名古屋「グローバルゲート」にプリンスホテル出店
「グローバルゲート」完成予想図
豊田通商・大和ハウス工業・日本土地建物・オリックス・名鉄不動産の5社は8月20日、名古屋市中村区の「ささしまライブ24地区」で開発を進めている「グローバルゲート」のウエストタワー上層31階から36階にプリンスホテルがホテル・レストランを開業し、2階から4階にコンファレンスセンターを設置すると発表した。同ホテルとしては名古屋初進出。
「グローバルゲート」は、あおなみ線ささしまライブ駅に直結(名鉄・近鉄名古屋駅から徒歩10分)の36階建てウエストタワー、17階建てイーストタワーの2棟で構成され、延べ床面積は約15.7万㎡。竣工予定は2017年3月、ホテル部分は同年秋開業予定。事業は5社が組成する「ささしまライブ24特定目的会社」が担う。
「ささしまライブ24」地区は、名古屋駅の南に位置する旧国鉄笹島貨物駅跡地の約12.4ヘクタールと中川運河船だまり周辺を含む大規模再開発エリア。
創業30周年の明和地所 「クリオ青葉台」で廊下幅1.5m実現
「クリオ青葉台」完成予想図
明和地所が分譲中の「クリオ青葉台」を見学した。東急田園都市線青葉台駅から徒歩5分の住居系エリアに立地するレベルの高い全34戸のマンションで、4月末から分譲開始しているが、残り5戸と販売も好調だ。
物件は、東急田園都市線青葉台駅から徒歩5分、横浜市青葉区榎が丘の第1種住居地域に立地する6階建て全34戸。専有面積は60.22~84.61㎡、現在、先着順で分譲している住戸(5戸)の価格は5,476万~7,994万円(60.50~82.71㎡)、坪単価は286万円。入居予定は平成28年6月下旬。設計はいしばし設計。施工は大勝。
4月末のゴールデンウィークから販売が始まっており、現在、残りは5戸。戸建てからの買い替えや買い増しが多いのが特徴という。
建物は南向きが中心で、建物の外周を緑で覆い、エントランス部分には鉄平石を配しているのが特徴だ。キッチンや洗面化粧台はカラーセレクト・デザインセレクト・アイテムセレクトが無償で選べる〝conomi〟を採用している。
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リーズナブルな単価を聞いて、80㎡台のモデルルームを見学してすぐ、人気になるのが分かった。モデルルームはリビングももちろん大事だが、記者は玄関を入ったときの印象を重視する。
このマンションのいいところは玄関とそれに続くホール・廊下にある。廊下幅は何と約1.5mもあった。メーターモジュールの廊下幅を確保しているマンションが少なくなっているとき、この広さを確保しているのにびっくりした。トイレも含めドアノブは壁面まで後退させるか、引き戸を採用していた。
廊下幅が広いのはこのモデルルームだけでなく、60㎡台でも960ミリ(芯心)確保し、1130ミリというのが中心だ。
キッチンもいい。カウンターはステンレスで、食洗機もバックカウンターも吊戸棚も標準。間取りプランでは、主寝室にDEN(約1.4畳大)を設置するとともに、娘との同居を想定した親子で使えるクローゼット(約2畳大)を提案しているのがいい。
最近のモデルルームは子育てを意識したものが多いが、主人や主婦の居場所をもっとデベロッパーは考えるべきだ。その点で、このモデルルームは双方の心をくすぐる工夫を凝らしている。だからこそ、戸建てからの買い替え・買い増しの潜在的な需要を掘り起こしたのだろうと思う。
モデルルーム
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同社は今年で創業30周年を迎えた。記者は創業の経緯から今日までずっと同社を取材し続けてきた。創業してすぐにバブルが崩壊したが、同社はそれほど影響を受けなかった。それどころか、100㎡の〝ㇾミントンハウス〟に象徴されるように商品企画で業界をリードするまで成長した。しかし、あの〝国立問題〟をきっかけに同社は長い迷路にはまり込んでしまった。
