屋上に里山とせせらぎ 格子デザインも美しい 豊島区新庁舎が完成
完成した豊島区庁舎と「Brilliaタワー池袋」
建築家の隈研吾氏がデザイン監修した「Brilliaタワー池袋」と「豊島区庁舎」の一体開発「としまエコミューゼタウン」が完成し、公開されたので見学した。
約810㎡もある里山というべき庁舎屋上の「豊島の森」や総延長約130mのせせらぎを設けた4・6・8階のグリーンテラス、見る角度によって表情が変わるルーバー、国際会議も可能な格子が美しい議場、日本最大規模のふくろうコレクション、回廊美術館など見どころ満載。豊島区が誇れる新名所になりそうだ。
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「Brilliaタワー池袋」を2013年の「ベスト3マンション」に選んだのは正解だった。坪単価が350万円の高値だったにもかかわらず圧倒的な人気を呼んだが、ユーザーの見る目は正しかった。今となっては坪450万円どころか500万円の価値はある。
庁舎の壁面にランダムに貼り付けられているブラウンのルーバーはやや濃すぎるし、太陽光パネルが乱反射し雑多なものを映し出す外観は美しいとは思えないが、外周に植えられているケヤキ、シラカシ、サクラなどが成長すれば隈氏が企図した「樹木のような庁舎」になるのではないか。
圧巻は「ランドスケープ・プラス」社がランドスケープデザインを担当した「豊島の森」と外周を流れるせせらぎだ。立派な屋上庭園はたくさんあるが、せせらぎを建物の外周に巡らすというものは記者の知っている限りでは今回が2例目だ。滝の音の演出もある。建物全体の管理維持費は5億円、このうち植栽関係だけで6,000万円を想定しているようだが、それだけ経費をかける価値は十分ある。
「豊島の森」
「グリーンテラス」(ベンチもあるので足水が可能なのか)
アトリウム、吹き抜け、議場などあらゆるところに用いられている格子ルーバーもまた心憎いほどの工夫が凝らされている。吹き抜け空間「エコヴォイド」に用いられているルーバーは長さが異なる3種類のものを等間隔に張り付けてあり、正面から見ると縦のラインが規則正しく並ぶのだが、移動するごとに表情が変化していく。アトリウムの壁面はL型ルーバーの貼り付け方を変えることで陰影に変化をつけている。隈氏がよく好む工夫だ。
アルミ手すりや壁面・ドアなどのカラーリングにも気を使っており、えも言われぬ色が用いられている。侘び寂びの世界だ。議場の壁面と区長執務室は布クロスが採用されていた。
エコヴォイドのルーバー(左)とアトリウムのルーバー(長さが異なり貼り付け方が異なる)
正面から見たルーバー(左)と斜めから見たルーバー
故松浦千誉氏が所蔵し、区が平成22年に寄贈を受けた6,680点と区が所有する13,253点を展示する「ふくろうコレクション」も区民に親しまれそうだし、アトリエ村で知られる豊島区美術家協会会員100名の絵画なども廊下などに展示されている。
ふくろうコレクション
唯一と言っていいくらい見劣りしたのが男子用のトイレ。民間は最新のものを採用するところが増えているが、ここは極めてシンプルというか並み以下だった。女性用のトイレは見なかったが、女性用だけ豪華ということはありえない。
しかし、新庁舎は「歌舞伎座と一緒、クマさんがデザインしたんでしょ。区民の誇りになる」と見学した区民が話したように、区の新名所になるのは間違いない。区のイメージを変えるかもしれない。
新庁舎の専有面積は約26,000㎡。このうち約11,000㎡を市街地再開発建物の床として区が取得。不足分は再開発組合から購入。この購入資金を確保するため旧庁舎敷地と公会堂・分庁舎敷地を定期借地権で民間に貸し付ける。
議場
記者が選んだ2013年ベスト3マンション(2013/12/26)
近鉄不動産 首都圏の事業拡大へ 「法人営業センター東京」開設
近鉄不動産は4月2日、「法人営業センター東京」を開設する。投資用および事業用不動産の取扱いやリーシングも含めた首都圏の収益拡大を目指すもので、既存の「近鉄の仲介新宿営業所」(東京都新宿区)を増床し、新たに法人営業部門を設置する。
「法人営業センター東京」は東京メトロ丸ノ内線・副都心線・都営新宿線新宿3丁目駅から徒歩2分。新宿2丁目5番10号 成信ビル9階(「近鉄の仲介新宿営業所」隣接)スタッフは担当部長2名、所長1名含む計8名。
