ルール守れば再発防げる 杭打ちデータ流用 国交省・対策委員会
記者会見する深尾氏
業界自主ルールの徹底で再発は防げる-国土交通省・基礎ぐい工事問題に関する対策委員会(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)は12月25日、横浜傾斜マンションに端を発した基礎杭データ流用問題に対する「中間とりまとめ報告書」をまとめ発表。横浜の事案を除き、データ流用は施工不良につながっていないという検証結果を踏まえ、建設業界が自主的に定めたルールを徹底すれば再発は防止できるとした。国交省は近く「告示」としてガイドラインを示す。
報告書はA4判で40ページにのぼるもので、問題の概要・経緯について触れた後、発注者、設計・工事監理者、元請、一次下請け、二次下請けのそれぞれの課題を指摘。それぞれ責任の所在が明確化されていなかったことに遠因があるとして、国交省が施工ルールを定め、業界が自主的に定める施工ルールを誠実に実行することを求めている。業界の構造的な課題については、施工技術の継承を含めて腰をすえて検討すべきとしている。
◇ ◆ ◇
「基本的なルールを業界が定め、それを業界全体で共有し守ればデータ流用はなくなる」-深尾委員長は石井国交相に報告書を提出したあとの会見で何度も繰り返した。
その通りだろうと思う。報告書は過不足なく問題点が指摘されており、極めて明快な方向性が示されている。
問題発覚からわずか2カ月で問題が収束の方向に向かっているのは、日建連を中心とする業界団体の自主規制が強く働いたからできないか。深尾委員長も「早期に方向性が示せたのは業界団体の真摯な取り組みがあったから」と否定しなかった。
しかし、全て問題が解決したわけではない。データ流用と横浜の傾斜マンション問題の関連性は低いとはいえ、国民の建設業界に対する安心・安全の不安は今回の報告書でもっても払拭できないばかりか増大した。深尾委員長も「サラカンの監理に関しては改善の余地がある」と話し、横浜の問題が年明けの再調査待ちになったことに対しても「残念」と不快感を示した。記者団から元請の責任を追及する質問がたくさん出たのは当然だろう。原因を徹底解明して欲しい。
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以下、深尾委員長に対する記者の質問と答え。
-わずか2カ月で明確な方向性を示したが、その感想は
業界団体が再発防止に真剣に取り組んだことが大きい
-新国立競技場選定で、先生はA案、それともB案を支持されたのか
ノーコメント。いろいろ言いたいことはあるがノーコメント。マスコミの姿勢も問題だ。僕のところに夜中に電話してきた(バカな)記者がいたし、伊東さんにあんなことをしゃべらしちゃいけない。デザインだけじゃないんだよ。ゼネコンなどとの共同提案なんだよ(先生、申し訳ない。われわれはつい建築家のデザインに目が行くんです。木造ファンの記者はA案)
-今日はクリスマス。先生はこれからどうされるのか
これからだよ。今年は業界の三大ニュースに全部関わったんだよ。大変だよ(深尾氏は今回の対策委員会委員長とJSCの技術提案等審査委員会委員、東洋ゴム工業のデータ改ざん問題に関する国土交通省の有識者委員会委員長を務めた)
杭打ちデータ流用問題 「信頼回復」のカギは監理機能の厳格運用(2015/12/13)
杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)
今年のベスト3マンション 三井レジ「赤坂檜町」 東建「目黒」 大成有楽「品川勝島」
記者が選んだ 2015年 ベスト3マンション
三井不動産レジデンシャル「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Towers 目黒」
大成有楽不動産・長谷工コーポ「オーベルグランディオ品川勝島」
記者が選んだ「2015年 ベスト3マンション」は、三井不動産レジデンシャル「パークコート赤坂檜町ザ タワー」、東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Towers 目黒」、大成有楽不動産・長谷工コーポレーション「オーベルグランディオ品川勝島」とした。今年新規発売された物件のうち記者が見学・取材した85物件の中から選んだ。「赤坂檜町」と「目黒」は今年のマンション市場を象徴する「都心人気」のエポックマンションで、「品川勝島」は、知名度がないエリアでいかに需要を喚起・創造するかの解決法を見いだした販売戦略が光った。
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
新国立競技場だけでない 「赤坂檜町」も隈氏デザイン監修 圧倒的人気(2015/12/22)
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」は、2年半前に隈研吾氏がデザイン監修することを聞いて、ずっと注目していたマンションだ。
詳細は別掲の記事を参照していただきたいが、東京ミッドタウン・檜町公園に近接するという絶好の立地条件にふさわしいタワーマンションだ。