今回の物件を見学して、その長いトンネルから同社が抜け出すのではないかという予感がした。1.5m幅の廊下だ。かつての同社にはそのようなチャレンジ精神が満ちていた。何かをつかむきっかけになってほしい。この物件のほか最近供給した「東小金井」「大島」「清瀬」なども売れ行きは極めて順調に推移しているという。今後の商品企画に期待したい。
エントランス
旭化成ホームズ 二世帯住宅調査報告会・入居宅見学会
久世さんご家族
旭化成ホームズは8月8日、二世帯住宅調査報告会・入居宅見学会を行った。同社は今年、二世帯住宅を販売してから40周年を迎えたが、調査は同居前不安による同居ブレーキの解消法と同居層・近居層の親子間に見る同居アクセルを探ったもの。同居ブレーキの解消法として、水廻りを2カ所設置しながらも互いの水廻りも使用する「Wシェアスタイル」などのプランニング例を提案している。入居宅見学会では、多様なライフスタイルに柔軟に応えていることがよくわかった。
調査報告書は、「息子夫婦同居・娘夫婦同居で異なる同居前不安と交流意識 ~同居前不安による同居ブレーキの解消法と同居層・近居層の親子観にみる同居アクセル~」と題するA4判76ページにのぼるもの。へーベルハウス入居者や将来同居・近居検討者、一般調査など2万件以上のWEBアンケートや訪問調査をまとめたもの。
調査結果からは、同居前に不安を感じている割合は92%に達していることが分かった。息子夫婦同居に対しては「嫁姑の関係」に不安を感じる子世帯妻が88%と最も多く、娘夫婦同居については、子世帯夫は「一人になれない」不安を感じている(64%)など、それぞれ異なった不安を抱えていることが浮き彫りになっている。
同居に踏み切るアクセルでは、息子夫婦同居では、30年前の家父長制などの社会的規範が薄れてきており、一方で「育児協力のため」「親が老齢」などの比率が高まっていると指摘。娘夫婦同居については、「何とか助けあえる」「親の老後を考えて」「育児協力のため」が増える傾向にあるとしている。
親世帯・子世帯の交流では、「すべて別だが交流盛ん」がもっとも多く、キッチンが2つあり他方も使う共用状態が娘夫婦同居では34%にのぼり、「Wシェア型」が増えていると報告。同居前不安の解消を促す二世帯住宅プランテクニックを提案している。
報告会に臨んだ同社取締役常務執行役員マーケティング本部長・川畑文俊氏は、「今年2月に二世帯住宅40周年を迎え、キャンペーンを実施したが受注は順調に伸びている。今年度は2割増を目指している」と、二世帯住宅の受注に注力すると話した。
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豊島区の久世邸は、建物の老朽化のため建て替えて5年。第一種低層住居専用地域に位置する2階建て延べ床面積約211㎡。1階が子世帯、2階が親世帯。それぞれ専用の玄関を持つが、内階段でつながっており、また、屋上へはそれぞれベランダに設置したサーキュラー階段でアクセスできるよう工夫しているのが特徴。
ご主人(45)は、「それまでマンションに住んでいましたが、同居は漠然と考えていた。マスオ? 気にならないですね。非常に大事にしてもらっている。義母は妻以上に私のことを心配してくれている。両親が地域とのコミュニケーションも取り、地域とつなぐ役割を果たしてくれている」と語り、奥さんは、「母の〝2階で暮らしたかった〟という希望を入れて親世帯を2階にしました。屋上へのアクセスは彼のため。主人は子育てには協力的ですが、家事労働はあまりしない」と話し、大学生の娘さんは、「両親が共働きだったので、おばあちゃんにしょっちゅう面倒を見てもらっていた。母が2人できたよう」と楽しそうに話した。
杉並区の徳田・早川邸は商業地域に位置する賃貸併用の3階建て延べ床面積約527㎡。建物の老朽化と消費増税が建て替え動機となり、1年前から入居開始。元々子世帯が建て替え前の住居併設のアパートの一室に居住していたことから、自然と同居するようになったという。1、2階は賃貸住宅。3階の1フロアをほぼ完全に分離して、お互いがなるべく干渉しないようにプランニングしているのが特徴。親世帯にはホームエレベータが設置されている。
