3.11からもうすぐ3年 人口は震災前より2.0%、6万人減少
岩手県田野畑村の今年1月の広報紙「たのはた」表紙
福島県の死者・行方不明者3,461人のうち47%が「関連死」
死者15,883人、行方不明者2,643人、住宅の全・半壊399,548棟の被害(平成25年12月10日現在)を出した平成23年3月11日の東日本大震災からもうすぐ3年だ。マスコミは連日復興の模様を伝えているが、記者も少しでも役に立てればと、ほとんどがホームページから拾ったものだが、復興の状況を調べた。まずは人口動態から。
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別表は東日本大震災が襲った東北3県と茨城県の北茨城市と高萩市の震災前と現在の人口を調べたものだ。
震災前の人口は約260万人で、直近の人口は約254万人。減少率は2.0%だ。この減少率をどう見るかだ。復興庁は「被災3県の人口は、減少傾向にあるもののその度合いは鈍化しており、社会増減率は、沿岸市町村においても震災前の水準に戻りつつある」(復興庁ホームページ)としているが、果たしてそうか。
各市町村の人口増減を詳しく見ると、とても「震災前の水準に戻りつつある」などと楽観的な見方はできない。
別表にあるように、震災後、人口が増加しているのは仙台市、名取市、利府町の3市町だ。この3市町を除く沿岸市町村は5.4%も減少している。多数の死者を出した山田町、大槌町、陸前高田市、南三陸町、女川町などは二けたも減っており、女川町は実に25.3%も減少している。
また、254万人はあくまでも住民登録している人の数で、実際に住んでいる人の数ではない。現在でも全国に約27万人いる避難者が住民票をそのままにして、他のエリアに住んでいるケースも相当数に上るはずだ。福島原発による「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に指定されている南相馬市、浪江町、双葉町、大舘村、楢葉町などは今後どうなるのか皆目見当もつかない。
復興庁などが調査した浪江町の住民意向調査では、回答した約6,000世帯のうち37%の人は「現時点で戻らない」と回答している。避難指示が解除された広野町でも実際に戻ったのは全世帯の35%にあたる686世帯だ。昨年の9月では実際に住んでいるのは10分の1と言われたように「確実に戻ってきている」(広野町役場)のは確かだが、復興には程遠い。岩手県や宮城県の避難者がどのような意向であるかは不明だ。避難者に対する生活支援はエンドレスではない。
東北3県は内陸部の過疎の問題もある。震災前の3県の人口は約571万人だったのが、現在は約557万人で、2.4%減少している。沿岸の人口減少率より大きい。震災復興と内陸部の活性化という二つの大きな課題を抱えている。
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数字を眺めていると、その裏に隠されたものがあぶりだされてくる。見えないものが見えてくる。
その一つが関連死認定の数だ。関連死も含む死者・行方不明者の数は21,139人だが、関連死は東北3県で2,948人にも達している。
岩手県では5,106人の死者のうち8.5%にあたる434人(内陸31人含む)が関連死による死亡と認定されている。大きな被害を受けた釜石市では、死者988人のうち100人(10.1%)が関連死認定を受けている。
一方、宮城県では、死者10,471人のうち関連死は8.4%の879人だ。岩手県と比率的には同じだが、市町村によってかなり差がある。例えば仙台市では908人のうち関連死は27.9%(253人)に上るのに対し、3,518人の死者を出した石巻市の関連死は7.1%で、他の市町村も数パーセントにとどまっている。
興味深いのは福島県だ。同県の震災による死者・行方不明者は3,461人(内陸部含む)で、このうち47.2%に当たる1,635人が関連死だ。福島原発に近い浪江町は499人の死者のうち63.5%の317人が、南相馬市は40.8%、太平洋に面していない飯館村は43人のうち42人が、葛尾村は25人すべてがそれぞれ関連死として認定されている。
関連死について復興庁は次のような報告を行っている。「マスコミは、まるで『心のケア』なる明確なものが存在し、それを行えば様々な被災者の心の問題が解決すると報道する傾向にある。しかし本来は、地域経済・職業・健康状態の改善等、いわゆる生活再建を通して、はじめて被災者の心の健康が回復していくものである。生活不安が解消しない状態では、心のケアは万能ではないことを知るべき」と。
この報告通りだとすれば、太平洋岸に住む人の圧倒的多数は「不安が解消」されていないのではないか。特に福島原発エリアの住民の不安は少なくとも向こう数十年間、あるいはもっと長期間にわたって続くはずで、ヒロシマ・ナガサキのように「関連死」はまだまだ増えるのだろうか。
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各市町村のホームページのスローガンは創意工夫を凝らしているようだ。キーワードは「絆」「こころ」「みんな」「うみ」「ひと」「元気」「希望」「笑顔」「復興」「一丸」「キラリ」「未来」などだ。
記者が惹かれたのは「海と生きる」(気仙沼市)「ともに前へ仙台」(仙台市)「東北に春を告げる町」(広野町)などだ。「海と生きる」は、プロレタリア文学の傑作と言われる葉山嘉樹の「海に生くる人々」(岩波文庫)を連想させるし、「ともに前へ」は、強い意志が込められている。「東北に春を告げる町」とは、真っ先に春めく町なのだろうか。
