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「大多喜ガーデンハウス」

 スウェーデンハウスは1月29日、同社初のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「大多喜ガーデンハウス」が竣工するのに伴い報道陣に公開した。

 断熱性能UA値が0.38W/㎡・k(寒冷地の基準は0.87で、数値が小さいほど断熱性能が高い)で、気密性能C値が0.83c㎡/㎡(寒冷地基準は5.0で、数値が小さいほど気密性能が高い)という高気密・高断熱が特徴で、欧州アカマツが腰壁などにふんだんに採用されている。

 同社取締役営業本部長・鈴木雅徳は、「高気密・高断熱の性能には自信あった。もう少し早くやるべきだった。今回の受注でサ高住のノウハウも蓄積できた。これから非住宅の分野にも力を入れていきたい」などと挨拶した。

 物件は、千葉県夷隅郡大多喜町に位置し、建物は木造2階建て延べ床面積約984㎡。居室数は25室(19.22~19.54㎡)。月額賃料は約20万円(食費込み)。

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建物内(腰壁はすべて欧州アカマツ)

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 セレモニーが始まる前だ。ストラップ付の眼鏡をかけ、「7」と「5」のデザインをあしらった赤と紺のストライプのネクタイを締めた白髪のお年寄りが現れた。報道陣を睥睨するように会場を見渡したあと、いきなり「どーも、どーも」と声を発し、正面に据えられた椅子に座った。それは威風堂々の言葉がぴったりの、全身にオーラをみなぎらせた姿だった。

 いったい何が起きたのかわからずあっけにとられていると、司会者からそのお年寄りがサ高住のオーナーの川崎病院・宮野武理事であることが紹介された。

 宮野氏の独演会はすぐ始まった。

 「どーも、皆さん。レインボーブリッジを通り、アクアラインを渡って、さらに山奥の、私も若いころは全く知らなかった『大多喜』というこんな田舎によくおいでくださった…徳川家康の四天王の一人、本多忠勝が築城したところで…千葉県にはここと佐倉しか城はない…」「わたしはこの土地を愛しています。私どもの病院は祖父が明治40年に始めて108年間、この田舎で、僻地で営々とつないできた」などと街と病院を紹介。

 「5年前、女房の『二人で木の家に住もう』という提案で、スウェーデンハウスの家を建てた。大満足。真冬でもコタツが要らない。:そのころサ高住を作ることを考えた。数か所見て回ったが、どこも魅力的でなかった。お年寄りを収容すればいい、隔離しておけばいいというものではない。要介護度の高い方は私どもの老健に移ってもらって、ここは要介護度が1から2の低い入居者と一緒に酒を飲み、コミュニティを作るのが目的だから、楽しくなるような建物でなくては具合が悪い。そこで、夏涼しく冬暖かいスウェーデンハウスにすることを決めた。場所も街中に建てることを決めた。スーパーも学校もすぐ近く」

 「私は赤ちゃんのプロで、戦後、錦糸町の貧民街で次々生まれる赤んぼうや貧しい子どもたちの医療に携わった。全くカネと縁がない。儲からない仕事には慣れている。町内だけで入居者を埋めるのは難しい。ぜひこのサ高住を宣伝していただきたい」

 「今日は(小雨が降る)寒い中、おいでくださった皆さんも温かいということを実感されたはず。どうです、結露も全くない。とてもいい日によくいらっしゃいました」

 これで終わりではない。何やらパンフレットを取り出し、「私は40年間、朝5時に起きて駅伝に応援に行っている。総監督にも5年前就任した。今年は6位に入賞した。わたしが死ぬまでに優勝させたい」と、順天堂大学のJ友会会長・駅伝強化担当理事であることを自ら紹介。同大の駅伝パンフレットを報道陣に配った。

 宮野氏の独演会に完全に主役の座を奪われた鈴木本部長は苦笑するしかなかった。

 後で聞いたら宮野氏は75歳。ネクタイのデザインの謎が解けた。順天堂大の名誉教授でもある。

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宮野氏

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宮野氏のネクタイ

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 東京駅から高速バスで約80分。千葉県大多喜町は、天然ガスが出るところということは高校の教科書に書かれていたので地名だけは知っていた。福島県の大喜多と間違えないようにしていた。