音楽プロデューサーの徳田邸のご主人(62)は、「(義理の)息子も仕事が忙しそうで、1週間に1回くらいしか顔を合わさない。全く干渉もしない。プランはわたしがまずキッチンの位置を決めた」という。「これまで娘3人を含め、女系家族だったので、孫に男の子が生まれ、女房は久々に家に男が入ってきたと喜んでいる」と笑わせた。料理は玄人はだしのようで、調理師の免許を持っている。
奥さん(62)は、「娘と住めるのはとても気楽で楽しい。お婿さんには気を遣うが自然体で接してくれている」と話した。
早川邸の奥さん(32、徳田氏の次女)は、「お互いプライバシーを尊重しており、食事が一緒というのもほとんどないが、隣に親が住んでいる安心感がある」と語った。
徳田さんご夫婦と娘さんの早川さん&お子さん(久世さんのお宅と同様、キッチンが素晴らしい)
旭化成ホームズ 二世帯住宅「娘夫婦同居」30年前の23%から34%へ この数字の意味(2015/8/9)
三井デザインテック ミラノサローネに見る最新のトレンドをリポート
三井デザインテックは8月17日、今年のミラノサローネ国際見本市の分析と家具や空間デザインの最新トレンドをまとめた「Design Trend Report 2015」を発表した。
レポートは、今年のミラノサローネでは、彩度・明度とともに低く、全体的に落ち着いた深みのあるカラー表現が昨年同様よく見られたとし、全体的にくすんだグレイッシュなカラーが多い一方で、シーズンカラーとして赤の存在感が目立ってきているとしている。
また、形状の変化としては、生活スタイルに応じて自在に形をアレンジできるモジュール・システムが増加し、フレキシブルなフォルムの家具が多く展開されてきており、特に、今シーズンは曲線を活かした形状のデザインや軽量感のあるフレーム・デザインが特徴的としている。
さらに、ウッド素材と最新デザイン技術が融合した独特の素材感が加わっているパターンが多く、アフリカやインドなどの伝統的な柄をアレンジしたパターンなどもよく見られた。
スペースデザインとしては、ブラックを効かせた、クラシックとモダンが調和した空間スタイリングがトレンドとして数多く展示され、可愛らしさとクラシカルさがミックスした柔らかい色の組み合わせによるノスタルジックなスパイスを効かせたフェミニンな空間スタイルも注目されたとしている。
ミラノサローネ全体から見える様々なトレンドを分析した結果、新しいデザインの潮流は、「原点回帰」「本格派志向」「手作り」だという。
以上のような傾向から読み取れる2015年のインテリアトレンドにおけるキーワードは、「Exceed The Nostalgia~手仕事によるクラフト感と時代を超越した上質感~」であり、レトロとモダンがミックスされ、人の手を感じられるインテリアが多く登場してくるとしている。
三井デザインテックは10年にわたり、ミラノサローネを定点観測しており、デザイントレンドレポートとして毎年発表。2015年は7月24日を皮切りに、業界関係者向けに三井デザインテックデザインラボラトリー所長・見月伸一氏によるデザイントレンドレポートセミナーを開始している。
東京ミッドタウンに隈研吾氏デザインの国産スギを用いたつみき展示
「つみきひろば」イメージ図
開催9回目を迎える今年の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH2015」に建築家・隈研吾氏がディレクションした国産スギを素材にデザインしたつみきが芝生広場に展示される。森林保全団体more trees(モア・トゥリーズ)が協力する。
「つながるデザイン」をメインテーマに、芝生広場だけでなくガレリア内での展示・製品化されたつみきの発表など、東京ミッドタウン全体を巻き込んだつながるデザインを披露する。
more treesは、〝もっと木を〟をコンセプトに音楽家 坂本龍一氏の呼びかけで設立された森林保全団体。人工林の間伐を推進し、木材をはじめとする様々な仕組みづくりに注力している。