その一方で、浪江町の馬場有町長が昨年の9月17日付で「東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故から2年半が経ちました。この間は、皆さまには故郷を離れて悲しみ・怒り・悔しさが溢れる途方もない苦悩の日々であることを考えますと、胸が締め付けられる思いです」とメッセージを発している。町長はその後メッセージを更新していない。
広報紙は全部見たわけではないが、岩手県田野畑村の今年1月号の表紙が目に留まった。若い夫婦が親子と思われる馬とともに緑一色の牧草地を背景に映っている写真だ。タイトルには「馬いこといく1年に」とある。悲惨な写真よりもいいと思い、田野畑村の広報担当者の了解を得て掲載した。ご夫婦の方も了承してくださったとのこと、「東北の山にも里にも野にも 春よ来い」-この強い願いを込めてお礼の言葉に代えさせていただきます。
次は被災地復興土地区画整理事業について紹介します。
木造建築の可能性拡大へ大きな一歩 国交省が建基法改正へ
社会資本整備審議会建築分科会 建築基準制度部会
木造建築の可能性拡大へ大きな第一歩-国土交通省は2月3日、木造建築物の今後の建築基準制度のあり方について検討してきた社会資本整備審議会建築分科会・建築基準制度部会の「木造建築関連基準等の合理化及び効率的かつ実効性ある建築確認制度等の構築に向けて」(第二次報告)をまとめ発表した。
報告では、3,000㎡以上の木造建築物は主要構造部を耐火構造とすることが義務付けられており、3階建ての学校などは耐火建築としなければならない点について「新技術の導入の円滑化や設計の自由度向上のため、これらの基準について性能規定化を図り、要求する性能及び性能を満たす一般的な構造方法等を明確に示す必要がある」とし、「延焼を防止できる性能を有する防火壁等で有効に区画した場合には、耐火構造以外の木造建築物であっても床面積3,000㎡を超えて建築することが可能となるよう規制を見直し、防火壁等の区画に求められる性能及び一般的な構造方法等を定める必要がある」としている。
また、「3階建ての学校等についても木造の準耐火建築物とすることが可能となるよう規制を見直し、主要構造部等に求められる性能及び一般的な構造方法等を定める必要がある」としている。
確認検査制度については、構造計算適合性判定(適判)の対象の合理化・質の確保、確認手続きや型式適合認定手続きの合理化、昇降機等の維持保全の徹底などを求めている。
さらに、「現行の技術的基準に適合しない新たな構造方法等について、必要な性能を有する場合には国土交通大臣が認定を行い、実用化を可能とする仕組みを検討すべきである」としている。
井上俊之住宅局長は、「旧建基法38条の復活など長年の懸案・宿題に答えていただいた。ほっとしている。報告は手続きを経て答申としてまとめ、今国会に法案を提出する」と語った。
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「木造建築の可能性拡大へ大きな第一歩」と書いたが、間違いでないと思う。国は平成22年、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を定め、木造建築の拡大を図っているが、耐火・準防火の規制の壁に阻まれ遅々として進んでいない。小規模のトイレや倉庫ばかりだ。
最近脚光を浴びているCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)を採用した住宅を「エネマネハウス2014」で見学したが、現在の建基法ではまず大規模建築は不可だ。
今回の報告は、木造の大規模建築や中層ビル・マンションへの道を開くものだ。今回の報告について、CLTを推進している銘建工業の中島浩一郎社長にコメントを取ろうと電話したが、今週いっぱいは海外出張とのことでコメントは取れなかったが、井上住宅局長の「10年来の、20年来の懸案に答えを出した」という言葉がその可能性を雄弁に語っている。
しかし、まだまだ問題はある。会合で久保哲夫・分科会長は「建基法ができて60年が経過する。高齢化が進んでいる。抜本的な見直しが必要」と述べた。これに応え、井上住宅局長は「山に例えれば富士山とエベレストくらい。これから越えなければならない課題は多い」と話した。
厳しすぎる耐火・準防火基準を含め建基法の抜本的改正を行うべきだ。
「エネマネハウス2014」 記者の評価№1は東大 早大は? (2014/1/30)
公共建築物の木造化 24年度は100戸のマンション1棟分(2013/11/09)
平成25年の住宅着工 前年比11%増の98万戸 首都圏マンションは6.8万戸
国土交通省は平成25年の新設住宅着工戸数をまとめた。総戸数は980,025戸となり、前年比11.0%、4年連続の増加となった。内訳は持家が354,772戸(前年比13.9%増、4年連続の増加)、貸家が356,263戸(同11.8%増、2年連続の増加)、分譲住宅が263,931戸(同6.9%増、4年連続の増加)。分譲の内訳はマンションが127,599戸(同3.6%増、4年連続の増加)、一戸建住宅が134,888戸(同10.0%増、4年連続の増加)。
建築工法別ではプレハブが146,402戸(同10.7%増)、ツーバイフォーが120,111戸(同11.7%増)。
