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「蔵のある街づくりプロジェクト」 曳家工事中の蔵

 ポラスグループの戸建分譲住宅事業を展開する中央住宅は3月14日、江戸時代に建築されたといわれる商家の蔵を保存・改修し、蔵を核とした住まい手、地域住民、企業が一体となってライフスタイルを提案するコーポラティブ方式の「蔵のある街づくりプロジェクト」を行なうと発表した。曳家作業を報道陣に公開した。

 現地の用途地域は近隣商業地域だが、一戸建てや中層の建築物が中心の住宅街。蔵は油屋を営んでいた商家の4棟あったものの一つ。御影石の土台にそのまま石・木材・土・漆喰塗りの家を載せたもので、重さは、現在の一般的な木造住宅の3倍以上の約90~100トン。「ボンコ」(意味は不明)と呼ばれていたもので、宝蔵として使用されていた。

 記者発表会に臨んだ同社・品川典久社長は、「用地取得したのは昨年の9月。当初は更地にしてすべて分譲戸建てにしようと考えたが、歴史的建造物の蔵を壊すのはあまりにも無神経。地域の方々と協議を重ね、蔵や古材、灯籠なども残してプロジェクトに賛同していただける人に分譲することに決めた。コーポラティブでの分譲は初めてだが、当社の理念である〝より豊かで、楽しく、幸せ〟な住宅づくりに合致するもの」と語った。

 「蔵」の推定築年数は約150年。屋根は瓦葺き、外壁は漆喰塗りの木造2階建て延べ床面積48.96㎡(14.8坪)。

 「蔵のある街づくりプロジェクト」は、東武スカイツリーライン越谷駅から徒歩5分、越谷市越ヶ谷三丁目の近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率200%)に位置する敷地面積644.51㎡。販売予定価格は1億9,800万円(蔵の改修費、曳家工事費含む)。5月末までに購入希望者がない場合は建売住宅にする予定。

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扉の部分(左)と「うだつ」のあった部分(縦長のやや白く見える部分)

◇     ◆   ◇

 記者はこの日の前日(13日)、日本建築学会の公開研究会「もうひとつの居場所(サードプレイス)をどこに持つ? 」を取材した。「サードプレイス」とは、「ファーストプレイス」の自宅、「セカンドプレイス」の職場などの居場所のほかに、緩やかなコミュニティを形成する居場所のことで、同学会がその現状や可能性を探る研究を行なっている。

 研究会では、「コレクティブハウスかんかんの森」の居住者で、企画・運営しているコレクティブハウスの代表取締役・坂元良江氏から話も聞いた。

 コレクティブハウスとコーポラティブハウスは異なるが、居住者が良好なコミュニティを形成する意味では同じだ。連日にわたってこの取り組みを取材できたのはラッキーだった。

 蔵そのものは、田舎の実家にも残っているし、古い街にはまだまだたくさんあるはずだ。しかし、江戸時代に建てられたものとなるとそうないはずだ。曳家工事を担当している創業100年近くの野口組の4代目社長から説明を聞き、当時の建築技術の高さや、火災に備える工夫、豪商の暮らしぶりを学ぶことができた。

 例えば「うだつ(梲)」。われわれは「うだつがあがらない」という諺しか知らないが、「うだつ」とは防火壁のことで、この蔵には高さ5m、幅2mの巨大な「うだつ」があったという。蔵の重さにも驚愕した。野口社長によると、構造はRC造に匹敵するという。土と石(御影石、大谷石など)と木材(スギ、ケヤキがほとんどだそうだ)でRC造と同じ強度の建築物を江戸の職人・大工が造ったというのが嬉しいではないか。土台と柱の間には柱がずれないように、イチョウ形のなまりが使用されていたのにも驚いた。補強材には金具が使われていた。壁の厚さは腰壁部分で45cmもあるという。

 いったい、どうしてこのような頑丈な蔵を建てる必要があったのか。この蔵は、野口社長によると「ボンコ」(意味不明)と呼ばれ、母屋と繋がっていたことや、「宝蔵」として使用されていたことなどから推測すると、きっと売り上げ台帳、金銭などの貸借契約書、衣服などが収納されていたのではないか。