「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH2015」は2015 年10月16日(金)~11月3日(火・祝)、11:00~18:00、東京ミッドタウン・ガーデン芝生広場(入場無料)で。
不動産経済研究所 「住宅・不動産業界 激動の軌跡50年」を刊行
マンションの市場動向を調査発表している株式会社不動産経済研究所が「住宅・不動産業界 激動の軌跡50年」を刊行した。同社は、不動産業界人にとって必読ともいえる日刊紙、「不動産経済通信」を発行しているが、その月曜日付けのコラムの50年分の中から時代の変遷を特徴づける157編をピックアップして編集したものだ。昨年、同社が創業50周年を迎えたことから贈呈本として編纂した。評判が良いので直販で売り出すことにしたという。
同社から本が送られてきたのでページを捲ってみた。はっきり言ってこれは面白い。第1部高度成長期~列島改造からオイルショックまで、第2部安定成長から民活・バブル前夜まで、第3部狂乱バブル発生、波及そして崩壊、第4部失われた20年~資産デフレと都市再生、Jリート、第5部リーマンショック、東日本大震災から再び五輪へ、という5部立て。その時々の政策の動きや世間の目線、不動産業界の受け止め方などが手に取るようにわかる。それぞれのコラムが2000字強なので読みやすい。
記者は、「ふむふむ、そういえば、あのときはこんなことがあったな」などと思い出しながら読んだ。読み終わって感じたのは、不動産業界の歴史は繰り返えしの歴史だということ。バブルが起きて崩壊して、またバブルが起きて崩壊する。いつか来た道、とわかっていながらも突っ込んで行って破局を迎える。この50年間、不動産業界はこれを繰り返してきた。その意味では、同書は歴史を振り返る本であるとともに、未来を展望するための本としても読める。
一般書店では扱っていないので、購入は同社のホームページからアクセスして申し込んでほしい。https://www.fudousankeizai.co.jp/
「女性活躍」待ったなし 不動産業界の取り組み/野村不HD・宇佐美広報部長に聞く
宇佐美氏
はじめに
野村不動産ホールディングスの広報IR部長に宇佐美直子氏(45)が今年4月に就任したことが、業界内で話題になった。大手デベロッパーで初の女性部長が誕生したからだ。記者自身も率直に喜んだ。広報の部署は企業にとって〝顔〟であり水先案内人だと思う。極めて重要な役割を担っている。一つ間違えばとんでもない方向に導きかねない危険性もある。
そんな重要なポストに女性が就いたのが嬉しいのだが、考えてみれば、長いデベロッパーの歴史の中で宇佐美氏が初の女性部長というのも情けない話だし、それを喜ぶ記者自身も女性を差別的に見ていないかという反省もするのだけれども、これがわが業界の現状だ。
そんな現状を記者は残念に思っている。不動産業界にとどまらないことだろうが、広報の部署は女性の比率が高いはずだ。40年近い記者生活の中で多くのデベロッパーやハウスメーカーなどの広報にはお世話になったが、女性担当者は男性に劣るどころか実にきめ細やかな対応をしていただいた。私生活においても同様に、何かにつけ女性のほうが優れていると確信をもって言える。
ところが、現状は女性差別的な雇用慣習が幅を利かせ、家庭でも社会でも差別的な処遇を受けていることは否定できない。だからこそ、安倍政権は「女性活躍」をアベノミクスの成長戦略の柱に据え、安倍総理は「女性活躍は焦眉の課題」と国連で演説もした。
記者もその通りだと思う。「女性活躍」の文言はなにやら胡散臭い雰囲気も漂い、「女性だけを括るのは問題」という声も聞こえてきそうだが、デベロッパーやハウスメーカーが女性差別的な雇用慣習を改め、「すべての女性が輝く」職場環境を整えるヒントにでもなればと、取材を開始することにする。
キックオフのインタビューはやはり「女性初の広報部長」に就任した宇佐美氏が適任だと思う。
◇ ◆ ◇
これまでも数回、宇佐美氏には会っており薄々は感じていたのだが、インタビューを始めて数分も経たないうちに「女性は差別されている」という記者の固定観念が当てはまらないことに気づいた。宇佐美氏にはそんな色眼鏡で見るのが失礼であり、そもそも通用しなかった。
