玉石混交業界へ一石 消費者の安全・安心第一に ステキ信頼リフォーム推進協会設立
ステキ信頼リフォーム推進協会 役員
坂本会長
一般社団法人・ステキ信頼リフォーム推進協会(会長:坂本雄三・東京大学名誉教授)は10月31日、住宅リフォーム事業者や業界の健全な発展と消費者の安全・安心、快適な暮らしを実現することを目的とした同協会を平成29年7月28日に設立し、事業を開始したと発表した。スタート時点の会員は、リフォーム事業者、工務店からなる「たくみ会員」80社など155社。「住宅リフォーム事業者団体」に登録申請する来年11月には300社を目指すという。
同協会は、既存住宅の耐震化の推進や耐震改修技術者の普及を目指し活動しているNPO住まいの構造改革推進協会(最高顧問:平田恒一郎・すてきナイスグループ会長兼CEO)の事業を継承するとともに、既存住宅の性能診断(インスペクション)・流通、国産材の利活用などの幅広い事業を展開する目的で設立された。
設立会見に臨んだ坂本会長は、「リフォーム=悪徳が浮かぶようじゃダメ。良質なリフォームが望まれる世の中にしないといけない。当協会は耐震だけではなく外壁、水回り、設備などを含めた建設、建材、流通などの幅広い分野を結集して構造改革を進め、消費者ファーストを目標に掲げ、社会の発展に貢献したい」などと話した。
「たくみ会員」への入会資格は、建設業の許可を受けていること、常勤の建築士または建築施工管理技士が在籍していること、同協会の正会員2者からの推薦状を取得することなど。会費は3万円/1口以上。
同協会は11月28日(火)、「健全なリフォームの実現と住宅ストックへの展望」と題するシンポジウムをKPP八重洲ビル7階で13:00~15:00まで行う。パネリストは坂本会長、平田氏のほか、五十田博・京都大学教授、長尾年恭氏、モデレーターは戸田俊彦・木と住まい研究協会理事。参加費無料。
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坂本会長など関係者から「悪徳」のフレーズが2度3度飛びだしたように、リフォーム=悪徳というイメージが人口に膾炙している。だからこそ協会の名称にわざわざ「ステキ」(すてきナイスグループ)と「信頼」の2文字を入れたのだろう。とにかく玉石混交の業界だ。
そこで、「どうしたら〝素敵〟も〝信頼〟もとれる業界になるのか」と質問した。坂本会長は「地道な活動を継続していくほかない」と答えた。また、事務局は「住宅リフォーム事業者団体登録業者であることを示すロゴマークも現状では普及していない」と話した。
この、住宅リフォーム事業者団体登録制度は消費者が安心して事業者を選べる環境を整えるために国土交通省が平成26年からスタートさせた。これまで登録された団体は9団体で、事業者の数は「1万あるかないか」(住宅リフォーム推進協議会)のようだ。リフォーム業者は数万社あるともいわれているが、実態についてはどこも把握していない。
この玉石混交の世界に同協会が一石を投じるわけだ。記者も「継続して頑張ってください」としか言いようがない。
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写真は、本数は同じでも筋交いのバランスがいいのと悪いのとでは震災時にどれくらいの揺れの差が出るかを体験できる装置だ。左は住宅の南側の開口部を確保するために筋交いをなくし、北側に集中的に配した模型で、右はバランスよく配したものだ。
関係者によると、新耐震基準になってからも平成12年度までは、筋交いの本数の基準はあったが位置の指定はなかったという。新耐震基準でも耐震性に問題はないとは言えない-初めてこんな恐ろしいことを聞いた。
筋交い1本でこんなに揺れ方に差が出る
平成27年度のリフォームの契約金額は平均626万円 リ推協が調査(2016/3/25)
一押しは隈研吾氏設計の「くろぎ」 上野御徒町「シタマチ、フロント」11/4 街開き
「上野フロンティアタワー」完成予想図
J.フロント リテイリング、大丸松坂屋百貨店、パルコ、TOHOシネマズの4社は11月4日(土)、大丸松坂屋が所有する周辺店舗などの総称として「シタマチ、フロント」を採用し、上野御徒町エリアの新たなランドマークとなる複合商業施設「上野フロンティアタワー」と「松坂屋上野店本館」リニューアルエリアをオープンする。10月31日、開業に先立ってプレス内覧会を行った。
