積水ハウス 藤井瑛美氏が「建築・住宅技術アイデアコンペ」最優秀賞
積水ハウスは2月27日、建築研究開発コンソーシアム(CBRD)主催の「第11回 建築・住宅技術アイデアコンペ」で同社が提案した「子どもの安全配慮に関する研究」が最優秀賞に選ばれたと発表した。
研究をまとめたのは同社技術部の藤井瑛美氏で、ユニバーサルデザインの視点から、住宅内の子どもの事故防止のためのプラン提案、部材・設備などの提案を行ったのが評価された。
受賞について同社は、「女性ならではの視点も評価されたのでは。2月より『ダイバーシティ推進室』を設け、女性を中心に多様な社員の活躍を目指す中での受賞」とコメントしている。このテーマについて約1年間、社会に還元できる具体的成果を目指して合同研究を行うという。
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同社のユニバーサルデザインの取り組みは業界では抜きんでており全産業を通じてもトップクラスだろうと思う。しかし、藤井氏も指摘しているように、小さなこどもの事故防止については盲点となっているのも確かだろう。記者も風呂場での溺死が相当あるのに驚いた。研究成果の発表を待ちたい。
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同社は2月に「ダイバーシティ推進室」を設置したようだが、記者もこれから「ジェンダー」について勉強しようと思う。
2月15日に行われる予定だった日本学術会議のセミナー「法の世界とジェンダー 司法と立法を変えることはできるのか? 」を楽しみにしていたのだが、大雪で急きょ中止になり参加できなかった。32ページにもわたる資料だけは頂いた。
そこには、報告を行うことになっていたお茶の水大学名誉教授・戒能民江氏の「立法は政治的意思の欠落を隠蔽する。政治的意思の欠落と結合した弱い法律は、法の効果そのものを蝕む」(国連女性に対する暴力特別報告書クマラスワミ)「新しい理論形態は『顔面を殴るこぶしという現実に関与する』」(マッキノン2005)などの鋭い文言・語句が満たされていた。
記者が一番注目したのは、ある大学の履修科目「ジェンダーと法」の最終回授業(15回目)では「男らしさと女らしさ」を論じるとあったことだ。男を自覚するようになって60年、記者はこのテーマの解答が分からない。
それを知りたくて、上野千鶴子氏と角田由紀子氏のそれぞれの近著を買った。同世代の作家、小池真理子氏は「私には両性具有の眼がある」と語ったが、やはり小池氏は素敵な女性だと思う。ミミズやカタツムリを研究するほうが手っ取り早いか。
三井不動産 日本橋の帰宅困難者対応訓練に180人
「帰宅困難者」受付風景
三井不動産は2月27日、今後予想される首都圏直下型東京湾北部地震(M7.3)を想定した帰宅困難者受け入れ訓練をテナントなどとともに日本橋「江戸桜通り地下歩道」で行った。
訓練は昨年4月に施行された帰宅困難者対策条例に基づき中央区の要請により、江戸桜通りの地下歩道での帰宅困難者の受け入れを決定し、ゾーニングから受け入れ態勢の整備、非常用備品の配布など一連の流れを実施した。
中央区のモデル事業としても実施されたもので、参加者は三井不動産の社員、テナント企業、中央区など。スタッフ20名を含む180名が参加した。
訓練開始時の三井不動産スタッフによる説明
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この種の訓練を見学するのは初めてだった。地下歩道は三井不動産など事業者が整備し、管理は区が行うもので、広さは約3,000㎡。帰宅困難者約1,800人を収容可能。非常食やトイレを整備、災害時には約450人が3日間利用可能な水槽を設置している。非常用の自家発電も完備しており、停電時でも3日間電源が確保されている。
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帰宅困難者に扮した若い女性に声をかけたら、「自家発電? 知ってますよ。3日間大丈夫と聞いています」と答えが返ってきた。びっくりしたが、「三井さんの社員でしょ」と聞いたらその通りだった。
帰宅困難者には1人分約1畳分のシート、四角い座布団のような断熱クッション、金銀のアルミシートが配布された。アルミシートはサイズ約210×130で、金色は吸熱、銀色は断熱効果がある。「MADE IN CHINA」だった。
避難場所は禁煙だが、酒については、お巡りさんが「本人の判断に任す」と話した。もちろん参加者は勤務中。酒など飲む人はいなかった。
金銀のアルミシートで体をくるむ参加者「結構あったかいですよ」
災害情報も刻々と伝えられた
