モリモト・武蔵新田vsオールジャパン(三菱・三井・野村)・矢口渡 多摩川決戦
「アールブラン武蔵新田」完成予想図
モリモトが4月下旬に分譲する「アールブラン武蔵新田」を見学した。駅から徒歩5分の全79戸で、開放的な二方角地に立地。プランもよく早期に完売するとみた。
物件は、東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩5分、大田区矢口1丁目の準工業地域に位置する7階建て全79戸。専有面積は36.57~82.39㎡、価格は未定だが坪単価は320万円くらいになる模様。竣工予定は2020年1月下旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修は南條設計室。
現地の用途地域は準工だが、ほとんど嫌悪施設はない二方角地。敷地南側は道路を挟んで低層の住宅街が、敷地西側は道路を挟んで氷川児童遊園。
建物はコの字型で、中心は南向き。住戸プランは66㎡でもスパンが7550ミリ、70㎡で8450ミリあるワイドスパン・アウトフレームが特徴。
主な基本性能・設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、リビング天井高2450ミリ、パネル張り廊下壁など。
販売チーフの同社・関根祥朝氏は、「250万円? それくらい安くできれば自販機、われわれはいらないということです。坪単価はみなさん納得されている。会員優先で半分くらい売れるかもしれません。競合? 負けません」と話していた。
現地(手前は氷川児童遊園)
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プランがいい。記事を書くより同社がパンフレットにも盛り込み、販売事務所にも掲げているパネルを見ていただきたい。
左が専有面積66㎡の間取りで、間口を7.5m確保し、廊下面積を少なくした結果、居住面積は約30.4畳大となっているのに対し、右は約71㎡の約5.8mの一般的なプランでは約30.9畳大となり、ほとんど変わらないことを図示している。
沿線には、東急多摩川線矢口渡駅から徒歩12分の三菱地所レジデンス・三井不動産レジデンシャル・野村不動産の3社JVマンション「ザ・ガーデンズ多摩川」(378戸)が同時期に分譲される。こちらは駅からややあるため、坪単価は270~280万円くらいになりそうだ。
価格的に競合するのは必至だ。だからこそ、66㎡と71㎡のプランを図示して、優位性をアピールしている。
三菱・三井・野村の物件もモデルルームはモリモトと目と鼻の先にオープンするようだ。モリモトはもちろん勝ちます、勝つ、勝てば、勝とう-ということのようだ。しかし、相手だって〝オールジャパン〟だ。どちらが勝つか、多摩川決戦が見ものだ。
同社のプラン(左)と一般的な物件のプラン
旧同潤会の長屋など木密地域を一新 旭化成不レジ・不燃公社「品川中延」竣工完売
「アトラス品川中延」
旭化成不動産レジデンスと首都圏不燃建築公社が参加組合員として開発を進めてきた「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」のマンション「アトラス品川中延」が竣工し、3月下旬に引き渡しが行われる。防災街区整備事業の竣工事例としては東京都内6例目。関東大震災後の復興として旧同潤会が建設した木造戸建住宅の面影が残る木密エリアで、権利者も140名に及ぶ事業だったにも関わらず、準備組合設立から5年という短期間で竣工・引き渡することができた貴重な事例だ。
物件は、東急池上線荏原中延駅から徒歩4分、品川区中延二丁目に位置する13階建て全195戸(権利者住戸72戸含む)。専有面積は33.45~87.05㎡、坪単価は352万円。竣工は2019年2月下旬。設計・監理は日建ハウジングシステム。施工は長谷工コーポレーション。
2017年末に分譲を開始し、竣工までにほぼ全戸が成約済み。
集会所
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記者は一昨年の暮れ、現地を見て、モデルルームも見学している。周辺には狭隘な道路も残っており、正直、売れ行きの良さに驚いたのだが、完成した建物を見て、よくぞやったと称えたくなるほどよくできていた。
従前はすれ違うのも大変な路地が錯綜しており、敷地の約半数が60㎡未満で4戸1棟という長屋住宅が多く、旧耐震の建物が8割を超え、権利者の高齢化も進むという困難が伴っていたにもかかわらず、短期間で合意形成できたのは関係者の努力に尽きるのだろう。設計・監理に日建ハウジングシステムを起用する取り組み姿勢にも敬意を表したい。
完成した建物は、隣地との境界線に道路・通路を設けたほか、帰宅困難者を受け入れる共用部、かまどベンチ、防災井戸、非常用簡易トイレを備えた公園も整備した。駐車場の屋上を緑化し、庭園空間を設けているのも特徴。