「上野フロンティアタワー」は、松坂屋上野本店に隣接する23階建て延べ床面積約41,000㎡。設計は三菱地所設計、施工は竹中工務店。事業主は大丸松坂屋百貨店。地下1階が松坂屋、1階から6階がパルコ「PARCO_ya(パルコヤ)」、7階から10階がTOHOシネマズ上野12階から22階がオフィス。
「松坂屋上野店本館」も大幅にリニューアルして新たな文化やライフスタイルを創造し、活力を呼び込むという。
大丸と松坂屋ホールディングスの共同持株会社J.フロント リテイリングの担当者は、①隣接の駐車場の容積を活用するなど資産の有効活用②〝脱百貨店〟ともいえる不動産賃貸事業③異分子結合-3点が開発のポイントなどと話した。
お客さんを店先まで案内するロボット「Siriusubot(シリウスボット)」
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商業施設のことはよくわからないので早々に引き上げたが、一押しは建築家の隈研吾氏が設計したPARCO_ya」1階の「厨otona くろぎ」だ。東京でも予約を取るのが困難と言われる日本料理店「くろぎ」の新業態で、和スイート&Barの店だ。
暗い照明のなか、微小なしぶきのようなものがちりばめられた黒い壁が全面に張られ、黒いオーロラのようなすだれが間仕切りとして採用されていた。
店のスタッフに問い合わせたら、壁は特注品の「落水和紙」で、しぶきは波紋を現しているそうだ。すだれはフェイクでなく本物の竹を採用しているとのことだった。酒は安くもなく高くもない。焼酎は「百年の孤独」「獺祭」が1,000円。圧倒的な人気を呼ぶのではないか。
店の人と話していたら、「くろぎ」は東大本郷キャンパス内のダイワユビキタス学術研究館にもあるとのことだった。それで思い出した。2014年、「ダイワユビキタス学術研究館」の完成を祝うイベントを取材した際、この「くろぎ」で850円も払ってコーヒーを飲んだことを。もちろんそれだけの価値があると思ったが。
記者を含め報道陣がたくさん見入ったのは、パルコと日本ユニシスが共同で開発した客を案内するロボット「Siriusubot(シリウスボット)」。6階の飲食フロアに配置されており、日本語、英語の呼びかけに応え、店舗まで誘導する。記者が「一番おいしい店はどこですか」と聞いたが、そのような質問には答えないそうだ。
以上、「厨otona くろぎ」
応募作2万点超 木住協 第20回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクール表彰式
第20回「木の家・こんな家に住みたい!!」作文コンクール表彰式(すまい・るホールで)
日本木造住宅産業協議会(木住協)は10月28日、小学生を対象にした第20回「木の家・こんな家に住みたい!!」作文コンクール表彰式を行った。各省大臣賞など18作品や木住協各ブロック賞の合計30作品が入賞。それぞれ賞状と副賞が手渡された。
コンクールは、国土交通省・文部科学省・農林水産省・環境省・住宅金融支援機構・朝日小学生新聞社の後援を得て行われているもので、今回は過去最多となる海外6か国7校を含め国内外から1,733校の応募があり、応募総数も6年連続の2万点を超える22,778点に上った。
冒頭にあいさつした木住協会長・市川晃氏(住友林業社長)は、「審査員の方々は素晴らしい作品ばかりで選ぶのが大変だったと仰った。私も読ませていただいたが、情景が目に浮かんだり、やさしい気持ちがよく表現されていたり、わくわくさせられたりして、とてもうれしい気持ちになりました。私たちは美しい自然や環境を未来に残す責任があります。来年のコンクールはもっと成長させる。楽しみにしてください」などと話した。
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それにしても2万点超の数字がすごい。1点を400字原稿用紙2枚として4万枚超。小説に例えると、世界最長とされる900万文字のマルセル・プルースト「失われた時を求めて」、わが国最長の原稿用紙13,000枚の中里介山「大菩薩峠」をはるかに超える。積み上げると高さは2mくらいに達するはずだ。それを一つひとつ読まれた関係者には頭が下がるばかりだ。