「江戸桜通り」の地下歩道
施工会社が決まらなくてもマンション広告は打てるか
建築工事費の上昇、職人不足は深刻の度を増しているが、その影響はマンションの広告にも表れている。施工会社が決まらず、物件概要に「未定」とするものが散見されるようになってきた。そのような「広告」を見るにつけ、デベロッパーの苦悩が伝わってくる。
広告の開始時期の制限を定めた宅地建物取引業法第33条には、「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない」とあるが、この規定には施工会社を明記しなければならないとはなっていない。
つまり、施工会社が決まらなくても広告は打てる。不動産広告の自主規制団体、不動産公正取引協議会では「好ましくはないが違反ではない。施工会社が決まっていないマンションを消費者がどう判断するか」(首都圏)「厳密に言えば違反だが、諸事情があり『予告広告』の段階では未定でも認めている。本広告の段階ではきちんと明記するよう指導している」(近畿地区)としている。
記者はマンションの施工会社も設計・監理会社も極めて重要な選択肢の一つだと思うが、やはり一番重要なのはデベロッパーの姿勢だ。施工がどこであっても、「これが当社のマンション」と自負できるようなブランドを目指すべきだ。
とはいえ、施工会社が分からない(そもそも設計会社も監理会社も管理会社も広告で表示する義務はない)マンションの購入を検討する人はどれくらいいるだろうか。施工や設計、監理、管理がどこであるかも重視されるのが本来の姿であると思う。
福島県最北端の「環境未来都市」新地町 「リタイア」の言葉は死滅するか
新地町のホームページ トップ
北は宮城県山元町に、東は太平洋に接す福島県の最北端の町、相馬郡新地町は人口約8,000人。町のプロフィールには「西部の阿武隈山系からのびる丘陵の間の平地に、市街地や田畑、果樹園が広がり、海は遠浅で澄んだ水と美しい砂浜が続いています」とある。
この「遠浅で澄んだ水と美しい砂浜が続く」町を東日本大震災が襲った。「沿岸部は壊滅的な打撃を受けた」(第一次新地町復興計画)。津波は標高10m 未満の多くの土地に浸水し、浸水面積は町の全面積の5分の1約904haに達し、500 戸を超える住宅が全半壊、JR 常磐線新地駅も全壊した。死者・行方不明者は118人にのぼっている。
町は2012年4月、①命と暮らし最優先のまち②人の絆を育むまち③自然と共生する海のあるまち-の3つを骨子とする復興計画をまとめた。復興計画「『やっぱり新地がいいね』~環境と暮らしの未来(希望)が見えるまち~」は、柏市、横浜市、北九州市などとともに国の「環境未来都市」にも選ばれた。
「環境未来都市」構想は、21世紀の人類共通の課題である環境や超高齢化対応などについて世界に類のない成功事例を創出し、国内外に普及展開することでわが国の持続可能な経済社会を実現するプロジェクトだ。
新地町の計画書では、2050年の将来像を次のように高らかに謳っている。
「木質バイオマスや太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる『エネルギーの地産地消』を達成してきました」「地域の基幹産業である農業や水産業などの一次産業は、豊富な再生可能エネルギーを背景に、最先端の生産・貯蔵技術などを活用し新鮮な食品を供給することで、市場の高い評価と信頼を獲得し、今では国内外に通用するブランドを確立するに至っています」「地域の高齢者には、もはや『リタイア』という言葉はありません」「多様なインフラを介して、多様なコミュニティビジネスが生まれ…人の絆が強くなり、生活の利便性においても、大都市圏に劣らないほど充実しています」
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記者は2050年の新地町が「エネルギーの地産地消」を達成し、一次産業が国内外に通用するブランドを確立し、「リタイア」の言葉は死滅し、「大都市に劣らない」利便性を確保し、そしてこの「成功事例」が全国に波及することを願いたい。
それにしても、この楽観主義はどこから来るのだろう。千葉県柏市の「環境未来都市」計画も未来をバラ色に描いて見せる。「長寿・高齢化社会は手放しで喜ばしいことと歓迎される」(柏市)社会は到来するのか。新地町のように「リタイア」の言葉は本当に死滅するのだろうか。
最近ではベストセラーになった「里山資本主義日本経済は『安心の原理』で動く」(角川oneテーマ21) もそうだ。わが国の「里山」は危機に瀕しているというのに、「マネー資本主義」を補完するサブシステムとして十分機能するという。「国家」もそのうちに死滅するのかと思ってしまう。
