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「武蔵小金井駅南口第2地区第一種市街地再開発事業」

 野村不動産は1月16日、「武蔵小金井駅南口第2地区第一種市街地再開発事業」と「虎ノ門駅前地区第一種市街地再開発事業」の権利変換計画がそれぞれ東京都から認可されたと発表した。

 「武蔵小金井駅南口」は、地上26階・地上24階建てツインタワーマンションを計画しており、住宅約720戸のほか、地上1~4 階には生活利便機能を揃えた地域密着型の商業施設を予定している。同社は住宅保留床及び商業保留床を取得する。工事完了予定は2019年度。

 「虎ノ門駅前」は、外堀通り・桜田通りが交差する虎ノ門交差点と虎ノ門駅に隣接。銀座線虎ノ門駅の機能拡充とバリアフリー化に資する地上・地下の駅前広場を整備するとともに、業務・商業機能の質的高度化を図る。建物は地上24階・地下4 階、延床面積約47,470㎡。竣工予定は平成32年6月。

 地権者として森村不動産、不二屋ビルデング、日本土地建物、虎ノ門リアルエステート、住友不動産の5社、参加組合員として同社のほか東京地下鉄が事業参画している。

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「虎ノ門駅前地区第一種市街地再開発事業」

カテゴリ: 2016年度

 国土交通省は昨年末、市街化調整区域における建築物の用途変更について、古民家などの既存建築物を地域資源として地域再生に活用する場合に、許可要件を弾力的に運用できるよう開発許可制度運用指針の一部を改正した。

 集落の人口減少・高齢化の進行、空き家の発生などにより地域コミュニティの維持が困難となりつつあることを踏まえ、空き家となった住宅などを観光振興や集落の維持のために活用しようという狙いだ。都市計画法では、市街化調整区域内の既存建築物の用途変更は地方自治体の許可が必要で、これまで古民家や店舗などを他の用途に変更する運用基準は各自治体によってまちまちだった。

 具体的には古民家を宿泊施設や飲食店にしたり、自己用住宅を移住・定住促進のための賃貸住宅、グループホームなどにしたりすることが想定されている。

 実際の許可権者は地方自治体にあるため、国交省は用途変更がどの程度行われるか不明としている。各自治体の動きが注目される。

◇       ◆     ◇

 過大な期待は持てないだろうが、地域コミュニティを維持・活性化させる指針の改正には大賛成だ。

 そもそも市街化を図るべき市街化区域と開発を抑制すべき市街化調整区域に区分する線引きがなされたのは高度成長期の昭和43年の新都市計画法で、現在の人口減少、少子・高齢社会の状況では線引きそのものの意味も薄れている。

 このため国は平成12年に法律を改正、大都市圏と特定都市を除き、線引きは各地方自治体の判断にゆだねられることとなった。その結果、現在では10を超える自治体が線引きそのものを廃止した。

 その後も地方都市での人口減少傾向は加速し、中心市街地の空洞化、限界集落への転化、コミュニティの崩壊など地方自治体の抱える問題は深刻化している。このため全国の自治体は、移住助成措置を取ったり空き家バンクを設置したりするなどして懸命な取り組みを行っている。今回の指針改正は、これらの動きを後押しするものになる。

 ここで懸念される問題もある。用途変更によって違法建築物があぶり出されないかということだ。線引き前に建てられていた古民家などは問題ないだろうが、都市計画法第43条1号で規定されているいわゆる1号店舗には違法建築物が隠れている可能性がある。

 1号店舗とは、調整区域に居住する人向けの小売業、飲食料品店、書籍・文具店、洗濯・理容・美容・浴場業、コンビニなどだ。これらは各自治体の判断によって建設することが許される。

 国交省によれば、平成26年度の1号店舗の許可件数は全国で775件。単純計算すれば1日当たり約2件、1都道府県当たり約16件と少ないが、ある県は全体の17.2%に当たる133件と突出。この県はもともと件数が多く、昭和60年前後のピーク時には少なくとも年間200~300件が許可されていた。

 これらの1号店舗が果たして適法に利用されているかどうか。建築基準法では、建物が完成したときは建築主事又は指定確認検査機関による完了検査を受けて検査済証の交付を受けなければならないことになっているが、当時は検査済証の交付を受けていない建築物がたくさんあった。つまり実態は闇だ。