 しかし、この町は天然ガスだけでないことはすぐわかった。「ゴルフ銀座」(宮野氏)と呼ばれるほどゴルフ場が多いところとして知られているようだ。いたるところにゴルフ場の案内看板があった。町内には5カ所のゴルフ場がある。鉄筋造の大多喜城もあるように城下町として栄えたようだ。

 そんな町にどうして同社のサ高住があるのか、その理由は先に書いた。記者も同社の建物を真冬に見学するのは初めてだったが、ほとんど瞬時にして建物の特徴を理解した。宮野氏が「大満足」と語った通りだ。

 外断熱の戸建て・マンションとほとんど同じだ。心筋梗塞と脳卒中による死亡率は1月と2月を中心とする冬季がもっとも高いが、少なくともこの建物は専用部分と共用部分の温度差はほとんどない。「温度のバリアフリー」が実現されている。

 来年の駅伝は順天堂大を応援しようかしら。

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廊下に掲げられたモネの庭園と思われる写真(宮野氏が直接撮られたもので、全部で50点くらいあった。写真は宮野氏の趣味のようだ)

 

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「ザ・パークハウス 国分寺緑邸」完成予想図

 三菱地所レジデンスが分譲中の「ザ・パークハウス 国分寺緑邸」を見学した。約20.7haの「日立製作所 中央研究所」の森に隣接し、その借景が眺められる希少物件で、生物多様性の保全に配慮したマンションで、第1期販売も好調なスタートを切った。

 物件は、JR中央線国分寺駅北口から徒歩4分、国分寺市本町4丁目に位置する8階建て全82戸。専有面積は56.38~93.49㎡。現在分譲中の住戸(9戸)の価格は6,128万~1憶2,480万円。坪単価は350~360万円。竣工予定は2016年10月中旬。施工は南海辰村建設。デザイン監修は南條設計室(南條洋雄氏)。

 第1期45戸が1月24日までに分譲され、そのうち36戸に申し込みが入った。億ション4戸のうち3戸に申し込みが入ったように、価格の高い住戸の人気が高いという。

 敷地は、約20.7haのうち約45%が緑地を占める日立製作所中央研究所に隣接。日立製作所の役員用社宅跡地。

 研究所の森は「野川」の源流にもなっており、この環境を生かすため、三菱地所レジデンスが2015年2月に始動した生物多様性保全の取り組み「BIO NET INITIATIVE(ビオネットイニシアチブ)」の一環として、ランドスケープデザインに力を入れているのが大きな特徴だ。

 敷地南側の道路沿いの植栽帯「万葉の路」には「万葉集」に歌われた植物を和歌も添えて配置。敷地内の舗道は透水性とし、雨水を一時的に溜め、土に浸透させる「レインガーデン」を設ける。全居住者が隣接する森を享受できるようエントランスからホール-ラウンジ-フォレストテラスがほほ直線で、隣接の森の借景も眺められるようにする。

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 共用施設・設備仕様レベルが高いのも特徴の一つだ。エレベータは3基で、エントランスホールには水琴窟(すいきんくつ)を設置する。各住戸はディスポーザー、食洗機、ミストサウナのほかキッチン御影石カウンター、洗面化粧台御影石カウンター、玄関御影石などが標準装備。オプション仕様だが93㎡のモデルルームタイプの出来が素晴らしい。売れるのも当然だろう。

 水琴窟をご存じない方もいるかもしれないので、少し説明しよう。水琴窟とは、「日本庭園の装飾の一つで、手水鉢の近くの地中に作りだした空洞の中に水滴を落下させ、その際に発せられる音を反響させ、手水鉢の排水を処理する機能をもつ」(ウィキペディア)仕掛けだ。

 仕掛けによって音色は様々だが、「キーン、コーン、カーン」というのが基本。立ち去るのが惜しくなるような美しい澄んだ音を出す。

 昔は、民家の離れのトイレにもよく用いられていた。今では寺や旅館・料亭、ホテルなどでは見かけるが、大手デベロッパーがマンションに設置したのは見たことがない。

 これほど商品企画に力を入れているのは、国分寺駅北口の再開発マンション、住友不動産「シティタワー国分寺 ザ・ツイン」(587戸)や南口の野村不動産「プラウド国分寺」(125戸)を意識しているからだと判断した。住友「国分寺」は坪400万円をはるかに突破し、420~430万円、ひょっとすると450万円くらいになるのではと見ている。野村は三菱地所レジより少し安くなるはずだ。