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しかし、現実は厳しい。新地村の平成21年度決算報告によると、一般会計の歳入は44億円、歳出は40億円。歳入のうち町税が21億円(48.5%)で、その他の収入などを含めた自主財源額は28億円(65.4%)だ。歳出で多いのは総務費7億円(19.3%)、民生費8億円(20.4%)、土木費5億円(12.6%)、農林水産費4億円(10.6%)などだ。
地方都市では自主財源比率が1割~3割しかないのが常識であることからすれば、当時の新地町の財政は極めて健全といえなくもない。
これが震災によって一変する。平成24年度の歳入は279億円、歳出は263億円。歳入のうち町税は18億円(6.6%)で、繰入金が35億円(12.8%)となっている。国庫支出金は165億円に達した。
21年度と比較すると予算規模は6.3倍に膨れ上がったが、自主財源比率は65.4%から一挙に22.7%までに低下。震災の影響か、人口は震災前より430人、5.1%減少し、町税も実に14%、3億円も減少した。
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この新地町の復興事業の目玉となるのが「新地駅周辺被災市街地復興土地区画整理事業」だ。施行面積は約23.6ha。施行後は道路、公園などの公共用地が約8.2ha(34.4%)で、宅地は約12.5ha(52.9%)、保留地は約3.0ha(12.6%)。減歩率は25.4%。事業期間は平成25年から30年度末まで。総事業費約66億円のうち保留地処分金約4億円を除く61億円はほとんど公費で賄う。
被災前の地区内の人口は約190人で、人口密度は8.0人/ha。地価の平均額は7,700円/㎡だ。区画整理後の人口は約370人、人口密度は16人/haとしている。整理後の地価は11,900円/㎡。
平たく言えば、9.6億円(坪25,000円)の土地を15億円(坪39,000円)の宅地にするために61億円を投じ、人口を約150人増やす計画だ。安心・安全の復興まちづくりは途方もないお金がかかるということだ。これが強くしなやかな「国土強靭化」政策なのか。
同じような土地区画整理事業は被災地の50カ所以上で計画・進行している。
音楽好きにはたまらない 日土地がシェアハウス「シェアリーフ西船橋グレイスノート」公開
「シェアリーフ西船橋グレイスノート」
日本土地建物は2月19日、入居募集を開始した大型シェアハウス「シェアリーフ西船橋グレイスノート」を報道陣向けに公開した。築27年の同社の研修施設をコンバージョンしたもので、バブル仕様を生かした豪華・ハイグレードの共用部分と、入居者同士の豊かなコミュニティの創造を目指した完全防音仕様の音楽スタジオ3室を設置したのが最大の売りだ。
物件は、JR総武本線、武蔵野線、東京メトロ東西線西船橋駅から徒歩12 分、船橋市本郷町に位置する地下1階地上5階建て延べ床面積3,727.27㎡。総戸数は85戸。1戸当たり専用面積は12.80~25.60㎡、賃料は51,000~83,000円(別途共益費18,000円)。保証金50,000円(退去時に3万円償却)。契約形態は1年間の定期建物賃貸借契約。施工は増岡組。
従前建物は1986年に完成。日土地の宿泊施設付きの研修所として利用されていた。
見学会に臨んだ同社執行役員都市開発部長・阿部徹氏は、「当社のシェアハウスは2年前の『千歳烏山』に次ぐ第2弾。その経験と従前の建物の特徴を生かし、業界最高レベルの質を追求した。ハイグレードな共用施設を配し、音楽をコミュニケーションツールとして仕掛けたのが特徴」と話した。
地下の音楽室(従前は機械室)
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音楽はまったく分からない記者でも、音楽好きにはたまらない施設だろうということは容易に想像できる。3室のうちもっとも大きいスタジオは本格的なバンド練習ができるよう50万円もするトラムゼットが置かれており、壁には音楽を聴くのに最適な環境をつくる有孔ボードが貼られていた。同様の楽器類を備えた時間貸し施設を利用する場合、1時間2,000円くらいするそうだ。
共用部分・施設が充実しているのもよく分かる。階段室の廊下幅は約1.4m、内廊下の幅は約1.65mと広く、エントランスホールは壁にアートパネルを施した高さ約7mの2層吹き抜け空間となっており、自然採光のトップライト付きだ。74畳大のリビング・ダイニング、49畳大のキッチン、53畳大の多目的室なども桁違いの広さだ。2階ラウンジには、自分の好きなアーティストのCDや、自己制作したCD等を展示できるキャラクターボードを設置。入居者同士でシェアすることもできるという。
