オープンハウス 「代々木」に続き「銀座2丁目」「虎ノ門」「青山1丁目」など予定
「オープンレジデンシア代々木ザ ハウス」完成予想図
オープンハウス・ディベロップメントが分譲中の「オープンレジデンシア代々木ザ ハウス」を見学した。物件名に〝ザ ハウス〟が付いているのは昨年分譲して人気になった「恵比寿」に続き2物件目。昨年11月から分譲を開始して、これまで13戸が契約済み。順調に売れている。
物件は、小田急線参宮橋駅から徒歩5分、渋谷区代々木5丁目の第2種低層住居専用地域に位置する地上4階地下1階建て全30戸。専有面積は44.45~118.33㎡。坪単価は400万円。竣工予定は平成28年9月上旬。設計・監理は長谷建築設計事務所。施工はナカノフドー建設。
現地は、道路、小田急線を挟んで対面には国立オリンピック記念青少年総合センター・代々木公園が近接している立地。建物は地階住戸が8戸あるが、100㎡以上の億ションも含めまんべんなく売れている。
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同社の高額マンションを観るのは今回が2回目だ。最初は一昨年分譲された光井純氏がデザイン監修した「オープンレジデンシア南青山」だった。地型が不整形でどうかと思ったが、瞬く間に売れた。
今回は、単価は割安感があるが、高さ規制が12mのエリアで地階住戸もあるのでどうかと思ったが、よく売れている。
モデルルームは「南青山」と同じモデルルームなので、設備仕様などについては「南青山」の記事を参照していただきたい。二重床・二重天井、シーザーストーンのキッチン天板、グローエの水栓、食洗機、ユーティリティシンク、バックカウンター、ミストサウナ、木製建具などが標準装備で総じてレベルは高い。
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同社のマンションは、低層メゾネットの〝オープンレジデンス〟のときから結構見学しているが、最近は地価高と建築費の上昇などからほとんど供給されていない。
その一方で、同社はDINKS・ファミリー向けの〝オープン レジデンシア〟にシフトしており、これまで供給された約80物件のうち半数くらいは〝レジデンシア〟だ。これからも都心部では「銀座2丁目」「虎ノ門」「青山1丁目」「小石川」などが予定されている。
戸建てもそうだが、マンションの売れ行きも好調なことから業績アップに貢献。オープンハウスの前9月期決算は売上高1,793億円(前年同期比:59.9%増)、営業利益213億円(同55.0%増)、当期純利益126億円(同62.8%増)と3期連続して過去最高を更新した。まだまだ快進撃が続きそうだ。
光井純氏デザイン監修 オープンハウス「南青山」 上々スタート(2014/10/20)
安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」 立地よく割安の単価415万円(2014/12/11)
東急リバブル 「ル ジェンテ碑文谷」はDINKS・ファミリー向け
「ル ジェンテ碑文谷」
昨日の「ル ジェンテ千代田神保町」に続き東急リバブルが近く分譲する「ル ジェンテ碑文谷」を紹介する。
物件は、東急目黒線西小山駅から徒歩15分(JR山手線目黒駅バス12分・バス停徒歩4分)、目黒区碑文谷1丁目に位置する6階建て23戸。専有面積は55.06~72.07㎡、予定価格は4,800万円台~7,200万円台、坪単価は320万円。建物は2015年12月に竣工済み。施工は高松建設。販売開始は2月13日。
最大の特徴は、これまでの「ル ジェンテ」シリーズは駅近のコンパクトマンションがほとんどだったのに対して、今回はDINKS・ファミリー向けであること。最寄り駅の西小山駅や学芸大学駅(徒歩17分)からはやや距離があるが、3~4分間隔で利用できるバスだと目黒駅まで20分もかからない。
建物は全23戸のうち15戸が角住戸で、二重床・二重天井、可変性のある引き戸を多用しているほか、ミストサウナ、換気機能付き玄関ドア、浄水システム「良水工房」、食洗機を標準装備。キッチン天板は御影石。
販売担当者は、「坪320万円という圧倒的安さと、目黒駅まで2.5キロという近さをアピールして早期完売したい」と話している。
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「千代田神保町」は交通便がよく、価格もリーズナブルなので、記者も「売れる」と判断したが、「碑文谷」は「目黒駅圏」のマンションであることをどれだけアピールできるかに成否がかかっていると思った。
単価もぴったりだ。数年前なら坪単価300万円でも厳しいと思っていたが、最近の周辺の駅近物件は坪400万円を突破してきている。目黒区アドレスでこの価格は訴求力がある。
見学後、記者もバスを利用したが、現地近くのバス停で待つこと2~3分でバスは到着し、目黒駅まで10数分、全くと言っていいほど渋滞はなかった。
これまで目黒通りに面したマンションをかなり取材してきたが、最寄り駅の東急線より「目黒駅圏」を前面に出した物件は総じて売れ行きがよかった。
キッチン
早期完売必至 東急リバブルのコンパクト「ル ジェンテ千代田神保町」
「ル ジェンテ千代田神保町」
東急リバブルの自社分譲マンション「ル ジェンテ千代田神保町」と「ル ジェンテ碑文谷」を見学した。前者はコンパクトタイプ、後者はDINKS・ファミリー向けマンション。双方とも早期完売の可能性が高い。まず、「ル ジェンテ千代田神保町」から。
物件は、東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄三田線・都営地下鉄新宿線神保町駅から徒歩3分、千代田区神田神保町1丁目に位置する13階建て全46戸(店舗1戸、地権者住戸1戸、非分譲住戸1戸含む)。専有面積は30.63~39.74㎡、価格は3,390万~4,790万円、坪単価380万円。建物は2015年12月に竣工済み。施工は合田工務店。販売開始は2月1日。