 このほか「米蔵」が2棟、「味噌蔵」が1棟あったというから、かなりの豪商だったのだろう。火災のときは、壁に味噌を塗ったとも言われる。火災に遭っても守るべきものをしっかり守った江戸時代の建築技術と知恵がここにある。

 このプロジェクトにどのような人が参加するのか、蔵はどのように利用するのかを考えるとワクワクする。ポラスはクリーンヒットを放った。このプロジェクトがどのようになっていくのかを見届けたい。

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敷地内にあった石など(左)と蔵に用いられていた金具

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「この鉛が使われていたんです」と説明する野口社長(左)と記者団の質問に答える品川社長(右端)

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蔵の中

カテゴリ: 2014年度

 昨日(3月12日)、日本リージャスから京都の貸事務所オープンのニュースリリースが送られてきた。「モバイル・ワーク」は間違いなく増加するとは考えてはいるが、よく分からない部分もあるので、リリースをほとんど「コピー&ペースト」で紹介する。

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 「多様化する働き方を支援する先進的なワークプレイス・ソリューションプロバイダーの世界最大手企業、リージャス(本社:ルクセンブルク)は、アジア太平洋地域で300番目の節目となるビジネスセンターを、日本の大都市のひとつであり、歴史と観光で全世界的に有名な『京都』の中心部『河原町御池』に開設します」

 「日本におけるリージャスは1998年に、東京に2つのビジネスセンターを開設後、現在では北は札幌から南は福岡まで50拠点以上を運営」「日本の50拠点、世界の100ヵ国1800拠点を超えるネットワークを活用することにより…アジア太平洋地域さらには世界中にビジネス拠点を拡大することが容易に可能」

 「リージャスのグローバル調査では、日本の経営者や経営幹部の68%は、フレキシブル・ワーキングは生産性を大きく向上させると考えています。さらに、調査会社IDCによると、モバイル・ワーキングを実践するビジネスマンは、2015年までに日本の労働人口の65%の総計3,860万人に及ぶと推定され、日本を除くアジア太平洋地域では8億3,800万人に上ると推定されています」

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 記者はずいぶん前、六本木ヒルズにある同社の貸事務所「リージャス六本木」で働く人を取材したことがある。昨年は東急不動産の会員制サテライトオフィス「Business-Airport(ビジネスエアポート)」も見学した。素晴らしい施設だと思った。

 「モバイル・ワーク」は間違いなく増えると思う。ジェンダー研究の第一人者、上野千鶴子氏によれば「フレックスレイバー(柔軟な労働)」は世界的な潮流だというし、上野の近著「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)では次のように書かれている。興味深いので紹介する。

 「問題は誰にとって『フレックスか』? にあります。日本では使用者側が、自分たちのつごうにとって『フレックス』、すなわち使い捨て自由の労働力として、フレックス化を推進してきました。

 他方、労働者にとって『フレックス』であれば、フレックス労働は歓迎されてもよい働き方です。そもそも九時から五時までの『定型的労働』とは、誰が決めたのでしょうか。少子化対策先進国では、定型的労働と子育てとは両立しない、という経験則があります。事実、フレックス労働を採用した社会は、どこも出生率があがっています」

 続けて上野氏は、フレックス労働が不利な働き方にならないよう、「同一労働・同一賃金」や差別的な日本型雇用慣行やルールを改めるべきと主張。目指すべきはユニバーサルデザインと同様、「男女を問わずどんな状態や属性の人にとっても働きやすい『ユニバーサル就労』」だという。

 「モバイル・ワーク」「フレックスレイバー」は、子育て世代にもっとも適した働き方ではないか。これらが定着すれば、もっとマンションは売れる。

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「エネマネハウス2014」成果報告会(建築会館ホール)

 経済産業省資源エネルギー庁の事業の一環として行われた、大学と企業の連携により“2030年の家”をテーマに先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウス「エネマネハウス2014」の成果報告会が先日行われた。記者は他の取材があり、ほとんど終了の場面しか取材できなかったが、以下、各大学担当者が語った今後の課題などについての声を紹介する。