首都圏マンションは68,047戸(同3.5%減)で、内訳は東京都が41,995戸(同6.9%減)、神奈川県が15,627戸(同37.7%増)、埼玉県が6,511戸(同6.3%減)、千葉県が3,914戸(同45.0%減)。
玄関に土間空間 窓はすべてインナーサッシ採用 横浜市「エコリノベ」見学会
工事中の現場(「藤和シティホームズ桜木町」で)
横浜市「既存住宅のエコリノベーション事業」現場見学会
横浜市とナイスは2月1日、「既存住宅のエコリノベーション事業」の最優秀賞に選ばれた2件のうちの一つである分譲マンションの施工現場見学会を行なった。50人を超える見学者が訪れた。
同事業は、既存住宅を建て替えずに環境性能や利便性を高めることで生活様式や家族構成の変化に合わせた民間のリノベーション事業の普及と活性化を狙いとしたもので、公募選定委員会(委員長:岩村和夫東京都市大学教授)の審査を経て戸建てとマンションの2件が「最優秀賞」として選定された。マンションは断熱、日射遮蔽、通風などの工夫に加え、土間空間やHEMSの活用などで高齢者の入居にも対応できるソフトの提案が評価された。
公開されたマンションは、横浜市営地下鉄高島町駅から徒歩1分、横浜市西区に位置する平成13年2月に建設された11階建て「藤和シティホームズ桜木町」の1室。専有面積は約51㎡。設計を担当したのはナイス。
テーマは「『ライフスタイル』はアクティブに!『住まい方スタイル』はパッシブに!」。アクティブデザインでは厳寒に多目的に利用できる5畳大の土間空間を設置し、再流通にも対応できるよう遮音性に工夫を凝らしている。省エネについては高効率給湯器、六面断熱、インナーサッシなどを採用。自然の力を取り込む手法としては、グリーンカーテン、珪藻土、調湿機能付きのナグリ仕上げのスギパネル、フローリングを採用。施工費は約700万円。工事費の3分の1、または最大200万円が補助される。所有者の横浜地所は賃借する予定だという。
見学会に出席した横浜市建築局住宅部住宅計画課長・黒田浩氏は、「横浜市は平成23年に『環境未来都市・横浜』として国から選定され様々なプロジェクトに 取り組んでいるが、家庭部門の温室効果ガスの排出量を減らすのも大きな課題の一つ。今回の事業はエコの機能だけでなく利便性の向上を図るもので、結果を検 証して今後の事業に生かしたい」と語った。
黒田氏(左)と高瀬氏
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従前は直床・直天だったのを二重床・二重天井にしたため、天井高は2475ミリから2310ミリ前後になっているが、レベルの高いリノベーションマンションだ。
特筆できるのは開口部のサッシの断熱性を飛躍的に高めたことだ。開口部の断熱性を計るモノサシとして熱還流率(U値、数値が低いほど性能が高い)が採用されているが、既存のアルミサッシ単板ガラスでは6.51のU値しかないものをインナーサッシとウィンドウフィルムを採用することで次世代省エネ基準2.33以下に抑えている。
サッシは共用部分であるため、性能の高いサッシに取り替えるには管理組合の承認が必要だが、今回は専有部分の改修であるたる組合の承認なしで施工できたという。施工を担当したナイス事業開発本部部長・高瀬裕司氏は「インナーサッシを採用するケースは結構ある」と話した。
もう一つは土間空間の提案だ。この種の提案は最近のマンションにも採用されているが、自らの趣味はもちろん、入居者や地域住民との交流を促す仕掛けとして有効だと思う。
「藤和シティホームズ桜木町」
「エネマネハウス2014」最優秀賞は東大 ファン投票1位は芝浦工大
「エネマネハウス2014」の最優秀賞に東大チーム-「エネルギー」「ライフ」「アジア」の3つのコンセプトに基づき2030年の先進的な技術や新たな住まい方を競う「エネマネハウス2014」の最優秀賞は東京大学のモデルハウスが受賞した。来場者による得票数では芝浦工大チームがトップとなった。
モデルハウスは東大、芝浦工大のほか慶大、千葉大、早稲田大の各チームによる5棟。最優秀賞は審査員による評点200点と省エネの測定結果による評点100点の合計300点で争われた。評点は公表されない。来場者アンケートは「住みたい家」を選ぶもので、総合評価300点の点数には含まれない。
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別掲のように記者も総合評価点を予想したので、東大チームが優勝したのにはほっとした。建築コストは評価要件に入っていないようだが、5棟の中でもっとも安かったのは東大チームではないかと思う。他は坪200万円くらいかけていた。コストを意識しないのはいかにも学生さんらしい。これもまたいい。
芝浦工大が〝ファン投票〟でトップとなったのはやや意外だが、豊洲にキャンパスがあり、学生さんの組織票があったのではないか。西武ファンの記者にとっては伊原監督が芝浦工大卒なので、なにやら優勝を予感させるようでとてもうれしい。
ピンクの外観を酷評した早大だが、あのとてつもない大発見をした早大卒の小保方晴子さんも研究所の壁をピンク一色に染めたそうだ。これは単なる偶然か。しかし、「つらいときも泣いた夜も、今日一日、明日一日だけ頑張」っても、ピンクの外観は少なくともわが国では受け入れられないし、成功しないことを早大チームの学生諸君は覚悟すべきだ。記者の今を見れば一目瞭然だ。数十年前、記者の女房はトイレットペーパーまでピンクに染めた。
「エネマネハウス2014」 記者の評価№1は東大 早大は?
