初台2丁目リファイニング建築計画 工事着工前(左)と完成予想図
三井不動産は12月8日、業務提携先の青木茂建築工房の「リファイニング建築」を活用した渋谷区初台の旧耐震建築物の解体現場見学会を行い、解体後のスケルトン状態の住戸と耐震補強の過程、完了した状態の住戸を公開した。
物件は、京王新線初台駅から徒歩10分、渋谷区初台2丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約707㎡、地下1階・地上4階建て延床面積約1,402㎡の共同住宅24戸兼倉庫。竣工は昭和43年(1968年)、築51年。高さは11.05m(既存不適格、従前の用途地域は第一種住居専用地域で、高さ規制は20m)。
工事に当たっては、現行法に適合させるため耐震壁補強などを行い、用途を共同住宅26戸に変更。アプローチ、エントランス、エレベーターなどを新設。床は直床から二重床とし、単板ガラスはLow-Eに変更する。耐震判定書を取得済みで、検査済証も再取得する見込み。設計監理は青木茂建築工房。施工は日本建設。商品企画は三井不動産レジデンシャルレジデンシャルリース。
見学会で、同工房・青木茂代表取締役は、「今回は解体後のスケルトンと工事後の躯体が同時に見ることができるのが特徴。(施工の日本建築)現場には苦労かけているので頭が下がる。これからも一つひとつ安全な建物にしていく」と語った。
同社ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部・宮田敏雄氏は、「従前でも賃貸住戸(24戸)の稼働率は90%を確保していたが、オーナーは耐震性と将来の賃料不安を抱き、建て替えを計画した。しかし、建築当時にはなかった日影規制の適用を受けることから建物規模が減少(1フロア)するため、十分な事業性能が確保できず、売却も様々な法規制を受けることから難しいことが判明。リファイニング手法が最適であることを提案し実現した」と同手法を採用した経緯について語った。
同社と同工房は2016年に業務提携。これまで2物件の再生が完了し、今回と目黒区の物件が進行しており、今後、練馬区と新宿区でも新規案件を予定している。
「リファイニング建築」は、①耐震性能上問題のない壁や設備を撤去し、建物を軽量化することでブレースなどによらない独自の補強方法で現行の耐震基準を満たす②既存躯体の約80%を再利用することにより建て替えと比較して約70%のコストで設備、内外装を一新し、工期も短縮できる③現行法規に適合させることで、検査済証の取得を実現し、新築並みの融資が受けられ、将来的な流動性も確保できる④解体工事で発生する廃材が大幅に削減できる-などの特徴があり、これまで全国で10プロジェクトの事例がある。
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記者は幡ヶ谷駅から歩いたので現地まで15分くらいかかった。いくら今人気の青木先生の作品でも築51年ではリーシングも厳しく、坪賃料は1万円くらい、分譲なら坪400万円がアッパーではないかと考えたのだが、初台から徒歩10分で、坪647万円でも人気になった三菱地所レジデンスの「代々木上原」も近いと聞いて、見込み違いであることが分かった。
そして約1時間、従前と従後の工事現場を見て回り、「周辺の坪賃料は1.4万円が相場」(宮田氏)もむべなるかなと改めた。
リファイニングの真価を発揮しているのは、従前は倉庫だった1階(建基法では地下)にメインエントランスを設け、専用庭・トップライト付きの2住戸(各56㎡)を新たに設けたことだ。これだけで賃貸料は年間数百万円になるはずだ。天井をぶち抜くことなどリフォームはもちろん、リノベでも絶対できない。
2階以上の階高は2.7mしかないが、設備仕様、意匠・デザインも一新することで難点をカバーし、従前賃料より3~4割引き上げるというのも理解できた。Low-Eガラスは高級分譲マンションでも多くはない。
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青木氏の作品を最初に見たのは今から6年前、2013年の「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」の解体現場見学会だった。300人もの見学者でごった返したのに驚愕し、いっぺんでファンになった。
その後、これまで十数回は現場見学会、講演などを取材している。そのほとんどの記事を添付したので読んで頂きたい。失礼ながら〝建築の魔術師〟とあだ名をつけた。先生にはわが国の大学に「リファインニング学科」を設けてほしいのだが、この日「もう71歳だよ」と否定された。
いま、プロフィールを見たら、大連理工大学客員教授/椙山女学園大学客員教授/日本文理大学客員教授/韓国モクヨン大学特任教授とあるではないか。わが国の建築学科は所属学部が多岐に分かれ、「建築士」は官が許認可権を握っており、公共事業などは斬新な提案がしづらいと聞く。中国や韓国が「リファインニング学科」を設立しないか心配だ(それはそれで結構なことだが)。
工事中の現場
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