分譲単価352万円というのは今となっては割安か。今なら坪400万円するかもしれない。(従前の現地を見たら手を上げるデベロッパーはいないと思うが…)
駐車場の上の2階屋上庭園
防災アンケート回収率1割 なぜ 大阪市北区/管理員の処遇改善 喫緊の課題
協定締結式に臨んだ鈴木氏(左)と上野信子・北区区長(北区ホームページから)
なぜ、なぜ、なぜ――2週間前の3月14日に行われたマンション管理業協会(管理協)の記者懇談会で話題になったことが頭から離れない。
それは、同協会副理事長で関西支部長の鈴木清氏(阪急阪神ハウジングサポート代表取締役)が語った次のことばだ。
「この種の取り組みは全国初だが、北区が実施した区内360のマンション管理組合を対象とした防災に関するアンケートの回収率は1割だった」
この種の取り組みとは、今年1月に大阪市北区とマンション管理業協会関西支部が地域のコミュニティの推進、防災・減災及び災害対応、福祉・子育て支援の充実などを図ることを目的とした連携協定を締結したことを指す。
これを聞いてわが耳を疑った。そんな低いはずはないと。そこで、北区担当者にも確認した。鈴木氏の指摘は間違いではなかった。
北区担当者は「アンケートは全て郵送で、実施したのは昨年2月。防災に関する質問が主で、今回の協定締結につながるような意向も示しました。ところが回答があったのは360組合のうち30組合のみ。担当者が各マンションに出向き、手渡しで行えばまた違った結果にかったかもしれませんが、職員もそんな余裕はありませんし。区内には投資用のマンションも少なくないので、回収率の低さの一因かもと考えているのですが…」と、低い回収率の原因をつかみかねている様子だった。
記者は「大阪市北区」はいったいどこにあるのかも知らないが、ネットで調べたら「東京都北区」とは全く異なる、梅田や中之島がある市の中心地だった。東京都でいえば千代田区か中央区のようなエリアだ。
そのような中心地を対象にした区の防災に関するアンケート調査の回収率が1割とは…。これはしっかり考えないといけない。
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実はもう一つ、小生の胸の内で熾きのようにくすぶり続けているものがある。管理員と思われる奥さんからのメールだった。劣悪、過酷な処遇が連綿とつづられ、「藁をもすがる思い。何とかして」と認められていた。事実関係が分からない小生は「わたしにできることは何もありません」としか返事のしようがなかった。
この日の懇談会でも、ゴミ出しに関する問題提起が報道陣からなされた。小生などはほとんど考えたこともないが、いまのマンションは24時間ゴミ出しOKになっており、それぞれのゴミを分別し、回収日に合わせて運ぶのも管理員だ。夏場のゴミ置き場はどのような状態なのかを想像するだけで息が詰まる。小生は管理員の掃除をつぶさに見学したことがあり、そのプロ意識の高さ、完璧な仕上がりに驚嘆したことがあるが…。
マンション管理員の処遇改善は喫緊の課題であることを管理協も認識しており、今年7月をめどに管理員の労働実態をまとめるという。高齢化、なり手不足、賃金の低さなどが明らかになるはずだし、今後どうするのか、管理組合と一緒になって考えないといけない。
〝掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/2/25)
ランドスケープに高評価 市環境設計制度適用 住友不「横濱サウスザ・ガーデン」竣工
「シティテラス横濱サウスザ・ガーデン」
住友不動産は3月25日、横浜環境設計制度の認定を受けた大規模マンション「シティテラス横濱サウスザ・ガーデン」竣工したのに伴う記者内覧会を行った。優れたランドスケープデザインが評価され、全294戸のうち約7割が分譲済みだ。
物件は、京浜急行電鉄本線「戸部」駅から徒歩5分、JR京浜東北線桜木町駅から徒歩16分、横浜市西区伊勢町4丁目の第二種中高層住居専用地域・近隣商業地域(建ぺい率150%、容積率300%)に位置する敷地面積約14.185㎡の10階建て全294戸。専有面積は64. 17~79.72㎡、坪単価は隣接地が公園で眺望など条件のいい南向きが坪単価約300万円、その他の東向き・西向きなどが280~300万円。設計・施工は長谷工コーポレーション。入居開始は2019年4月(予定)。
現地は神奈川県の公務員宿舎跡地。駅に近い北側の敷地入り口から南側の公園に隣接取るところまで約3層分の傾斜地に位置。
「市街地環境設計制度」の認定を受け、空地率を約7割確保し、敷地内に豊富な緑(約2,800㎡、樹木1,700本)を配したことから高さ(11m⇒31m)と容積の緩和を受けているのが大きな特徴。また、「子育て応援マンション認定」を取得し、敷地内に認可保育園(約60名規模)を設置。コミュニティ形成を促進する「菜園テラス」も導入している。