「エネマネハウス2014」モデルハウス 「慶応型共進化住宅」
東京ビッグサイト東雲臨時駐車場で1月31日まで公開されている「エネマネハウス2014」モデルハウス〝2030年の家〟を見学した。経済産業省資源エネルギー庁の事業のひとつとして行われているもので、「エネルギー」「ライフ」「アジア」の3つのコンセプトに基づき先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウス5棟が展示されている。
大きなテーマとなっているのは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」。ZEHとは、省エネに加え、太陽光発電などにより住宅の年間のエネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅のこと。
ZEHが広く国内だけでなくアジアなどの海外に普及させていくためには省エネの観点だけでなく、快適性や気候、風土にあった住まい方が重要なポイントであることから、ZEHが備えるべき要件や評価方法を標準化するために今回の開催となった。
展示されているのは、「慶応型共進化住宅」(慶応大学/OMソーラー・銘建工業・長谷萬など27社)、「母の家2030 -呼吸する屋根・環境シェルターによるシェア型住宅スタイル-」(芝浦工大/パナソニック、銘建工業など14社)、「自然エネルギーを活用した持続可能なブラスエネルギー住宅『ルネ・ハウス』」(千葉大/JKホールディングスなど35社)、「CITY ECOX 2030年における都市型住宅のZEHプロトタイプ」(東大/積水ハウスなど17社)、「Nobi-Nobi HOUSE」(早稲田大/旭化成ホームズなど9社)。
31日に審査員により提案内容の有望性・実現性・完成度などが評価され、結果が公表される。審査委員長は村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構理事長)で、審査委員は赤池学氏(ユニバーサルデザイン総合研究所所長)、柏木孝夫氏(東京工大教授)、木場弘子氏(キャスター・千葉大客員教授)、隈研吾氏(建築家・東大教授)、武田史子氏(ベネッセコーポレーション「サンキュ!」編集長)、中上英俊氏(住環境計画研究所会長)。
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記者の評点 東大95点 慶大90点 芝浦工大90点 千葉大85点 早大?
採点は省エネなど客観的な測定結果による評価(100点)と審査員による評価(200点)の総合評価(300点)で行われる。来場者アンケートによる評価(住みたい家)は総合評価には加えず、参考情報として得票数1位の事業者が表彰される。以下、各チームの特徴と、デザイン性、居住性、テーマ性に重点を置いた記者の評点(100点)を紹介する。
「慶応型共進化住宅」は、今話題となっている杉集成材(CLT)を用いた純国産材の木造住宅。屋上・壁面緑化により緑化も図っている。CLTはわが国では認定されておらず、まず準防火などの規制がある大都市では建築不可だが、テーマ性、コンセプトがいい。銘建工業の中島浩一郎社長は林業関係者で知らない人はないのだろうが、「里山資本主義」で全国区人気になったのではないか。ルーバーパネルヒーターもいい。断熱材には古新聞を採用しているそうだが、性能、施工性はどうなのか。記者の評価は90点。
慶大「慶応型共進化住宅」
「母の家2030」は、約60名の学生(うち女性約20名)が企画から施工まで行った木造住宅で、そのものずばり「母の家2030」を〝核シェルター〟のように提案しているのが特徴。床・壁・天井をCLTで覆ったもので、クギは1本も採用されていない。広さは2.4×3.6m。キッチンシェルター、水回りシェルターもある。「父」の部屋がないのが難点。金銭的な支援を受ける父の同意をどうして得るかの工夫がない。記者の評点は85点。
芝浦工大「母の家2030」
「ルネ・ハウス」は、〝恒久的に利用できる仮設住宅〟がテーマの一つになっているようで、キッチン、収納などのユニットを自由にレイアウトでき、4層住宅も可能というもの。壁はベニヤ材が用いられていた。説明を聞いたが、4層にしても耐力的に問題ないというのは信じられなかった。〝恒久的〟に仮設を使うコンセプトもよく分からない。スギのチップを断熱材として使用しているのも注目される。素人でも施工できるというから、ホームセンターで売り出せはヒットするかも。評点は80点。千葉大は2012年、スペインで行われた「ソーラー・デカスロン大会でわが国で初めて参加し、参加18チーム中15位に終わった。今年6月にフランスで行われる大会に参加するという。きちんと学習しているのだろうか。
「ルネ・ハウス」
「CITY ECOX」は、鉄骨造の都市型集合住宅を提案しているもの。低層3階建てを想定しており、提案は1スパンを中央のセンターフレックスゾーン(幅5m)と左右のサイドコートゾーンにそれぞれ水回りと居室(幅各2.5m)に分け、フレックスゾーンの北側には多目的に利用できる2×5mの空間を提案しているのが特徴。各住戸に太陽光を追尾する可動式太陽光パネルを設置。透光蓄熱建具を採用することで室内温度を調整できる工夫も施されている。住まい方提案が明確、実現性もある。記者の評点は95点。マイナスはシニア向けに赤と黄のデザインはないと思ったのと、水回り(風呂-トイレ-洗面-キッチンが横並びでオープン)に工夫が足りない点。