全322戸のうち一般分譲は163戸だが、地権者向け・事業協力者向け分譲住戸を価格に置き換えたら322戸すべてが1億円になるはずだ。億住戸の多さでは東建「目黒」の365戸には及ばないが、全住戸が1億円以上の物件としては、同社が一昨年に分譲した「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」の98戸を3倍も上回る。この記録を破る物件は出てくるのか。
設備仕様では、これを上回る物件はたくさんあるだろうが、いかにも「和の大家」隈氏らしいランドスケープ・外観・共用部分デザインが美しい。隈氏デザイン監修マンションはこれで「神宮前」「神楽坂」「池袋」に次ぎ4棟目になった。新国立競技場に選ばれたことで、隈氏の知名度は全国区になった。未分譲3戸は年明けに分譲されるが、申し込みが殺到するのではないか。価格は公表済みなので、オークションにはならないはずだ。
一般分譲163戸の販売総額は約432億円、一戸当たり平均価格は、東建「目黒」の倍近い2億6,493万円。坪単価は981万円。坪単価は都心のマンションの相場としてはほぼリーマンショック前の相場に戻したというところか。隈氏のプレミアと赤坂・六本木の将来性を考えれば、妥当な単価ではないか。それにしても9月のモデルルームオープンから半年で160戸の億ションが飛ぶように売れるとは…。都心人気は当分続くとみた。
「Brillia Towers 目黒」
「Brillia Towers 目黒」
東建、プレスリリース「目黒」の“億住戸が過去最多”に「定借除く」追加(2015/12/1)
今年前半の目玉マンション 「Brillia Towers 目黒」は坪600万円(2015/4/2)
「Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE」は坪450万円(2015/4/24)
「Brillia Towers 目黒」も記録的な売れ行きを見せた。今年4月以降のモデルルーム来場者は約1万組に達し、全分譲661戸(平均1億1,434万円)に対して最高倍率43倍、平均4.1倍の競争倍率で、しかもわずか4カ月で完売した。バブル時を彷彿させる狂乱人気だ。1億円以上の住戸も365戸に達し、定期借地権付きを除くと最多記録だ。
記者がもっとも注目したのは価格設定だった。一昨年8月、同社が地鎮祭・記者発表会を行った。報道陣の関心事も価格がいくらになるかに集まった。同社担当者は口をつぐみ一切答えなかった。「400万円くらいではないか」という同業の記者もいた。記者はそんなに安くないとみて、坪500万円をはるかに突破すると読んだ。しかし、坪600万円はまったく予想できなかった。
同社の値付けの巧みさには感服する以外ない。わずか10カ月で777戸が完売するとは夢にも思わなかった。いまだに信じられない。価格は信じられないが、ランドスケープは都心マンションでは突出した出来になるのは間違いない。
「目黒」が坪600万円を付けたことで、都心マンション価格のメルクマールになった。都心人気に拍車をかけた、同社が果たした役割は大きい。
個人的には、三菱地所レジデンスと共同で分譲した「Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE(ブリリア ザ・タワー 東京八重洲アベニュー)」の商品企画レベルの高さに驚いた。こちらは一級品のマンションだ。
同社はこれで2012年の「Brillia多摩ニュータウン」、2013年の「Brillia Tower池袋」に続き、近年では3度目の「ベスト3」入り。
「オーベルグランディオ品川勝島」
「オーベルグランディオ品川勝島」
大成有楽不・長谷工コーポ 「品川勝島」の契約者イベントに300名(2015/12/10)
安さだけではない、巧みな需要喚起策 「オーベルグランディオ品川勝島」(2015/4/10)
この2物件はすんなり決めたが、もう一つは選定に苦労した。都心の高額マンションばかりを選ぶのには抵抗を感じたし、話題性といえば、第1期の申し込みは地元より首都圏居住者のほうが多かった三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」もあるが、これも首都圏の物件でないので除外した。
そこで選んだのが、「オーベルグランディオ品川勝島」だ。
「品川勝島」を都心のマンションと見る業界関係者はまずいないはずだ。「勝島」がどこにあるかを知らない人も少なくないはずだ。記者は東京競馬場に近い倉庫街くらいの知識しかなかった。
ところが、同社は、品川がリニアの始発駅となり、隣には「アジアヘッドクォーター特区」があることを広告などで前面に打ち出し、「品川」の物件であることを強調した。記者はシアターに〝新品〟が頻繁に飛び交ったのに面食らった。「シンピンって何だ」とずっと考えていたのだが、「新品」は「シンシナ」と読ますことをあとで知った。イメージ戦略に舌を巻くしかなかった。
販売事務所の設営もいい。カフェスタイルにして入りやすくし、コーヒーは“コーヒーメーカーのフェラーリ”と呼ばれる「LA-CIMBALI(ラ・チンバリー)」製を採用していた。コミュニティ支援の取り組みもアピールしていた。
販売が好調に推移しているのは別掲の記事の通りだ。ここで強調しておきたいのは、同社は予定価格を早めに公開し、ユーザーが物件選びをしやすくしていることだ。価格を分譲間際まで伏せるのは詐欺行為とは言わないが、消費者を馬鹿にしていると思う。改めるべきだ。
さて、同社のこうした販売戦略は奏功したのかどうか。契約者の現居住地を見ると、ずばり的中したことがよくわかる。