 今回の指針改正でも、用途変更が認められるのは適法に建てられ、その用途に供されていたものであるものに限られる。この要件を満たさなければ、既存建築物は用途変更も建て替えも不可となる可能性が大きい。空き家となったら最後、そのまま朽ちるのを待つほかない。

 

カテゴリ: 2016年度

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プレ協の新年賀詞交歓会(アルカディア市ケ谷で)

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樋口会長 

 プレハブ建築協会は1月13日、「平成27年度新年賀詞交歓会」を開き、樋口武男会長(大和ハウス工業会長)が「良質な住宅を供給するとともに空き家の活性化などについても知恵を絞り、いい街づくり、国家形成にチャレンジしていく」と語った。

 賀詞交歓会には約550名が参加。冒頭、樋口氏は「わが国の住宅ストック約6,063万戸のうち空き家が約820万戸、耐震性が不十分な住宅が約1,050万戸、断熱性能が満たされていないものが約2,000万戸ある。一方で長期優良住宅は1~2%しかない。国は豊かになったかもしれないが、これでは先進国とは言えない。良質な住宅を伸ばすことも重要だが、空き家の活性化にも取り組まなければならない。プレ協としても知恵を出し合いいい街づくり、国家形成にチャレンジしていく」と話し、中長期的には海外事業にも力を入れるべきとした。

 また、トランプ氏の米国大統領就任についても触れ、「最初は景気よく株価も上昇したが、ここ1、2日は怪しくなってきた。20日にどのような発言されるのかわからないが、知恵を絞って道を開いていくしかない」と語った。

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 以下は、会場で拾った主なコメント。( )内は記者。(順不同)

同協会副会長・和田勇氏(積水ハウス会長兼CEO )

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 (会長、「中古住宅」は「既存住宅」に統一されましたが)「まあ、『中古』よりええやないか」(会長、我々の世代は「キソン」じゃなくて「キゾン」と発音したのではありませんか)「そうだ、そうだ、『キゾン』だ」

トヨタホーム社長・山科忠氏

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 (ミサワホームの子会社化について)「ミサワには歴史、技術、販売力があり、われわれより先行しているものもある。1+1が2以上になるよう新規事業も含め取り組んでいく」(尾久では初の共同事業マンションを供給される。相場は坪250万円かもしれませんが、〝世界のトヨタ〟ですから坪300万円にチャレンジしてほしい)「わたしの口から何とも言えない。記者の方がそう仰っていることは分かりました」

ミサワホーム執行役員・中村孝氏

 (ミサワさんはマンションの実績もありますよね)「あのTHE TOKYO TOWERSをうちでやっていたら、ミサワの歴史も変わっていたはず。これからはトヨタの土地の有効活用や当社も土地を仕入れているのでいいものをつくっていきたい」(同感。ミサワが土地を仕入れ、プランを練り、いざというとき、2004年1月、経営悪化から住友商事に売却せざるを得なかった。気の毒だった)

同協会会長・樋口武男氏(大和ハウス工業会長)

 (会長、トランプさんに対して知恵を絞るとはどういう意味? )トヨタさんが1兆円の投資をするといったように、理を尽くせばわかってもらえるのではないかという意味。うち? うちは大丈夫」(メキシコには投資しないということか)

〝「ケイキ」の「キ」は「木」にしようではないか〟

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 左から同協会副会長・竹中宣雄氏(ミサワホーム社長)、住友林業社長・市川晃氏、積水ハウス社長兼COO・阿部俊則氏、三井ホーム社長・市川俊英氏(4人が何を話していたかわからないが、記者は勝手に積水ハウスは木造の〝シャーウッド〟で、木造住宅の一層の発展について論議していたと解した)

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 明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)で、最高裁判所は12月13日、上原元市長の上告を棄却。この結果、上原元市長に約3,120万円の損害賠償を命じた東京高裁判決(2015年12月22日)が確定した。