現地はビルや店舗などが建ち並ぶ白山通りに面しており、建物は1フロア4戸。うち3戸が角住戸。通風、採光、独立性に配慮しているのが特徴。
商品企画は、二重床・二重天井、床暖房や3口コンロ、食洗機、ミストサウナ、引き戸多用など。
販売担当者は、「最近、神保町周辺ではコンパクトマンションの供給が増えているが、総じて売れ行きはいい。12月から事前案内会を実施しているが、これまで来場者は約100件。男女はそれぞれ半々。一挙に販売して、3月の引き渡しまでに完売したい」と話している。
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「神保町」といえば古本屋街のイメージが強いが、最近は若者向きの「食の街」としても知られているという。特に「カレー」が有名だそうだ。
そこで、販売担当者お勧めの近くのカレー専門店に入り、トマトとナスが入ったタイ風チキンカレーを注文した。トマトとカレーの相性が抜群でとてもおいしかった。チェーン店とはレベルが違う。昼食時はライス大盛400グラム、特盛500グラムがともに無料。ご飯を少なめにしてもらったら50円割り引いてくれた。680円だったか。
もちろん本好きにはたまらない街だ。坪単価380万円もリーズナブルな価格だ。30㎡のタイプも廊下スペースをなくすなどの工夫を凝らしている。記者も早期完売できると思う。
モデルルーム
マンション コミュニティ条項削除 「個人的には大反対」 公明党・山口代表
挨拶する山根理事長(帝国ホテルで)
コミュニティ条項「存続希望は削除支持の3倍」
山根・マンション管理協理事長
山口那津男・公明党代表が1月12日行われたマンション管理業協会(マンション管理協)の新年賀詞交歓会で、マンション標準管理規約からいわゆるコミュニティ条項を削除することに対して「個人的には大反対。非常識極まりない」と話した。
記者の質問に答えたもので、「公明党の見解として理解していいか」という問いに対しては「党の見解ではない。あくまでもわたし個人としての考え」とした。
一方、賀詞交歓会に来賓として挨拶した同党・井上義久幹事長は、「指針(マンションの管理の適正化に関する指針)にコミュニティ形成の重要性が盛り込まれた。管理規約からコミュニティ条項は削除されるが、(自治会活動と混同しないようにという)コメントも付く。現場が(コミュニティ活動に萎縮しないよう)にしなければならない」と語った。
また、石井啓一国交相の代理として出席した自民党の宮内秀樹・国土交通大臣政務官は、「(是非について)いろいろな意見をよく聴いて調整したい」と、立場を考慮してか言葉を選んだ。
民主党の来賓として挨拶した宮崎タケシ・国会対策副委員長は「重要な問題だと思うが、現段階ではまとまっていない。メリット、デメリットを考えないといけない」とし、同党・小宮山泰子衆院議員は「あったほうがいい。わたしの選挙区の川越では観光客も増えており…」と語った。
マンション標準管理規約は、国交省がマンションの管理規約の作成や変更の際に参考になるように定めているもので、現行では「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」(コミュニティ条項)が管理組合の活動の一つで、そのための活動費も管理費の中から充当できるとしている。
しかし、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が、任意団体である自治会・町内会活動に管理組合が参加するのは本来の法の趣旨に反すると答申したことを受けて、国交省は標準管理規約からコミュニティ条項から削除する改正案を示している。
山根弘美・マンション管理協理事長は冒頭の挨拶で、コミュニティの重要性が指針に盛り込まれたことを評価しつつも、コミュニティ条項の削除について「阪神淡路でも3.11でもコミュニティの力が防災・減災に大きな力を発揮したことが実証された。パブリックコメントでも規約存続の声は削除の声の3倍もあったと聞く。(コミュニティ条項の削除によって)現場(管理組合・管理会社)の活動が減殺されることのないよう、混乱することがないようしていただきたい」と懸念を改めて表明した。
国会議員と記念写真に納まる山根理事長(中央)
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山根理事長がマンションコミュニティ条項に触れるのは間違いないと思っていた。コミュニティ条項削減については挨拶のかなりの時間を割いて話した。
記者は来賓として出席していた国会議員に片っ端から質問しようと思っていたが、ほとんどの方が顔を出すだけで早々に退席された。数人にしか聞くことができなかった。残念。
民主党の宮崎氏も小宮山氏も勉強不足。記者の質問を理解されていなかったようだ。政権を奪取する気があるなら、マンション管理についてもっと勉強していただきたい。地方は知らないが、マンション居住者の声を聞き、課題について話せないと都市部の選挙民の支持は得られないと思う。
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新年賀詞交歓会には黒住昌昭・前理事長(前URコミュニティ社長)も顔を見せた。「ようやっと解放された。算盤の資格(3段だそうだ)を生かして、近所の子どもたちに教えている。面白くないと言うことを聞いてくれないから必死ですよ」と近況を語った。
黒住氏
賀詞交歓会
眼の前に多摩中央公園 立地に恵まれたサンウッド「ガーデンコート多摩センター」
「ガーデンコート多摩センター」完成予想図
サンウッドが近く分譲する「ガーデンコート多摩センター」を見学した。多摩センター駅から歩車分離のペディストリアンデッキを通って6分、南側に多摩中央公園が広がる13階建て全93戸。
物件は、京王・小田急多摩センター駅から徒歩6分、多摩市落合1丁目に位置する13階建て93戸。専有面積は66.28~85.87㎡、価格は未定だが坪単価は240万円~250万円くらいになる模様。竣工予定は2017年6月下旬。施工は東レ建設。東レ建設は売主にも名を連ねている。