もっとも多いのが地元品川区の20.3%で、以下大田区10.4%、港区4.1%、横浜市全体6.0%、川崎市全体4.0%、江東区2.2%となっている。地元品川区だけで20%、隣接の大田区を合わせても30%強で、70%はそれ以外だ。首都圏広域からまんべんなく集客し、契約もそのように推移している。これは、圧倒的な価格の安さという物件の力、武器があるからこそだが、トータルな営業戦略が奏功した結果だ。見事というほかない。
国立求償裁判 国立市が逆転勝訴 東京高裁、第一審判決を破棄
明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)の控訴審言い渡しが12月22日、東京高裁で行われ、小林明彦裁判長は東京地裁の原判決を取り消し、国立市の請求権を認める判決を言い渡した。
2014年9月25日の第一審判決では、東京地裁は「元市長への求償権行使は信義則に反し許されない」として、市の訴えを退けた。これに対して、市が控訴していた。
控訴審判決に対して上原氏は「とんでもない判決。年内に上告します」とコメント。国立市は「現段階で詳細を把握できておらず、コメントは差し控える」とした。
◇ ◆ ◇
42席ある法廷の傍聴席は裁判が始まる午後2時までに満席となった。上原氏はいつものように和服姿で登場した。この日は、濃紺の地に薄い笹の文様をあしらったもので、帯は鮮やかな沖縄の伝統的な染色技法の一つ紅型(びんがた)。時おり支持者に笑顔を見せていた。
判決言い渡しはきっかり2時に始まった。
「主文 原判決を取り消す。被告訴人は国立市に対して3,120万円と…」-小林裁判長が判決を言い渡した。すかさず上原氏の代理弁護士が「説明がない…」と異議を唱えたが、小林裁判長は「判決要旨は差し上げることになっているので、法廷では読み上げません。これで終了」ぴしゃりと、打ち切りを宣言した。この間、20~30秒。
傍聴席からは「ひどい!」「最低!」「悪代官」などの声が飛び交った。「わたしは皆さんと立場が逆で、国立市を支持するものですがコメントをいただけませんか」と声をかけたが、ほとんど無視され「お前は官憲か」とも言われた。(わたしは皆さんと考えが異なりますが、敵ではありません。聞く耳は持っています)
◇ ◆ ◇
判決後、国立市は次のように市の見解を発表した。
「本日平成27年12月22日、東京高裁にて国立市が上原元市長を被告として訴えていました損害賠償請求訴訟で、市の請求を認証する旨判決がありました。なお、現時点ではまだ判決の詳細を把握できておりませんので、コメントは差し控えさせていただきます」
◇ ◆ ◇
上原氏と弁護団は判決後、記者会見を行い、次のような声明文を発表した。
「控訴審においては、2013年12月19日における法規決議が違法であるか否か、放棄決議があるにもかかわらず市長が求償権の放棄をしないことが首長の権限乱用になるか否かが問題であった。この点について、本判決は、2015年5月19日、国立市議会が上原公子元市長に対して『求償権を行使せよ』との決議を行ったことを取り上げて、理由も付さずに権限乱用を否定した。
…このような認定が横行すれば、地方自治・住民自治を委縮させ、発展を阻害することになる。
…控訴審では…何ら論争が行われず、全く事実の審理が行われなかったにもかかわらず、独断と偏見に基づいて(原判決とは)正反対の判断が行われた。
本事件は、住民自治のあるべき姿が根本的に問われている事件であり、このままでは、今後の地方自治をますます委縮させることになりかねない。
上原元市長と弁護団は、ただちに、上告する予定である」
上原元国立市長に対する求償裁判 12月22日(火)に東京高裁判決言い渡し(2015/9/10)
国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)
新国立競技場だけでない 三井レジ「赤坂檜町」も隈氏デザイン監修 圧倒的人気
「パークコート赤坂檜町ザ タワー」
今年のマンション見学のおおとりはこの物件以外にない。三井不動産レジデンシャルの「パークコート赤坂檜町ザ タワー」だ。採用が決まった新国立競技場のA案を提案した建築家・隈研吾氏がデザイン監修した分譲全197戸が億ションで、しかもすさまじい勢いで売れた(未分譲は3戸のみ)、都心人気を象徴する今年の代表的物件だ。
物件は、都営地下鉄大江戸線六本木駅から徒歩7分、東京メトロ千代田線乃木坂駅から徒歩3分、港区赤坂9丁目に位置する44階建て全322戸(地権者住戸125戸含む、一般販売住戸163戸、事業協力者販売住戸34戸)。専有面積は57.61~203.96㎡、価格は1億4,920万~15億円。坪単価は1,000万円弱。入居予定は平成30年4月下旬。施工は大成建設。デザイン監修は隈研吾氏。
最終分譲3戸は平成28年1月下旬の予定。価格は1億5,220万(57.61㎡)~5憶8,000万円(136.83㎡)。
再開発手法による東京ミッドタウン・檜町公園に隣接した初のタワーマンションで、デザイン監修を隈研吾氏が担当しているのが最大の特徴。マンション南側からは眼下に公園が広がり、360度の都心の眺望が展開する。
ミッドタウンと地続きのデッキでマンション3階エントランスとつなぎ、赤坂通りとは1階サブエントランスとつながっている。