◇       ◆     ◇

 この問題は、明和地所がマンション建設計画を明らかにした1999年から同社へはもちろん、国立市役所や当時の上原市長へのインタビュー、住民集会への参加、裁判の傍聴などずっと関わってきた。ある意味では記者の人生を変えた事案でもある。あれから17年、感慨深いものがある。節目節目で記事を書いてきたのでそちらを参照していただきたい。

 一連の裁判で当初から主張してきたことがほぼ認められてうれしいのだが、次の2点だけはもう一度しっかり指摘しておく。

 一つは、地区計画の決定について。

 明和のマンション敷地を含む「中三丁目地区地区計画」の施行面積は約13.5ha。このうち、同社のマンション敷地は約2.7haで、同社の敷地に隣接する北側の桐朋学園の敷地は約9.2ha。地区計画ではともに高さ規制は20mとなっている。そして、桐朋の敷地の東側にある低層住宅地約1.1haと同社の敷地の西側にある第一種低層住居専用地域約0.5haは高さ規制をそれぞれ10mとした。

 全体施行面積のうち明和の敷地は約20%だが、桐朋の敷地とその隣接の低層住宅地を除くと、同社の敷地割合は約84%に達する。地区計画が決定される前の明和の敷地は高さ規制がない建蔽率60%、容積率200%の地域だった。

 このことからも、マンション建設反対運動を主導した桐朋の関係者などと上原氏が結託して、まさに同社を狙い撃ちにした地区計画であることがわかる。地区計画は法的な強制力を持つため、その決定には関係権利者の合意を得て民主的に進めるべきなのに、上原氏と当時の議会はその手続きを無視した。暴挙と言わざるを得ない。

 一連の判決は、この地区計画の決定に至る手続きに瑕疵はないとしているが、これは今でも納得できない。

 もう一つ。記者は問題に〝火〟が付いたとき、不動産協会や日住協(現全住協)に「対岸の火事視してはいけない。このような暴挙を許せば、絶対高さ規制を行おうとする動きは燎原の火のごとく全国に広がる。業界全体として動くべき」と持ち掛けたが、どこも取り合ってくれなかった。当時、同社は飛ぶ鳥を落とす勢いにあり、同業他社はやっかみもあったのか、等閑視した。同社の故・原田利勝氏にも「泣く子と地頭には勝てない。和解を」と勧めたが、原田氏は首を縦に振ることはなかった。

 その後、事態は憂慮した通りになった。建築物の絶対高さ規制は良好な街づくりに絶対つながらない。むしろ逆だ。擁壁のように街と遮断し、日照・通風・居住性の劣るマンション建設を増やすだけだ。用途規制、日影規制なども含めた都市計画のあり方についてしっかり再検討すべきだと思う。

 上原氏は敗訴を受けて記者会見し、「市民自治を無視するもの。歴史に汚点を残す決定だ」(東京新聞)と怒ったそうだが、何人も法の下では平等ということをお忘れか。首長は権限が大きいからこそ、権力行使には公平・公正を期さなければならない。上原氏の暴走はその後の「景観保護」運動に大きな影響を与えた。功罪はあまりにも大きい。

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 裁判の確定を受けて、上原氏を支援してきた「くにたち大学通り景観市民の会」は2016年12月30日付で以下のような「ご報告とお願い」をネットで公開した。

 「(前略)この結果は、国立の大学通りの景観保護をめぐって努力してきた国立市民と国立市、当時の上原市長の「オール国立」ともいえる住民自治の営みを消し去ろうとする承服しがたい決定であると言わざるを得ません。

 (中略)上原公子さんがいま、国立市から請求されている賠償額は、約4400万円と巨額です(金利含め)。

 私たちは、この間のすべての経過を鑑みて、この額は、上原元市長ひとりで1円たりとも負担すべきものでないとの決意で向き合うことといたしました。

 これまで多大なご支援をいただいてきたことに加えて恐縮ですが、この度、募金を募る(ママ)ことを決めました。どうか、私たち決意をお受け止めいただきたく心より訴えさせていただきます」

 この「会」が中心になって進めたマンション建設反対署名には石原慎太郎氏など数万名が賛同したはずだ。

 政治理念の実現のためには「権限を濫用」し「信義則に反する」「不法行為」を堂々と行う人に対する支援であることを承知の上でなら、当時賛同した方々は寄付をしたほうがいい。一人当たり1,000円の寄付でお釣りが出るくらいの募金は集まるはずだ。