特徴は、駅から現地まで歩車分離のペディストリアンデッキで結ばれており、現地は商業地域の外れ。眼前には、道路を隔てて多摩中央公園が広がり、遮るものがない。
設備仕様は二重床・二重天井、ディスポーザー、ミストサウナが標準装備。
バルコニー
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ここ数年、多摩センター駅圏ではトータルで2,000戸を超えるマンションが分譲された。坪単価はおおむね150~220万円。相対的な価格の割安感があったことから売れ行きは全体として好調に推移した。
今回、同社が分譲するマンションは、眼前に多摩中央公園が広がるという意味では最初にして最後の物件になりそうだ。
また、周辺の街路樹はクスノキで、美しい景観を形成している。徒歩数分圏にはほとんどすべての生活利便施設が整っている。
価格は未定だが、多摩センターのポテンシャルを考えれば坪240~250万円は極めて妥当な価格だろうと思う。この環境は何ものにも代えがたい価値がある。この立地・環境、多摩センターの魅力を訴えきれるかどうか。市民としても売れ行きが気になるところだ。
オープンフォレストロビー
今年のマンション建築費 安定的に推移 長谷工コーポ・辻社長
左から大栗氏、森口氏、辻氏(ホテルオークラ別館で)
三交不は太陽光発電に注力 2018年めどに100メガ整備
今年の不動産協会新年賀詞交歓会での取材目的に、わが故郷・三重県のデベロッパー、三交不動産の森口文夫社長にお会いすることと、長谷工コーポレーションから建築費の動向を探ることを掲げた。森口氏とは伊勢志摩サミットの開催を喜び合いたかった。
しかし、これがなかなか容易なことではない。何しろ会場には1,000人くらいの関係者が詰めかけている。探すのが難しい。昨年は森口氏にお会いすることができなかった。ところが、木村理事長の挨拶が終わってからものの数分で森口氏にお会いすることができた。双方とも歓声を上げた。今年はついている。
幸運は重なるものだ。森口氏を見つけ出すのとほぼ同じくらいに長谷工コーポ・大栗育夫会長とも出会わせた。
早速、大栗氏に今年のマンション建築費の動向について聞いた。大栗氏は、「オリンピック関連の施設の着工に伴い労務費がどうなるのか読めない部分もあるが、マンション建築費については下がりはしないが、このままの単価で推移するのではないか」と話した。
三交不と長谷工コーポは極めて良好な関係にある。首都圏で三交不が分譲するマンションの多くは長谷工施工だ。お互い厳しい時代もスクラムを組んできた。双方は固い絆で結ばれている。
三人で歓談しているところに、今度は長谷工コーポ・辻範明社長が現れた。これこそ三交であり、三友、つまり正月にふさわしい松竹梅であり、正直な友、誠実な友、博識な友のかいこうだ。辻社長も「オリンピック関連で労務費が上昇する懸念はあるが、マンション建築費は安定的に推移する」と語った。
第一次取得層にとって朗報だ。大栗会長、辻社長が口をそろえて話すくらいだから、まず郊外部のマンション単価の暴騰はないとみていい。同社施工マンションがプライスリーダーになるからだ。他の中堅どころの建設会社は長谷工並みというわけにはいかないだろうが、極力単価を抑制するとみた。
あとは、春の賃上げで一般サラリーマンの賃金も上がることを祈ろう。
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三交不動産についても一言。首都圏の皆さんは三交不動産をご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、戸建ての街づくりでは首都圏デベロッパーのどこにも負けない素晴らしいものをつくっている。東急不動産と同じレベルだ。
首都圏マンションは競合も多く最近は供給が少なくなってきたが、その一方で地元では再生可能エネルギー事業(太陽光発電)やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などにも注力している。
森口社長は「太陽光発電所は2018年をめどに100メガくらいに伸ばしたい。サ高住も三重県内で展開していく。伊勢志摩サミット? 決まった時は瞬間だったが株がストップ高になった」と話した。
森口社長は記者と同じ高校の後輩。大栗さん、辻さん、三重の三交不動産を忘れずに最優先してください。
明和地所 コンパクトの新ブランド〝ラベルヴィ〟「市ヶ谷」で第一弾
「クリオラベルヴィ市ヶ谷」完成予想図
明和地所が分譲マンションの新ブランド〝クリオラベルヴィ〟を立ち上げ、その第一弾「クリオラベルヴィ市ヶ谷」を近く分譲開始する。
物件は、東京メトロ有楽町線・南北線市ケ谷駅から徒歩5分、新宿区払方町に位置する10階建て31戸。専有面積は33.54~48.01㎡、第1期(9戸)の予定価格は3900万円台~6000万円台。坪単価は約400万円になる模様。入居予定は平成29年3月下旬。分譲開始は1月下旬。施工は小柳建設。
全戸南向きで1フロア33.54㎡、42.00㎡、48.01㎡のコンパクト3タイプ。
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新ブランドを立ち上げるに際し社内で公募した結果〝クリオラベルヴィ〟に決定したようだが、なかなかいいネーミングだ。「ボレロ」や「展覧会の絵」などでよく知られた作曲家ラヴェルから採ったようでもあり、また「四季」の作曲家ヴィヴァルディから採ったようでもある。単身女性にはぴったりかもしれない。「La belle vie(ラベルヴィ)」はフランス語で「美しい生活」「美しい人生」という意味。
同社は2002年、コンパクトマンションシリーズ〝ラ・モード〟の供給を開始したが、その後立ち消えの格好になっていた。
今回の「市ヶ谷」のモデルルームも見学したが、もう少し設備仕様〝ラヴェル〟を上げてもよかったかもしれない。