「CITY ECOX」
「Nobi-Nobi HOUSE」は、外観がパープルに近いピンク。地区計画や建築協定がなくても物議を醸す住宅だ。地域との親和性が全く考慮されていない〝喧嘩を売る〟住宅だ。その意図が全然わからなかったが、「対象はアジア」と聞いて納得した。アジアの富裕層には受けるかもしれない。内装はシンプルだが豪華。猫脚浴槽付きの浴室はホテル仕様。評価が難しい。〝海外高級リゾート向け〟限定として85点か。
「Nobi-Nobi HOUSE」 写真左は「自宅で使っている」という自然の風を取り込む窓の前に立つ田辺新一教授(メーカーは三協立山アルミ。これはスグレモノ)
三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」
「日本橋室町東地区」
三井不動産は1月29日、中央区日本橋室町で複数の地権者とともに進めている5 街区にわたる大規模複合開発「日本橋室町東地区開発計画」の第2弾となる「室町古河三井ビルディング」と「室町ちばぎん三井ビルディング」を2014 年2 月1 日に竣工すると発表した。同日、菰田正信社長が記者会見し、約15分にわたって「日本橋再生」のコンセプトである「残しながら、甦らせながら、創っていく。」意気込みを語った。
会見後、報道陣に公開された賃貸住宅「パークアクシスプレミア日本橋室町」、「室町ちばぎん三井ビルディング」とも設備仕様は〝億ション〟クラスだ。
「室町古河三井ビルディング」は地下4階、地上22階建て延床面積約62,000㎡。地下1 ~6 階がシネコン含む商業施設「COREDO 室町2」、7~17階が事務所、18~21階が賃貸住宅。統括設計は日本設計。デザインアーキテクトは團紀彦建築設計事務所。施工は清水建設。共同建替え事業者は同社のほか古河機械金属、にんべん、日物、細井化学工業。事務所はアステラス製薬の入居が決まっている。
「室町ちばぎん三井ビルディング」は地下4階、地上17階建て延床面積約29,000㎡。地下1~4 階が「COREDO 室町3」、8~16階が事務所。統括設計、デザインアーキテクトは「室町古河」と同じで、施工は清水建設・錢高組。共同建替え事業者は同社のほか千葉銀行、わかもと製薬、総武、三越伊勢丹、木屋ビルディング。ほぼ満室稼動が決まっている。
会見に臨んだ菰田社長は、「グローバルな都市間競争を勝ち抜くには、街固有の歴史、文化、伝統を活かし、環境と共生した持続可能な街づくりが必要で、『残しながら、甦らせながら、創っていく。』というコンセプトを盛り込んだ。第2ステージを構成する4つのキーワードは『産業創造』『界隈創生』『地域共生』『水都再生』だ」などと語った。首都高速についても触れ、「高速を見直す機運は高まっている。日本橋川の清流を取り戻す取り組みは不可欠。2020年のオリンピックまでには(地下化などの)方向性を示してほしい」と述べた。
「室町古河三井ビルディング」(左)と「室町ちばぎん三井ビルディング」
記者団の質問に答える菰田社長
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会見場に集まった記者は百数十名で関係者を含めると二百数十名。会場はほぼ満席となった。
規模的には海外メディアも多数駆けつけた「ミッドタウン」などには及ばないが、菰田社長自らプレゼンテーションを行い、「技」「心意気」「粋」「歴史」「文化」「江戸」「日本橋」「水」「風」「清流」などの単語が次から次へ飛び出したように、三菱地所が推進する「大・丸・有」や「六本木」とはまた違った街づくりが進められているのがよく分かった。
二つのビルを一言で表するなら「和のエスプリを心憎いまで盛り込んだ、分譲マンションに例えれば億ション仕様」ということだ。
双方のビルには100尺(31m)ラインが施されている。これは「大・丸・有」や同社のこれまでの「日本橋再生」ビルと同じだが、西洋建築に見られる回廊「ロッジア」、細かい細工が施された「淡路瓦」、「金色ルーバー装飾」などは見事というほかない。道行く人々は「上を向いて歩こう」になるはずだ。
共用部分の「和」の演出もケタ違いだ。「室町ちばぎん」のエントランス・地下のホールには億ションにはよく見られる布クロスの「布団張り」が施されていた。桜の花びらをモチーフにした江戸千代紙のグラフィックで演出した光壁や突板のデザイン壁もあった。エレベータには「小津和紙」を張りこんだガラス壁が採用されていた。男子用のトイレも和風で、江戸小紋の型染めに使用されていた伊勢型紙のデザインがサインに採用されていた。
非常時には3,000人が収容できるという「江戸桜地下歩道」は地権者が費用負担した公道となる(管理は中央区と国交省)。