 寄付が集まらず、上原氏が金策に回らなければならないようでは、わが国の景観を守ろうとする勢力の鼎の軽重が問われる。

「国立裁判」明和地所〝圧勝〟に思う(2004/11/8)

「国立裁判」全て終結 明和地所が全面勝訴したが…(2008/3/13)

「求償権の放棄」は問題 国立市は上原元市長に賠償請求すべき(2014/10/1)

上原・元国立市長への求償は当然 議会「決議」の法的効力は? (2015/1/31)

国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)

国立市議会 上原元市長に対する求償権行使を求める決議(2015/5/20)

国立求償裁判 国立市が逆転勝訴 東京高裁、第一審判決を破棄(2015/12/22)

 

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木村・不動産協会理事長(左)と田中・FRK理事長 

 不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)は1月6日、恒例の合同による「新年賀詞交歓会」を行った。冒頭、不動産協会・木村惠司理事長(三菱地所会長)が「日本の豊かな社会、安心・安全の街づくりを進めていく」とあいさつし、FRK・田中俊和理事長(住友不動産販売社長)は「昨年は不動産流通取引件数が過去最高を更新した。今年も市場規模の倍増に向け業界が一丸となって取り組む」と抱負を述べた。

 参加者は昨年の約1,150名を上回る約1,200名に達し過去最高を記録。来賓として石井 啓一・国土交通大臣、山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)、高市早苗・総務大臣、野田毅・自民党税制調査会最高顧問、北側一雄・公明党副代表(元国交大臣)、井上義久・公明党幹事長なども挨拶し、菅義偉・内閣官房長官も駆けつけるなど、会場は立錐の余地がないほど賑わった。

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不動協とFRKの2017年賀詞交歓会(会場のホテルオークラ アスコットホールの定員は800名)

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 最初に登壇した不動産協会・木村理事長は、「私事で恐縮ですけれども、私、いま鎌倉に住んでおりまして、この正月3ケ日は快晴の日が続きました。紺碧の空と海と、そして江の島と湘南海岸の間に富士山が白い雪を頂いている姿を観て、改めて日本の豊かな社会、安心・安全の街をつくっていく決意を新たにしました」と語り始め、国内外の社会・経済状況には「中国の動向などリスク要因もあり、多少不透明感が続く」としながらも、昨年末の税制改正大綱では「事業用資産の買換え特例の延長・拡充、登録免許税の特例の延長などが決まり、わたしどもが要望した税制がほぼ100%実現した」と評価、「内需産業の中核としてこれからの日本経済の成長に寄与したい」と述べた。

 具体的な課題としては、地方創生とともに大都市の問題について触れ、「世界的な都市間競争が激化する中でのわが国の大都市の魅力を発信するために、ハード的には国家戦略特区の活用をスピーディに行うこと、ソフト的には街づくりエリアマネジメント手法などを駆使することが必要」と強調した。

 住宅分野については、「約6,000万戸あるストックのうち3,000万戸は耐震、耐火、省エネなどで問題がある」とし、建て替えやリフォーム、リノベーションを進め中古と新築の両方が良質なストックを形成し、「新しいライフサイクルにあったニーズ、ウォンツに応えていくことが大事」と話した。

 働き方改革についても触れ、「取り組みは業界でもまだまだ緒についたばかり。不動産特有の問題も潜んでいるかもしれないので研究していきたい」と語った。

 「街づくり都市づくりを通じて、なおかつ良質な住宅を供給することで希望が持てる社会の実現のために努力していく」と結んだ。

 来賓の挨拶のあと、乾杯の音頭を取った不動産流通経営協会理事長・田中俊和氏(住友不動産販売社長)は、「昨年の不動産流通市場は取引件数が過去最高を更新するなど、堅調に推移しました。足元も既存住宅の底堅い需要を実感しており、今年も住宅税制・金融支援策もあり、高水準な取引が続くと期待している。

 日本にはモノを大切にする文化がある。よいものは残し、次の人に活用してもらう、このリレーをお手伝いするのが私たちの仕事。既存住宅における消費者の不安解消にわれわれは取り組んでおり、建物状況調査(インスペクション)はその一助になる。年末にその運用方法がまとめられた。我々はそれがスムーズな導入に向け、業界で取り組んでいく。