建物は、中庭が眺望できるA棟、中層階以上はみなとみらいが眺望できるE棟、西側の公開空地・緑地帯・富士山が眺められる西向き、南側が公園と住宅街が眺望できるD棟(ほぼ完売)の5棟構成。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2,430~2,530ミリ、ミストサウナ、スロップシンクなど。
2017年9月の第一期販売開始以降、第四期まで問い合せ総数は3,000件、来場は1,500組に上っており、全体の7割強が契約済み。
販売責任者の同社小粥綾一氏は、「当初計画では従前の建物と同様の5階建てを計画していたが、質の高いものにしようと市と協議を重ね横浜環境設計制度を取得した結果、駅近よりもむしろランドスケープデザインに対するお客さんの評価が高く、販売も順調に進んでいる」と語った。
公園に隣接した南向きD棟
広い公開空地に面したB、C棟
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見学前は、「戸部」は横浜駅には近いがこれまで記憶に残るようなマンションはなかったので、〝坪250万円なら早期に完売するだろうが、そんなに安くは出来ないはずで、しかし、坪300万円はないはず〟と予想した。
ほぼ予想は当たったのだが、豊富な緑、公開空地、隣接の公園などを見て回るうちに南側住戸の坪300万円はむしろ安いのではと考えた。
ところが、約70㎡のモデルルームを見て、食洗機が付いていないのに驚いた。食洗機は子育てファミリーには必須アイテムだと記者は考えているので小粥氏に聞いたら、「オプションで希望された方は約5割」と話した。これはかなり高いはずで、同社とあろうものが食洗機を付けないのは納得できない。なのですぐ下方修正した。高いところで坪300万円というのはいい線だろう。
〝後で付けられる〟という人がいるかもしれないが、3~4人家族なら食器洗いに1日30分かかる(小生は不器用だからその倍はかかった)。時給は1,000くらいではないか。
菜園の寸法は約1.7m×2.1mで、広報担当者の歩測による「これが1ヤードだから1.3m×1.5m」よりはるかに大きかった。ゴルフの腕前を聞いておくべきだったか。記者は1.6m×2.0mと読んだ。この前見学した大和ハウス「湘南辻堂」のそれは150×80cmくらいだった。
これは自治体関係者へ。この物件のように空地率を高め緑地帯を増やしたマンションの高さ規制、容積率の緩和を行うべきだ。横浜環境設計制度の認定を受けるマンションはここ数年数物件に留まっている。ハードルを低くすれば街ははるかによくなるはずだ。必見のマンションだと思う。
D棟と菜園テラス
菜園テラス
中庭
植栽計画がいい シニア層はもっと増やせるはず 大和ハウス「湘南辻堂」A敷地竣工
「プレミスト湘南辻堂」エントランス
大和ハウス工業は3月14日、JR東海道線辻堂駅圏の大規模マンション「プレミスト湘南辻堂」のA敷地(AQUA Face棟404戸)が竣工したのに伴う報道陣向け内覧会を行った。現在、約230戸が販売済みで、充実した共用施設、豊富な緑を配した外構などをどうアピールするかがカギとなりそうだ。
物件は、JR東海道本線辻堂駅から徒歩9分、藤沢市羽鳥一丁目に位置する敷地面積約35,000㎡の全914戸の規模。今回完成したのは14階建てAQUA Face棟404戸。これまでに約230戸が販売済み。価格は72㎡で4,500~5,400万円台が中心。坪単価は約232万円。
同社の説明によると、購入者のボリュームゾーンは30歳前後が30%、65歳以上のシニアが25%、前居住地は地元が55%、都内は5%。
フロント
植栽帯
ライブラリー
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藤沢市の指導により1世帯当たり1㎡の共用・コミュニティ施設(土地代・建築費を合わせると数十万円)などを整備しなければならないことが建物にもよく反映されている。
テニスコート2面、バスケットだとハーフコートの広さがあり、最近流行りのボルダリングもできるアリーナ、バーベキューが楽しめるギャザリングテラス、リネン代だけで宿泊できるゲストルーム、約900冊を備えるライブラリー、酒も飲めるパーティ・キッズルーム、年2,000円で好みの野菜・花卉を育てられるエディブルガーデン、飲食・展示などができるクラブギャラリーなどを見て回った。
ギャザリングテラス
ボルダリング(「やって」とけしかけたら見事に渡り切った同社東京本店マンション事業部第二事業部 企画課
課長・西村寅造氏)
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とてもよかったのは外構の植栽だ。水盤があるエントランス周りに樹高10m以上ありそうな見事なサルスベリが植えられていた。これほど大きいのは旭化成ホームズ「調布」と積水ハウス「江古田の杜」くらいしか見たことがない。3社が競っているわけではないだろうが、ハウスメーカーはよほどこの木が好きなのか。枝ぶりなどはいい勝負だと思う。