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慶応大学教授・池田靖史氏 心情的には継続してやってほしい。今年は集合住宅、来年は建売り部門とか。チャンスもっとあっていい

芝浦工業大学教授・秋元孝之氏 みんな面白そうにやっていた。民間とのコンソーシアムは商品化、新しいビジネスモデルの開発につながる

千葉大学教授・川瀬貴晴氏 面白いアイデア提案示せた。継続してほしい。参加大学を増やすためにも資金援助が生まれる仕組みを構築すべき。準備する期間が短すぎる

東京大学准教授・前真之氏 (今回の提案は)パッシブ手法だけで、アクティブ手法を盛り込んでいないのが課題。日射がなくても可能性のあるアクティブを開発したい。ドイツとは違う日本ならではの提案できる

早稲田大学教授・田辺新一氏 20年前にハウスジャパンとして、ヘムス、ヘルシーハウスなどの提案をおこなったことがある。今はそのようなプロジェクトがなくなった。日本の住宅の冬は後進国並み。一気に抜くチャンス。電器部門と住建部門の融合がヒント。ネタはたくさんあるが明かせない(笑)

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左から池田氏、秋元氏、川瀬氏

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左から前氏、田辺氏

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 「エネマネハウス2014」は関係者ではすごく盛り上がったイベントだったのだろう。成果報告会の会場となった建築会館ホールはほぼ満席の200人以上が集まった。展示会場の「東雲」の臨時駐車場には数千人の参加者があった模様だ。

 しかし、参加者のほとんどは関係者だろう。せっかく15年も先の未来住宅を提案するのだから一般の方も参加しやすい環境を整えるべきだったと思う。壊すのももったいない。審査委員の住環境計画研究所会長・中上英俊氏が「国交省ももっと力を入れていい」と総括したように、国交省と経産省が共同で実施してもよかったのではないか。

 もう一つは「アジア」のコンセプトがよく分からないことだ。これも中上氏が「漠としすぎ」と語ったように、記者には何のことか分からなかった。アジア向けに住宅を輸出する考えからだろうが、「アジアは一つ」かもしれないが、アジアには寒冷地から赤道直下、砂漠地もある。気候風土、文化も異なる。一括りになどできないはずだ。

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 記者が「『Nobi-Nobi HOUSE』は、外観がパープルに近いピンク。地区計画や建築協定がなくても物議を醸す住宅だ。地域との親和性が全く考慮されていない“喧嘩を売る”住宅」と書いた早稲田大学の学生さんの反論も紹介する。

 企画した学生さんによると、「コンセプト(コアの設備ゾーンを居住ゾーンが囲み、さらにその外をNobi-Nobiゾーンが取り囲む三重構造)を大事にしたもので、衣服のように脱いだり重ね着したりできるようにした。外壁もファッションとして考え、黄色とかグリーンなどと検討した結果、暖色系のピンクになった」とのことだった。

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 記者がいいと思ったCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)を採用した慶大の提案については、記事にもした大日本山林会のシンポ会場で林野庁森林整備部長・本郷浩二氏も速水林業代表・速水亨氏も「CLTは実用化まで3年かかる」と話したので、池田教授に質問をぶつけてみた。

 池田教授は、「コンピュータ解析によって検証することはできるが、お金がかかる。ヨーロッパの技術をそのまま導入することはできない。実験も繰り返さないといけないので、一般の方が採用できるようになるまでには2~3年かかるというのは事実」と語った。

「エネマネハウス2014」 最優秀賞は東大、ファン投票1位は芝浦工大(2014/2/1)

「エネマネハウス2014」 記者の評価ナンバーワンは東大 早大は? (2014/1/30)

 

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 三井不動産リアルティは3月11日、「三井のリハウス赤坂店」を4 月1 日(火)に開設すると発表した。

 東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩1 分、青山通りに面した赤坂見附KITAYAMA ビルの9 階。周辺既存店舗の「麻布店」「青山店」との連携強化、周辺リアルプランセンターとの補完体制強化による相乗効果を高めるのが狙い。

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「青豆ハウス」(手前は区民農園)