マンションを大きな1本の樹木に見立て、敷地内には竹林をはじめ四季折々の樹木、グリーンカスケードを配し、壁面緑化も図っている。エントランスは「土」がテーマ。挟土秀平氏のオブジェに水盤、土壁、天井和紙などで幽玄な世界を描いている。3階ラウンジにはいかにも隈氏らしい木調ルーバー天井に檜練り付け板とミラーの大和張り。
建物は免振と制振を組み合わせ、屋上にはAMD(制振装置)を設置。「地層」「石・水」「大地」から「枝」「幹」「道管」「洞」「雫」「樹皮」「樹冠」をイメージした装飾デザインが施されている。外観フィンにランダムに配した光のライティングは照明デザイナーの岡安泉氏が担当する。
モデルルームは、106㎡と157㎡の2つ。前者は同社の「千鳥ヶ淵」「麻布霞町」「千代田富士見」なども担当した鬼倉めぐみ氏が担当。天井高は2700ミリ、サッシ高は2400ミリ。自然石にガラス素材もふんだん用いている。R状のデザインをキッチンや織り上げ天井に採用しているのが特徴。
後者は、鬼倉氏と同じ「千代田富士見」を担当した押野見邦英氏。天井高は3150ミリ、サッシ高は2700ミリ。桧垣文様とヒッコリーと呼ばれる北米の堅い木が多用されている。壁は職人仕上げの塗り壁。リビングダイニングは約36.4畳大、キッチンは約9.3畳大、マスターベッドルームは約25.2畳大。浴室は10畳くらいか。
9月にモデルルームをオープンして以来これまで約1,100組の来場者を集め、11月から分譲開始。分譲163戸のうち160戸が分譲済みだ。
同社開発事業本部 都市開発第一部 営業室主査・大栗裕樹氏は、「来場者の方は、ミッドタウンの隣にタワーマンションが建つとは思っていなくて、みんな驚かれる。ミッドタウンとつながっているランドスケープデザイン、さらには赤坂・六本木はまだまだ伸びしろがあると評価されており、これと隈さんのデザインがマッチしたのが人気の要因」と話した。
屋上のグリーンキャノピー
外壁のヒノキフィン
◇ ◆ ◇
このマンションについては2年前、大和ハウスが東大に隈氏が設計した「ダイワユビキタス学術研究館」を寄贈したとき、隈氏から直接この「赤坂檜町」を担当することを聞いた。2年越しの恋が実ったような気分だ。このマンションを見学せずして年は越せないとも思っていた。
もう少し早く見学したかったのだが、取材を申し込んだときにはお客さんが殺到しており、今回になってしまった。残りはあと3戸のみ。1月末に抽選分譲されるが、倍率がつくかもしれない。
物件のすばらしさは言うまでもない。億ションは数え切れないほどたくさん見てきたが、これもまたいい。
隈氏がデザイン監修するのは首都圏では「原宿」「神楽坂」「東池袋」に次ぎ4物件目。タワーマンションではこれが初めてだ。外壁に木調フィンを張ったり、板を1枚おきに重ねて貼る大和張り、ランダムに貼るガラスや木調ルーバーはいかにも隈氏らしいデザインだ。
鬼倉氏が提案しているガラス製のアクセントウォールは黒か濃紺か得も言われぬ複雑な輝きがあった。照明類はバカラ、把手はスワロフスキー。
押野見が提案している桧垣文様がいい。ヒッコリーを張ったキッチンは300万円でも買えないだろう。10畳大もある浴室は海外のラグュアリーホテルでは当たり前だそうだが、どのように使うのだろうかと考えてしまった。IHはガゲナウ社製で、カウンターとまっ平らで、鍋を置く位置を示す丸い線が入っておらず、どこでも置けばいいとのことだった。
地権者住戸や事業協力者住戸を含め全322戸が1億円以上というのはわが国初だ。しかもわずか2カ月でほぼ完売というのもかつて例がない売れ行きだ。東京建物の「目黒」も霞んでしまうほど衝撃的なマンションだ。
同業や一般の方は、さぞや外国人の購入が多いのではと考えるだろうが、大栗氏による意外に少なく、1割もないという。
3階ラウンジ
1階ラウンジ
新国立競技場 隈氏のA案か伊東氏のB案か 木造ファンの記者はもちろんA案(2015/12/17)
屋上に里山とせせらぎ、格子デザインも美しい 豊島区新庁舎が完成(2015/3/26)
「神楽坂『赤城の杜』プロジェクト」完成 三井不動産レジデンシャルが見学会(2010/8/20)
驚嘆の安さ 坪318万円 隈研吾氏がデザイン監修 三井不動産・東電不動産「パークコート神宮前」(2008/11/19)
不動産鑑定士業界 「住宅」評価に注力 不動産価値にお墨付き
自民党の「中古住宅市場活性化に向けた提言-『中古市場に流通革命を』-」に日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)が開発した中古戸建て住宅の積算価格査定システム「JAREA HAS」と、重要事項説明書、建物診断(インスペクション)、シロアリ点検調査報告書をもとに中古住宅の適正価格を査定するワンストップサービス「住宅ファイル制度」が具体的に盛り込まれたことから、JAREAが中古住宅の評価に関与する動きが強まっている。
JAREAは平成23年6月、「不動産鑑定業将来ビジョン」を策定し、従来の鑑定評価「単一型ビジネスモデル」から「多様型ビジネスモデル」への転換を打ち出し、今後業務の拡大が期待される分野として「住宅」を掲げ、ビジネスモデルの研究・開発に取り組んできた。
そして平成25年11月に住宅ファイル制度を提言して以降、JAREAの活動は加速し、今秋から近畿を中心に不動産業界向けに活動を強化している。業界向けの説明会には1回当たり100名を超える参加者があるという。