もう一つはアコウ(雀榕)。ネットで調べたら樹高は10~15mになり、果実は食用にもなるという。クワ科なのでそのような実か。小さい頃よく食べた。
エディブルガーデンは1区画150×80cmくらい。人気だそうだが、もっと広くてもいい。だが、しかし、キャベツ、ジャガイモ、トマトなどはそれぞれ相性が悪い、それこそ犬猿の仲の野菜がある。それがもとで入居者同士の仲が悪くならないか心配だ。その逆に相性がいい花が縁結びになるかもしれないが…。
PCの有孔バルコニーもなかなかよかった。褒めようと思ったのだが、30年前に見た、有孔デザインが素晴らしかった佐藤工業「ザ・ヴィスタ妙蓮寺」を思い出しやめた。もう少し工夫すればヒット商品になる。
契約者のうちシニアの比率はもっと伸びていいはず。同社の「高尾」は50歳以上のシニア層が40%を占めた。駅からの距離の差か、「シエリア湘南辻堂」の影響か。
サルスベリ
アコウ(雀榕)
エディブルガーデン
有孔PCバルコニー
業界初の体力測定装置に狂喜 大和ハウス「プレミスト湘南辻堂」 同社は販売に自信(2017/9/11)
首都圏第1弾「シエリア湘南辻堂」第1~3期1次199戸が登録完売 関電不動産開発(2016/11/8)
大和ハウス・イニシア 「プレミスト高尾サクラシティ」全416戸を16カ月で完売(2017/11/1)
コスモスイニシア タウンハウス「吉祥寺」好調/「字か小さい!」「あんたがアホ」
「ザ・ロアハウス吉祥寺」
コスモスイニシアは3月18日、タウンハウスブランド「ザ・ロアハウス」の第5物件目「ザ・ロアハウス吉祥寺」が竣工したと発表。吉祥駅から徒歩6分の全18戸で、残りは2戸のみ。
物件は、JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩6分、武蔵野市吉祥寺本町1丁目の第一種住居地域・近隣商業地域(建ぺい率約62%、容積率約214%)に位置する敷地面積約574㎡の地下1階地上3階建て全18戸。専有面積は54.78~88.32㎡。平均坪単価は370~380万円。竣工は2019年2月。施工は新三平建設。
昨年10月から販売を開始しており、これまでに16戸を成約済み。購入者の現居住地は武蔵野市(約40%)、武蔵野市以外の都市部(約10%)、23区内(約50%)、年齢層は20歳~39歳(約20%)、40歳~49歳(約40%)、50歳~(約40%)、入居予定者数は1人(約45%)、2人(約25%)、3人~(約30%)。
敷地形状は凸状で、道路に面しているのは間口が約7.1mの突の部分。住戸プランはトリプレット4戸、メゾネット12戸、スカイテラス付きフラット2戸。
◇ ◆ ◇
「住みたい街」にいつも上位にランクされる吉祥寺駅から徒歩6分なら、条件が整えば坪単価は400万円の後半になるはずだ。それが坪370~380万円というのは超割安かもしれないが、記者は妥当な価格と判断した。
「吉祥寺」はイメージ先行型の街だ。井の頭公園はあるが、北口は古い街並みが残り、いかがわしいフーゾク街(これまた吉祥寺のいいところか)もある。多摩センターのほうがはるかに優れている-と言ったら怒られるか。
これ以上は書かない。トリプレット・メゾネットがいいと考える人は一定程度いるということだろう。確かに、敷地南側は第一種低層住居専用地域で2~3階建て住宅街だ。
コミュニケーション コリドー
サンプルルーム
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以下は取材案内のメールをよく読まなかった馬鹿な記者のボヤキ。時間が無駄と思う人は読まないでください。
第一の失態は場所を間違えたこと。現地に行くべきなのに、現地から10分以上離れている逆方向のインフォメーションサロンに向かった。しかも道を間違えたため着いたのは取材締め切りの16:30を大幅に超える16:50だった。
それでも同社は快く(そう思えた)待ってくれるとのことだった。1分でも早く着こうとタクシーを拾った。運転手に地図を渡した。これが間違いの2つ目。
「字が小さくて読めないですよ」(ハズキルーペじゃなく虫眼鏡だった)
「えっ、すぐそこですよ」
「住所は分からないの? 」
「どこかに書いてあるでしょ」
「ああ、これ。吉祥寺…本町…1…10…」(入力するのに1分はかかった)
「そう、そこ」
「お客さん、これっ、さっき乗ったとこですよ」(これで乗ってから2分は経過していた)
「えっ、あっ、その住所は…(ゲストサロンだった)ごめんなさい。そこじゃなくて、ほら、(ゲストサロンの)青じゃなくて赤い印がついてるところ。そんな小さな字を書いた会社に注意しときますよ。そうですよね、わたしも全然読めない。そう、そこ、左ですよ」
「えっ、右じゃないですか」(急に車を停めた。危ない!)