デザイン意匠にも工夫を凝らしている。階段のステップはコンクリートのままなのがいい。外付けのネットやテレビの配線もパンチングされたアルミを使用してデザイン処理されていた。
エントランスホール(左)とリビング・ダイニング
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驚いたのはキッチンだった。独身寮のように賄いの人がいて食べさせてもらえ、後片付けもしてもらえるのかと思ったが、そうではなかった(だから独身寮ではなくてシェアハウスなのだが)。それぞれが自前で作って食べるのだという。最大3合炊ける炊飯器も、炊いた後はご飯を出して、内釜は洗って返すのがルールだという。
つまり、すべて自分でやらないといけないことになっていた。調理に自信がある人はともかく、調理などしたことのない若い女性が衆目監視の中で一人調理する勇気はあるのだろうか。記者も若い独身だったら、若い女性がたくさんいる前でラーメンだって恥ずかしくて作れなかっただろう。米は鍋に蓋をしないと炊けないのを覚えたのは確か24歳のころだ。
しかし、キッチンには素晴らしいカウンターもついていた。コミュニケーションの場となる仕掛けだ。いっそのこと、入居者同士で調理人を雇い、酒を飲みながら談笑できるようにはならないのだろうか。はるかに食費や飲み代が安くなるのではないか。
入居者の平均居住年数は約2年で、退去する理由は結婚とか転勤だそうだ。入居条件に年齢制限はないが、見学者の最年長は40歳代だという。
居室には浴室もトイレもないが、家賃を節約し、その一方で豪華な共用施設を利用したり、入居者同士のコミュニケーションが図ったりできるのがシェアハウスの魅力なのだろうが、居住年数が2年というのは意外だった。
居室(左)と階段室
日土地 〝業界最高水準〟の共用部を備えたシェアハウス第2弾「船橋」(2013/9/17)
これでいいのか 被災地復興土地区画整理事業
「高田」の市街地完成予想図
陸前高田は2カ所で302ha 事業費は桁違いの1200億円
東日本大震災による被災地の復興の有効な手段として防災集団移転促進事業(防集事業)とともに震災復興土地区画整理事業が各地で進められている。復興庁のデータによると、計画されているのは51地区で、このうち48地区で事業化、33地区で造成工事に着手した。
一般的な土地区画整理事業と異なり、①施行地区については市街化調整区域を含むことが可能②宅地と農地を一体的に整備することも可能③市街地のかさ上げ費用を国費で賄う④施行面積や人口密度計画の緩和⑤事業費は復興交付金事業として実施されるため、地方の財政負担は生じない-などが特徴だ。
一つ一つの事業について調べる余裕はないが、事業計画がまとまった陸前高田市について紹介する。
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陸前高田市では、「高田地区」189.8haと「今泉地区」113.0haの合計302.8haが被災市街地復興土地区画整理事業として認可された。道路、公園を整備したうえ、津波被害あったエリアを盛土によって10m前後かさ上げし、公共施設、商業施設、宅地などを配置する。盛土は、山林などを切り崩して宅地にした部分の残土を充てる計画だ。双方で住宅は2,120戸、人口は5,900人を想定している。平成30年度までに工事を終える予定だ。事業費は双方で約1,200億円。ほとんどを国や県の公費で賄う。
これがいかにとてつもない計画であるかを紹介しよう。まず規模。記者が知る限りでは全国の土地区画整理事業で千葉県市原市の組合施行による「国分寺台」約380haが過去最大だ。「国分寺台」は昭和50~60年代にかけて保留地が分譲され、バブルを背景に年間数百戸の建売住宅が飛ぶように売れた。しかし、バブル崩壊の影響は大きく、組合を解散したのは事業認可から30年が経過した平成13年だった。
陸前高田の事業規模は「国分寺台」には及ばないが、双方合わせれば間違いなくトップ10に入るはずだ。その事業費もケタ違いだ。時代が異なるとはいえ「国分寺台」は396億円だし、昭和62年施行の香川県高松市の「太田第2」は約360haで、事業費は640億円だ。陸前高田の「高田」「今泉」はその2倍近くに上る。高台の山を切り崩し、低地をかさ上げするのが費用増の大きな要因のひとつと思われる。
保留地による収入も極めて少ないのも大きな特徴だ。「高田」で3.9億円(0.6%)、「今泉」で3.1億円(5.6%)と合計で7億円だ。一般的に民間(組合)の土地区画整理事業は地価上昇を前提にした事業で、従前の地権者から一定の土地を提供してもらい道路や公園、保留地に当て、保留地を売却することで事業費をねん出する。地権者が土地を提供することを「減歩」といい、土地の価値が高ければ高いほど減歩は少なくて済む。