全54室の賃貸「パークアクシスプレミア日本橋室町」がまたいい。見学する前、仕様は賃貸仕様とそれほど変わらなくて、分譲にすれば坪単価は500万円かせいぜい600万円ぐらいと読んでいたが、見学するごとに評価が高まり、最後は坪750万円につりあがった。間違いなく億ション仕様だ。
天井高は最大3m、家具付きモデルもある。ナラ材の突板を用いたナグリ仕上げの空間提案もあった。賃料は「ミッドタウン」と同じくらいの単価の40万~160万円(54~140㎡)。
「金色ルーバー装飾」(左)とオフィスエントランスホール
100尺ライン部分の外観
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菰田社長も強調したが、記者は「日本橋の再生」には日本橋川の再生が欠かせないし、それなくして総仕上げにはならないと思う。わが国だけでなく世界の都市は河口・湾口に立地し、発展してきた。ハドソン川(ニューヨーク)、テムズ川(ロンドン)、セーヌ川(パリ)の水質がどうなのか分からないが、菰田氏も「高速に蓋をされた川が死んでいる」と話した日本橋川を見るにつけ悲しくなる。
ビルはみんな川に背を向けている。先日見学した、鴨川のほとりの「ザ・リッツ・カールトン京都」の客室の半分以上が川に向いていたのと対照的だ。鴨川の川岸から20mは軒高が12m、それ以外は15mの高さ規制があった。
関係者の努力で日本橋川の再生は進んでおり、鯉や鮒が生息できるように改善されたとはいうが、川べりまで下りていきたくなるようにしないといけない。生きている間に、川で遊ぶ子どもや魚を釣る人の姿を見たいものだ。
「パークアクシスプレミア日本橋室町」中庭
モデルルーム(ナグリ仕上げの空間も提案されている)
「室町ちばぎん三井ビルディング」エレベータホール(左)と共用部分
「江戸桜地下歩道」
「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授
「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」で挨拶する阿部市長
第3回多摩ニュータウン再生検討会議
「何もしなければ50年後の多摩ニュータウンの人口は半減する」-1月28日行われた「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」で職務代理者の西浦定継委員(明星大学教授)がこんなショッキングな報告を行った。
「多摩ニュータウンはどこに向かうのか? 」と題するレポートの中で報告したもので、現在の多摩ニュータウン地区に住む人口約10万人(2010年)は、都心志向による夜間人口の減少と、リニアで発展する相模原などへの従業・夜間人口の流失という「ダブルストロー効果」により50年後(2060年)の人口は5万人に減少すると話した。
西浦教授は、「私が勝手に推測したものではなく、様々なデータをもとに客観的にはじき出した数字。そうならないためにもこれまで築いてきた多摩ニュータウンの歴史50年とこれからの50年をセットして100年の街づくりを進めなければならない」と述べた。
具体的に人口減少に歯止めをかけるには、団地建て替えなどの活性策とリニア整備効果・鉄道整備効果・道路ネットワーク整備効果などの広域インフラ整備により現在の10万人を維持できると話した。団地建て替えでは減少を最大2万人食い止めることができるとし、広域インフラ整備効果で最大3万人確保できるとした。
また、検討会議が実施した分譲マンション居住者を対象にした「住環境アンケート」(回答1,206票)について、生活環境、建て替えや修繕、住み替えなどのクロス集計手法を用い、台所・トイレ・浴室など水回りが住宅全体への満足度を左右することを報告した。
冒頭に挨拶した阿部裕行市長は、「この取り組みは全国が注目している。多摩ニュータウンが成功しなければどこも成功しない。適切な再生策を打ち出していただきたい」と語った。
多摩市は2月12日14時~17時、多摩ニュータウンの再生シナリオを共有し、取り組みをアピールするシンポジウムを「パルテノン多摩小ホール」で行う。
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多摩ニュータウンの人口が50年後に半減するというのは多摩ニュータウン居住者だけでなく、都市郊外の大規模ニュータウンに住む居住者や行政にとっても衝撃的な話だろう。西浦教授の話には同感だ。むしろ団地の建て替えは絶望的と思っているので、建て替えによって2万人の居住人口を確保できるかどうかは疑問に思っている。
保留床を確保して、入居者の負担できる範囲内で建て替えができるのは極めて限られたものに限られると思っているからだ。仮に建築費を坪100万円(実際は85万円ぐらいでできるかもしれない)とすると、既存の20坪のマンションを建てるには2,000万円かかる。既存と同じものをもう1戸建てて余った住戸を4,000万円(坪単価200万円)で売ることができれば入居者の負担はゼロになる。地価の高いと都心部などはこれが可能だ。しかし、坪単価200万円で売れるところは多摩ニュータウンでは駅近しかない。
多摩市の建築規制も大きな壁だ。市は団地を建て替えた場合、容積率は150%に抑制する方針を打ち出した。これは保留床の確保を難しくする。既存建物の倍の戸数が建てられるところはそうないはずだ。