記者が選んだ2015年「話題のマンション33物件」
三井不動産レジデンシャル「パークコート赤坂檜町ザタワー」
東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Towers 目黒」
大成有楽不動産・長谷工コーポ「オーベルグランディオ品川勝島」
今年の最後の「こだわり記事」は恒例の「話題のマンション」。今年見学したマンションは約90件。昨年より若干減少した(その分、分譲戸建ての見学を増やした)。
その中から33物件を選んだ。いつものことだが、「話題性」を重視して選んだので、必ずしも物件の優劣で選んだわけではない。とはいえ、水準以下の物件は1物件も選んでいないつもりだ。物件はほぼ記事の掲載順に紹介する。
1年間を振り返ると、都心の高額マンションがバブル期を彷彿させるような爆発的な売れ行きを見せたのが印象深い。坪単価も山手線では400万円を突破し、都心部では800~1,000万円が相場となりつつある。
郊外部は、業界内では売れ行きがいま一つといった認識があるようだが、記者はそう思わない。
郊外部でも価格上昇が顕著で、坪単価150万円以下がほとんど姿を消した。グロスにすると70㎡で約3,200万円。中堅サラリーマン層の取得限界に近づいている。にもかかわらず、堅調に売れている。都心部が異常なだけだ。
残念なのは、基本性能、設備仕様レベルの低下だ。基本性能では70㎡台の郊外マンションは直床(ダメというのではないが)が当たり前となり、以前は6.2m以上あったスパンは6mが普通となった。
設備仕様も、バックカウンター・吊戸棚はオプションになり、食洗機やスロップシンクを設置しないところも増えてきた。床・建具・面材もみんな右に倣えなのかケミカル一色になった。
まあ愚痴を言ってもしようがない。来年に期待しよう。
住友不動産「シティテラス草加松原」
東武スカイライン松原団地駅圏の約6,000戸のUR「松原団地」建て替え事業の一環として分譲された全538戸の規模。
URと草加市が敷地売却の条件として敷地面積約2haに対して1戸当たり38㎡の土地を確保することを求めたため、坪単価180万円で、平均価格は4,000万円を突破した。これまで草加松原駅圏の坪単価は130~140万円で推移していた。単価は3割以上の上昇となった。
サンケイビル「ルフォンリブレ浜松町キャナルマークス」
これまで倉庫街としてしか知られていなかったゆりかもめ「日の出」駅から徒歩2分の港区海岸2丁目に立地。浜松町に徒歩10分というのも売れた要因か。
さすがサンケイビルか。フジテレビの朝番組「めざましテレビ」のセットそのままのモデルルームが設けられていたのには唖然とした。
大成有楽不動産「オーベルグランディオ吉祥寺II」
旧日本住宅公団「牟礼団地」の建て替え事業地の一環で、同社が2013年に分譲し人気になった「オーベルグランディオ吉祥寺Ⅰ」(177戸)に次ぐ第2弾。
今回はやや単価が上昇し、専有面積は最低でも72㎡台、平均で約78㎡と広くなった。最寄り駅の一つ京王線仙川駅圏や調布駅圏でも大規模マンションが分譲され、大激戦となったエリアで大健闘。
三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウス西新宿タワー60」
第1期325戸 平均2.19倍で即日完売(2015/2/23)
総戸数954戸うちの事業協力者住戸を除く販売住戸全777戸が分譲開始からわずか10カ月で完売して話題となった。新宿区内のマンションとしては、昨年、「富久クロス」(全1,222戸)の分譲住戸992戸がわずか6カ月で完売して話題となったが、それに次ぐ早期完売。これまで約3,500件の来場者を集めた。
販売前からコミュニティ支援のイベントを定期的に行っているのを評価したい。
三井不動産レジデンシャル「パークリュクス銀座mono」
野村不動産「プラウド日本橋三越前」
NTT都市開発「ウエリス銀座二丁目」
東京建物「Brillia日本橋三越前」
日本橋・銀座エリアで4物件が供給されいずれも人気を呼んだ。
「パークリュクス銀座mono」は、銀座8丁目でそれほど立地条件に恵まれているわけではないが、実需というよりは投資向けに圧倒的な人気になった。坪単価415万円は中古より安かった。
「日本橋三越前」も問い合わせが4,500件にのぼり、圧倒的な人気を呼んだ。「日本橋三越前」が最寄り駅というのが最大の人気の要因。設備仕様レベルも高かった。
「銀座二丁目」は、「銀座アドレス」で所有権分譲としては10年ぶりで、初の80㎡台があるマンション。北は北海道から南は沖縄まで問い合わせは2,500件に達した。建物は2015年2月に竣工済み。全体的にグレードが高いのが目立った。
東建「Brillia日本橋三越前」は女性を中心とした商品企画プロジェクトチーム「Bloomoi(ブルーモア)」が企画に参画。全44戸を即日完売した。
コスモスイニシア「グランコスモ武蔵浦和」
またイニシアだ! アクティブシニア向け(2015/3/24)
現在分譲中のマンション「武蔵浦和SKY&GARDEN」などとともに一体開発されている再開発プロジェクトの一つ。購入者の年齢制限は設けてはいないが、60歳代以上のアクティブシニア層をターゲットにしたマンション。
これまでアクティブシニア向けは郊外部が中心だったが、同社は10年くらい前から企画を温めてきた。企画秀。
伊藤忠都市開発「クレヴィア大船」
親子隣居を可能にした「アウタールーム」採用(2015/4/17)
親子隣居を想定した「アウタールーム」付きを最上階タイプの6戸3組に採用。
「アウターフレーム」とは、一般的なマンションのバルコニーは奥行き約1.8~2.0mで、隣の住戸との間には隔て板を設けているのに対し、隣り合う住戸のバルコニーの隔て板を設置せず、双方の住戸をバルコニー空間でつなぐというもの。親子世代の「つかず、離れず」の関係が保たれるのがみそ。
東京建物ほか「Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE」