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ラウンジ

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 先日は、約50haの赤坂御用地の正門前に位置する住友不動産のマンションを見学したが、今回は規模こそ4分の1だが、国分寺崖線の段丘上にある森に隣接するという、これまたすごいマンションだ。森にはオオタカも生息するそうだ。

 森は立ち入り禁止であることは三菱地所レジデンス関係者から聞いていたが、ものは試し、当たって砕けろ、正門にある守衛所で単刀直入に「森を見せていただけないか」と頼んだ。

 やはりダメだった。日立グループの会社でも見学不可という。聞いたところでは、年2回の公開日は天候などにもよるが、多いときは1万人くらいが訪れるそうだ。

 どのような森か、日立製作所のホームページから引用する。

 「中央研究所の創設は、昭和17年にさかのぼります。…ここは、奈良時代に 聖武天皇が全国に建立した国分寺の一つ、武蔵国分寺の旧地に当たります。…

 この由緒ある地に研究所を創設するに際しましては、小平浪平創業社長の『よい立ち木は切らずによけて建てよ』という意志を受け、構内の樹木は極力守られました。その精神は現在も継承され、今日見る武蔵野の面影をとどめた美しい研究環境が保持・整備されてきました。 春夏秋冬、季節の移ろいのみごとさは、研究者達の心をなごませ、またそれは人と自然の一体感を生み、科学する心を育んできました。

…樹齢百年余の欅やヒマラヤ杉の大木。構内には約120種2万7千本の樹木が茂っていますが、中には化石期の植物といわれるメタセコイアなど珍しい植物もあります。南側の大池は、昭和33年に完成したものです。この池は、ハケと呼ばれる湧水を集めて流れる野川の源流の一つにあたり、大池も構内数ヶ所の湧水を利用して湿地に造られました。 池の白鳥、マガモをはじめ、林に群れる野鳥は、カワセミ、ヒヨドリ、カルガモなど40種を越えます」

 さすが日立だ。20haというのは約16haの日比谷公園より広く、これより広い緑がある敷地は明治神宮などの宗教法人か大学のキャンパス以外にないはずだ。何と中央研究所など同社の6事業所が「生物多様性保全につながる企業のみどり100選」に選ばれている。

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モデルルーム

 

 〝不動産は買い時だと思わない〟人が増加-野村不動産アーバンネットは1月28日、不動産情報サイト「ノムコム」の会員を対象としたネットによる「住宅購入に関する意識調査結果(有効回答数1,421人)をまとめ発表したが、不動産について「買い時」「どちらかといえば買い時」と答えた層は前回調査(2015年7月)より4.9ポイント減の41.3%で、逆に「買い時だと思わない」と答えた人は35.9%と前回より4.9ポイント増加した。

 「買い時と思う」理由は、「住宅ローンの金利が低水準」69.1%(前回比4.7ポイント増)、「今後、10%への消費税引き上げが予定されている」51.5%(同11.3ポイント増)に続き、「不動産価格が落ち着いている(割安感がある)」が33.1%(同17.2 ポイント増)となった。前回調査で理由3位だった「今後、不動産価格が上がると思われる」は22.7ポイント減少して16.9%となり、理由6位となった。

 「買い時だと思わない」理由については、「不動産価格が高くなった」68.2%(前回調査時は64.4%)がもっとも多かった。

 不動産の価格については、「上がると思う」が33.4%と前回調査より6.2ポイント減少。「下がると思う」の回答は24.3%と前回より5.4ポイント増加した。

 マンションくい打ち工事のデータ改ざん問題の住宅購入検討への影響度については、「影響を受けなかった」が49.4%、「影響を受けた」が35.3%となった。

 影響を受けた理由としては、「建物の構造や基礎部分の つくりを気にするようになった」64.9%、「分譲時の売主や施工会社を重視するようになった」57.6%となり、「当面様子を見ることにした」の回答は33.9%にとどまった。