活動を強化していることについて、JAREA住宅ファイル制度特別委員会副委員長・村木康弘氏は、「ポイントは民法の改正です。平成27年3月、民法改正要綱案が閣議決定され、次の国会で審議が始まると思いますが、現行では規範重視、つまり不動産慣行ルールが認められているのに対して、改正民法では欧米型の契約重視、契約内容や契約違反の有無を個々の契約文言によって判断するようになります。不動産売買では取引の対象となる住宅の仕様や維持管理の状態等についてきちんとした報告書を作成することがトラブルを防ぎ取引を円滑にすることにつながります」と話す。
戸建ての場合、建物の価値が築20年でゼロとなるような従来型の査定を改め、土地と建物をそれぞれ評価し、建築士(インスペクター)による建物診断、防蟻業者によるシロアリ点検保証と不動産鑑定士の住宅価格調査をセットにした住宅ファイルを添えて契約することをJAREAは提案している。
住宅ファイルが適切かどうかを買主がチェックし、相違がある場合は売主に対して修繕や減額を申込みことができるようにし、売主が応じない場合は契約を解除できる特約条項も盛り込むことを提言している。
「不動産の仲介の営業マンだって建物の評価はプロではありませんし、インスペクター、シロアリ業者などと私どもが一緒になって、どの場面でも使えるスキームにして将来価値を含めた不動産の価値のお墨付きを行おうというもの。JAREA HASの精度も高いと自負している」と村木氏はいう。
住宅ファイルはワンセットで約16万円を予定している。現段階では費用は売主が負担する形をとっている。
◇ ◆ ◇
不動産鑑定士とはどのような職種で、現状はどうなっているかを概観しよう。
不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき制定された国家資格で、不動産鑑定士試験に合格した者のみが一定の手続きを経て不動産の鑑定評価を行うことができる。法律に違反した場合は刑事罰の対象にもなる。
不動産鑑定士の試験範囲は多岐にわたり、40近くの法律法規と不動産の鑑定評価に関する理論の理解が求められる。試験は、マークシートの短答式(宅建は4肢択一だか鑑定士は5肢択一)のほか論文も課される。
難易度が高いためとバブル崩壊後のデフレ経済の進行により受験者は漸減しており、平成18年の約4,600人から27年度は約1,500人へと3分の1へ減少している。合格率は6%程度で推移しており、合格者の年齢はほとんどが30歳以上となっている。
国土交通省 土地・建設産業局の平成24年度「不動産鑑定士・不動産鑑定業の現状」によると、不動産鑑定業者のほとんど97.6%が都道府県知事登録で、業者数は10年前と比較して415業者(14.0%)増の3,375業者となっている。
不動産鑑定士は、10年前と比較して352名(7.5%)増の5,057名で、うち1,025名が大臣登録業者に所属している。
不動産鑑定業者の依頼先別報酬割合は民間法人が83.1%(平成12年は68.0%)、国・地方公共団体、公団などが15.7%((同9.6%)、個人は1.2%(同2.0%)。一方、知事登録業者は民間法人が53.3%(44.9%)国・地方公共団体・公団などが13.6%(同46.6%)となっている。
不動産鑑定業者1業者当たりの平均報酬額は、大臣登録業者は横ばい、知事登録業者は減少傾向にあり、知事登録業者の22年度報酬額は721万円(平成12年は1,053万円)。
不動産鑑定士1人当たり平均報酬額は、大臣登録業者は1,246万円(同1,342万円)、知事登録業者は589万円(同822万円)。
大臣登録業者の依頼目的は「売買」「担保」「資産評価」で約7割を占め、「証券化」が増える傾向にある。知事登録業者は「課税」が40.6%(24.8%)を占めている。
このように、何年も勉強し難しい試験に合格した割には厳しい罰則もあり、報酬は伸び悩んでいる-これが不動産鑑定士業界の現状だ。不動産鑑定士業界が、これまで携わってこなかった住宅分野に進出しようとしているのは、業界が掲げるスローガン「官から民へ」が象徴するように、住宅分野へ進出することによって停滞気味の現状を打破しようということのようだ。
一方、国は住宅のストックが量的に充足し、環境問題や資源・エネルギー問題が深刻化する中で、これまでの「住宅を作っては壊す」社会から「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」社会へと移行することが重要であるとし、中古住宅流通・リフォーム市場規模を2010年の10兆円から2020年には20兆円へと倍増させようとしている。
そのための具体的な方策として、①消費者にとって必要な情報の整備・提供②不動産価格の透明性の向上③先進的な不動産流通ビジネスモデルの育成・支援④宅建業者と宅建士の資質の向上⑤住み替え支援とストックの流動化の促進-に取り組んでおり、不動産鑑定士業界もその流れに沿ってビジネスモデルの研究・開発に取り組んでいる。
◇ ◆ ◇
不動産鑑定士業界の不動産流通分野への進出が成功するかどうか。現状では不透明の部分もある。
報酬額もその一つだろう。建築士(インスペクター)による建物診断、防蟻業者によるシロアリ点検保証付きとはいえ、16万円という価格に消費者はどう反応するか。大手のハウスメーカー系やデベロッパー系は、似たようなサービスを無料で提供しているところもあるように、不動産鑑定士によるサービスは、全宅連系の「社会的信用力」を補完する役割にとどまることも予想される。