最初に、「御社グループは2013年に『ダイバーシティ推進委員会』を設置され、『従業員満足度調査』をされましたが、受け取り方によっては、御社の社員の満足度はそれほど高くないのでは」とジャブのつもりで質問した。
宇佐美氏は「調査会社からは、解答率(従業員1,495人中1,415名、解答率94.6%)が極めて高いと言われました。従業員みんなが『大満足』していたら却って恐ろしい。いろいろ課題があることを認識し、もっとチャレンジしようということが数字に表れているはず。委員会は、当時の中井(加明三)社長(現会長)が『グループ全体として人が大事、これからは多様性を重視しないと生き残れない』と強い意志を示されて発足したもので、従業員の多様性を発揮させようというのが目的であって、女性活躍はそのうちの一つ」と応えた。
ジャブを軽く受け流された記者は早速、本題である宇佐美氏のワークライフバランスに斬り込んだ。
「入社は平成5年。宅建は入社前に取得していました。最初の配属は住宅の販売。いきなり『明日から四街道へ行け』と言われまして、毎日、2時間かけて実家の浦和から遠足気分で『ツイン エル シティ』へ通いました。家を出るのが5時。忙しい金曜とか土曜日は千葉に泊まりました。営業は6年間やりました。その間に結婚もしました」(平成5年ころの同社のマンション事業は業界内では10本の指に入っていなかった。プラウドを立ち上げたのは平成15年)
「思い出にあるプロジェクトは『浦和』のマンション。女性による女性のためのマンション講座をやりたいと上司にお願いしたら認められまして、男は一人も会場に入れずに女性の方に集まってもらい、大きな都市計画地図を広げて、商業エリアは駅に近いけど高い建物が周囲に建つとか、郊外は高い建物が建たないので居住環境がいいとか、ライフスタイルを考えたほうがいいなどと話しました」(女性単身者がマンションを買うようになったのは平成7年ころから。宇佐美氏はその流れを機敏に捉えたようだ)
この話を聞いて、武勇伝を聞くのを止めた。聞けばたくさん出てくるだろうが、「女性だから」という質問は失礼だと思ったからだ。そこで、「仕事と育児・家事の両立」について聞いた。
「子どもは中3と中1の二人。共働きですから、主人が子育ても料理も掃除もすべてやってくれています。頭が上がりません。料理は主人のお父さんがやっていたようで、それが影響しているのかもしれません。主人は剣道部出身でして、私は何でも雑なほうなのですが、とても几帳面に洗濯物なども折りたたんでくれる。家事労働についてのインタビューは主人に代わったほうがいいかもしれませんね。喧嘩? やったことないですね。主人がすべて飲み込んでくれる」
核心をつく言葉だ。「女性活躍」は、職場の理解ももちろんそうだが、家庭での男性の理解と共働がないと無理だとずっと思ってきた。記者は40代に妻を亡くしてからほぼ10年間〝主夫〟をやったのでよく分かる。家事労働をお金に換算したこともあるが、月額30~50万円はする。それほど価値のある家事の仕事を女性、または男性一人でやれるわけがない。「女性活躍」は男性の働き方を変えないとダメというのが記者の持論だ。
宇佐美氏について、野村不動産アーバンネットの前会長・金畑長喜氏が「彼女は頑張り屋さん。誰もが評価している」と語ったが、それだけ頑張れたのもご主人と一緒に家事・育児をやってきたためだろうと得心がいった。
余談だが、弊社にも剣道部出身がいる。一緒にホテルに泊まった時だ。寝る前にきちんと真四角に下着類をたたんだのにはあ然とした。体育会系の男性は結婚相手にお勧めだが、剣道部が一番だ。徹底して礼儀作法、武士道精神を叩きこまれるのだろう。
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「いま広報部には12人のスタッフがいますが、7人が女性。うち5人がママさんです。会社全体も変わりましたね。寿退社も少なくなりました。わたしの後輩が育っているか? ここ数年で続々増えると思います。母数がどんどん増えていますから。もう時間の問題だと思います」「広報部長に就任して、業界初の女性部長と言われているが、私は淡々と粛々とやるしかないと思っています。男女関係ない」と締めくくった。