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 不動産は「買い時だと思わない」と考えている人が前回調査時より3.8ポイント増とジワリ増えているのは気になる材料だ。ニュースリリースではどのような層の人がそう思っているのか不明だが、第一次取得層の人であるとすれば深刻に受け止めなければならない。この先、郊外マンション価格はそれほど上昇しないと思われるが、すでに取得限界を超えていると受け取っているのだろうか。

 ならば中古があるといいたい。中古に対しては拒絶反応を示す人もいるが、最近の新築は地価・建築費の上昇で専有面積を圧縮したり、基本性能・設備仕様を落としている物件も多い。築浅の中古のほうが質が高い物件も少なくない。その意味では、不動産流通会社の出番が到来したと取れなくもない。

 杭打ちデータ流用問題はそれほど市場に影響を与えていないのは予想していた通りだ。

 三井不動産は1月28日、京都市祇園エリアのホテル「(仮称)京都祇園小松町ホテル計画」を着工したと発表した。

 NTT西日本が所有する計画地にNTT 西日本アセット・プランニングがホテルを建築し、竣工後、三井不動産グループが建物を賃借しホテルとして運営を行うもの。開業は2017 年(平成29 年)秋を予定。

 計画地は、建仁寺や料亭等が建ち並ぶ八坂通りに面した閑静な場所に立地し、清水寺や花見小路通も徒歩圏内。施設はツインルームを主体としたゆとりある客室で構成する。

 敷地面積は2561.52㎡(774.85坪)、建物は地下1階地上5階建て延べ床面積7,956.62㎡(2,406.88坪)。設計・施工は三井住友建設。

 大和ハウス工業は1月27日、日本経済新聞社が実施した第19回「環境経営度調査」において住宅業界で初めて建設業ランキングで1位を獲得したと発表した。

 「環境経営度調査」は、日本経済新聞社が1997年から毎年、企業の環境対策と経営効率を評価 している調査。今回は製造業1,737社、非製造業1,493社のうちアンケートに回答があった705社のランキングが発表された。

 同社は、2020年までに住宅や建築物のライフサイクルにおける「環境負荷ゼロ」に挑戦する 「環境中長期ビジョン2020」を策定し、多様な省エネ・省CO2に取り組んでいることが評価された。2位は大成建設、3位は清水建設。

 製造業ではコニカミノルタが2年連続で首位、2位は日産自動車、3位はキャノン。「倉庫・不動産・その他」部門では6年連続でヒューリックがトツプ。2位が東急不動産、3位がイオンモール。

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「横浜MIDベース タワーレジデンス」完成予想図

 横浜市住宅供給公社が2月中旬~下旬に分譲する「横浜MIDベース タワーレジデンス」を見学した。商業・保育所・診療所・有料老人ホーム・地域交流施設を併設した複合大規模開発で、鹿島建設の免震・SI工法を採用。商品企画レベルが高く、申し込みが殺到しそうだ。資料請求は3,000件に達している。

 物件は、横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅から徒歩3分(京浜東北・根岸線横浜駅から徒歩13分)、横浜市西区花咲町6丁目に位置する18階建て全199戸(他に老人ホーム定員100名予定、保育所、診療所、物販店舗)。専有面積は56.73~87.70㎡、価格は未定。竣工予定は平成29年11月下旬。設計は鹿島建設、施工は鹿島・紅梅組建設工事共同企業体。販売代理は野村不動産アーバンネット。従前はJTの施設。

 現地の最寄り駅は高島駅だが、横浜駅、桜木町駅、みなとみらい駅も徒歩圏にあり、建物は鹿島の免震・SI工法を採用し、商業施設や保育所、有料老人ホーム、地域交流施設などが併設される複合開発であるのが最大の特徴。

 商品企画レベルも高く、「CASBEE横浜」Aランクを取得。長期優良住宅の認定を受ける予定だ。住戸は4階以上で、内廊下方式を採用。全18タイプ。フィオレストーンキッチンカウンター、グローエ水栓、食洗機、吊戸棚、トイレドア幅75センチなどが標準装備。