基本性能・設備仕様レベルの高さが光った。キッチン天板はアフリカ・アンゴラの貴重な御影石「ステラブル」で、バックカウンターも標準装備。リビングドアなどは突板の浮造り仕上げ。天井高は2600㎜以上。
「Bloomoi」とキリンビールの女性社員とが「働く女性がもっと幸せになる住まい」グループインタビューを実施して編み出した「お酒が楽しめる空間」も提案。
フージャースコーポ「デュオヒルズつくばエンブレム」
つくば駅圏で実績豊富なフージャースコーポレーションの記念碑的物件。計画的に整備されたつくば駅周辺のセンター地区の一角にあり、オークラフロンティアホテル、常陽銀行、つくば中央警察署、大清水公園、筑波合同庁舎などが隣接・近接。周辺はペディストリアンデッキでつながれており、駅まで車道を通らず移動できる一等地に立地。同駅圏では初の免震工法を採用、デザイン監修は光井純氏。
東急不動産「ブランズタワーみなとみらい」
プラン・設備がいい、坪400万円は納得 (2015/5/13)
間違いなく同社の記念碑的なマンションだ。「みなとみらい」駅から徒歩2分、「クイーンズスクエア横浜」に隣接する免震の29階建てタワーマンション。坪単価は当初380万円くらいと見られていたが、人気が高いことから400万円以上に上方修正された。第1期150戸は440万円でも即日完売した。
近鉄不動産他「BLUE HARBOR TOWER みなとみらい」
東急不動産の「みなとみらい」より少し遅れて供給されたが、こちらも坪単価は400万円を突破か。両物件が競合というよりは相乗効果のほうが大きいと見た。
三菱地所レジデンスほか「ザ・パークハウス千歳烏山グローリオ」
「公団烏山第一団地」跡地に建設されるもで、お年寄り夫婦の入居を想定した「ユニバーサルプラン」がいい。面積は約59㎡。両面バルコニーで、南西側の玄関を入るとすぐにバルコニーに面したリビング・ダイニングがあり、その隣が半独立型のキッチン。居室2室は北西側に設置。廊下幅はメーターモジュールとし、トイレを含むすべてのドアは引き戸を採用。
大和ハウス工業「プレミスト高尾サクラシティ」
この5年間で2棟120戸しか供給されていない高尾駅圏の総戸数416戸の大規模マンション。約16,000㎡の沖電気の敷地跡地。敷地に隣接して複合商業施設と戸建て街区が予定されおり、保育所・小学校も隣接。「サクラシティ」は既存樹のサクラが市民にも開放され親しまれていたことから名づけられた。販売も順調のようだ。
三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウスグラン南青山」
同社の都心のフラッグシップ「ザ・パークハウスグラン」の第3弾。即日完売して話題を呼んだ。坪単価は800万円弱。全101戸のうち81戸が事業協力者住戸81戸で一般分譲は20戸のみだった。これまたすごい。
三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉ザガーデン」
総面積が約92haの再開発エリアの一角で、これから開発が進められる駅北口の第1弾プロジェクト。敷地は旧日本石油の社宅・独身寮跡地。
全592戸のうち第1期として409戸が供給された。坪単価は330万円。「小杉人気」は高まる一方だ。
伊藤忠都市開発「クレヴィアタワー池田山」
他の大規模都心マンションの人気に隠れてしまったが、この物件も全104戸がわずか5カ月で完売した。坪単価400万円。設備仕様レベルが高い。
野村不動産他「桜上水ガーデンズ」
分譲開始は2013年だったが、記者は「話題のマンション」に含めなかった。単価(330万円)が高すぎると判断したからだ。しかし、同社が竣工見学会を開き、その全体的なレベルの高さに驚愕した。なので、今年の「話題のマンション」として加える。建て替えマンションとしては同社の物件だけでなく、首都圏を代表する物件の一つ。
駐車場地下化、3~5戸1エレベーター、日建設計、既存樹180本などのランドスケープが素晴らしい。管理組合の〝いいものを作ろう〟という意思が伝わってくる。
三井不動産レジデンシャル「パークホームズ赤羽西」
キッチンを動かせる画期的商品「Imagie(イマジエ)」開発(2015/9/8)
同社は近年〝パークホームズ〟の商品レベルを飛躍的に上げているが、キッチンを簡単な工事で動かせる画期的商品「Imagie(イマジエ)」を開発、第一号としてこの物件に採用した。マンションの間取りが劇的に変わる可能性を秘める。
コスモスイニシア「イニシアクラウド二子玉川」
コスモスイニシア、新ブランド第1弾公開(2015/8/25)
同社の新ブランド「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」第一弾。ライフスタイルやライフステージによって間取りが変えられるのが大きな特徴。各居室はスライドウォール・引き戸を開閉することで1LDKから3LDKまで自在にレイアウトできる。
間取りを自由自在に変更できるのも、木のぬくもり・優しさを感じさせる素材の採用も、ここ数年の時代の流れだ。ありきたりのプランでは満足しない層のニーズを取り込む企画が優れる。
小田急×コスモスイニシア「リノグラン東林間アリーナ/ブライト」
バブル仕様の素晴らしいリノベーション物件(2015/9/17)
ポラスグループ「ルピアージュ天王台」
“オールポラス”で初のリノベはバブル仕様(2015/11/19)
東急不動産「MAJES(マジェス)六本木」
都心立地に特化したリノベ事業に参入 第1弾は「六本木」(2015/10/9)
リノベーションマンションでは、小田急不動産・コスモスイニシア「リノグラン東林間アリーナ/ブライト」、ポラスグループの「ルピアージュ天王台」、東急不動産「MAJES(マジェス)六本木」を選んだ。
「東林間」は小田急の賃貸マンションで、外壁はもちろんバルコニー、階段はタイル張り。一部にはライトコート(吹き抜け)もある。住戸の天井高は2400ミリだが、2重床・2重天井で浴室の段差はほとんどない。平均で75㎡(アリーナ棟)、81㎡(ブライト棟)と広いのも特徴。
