・補助金による復興事業に充てられている。

 その復興の目玉でもあるのが住宅地を高台に移転し、あわせて市街地の整備を行う土地区画整理事業だ。

 市では別表のように「高田地区」と「今泉地区」合わせて約303ha、計画戸数2,120戸、事業費約1,200億円の区画整理事業が進行中だ。

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 事業前の土地の評価額は約415億円で、事業後は約716億円へ約300億円、1.7倍増加する。1,200億円の事業費を投入してもそのうち900億円は回収できないという計算も成り立つ。

 復興のもう一つの目玉は防災集団移転促進事業(防集事業)だ。国費から宅地造成費、住宅建設補助金として360億円が投じられ503戸が建設されることになっている。1戸当たりに換算すると約7,200万円だ。このほか災害復興公営住宅が約300戸建設される。

 これら区画整理事業、防集事業、災害復興公営住宅による住宅建設戸数は約2,900戸。震災で蒙った全壊と半壊戸数3,341戸の86.8%が新たに建設される計算だ。

 「復興への希望の象徴となり、岩手県民だけでなく国内外の多くの人々を勇気づけてきた」(高田松原津波復興祈念公園基本構想)「奇跡の一本松」はどうなるのか。消滅した砂丘は、計画では国営追悼・祈念施設を含む約124haの県営公園として生まれ変わる。具体的な整備計画はまとまっていないが、整備費に約100億円かかると試算されている。

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「奇跡の一本松」(同)

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 記者は昨年の3月、宮城県名取市に別件の取材で出かけ、閖上地区を見て、仙台空港アクセス線美田園駅前の仮設住宅に住む被災者にインタビューをした以外、3.11はまったく取材していない。

 取材もしないで、復興のための土地区画整理事業について書く資格はないのかもしれない。それでも書かざるを得ない。果たして大丈夫かと。

 かつて区画整理事業は「都市計画の母」ともてはやされた。ところが、バブル崩壊後は、高い梯子を外されたのと同じ格好で、ほとんどの事業が行き詰まった。首都圏ばかりでなく広島や岡山の悲惨な事業も取材している。死屍累々ということばがぴったりだった。「姥捨て山」と書いて怒られたことがある。

 そもそも区画整理事業は、そこに住む人を呼び込むポテンシャルがあり、土地が上昇することが前提となっている。右肩下がりでは保留地がねん出できず、金利負担だけが覆いかぶさってくる。

 しかし、「震災復興」の大義名分のためにはだれも「無謀」などと異論を挟めない。それでも、緑の木々が切り倒され、赤土がむき出しになった区画整理の無残な姿を見ている記者は「大丈夫か」と言わざるを得ない。

 陸前高田市と同じように、被災地では50カ所くらいで土地区画整理事業が進められている。「日本創成会議」が昨年、2040年までに東北4県は全市町村の8割以上が人口半減すると予測し、大騒ぎになった。立派な「街」を造れば人口は維持できるのか。国土強靭化政策は実を結ぶのか。

◇       ◆     ◇

 この記事を書き出したころ、発刊されたばかりの重松清氏著「希望の地図3.11から始まる物語」(幻冬舎文庫)を読んだ。現地取材をもとにしたドキュメントノベルだ。

 重松氏は巻末の「四度目の春を前に-文庫版あとがきにかえて」で、2014年暮れに取材したときの陸前高田の風景を次のように書いている。

 「2011年秋の時点では悲しいほど静かだった町に、絶えることなく工事の音が鳴り響く。自衛隊や警察の車輌が行き交うだけだった国道を、ダンプカーが土埃を舞い上げて駆け抜ける。どこも大規模な工事だった。文字どおりゼロからつくりあげているのだというのが、まざまざとわかる。

 …もしかしたら、いまの陸前高田は、『復旧』はもちろん、『復興』をも超えて、ふるさとの『創造』の段階に足を踏み入れているのかもしれない。

 …『町』の時計が前へ前へと進んでいく一方で、『ひと』の時計は行きつ戻りつを繰り返す。それを忘れるな、と自戒した。書き手として自分が言葉を尽くして伝えるべきものは、『町』と『ひと』のどちらなのか――わかっているよな、と肝に銘じた」

 重松氏はまた、「単行本版のときは見過ごしていたことに気がついた。…『目処』という言葉が、驚くほど数多く用いられていたのだ。…それは書き手として恥じ入るべき話である。…いまだに『目処』すら立たない原発事故など幾つもの事柄に、あらためてやりきれなさや憤りがつのらないか? 」と書いている。

 しかし、記者は「目処」よりも「希望」が頻繁に出てくるのに戸惑いを覚えた。タイトルからして「希望の地図」だから多いのはやむを得ないが、ざっと数えたら95個もあった。「人々の希望を背負って」「涙と希望の成人式」「希望というのは、未来があるから使える言葉なんだよ」などだ。ページ数は280ページくらいだから、3ページに1回出てくる勘定だ。