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 横浜公社のマンションといえば、最近では「横浜ポートサイド」「マークワンタワー長津田」が忘れられない。別掲の記事を参照していただきたいが、大手デベロッパーが供給するマンションとそん色ないどころか、ユニバーサルデザインなどは民間をしのぐレベルの高さだった。

 今回も同様だ。モデルルームは柱・梁型がややあったのが気にはなったが、折り上げ天井にするなどうまく処理していた。

 面白い取り組みでは、5階の屋上コミュニティ広場に「屋上養蜂」を行うことだ。年間30~50キログラムを採取し、地域交流の場でお年寄りや子どもたちが食べるのだそうだ。

 養蜂を取り巻く環境は生態系の崩壊などにより悪化の一途をたどっており、関係者は危機感を募らせている。ミツバチはどこに花を求めるのか心配だが、横浜のど真ん中で養蜂を行うというのがうれしいではないか。

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 さて、肝心の価格。坪単価は最低で300万円、高値追及するなら350万円と見たが、公社は極力価格を抑えると読んだ。320万円くらいでないか。

 三井デザインテックの遠藤瑠衣氏がコーディネートしている東南角の10~18階の87㎡のタイプは、億ション(坪400万円として)となりそうだ。「横浜ポートサイド」では4戸が億ションだった。

 公社が億ションなどと書くと批判される向きもあるかもしれないが、そういうプレッシャーをかけるからつまらない当たり障りのないプランになる。みなとみらいエリアは坪400万円をはるかに突破しているではないか。安売りは横浜市民のためにならない。地域のポテンシャルを高める役割も横浜公社は担っている。

 首都圏で分譲事業を継続して行っているのは横浜公社と川崎公社だけになってしまったが、これからも民間とは一味違った質の高いマンションを供給してほしい。

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87㎡のモデルルーム

「横浜ポートサイド」の再現なるか 横浜公社「マークワンタワー長津田」(2011/7/22)

横浜公社が全国初の億ション その英断に拍手喝采(2007/11/2)

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「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」(横浜市市民活動支援センターで)

 「里山」をキーワードに様々な活動を展開している特定非営利活動法人よこはま里山研究所(通称称:NORA、理事長:松村正治・恵泉女学園大学准教授)が主催したワークショップ「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」を見学・取材した。

 「都市近郊の里山生態系を保全しつつ、里山資源を有効に活用することで、持続可能な共生社会の構築を試みるプロジェクトのキックオフ」として位置づけられたこのイベントは1月13日(水)と1月20日(水)、2週連続で行われ、延べ参加者は約140名にのぼった。

 記者が取材したのは20日のみだったが、会場の横浜市市民活動支援センターは60~70名の参加者であふれかえっていた。年代は20代から60代まで幅広い層にわたり、男女比は半々。記者のようなネクタイ、スーツ姿の人は皆無だった。「里山でシゴトする!」ことは、結果をすぐ求める、コストを最優先するサラリーマン的発想ではできないからだと理解した。

 さて、「里山」は、記者は勝手に人間界と獣界の共存界、分水嶺のようなところで、わくわくするような宝の山でもあると理解しているのだが、最近は「里山」が獣類に侵され、人間は檻の中でしか生きられなくなってきたのに絶望もしている。しかし、ここでは「里山」の定義だとか、林野庁がいつも使う「里山林」とどう違うのかはさておく。藻谷浩介氏の『里山資本主義』(角川新書)が大ヒットし、「里山」が一部の人たちのものでなくなったことは歓迎すべきことだと思う。

 とても面白かったのは、参加者が「里山で農福連携」「地域とつながる」「環境教育」「薪・木質バイオマス」「畑」などをテーマにグループに分かれて話し合う「グループワーク」だった。記者は聞き眺めていただけだが、考えるヒントをたくさん提供してくれた。例えば「木材」がテーマのグループワーク。「広葉樹が不足している」ことが話題になった。

 記者が生まれ育った田舎の川は水量が激減し、面白いように獲れたアユもモクズカニもほとんど姿を消した。川と山の関係はよくわからないが、戦後、わが国は雑木林をスギやヒノキの山に変えたことと無関係ではないのではないか。