世の中にはこの木住協の応募数を超える作文コンクールがいくつもあるというから驚きだ。それなのにわが国のノーベル文学賞受賞者は川端康成と大江健三郎氏しかいない。ハルキストは歯ぎしりしているが、日本生まれのイギリス人、カズオ・イシグロ氏に先を越されてしまった。
そこで木住協にお願いしたい。過去20年間を振り返って子どもの作文力は高まったのか退行したのか、木造住宅は進化したのか後退したのか、各分野の専門家を集めてぜひ検証していただきたい。
市川氏
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耳が遠くなったせいもあり、壇上で読まれた8人の子どもの入賞作文は聞き取れなかったものもあったが(以前はプロジェクターで紹介されたこともあった)、気が付いたことをいくつか。
一つは、祖父母の木造住宅をテーマにしているものが多かったということだ。募集条件が「夏休み期間中の自由課題」なのでこれはこれで納得するのだが、逆に考えればいまの子どもたちが住む住宅は美しくないのか、木の香りがしないのか。木住協を含めたメーカー、工務店は考えないといけない。経済性優先のケミカル製品だらけの住宅を造っていないか。
このことと関連するのだが、もう一つは、子どもたちが〝このように書けばほめられる、入賞できる〟と先生や主催者の意図を忖度してテクニックに走りすぎてはいないかということだ。朗読された作品は、会話文を巧みに挿入し、メタファー(暗喩)の技法をうまく取り入れているが、あまりにも美しすぎてその背後に〝大人の企み〟〝大人の匂い〟が見え隠れする。コンクールは美文・名文を顕彰する以外にも子どもの鋭い感受性、想像力を引き出すことにあるのではないか。
記者は、小学1年生の圓山義久くんの「ぼくのつくる木のいえはかみ」がもっとも印象に残った。圓山くん、日本には本気で紙の家を普及させようとしている坂茂さんという建築家もいるよ。
もう一つ。紹介された18作品のうち7作品が千葉県市川市の国府台女子学園の生徒さんだったことだ。先にも書いた〝大人の意図〟が感じられないでもないが、みんなしっかりした文章を書いていた。子どもの教育の基本は国語だ。この学校は国語教育に力を入れているのだろうと思った。受賞者の一人に尋ねたところ、書く機会は多いが、学校や親のからの特別の〝指導〟などはないそうだ。
木住協 第19回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクールに応募2万件超(2016/10/31)
プレハブ建築協会 国産材利用拡大へ向け検討会設立
プレハブ建築協会は10月27日、国産材利用に向けた検討会を立ち上げ、今後の取り組みについてまとめ発表した。
立ち上げたのは旭化成ホームズ、積水化学工業、積水ハウス、大成建設ハウジング、大和ハウス工業、トヨタホーム、パナホーム、ミサワホーム、ヤマダ・エスバイエルホームの会員有志による9社で、今年6月と8月の2回の会合を経て今後の取り組みを取りまとめた。
今後の取り組みは、①国産材の価格・質・量を見ながら2×4材、集成材などを中心に国産材利用の拡大を目指す②イニシャルコストの低減に向けて林野庁補助事業の活用を検討③協会内にワーキンググループを立ち上げ、国産材業界との情報交換、連携を行い、利用推進の方策の検討を行う④大学、公的機関、関連団体などと利用技術に関する共同研究を検討する-など。
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国が「10年後の木材自給率50%以上を目指す」と決めたのは2009年12月だった。当時の自給率は26.0%で、10年間に50%まで引き上げるのは絶望的だと思っていたが、昨年、計画を見直し、全体の供給量を当初計画の3,900万㎥から3,200万㎥に引き下げるとともに達成年度を2025年までと5年先送りした。
現状認識、見通しが甘いと言ってしまえばそれまでだが、森林・林業の再生・活性化は喫緊の課題だ。杜甫は「国破れて山河在り」と詠ったが、その逆はない。美しい日本の自然・文化が荒廃し、破壊され、国が栄えるはずはない。そうならないよう、木材自給率50%以上を目指し頑張っていただきたい。
持続可能な街づくり推進 積水ハウスなど 「江古田の杜プロジェクト」説明会