 ブルースタジオが設計・監理を担当している賃貸住宅「青豆ハウス」を見学した。木造3階建てのトリブレット住宅で、入居者が共に育む住環境というコンセプトがヒットし、完成前に全8戸の入居者が決まった。

 物件は、東京メトロ有楽町線平和台駅から徒歩10分、練馬区田柄1丁目に位置する木造3階建て全8戸。専用面積は57.60~63.36㎡。月額賃料は159,000円〜174,000円。設計・監理はブルースタジオ。ランドスケープデザインはチームネット・エーピーデザイン。施工はコラム。事業主はメゾン青樹。

 特徴のひとつ、3層トリブレットは機能的ではないので、賃貸であろうと分譲であろうと記者は好きではないが、若い層には人気なのだろう。小さな一粒の豆が大地から芽を出し、空に向かってらせん状に成長していくイメージを具現化したようだ。完成前に全戸契約済みという。

 もう一つの特徴は、国産材や自然石を多用した優しいデザインだ。庭にはピザ窯が設置される予定で、大谷石が敷き詰められていた。建物の外壁は下地に不燃処理を施したうえ、表面にレッドシダー(スギの一種)を貼っているのが印象的だ。外階段や共用部はヒノキの国産材間伐材を多用。室内の床もヒノキ材。キッチン天板などはラワン材。

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階段室

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 階段やエントランスなどの共用部にヒノキの節だらけの岡山産の間伐材が使用されていたのには驚いた。建物ばかりか参拝用の舗道にも節ひとつないヒノキ材を使用している伊勢神宮を見慣れている記者にとってはむしろ感動的だった。

 室内の床はほとんど節目がないヒノキだった。幅が均一ではなかったような気がしたが、これもまたいい。ラワンを面材にしたキッチンもなかなかいい。昔のイメージと異なり、ラワンは高級材だそうだ。

 このような造り手の思想が伝わってくる住宅を見るのはとても楽しい。このような賃貸をデザイナーズ賃貸と呼ぶのだろう。

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2階部分

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「はらくっつい東北」お披露目会(丸ビルで)

 三菱地所グループは3月6日、食の復興支援活動「Rebirth東北フードプロジェクト」第6弾のオリジナル缶詰「はらくっつい東北」2品が完成し、同日から販売すると、丸ビルで行なわれたお披露目会で発表した。

 販売開始された缶詰は「とろとろさんまとフカヒレと大島ゆずの味噌煮(気仙沼)」と「山椒香る金華さばとムール貝とたっぷり野菜のお椀(石巻)」の2品。宮城県の方言で「お腹いっぱい」を意味する「はらくっつい東北」シリーズとして販売する。

 商品化にあたっては、丸の内エリアに店舗を構えるレストランのシェフなどが食に関する提案・発信を行なうプロジェクト「丸の内シェフズクラブ」のメンバー、丸ビル「ミクニマルノウチ」のオーナー・三國清三氏や新丸ビル「恵比寿笹岡」の笹岡隆次氏も企画段階から参画。地元シェフや加工会社などと開発した。

 値段は各450円(税抜き)。丸ビルに出展する店でも販売するほか、三菱地所が運営するオフィスビル入居企業に防災備蓄品として紹介したり、三菱地所レジデンスが分譲するマンションの居住者用サイトで販売したりする。

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「Rebirth東北フードプロジェクト」

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 この日、丸ビル1階で行なわれた「丸の内東北応援フェアオープニング」には主催者として三菱地所・杉山博孝社長と河北新報社・一力雅彦社長が挨拶。

 杉山氏は「当社は仙台でも事業を行なっており、何とかお手伝いできないかと丸の内で食育に取り組んでいることから食に注目し、3年前からスタートさせた。年を経るごとに3.11が忘れられることのないように思いを新たにしていただければ幸い」と語った。一力氏は、「被災地ではまだ26万人を越える人が仮設住宅住まいを余儀なくされている。東北は震災の風化と原発による風評被害という二つの風に悩まされている。このフェアが少しでもこの風を払拭できればと願っている」と話した。

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杉山氏(左)と一力氏

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 酒もそうだが、毎日のようにトマトを食べている記者はフェアでトマトを買って食べた。甘くてとてもおいしかった。あまりにもおいしかったので、次の取材先の主催者や記者の方におすそ分けした。