「天王台」は、バブルの絶頂期、平成2年に竣工した三井住友海上の社宅で、施工は清水建設。PC工法のため躯体はいじられていないが、専有面積は約90㎡、中住戸にはすべてライトコートが付いており、当時の質の高さがうかがわれるマンションだ。6つのプラン提案もいい。
「六本木」は、麻布、赤坂、青山、恵比寿、中目黒、代官山など都心3区を中心とした築浅の物件を再生して分譲する新しいブランド「MAJES(マジェス)」の第一弾。
三井不動産レジデンシャル「パークホームズ立川」
すまい(日常)の中にアウトドアライフ(非日常)を取りこむ住戸プラン「半ソト空間」をスノーピークと共同開発。採用するのは1階部分の住戸と共用部分だが、その他の住戸プランも工夫されており、坪単価も割安感がある。
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」
12月6日抽選分譲した第1期1次26戸が最高5倍、平均1.69倍の競争倍率で即日完売。
登録者の年齢は30歳代が1割、40歳代が2割、50歳代が4割、その他が3割。居住地は東京都が3割、京都府が2割。これまでの問い合わせ件数は約1,700件、来場者数は約350件。
登録者の居住地が地元京都より東京都のほうが多いのは予想していた。なので「話題マンション」に含めた。
明和地所「クリオ駒沢公園」
全53戸のうち10戸は億ションかプレミアム仕様(2015/10/30)
再開発進む駅前一等地&公園に隣接明和地所「クリオ東小金井パークフロント」(2015/3/6)
同社が春先に坪単価が300万円前後の〝割安〟マンションを「東小金井」で分譲して驚いたが、「駒沢公園」は相場並みの400万円くらい。駒沢オリンピック公園に徒歩4分、国立東京医療センターに隣接する全53戸の中層マンションで、同社久々の100㎡の億ション10戸くらいが含まれる。意欲的な物件だ。
ナイス「ノブレス西馬込」
ナイス、分譲するマンション全てに免震構造を採用(2015/10/30)
ナイスは10月30日、今後同社が分譲するすべてのマンションを免震構造にすると発表。日建設計、および日建ハウジングシステムと共同でワークショップを実施し、これまで8階建て以上を免震としていたものを7階建て以下の中層でも採用が可能とみて踏み切ったもの。
免震の新ブランド「Noblesse(ノブレス)」を立ち上げ、その第1弾「ノブレス西馬込」の建築現場見学会を行い関係者に公開した。
同社は1997年に竣工した「ナイスアーバン砧公園」を皮切りに免震構造を積極的に採用しており、これまで計画中を含め70棟7,120戸に採用。首都圏での免震マンション供給棟数はナンバーワン。
モリモト「ディアナコート文京本郷台」
デザインは「本郷弓町」の今井氏&鬼倉氏(2015/12/1)
今年も同社のマンションをほとんど見学した。いつもデザインにはほれぼれする。「文京本郷台」もモデルルームの仕様レベルが高く、55㎡以上の住戸は床・建具・面材は全て無垢・突板仕上げ。キッチン・洗面、浴室のカウンタートップは天然御影石。サッシは2.3mのハイサッシ、天井高は14階までは2450ミリだが、15階・16階は2650ミリ。
野村不動産「プラウドタワー木場公園」
敷地は3方道路に囲まれており、建物は東側、西側、北側が木場公園と木場親水公園に隣接・近接しており、南側住戸は下層階を除き公園が見渡せる。
また、最近少なくなってきている都の総合設計制度の適用を受け27階建てを実現。単価323万円は、木場・門前仲町駅圏の最高単価をあっさり更新。
三菱地所レジ・大栄不「ザ・パークハウス浦和タワー」
バブル崩壊後の埼玉県のマンションでもっとも坪価格が高かったのは住友不動産「シティハウス浦和高砂」(95戸)の約290万円だが、同物件は330万円台の半ば。埼玉県の最高単価マンションの記録を更新した。この記録は当分破られないはずだ。売れ行きも絶好調。12戸は億ションで、これまた埼玉県の最多億住戸マンションになる。
日土地「武蔵野富士見ザ・レジデンス」
同社は今年、マンション供給を年間500戸くらいにし、近い将来には年間1,000戸くらいに拡大すると発表。
この物件は、「二重床・二重天井」「ディスポーザ」「食洗機」「バックカウンター・カップボード」「ミストサウナ」「平置き駐車場」で差別化を図る 。
今年のベスト3マンション 三井レジ「赤坂檜町」 東建「目黒」 大成有楽「品川勝島」
記者が選んだ 2015年 ベスト3マンション
三井不動産レジデンシャル「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Towers 目黒」
大成有楽不動産・長谷工コーポ「オーベルグランディオ品川勝島」
記者が選んだ「2015年 ベスト3マンション」は、三井不動産レジデンシャル「パークコート赤坂檜町ザ タワー」、東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Towers 目黒」、大成有楽不動産・長谷工コーポレーション「オーベルグランディオ品川勝島」とした。今年新規発売された物件のうち記者が見学・取材した85物件の中から選んだ。「赤坂檜町」と「目黒」は今年のマンション市場を象徴する「都心人気」のエポックマンションで、「品川勝島」は、知名度がないエリアでいかに需要を喚起・創造するかの解決法を見いだした販売戦略が光った。
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
新国立競技場だけでない 「赤坂檜町」も隈氏デザイン監修 圧倒的人気(2015/12/22)
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」は、2年半前に隈研吾氏がデザイン監修することを聞いて、ずっと注目していたマンションだ。