「Brillia多摩ニュータウン」が売れたのは、管理組合が粘り強く交渉し「一団地」指定を取っ払い、容積率を確保し、なおかつリーズナブルな価格設定ができたからだ。
広域インフラ整備も同様だ。都市間競争に打ち勝つ戦略は多摩市だけが取り組んでいることではない。多摩市を取り巻く町田市、相模原市、稲城市、日野市、立川市、八王子市などは強豪ぞろいだ。多摩市が勝てる保証などない。「私は市民じゃありません」という西浦教授は他市のいろいろな委員になっており、「みなさん、多摩市はニュータウン再生に懸命に取り組んでいる。うかうかすると負けますよ」くらいは話しているはずだ。つまり、競争を促す、激化させる役割を担っている。(この点でいえば、検討会議の委員長を務める上野淳・首都大学東京副学長は多摩市民で、「私はここに骨を埋める覚悟」とおっしゃっているので多摩市の味方だろうが、どこで寝返るかわかったもんじゃない)
都市間競争は団地間競争にもなる。記者は都市間競争にも団地間競争にも勝たなければならないと考えているが、それでは疲弊するばかりだ。競争を回避するというよりはそれを乗り越える、競争に巻き込まれない、いわば止揚する戦略が必要だと思う。ヒントは、言い古された言葉かもしれないが、「コミュニティ」「絆」だ。この「価値」をどう評価し、さらに進化させるかだ。
西浦教授が採用したクロス集計は大賛成だ。アンケート調査すべてに言えるが、回答者の年代、収入、居住環境によって回答は異なるはずで。「誰が何を考えているか」を具体的に集計しないと意味がない。さらに言えば、アンケートに答えない人(今回の調査の回収率は約30%)はどのように考えているのかを探る方法も編み出してほしい。
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上野委員長は会合の中で、「検討会議は来年度以降も継続する。円卓会議のメンバーには市民やNPOを加えたい」と、市民を巻き込んだ再生の取り組みをする意向を示した。
「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」検討委員
積水ハウス 「ザ・リッツ・カールトン京都」完成 2月7日開業
「ザ・リッツ・カールトン京都」
積水ハウスは1月24日、京都市中京区二条で建築しているマリオットホテルグループの最高級ブランド「ザ・リッツ・カールトン京都」を2月7日に開業すると発表。同日、開業に先駆けて報道陣に公開した。敷地が約6,000㎡で、高さ規制などの制約が多い中で、鴨川に面した立地を巧に利用した最高レベルのホテルであるのは間違いない。
建物は、京都市営地下鉄京都市役所前駅から徒歩3分、京都市中京区鴨川二条大橋畔に位置するRC造(一部SRC造)の地下3階、地上4階建て全134室の規模。敷地面積は約5,937㎡、延床面積約24,682,89㎡。客室面積約45~212㎡(中心は約50㎡)。ルームチャージは65,000円から。建築主は積⽔ハウス。建築構造設備・外装デザインは日建設計、客室・パブリックデザインはレメディオス・デザインスタジオ、レストランデザインはデザインスタジオ・スピン、内装設計はイリア、庭園デザインは野村勘治。
現地は、敷地東側に鴨川が流れる市内の一等地。旧「ホテルフジタ京都」の敷地を3年前、積水ハウスが取得した。用途地域は建ぺい率80%、容積率400%の商業地域だが、高さ規制として川岸より20mまで軒高12m、それ以外15mとなっており、岸辺型美観地区Ⅰ型(屋根形状を勾配屋根にすること)、旧市街地型美観地区(外壁、屋根色などの規制)の規制がある。
建物は古都の歴史を継承するのがコンセプトの一つで、敷地内にあった灯籠、庭石、滝石などは旧ホテルで使用されていたものを再利用している。外観・内装には、日本の伝統的な格子、七宝などの文様、西陣織を多用。アートのコンセプトは「源氏物語」で、主人公光源氏の邸宅「六条院」や「雅」「もののあわれ」「風流」などをモチーフにした80人のアーティストによる394作品が共用部を中心に展開されている。
レストラン&バーは、長さ11mもの輪島塗を施したカウンターがある日本料理の「水暉」、明治の実業家・藤田傳三郎の別邸「夷川邸」をレストランフロアに移築したイタリアンの「ラ・ロカンダ」、360度からアプローチできる巨大なワインセラーがある「ザ・バー」など。このほか、鴨川の流れの音や風を取り込む室内プール付きのスパ、フィットネスジムなどを備える。
客室は50㎡以上が中心で、鴨川が眺められるタイプは半数以上。62㎡以上のスイートは17室。アメニティは「エスパ」。
記者発表会で総支配人の田中雄司氏は、「ザ・リッツ・カールトンは17年前の『大阪』、7年前の『東京』、2年前の『沖縄』に次ぐわが国では4件目、世界で86件目となる。京都への観光客は年間500万人で、そのうち100万人が外国人。外資系のホテルは少なく、独自の『クレド』を生かしてラグジュエリーホテルとして今までとは違った選択肢を提供したい」と語った。
エントランス