 スギやヒノキの山はしっかり管理すればきれいではあるが、かん養機能、渇水・洪水防止機能を著しく低下させていることは容易に想像できる(針葉樹より広葉樹のほうが保水力が高いということに対しては異論もある)。棚田がなくなったのも関係しているはずだ。そういえば、昔は地元で採れたケヤキ、サクラなどの広葉樹が家具や住宅に当たり前のように用いられていたが、今はすっかりなくなってしまった。

 そのスギやヒノキは伐採期を迎えているにも関わらず、様々な理由で放置されている。打ち捨てられた間伐材が洪水時に街を襲うことがしばしばある。

 さらに驚いたのは、参加者が意欲満々だったことだ。「里山」に興味・関心のある人がほとんどというのは当然だろうが、「里山をシゴトにしたい」人が20人くらいいて、「里山が専業」の人が10数人もいたことだ。「副業」の人も4~5人いた。

 「里山」が仕事になるはずがないと記者は思っているのだが、そうではない可能性を秘めていることも報告された。

 一般社団法人まちやま代表理事の塚原宏城氏もそうだ。塚原氏は1979年生まれで、北大を卒業後、札幌市役所に7年間勤務したあと、国際自然大学校へ転身。そして2015年に独立して、まちやまを設立した。

 〝売り手・買い手・里山よく〟の「三方良し」を掲げる塚原氏は、笹が生い茂り荒れ放題となったままの町田市郊外の「里山」の所有者に話を付け、「笹でつくる!ティピー&ミニバウムクーヘン」の体験イベントを行った。刈り取ったササでインディアンが使っていたテント型住居「ティピー」と、ミニバウムクーヘンを作るイベントだ。親子一組3,000円、定員20名で参加者を募ったところ、8組19人が集まったという。先日の1月17日だ。

 笹やぶをきれいにする作業はやったことがないが、お金をもらってもやりたくない。大きくなったササはしぶとく、刈り取るのは容易でない。真冬にわざわざ3,000円も払って参加する人がいるのが信じられない。塚原氏はそのようなニーズがあることを活動の中から発掘したのだろう。

 このほか、NPO法人ナチュラルリングトラスト副代表・小出仁志氏、認定NPO法人自然環境復元協会・伊藤博隆氏、多摩市グリーンボランティア森木会・高澤愛氏、株式会社FIO代表取締役・舩木翔平氏がそれぞれ里山資源をいかすシゴトについて事例紹介した。

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グループワーク

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 取材を申し込んだのは、NORAがどのような活動を行っているのかこの目で確かめたかったのと、松村氏が年初のNORAのメルマガで〝里山でシゴトする!〟を宣言し、並々ならぬ決意を込められていたのに興味をそそらされたからだ。

 松村氏はコラムで次のように述べている。

 「NORAは、約15年前にNPOを立ち上げたときから、『里山でシゴトする!』ことをキャッチフレーズとして掲げ、これを実現しようとしていた。…しかし、十分に戦略を練る余裕もないままに、『シゴトする』こと自体が次第に目的化してしまった。その結果、設立後7年目には、NPOとしての目的を果たすことができず、軌道修正を図ることになった。…この方針転換から、さらに約7年の月日が流れた。…都市近郊の里山に目を向ければ、特に若手を中心に、人と里山をつなぎ、新たな仕事を創出しようとする動きが広がっているように見受けられる。

 NORAとしては、こうした動きの輪に加わり、あらためて『里山でシゴトする!』ことにチャレンジしたいと思っている。…ここには、(里山を)『いかす』(生かす・活かす)ということを深く考えたいという気持ちが働いている。
 (都市近郊の)人びとに向けたレクリエーション・教育・医療・福祉などのサービスを、総合的に提供できるとしたら、このエリアの里山の価値は非常に高まるはずだ。…まちの近くの里山をいかし、持続可能で共生社会をつくるために、まず私たちが立ち上がりましょう」

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松村氏

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 松村氏について一言。数年前、多摩ニュータウン学会の会合で松村氏と初めてお会いしたとき、話される言葉一つひとつに「強靭さ」「重さ」があるのに驚いた。座学だけでは得られない実践によるしっかりした裏付けがあるからだろうと気づかされた。