詳細は別掲の記事を参照していただきたいが、東京ミッドタウン・檜町公園に近接するという絶好の立地条件にふさわしいタワーマンションだ。
全322戸のうち一般分譲は163戸だが、地権者向け・事業協力者向け分譲住戸を価格に置き換えたら322戸すべてが1億円になるはずだ。億住戸の多さでは東建「目黒」の365戸には及ばないが、全住戸が1億円以上の物件としては、同社が一昨年に分譲した「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」の98戸を3倍も上回る。この記録を破る物件は出てくるのか。
設備仕様では、これを上回る物件はたくさんあるだろうが、いかにも「和の大家」隈氏らしいランドスケープ・外観・共用部分デザインが美しい。隈氏デザイン監修マンションはこれで「神宮前」「神楽坂」「池袋」に次ぎ4棟目になった。新国立競技場に選ばれたことで、隈氏の知名度は全国区になった。未分譲3戸は年明けに分譲されるが、申し込みが殺到するのではないか。価格は公表済みなので、オークションにはならないはずだ。
一般分譲163戸の販売総額は約432億円、一戸当たり平均価格は、東建「目黒」の倍近い2億6,493万円。坪単価は981万円。坪単価は都心のマンションの相場としてはほぼリーマンショック前の相場に戻したというところか。隈氏のプレミアと赤坂・六本木の将来性を考えれば、妥当な単価ではないか。それにしても9月のモデルルームオープンから半年で160戸の億ションが飛ぶように売れるとは…。都心人気は当分続くとみた。
「Brillia Towers 目黒」
「Brillia Towers 目黒」
東建、プレスリリース「目黒」の“億住戸が過去最多”に「定借除く」追加(2015/12/1)
今年前半の目玉マンション 「Brillia Towers 目黒」は坪600万円(2015/4/2)
「Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE」は坪450万円(2015/4/24)
「Brillia Towers 目黒」も記録的な売れ行きを見せた。今年4月以降のモデルルーム来場者は約1万組に達し、全分譲661戸(平均1億1,434万円)に対して最高倍率43倍、平均4.1倍の競争倍率で、しかもわずか4カ月で完売した。バブル時を彷彿させる狂乱人気だ。1億円以上の住戸も365戸に達し、定期借地権付きを除くと最多記録だ。
記者がもっとも注目したのは価格設定だった。一昨年8月、同社が地鎮祭・記者発表会を行った。報道陣の関心事も価格がいくらになるかに集まった。同社担当者は口をつぐみ一切答えなかった。「400万円くらいではないか」という同業の記者もいた。記者はそんなに安くないとみて、坪500万円をはるかに突破すると読んだ。しかし、坪600万円はまったく予想できなかった。
同社の値付けの巧みさには感服する以外ない。わずか10カ月で777戸が完売するとは夢にも思わなかった。いまだに信じられない。価格は信じられないが、ランドスケープは都心マンションでは突出した出来になるのは間違いない。
「目黒」が坪600万円を付けたことで、都心マンション価格のメルクマールになった。都心人気に拍車をかけた、同社が果たした役割は大きい。
個人的には、三菱地所レジデンスと共同で分譲した「Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE(ブリリア ザ・タワー 東京八重洲アベニュー)」の商品企画レベルの高さに驚いた。こちらは一級品のマンションだ。
同社はこれで2012年の「Brillia多摩ニュータウン」、2013年の「Brillia Tower池袋」に続き、近年では3度目の「ベスト3」入り。
「オーベルグランディオ品川勝島」
「オーベルグランディオ品川勝島」
大成有楽不・長谷工コーポ 「品川勝島」の契約者イベントに300名(2015/12/10)
安さだけではない、巧みな需要喚起策 「オーベルグランディオ品川勝島」(2015/4/10)
この2物件はすんなり決めたが、もう一つは選定に苦労した。都心の高額マンションばかりを選ぶのには抵抗を感じたし、話題性といえば、第1期の申し込みは地元より首都圏居住者のほうが多かった三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」もあるが、これも首都圏の物件でないので除外した。
そこで選んだのが、「オーベルグランディオ品川勝島」だ。
「品川勝島」を都心のマンションと見る業界関係者はまずいないはずだ。「勝島」がどこにあるかを知らない人も少なくないはずだ。記者は東京競馬場に近い倉庫街くらいの知識しかなかった。
ところが、同社は、品川がリニアの始発駅となり、隣には「アジアヘッドクォーター特区」があることを広告などで前面に打ち出し、「品川」の物件であることを強調した。記者はシアターに〝新品〟が頻繁に飛び交ったのに面食らった。「シンピンって何だ」とずっと考えていたのだが、「新品」は「シンシナ」と読ますことをあとで知った。イメージ戦略に舌を巻くしかなかった。
販売事務所の設営もいい。カフェスタイルにして入りやすくし、コーヒーは“コーヒーメーカーのフェラーリ”と呼ばれる「LA-CIMBALI(ラ・チンバリー)」製を採用していた。コミュニティ支援の取り組みもアピールしていた。
販売が好調に推移しているのは別掲の記事の通りだ。ここで強調しておきたいのは、同社は予定価格を早めに公開し、ユーザーが物件選びをしやすくしていることだ。価格を分譲間際まで伏せるのは詐欺行為とは言わないが、消費者を馬鹿にしていると思う。改めるべきだ。
さて、同社のこうした販売戦略は奏功したのかどうか。契約者の現居住地を見ると、ずばり的中したことがよくわかる。
もっとも多いのが地元品川区の20.3%で、以下大田区10.4%、港区4.1%、横浜市全体6.0%、川崎市全体4.0%、江東区2.2%となっている。地元品川区だけで20%、隣接の大田区を合わせても30%強で、70%はそれ以外だ。首都圏広域からまんべんなく集客し、契約もそのように推移している。これは、圧倒的な価格の安さという物件の力、武器があるからこそだが、トータルな営業戦略が奏功した結果だ。見事というほかない。