ところが、被災地はもともと宅地需要が小さい地方都市で地価も安く、震災によって土地の価値が大幅に下落した。100%減歩しても事業費をねん出できるかどうかだろう。広島県福山市郊外の「佐賀田土地区画整理事業(あしな台)」(19.5ha、342区画)団地では減歩率は97%に達した。つまり、元にはほとんど残らないという悲惨な例もある。民間ではとても成り立たない事業だ。被災地復興の土地区画整理の事業費をほとんど国費で賄うのはそのためだ。
ちなみに「高田」の減歩率は36.3%で、事業前単価は59,070円/坪、事業後の想定単価は93,060円/坪、「今泉」の減歩率は57.9%、事業前単価は2,211円/坪、事業後の想定単価は53,130円/坪となっている。「今泉」の減歩率が高いのは想定単価が低いためだが、減歩率が高いと地権者の理解が得られない問題もある。
事業費や事業後の想定単価などから計算すると、1,200億円の費用をかけても宅地・農地の価格は従前の約21億円が約32億円にしかならない。
人口約2万人の陸前高田市の平成24年度の予算規模は、800億円近くの国費が投入されたため前年度比倍増の約1,111億円に膨れ上がった。地方税は約12億円と100分の1くらいしかない。
人口約23万人の東京都港区の平成25年度一般会計予算は1,158億円。特別区民税は549億円。予算の47%を区民税で賄う。
東北の被災地と日本一財政が豊かな港区を比較するのは適当ではないかもしれないが、これでいいのかの疑問はぬぐえない。「復興」の名のもとに是非もなく検証もされずに暴走しているような気がしてならない。土地区画整理事業は民間の事業と異なり走り出したら止まらない。
被災復興区画整理事業、全体で多摩NTしのぐ数千ha 問題も山積(2013/3/25)
積水ハウス 「エネマネハウス2014」で最優秀賞
「CITY ECOX」モデル
積水ハウスは1月13日、先に行われた「エネマネハウス2014」で提案した東京大学との共同事業「ゼロエネルギー化を目指した都市型低層集合住宅のプロトタイプの設計とその実証事業『CITY ECOX』」が最優秀賞を受賞したと発表した。2030年の居住者のライフスタイルに柔軟に対応できる集合住宅というコンセプトが明確な点などが評価された。
「エネマネハウス2014」は、経済産業省資源エネルギー庁事業の一環として実施された事業で、主催はエネマネハウス2014実行委員会(委員長:村上周三建築環境・省エネルギー機構理事長)。
大学が主体となり企業とチームを構成し、「エネルギー」「ライフ」「アジア」をコンセプトに、2030年の家に求められる先進的なZEH技術や、新たな住まい方を取り込んだモデルハウスを建築・展示し、エネルギー・居住環境の測定成果を競い合うコンペティション。事前審査を通過した5大学(慶應義塾大学、芝浦工業大学、千葉大学、東京大学、早稲田大学)が成果を競い合った。
政府は日本のエネルギー事情を反映し、全消費電力の31%を占める家庭部門で、住宅のゼロエネルギー化を推進しており、2020年までに一次エネルギー消費賞が正味(ネット)で概ねゼロとなる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を標準的な新築住宅とすることなどを掲げている。
多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか
「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」(パルテノン多摩小ホールで)
多摩ニュータウン再生シンポジウムに300名
多摩市は2月12日、「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」を開いた。平日の午後にもかかわらず定員の250人を上回る約300人が集まり、関心の高さをうかがわせた。
多摩ニュータウン再生検討会議委員長・上野淳氏(首都大学東京理事)が基調講演「多摩ニュータウンの魅力と今後の展望」を行い、同検討会議委員・西浦定継氏(明星大学教授)が「多摩ニュータウン再生検討会議の検討状況」を報告。諏訪2丁目住宅マンション建替組合理事長・加藤輝雄氏が建て替えの経緯と成功に導いた要因などについて語り、上野氏がコーディネーターを務めたトークセッション「まちの夢を語ろう」には南佳孝・リビタ社長、阿部裕行・多摩市長も参加した。