 「実践」とは、NORAの活動だ。実に多彩でユニークな活動をされている。毎月送られるメルマガは量が多く読み切れないが、松村氏のコラムは読むことにしている。リンクを貼ったのでぜひ見ていただきたい。

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特定非営利活動法人よこはま里山研究所(NORA)

雨の日も里山三昧(松村氏のコラム)

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「特区民泊」事業説明会(大田区立消費者生活センターで)

 全国初の「特区民泊」説明会に定員の2倍の200名-東京都大田区は1月27日、全国で初めて施行される「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)」説明会を行ったが、定員100人の2倍の約200人が参加。席に座れず立ったままで説明を聞く人も多くみられた。報道陣も数十人が詰めかけ、会場は人であふれた。条例は1月29日に施行される。

 「特区民泊」は、①7日以上(6泊7日)施設を利用させること②居室の面積が25㎡以上であること③清潔な居室環境にあること④廃棄物の処理方法が適切であること⑤外国人に必要な役務を提供すること⑥所轄の消防署の審査を経ること⑦近隣住民への周知を行うこと-など一定の要件を満たせば旅館業法の適用除外を受けられるというもの。

 同様の条例は大阪府(施行日は未定)と大阪市(施行日は平成28年10月以降)にあるが、同区が全国に先駆けて施行する。

 説明会で挨拶した同区生活衛生課長・三井英司氏は「全国初の試み。外国人の旅行者に安心・安全で質の高い民泊を提供し、リーディングケースとなるよう第一歩を切りたい」と話した。

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 記者は「民泊」にほとんど関心はないし、知識もない。ただ、分譲マンションの空き部屋などが民泊施設として利用されないかという危惧を抱いているので、どのような人が申請するのか興味があって取材することにした。なので、記事の当否については自信がないことを最初にお断りしたい。

 まず、分譲マンションが特区民泊として利用されるかどうかだが、これはないとひとまず安心した。一般的な分譲マンションは管理規約で「専ら居住」が定められているはずで、「業」として不特定多数の人に短期宿泊させるのは規約違反となりそうだ。住民も管理組合も認めないのではないかと思う。管理規約があいまいで、事務所化、賃貸化が進んでいる古いマンションが民泊施設化する可能性は否定できない。

 これから申請を考えている人もいるのだろうが、条例の要件をクリアするハードルは低いようで高い。例えばゴミ出し。一般家庭のゴミ出しと異なり、事業者用のゴミ出しルールを守らないといけない。分別は当然ながら、出す場所も異なるし、燃えるごみは区の許可業者の、その他のゴミは産業廃棄物として都の許可業者にそれぞれ依頼しないといけない。

 また、テロ対策、感染症対策、違法薬物の使用、売春などを防止する目的から警察の滞在者の名簿の提出や照会に協力すること、挙動に不審の点が見られたら警察に通報することも求められる。

 近隣住民の苦情が頻繁に出るようでは「外国人に安全で安心な役務」を提供することにならず、特定認定を取り消されるリスクもある。

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 条例の施行によって区内でどれだけの特区民泊が申請されるか。これも大きな関心事だが、三井課長は「1社で年内に1,000部屋くらい申請したいという業者もあると聞くが、どうなるか分からない」と語ったように、ふたを開けてみないとわからないのが現状のようだ。

 ただ、説明参加者には、「マンションの購入を含めて民泊を検討したい」という28歳の男性が語ったように、民泊をビジネスにしようという業者や、投資用として民泊施設を購入しようと考えている人もいるのかもしれない。参加者の中には若い人の姿が多いのが目立った。

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「ザ・パークレックス東陽町」

 三菱地所レジデンスは1月26日、中小ビルのリノベーション賃貸事業「Reビル事業」で初の社宅を一棟リノベーションした「ザ・パークレックス東陽町」の工事が完了したことに伴いプレス内覧会を行った。

 「Reビル事業」は、築年数が経過して競争力を失った中小既存ビルなどを同社が一括賃借し、同社負担で耐震補強などを含むリノベーション工事を実施したのち、一定期間(概ね10~15年)転貸して投資資金の回収とバリューアップした転貸収入を確保したあと、オーナーに返還。リノベーション企画にあたっては、同社の子会社メックecoライフが主導して計画を練り、設計については、主にオープン・エー(代表取締役の馬場正尊氏は「東京R不動産」の共同創設者)に委託。ニーズを的確に捉えた物件に改修するというスキーム。