新国立競技場だけでない 三井レジ「赤坂檜町」も隈氏デザイン監修 圧倒的人気
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
今年のマンション見学のおおとりはこの物件以外にない。三井不動産レジデンシャルの「パークコート赤坂檜町ザ タワー」だ。採用が決まった新国立競技場のA案を提案した建築家・隈研吾氏がデザイン監修した分譲全197戸が億ションで、しかもすさまじい勢いで売れた(未分譲は3戸のみ)、都心人気を象徴する今年の代表的物件だ。
物件は、都営地下鉄大江戸線六本木駅から徒歩7分、東京メトロ千代田線乃木坂駅から徒歩3分、港区赤坂9丁目に位置する44階建て全322戸(地権者住戸125戸含む、一般販売住戸163戸、事業協力者販売住戸34戸)。専有面積は57.61~203.96㎡、価格は1億4,920万~15億円。坪単価は1,000万円弱。入居予定は平成30年4月下旬。施工は大成建設。デザイン監修は隈研吾氏。
最終分譲3戸は平成28年1月下旬の予定。価格は1億5,220万(57.61㎡)~5憶8,000万円(136.83㎡)。
再開発手法による東京ミッドタウン・檜町公園に隣接した初のタワーマンションで、デザイン監修を隈研吾氏が担当しているのが最大の特徴。マンション南側からは眼下に公園が広がり、360度の都心の眺望が展開する。
ミッドタウンと地続きのデッキでマンション3階エントランスとつなぎ、赤坂通りとは1階サブエントランスとつながっている。
マンションを大きな1本の樹木に見立て、敷地内には竹林をはじめ四季折々の樹木、グリーンカスケードを配し、壁面緑化も図っている。エントランスは「土」がテーマ。挟土秀平氏のオブジェに水盤、土壁、天井和紙などで幽玄な世界を描いている。3階ラウンジにはいかにも隈氏らしい木調ルーバー天井に檜練り付け板とミラーの大和張り。
建物は免振と制振を組み合わせ、屋上にはAMD(制振装置)を設置。「地層」「石・水」「大地」から「枝」「幹」「道管」「洞」「雫」「樹皮」「樹冠」をイメージした装飾デザインが施されている。外観フィンにランダムに配した光のライティングは照明デザイナーの岡安泉氏が担当する。
モデルルームは、106㎡と157㎡の2つ。前者は同社の「千鳥ヶ淵」「麻布霞町」「千代田富士見」なども担当した鬼倉めぐみ氏が担当。天井高は2700ミリ、サッシ高は2400ミリ。自然石にガラス素材もふんだん用いている。R状のデザインをキッチンや織り上げ天井に採用しているのが特徴。
後者は、鬼倉氏と同じ「千代田富士見」を担当した押野見邦英氏。天井高は3150ミリ、サッシ高は2700ミリ。桧垣文様とヒッコリーと呼ばれる北米の堅い木が多用されている。壁は職人仕上げの塗り壁。リビングダイニングは約36.4畳大、キッチンは約9.3畳大、マスターベッドルームは約25.2畳大。浴室は10畳くらいか。
9月にモデルルームをオープンして以来これまで約1,100組の来場者を集め、11月から分譲開始。分譲163戸のうち160戸が分譲済みだ。
同社開発事業本部 都市開発第一部 営業室主査・大栗裕樹氏は、「来場者の方は、ミッドタウンの隣にタワーマンションが建つとは思っていなくて、みんな驚かれる。ミッドタウンとつながっているランドスケープデザイン、さらには赤坂・六本木はまだまだ伸びしろがあると評価されており、これと隈さんのデザインがマッチしたのが人気の要因」と話した。
屋上のグリーンキャノピー
外壁のヒノキフィン
◇ ◆ ◇
このマンションについては2年前、大和ハウスが東大に隈氏が設計した「ダイワユビキタス学術研究館」を寄贈したとき、隈氏から直接この「赤坂檜町」を担当することを聞いた。2年越しの恋が実ったような気分だ。このマンションを見学せずして年は越せないとも思っていた。
もう少し早く見学したかったのだが、取材を申し込んだときにはお客さんが殺到しており、今回になってしまった。残りはあと3戸のみ。1月末に抽選分譲されるが、倍率がつくかもしれない。
物件のすばらしさは言うまでもない。億ションは数え切れないほどたくさん見てきたが、これもまたいい。
隈氏がデザイン監修するのは首都圏では「原宿」「神楽坂」「東池袋」に次ぎ4物件目。タワーマンションではこれが初めてだ。外壁に木調フィンを張ったり、板を1枚おきに重ねて貼る大和張り、ランダムに貼るガラスや木調ルーバーはいかにも隈氏らしいデザインだ。
鬼倉氏が提案しているガラス製のアクセントウォールは黒か濃紺か得も言われぬ複雑な輝きがあった。照明類はバカラ、把手はスワロフスキー。
押野見が提案している桧垣文様がいい。ヒッコリーを張ったキッチンは300万円でも買えないだろう。10畳大もある浴室は海外のラグュアリーホテルでは当たり前だそうだが、どのように使うのだろうかと考えてしまった。IHはガゲナウ社製で、カウンターとまっ平らで、鍋を置く位置を示す丸い線が入っておらず、どこでも置けばいいとのことだった。
地権者住戸や事業協力者住戸を含め全322戸が1億円以上というのはわが国初だ。しかもわずか2カ月でほぼ完売というのもかつて例がない売れ行きだ。東京建物の「目黒」も霞んでしまうほど衝撃的なマンションだ。
同業や一般の方は、さぞや外国人の購入が多いのではと考えるだろうが、大栗氏による意外に少なく、1割もないという。
3階ラウンジ
1階ラウンジ
新国立競技場 隈氏のA案か伊東氏のB案か 木造ファンの記者はもちろんA案(2015/12/17)
屋上に里山とせせらぎ、格子デザインも美しい 豊島区新庁舎が完成(2015/3/26)
「神楽坂『赤城の杜』プロジェクト」完成 三井不動産レジデンシャルが見学会(2010/8/20)
驚嘆の安さ 坪318万円 隈研吾氏がデザイン監修 三井不動産・東電不動産「パークコート神宮前」(2008/11/19)