同社グループの「ダイバーシティ推進委員会」の活動は3年計画だ。来年がその3年目だ。どのような成果があがったのか、どのような課題が見えてきたのか、その時が来たらまた取材したい。
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同社が「ダイバーシティ推進委員会」を設置したのは、中井会長の発案だったことは先に書いたが、トップの判断が極めて重要であることは、大沢真知子氏の「女性はなぜ活躍できないのか」(東洋経済新報社)でも指摘されている。
大沢氏は、ダイバーシティの取り組みで成功した企業をいくつか紹介しており、その企業トップの声も紹介しているので以下に引用する。
〇資生堂の元副社長・岩田喜美枝氏「女性登用に力を注ぐことができたのは当時の社長のおかげ」
〇大和証券グループ本社会長・鈴木茂晴氏「上が本気でなければ中間層は動きません…女性の本気度が試される時代になった」
〇ファーストリテイリング会長・柳井正氏「育児も大事だし、仕事も大事。両立できるとおもわないといけない」
〇セブン&アイ・ホールディングス会長・鈴木敏文氏「自分たちが殻を破るんだという強い意識をもって働いてもらうことが大事」
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「女性活躍」を阻む厳しい現実も突きつけられている。厚労省のデータをいくつか紹介する。
・男性の育児休業取得率は2.3%(平成26年度)の低水準にとどまっている
・育児休業を取得しない理由として「職場の雰囲気」が依然多い
・25歳から34歳の女性の雇用形態は、「非正規の職員・従業員」比率が1990年から2014年にかけて28.2%から41.9%に高まっている
・パート・派遣の非正規労働者の育児休業後の職場復帰は平成17~21年で4.0%(正規は43.1%)にとどまっている
・夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、また、第2子の出生割合も高い傾向にあるが、日本の夫の家事・育児関連時間は、1時間程度と国際的に見ても低水準であり、かつ、家事・育児をほとんど行っていない者の割合も高い
ポラス 4年振り7度目の耐力壁トーナメント優勝 総合は滋賀職能大が4連覇
破壊された滋賀職能大「Aegis」(左)と優勝したポラス「板挟み」
「板挟み」のメンバー(中央が上廣氏)
木造耐力壁の強さと総合評点を競う第18回木造耐力壁ジャパンカップが8月8日~10日、静岡県富士宮市の日本建築専門学校で行なわれ、ポラスグループのポラス暮し科学研究所「板挟み」が4年ぶり7度目のトーナメント優勝を飾った。決勝戦で「板挟み」に敗れた滋賀職業能力開発短期大学校「Aegis(イージス)」が耐震性やデザイン性、材料費、環境負荷費などコストパフォーマンスを総合評価するジャパンカップで4連覇を達成した。
「板挟み」は、ヒノキの板を柱で挟む複合柱が特徴で、土台部分には多くのビスを打ち、埋め込み部分に薄鉄板を採用しているのが特徴。準々決勝戦でグループのポラス建築技術訓練校「めりかべ」を一蹴すると準決勝戦でも木考塾「びわ湖1号」も相手にせず、決勝進出。
一方の「Aegis」は、金物を一切使用していないのが特徴で、貫の粘り強さと筋交いの強さを兼ね備えたハイブリット壁。準々決勝戦で予選トッブ通過していたkiba勝timber(東大農学部)「いたまささん」を撃破すると、準決勝戦では日本建築専門学校「アナダラケ」を32キロニュートンの加重で破壊し決勝へ。
決勝戦では10キロニュートンあたりから「板挟み」の優勢が明らかになり、34キロニュートンで完全に「Aegis」が破壊された。