 また、多様化する時代を迎え、新たな技術の活用を加えることにより消費者に地域の魅力、既存住宅の魅力を発信していく役割を担っていきたい。そして、『新住生活基本計画』の目標である市場規模の倍増に向け業界一丸となって取り組んでいく」と述べた。

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左から不動産協会会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)、木村氏、田中氏

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 三井不動産リアルティは12月26日、売買仲介機能と賃貸仲介機能を併せ持った「三井のリハウス 勝どきセンター」を2017年1月5日(木)に開設すると発表した。2016年12月に竣工する都営大江戸線勝どき駅から徒歩6分の大規模タワーマンション「勝どき・ザ・タワー」の1階の立地に出店する。

 これまで勝どきエリアは「月島センター」が主にカバーしていたが、当エリアのマーケット拡大に伴い出店するもの。

 勝どきエリアは、2000年に都営大江戸線が開通して以降、再開発による大規模タワーマンションや商業施設の建設が相次ぎ、隣接する晴海には2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村も建設されるなど一層の賑わいが予想されている。同業他社では住友不動産販売、野村不動産アーバンネットがすでに出店している。

 今回の出店により、同社グループは全国281店舗となる。

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 別掲のように昨日(12月22日)、埼玉県住まいづくり協議会が主催する「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式が行われた。審査委員長の三井所清典氏(日本建築士会連合会会長)は、20周年を迎えた同協議会の活動を称え、受賞作品も絶賛した。

 記者もそう思う。しかし、素晴らしい活動をやっているからこそ、支援したいからこそ言わざるを得ないことがある。同協議会の組織運営についてである。

 石の上にも3年だ。部外者が言うべきことではないのを承知で、組織に水を浴びせることを書く。誰かが悪者にならなければ治らない。記者はそうなってもいい。

 この日の表彰式、満席になれば優に100名は超えると思われる会場に集まったのは30~40名。空席が目立った。

 式次第に沿って、主催者の同協議会会長・風間健氏(高砂建設社長)の挨拶から賞状授与が粛々と行われた。

 賞状を受け取るため登壇した人は25名。一人ひとりに賞状が手渡され、降壇するたびに司会者が「受賞者にもう一度大きな拍手を」の呼びかけに応える拍手が大きく響き渡ったが、それ以外はしわぶき一つ聞こえない。お通夜と間違えそうな静かさだ。〝さくら〟もいなければ一般人の参加は皆無だったはずだ。

 その後、プレゼン、総評に移ったが、登壇者の声が小さく最後列に用意された報道席には届かないのもあった。

 この光景こそ、同協議会の現状を如実に物語っているのではないか。これ以上は書かないが、式の演出に問題があるのだ。関係者みんなが受賞者を称える雰囲気づくりに決定的に欠ける。三井所氏ら審査員が「素晴らしい」などと絶賛する言葉がむなしく聞こえるのは記者だけでないはずだ。

 プレゼンの登壇者もそうだ。4人のプレゼン時間を測った。3分、8分、15分、19分だった。決められた時間きっかり行うのがプレゼンのイロハだ。

◇       ◆     ◇

 もう一つ。今回の応募は92作品。多いか少ないかの判断は難しいが、応募者の構成を見ると、アキュラホームから50作、県下の3高校から13作、小林建設が4作、東京ガスが4作。この6社・校で全体の77%を占める。

 この構成は考えなければならない。盛り上がり、広がりに欠けると言わざるを得ない。

 その原因として、「レギュレーションがくるくる変わる」という関係者の声も聞かれるが、三井所氏は「応募部門は5つあるから、関心を持てば県民全てに(応募の)チャンスがある」と話した。部門によってはハードルを高くし、また「学生部門」のような市民がどんどん応募できるような部門を設けていいではないか。受賞者に対するユニークな賞品提供もあっていい。

 協議会メンバー、中でもハウスメーカーは優れているのが当たり前だから、個人応募はともかく企業としての応募資格から除外してもいい。若い人にチャンスを与えるべきだ。

◇       ◆     ◇

 埼玉県は最近、「先導的ヒートアイランド対策住宅街モデル事業」を立ち上げ、さいたま市も「スマートシティさいたまモデル」を国内外に発信・展開する「美園タウンマネジメント協会」を設立した。地球環境問題に真剣に取り組む姿勢を明らかにしている。