大和ハウスグループの大和リース 全国の自治体・学校に49台蓄電池寄贈
大和ハウスグループの大和リースは3月25日、非常時の地域支援活動の一環としてリチウムイオン蓄電池「パワーイレ」を全国の自治体や学校15カ所に49台寄贈すると発表した。
同社は全国の庁舎や学校などの公共施設でPFI、PPP事業を行っており、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの国内外の災害時においては応急仮設住宅の建設に携わってきた。その経験から、緊急時に司令塔の役割を果たす行政を支援したいという思いから寄贈することにしたもの。
無垢材を多用 多世代が楽しめる 東急不動産「キュープラザ原宿」27日開業
「キュープラザ原宿」
東急不動産は3月27日、〝ワタシが切替わる〟をコンセプトにした商業施設「キュープラザ原宿」をオープンする。地階から11階まで18店舗が入居するが、ほとんどが日本初、新業態、エリア初で、内装材に無垢材を用いているのが特徴。
「キュープラザ原宿」は、同社の「環境ビジョン」に基づき、「東急プラザ表参道原宿」とともに周辺の緑とをつなぐエコロジカル・ネットワークの役割を果たすよう高木約210本を植えたほか、約120㎡の壁面緑化も施している。
外観にはアルミパネルをルーバー状に貼り付け、渋谷側と原宿側から眺めた表情が異なるようにしている。店舗は飲食が中心だが、結婚式場、日仏バイリンガル教室、日本初のヘアサロンもある。
施設は、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩1分、渋谷区神宮前1丁目の明治通りに面した敷地面積約655坪、11階建て賃貸面積約1,700坪。基本設計は東急設計コンサルタント、設計施工は竹中工務店。
完成予想図
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開業に先立って25日、報道陣に公開されたので見学した。マンション見学会などには多くて20人くらいしか集まらないのに約300人の報道陣が見学申し込みしているとかで、その数に驚いた。
店舗は見学したが、ほとんどさっぱり分からなかった。「乃木坂46」というAKB48に対抗してできたというアイドルグループとコラボした「AREA-Q」なる新業態のエンタテイメント・コラボレーション・カフェにはカルチャーショックを受けた。
しかし、一つだけ共感を覚えたことがある。多くの店が内装材に無垢材を用いていることだ。これは、同社がコンセプトとして内装材に自然素材を用いることをテナントに提案して受け入れられた結果、実現したものだという。
そんな店舗の一つ、「オリジナルパンケーキハウス」原宿店を開業させるフークル・河﨑孝文社長は「内装に坪100万円以上かかっているかもしれない。若者だけでなく大人も楽しめる雰囲気の店にした。思い切って背伸びしてみた」と話した。
若い層にもこうした自然素材が好まれるということを聞いてうれしくなった。そういえば、「スープストックトーキョー」や「コメダ珈琲」も本物の木を内装材に使っている。一部の店を除き、飲食店はわれわれの世代でも利用できそうだ。
外観もなかなかいい。完成予想図を見たときは異様な建物に感じたが、実際の外観は使用されているオレンジ、ピンク、グリーンなどのルーバーは洗練された色で、原宿の街に溶け合っている。
「池袋」人気を牽引するか 住友不動産「グランドミレーニア」
外観
全国マンション供給№1になったためかどうかはしらないが、このところ新規・竣工物件の見学会回数でも他社を圧倒している住友不動産が3月24日、年度末では「高田馬場」「インペリアルガーデン」に次ぐ3物件目、池袋の「グランドミレーニア」の記者見学会を行った。
物件概要などは分譲開始前の記事を参照していただきたい。分譲開始したのは、先に竣工した豊島区新庁舎と一体開発の「Brilliaタワー池袋」の分譲開始からやや遅れてからだった。
繁華街の立地であることから記者は売れ行きに注目していたが、これまたすごい。これまでに311戸を供給して300戸を契約済みだ。発売済みで未契約住戸の専有面積は43.43~71.01㎡、価格は6,000万円台前半から9,000万円台後半。坪単価は400万円台。