 フェアは3月16日まで丸ビル1階「マルキューブ」で行なわれる。オリジナル缶詰が販売されるほか、丸の内シェフズクラブの6人のシェフが考案したおひたしのセットメニュー販売や地酒が販売される。

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フェア会場

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「3階建てプラン」(左)と「賃貸併用タイプ」

 三菱地所ホームは3月5日、昨年1月に発表した木造制震賃貸住宅ブランド「M-asset(エム・アセット)」の第二弾として「3階建てタイプ」と「賃貸併用タイプ」の販売を開始すると発表した。

 「3階建てタイプ」は、敷地を最大限に活用して賃貸戸数を増やすことで収益性を高めているのが特徴で、「賃貸併用タイプ」は、賃料収入による家計負担の軽減と相続税や固定資産税の節税効果が期待できるプラン。

 建物には、地震による揺れを最大で50%低減する制震システム「エムレックス」を標準装備。高いメンテナンス性を備え、オプションで上下階の音の問題を軽減する「高遮音床仕様」にもできる。オーナー住戸は冷暖房費ゼロを実現する「エアロテック」を装備。また、三菱地所ハウスネットによる最長30年間の長期一括借り上げも可能。

 構造は木造2×4工法。本体参考価格は「3階建てタイプ」が6,500万円(87.79坪、税別、賃貸9戸、60分準耐火構造)。「賃貸併用タイプ」が6,850万円(87.42坪、税別、自宅+賃貸6戸、45分準耐火構造)。発売日は2014年3月6日(木)。初年度販売目標は80棟。同社の今年度の賃貸の受注は50棟の見込み。

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「渋谷ホームギャラリー」

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 記者発表には三菱地所・清沢光司常務、三菱地所ホーム・西貝昇社長、三菱地所ハウスネット・小幡義樹社長などが勢ぞろい。1時間くらいにわたって三菱地所グループの住宅事業バリューチェーン、賃貸住宅の性能、賃貸市場などについて説明を聞いた。

 記者の関心事はほかにもあった。会場になった「渋谷ホームギャラリー」を見学することだった。各氏の話を聞きながら、会場の面材に使用されているどこかで見たような高級材が気になってしようがなかった。あとで確認したら「シャムガキ」だった。一昨年、新日鉄興和不動産が「渋谷」のマンションのモデルルームに採用していたのを初めて見たのだが、その後、モリモトも採用した。

 しかし、「渋谷ホームギャラリー」のシャムガキは量で他をはるかに凌駕していた。これには驚いた。さらに、白を基調にした美しい洗面室、広くて機能的なキッチンも圧巻だ。1階の天井高は3m。階段のステップは19段もあった。サッシは木製。

 ラッキーだったのは、キッチンについて説明してもらった三菱地所ホーム開発設計部課長代理・原祥子さんが何とこの「渋谷ホームギャラリー」を設計した本人だった。了解も得たので紹介する。記者は「美しいもののみが機能的」と語った丹下健三を思い出した。

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キッチンに立つ原さん(背景はシャムガキ)

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 同社に注文も一つ。記者発表会で同社・中津川常務は「19年前に発表した全館空調の『エアロテック』は当社の大ヒット作品」と紹介した。記者も発売当初、同業他社の建売住宅に採用されていたのを見学し、その良さを体感した。また、同社の注文住宅はミリ単位でお客さんの満足に応えるという。

 しかし、それほど素晴らしいのにデベロッパーの戸建てでは三井不動産、野村不動産、住友不動産などに大きく水を開けられている。これは情けない。住宅事業でのバリューチェーンを標榜するのであれば、追撃態勢を早急に取るべきだ。

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「エアロテックは顧客満足度が極めて高い」と話す中津川氏

 

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故・田中氏の遺影(帝国ホテルで)

 ケン・コーポレーションは3月5日、昨年12月25日に74歳で亡くなった同社の創業者で代表取締役会長・田中健介氏の「田中健介お別れの会」を行なった。関係者ら約2,100人が参加した。