個人的な意見を言わせていただくなら、どうして中古住宅の売買で「宅建士」「建築士」「不動産鑑定士」の3つもの「士」が連携・協力しなければ「安心・安全」が担保されないのか、それだけ劣悪な戸建てがどんどんストックされ、今現在も再生産されているということなのだろうか。
細田工務店 「低炭素住宅」「環境共生」ダブル認定の「杉並成田西」
「グローイングスクエア杉並成田西グランフィールズ」
細田工務店は12月18日、「認定低炭素住宅」と「環境共生住宅(システム認証)」を取得した分譲戸建て「グローイングスクエア杉並成田西グランフィールズ」(全20区画) の記者見学会を行った。
「認定低炭素住宅」制度は、建築物の低炭素化を図ることで低炭素・循環型社会の構築を目指す制度で、2014年12月に施行された。一定の基準を満たせば住宅融資、税制面で優遇する措置が取られる。
創エネとしてエネファームを採用した「アクティブ・エコ」と、サッシ形状、雨水タンク、こもれびツリー、スルーウォールなどの「パッシブ・エコ」を組み合わせることで、省エネ法の省エネ基準に比べ一次エネルギー量が10%以上削減される。
配棟計画では、近くを流れる善福寺川の緑地からの風の流れを解析し、街全体のゾーニングや各住宅の窓形状と位置を検証してプランニングしているのも特徴。
物件は、京王井の頭線浜田山駅から徒歩14分、杉並区成田西2丁目の建蔽率40%、容積率80%の地域に位置する全20棟。敷地面積は113.05~119.70㎡、建物面積は89.90~93.77㎡、価格は未定だが、6,000万円台から7,000万円台が中心になる模様。構造は軸組み工法で2階建て。竣工予定は平成27年12月から28年3月。販売開始は平成28年2月中旬。
玄関とは別の扉が付いた自転車置き場
◇ ◆ ◇
同社施工の他社分譲の戸建ては結構見学しているのだが、同社が分譲する戸建ては久々に見学した。なかなか意欲的な物件だ。
もちろん「認定低炭素住宅」「環境共生住宅」の認定を受けて、細かな点にも環境への配慮に取り組んでいることを強調したいのだが、一つ驚いた企画がある。
分譲戸建てを見学するたびに、自転車置き場がないことから敷地の外に置かれているのを見る。どうして自転車置き場を設けないのか不思議に思ってきた。
ところがどうだ。この物件には車庫スペースとは別に「自転車置き場」が設けられているではないか。畳3畳分くらいはあり、立派な門扉もついており、水道栓もセットになっている。
同社によると、お客さんの声を企画に反映させた結果で、全てではないが、敷地条件が整えば設置するようにしているという。
こうした細かな配慮がお客さんの感動を呼ぶ。もっとストレートにアピールすべきなのに、これも同社の社風なのか、同業他社と比べ控えめなのが正直に言えば歯がゆい。構造材などはほぼ100%国産材というのも他社にないアピールポイントだ。
植栽とスルーウォール(壁に穴が開いているのがわかる)
新国立競技場 隈氏のA案か伊東氏のB案か 木造ファンの記者はもちろんA案
A案(技術提案書よりJSC提供)
B案(技術提案書よりJSC提供)
新国立競技場の技術提案書が日本スポーツ振興センター(JSC)から発表された。応募したのは2つのグループで、A案は隈研吾氏・大成建設・梓設計、B案は伊東豊雄氏・竹中工務店・清水建設・大林組・日本設計によるものと報道されている。
案が公表されてから、様々な形で報道されているので詳細は省くが、双方とも素晴らしい。わが国を代表する建築家とスーパーゼネコンの競演となるわけで、これ以上の舞台はない。
個人的には国産材のスギやカラマツがふんだんに用いられているA案に賛成だが、デザイン的には1辺が1.3~1.5mもある四角のカラマツの集成材72本を列柱として配したB案も捨てがたい。双方のいいと取りをしてほしいのだが、そのようにはならないのが残念だ。
さて、どちらが採用されるか。以下は木造ファンの記者の独断と偏見の予想記事だ。
われわれ素人は公表されたデザイン(完成予想図)で判断するが、JSCは①業務の実施方針(20点)②事業費の縮減(30点)③工期短縮(30点)④維持管理抑制(10点)⑤ユニバーサルデザインの計画(10点)⑥日本らしさに配慮した計画(10点)⑦環境計画(10点)⑧構造計画(10点)⑨建築計画(10点)-の9項目(満点は140点)に係数をかけて採点する。外観デザインや「日本らしさ」などは配点が少ないので、これがどう影響するか。そもそも「日本らしさ」とは何ぞやと問われて明快に答えられる人などいないはずだ。
とはいえAかBか、JSCは決着をつけなければならない。選ぶのは次の7名からなるJSCの技術提案等審査委員会だ。
審査委員
秋山哲一・東洋大学教授
工藤和美・建築家/東洋大学教授
久保哲夫・東京大学名誉教授
香山壽夫・建築家/東京大学名誉教授
深尾精一・首都大学東京名誉教授
村上周三・東京大学名誉教授(審査委員長)
涌井史郎・東京都市大学教授
(50音順)
この委員のうちA案を熱烈に支持するのは涌井氏だ。他の先生方は建築が専門であるのに対し、涌井氏の専門はランドスケープデザイン。森林・林業の荒廃を憂慮されており、国産材が多用されているA案に肩入れするのは間違いない。最近はテレビのコメンテーターとしても活躍されており、話術も巧みだ。正攻法でもからめ手でも相手を説き伏せる。