契約者の居住エリアは豊島区が約26%、周辺区が約19%、その他東京が約24%、年齢は20歳代から40歳代の一次取得層で約63%、投資用は約1割。
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記者は、西武不動産が池袋に本社を構えていたころはしょっちゅう取材で出かけていたが、最近はほとんど行かない。たまに東京芸術劇場で行われるコンサートに行くくらいだ。池袋はあまり好きではない。
しかし、最近はどういうわけか「住みたい街」にランクインしているという。同社の物件の売れ行きのいいのにも驚いた。
建物は、エントランス・ホールのワインレッドと黒の壁のコントラストが気にいった。歌謡曲にはうといのだが、井上陽水作詞、玉置浩二作曲の「あの消えそうに燃えそうなワインレッドの…」を思い出した。
パンフレットには〝駅近くのレジデンシャルゾーンという都心居住の好立地にふさわしいアヴァンギャルドなタワーライフを表現〟とある。新宿や渋谷に押され気味の池袋の反撃の狼煙をあげるのか。
エントランスホール
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「池袋」のマンション単価が400万円とすると、山手線のマンション単価ランキングはどうなるか、記者の勝っ手で値付けしてみた。値付けは居住環境をもっとも重視したが、そもそも山手線駅圏で住宅地としてふさわしい地域は多くないので、食や文化などの要素を含めた街のイメージから総合的に判断した。
1位・東京…1,200万円 池袋が坪400万円ならその4倍の価値はある
2位・品川…750万円 リニア始発駅、アジアヘッドクオーター特区の将来性
3位・新宿…700万円 歌舞伎町はこわいが、やはり魅惑的な街だ
4位・原宿…680万円 純然たる居住を考えたら評価はもっと高いか
5位・渋谷…650万円 ヒカリエに駅前再開発で新宿に迫るか
6位・恵比寿…620万円 やはり恵比寿ガーデンプレイスの力は大きい
7位・有楽町…580万円 東京・銀座駅圏と考えればもっと高い評価も可能
8位・目黒…550万円 東建のマンションは坪600万円の声あるが…
9位・目白…530万円 住宅地ならもっと高い評価が妥当か
10位・代々木…500万円 代々木ゼミナールで全国区になったが…
11位・神田…490万円 由緒ある街。駅に広場なく魅力はなし
12位・浜松町…480万円 駅前の再開発、浜離宮の価値は大きい
13位・新橋…460万円 駅前の再開発も決まった。更に前進可能
14位・大崎…450万円 再開発タワーマンションはまだまだ増えそう
14位・田町…450万円 浜松町、品川と連続する街。もっと評価されていい
16位・高田馬場…420万円 何を重視するかだが、住むなら池袋より上
17位・池袋…400万円 他の駅との比較からしたらこれは割安か。歓楽街のイメージ
18位・上野…390万円 駅間競争で守勢一方。地盤沈下しているが底力あり
19位・秋葉原…380万円 いかがわしい街のイメージが強すぎるのが難点
20位・五反田…380万円 いまひとつアピールできるものがないのが弱点
21位・西日暮里…370万円 交通の要所ではあるが、これ以上の評価は
21位・巣鴨…370万円 住むにはいいところだが…強調材料なし
21位・駒込…370万円 良好な住宅地を形成しているが…
24位・大塚…360万円 巣鴨、駒込と同様、商業施設が乏しい
25位・日暮里…350万円 西日暮里と同じ評価。乗換駅のイメージ
26位・御徒町…330万円 アメ横のイメージと松坂屋のブランドが一致せず
27位・新大久保…320万円 無国籍タウン。評価が難しい。グローバルなのはいい
28位・田端…220万円 駅前がプア。高台と下町が分断されている工場街
29位・鶯谷…200万円 駅西側の高台はともかく、風俗街のイメージは致命的
ここまで書いたが、田端や鴬谷の人からはおしかりを受けるかもしれないし、池袋が17位というのも低すぎるのかもしれない。住友不動産が値付けを間違ったか、記者の他の駅の評価が高すぎるのか。いずれにしろ、これから都心部のマンションの単価は大幅にアップするはずだ。
メインエントランス
野村アーバン 港北NTセンターと大阪府茨木市に仲介店舗「野村の仲介+」