左から篠崎氏、渡邊氏、田中区長、田中氏(総合東京病院 STR東京ホールで)
積水ハウス、医療法人財団健貢会 総合東京病院、都市再生機構の三者からなる江古田三丁目地区まちづくり協議会は10月25日、「江古田の杜プロジェクト」に関するプレス向け説明会を行った。中野区の田中大輔区長も登壇し、プロジェクトに対する期待について話したほか、関係者が持続可能な街づくりの実現に向けたこれまでの取り組みや今後の展開について説明した。
冒頭に登壇した田中区長は、「区は人口密度が練馬区に次いで高く、住居系用途が8割。4m未満の狭あいな道路が多い。区の北東部に位置するエリアは約6㏊の江古田の森公園があり、広域避難場所にも指定されている。また、保健・福祉・医療施設が集積しており、マスタープランでも緑を生かした街づくりを行うようにしている。プロジェクトに対しては、安全・居住都市づくりの観点から、ファミリー向けの良質住宅の供給、防災機能の整備、小児初期緊急診療などの小児医療、高齢者、子育てコミュニティの支援に期待している」などと述べた。
積水ハウス東京特建支店支店長・篠崎浩士氏は、〝コドモイドコロ〟をテーマにコミュニティを育み、ユニバーサルデザインの取り組みに力を入れ、多世代が交流して循環する街づくりとしての日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community)のモデルにしたいなどと話した。
篠崎氏はまた、現在分譲中のプロジェクトの中核をなすマンション「グランドメゾン江古田の森」(全531戸)の進捗について「これまで270戸を供給して250戸が成約済み。順調に進んでいる」ことも明らかにした。
総合東京病院院長・渡邉貞義氏は、平成22年4月に病院の経営を引き継ぐ形で開院したことなどを紹介し、救急医療に力を入れ、病床を451床に増やし、最新の医療機器を導入するなど、地域の中核病院として使命を果たすと語った。
都市再生機構東日本都市再生本部本部長・田中伸和氏は、平成18年7月に都市再生プロジェクトとして決定されて以降、国有地である公務員宿舎とUR都市機構が所有する東雲地区の土地交換によってプロジェクトをスタートさせ、東京ドームとほぼ同じ広さの約4.4㏊の開発を進めてきたことなど経緯を説明した。
野村不 ホテル新ブランド「NOHGA HOTEL(ノーガホテル)」上野に第一号 来秋開業
「NOHGA HOTEL(ノーガホテル)」完成予想図
野村不動産は10月24日、同社グループが商品開発しサービスを提供するホテル新ブランド「NOHGA HOTEL(ノーガホテル)」を立ち上げ、第1号を2018年秋に上野で開業すると発表した。
ホテルが立地する地域に応じたデザインとするほか、地域の職人やデザイナーと連携したオリジナルの家具・備品・アートなどを配置。日本初の黒の江戸切子を開発した「木本硝子」、家紋をコンセプトにデザインする「京源」、インテリア雑貨店「SyuRo」などのデザイン・備品をホテル内に取り入れる。また、宿泊者と地域が深くつながることを目指すため、ホテルスタッフが宿泊ゲストに地域の魅力を積極的に発信する。
総合的なキュレーターとして黒崎輝男氏を、インテリアデザインには南部昌亮氏、大橋規子氏をそれぞれ起用。
物件は、JR上野駅広小路口から徒歩5分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅3番出口から徒歩3分、台東区東上野2丁目に位置する敷地面積966.57㎡、10階建て延べ床面積4,896.40㎡。客室は130室(ダブル・ツイン・スイート他)。建築主はNREG東芝不動産。運営は野村不動産ホテルズ。
「SyuRo」
「京源」
「木本硝子」
エコ・ファースト推進協 第8回「エコとわざ」コンクール 環境大臣賞など30作品
エコ・ファースト推進協議会(議長:和田勇・積水ハウス会長)は10月23日、第8回「エコとわざ」コンクール審査結果発表した。
同コンクールは、環境省の後援、全国小中学校環境教育研究会の協力を得て、7月1日から9月9日まで全国の小中学生から募集し、最優秀作品には「環境大臣賞」(1点)、その他「エコ・ファースト推進協議会」優秀賞、 日本ことわざ文化学会賞(各1点)、各加盟企業賞(27点)の合計30作品が選ばれた。
■最優秀作品賞 環境大臣賞