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積水ハウスが「ザ・リッツ・カールトン」建設を発表した段階で必ず見学しようと決めていた。同社は日本一のハウスメーカーだが、同時に世界一でもある。世界一の「おもてなし」を提供している「ザ・リッツ・カールトン」とコラボして、古都・京都の一等地でどのようなデザインの建物を建設するのかが最大の関心事だった。
規模などは「東京」の半分ぐらいしかないが、建築設備・外装デザインには日本一の日建設計を、客室・パブリックデザインには世界的なレメディオス・デザインスタジオをそれぞれ起用し、和と洋の調和を図ったホテルだ。「東京」と比べると、よりわが国の伝統的な文化、建築様式を取り入れたものとして記者は評価したい。
圧巻は地階の温水プールだ。窓を開けることにより鴨川の流れの音と風を取り込めるようにしていた。イタリアンもいい。築100年という邸宅をそのまま個室に移築したのは意表をついた演出だが、これぞ「非日常」。外国人にも日本人にも受けるのではないか。和と洋の不思議な空間「ロビー・ラウンジ」や「闇夜の月」をモチーフにした壁のデザインにははっとさせられる。
唯一理解できなかったのが、会席・鮨・天麩羅・鉄板の4つの料理で構成される日本料理レストランだった。全体で200㎡ぐらいあるそうだが、ほとんどオープンになっており、設えは明らかに中華。「アジアンテイスト」なのだろうが、日本人の富裕層に受け入れられるか疑問に思った。仕切りのない大部屋で会席料理や鮨を食べる習慣は富裕層にあるのだろうか。
共用部廊下(左)と布クロスの壁
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「ザ・リッツ・カールトン京都」が最高の器であることは確認できた。地下水を温熱環境に変換する最新技術も導入されている。あとはリッツの「クレド」の実践あるのみだ。エントランスでは和装の「ゲストエスプリジェンヌ」が迎え入れてくれるのも特徴だ。
日本料理(左)とイタリアン個室
スパ・温水プール(左)と客室
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余談だが、記者は外観写真などを撮った後、昼食を取ろうとホテルから1分もしない「がんこ高瀬川二条苑」という和食料理店に入った。店の案内書には「京の人々に古くから親しまれ愛されてきた高瀬川の流れは、豪商角倉了以の別邸跡『がんこ高瀬川二条苑』を通り…」とあった。
取材時間は迫っており、食事もそこそこに店の了解を得て写真を取りまくった。森鴎外の「高瀬舟」もそうだが、澤田ふじ子さんの連作「高瀬川女船歌」に描かれている京の風情が一挙に蘇った。
以前はこの「がんこ高瀬川二条苑」も「ザ・リッツ・カールトン京都」の敷地も同じ地続きだったということを積水ハウスの広報担当者から後で聞いた。「高瀬川の源流」はリッツに負けない庭だ。
「がんこ高瀬川二条苑」の「高瀬川の源流」庭苑
「不動産は買い時」62%「不動産価格は上がる」49% 野村アーバン調査
野村不動産アーバンネットは1月22日、今年1月7日~1月13日に行った不動産情報サイト「ノムコム」(http://www.nomu.com/)の会員を対象とした「住宅購入に関する意識調査(第6回)」の結果をまとめ公表した。
不動産について「買い時」「どちらかといえば買い時」と回答したのは62.4%で、前回調査(2013年7月)の63.3%より0.9ポイント減少。その一方で、「買い時」単独では1.5ポイント増加して17.4%となった。
買い時だと思う理由については、「住宅ローンの金利が低水準」が最も多く55.9%、「今後、物件価格が上がると思われる」が45.8%、「消費税の引き上げが予定されている」が39.7%。
不動産の価格については、「上がると思う」が48.7%と前回調査から3.9ポイント増加。
また、東京五輪開催は「不動産価格を押し上げる効果がある」と68.1%が回答。東京のインフラ整備や再開発計画の中で注目している計画については、1位東京五輪開催に向けた臨海部の大型開発(競技場整備、選手村整備など)、2位成田空港・羽田空港との「都心直結線」計画、3位リニア中央新幹線の整備、という結果となった。
調査対象は「ノムコム」PC会員約16万人で、有効回答は1, 710人。
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記者は、この種の「今が買い時」調査は好きではない。金融商品や投資向けの物件ならともかく、サラリーマンにとってマイホーム取得は「買い時」「買い控え」などと言っていられない人それぞれの事情があるからだ。「狭い」「耐震性が不安」「駅から遠い」「家賃が高い」「子ども部屋がほしい」などは、そこから「脱出」しない限り解決しない。
商品の特性から言っても、株のように「売り」「買い」を頻繁に繰り返せないし、ライフサイクル、ライフスタイルをよく考えて、中長期的な視点で最良の選択をしてほしいと願う。
金利や価格動向によって購入の時期をずらせるノムコム会員はどれぐらいいるのだろうか。逆に「今すぐ買いたい」という人はどれくらいいるのか。対象者を絞ってきめ細かなアンケートをすればものすごく面白い結果が出るはずだ。