野村不動産アーバンネットは3月24日、仲介店舗「茨木センター」(大阪府茨木市)と「港北ニュータウンセンター」(横浜市)の2店舗を4月3日に開設すると発表した。
2店の出店により、同社の「野村の仲介+」は首都圏59部店・関西圏5部店の計64部店となる。
またイニシアだ! UDの企画抜群 アクティブシニア向け「グランコスモ武蔵浦和」
「グランコスモ武蔵浦和」完成予想図
またまたコスモスイニシアだ。同社が4月下旬に分譲するアクティブシニア向けの「グランコスモ武蔵浦和」を見学した。昨年は同社の「イニシア武蔵新城ハウス」をベスト3マンションの一つに選んだが、今回の物件は、これから増えそうなシニア向けのモデルになるのではないか。コンセプトが明確で、ユニバーサルデザイン(UD)の商品企画が素晴らしい。坪単価260万円もどんぴしゃり。今年も「ベスト3」候補に浮上した。
物件は、JR埼京線・武蔵野線武蔵浦和駅から徒歩4分、さいたま市南区沼影一丁目に位置する13階建て全160戸。他に他事業者分譲住戸601戸、非分譲住戸15戸)、非住宅13区画など。専有面積は44.00~73.54㎡、価格は未定だが坪単価は260万円くらいになる模様。竣工予定は平成28年1月下旬。管理・サービス運営はコスモスライフサポート。施工は清水建設。
現在分譲中のマンション「武蔵浦和SKY&GARDEN」などとともに一体開発されている再開発プロジェクトの一つで、購入者の年齢制限は設けてはいないが、60歳代以上のアクティブシニア層をターゲットにしたマンション。
レストラン、大浴場のほか各種生活サポート施設・プログラムを備えており、1階には医療クリニックが併設され、万が一の場合には提携する介護施設が紹介される。
マンション内は全て内廊下方式。玄関-ホール-廊下-リビング-バルコニーまでバリアフリーで、廊下幅はメーターモジュール。居室ドアなどは全て引き戸で、洗面カウンターは椅子を置いて足を入れることもできるニースペースがついている。各洋室、トイレ、バスルームには緊急コールボタンが設置される。キッチンはオール電化で、食洗機はついていないがファミリーマンションとほぼ同クラスかそれ以上。夫婦別室で、居室とリビングが一体として利用できるようにしているのも特徴の一つ。
2月27日にモデルルームをオープン。スタッフ9人が対応しているが、これまで予約は平日も含めすべて満室。3週間で約200名の来場がある。これとは別に3月8日から14日にかけてはシニア向けイベントを行っており、こちらには270~280名の参加があったという。
大浴場
スカイビューラウンジ(左)とレストラン
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〝アクティブシニア向け〟が適当かどうかは分からないが、この種のマンションは「デュオセーヌつくばみらい」と「スマートコミュニティ稲毛」を見学しているが、立地条件が異なり、ターゲット層も微妙に異なっているように感じた。
この2物件は郊外型であり、どう人生を終えるかといった雰囲気のあるものだが、今回の物件は都市居住者向けで、まだまだ人生をエンジョイしようという層がターゲットではないか。一人住まいというより夫婦二人、あるいは親子住まいを想定しているのではないか。キッチンも豪華で、ファミリーマンションに引けを取らない。ユニバーサルデザインも徹底しており、多くの支持を受けるのは間違いない。
リビングとバルコニー
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どうしてこのような企画ができたか。その謎は一挙に解けた。業界関係者ならご存知だろうが、同社は10年くらい前に「COCOLABO」を立ち上げ、大学の研究者などと「住まい」について研究を行ってきた(実際はずっと前から同社は研究熱心だった)。このアクティブシニア向けも10年前からずっと研究してきたのだという。苦節10年とはよく言ったものだ。その成果が今回の商品企画となった。
価格が高いという向きもあるかもしれないが、このマンションには単価で測れない価値がある。
同社の研究熱心に関連することだが、この物件の説明した同社市場・事業戦略部シニア事業課担当課長・山本一馬氏から「インディペンデンスヴィレッジ成城西」の話が出たのに驚いた。10数年前に分譲されたもので、高齢者向け分譲マンションの走りではないか。当時、売主の都市綜研インベストメントの栁瀨公孝社長からじっくり話を聞いたのを思い出した。分譲マンションに本格的なコンシェルジュサービスを導入したのも同社だったはずだ。