 2014年に立ち上げ、これまで東京・丸の内の後背地で5棟が竣工。竣工したばかりの2棟を除く3棟は100%稼働。事業推進中が約5棟、検討中が約10棟ある。オーナーの希望によってはマスターリースだけでなく、買い取りも行い、対象物件も住宅、倉庫などにも広げていくことを検討しているという。

 今回の物件は、東京メトロ東西線東陽町駅から徒歩13分、江東区千石2丁目に位置する地下1階地上5階建て全10戸。完成は昭和56年。NTT東日本が幹部社宅として使用していたもので、転貸人はテルウェル東日本。同社が転々貸人となる。1坪当たりリノベーション費用は約20万円。

 敷地北側に公園・小学校があり、敷地面積約202坪に対して延べ床面積が約380坪とゆったり建てられていること、さらには新耐震基準で建設されていること、共用部にはピロティ・ポーチ、専用部にはサンルーム・多くの共用収納があることなどの特性を最大限に生かすため「子供と共に成長する住まい」をテーマに子育て世代にターゲットを絞っているのが特徴。月額賃料は18万円前後を予定している。

 内覧会に臨んだ同社資産活用室兼メックecoライフ常務取締役・明嵐二朗氏は、「ヒアリングの結果、〝困っている〟〝バリューアップできない〟というオーナーがたくさんいる。われわれがリスクを負うことで、事業が環境負荷の低減や耐震化促進につながり、エリアの活性化が確実にできることを実感している」と話した。

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飾れるポーチ

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階段室

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 「Reビル事業」は立ち上げたばかりで、1兆円もある三菱地所グループの売上比率からすればコンマ数パーセントにしか過ぎないはずだ。

 しかし、デベロッパーの事業すべてが〝ソリューション〟ビジネスであるという観点からすれば、「Reビル事業」は同社の将来を左右する先導役となると記者は確信している。地域の課題を徹底して掘り起こし、ビルやマンション事業に生かしてほしい。地方の再生にも取り組んでほしい。

 明嵐氏は「東京・丸の内の後背地にはバリューアップできなくて困っているオーナーがたくさんいらっしゃる。しかし、どうしていいかわからない、投資リスクが獲れないということが大きな壁になっている。わりわれがリスクを取ってバリューアップし、地域の活性化に貢献する」と力を込めたが、とても頼もしく見えた。

 昨日は三菱地所の全面広告が朝日新聞と日経新聞に掲載されていた。ビルのイラストを背景にして杉山博孝社長の全身像が大写しされていた。デベロッパーの社長が広告や記事で大写しされたものはたくさんあるが、全身像というのは記憶ない(体形からいって絵になる社長はほとんどいなかったこともありそうだ。杉山氏はその点、身長175センチはありそう)。

 昨日の杉山社長の全身像と今日の明嵐氏の姿をだぶらせて眺めていた。かっこいい。明嵐氏は同社野球部の主砲も務めていた。

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カスタマイズできる壁

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育てるガーデン

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 大京グループの不動産流通事業を手掛ける大京穴吹不動産とリフォーム事業を手掛ける大京リフォーム・デザインは1月22日、リフォームショールームを併設した新形態の不動産仲介店舗「Reno Salon(リノサロン)」を江東区大島に開設する。

 マンション居住者や中古物件購入検討者のリフォーム需要の高まりに対応するもので、水回り(キッチン、浴室、洗面台、トイレ)」を中心に、大手メーカーの実機約20点を展示するほか、大京穴吹不動産のリノベーションマンション「Renoα(リノアルファ)」の品質が体感できるモデルルームを設置する。

 「Reno Salon(リノサロン)」は江東区大島8-32-7学協ビル1階。電話番号:大京穴吹不動産 大島営業所03-6362-0745 大京リフォーム・デザイン大島店03-6362-0743・営業時間:10:00~19:00 (毎週水曜、第1・3火曜定休)。

 

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