他の方はわからない。香山氏や工藤氏も木を用いた作品をたくさん造られているが、選択に迷うのではないか。涌井氏に丸め込まれるような人でもなさそうだ。
秋山氏は構造が、久保氏は耐震がそれぞれ専門だ。シンプルで施工がしやすいと思われるB案を選ぶかもしれない。総工費は双方とも1,500億円弱だが、A案の工期は36カ月で、B案は34カ月。B案のほうが2カ月短い。これは明らかにB案が勝る。A案支持者はこれをどう反駁するか。森林の効用を涌井氏はぶつはずだ。
深尾氏はニュートラルの立場を貫くのではないか。あの杭打ちデータ流用問題では、国交省・対策委員会委員長としてわずか2カ月で対応策をまとめ挙げたように、うまく収めようとするのではないか。
こうしてみると、A案もB案も甲乙つけがたく、がっぷり四つに組んだまま勝敗が決まらない場面も十分予想される。
となると、審査委員長を務める村上氏がキャスティングボートを握る。村上氏は現在、建築環境・省エネルギー機構の理事長を務めており、ことあるごとに省エネ、サステナブルを口にされる。やはり鉄やコンクリより木を愛されているはずで、Aに軍配を上げると見た。よって評決は4:3でA案の採用が決まる。
森喜朗会長のコメントに左右される委員ではないだろうが、少なくとも国民は逆にA案支持に回るはずだ。「森さんは(自分が嫌われるのを承知のうえ)A案に支持が集まるように発言したのでは」とうがった見方をする人もいるが…。
明日(18日)は、隈研吾氏がデザイン監修した三井不動産レジデンシャルの「パークコート 赤坂檜町ザ タワー」を見学する。素晴らしいマンションだろうから、きちんとレポートする。
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JSCから新国立競技場の技術提案書が公表された翌日12月15日夕、農林水産省は林業関係9団体の長らと意見交換を行った。農水省側からは森山農林水産大臣をはじめ伊東副大臣、齋藤副大臣、加藤政務官、農林水産事務次官、農林水産審議官、大臣官房長、総括審議官、林野庁長官、林野庁林政課長が出席した。会議は非公開で行われた。
記者はてっきり「和の大家」隈研吾氏らのA案が選ばれるための決起集会だと判断した。
この年末の忙しい時期に9団体の長と大臣や事務次官などが会合を持たなければならない緊急の事案はほかにないはずで、A案の採用を突破口に森林・林業の再生・活性化の動きを加速させようという狙いだろうと読んだ。
ところが、会議に同席した林野庁の担当者は、「たまたま時期が重なっただけ。会議の冒頭、大臣が『木の案が出されてよかった』というようなことをおっしゃったが、A案が採用されることを企図した会議では全くなかった」と否定した。
設備仕様レベルはトップクラス 日土地「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」
「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」完成予想図
さてQuestion。「二重床・二重天井」「ディスポーザ」「食洗機」「バックカウンター・カップボード」「ミストサウナ」「平置き駐車場」-この6つの設備・機能をすべて満たしている首都圏マンションはいくつあるか?
Answer。数年前までさかのぼっても数えるほどしかないと記者は思うが、先日見学した日本土地建物「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」がまさにそれだった。
物件は、西武鉄道拝島線・国分寺線小川駅から徒歩9分、または西武多摩湖線八坂駅から徒歩8分、東京都東村山市富士見町一丁目に位置する15階建て全223戸。専有面積は65.78~86.78㎡、12月14日に抽選分譲した第1期3次(5戸)の価格は3,148万~4,698万円。坪単価は170万円台の半ば。設計・施工はファーストコーポレーション。竣工予定は平成29年2月。販売代理は長谷工アーベスト。管理は東急コミュニティー。
現地は、富士見通りの街路樹など緑が豊富な近隣商業と第一種中高層地域の一角。建物は南向き中心の西向きとのL字型。
「二重床・二重天井」「ディスポーザ」「食洗機」「バックカウンター・カップボード」「ミストサウナ」「平置き駐車場」が標準。
地域住民や企業、団体などと連携して、「子育て」「食」「芸術」「ECO」「スポーツ」「健康」の6つの分野で地域共生を図り、入居後の多世代コミュニティを支援していくのが特徴だ。
11月上旬から分譲が始まっており、これまて85戸を供給している。
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このマンションについては、同社がプレス向け発表会を行っており、その記事も参照していただきたい。見学しようとずっと思っていたのだが、なかなか都合がつかず今になってしまった。
見学して本当によかった。プレス向け発表会では、コンセプトの説明が中心だったので、物件そのものの詳細はよくわからなかった。モデルルームを見て、発表会で見えなかったものがよく見えた。
冒頭にも書いた6つの設備仕様が標準装備になっているマンションは、この多摩エリアは言うまでもなく、首都圏でもほとんどないはずだ。ここに同社のマンション事業に対する姿勢・意欲が感じられる。大きな訴求ポイントになるはずだ。1カ月少しで85戸供給というのも売れ行き好調とみてよい。