優勝したポラス暮し科学研究所取締役・上廣太氏は、「15回連続出場しており、企業グループの参加は当社のみ。『板挟み』の名前が象徴するように内からも外からも攻められる。ここは負けられない。最高の記録62キロニュートンを更新したい」と試合前に語った。記録は46.9キロニュートンにとどまり記録更新はならなかったが、安堵の表情を浮かべた。
ジャパンカップ4連覇を達成した滋賀職能大の講師・覚張良太氏は、「材料の赤松は県内で採れたもの。家を造るために山がある。地産地消が基本。壁は特殊な技術がなくても加工しやすく、早く組み立てられるのが特徴。今回は土台の目に見えない部分に斜めを採用したのが特徴」と話した。解体時間はも他が20分超えが続出していたのに4分42秒と飛びぬけていた。
審査を担当した日本住宅・木材技術センター理事長・岸純夫氏は、「金物を使わなくても強い耐力壁が多数参加したことに大会の進歩を感じた」、法大デザイン工学部建築学科教授・網野貞昭氏は、「昨年度あたりまでは、この大会はオタクの特殊な趣味を持っている人の研究会のようなものと考えていたが、実際デザインに携わってみると壁に助けられていることを実感した。これから大規模な木造を造らないといけない。役割は増すはずだ」、建築家で東大非常勤講師の河野泰治氏は、「壁には本来の目的だけでなく、そのまま見せてもいいし、ダクトにもなる。これから面白い展開が可能になる」などとそれぞれ講評した。
滋賀職能大のメンバー(左が覚張氏)
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記者は今回で耐力壁ジャパンカップの取材は7~8度目になるのではないか。「貫」「込み栓」「やとい」「楔」「キロニュートン」など専門的な用語が飛び交うので、一般の方は理解するのが大変だろうが、見ていてなかなか面白い。民間スポンサーを増やし、イベントなどを組み合わせれば、一般の人も見学する大会になるのではないか。
参加チームが10チームと少ないのも気になった。多いときは30チームくらいあった。
◇ ◆ ◇
今回もポラスの呼びかけで11日の取材に参加したのだが、日刊木材新聞社・橋本崇央編集長とパーク・川口美貴氏も参加していた。わたしも含め、この3人は三重県関係者であることを知った。
橋本氏は埼玉県出身なのだが、奥さんが三重県桑名市出身で、川口氏は松阪、記者は伊勢(度会)出身だ。
この日は朝から具合が悪かったのだが、3人が「三重」と聞いて辛さは吹っ飛んだ。三重県人に共通するのは律儀だということだ。
(ところが喜びはここまで。自宅に帰り、その後13日まで3日間床から起き上がることができなかった。ほぼ1時間に1度、トイレに駆け込み、お猪口1杯も出ない排尿に呻吟し、38度を超える熱にうなされ、鳥肌が立つほどの悪寒に襲われ、躁と鬱が交互に展開する白昼夢に自分を失っていた。酒は一滴も飲まず、タバコも数本しか吸えなかった。こんな経験はこれまでの人生で初めての体験だった。医者の診断によると夏バテと膀胱炎の合併症とのことだった。出したくても出ない、我慢しようにも我慢できない、それが膀胱炎だ。こんな厄介な病気はない)
「板挟み」(左)とポラス建築技術訓練校「めりかべ」
「負けたときは〝金物を使っていないので〟という言い訳もちゃんと用意してきました」めりかべのメンバー
解体作業を行なうポラス「板挟み」
三井ホーム 枠組工法とCLTを組み合わせ実証事業が林野庁の補助事業に採択
三井ホームは8月11日、CLTを用いた林野庁の補助事業「CLT建築等新たな製品・技術を活用した建築物の実証事業」に、グループ会社の三井ホームコンポネトの事務所棟計画が採択されたと発表した。
同事業はCLT(直交集成板)の新たな木材需要の創出を通して木材利用を拡大し、地域材の安定的・効率的な供給体制を構築することで、林業の成長産業化の実現を図ることを目的としている。
建築予定の事務所棟は、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)に国産材CLTを床・外壁・天井部分に使用する初の試み。断熱性・遮音性など各性能の測定実証、施工合理化の可能性などの検証を行っていく。