 さすがに重松氏も自らをとがめたのか。「『希望』の響きや字面が、甘くはないか。軽くはないか。とても怖い。単行本刊行からの三年間で、『希望』という言葉は、こんなにも磨り減らされ、疑われ、色褪せて、時として欺瞞や偽善や選挙活動の小道具にまで貶められたのだから。

 もしも題名に冠した『希望』に違和感を覚える方がいらっしゃったら、そして、その違和感が辛い記憶を呼び起こしてしまったり、悲しい思いを生んでしまったりしたなら、書き手として心からお詫びしたい」と書く。

 記者も「希望」に違和感を覚えた一人で、「希望」やら「平和」やら手あかにまみれ陳腐化した言葉などむやみやたらに使うものではないと思っている。

 重松氏の作品をいま一つ好きになれないのは次の一文に象徴的に表れている。「そのうえで、しかしあえて、改題は行わずに文庫化させていただく。『希望』とは未来に向けての思いである。キツい現在を踏ん張るための底力である。…『希望』はある。絶対にある」――まだ「希望はあるというものでもなく、ないというものでもない」と書いた魯迅のほうが正直だ。

 

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「グレイプスフェリシティ戸塚」

 東京建物と日立アーバンインベストメント(旧・中央商事)は3月1日、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)共同事業第1弾「グレイプスフェリシティ戸塚」を開業した。施工は鹿島建設で、大手介護事業者ツクイが生活支援サービスを行い、日立製作所が開発した見守りシステムが採用される。

 入居者をサポートするコンシェルジュが日中常駐し、介護の必要がない人から要介護5まで入居者の要望に応じてパッケージプランが用意されている。居室は分譲仕様の全24タイプ、終身建物賃貸借契約で、入居一時金不要。

 開業に先立って26日行われた記者見学会で、東京建物シニアライフサポート・加藤久利社長は「当社のサ高住はこれで7棟目。日立アーバンインベストメントさんとはこれまでマンションの共同事業があるが、サ高住は初めて。日立さんが開発した見守りサービスを採用し、次世代型のサ高住を目指す」と話した。

 両社共同事業の第2弾「(仮称)戸塚町361計画」74戸も開発を進めている。竣工は平成27年11月。

 物件は、JR東海道本線・横須賀線・湘南新宿ライン・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅から徒歩15分、横浜市戸塚区吉田町字上打越に位置する6階建て全97戸(ほかにデイサービス、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所)。専用面積は19.08~62.02㎡。月額賃料は74,000円~265,000円。管理費は16,500円(浴室あり)・21,500円(浴室なし)。基本サービス費は32.400円(1人入居)・54,000円(2人入居)。食事は3食30日分で48,600円。事業主は東京建物、日立アーバンインベストメント。貸主は東京建物不動産販売。運営受託はツクイ。医療連携は福和会横浜さくらクリニック。設計・監理は日立建設設計。施工は鹿島建設。

 1月27日から入居募集を開始しており、南向きや50~60㎡台の全戸をはじめ22戸に申し込みが入っている。

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モデルルーム

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デイサーピス(左)と介護浴室

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 加藤社長はあいさつの中で「日立アーバンインベストメントさんはこれまで戸塚で1,500戸のマンション供給事例がある」と話した。記者は日立アーバンインベストメントを全然知らなかったが、1,500戸も供給していれば知らないはずはないと思った。日立系の中央商事ならよく知っている。桜並木が美しい高台で素晴らしいマンションを分譲したことがあるし、その他も取材している。

 ひょっとしたら社名を変更したのではないかと、発表会に出席していた同社不動産営業本部事業開発部部長・服部三次郎氏に聞いたらその通りだった。中央商事が2012年、現社名に社名変更したのを記者が知らなかっただけだ。

 そんなことより大事なのは施工が鹿島である点だ。記者はサ高住のことはよく知らないが、施工が鹿島というのはほとんど事例がないのではないかと思う。スーパーゼネコンも少ないはずだ。ましてやゼネコンはオリンピックやら復興やら都市の再開発などビッグプロジェクトに忙しく、利益率の低いマンションやサ高住など受注するはずがない。

 そこで、「なぜ鹿島か」とぶしつけな質問をした。服部氏は「敷地は日立系の社宅跡地で、鹿島さんには施設やマンションなどを多く手掛けていただいており、地域住民からも美しい桜並木を壊さないでという要望があったので、実績が豊富な鹿島さんにお願いした」と話した。「コストは? 」と畳み掛けたら「安くはない」と服部氏は笑って答えた。この答えで鹿島の読みも理解した。

 日立アーバンインベストメントがこれからどのような事業を展開するか注目したい。

 居室内のセンサーなどと組み合わせた日立の見守りシステムもなかなかいい。しかし、この種の技術は日進月歩。いちばんいいのは24時間365日、入居者の健康が管理できることだ。人権問題もあるが、タグを耳などに埋め込むのはどうか。

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フェリシティホール(食堂)

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