シンポジウムの冒頭で挨拶した阿部市長は、「昨年7月、入居開始から43年が経過した多摩ニュータウンの今後の方向性や具体的な取組みを行う多摩ニュータウン再生検討会議を設置した。本日が緑豊かで夢のあるまちづくりを進めるキックオフの日にしたい」と語った。
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最初に基調講演を行った上野氏は、「多摩ニュータウンは、豊富な緑と歩車分離のネットワーク、さらには大学の集積など高いポテンシャルを持っている。これをどう生かすか、これからの街づくりの大きなヒントになる。建物の老朽化、入居者の高齢化などは全国共通の課題。住宅と街のバリアを解決し、すでに行われている自立的な先進モデルを広げていくことだ」などと語った。
西浦氏は、「このまま何もしないと50年後には多摩ニュータウンに人口は5万人に半減する。これまでの街づくりの50年を踏まえ、これからの人口減少に対応したスリム化に向けた50年をセットにした100年の街づくりのロードマップを検討会議で完成させる」と話した。
加藤氏は、建て替えの検討が始まってからバブル崩壊、「一団地」の指定解除に10年以上もかかったこと、リーマン・ショックによる打撃などの困難を乗り切って全戸即日完売に導いたのは、「住民が主役」の理念を貫き、専門家や地域との連携を図り、情報の開示を徹底させたことなどが要因と話した。
日野市のURの賃貸「りえんと多摩平」でシェアハウスを運営しているリビタのコンサルティング部コミュニケーションマネージャー・日野孝彦氏は、住民を主役に行政、大学、地域がサポートしていく必要性を強調。若者を呼び込む仕掛けがヒントになるとした。
京王電鉄総合企画本部沿線価値創造部長・都村智史氏は、2012年に部を立ち上げてからこれまでの「生活支援サービス」活動について報告。鉄道事業は2008年の利用者63,700万人をピークに2013年は62,000万人に減少しており、「生産人口の減少に対応するには、街の魅力を双方向メディアで発信したり、子育て支援のマンションや保育事業、さらには移動販売などを行ったりして、われわれが街に入っていくアウトリーチ型サービスを展開していく」と語った。
トークセッション
トークセッションでパネラーの太田誠一氏(東京都都市整備局多摩ニュータウン事業担当部)は、ポテンシャルが高い多摩ニュータウンのブランドを高めていくと語った。
寺門文夫氏(UR都市機構東日本賃貸住宅本部エリアマネージャー)は、計画的な街づくりの魅力を若年層向けにアピールする取り組みや高齢者の住み替え支援も行っていく必要があると語った。
加藤氏は、「親あるいは子世帯が入居するにあたって家族会議が復活した。アンケートを重ねるごとに広い専有面積を希望する人が増え、団地内同居や同じエリアに近居するケースも多い」などと、建て替えにより同居・近居が増加していることを報告した。
南氏は、「多摩ニュータウンを知らない若者が多い。できることからやってみる『場づくり』『場育て』が大事。多摩ニュータウンには人材も揃っている。歯車を回す条件、仕組みを整えれば未来は非常に明るい」とエールを送った。
阿部市長は、「大学はたくさんあるが、学生の居住は少ない。家賃が高いことと単身向けの住宅がないからだ。URは空き家家賃を抑え、スケルトン賃貸などを行い『アートな街』として情報発信してほしい」などと注文した。
左から上野氏、西浦氏、太田氏、寺門氏
左から加藤氏、都村氏、南氏、阿部氏
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これまでの多摩ニュータウン再生検討会議と今回のシンポで課題は出尽くし方向性も見えた。
上野氏をはじめ出席者が異口同音に語った「豊富な緑」「歩車分離」の価値をどうアピールするかが大きなポイントになる。住宅内と街のバリア解消も喫緊の課題だ。建て替えだけでなくリノベーション、シェアハウス、スケルトンなどの選択肢もあることが明らかになった。「多摩ニュータウン」を知らない若者世代に情報を発信する必要性も強調された。
シンポジウムに参加した市内の豊ヶ丘に住む60歳代の女性が「これまで見えなかったものが見えてきた」と感想を語ったように、収穫の多いシンポジウムになったはずだ。上野氏は「もうオールドタウンなどと呼ばせないようにしよう」と締めくくった。
内閣府 女性の活躍「見える化」サイトが提起した問題点
マスコミ各紙が報じたように内閣府は1月31日、企業での女性の活躍を推進していくため、各企業の取り組みの現状を投資家、消費者、就活中の学生などに「見える」ようにする「女性の活躍『見える化』サイト」を公開した。
役員・管理職への女性の登用、産休取得者などに関する情報を業種別に整理して公表した。公表している企業数は上場企業3,552社中1,150社(32.4%)。