そのコンセプトが今回の物件にも生かされていると思うととても嬉しい。そしてまた「武蔵新城」といい今回の「武蔵浦和」といい、コスモスイニシアはいい仕事をする。同社の頭脳と大和ハウスのカネが組み合わさったらものすごいことができるのではないか。
一つだけ注文がある。「アクティブシニア」という言葉について。「アクティブ」は反対語の「パッシブ」も意識させる。何だか元気がない高齢者に劣等感を与えているようで気分がよくない。
本来的にはアクティブもパッシブも青年も壮年も高齢者も同じサークルの中で生きるのが理想的な姿ではないか。気の利いた言葉を編み出してほしい。
浴槽メーカーに参考になりそうなヒントも一つ。山本氏によると、イベント参加者には現在の浴槽の「またぎ」部分約45~50センチでも高すぎるという声があるそうだ。なるほど。半身浴ならまたぎの部分はもっと低くてもいいかもしれないし、子どもも入りやすい。これがユニバーサルデザインだ。
玄関-廊下
様々な新しい発見もあった 三菱地所レジ「横浜新子安」竣工見学会
「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」
三菱地所レジデンスは3月23日、2013年12月の分譲開始以来10カ月で全497戸を完売した「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」の竣工見学会を行なった。マンションは地域住民にも公開され、町内会関係者など約30人が見学に訪れた。
物件は、JR京浜東北線新子安駅から徒歩4分、横浜市神奈川区新子安1丁目の日産グラウンド跡地に位置する10階建て全497戸。専有面積は61.66~101.12㎡、価格は3,278万~7,698万円(最多価格帯4,400万円台)、坪単価は210万円。施工は熊谷組。
問い合わせ件数は約5,800件、来場者数は約2,500件、契約歩留まりは約20%。購入者は横浜市内居住者が約60%で、30歳代の一次取得層が47%。
見学会では共用施設のほか保育所、学童施設も公開され、熊谷組の施工技術や地域との関わりなども映像で紹介された。地域住民へのインタビューも許され、アンケートによる購入者の声をまとめた冊子が報道陣に配布された。
歩行空間
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これほど盛り沢山で新しい発見をさせてもらった見学会はない。
まず、建物。ランドスケープデザインが秀逸だ。2010年に地域住民を含めた「新子安まちづくり推進委員会」を立ち上げ、良好な住環境を形成するため協議を重ねた成果だろう。横浜市の市街地環境設計制度により高さ規制の緩和を受け、保育所・学童保育施設・地域交流施設を併設し、敷地外周を歩道空間とした「CASBEE横浜」の「Aランク」を取得している。
施工面では熊谷組は、PC工法を一部採用するとともに工程の工夫を凝らした結果、1層を立ち上げるのに通常は18日くらいかかるのを12日に短縮したこと、マイスターと呼ばれる責任者が音頭をとって地域のイベントに参加し、掃除なども行ったことなどが報告された。
驚いたのは、購入者アンケートの結果がそのまま配布されたことだ。われわれはたくさんマンションの取材をするが、直接ユーザーの声を聞く機会はほとんどない。その意味でアンケートの声はものすごく新鮮に映った。全て読んだ。
アンケートの設問は、①購入のきっかけ②決め手になったポイント③妥協点④購入後の暮らしのイメージ-の4項目で、1枚に12~13人、全部で250人分くらいあった。
読んでまた驚いた。女性と思われる方の字が総じて美しく、びっしりと書かかれていたことだ。最近流行りの絵文字はほとんど皆無。丸文字もない。内容的にも一つ一つ丁寧に答えている。美しい品性がうかがわれた。いい加減な取材はできないと教えられもした。
その反面、男性によるものははっきりいって字が下手で雑。内容的にもピント外れ、表現力の乏しさ、主体性のなさがうかがえた。なにかにつけ女性がリードする世代なのだろうと納得もした。
以下、女性によるものと男性によるものと思われるコメントをいくつか紹介する。