「ちきゅうのえ あおとみどりで かきたいな」(大阪市立東小路小学校1年 中田理仁さん)
■エコ・ファースト推進協議会優秀賞
「電気消し 名月愛でる エコな夜」(浦安市立日の出中学校2年 竹田真亜さん)
■日本ことわざ文化学会賞
「物心つく前の エコ心」(神戸海星女子学院小学校4年 藤田あまねさん)
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全30作品を読んだ。身びいきかもしれないが、記者が一番好きなのはわが業界の積水ハウス賞に選ばれた東近江市立蒲生西小学校1年 和田昂志郎さんの「じいちゃんの むかしのあそびに エコまなぶ」だ。
東急不動産 渋谷駅西口の再開発 外装デザイン決定
「道玄坂一丁目駅前地区第一種市街地再開発事業」
東急不動産は10月18日、道玄坂一丁目駅前地区市街地再開発組合と共に事業を推進している「道玄坂一丁目駅前地区第一種市街地再開発事業」の外装デザインを決定、商業施設のリーシングを開始すると発表した。
同プロジェクトは、旧東急プラザ渋谷と隣接する街区を一体開発するもので、店舗、事務所、駐車場などからなる地下4階地上18階建て延べ床面積58,970㎡。設計は手塚建築研究所(デザインアーキテクト)、 日建設計(マスターアーキテクト)。設計・施工・監理は清水建設。竣工は2019年秋の予定。
多様な文化が混在する渋谷を表す「小さな物語の集積」をコンセプトに、渋谷駅西口の新たな玄関口を目指す。外装デザインは、街のエネルギーが凝縮された結晶体のような建築を軸として表現している。
三井不&青木茂建築工房 築52年の市場性ない共同住宅をリファイニングで再生
「林マンション リファイニング工事」before-and-after(afterはパース)
三井不動産と青木茂建築工房は10月16日、青木茂建築工房のリファイニング建築手法を活用した、旧耐震の老朽化不動産の再生コンサルティングサービスの第二号案件「林マンション リファイニング工事」の解体現場見学会を行った。関係者など約200名が参加した。
林マンションは昭和41年に建てられた築52年の共同住宅。内外装を一新するとともに、耐震補強をするため耐震改修促進法の認定制度を活用し、確認申請、検査済証を再度取得するリファイニング工事を実施。
見学会で三井不動産レッツ資産活用部・宮田敏雄氏は、「オーナーの方が3年前、当社のセミナーに参加されたのがきっかけ。耐震性に問題があり空き家率は約7割。建て替えると既存建物の半分くらいしか建てられないので、青木氏と連携して今回の手法を採用することになった。工事により戸数は、今のニーズに合わせて40戸から30戸に減らし、賃料については新築の90%に設定。30年の融資も受けられるようにした。ワンストップのソリューションが実現できたのか大きい」と話した。
リファイニング建築は、①躯体以外は全て改修し、内外観ともに新築同等の仕上がり。改修箇所も全て履歴を残す②新築の60~70%の予算③構造上、計画上不要な壁などを撤去し建物を軽くすることで、ブレースを使用しない耐震補強④遵法性の確保。確認申請の再提出、検査済み証の再取得を実施⑤提携金融機関で一定の条件をクリアすれば法定対応年数を超えても融資が可能-などが特徴。
既存建物は、東急大井町線、東急池上線旗の台駅から徒歩10分、都営浅草線馬込駅から徒歩10分、大田区北馬込1丁目に位置する環七通りに面した6階建て延べ床面積約1,049㎡(確認申請当初)。昭和41年竣工の共同住宅兼店舗。既存不適格事項は建築基準法第20条:構造耐力、日影規制、高度地区、容積率。施工は三井不動産リフォームで、2018年3月末に竣工する予定(工期は約8カ月)。竣工後は三井不動産レジデンシャルリースがサブリースを担当する。
見学会では、建築工事として初の中性化対策として実施する亜硫酸リチウム圧入工法も公開された。
亜硫酸リチウム圧入工法
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青木茂氏がただ者でないことを知ったのは2013年の「千駄ヶ谷緑苑ハウス」の解体工事見学会だった。約300名もの見学者が詰めかけ驚嘆した。以来、見学会、講演などで10回くらいはお会いしているだろうか。その都度記事にしているので、「青木茂」と「RBA」で検索していただければ記事は10数本ヒットするはずだ。