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不動産業で公開しているのは115社のうち28社(24.3%)。公開率は全33業種の中でもっとも低いガラス・土石の20.6%、その次の証券・先物取引の23.8%に次ぎ下から3番目だ。
マンションや戸建ての最大のテーマが「子育て」「働くママ」である業界が、自らの会社の女性の活躍の状況を公開しないのは情けない。記者がこれまで取材してきた各社の女性はみんな素晴らしい活躍をしている。これを機会に積極的に公開することを期待したい。
ただ、公開されている「管理職」の定義は、「部下を持つ職務以上の者、部下を持たなくてもそれと同等の地位にある者を指す」とあるのみで、この条件を満たすかどうかの判断は各企業にゆだねられている。いわゆる「名ばかり管理職」の問題については不明だ。
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サイトは、東洋経済新報社が発行する「2014CSR企業総覧」に掲載されている情報に、内閣府が2013年10月~12月に実施した調査の結果を追加したものだ。
記者はこのサイトを記事にしようと思ったが、【留意事項】が事細かに記載されていた。①本データ(内閣府の調査により収集したデータを除く。)の著作権その他の権利は東洋経済新報社に帰属する②本データの利用者は、本データを利用者自身の使用目的以外に利用しないでください③形態の如何、また加工の有無を問わず、本データの一部または全部を第三者に譲渡、転貸、提供しないでください④第三者の利用に供する目的で本データの一部または全部を引用、複製、改変しないでください-などというものだ。「許可を得れば可能」などの記載もない。
つまり、閲覧は自由だが、得た情報は形態の如何を問わず第三者に提供してはならないというのだ。これを破れば当然著作権法などに触れる。
しかし、この留意事項はいかがなものかと思う。サイトを公開する目的は、資本市場にも女性の活躍を促そうというものだ。著作権法でも、広く国民に周知されるべき憲法やその他の法令、国や自治体など公的機関の発する通達などは著作権の対象外としている。
さらに、著作物の引用についても同法では、①公表された著作物は、引用して利用することができる。引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。国や地方公共団体が一般に周知させることを目的として作成し、公表する広報資料、調査統計資料、報告書などは、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない(第32条)③新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない(第39条)-などとしている。
今回公開されたサイトの留意事項と著作権法を照らし合わせると、留意事項に違法性はないものの、サイト公開の主旨や「著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」著作権法の目的にも合致しないのではないか。
よって、「引用」しても問題にはならないはずだが、〝人の…で相撲〟も取りたくないのでサイトにどのようなハウスメーカーや不動産会社が情報を公開しているかについては触れない。
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内閣府のサイトや東洋経済の「CSR総覧」に頼らなくても、女性の活躍を「見える化」しているハウスメーカーや不動産会社は少なくない。
例えば東証「なでしこ銘柄」に住宅・建設業界から唯一選定されている積水ハウス。同社はCSRレポートで2008年から2012年の間に女性の管理職比率は0.56%から1.21%へ増加していることなどを報告している。
「世界で最も持続可能な100社」に選ばれている大和ハウス工業もしかり。同社の2013年度の女性社員は2005年度比1.4倍(2,371人)、主任は2.5倍(325人)、管理職は5.8倍(47人)に増加したと報告している。
住友林業は、わが国ではベネッセ、丸紅、Panasonic、TOTOとともに世界的なSRI 評価会社であるRobecoSAM社のCSR格付けで2年連続して「Gold Class」に選ばれたが、CSRレポートで詳細な社員関連データを報告している。
三井不動産グループも、日本橋の「三井二号館」に事業所内保育所「キッズ スクウェア日本橋」(定員50人)を開業しており、「& EARTH REPORT 2013」で、育児支援、介護支援、ワークライフバランス実現支援などについて報告している。