 同協議会はその旗振り役であるはずだし、そのメンバーが建築中の「浦和美園」の戸建ては、東京都の「「むさしのiタウン」や横浜市の「脱温暖化モデル住宅」などと比較しても、はるかに進んでいる。

 記者はこの〝落差〟が許せないのである。このままでは尻すぼみになるのが目に見えている。「埼玉で、がんばる! 埼玉を、創る!」のスローガンが泣くではないか。

 上田清司・埼玉県知事は先のRBA交流会で「埼玉県が一番元気」とアピールしたが、元気なのは知事だけでないのか。

 同協議会を応援しようという気持ちがなえてくる。記者だって暇じゃない。このままでは来年は取材するかどうか考える。(こんな記事を書いたらお呼びじゃないだろうが)

 20周年を記念にもう一度、原点に立ち返って協議会のあり方を問い直すべきだ。

 

埼玉県知事賞に小林建設 高校生の作品も入賞「第4回埼玉県環境住宅賞」(2016/12/23)

 

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「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式

 埼玉県住まいづくり協議会は12月22日、埼玉県が後援する「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式を行い、応募92作品の中から今回初めて創設された埼玉県知事賞に「ツクル時もツカウ時も環境に負荷を与えないイエ」(小林建設)を選んだほか、優秀賞4点、20周年記念賞2点、入選10点、奨励賞8点を選んだ。   

 知事賞を受賞した作品は、埼玉県長瀞町に今年6月に竣工した124㎡のロフト付き平屋建て住宅で、「環境に負荷を与えたくない、自分の山の木を使いたい、地産地消したい、一生に一度の家づくりだから記念になるものを」すべて盛り込んだのが特徴。薪ストーブも設置されている。

 小林建設の担当者は「環境意識が高い施主だったから実現した」と受賞の喜びを語った。同社は昨年の最優秀賞に続き、2年連続の最高賞の受賞。

 審査委員長の三井所清典氏(日本建築士会連合会会長)は、「埼玉県住まいづくり協議会は今年で20周年を迎えるが、継続して素晴らしい活動を行ってきた」と称え、「賞の部門は5つあり、建築専門でなくても、関心を持てば埼玉県の人すべてが(受賞の)チャンスがある。今回はパッシブデザインなど健全な提案が多かった」と総評した。

 受賞作品は公共団体などで展示される。

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知事賞を受賞した小林建設

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三井所氏

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 三井所氏が高く評価したように、受賞した作品はみんな力作ぞろいだ。ただ、配布された資料はA4の1枚に1作品が紹介されているもので、記者には字が小さすぎて読みづらいのが難点だ。

 一つひとつ詳しく紹介できないが、昨年に新設された学生部門の作品を紹介する。

 優秀賞に選ばれたのは、「光と風の家」をテーマにした埼玉県立春日部工業高校の池田茜さんの作品。三井所氏も絶賛した。

 1階の約20坪の平面図は東西に2分されており、中央部分は南北方向に幅約2mの「土間」が配置されている。土間は家族だけでなく、地域住民にもコミュニティの場として開放される空間だという。

 このほか、入選・奨励賞を受賞した県立大宮工業高校の大西実恵さんの「北側にある快適な家」、同校・長谷川愛さんの「竹の大切さを忘れない」、同校・井島祐紀さんの「家族でつくる木炭の家」、県立川越工業高校の赤岩春紀さんの「振動で発電する家」、県立春日部工業高校の大島優衣さんの「窓の位置から見直す住宅」も発想が面白い。

 「格子」「土間」「木炭(樫)」「竹」などをデザイン・素材に扱うところなど隈研吾氏そっくりだ。日の当たらない家に太陽光を取り入れるとか、鉄道や道路の振動を電気に変えるというのもひょっとしたら実現するかもしれない。(太陽光採光住宅は商品化されている)

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春日部工業高校の大島さん(左)と池田さん

 