建築のことはさっぱりわからないが、リファイニングはリフォームやリノベーションとはまったく次元が異なる、信じられない建築物の再生手法だ。はなはだ失礼だが、青木氏に「建築の魔術師」というあだ名をつけた。
今回の見学会では、1フロアに326本の亜硫酸リチウムを圧入する工事を見てあっけにとられた。工事関係者によると「コンクリートの強度を高めるのではなく、鉄筋の腐食を防ぐ効果がある」工法とのことだ。人間でいえば老化を防ぐ点滴か(内外装、間取りなども一新するから、全体として老いさらばえたおばあちゃんを20歳はともかく30歳くらいに若返りさせるのがリファイニングだ)。
仕事が殺到しているようで、青木氏は「スタッフが足りないのでぜひ応募してください」と茶目っ気も見せた。
青木氏
三井不動産&青木茂建築工房 練馬区のリファイニング見学会に200名(2017/2/27)
日本の残したい環境 一番人気は「里山」 学生とエコ・ファースト企業 対話イベント
積水ハウスのブース
大学生とエコ・ファースト企業との対話イベント「エコ・ファースト サステナブルカフェ2017」が10月14日行われた。学生にとって企業と直接ディスカッションする絶好の機会となり、企業は自社の環境活動が学生の視点でどのように評価されるのかを知る貴重な場であることから企画されたもの。今回が3回目。
参加した企業は、「エコ・ファースト推進協議会」に加入する40社のうち12社、学生は17大学32名。「日本の美しい環境を残すためには?」をテーマに4時間以上、6~7人のグループに分かれラウンドテーブルディスカッションが行なわれ、2050年のわが国の近未来像を描いた。
今回は大学生が主体となって活動するNPO法人エコ・リーグと共催で開催された。大阪でも12月2日に行われる。
戸田建設(左)とアジア航測のブース
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参加した企業はライオン、積水ハウス、電通、戸田建設、アジア航測、大成建設、ワタミ、クボタ、LIXIL、全日空、キリンビール、ブリヂストン(順不同)で、環境省もオブザーバーとして参加した。
企業が学生に環境活動などを説明する懇談会が始まり、記者は緊張した。各企業・環境省の13のブースに用意された椅子は各3脚。1回につき10分、全6回行われた。学生が企業を自由に選べるもので、学生が集まらない企業も出てくるのではないかと不安になった。
嬉しいことにそれは杞憂に終わった。さすが学生さん。閑古鳥が鳴かないよう忖度したのかまんべんなく各企業を訪ねていた。
話の内容を聞こうと各ブースを回った。しかし、総勢70名近くが一度に話すので声が共鳴して、耳が遠くなった記者はほとんど聞き取れなかった。
1つだけ、環境省のブースはよく聞こえた。理由は簡単。年寄りは高音が聞き取りづらくなるので、バリトンの同省担当者の声はよく聞こえたということに過ぎない。同省の活動を完ぺきに伝えたのではないか。
何とか苦労して聞き取れたものを紹介すると、学生の鋭い質問が飛んだのが戸田建設のブース。同社は国内初となる浮体式洋上風力発電設備を実用化、運転を開始し、今後も力を入れることが報じられている。
同社担当者は「風力発電には漁業権などの問題もあるが、設備が漁礁になることも期待したい」と話した。すかさず男子学生は「設備が発する低周波は魚(=人間)への影響はないのか」と質問した。これには記者も絶句した。風力発電は結構だが、情報開示が圧倒的に少ないのも事実だ。
積水ハウスに対しては、「里山や空き家はビジネスになっているのか」の質問があったという。「里山」はともかく、「空き家ビジネス」については同社担当者も返答できなかったのではないか。業界関係者みんな頭を悩ませている。
これら学生さんの鋭い指摘に驚き、安心もした。〝疑ってかかれ〟これが基本だ。この考えを基本にすればわが国の将来は明るい。彼らに未来を託せる。
面白かったのはアジア航測。担当者は「(絶滅危惧種の)サシバはマンション(巣)とレストラン(餌)の近いところを好む」と説明した。なるほど、サシバも人間と一緒〝食住近接〟を好むようだ。