「そうそう、ごめんなさい。そこ右。そうです、そうです。突き当りが吉祥寺駅。もう大体わかりますから…そうそう、まっすぐ行って左に曲がってください」
「お客さん、ここですよ」
「えっ、(目の前にトーシンの社屋。トーシンは身売りしたのか)。分かりました。ここでいいですよ。運転手さん、わたしはもうすぐ70歳。お年はいくつですか? 」
「60です」
「そうですよね。お年寄りのことを考えて字はもっと大きくすべきですよね」
「お客さん、申し訳けありませんでした。570円です」
「領収書ください(会社に請求できるのか)」
現地に着いたのは17:00をとっくに過ぎていたはず。駅に着いてから30分以上かかった。記者も運転手も悪いが、もっと悪いのはコスモスイニシアだ。案内マップを印刷したら地図はA4の紙に5分の1くらいのスペースしかなかった。文字は5ポイントもないはず。
家に帰ってかみさんにも事情を説明し聞いた。「あんたがアホ。わたしだって読めるわよ」
参考までに。詳しいのは木住協。駅に降りてから「右」「エスカレーター昇って左」「一つ目信号左」などと6枚のカラー写真を使って案内している。(それでも記者は迷ったことがある。紙代とインク代を考えるべき)
(写真は全て同社広報担当者。記者よりずっと上手)
わが国最高層65階建てなど最大級3,200戸 西新宿三丁目再開発 都市計画決定
「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」
野村不動産、住友商事、東京建物、首都圏不燃建築公社、前田建設工業の5社は3月18日、西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発準備組合と計画を進めている「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」が3月15日付で新宿区より都市計画決定がなされたと発表した。
本事業は1993年、老朽化した木造家屋の密集地の解消をめざし、地区内権利者有志により再開発研究会が設立され、その後、リーマンショックや東日本大震災などで地区範囲や計画案の見直しを行い、事業推進協力者などと計画を進めてきた。
事業地は計画面積約4.8ha、南西側約300mに京王新線初台駅が位置するほか、都営大江戸線都庁前駅、小田急線参宮橋駅が徒歩10分圏内。「新国立劇場」「東京オペラシティコンサートホール」が近接。
計画では、地区外周道路の拡幅とともに「初台」駅からの歩行者のバリアフリー動線の確保、質の高い住環境・みどり豊かな憩いの空間などを創出する。
マンションは、A-1街区からA-3街区までわが国初となる「最高層(235m)」「最高階数(65階)」「最大級規模(約3,200戸)」が建築される。
2020年度内に本組合が設立され、2022年に着工、2029年度に竣工する予定。
隈研吾氏+高田浩一氏「夢の匠の共演・結集」豪州社と地所レジ シドニーで372戸分譲
「Mastery(マステリー)」隈氏が担当するC棟
三菱地所レジデンスは3月11日、オーストラリア・シドニーで開発を進めている新築分譲マンション「Mastery(マステリー)」(総戸数372 戸)の日本販売が3月から開始されたのに伴い、設計を担当した隈研吾建築都市設計事務所の隈研吾氏と、Koichi Takada Architectsの高田浩一氏などを招いてプロジェクト説明会を行った。
同プロジェクトは、〝シドニーのマンハッタン〟と呼ばれる中心部に位置する敷地面積約16,941㎡の5階建てA棟39戸、6階建てB棟54戸、20階建てC棟144戸、7階建てD棟42戸、8階建てE棟95戸の全5棟374戸の規模。総事業費約3.85億豪ドル(日本円で約300億円)。専有面積約40~約128㎡。最終竣工は2021年。事業者は現地の不動産会社・Crown Group Holdings(事業比率70%)と同社(同30%)。日本での販売担当はスターツコーポレーション。
説明会で隈氏は担当したC棟について、「ファサードは緑をふんだんに盛り込み、大地から樹木が伸びているような形状にし、屋上プールなども日本にないものとした。ディテールにはプラントボックスを各階に設け省エネに配慮した」などと語った。
全体デザインとB、D、E棟を担当する高田氏は、「オーストラリアで約10年間仕事しているが、隈先生には学生のころからお世話になっており、〝建築の神様〟とご一緒できてとても光栄」と語った。ランドスケープにはバンブー(竹)を配した水景を演出する。