コスモスイニシアの女性広報担当者からはこんなコメントが届いた。「弊社は元々リクルートグループであったこともあり、性別によって『できる』『できない』の区別をする風土はあまりない会社だと思っております。また、大和ハウスグループは女性の活躍をもっと増やしたいと考えており、今年の1月に大和ハウスグループの女性フォーラムが開催されました」
フォーラムに集まったのはグループの管理職、管理職候補、産休・育休明けで働いている女子社員など合計約160名。樋口会長の訓話や大和ライフネクスト常務取締役・石﨑順子氏の基調講演のほか、女性のパネルディスカッション、分科会などが行われたという。(確かに。同社には仕事の面では性差を感じさせない雰囲気が以前からあった。これが望ましい姿だと思う)
全社員158名(男103名・女55名)うちの3分の1が女性で、課長以上の役職も女性が4分の1、役員が6人のうち2人を占めるフージャースホールディングスは「出産後も復帰して働くワーキングマザーも多く、女性が存分に能力を発揮している会社」とホームページに公表している。
東急不動産ホールディングスグループも東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブルの3社とも公開の準備を進めている。
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内閣府がサイトを公開するにあたっては、丁々発止のやり取りがあったようだ。内閣府の「女性の活躍状況の資本市場における『見える化』に関する検討会」(座長:岩田喜美枝・財団法人21世紀職業財団会長)の最終報告書の冒頭では、「日本の潜在力の最たるものは女性」「女性こそ日本にとって最大の含み資産」と高らかにうたっているが、最後は「有価証券報告書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書では、現在、明示的に女性の活躍に関する情報を記載することを求める項目は設けられていないが、関連する項目の中で女性の活躍に関する情報を自主的に開示している例も見られる」にとどまっている。
議事録でも、資生堂初の女性副社長に就任したことがある岩田氏は「意見のかい離・隔たりが相当あったのは、やはり有価証券報告書、もう一つは、コーポレート・ガバナンスに関する報告書…非常に積極的な御意見を言われる方と、慎重な御意見を言われる方の間の調整が難しいと私は判断いたしました」と、無念さをにじませている。
また、生活経済ジャーナリストの高橋伸子委員は、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書には推奨という言葉がよいのどうか分かりませんけれども、もう書くのが当たり前だという段階になるようなことを期待しておりまして、書けないところはそれなりの理由を書くか、書けるように努力するということが必要なのではないかと思っております」と語っている。
河口真理子委員も、「経団連の久保田委員以外は皆様多分同じ、かなり近い意見なのではと思いつつ、この報告書を全体的に読みますと、前段は非常に盛り上がっていて海外では大変価値があるのだとあるのに、最後の結論のところでいきなりトーンダウンしていて…」と、有価証券報告書などに女性の登用状況などを「記載事項」として盛り込むことに否定的な経団連委員を批判した。
これらの意見に記者も賛成だ。昔から〝地震、かみさん、火事、おやじ〟と言ったではないか。怖いのはおやじよりも〝かみさん〟だ。女性が職場や社会で正当に評価され、やがては今回のようなサイトそのものが存在価値を失う世の中になることを願いたい。
住友林業 RobecoSAM 社のCSR格付けで2年連続「Gold Class」
住友林業は2月6日、世界的なSRI 評価会社であるRobecoSAM社によるCSR格付けで2年連続して「Gold Class」に選ばれるとともに、「Homebuilding Industry(住宅建設部門)」で最も評価が高い企業として「Industry Leader(インダストリーリーダー)」に選定されたと発表した。
RobecoSAM社は、持続可能性に優れた企業を毎年「The Sustainability Yearbook」で公表しており、今年は世界の約3,000 社のうち460 社が「The Sustainability Yearbook 2014」に掲載された。特に優秀な企業を「Gold(金)」「Silver(銀)」「Bronze(銅)」として表彰している。
「Gold Class」に選定された日本企業は同社のほかベネッセ、丸紅、Panasonic、TOTOの各社。