「家族が増えて今の住まい(1LDK)が狭くなり引越しを考えた。マンションならではの眺望、日当たりの良さを条件に高台にあるマンションを中心に見学した。高台にあるマンションは眺望、日当たりは良いが、駅からの道のりが遠かったり、坂道がきつかったりしたため、何件か見学したが、結局次々と断念してしまった。
本物件を初めて見学した際、駅からの近さに感動…。色々見てきたが、やはり駅近の魅力はすごいと思った。駅近のわりには手の出せる価格帯であること、部屋の仕様が希望を十分に満たしている(ディスポーザーなど)ことなどが決め手の後押しとなった」
「私達夫婦は、二人とも60歳近いので、休日にはゆっくりとこの街を散策することが楽しみです。特に大口商店街は、歴史あるお店と、新たにオープンしたお店が共存する商店街のようなので、ぜひ行ってみたいと思います。
また、絵画を鑑賞することが好きなので、みなとみらいにある横浜美術館が近いので楽しみです。釣りが好きな主人は、海まで近いので、大変楽しみにしております」
「二人の勤務地である新橋と横浜の中間地点、川崎周辺と都内でモデルルームを9件ほど見て回り、ここの物件にたどりつき、契約に至りました」
「2カ月で10件のモデルルームを見学した中で、ここが一番気に入りました」
「初めて『新子安』駅に降りた時は、正直、他の駅と比べ、商業施設の貧弱(?)さや人の少なさに吃驚したが、普段の買い物は週末に車でするし、必要であれば『川崎』や『鶴見』で途中下車もできると思い納得した。
駅から少し遠い物件であれば、もっと広くて安いところもあったが、やはり駅からの距離がこれほど近く、且つ静かな環境は他では得られないと思った」
(以上、女性回答者)
「最低限のスーパーがあるため妥協。今後の発展に期待」
「新築でもあり、モデルルームでの細かな点(ドア、キッチンの高さetc.)に感激した妻のひと言が決め手となった。『ここに住めたら良いよね』と」
「駅からフラットで4分。その割に静か」(フラットではない=記者注)
「妻の実家との近さ」(同様のコメントは多数あり)
「テラスで昼寝」(この種の回答も多数。対照的なのが女性と思われる「毎日、ピアノを弾いていたい」という回答)
「家のテラスでのんびり過ごす。WIC(トイレでなくウォークインクローゼットか)にこもる」
「眺望はあきらめた。東京への近さは妻に妥協してもらった」
(以上、男性回答者)
価格について一言。購入者の方には「価格が高い」と思っていらっしゃる方も結構いるが、用地取得の段階から知っている記者はものすごく割安感があると思う。坪230万円が適当とはじいた。駅力が乏しいのは如何ともしがたい。だから安いのだ。
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認可保育所と民設民営は、見学したことがほとんどないので他の施設との比較は難しいが、とてもよくできていると思った。
保育所は83カ所で保育園などを展開している「グローバルキッズ」が施設を所有・運営するもので、床暖房に床材にはコルク材を使用、腰壁・建具などはヒノキの無垢材、廊下・階段幅は約1.5m。至れり尽くせりの設備だと思った。定員60名で、すでに定員いっぱいだという。
学童保育は、「ワオキッズ」がグローバルキッズから貸借して運営するもの。英会話教室やサイエンス教室(一部はオプション)などのカリキュラムやイベントのほか送迎、延長対応、ミール、洗濯・着替え貸し出し、買い物代行なども行なう。レギュラー会員(入会金、入会セット料金別)で1年生の場合、週5日の通常月料金は4万円。定員は30名で予約を含め3分の2が申し込み済み。
学童保育は、公設公営と公設民営がほとんどだろうと思っていたが、最近は民設民営も増加しているとか。基準がないから自治体の援助も受けられないようだが、学童保育がビジネスになる時代になったということか。
〝子どもは風の子〟は死語になったようだ。最近の親は〝家にこもっていないで、公園で遊んできなさい〟と言わないのだそうだ。
保育所(0歳児用のオリジナルの椅子とテーブル。床はコルク)
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地域交流施設を見学したあと、地域の方たちと話し合う機会が設定されていたのもよかった。