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 参加者の数に驚いた。田中さんの人柄と人脈の広さをこの数が示している。昭和47年に外国人向け仲介会社を興し、その後40余年にわたり「信用」「信頼」を愚直に掲げ、不動産業界に大きな地歩を築いてきた。いかにも田中さんらしい人懐っこい笑顔の遺影の前にしばしたたずんだ。

 同社佐藤繁社長は参列者に配布された「ごあいさつ」の中で、「故人にとって、満足な人生ではなかったかと思えてなりません」と記しているが、その通りだと思う。記者にとっては3年前だったか、囲碁について取材することになっていたのが、直前になってキャンセルとなったのが唯一の心残りだ。田中さんから最後に聞いた言葉は、平成23年11月19日に行われた第23回RBA野球大会 日曜ブロック決勝戦で優勝したときの「補強? よきに計らえだよ」だ。

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献花会場

ケン・コーポレーション田中健介会長が死去(2014/1/7)

ケンコーポが3年ぶり9度目の優勝 小笠原 ノーヒット1失点の好投(2011/11/19)

 

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「これからの『林業政策』を問う-林業基本法制定50年を振り返って-」(港区:石垣記念ホールで)

林家の平均年収は29万円 100haの大規模林家でも36万円

 大日本山林会は3月3日、「これからの『林業政策』を問う-林業基本法制定50年を振り返って-」と題するシンポジウムを行った。約120人が参加した。

 シンポジウムでは、東大大学院教授・永田信氏が基調講演を行ったほか、筑波大教授・志賀和人氏をコーディネーターに林野庁森林整備部長・本郷浩二氏、速水林業代表・速水亨氏、全国森林組合連合会代表理事専務・肘黒直次氏、九州大教授・佐藤宣子氏、筑波大准教授・立花敏氏、森林総合研究所関西支所チーム長・山本伸幸氏がパネリストとなってパネルディスカッションを行った。

◇       ◆     ◇

 「公益社団法人大日本山林会」の存在をある人を介して初めて知った。同会の案内書によると、設立は明治15年(1882年)。初代会頭・伏見宮貞愛親王殿下から現総裁・桂宮宜仁親王殿下に至るまで歴代総裁は皇族ばかりで、創立以来130年、わが国でもっとも長い歴史を持つ森林・林業団体だという。民間森林・林業の振興に寄与するのが目的だ。

 記者は他の取材と重なったため、途中からの参加だったが、会場の石垣記念ホールは満席だった。途中休憩はあったのだろうが、11:00から17:00まで6時間もぶっ続けで森林・林業の過去・現在・未来を関係者が論じ合ったのにびっくりした。

 シンポジウムも、コーディネーターとパネリストが語り合うというより参加者の質問に答える形で進められた。参加者は一家言を持つ人ばかりのようで、阿吽の呼吸という形容がぴったりのシンポジウムだった。

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志賀氏

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 森林・林業の現実については、これまで論じられているように高度成長期の木材需要が拡大する一方で、エネルギー革命、円高の進行による輸入材の増加と自給率の低下を招き、国産材価格の下落、林業就業者の減少と高齢化、伐採期に育っているのに赤字になるから伐れない、所有の空洞化などの危機的状況が浮き彫りされた。

 いかに深刻か。速水氏の報告から以下に引用しよう。

 「2002年から為替と自給率、木材価格が関係なく動いている」「『円さえ弱くなれば、世界の木材価格はゆっくりだが上昇しているのだから、国産材の下落も止まる』という期待が出来なくなった」

 「林業での生産拡大は今の時代は、思いの外レスポンスが良い。それに対して需要拡大は時間が掛かる。この時間的ギャップが林業経営をほとんど採算の合わない産業に変えた」

 「林家収入の下落は、いかんともしがたい。1990年までは面積が100~500ha層で5,934千円あり、高額ではないが専業でなければ、この収入は魅力的であるが、その後の下がり方はあっという間に100万円を切り、2005年には361千円である。これでは若者の月給である。2008年になると100~500haの林業所得は259千円で500ha以上でも217万1千円である。これらのことは全ての林業問題を包含した結果である」