来年度には国土交通省からCLTに対する基準強度ならびに設計法が定められることが予定されており、同社グループは三井ホームコンポーネントを中心に今回の建築実証により、幅広い用途でのCLTの活用に向け、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)による大規模施設系建築における活用を視野に研究を続けている。
CLT(CrossLaminatedTimber)は、ひき板層を各層で互いに直交するように積層接着したパネル及び、それを用いた構法を示す用語。1990年代にヨーロッパで開発され、8~10階建てのマンションや、中・大規模の商業施設や公共施設、一般住宅までさまざまな建築物が建てられている。
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記者は昨年、経済産業省資源エネルギー庁の事業「エネマネハウス2014」で、CLTを用いた木造住宅「慶応型共進化住宅」(慶応大学/OMソーラー・銘建工業・長谷萬など27社)を見学している。間違いなく普及すると思った。
接合部に課題があるようだが、同社はツーバイ工法による4階建て、5階建ての実績もある。ツーバイとCLTの組み合わせという新たな方向性を探ってほしい。
旭化成ホームズ 二世帯住宅「娘夫婦同居」30年前の23%から34%へ この数字の意味
旭化成ホームズが8月8日、「二世帯住宅調査報告会・入居宅見学」を行なったが、とても興味深いデータが発表された。何の制約もなければ、「息子夫婦同居」と「娘夫婦同居」の割合は50:50になるはずだが、実際はそうなっていないことが明らかになった。同社が二世帯住宅を販売開始してから今年で40周年を迎えたが、今回の調査は息子・娘夫婦同居で異なる不安を解消する提案法を探るのが狙いの一つ。
築30年の二世帯調査回答者の「娘夫婦同居」比率は23%であるのに対し、2013年契約時アンケートではその比率は34%へ11ポイント上昇している。それでも「息子夫婦同居」比率のほうが多数派を占めている。
そこで、記者は同社に「この差はなぜか」と質問した。同社のくらしノベーション研究所所長・松本吉彦氏は、「分かりません」と答えた。
松本氏が分からないというのだから記者は分かりようもないのだが、調査結果からはその理由があぶりだされてくる。
親子同居を検討する際に、9割以上の親世帯、子世帯が同居ブレーキ(不安)を感じるのだが、その不安は嫁や姑の女性のほうがより強く感じていることがテータは明らかにしている。
子世帯から見た場合、息子夫婦同居を検討する妻は「義母と上手くやっていけるかしら」という不安(88%)を抱いており、夫は「母と嫁の関係が心配」という不安(65%)がもっとも多い。一方、娘夫婦同居を検討する妻は「わたしの親と同居する夫のことが心配」という不安(70%)が多数を占め、その夫(マスオさん)は「一人の居場所があるか心配」という不安(64%)がもっとも多い。
一方、親世帯から見た場合、息子夫婦同居でも娘夫婦同居でも、父親も母親も「子世帯に介護の負担をかけたくない」というのが大きなブレーキになっており、とくに息子夫婦同居を検討する母親は「嫁問題はなにかと気遣いが多い」(67%)と答えている。
つまり、妻は姑や夫のことが気掛かりで、その母もまた〝他人〟の嫁との関係を心配しており、娘夫婦同居を検討する夫(婿)は「自分の居場所」を最優先している図式が浮かび上がる。
これらの調査結果は家父長制の名残りであり、家・家族の問題が色濃く反映されていると見ることはできないか。嫁姑問題とは、家や夫に対する不満のはけ口がない姑が嫁にそのままそっくり転化、なすり付けることであり、〝男を立てる〟ことが女性の美徳であるという考えがいまだに世の中を支配しているからではないか。
それでも、同社の二世帯住宅の回答者の娘夫婦同居比率が30年の間に23%から34%へ伸びたのは、同社の営業努力もあるのだろうが、「子育ての援助、高齢親の自宅介護の希望、同居の安心・安全」「女性が仕事をするためには、親の援助が必要」という切実な問題が同居アクセルになっているのは間違いないと思う。