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 野村不動産アーバンネットは12月21日、不動産情報サイト「ノムコム」の新コンテンツとして、人工知能(AI)によるチャット型Q&A サービス「住まいのAI ANSWER」をスタートしたと発表した。

 心理的にハードルが高いとされる不動産会社へのアクセスを個人情報を明かさずに可能にし、住まいの購入、売却についてAIが24時間対応するチャット型Q&Aサービス。物件紹介・査定受付も行う。

 寄せられたさまざまな質問を蓄積することでAIを更に学習させ、より的確な回答を目指す。

 

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「(仮称)井の頭ビルリファイニング工事」(シートがかかっている建物、北側から写す)

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青木氏

 青木茂建築工房は12月21日、事業主のレーサムの協力により、三鷹市にある築44年の寄宿舎をリファイニング手法によって賃貸住宅に用途変更する「(仮称)井の頭ビルリファイニング工事」の現場解体見学会を行った。100名を超える見学者が集まった。

 建物は、JR三鷹駅から徒歩15分、三鷹市下連雀2丁目の紫橋通りに面した近隣商業地域(建蔽率80%、容積率200%)と第一種低層住居専用地域(建蔽率40%、容積率80%)にまたがる敷地面積約459㎡、建築面積約296㎡、延床面積約2,478㎡の鉄骨鉄筋コンクリート造9階建て。確認申請は昭和47年。設計監理は青木茂建築工房。施工は日本建設。建築主はレーサム。

 建物は検査済証がないため、国土交通省のガイドラインに基づいて既存不適格建築物の証明を得て、さらに現行法の高さ規制(25m)、日影規制、容積率などの集団規定、構造耐力や階段などの単体規定の法規には適合しないが、建設当時の法規は満足していることの証明を行い、特定行政庁との協議を重ねて実現したもので、現行法による新たな確認済証を取得する。

 具体的には、既存階段を撤去し、新たに特別避難階段を設置。寄宿舎部分を共同住宅に用途変更し、耐震補強も行い、耐震評定所を取得する。

 また、一連の工事と合わせ内外装、設備の一新し、現在の市場にマッチした共同住宅にプラン更新する。

 見学会で挨拶した同工房・青木茂代表は「リファイニングを知ってもらうには工事途中の現場を見てもらうのが一番。不適格部分を残しながら、商品性を高めたのが特徴」と述べた。

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南西側から写す(建物の東側は第一種低層住居専用地域)

◇       ◆     ◇

 建築のプロの方なら、前段の記事を読まれてよく理解できるかもしれないが、そうでない方はまったく何のことだかわからないのではないか。

 かく言う記者も解体工事を見ても何もわからない。むき出しのコンクリを見るだけだ。なので、早々に退却した。

 しかし、このリファイニング工事がどのようなものであるかは容易に想像がつく。つまり、この敷地を更地にして、用途が何であれ建物を建てたら、建蔽率、容積率、高さ規制、日影規制などから判断して現在の建物の半分も建たないのではないか。

 また、現在の建物の高層階の平面図を見ると、1フロアは25㎡くらいの10室と2室分相当の待合室、洗面室、便所、浴室を備えた共用部分があるが、現在では社員寮としても使用にたえないものであることがわかる。

 それをリファイニング手法によってエレベータを付け替え、1室分を特別避難階段にする一方で、居室は1フロア11室を確保。各部屋(25㎡くらいか)にはバス・トイレ・洗面・キッチンを設置する。

 どうだろう。従前はまったく商品価値のない建物だ。〝たこ部屋〟(記者はしらないがおそらくこんなものだろう)同然だったものを、市場性のあるものに一新する。仮に分譲マンションにすれば、最低でも坪単価は250万円で、グロスでは2,000万円を突破する。賃貸でも利回りは4%くらい確保できるはずだ。

 それにしても、この日はそんなに寒くはなかったが、暮れの忙しい日に完成お披露目ではなく解体工事に100人も見学者を集めるとは。〝建築の魔術師〟青木氏の人気度をまざまざと見せつけた。

 これまで書いた青木茂氏の記事は、「千駄ヶ谷」「笹塚」「竹本邸」「再生建築学」などの語句と「RBA」で検索していただくと5つ6つはヒットするはずだ。

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見学者でごった返す工事現場

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