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 森林・林業問題は、この前書いた「空き家」問題と根っこは同じだ。間違いなくこの20年間で何かが壊れた。記者が普及することを期待している「CLT」も強度は十分だが、接合部を強化しないと建基法を満たさないようで、実用化するにはまだ3年かかるという。速水氏のいう「時間的ギャップ」は埋まるのだろうか。

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左から本郷氏、速水氏、肘黒氏

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左から佐藤氏、立花氏、山本氏

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「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」

 国土交通省は2月28日、第5回目の「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を開き、「報告書(案)」を取りまとめた。

 「検討会」は、全国の空き家が約760万戸(平成20年)に及び、そのうち個人住宅が約270万戸を占め、防犯・防災・衛生・景観など環境面でも地域の大きな問題となっていることから、質の高い既存の住宅ストックを活用した賃貸流通や住み替えの促進を図るため、所有者、利用者、関係事業者、行政などの当事者に向けて、先進的な取り組み事業や契約の枠組み(ガイドライン)を整備する方策を検討するもの。

 「報告書(案)」では、一定水準の賃料を得られる都市型と、賃料水準の低い所有者が修繕などの負担を追わずに、貸主が自費で模様替えなどができるDIY型の3パターンが示された。

 また、当然のことながら、「単に住宅の視点のみならず、子育てや雇用、福祉等の公共サービスを含め、総合的な地域経営の観点から、地域の活性化に取り組むことが求められる」ともしている。

◇       ◆     ◇

 住宅数が世帯数を上回ったと発表されたのは昭和48年だ。その後、空き家は一貫して増え続け、平成10年には10%を超えた。記者は賃貸経営は疎いが、空き家率が10%を超え、その後も増え続けるとすればやがて経営は成り立たなくなり破たんするのは目に見えている。平成20年の賃貸住宅の空き家率は18.8%というから危機的な状況にあるのだろう。

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 「検討会」では、不動産業界の代表側から「物件が出てこない」という声が聞かれた。記者はわが耳を疑った。全国に760万戸も空き家があるのに、どうして民間の不動産業者に物件が出てこない=流通しないのか。そんなはずはない。

 「物件が出てこない」のではなく、不動産業者に空き家を流通させる能力、ノウハウがないのだと思う。外国人居住を増やそうというのが国策である現在、いまだに戦前の商行為「礼金」を、「KARAOKE」「TENPURA」「TSUNAMI」のようにそのまま「REIKIN」として通用するとでも考えているのだろうか。まず、このような「前近代的」な姿勢を改めないと、不動産賃貸業の将来はないのではないか。

◇       ◆     ◇

 記者は一昨年の夏、限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地を取材した。昭和37年から同44年にかけて東京の開発業者によって開発された2団地合計の開発面積が約17万㎡で、総戸数1740戸。1区画あたりの平均面積は約20坪から約27坪というものだった。

 訪れたのは30年ぶりだったが、限界集落になっているという確信があった。最初は実名をあげるつもりで書いたが、直前になって匿名にすることにした。反響が怖かったからだ。

 しかし、この団地の例は極端ではあるが、どこの郊外団地でもやがて直面する問題だろうと考えている。空き家問題というよりは、もっと深刻なコミュニティ・街の崩壊の問題だろうと思う。

 そうした難問に「検討会」はどのような解決策を打ち出すのだろうと期待していたのだが、「検討会」の主旨はそうではなかった。冒頭の通り、空き家の賃貸借契約のガイドラインを示すことに主眼が置かれていた。

 国交省住宅局住宅総合整備課長・里見晋氏が「空き家対策については法制化が検討されており、市町村計画で調査を進めているところもあるが、この検討会は定住促進のために行っているわけではなく、空き家を活用して流通の仕組みを整備することにある。この問題はゼロサム(ゲーム)と一緒だ。市場性のない劣悪なものはシュリンクしていく。一方で、いいものもある。それを発掘し、資金面などで問題を抱えている子育て世代などを支援することで流通するようにしたい。完成形として世に問いたい」と話した通りだ。

 空き家問題は喫緊の課題だが、小手先の対策では解決はしない。街を再生するビジョンが必要だ。

限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地 人口4割減 55歳以上の人口比率は48.7%(2012/2/27)

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