高田氏は、世界的な建築賞「Best Tall Building」で「世界一」の評価となる「Best Tall Building Worldwide(世界最高の高層ビル)」を受賞した積水ハウスのシドニー中心部の複合開発「セントラルパーク・One Central Park」棟の設計にも関わっており、現地では著名な建築家として知られている。
日本側デベロッパーとして挨拶した三菱地所レジデンスASEAN事業部部長・明嵐二朗氏は、「最近オーストラリアは土地・建物の価格上昇を抑制する政策が取られているが、現地でよく調査するとファンダメンタルは非常に強い。人口ピラミッドはわがくにの1980年代と同じような綺麗な釣り鐘型を描いており、中長期的に期待が持てる極めて稀有な国。物件はポテンシャルが高く、立地が突出しており、Crown社は理念・実績などからしてベストパートナー」と語った。
Crown社CEO Iwan Sunito(イワン スニト)氏は、「わたしの夢である隈氏と高田氏の共演、匠の結集が実現した。オーストラリアでは初の隈氏による建築物で、(高さ規制からか)オーシャンビュー、シティビューが期待できる市内最後の物件。ジャパンタウンも盛り込む」などと語った。
同社広報によると、価格は「地元調査会社のデータでは、建設地のWaterlooエリアの2018年7月時点のコンドミニアム平均価格は約A$0.82M/戸で、『Mastery』は約A$1.2M/戸なので約1.5倍の価格。最高級物件ではないもののラグジュアリークラスであると考えている」としている(オーストラリア1ドルは日本円で78.46円)。
左から高田氏、隈氏、明嵐氏、イワン氏、同社ブリスカ・エドワード氏
左から高田氏、隈氏、明嵐氏
◇ ◆ ◇
価格についてはさっぱり分からない。記者の皆さんは坪単価450万円くらいといっていたが、現地の相場を知らなければ高いのか安いのか判断のしようがない。しかし、シドニーの一等地で、隈氏と高田氏が設計したマンション(面積不明)が約1億円というのは相当安いのではないか。
隈氏と高田氏に日本での案件について聞いた。隈氏は「直近ではカナダのデベロッパーの北参道の計画がある。高輪? 高輪はない」と、高田氏は「日本での案件? 今は言えないが渋谷の公共建築物がある。秋には公表できる」とそれぞれ語った。
明嵐氏についても一言。明嵐氏は平成5~6年ころの同社野球部がRBA優勝したころの主力の一人。平井幹人・常盤橋開発部長とほぼ同期。3年前に赴任し、現在、シンガポールを拠点に7か国9都市を飛び回っているとか。
A棟(若手のデザイナーが担当)
B棟
D棟
E棟
Low-Eがあるのに床暖房はオプション 大京「鶴瀬」の商品企画は正解か
「ライオンズ鶴瀬グランフォート」完成予想図
大京が分譲中の「ライオンズ鶴瀬グランフォート」を見学した。駅から徒歩7分の全81戸で、昨年12月から販売を行っており、これまで約半分が分譲済みと好調。商品企画はどうあるべきか、記者は何を伝えるべきかを改めて考えさせられたマンションでもある。
物件は、東武東上線鶴瀬駅から徒歩7分、富士見市鶴馬1丁目に位置する12階建て全81戸。竣工予定は2020年3月13日。先着順(12戸)の専有面積は63.98~75.78㎡、価格は3,270万~4,190万円(最多価格帯3,500万円台)、坪単価170万円台。設計は安宅設計。施工は穴吹工務店。
現地は、道路の拡幅工事を中心とする区画整理事業が進行中のエリアの一角。徒歩2分に公園、徒歩16分に「ららぽーと富士見」がある。
建物は菜園スペース付きの南南西向き。主な基本性能・設備仕様はリビング天井高2400ミリ、二重床・二重天井、ダブルアウトポール、Low-Eガラス、換気機能付きドア、グリーンカーテン、御影石キッチン天板など。「いきもの共生事業所認証」を取得している。
昨年12月から販売を開始しており、これまでに約半数が販売済み。
クローク
◇ ◆ ◇
この物件の存在すら知らなかった。見学取材するきっかけを与えてくれたのは先週号の「週刊住宅」だった。このマンションが3段見出しの記事として扱われており、坪単価は「170万円程度」(同社によると170万円台)で、商品企画プロジェクト「ライオンズリビングラボ」の新たな収納提案「LASSIC SPACE」(ラシックスペース)と洗面空間「SKITT&SMART」(スキット&スマート)を導入したのが好評と報じられていた。
記者は、いま当たり前になっているキッチン、洗面室、トイレなどの収納提案の先駆けは同社だと思っている。これに新たな提案が加わったのなら見なければならないし、坪単価170万円でどの程度の設備仕様レベルが保てるのかもチェックしなければならないと考え、取材を申し込んだ。
モデルルーム