約2,000世帯で構成する新子安南部町内会会長の森田さん(66)に「最近の若い人はコミュニティなど真っ平。町内会に加入などしたくないむという人が増えているが…」と単刀直入に聞いた。
森田さんは、「町内会がうまく機能していない例を知っているが、そういうところは災害時には最悪の事態になるはず。挨拶もしないような街は、マンションも高く売れない。このマンションは全世帯が加入すると聞いている。交流施設は無料で利用できる。様々なイベントなどに利用したい」と話した。
また、別の人は「敷地には立派なサクラが植わっていたが、伐採されることになったので、われわれが要求して緑地スペースを増やし8本の木を植えさせた。完成したのを見ると贅沢すぎて、管理費が大変だろうと心配もしている」と率直な感想を語った。
町内会の方が「贅沢すぎる」と話した樹木は、シンボルツリー的な10数メートルはありそうクスノキのほかシラカシ、カツラ、アメリカフウ、ヒマラヤスギなどの成木で、確かに見事だ。外周を歩行空間にしているランドスケープもいい。
町内会の皆さん
東急リバブル 「千歳烏山」など一挙に5店舗新設
東急リバブルは3月23日、売買仲介店舗「千歳烏山センター」(東京都世田谷区)、「日暮里センター」(同荒川区)、「武蔵小金井センター」(同小金井市)、「芦屋センター」(兵庫県芦屋市)、「琴似センター』(北海道札幌市)の5店舗を4月2日(木)に開設すると発表した。
今回の出店により同社の全国リバブルネットワークは162カ所になる。
子は天からの授かりもの? 子どもができる前の住宅購入者 アットホーム調査
子供が生まれたら住み替えたいと考えている人は17.6%-毎回面白いアンケートを行なう不動産情報サービスのアットホームが今度はこんな興味深い調査結果を発表した。
「子供が欲しいと思っていて、子供ができる前に東京都内に住宅を購入した夫婦」353名(男性188名、平均37歳、女性165名、平均38歳)を対象にネットでアンケート調査したもので、住宅購入価格は平均4,539万円、居住面積は85.8㎡、最寄り駅から9.9分。
まず、「子供が生まれたら、住み替えたいですか? 」という問いに「はい」は17.6%、「いいえ」は58.1%、「どちらでもない」は22.7%だった。
「もしも子供ができなかった場合、住み替えたいですか」の問いに対しては、「はい」が19.3%、「いいえ」が58.1%、「どちらでもない」が227.7%だった。
また、「現在の自宅は、子供にとっての住環境も考え、購入しましたか」との設問では、「はい」が49.0%、「いいえ」が31.4%、「どちらでもない」が19.5%だった。「住宅購入の際、将来、子供の教育費がかかる事を想定していましたか? 」に対しては、「はい」が49.0%、「いいえ」が33.1%、「どちらでもない」が17.8%。
「子供のことを考えて住宅購入をした人」で「重視したこと」については、1位「日当たり・風通し」(61.8%)、2位「収納」(31.8%)、3位「キッチンからリビングが見渡せる」(31.2%)の順。「和室がある」は9.8%、「体によい天然の資材などを使っている」は6.4%だった。
「自宅購入の際、将来生まれてくる子供の事を考え、重視した環境は? 」は、第1位が「スーパーなど買い物施設が近い」が56.1%、「治安がよい」が50.9%、「公園が近い」が45.1%。「自然が多い」は25.4%、「車の交通量が少ない」は11.6%、「住民同士のつながりが強い」は4.0%だった。
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この調査結果をどう見るか。子どもが欲しいと思っていて家を購入したのに子どものことを考えて購入した人の割合が49%というのは解せない。これは、子供が生まれたら住み替えたいと考える人が17.6%と少ないのと密接に関連する。
「いいえ」が58%あり、事前に子どもの住環境を考えなかった人が31%いることから判断して、子どものことが住宅購入の最大の理由ではない層も少なからず存在することがうかがわれる。
健康によい資材(設備仕様やユニバーサルデザインはどうなのか不明)や住民同士のつながりはあまり重要視されていないのも意外と言えば意外。「子は天からの授かりもの」と考えている若い人が多いということか。