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企業と学生が情報を共有するためのコミュニケーションタイムが最高に面白かった。最初に主催者から提案されたのは「日本の残したい環境」「よくしたい環境」を参加者全員がカードに記すことだった。
出るわ出るわ。ゴミのない街、治安がいい街、美しい里山、歴史的建造物、森林公園、田園風景、観光資源・景観、生物環境、商店街、門前町、井戸端、あぜ道、農作物の自給、離島、竹林、蛍、海岸林、エアコンいらず、光熱費ゼロ、農業・林業の再生、コンパクトシティ、温泉、清流、鎌倉、食品ロス、保育シェア、紅葉、花火…中にはわが業界に痛烈な皮肉を込めた「庭のある家に住みたい」や「日本酒」まであった。
もっとも多かったのは「里山」で10数枚の支持を集めた。これは積水ハウスが事前運動をし、参加者に鼻薬をかがせたのではないかと思ったが、同社広報マンは「いえいえ、そんなことは一切やっておりません」と完全否定した。
これらのキーワードを整理し、最終課題である2050年のわが国の近未来像を描くことが最終課題として示された。
ここで参加者の手が止まり、口が閉じられた。自らが書き出した「エアコンいらず」「農業・林業の再生」「農作物の自給」など困難な課題にどのような解決策を示すかが問われるわけだから、ハタと困るのは当然だ。
豊かさの中に浸りきっているおじさんが多数派のチームは自家撞着に陥り、「このまま進めばマルクス、レーニン、トロツキーの共産主義ではないか」と自嘲気味につぶやいた。
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この難問に果敢に挑戦したチームが2つあった。一つは「不要なものを減らし、循環型社会を目指す分かち合い社会」の実現を導き出した。〝過剰包装が多い〟〝不要なものを減らす(罰則を設ける)〟〝多少の不便は我慢する〟などと具体的な提案を行った。
もう一つのチームは、〝分かち合いの社会〟を実現するために都市計画、日々の暮らし、コミュニティの観点から様々な解決策、提案を行った。〝モノが少なくても満足できるミニマリスト〟〝Fun to Share〟を呼び掛けた。都市計画まで踏み込んだのはさすがだ。
双方に共通していたのは、具体的な問題に言及しており、女性が多数派を占めるか主導権を握っていたことだ。生き方や心の問題まで踏み込んでいた。観念的な言辞が目立った、どちらかといえば男性が中心のチームと対照的だった。
各チームとも目立ったのは、「市民」を中心に据えていることだった。何事につけ〝産官学連携〟は必須要件だと考えるが、ここに市民を加えることもこれからの社会には重要なのだろうと実感させられた。
会場となったキリンビール本社会議室(参加者には飲料水が提供された)
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参加者の「残したい環境」一番人気になった里山について指摘しておきたい。
里山は、積水ハウスが20年近くも前から「5本の樹計画」に力を注ぎ、藻谷浩介・NHK広島取材班「里山資本主義」(角川書店)が2年前、爆発的にヒットした。関心を呼んでいるのは結構なことだ。
記者も里山の再生は喫緊の課題だと思う。しかし、言うは易く行うは難し。全国の里山は危機的な状況にある。電気柵に触れて人間が死亡した事故が報じられたが、里山はサル、イノシシ、シカなどの棲家・楽園と化し、まるで人間が電気柵に保護されているような錯覚に陥る。
彼らが運んでくる山ヒルの恐ろしさは経験しないとわからない。ここでは書かないが、ぜひ古山高麗雄「フーコン戦記」を読んでいただきたい。東南アジアとわが国のヒルは種類が違うだろうが、読むと卒倒しそうな恐怖に襲われる。ついでに丸山健二「田舎暮らしに殺されない法」もどうぞ。
山ヒルだけでない。いま問題になっているマダニ、スズメバチ、マムシなども里山を徘徊している。山頂の風力発電は生態系を狂わせ、低周波は人体への影響も取りざたされている。彼らと共生するのは絵空事と記者は考えている。
さらに言えば、われわれは物質的な豊かさを手に入れるのと引き換えに、生態系を破壊し、都市と農村の格差を増大させ、文化も破壊し、人間性すら狂わそうとしている。そうした一面を考えないといけない。
「不要なものは捨てる」のも結構(記者のような老人は〝不要な〟存在に判定される時代が来ないことを祈るばかりだ)だが、かつての薪炭時代に逆戻りはできない。