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約75㎡のモデルルーム主寝室に提案されていた「LASSIC SPACE」は〝ここまでやるか〟と思えるほどよくできていた。収納棚が自由自在に動かすことができ、小物を置けるスペース、消臭クロス、色の再現性の高いライト、姿見などがあり、デッドスペースなどほとんどない。主婦は小躍りするはずだ。
Low-Eガラスの採用にも〝さすが大京〟と驚嘆した。坪単価170万円台の郊外物件でLow-Eを採用したマンションはあったか。まずないはずだ。同社は極力標準装備するようにしているという。そのほか、同社の〝おはこ〟パッシブデザインも盛り込まれている。
だが、しかし、よかったのはここまで。あとは首をかしげざるを得ないものばかりだった。
いちばん驚いたのは、リビングに床暖房が入っていなかったことだ。販売事務所の光熱費を削減するために床暖房を切っているのかとも考えたが、図面には記載がなく、同社に確認したところ「オプション」だった。
いまのマンションで床暖房がオプションというのはほとんどないのではないか。(この日は寒かったので気が付いた。そうでなければ当たり前の床暖房などチェックしない)価格を抑える=購入者の負担を軽くするための企画であるのは分からないではないが、なんでそこまでと考え込まざるを得ない。同社は「(建設後)変えられないところを最優先した。当社は地方を含めほぼ全ての物件にLow-Eを採用している」と説明している。
これで坪単価の安さに納得したのだが、正直、〝ライオンズ〟(記者は60年来のライオンズファン)〝グランフォート〟(これは難攻不落の城塞とでも訳するのか)のブランドが泣くと思った。かつて〝量の大京から質の大京へ〟とも書いた。あれは間違いだったのか。どこもやらないことをして、どこもやることをしない-これは正解か。皆さんも考えていただきたい。
もうこれ以上書かない。同社に限ったことではない。マンションの質の低下は目を覆いたくなるほどひどい。同社の「リビングラボ」について書いた記事をいくつか紹介する。ぜひ読んで頂きたい。あれから10年以上が経過する。同社の商品企画担当部署には当時のメンバーはほとんどいないのではないか。
「週刊住宅」の「鶴瀬」を書いた記者の方に。貴殿・貴女が坪単価を書かなかったらスルーしていたかも。感謝申し上げるが、いったい駅の対面で販売されているマンションの坪単価はいくらかご存じか。エリアの相場を把握していないといい記事は書けないですよ。
こうなったらついでだ。「書かないで」と言われているが書く(本人も読まないはずだ)。ここで書くことは全てのデベロッパーの商品企画にも参考になるはずだ。
記者は昨年の首都圏ベスト3マンションのひとつにポラス「浦和美園」を選んだ。単価はべらぼうに安いのにスペックはフル装備していた。もちろん床暖房も(Low-Eはさすがにないが)。
しかし、引き戸がソフトクローズ機能付きでなかったのに対して(記者も見落とした)、同社の関係者は「なぜだ」と不満を漏らした。この声はマンション担当者にも伝わっているはずだ。部署間の風通しがいいから商品企画がよくなる。
その「浦和美園」が160戸も売れているのにびっくりした。販売開始8カ月でだ。
進化する〝ライオンズ リビング ラボ〟 大京「ライオンズ宮前平ヒルズ」(2016/5/13)
パッシブとスマートを融合した大京「港北ニュータウン」完成(2015/8/21)
大京 ライオンズ リビング ラボをフル装備した「ライオンズ三鷹台」(2012/5/16)
「女性活躍」待ったなし 第三弾 大京アステージ課長代理・山岸真樹氏に聞く(2015/9/10)
コスモスイニシアの賃貸「旗の台」全43戸 1カ月で満室 企画(頭脳)の勝利か
「コスモグラシア旗の台」
書かなければならない記事が3本あるのだが、こうなったら〝後入れ先出し〟だ。おそらく他の記者の方は見ていないか、見ていてもまだ記事化していないはずのコスモスイニシアの賃貸マンション「コスモグラシア旗の台」だ。4階建てで高さが10m、しかもバルコニーが付いていないにもかかわらず募集1カ月で全43室が満室になるという、驚嘆の物件だ。
物件は、東急池上線旗の台駅から徒歩10分、大田区北馬込1丁目の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約705㎡、延べ床面積約1,608㎡、容積率184.3%(容積対象レンタブル比96.2%)の4階建て全43戸。専用面積は25.92~51.85㎡、賃料は9.3万~18.0万円(平均坪単価は1.2万円強)。リーシングは三井不動産レジデンシャルリース。竣工は2019年1月31日。リート市場で売却する予定。