残念なのは、これほど設備仕様が充実しているのに、それをアピールできていないと思った。設備仕様レベルがすべてではないが、ユーザーにもっとわかりやすく説明しないとその良さは伝わらない。
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同社は、これまでビルなどの都市開発や、「横浜白山」「横浜あずま野」「横浜戸塚台」「川崎百合ケ丘」など分譲戸建ての実績は豊富で、とくに戸建てはレベルの高いものをずっと継続して供給してきた。
マンション事業は、大手デベロッパーとの共同事業が中心で、同社がメインというのは少ない。
マンション市場は大手の寡占化が一段と進んでいる。その一角に後発が食い込むためには相当インパクトのある商品企画でないと難しい。その点で今回の物件は十分対抗できると思う。商品企画を前面に打ち出し、厳しい市場に挑戦してほしい。
収納(機能的で、白が基調のデザインもいい)
日土地 マンション事業本格参入 年間500戸から1,000戸体制へ(2015/10/6)
村野藤吾の代表作の一つ 目黒区総合庁舎を見学
目黒区総合庁舎
わが国の建築家村野藤吾(1891~1984)の代表作の一つ目黒区総合庁舎を見学する機会に恵まれた。1966年に竣工し、千代田生命保険の本社ビルとして使用開始され、総合庁舎としては改修が施されたのち2003年1月から「開かれた庁舎」として再生・利用されているものだ。
詳細は同区のホームページでも公開されているが、建物の内外に村野や職人、美術家のこだわりが垣間見られる。とにかく写真を見ていただきたい。
エントランスホール(ホールは中央を中心に非対称になっている。左側側は建物の外に柱があり、右側は水を張った床と柱があり、その外側に水盤・庭園がある。天井には明り取りがある。壁にポスターなどは一切張らず、時々コンサートなどが行われるそうだ)
3階部分から中庭、茶室を望む(縦の格子はアルミ製)
らせん階段(正確に丸くしているのではなく、フリーハンドで円を描いているのがわかる)
茶室(もちろん一般の人も利用できる)
会議室の床と巾木(カバ桜か、チェリー材か。遮音対策のために床と壁はゴムのようなもので遮断されている)
喫茶室の壁(デザインは当時のままで、腰壁も無垢材が使われていた)
本館と別館をつなぐ渡り廊下(以前は電車と同じような蛇腹が使用されていたという)
庇足元の「石」(これも意味があるそうだ。広場にはヘンリー・ムーアの作品もあるそうだが、見逃したか)
隣接する中目黒しぜんとなかよし公園から見た庁舎(この公園ももとは敷地の一部だった)
公園内に設置されている「平和の石」。昭和61年、広島市から寄贈されたもので、被爆した旧広島市庁舎の階段の一部
藝大×スウェーデンハウス クリスマス(ユール)染織専攻作品展12/25まで
橋本和子さんのろうけつ染め「ちやほや」
スウェーデンハウスと東京藝大は12月14日、同社の豊洲のモデルハウスで「東京藝術大学染織専攻作品-jul(ユール)」レセプションパーティを行った。
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記者は終了後の18:00過ぎに駆けつけたので、主催者の東京藝大染織研究室教授・菅野健一氏やスウェーデン大使館 広報文化担当官アダム・ベイエ氏、スウェーデンハウス取締役営業本部長・鈴木雅徳氏のあいさつやアーティスト・トークがどのようなものだったかわからないが、大急ぎで作品を見て回った。
作品は傑作ぞろいだ。展示は12月25日(金)まで行われるので、スウェーデンハウスの住宅を見るのもいいし、作品をもみるのもいい。豊洲のクリスマスの夜もいいかもしれない。
記者の一押しは、修士1年生の橋本和子さんのろうけつ染めの子ども用の襦袢「ちやほや」と、修士1年生の阿部蕗子さんのシルクスクリーンのカーテン「ユールの夜に」だ。
「ちやほや」の語源は「蝶よ花よ」だそうで、魔除けを施し、こどもの健やかな成長を願う気持ちを作品に込めたという。カラフルな染の技を見て、同じ東京藝大名誉教授の洋画家・絹谷幸二氏の一連の作品と重ね合わせた。
阿部さんの作品は木綿ビロード(ベルベット)でできており、冬寒くて暗いスウェーデンハウスの自然と、家の中を温かく過ごす家庭の対比を柄に入れ込んだそうだ。「蕗子」は、記者の好きな作家・水上勉の娘さんの名前と一緒だ。いい名前だ。
もう一つ挙げると、修士1年生の佐々夏実さんのシルクスクリーンのタペストリー「宵」だ。クリスマス(ユール)のでサンタの役割を担ったのは黒い服にヤギの顔を持つ「ユールボック」で、それをモチーフにしたという。これを見て、イギリス人作家トム・ロブ・スミスのスウェーデンを舞台にした最新作「偽りの楽園」(新潮文庫)を思い出した。家族の再生がテーマのミステリ小説で、保守的で暗い一面もあるスウェーデンハウスのコミュニティが描かれている。怖い妖精「トロール」も頻繁に登場する。
同社の催しは、住宅もさることながらいつもスウェーデンの自然や歴史、文化を想像させてくれる。だからいい。
阿部蕗子さんのシルクスクリーン「ユールの夜に」
佐々夏実さんのシルクスクリーン「宵」
菅野教授のタペストリー「ユールトムテゴートX.ユールトムテゴートY」
スウェーデンハウス 豊洲モデルハウスで藝大染織専攻学生の作品展(2015/12/1)