現地は、旗の台駅、長原駅、馬込駅の3駅からのほぼ中間、環七通りから一歩入ったところ。
建物は4階建てだが、高さを10mに抑え、内廊下方式とし、居住面積を広くするためバルコニーを設けていないのが特徴。
物件の進捗管理を担当した同社ソリューション本部 統括部投資用不動産推進課課長・吉村昌浩氏は、「敢えて建物を10mに抑え、エレベータを設置して内廊下とし、バルコニーを設置しないことについては賃貸の業者さんからつけるべきと言われ悩んだが、付けなくて正解だった。それでも満室になるのは6月ころかと思っていたら、募集開始1カ月で満室になった。驚いている」と話した。
今秋には同シリーズの賃貸マンション「入谷A・B(仮称)」が完成するという。
約41㎡の部屋
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今週は、長谷工コーポレーション「千石」、三菱地所「西永福」、東急不動産「赤羽志茂」に続いて今回の「旗の台」と4物件も分譲マンションではない賃貸・老人ホーム・寄宿舎を見学取材した。
今回も利回りを計算した。分譲マンションなら坪単価は300万円をはるかに超え、350万円でも難しいのではないか。しかし、アクセスは馬込駅からも長原駅からも環七を通らざるを得ず、旗の台もやや坂がある。坪350万円で10坪のコンパクトなら売れるかもしれないが、20坪ならまず売れない。そんな立地だと思う。(この前書いたモリモト「旗の台」はひょっとすると目を剥く価格になるかもしれない)
賃料から類推して利回りは5%くらいではないか。それが1カ月で満室になるのだから、分譲よりはるかに効率がいい。「千石」「赤羽志茂」も分譲だったら苦戦するのは間違いない。
4物件を見て、その土地の価値を最大化する選択肢はどんどん増えているという印象を強くした。土地の仕入れ担当者は間口を広げ、引き出しの数を増やさないといけない時代だ。
コスモスイニシアの賃貸は初めて見た。素晴らしい分譲同様、頭脳が冴えわたっている印象を受けた。直床・天井高2400ミリは分譲でも復活してきたのでありなのか。設備仕様はよくわからない。物干しポールは当たり前。
約25㎡の部屋(バルコニーを設置すればこのようなベッドの配置はできない)
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記事とは関係ないが、吉村氏はかつて同社野球部のエースで、小さな体ながら、だからこそでもあるのだが〝打たせて取る〟コントロールが抜群で強打者を手玉に取った。
しかし、チームの打力は並以下で、守備力はザルどころか底が抜けた桶状態だったので〝出ると負け〟を続けた。それでも吉村氏は〝打たれた自分が悪い〟と言いたげそうに微笑み、ナインを叱ることなど全くしなかった。
50歳を超えて硬式野球でまた投げるようになり、マスターズ甲子園の埼玉大会でで投げているという。マラソンもしているそうだ。確かタイムも聞いたはずだが、酔っぱらっていたので忘れた。
マラソンと言えば、今は明かせないがあるゼネコンのRBA選手が今度の東京マラソンで走る。タイムがすごい。3時間10分が目標とか。本人から結果を聞いて記事にする予定だ。このゼネコンの最近の業績はうなぎのぼりで、この選手もあと1時間短縮すればオリンピックに出られるのではないか。
まだ続きがある。吉村氏からサヨナラ打を放ったことがある、野球関係者なら知らない人はいない、あるチームのかつての主砲で現在は賃貸リースを担当している部長さんに話したら、即座に「安い」と評価し、「ああ、あそこ」と現地も特定した。賃貸のプロというのもまたすごい。
あっ、いけない。そうでなくとも記事が右往左往するのに、昨夜の酒が残っているのか-いや確実に残っており記事が千鳥足状態になってきた。ここまで付き合ってくださった読者の皆さんに感謝いたします。
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【追記】同社の広報もまたさすが。上記の記事をアップしてから約1時間。もう酒は完全に抜けたが、記憶が抜け落ちていた。4年前、同社の投資用賃貸マンション「向島5丁目プロジェクト」を見学し、記事にもしていることを指摘してもらった。記事を添付したので読んで頂きたい。あれはよかった。
吉村氏にもタイムを聞いた。10キロを50分だとか。これは速い。記者は20歳代、皇居(5キロ)をこれくらいで走ったか。いま走ったら再起不能になる。
「TSUNAGU(つなぐ)」がテーマ コスモスイニシア 投資用賃貸「向島5丁目」竣工(2015/3/20)