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 大和ハウス工業は3月18日、経済産業省と東京証券取引所が女性活躍推進に優れた上場企業を選出する平成26年度(2015年)「なでしこ銘柄」に選定されたと発表した。

 「なでしこ銘柄」は平成24年度から毎年実施されているもので、前年の26社から今回は40社に大幅に増加した。これまでは1業種1社とされていたが、今年度から社数の多い業種については2社に広げたのが主な増加の要因。「女性活躍」の取り組みが増えたためかどうかは不明。

 建設業では同社が初めて選ばれたほか、積水ハウスが2年ぶりに復帰した。また、不動産業界からはNTT都市開発が初めて選定された。

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 わが住宅・不動産業界から一挙に3社も「なでしこ銘柄」に選定されたことは結構なことだ。しかし、1業種2社までと制限をつけるのはいかがなものか。基準を満たしている会社は全て選定するのが本筋だろう。

 さらに言えば、ことさら「なでしこ」を推奨するのも問題がある。性差は関係ないという意味で「サムライ・なでしこ」か「ジェンダーフリー」、あるいは「ダイバーシティ・なでしこ」にすべきだろう。銘柄が増えすぎて推奨する意味がなくなるのが理想ではないか。

 

 国土交通省は3月18日、第6回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」(座長:浅見泰司・東大大学院教授)を開き、これまでの論議やヒアリングの結果を踏まえ、施策検討の基本的方向性をまとめることで合意した。

 団地全体の再生を図るため建て替えや改修、あるいは段階的・部分的な建て替えなどを円滑に進めるための事業制度、建築基準法第86条の一団地認定のあい路をどう打開するかが今後の検討課題になるようだ。

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 今回、国交省から新たに示された資料は、第5回までの検討会で指摘された課題を踏まえ、同省がコンサル・学識経験者など8名、デベロッパー7社に対するヒアリングを行った結果をまとめたものだ。主な意見を紹介する。

・事業性が高くないケースでは、負担面から一部の区分所有者が一括建替えに同意せず、結果として3分の2の決議要件を満たせず進捗がとまる

・建物部分の底地が共有でないテラスハウスを含む団地では、一括建替え決議の要件を満たさない

・市街地再開発の手法を用いても、保留敷地を設定し、戸建て用地を確保するのが困難

・建て替えの賛成者が各棟に分散している場合には、住戸交換が円滑にできる仕組みが必要

・団地再生に合わせて道路整備を行う場合、現状では全員同意で敷地分割したうえで処分する必要がある

・部分的な建て替えを行う場合、建て替え棟と非建て替え棟との間の管理費や長期修繕計画の扱いが課題

・郊外では1000戸規模の団地が多数あり、すべてマンションにすることはマーケット的に不可能。余った土地は戸建て用地として売却するのが適当

・一部の土地を戸建て用地として売却する計画は、一団地認定の取り扱いが難しい

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 会合でもこれらの問題が横たわっていることが論議された。各委員の主な意見を紹介する。

小林秀樹委員(千葉大大学院教授) 団地再生事業法をつくったらどうか。郊外団地はこれからコンビニなどに一部を売却するか賃貸にするか処分行為が多発するはず

西周健一郎委員(都市再生機構ウェルフェア推進事業部長) 団地内の共有給排水管、道路関係、日影規制、既存不適格、ネット・グロスの問題などあい路は多い

鎌野邦樹委員(早大法学学術院法科大学院教授) 敷地分割は民法からのアプローチではなく行政法的な手法で可能にすべき

大西誠委員(竹中工務店参与) 敷地分割はハードルが高い。大阪のURの山本団地では、URが排水管を整備して費用を負担し、民間に分譲用地として売却した事例があるが、分譲同士だと合意形成が難しい。古い団地では面積割合でなく、戸数割合で土地の共有持ち分を決めているところが多い

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 会合は予定されていた2時間を約45分も余して終了した。浅見座長を除く15委員のうち7人が欠席した。浅見座長は「ご意見ありませんか」と発言を促したが、一部の人に限られた。

 これは、検討会が盛りあがらないということではなくて、意見がすべて出尽くしたのだろうと理解した。

 出尽くしたうえでうまい解決策が見つかったらいいのだが、どうもそうではないようだ。話を聞いていて、団地型の住宅再生は容易ではないと改めて感じた。法の壁はもちろん排他的絶対的な土地所有権・財産権の難問をクリアするのは途方もない困難が伴うはずだ。

 法の壁を突き抜けようが乗り越えようが、その時点で違法行為になりかねない。この検討会の委員でもある櫻井敬子・学習院大教授が「建基法関係の法律は窮屈」と他の会合で話したように、解釈によって法を捻じ曲げるのは困難ではないか。「行政法」の手法を用いようが、結局、民法の規定にぶち当たるはずだ。

 仮に法の問題をクリアしても、こんがらがった繊細な絹の糸玉をほぐすような「合意形成」の難問も待ち受ける。気が遠くなるような作業になるのは間違いない。各委員は頭を抱えているのではないか。

国交省・住宅団地の再生検討会 「無反応者」を母数に含めない是非(2014/12/17)

 

 

 

 

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マンション2025ビジョン懇話会シンポジウム(霞ヶ関・東海大校友会館で)

 マンション2025ビジョン懇話会(座長:齋藤広子・明海大教授)は3月16日、マンション管理業協会から諮問を受けている後期高齢者の急増や資産価値の維持・向上など将来の課題について話し合うシンポジウムを開き、同時に「2025年問題」に対する提言を行った。

 冒頭、挨拶に立った山根弘美・マンション管理協理事長は、「あと10年、2025年には団塊世代がすべて後期高齢者になり、どこの国も経験したことがない超高齢化社会をわが国は迎え、人口減少も顕在化する。そうした将来を見据え一歩踏み込んだ提言を懇話会にお願いしたい」と話した。

 続いて、来賓の国交省土地・建設産業局不動産業課長・清瀬和彦氏が「2025年問題」に取り組むのは「慧眼の至り。将来を考えるうえで大きなヒント、気づきになることを期待する」と挨拶した。

 基調講演では、日本建築家協会関東甲信越支部メンテナンス部会長・宮城秋治氏がマンション再生について、弁護士でマンション2025年ビジョン懇話会委員・篠原みち子氏が高経年マンションの課題に対する〝予防力〟についてそれぞれ講演した。

 パネルディスカッションでは、懇話会メンバーと講演者で資産価値をどう維持・向上させていくか、合意形成をどう進めるかなどについて話し合った。

 提言は、①長く安心して住まうための「マンション再生」②居住者の高齢化への対応③マンションの資産価値の維持・向上のための施策④マンションの多様化に伴う他業態との連携⑤マンション管理の新たな責務-の4項目。

 マンション再生では、再生メニューの多様化に伴う合理的で妥当性のある議決要件を設定すべきとしている。ユニバーサルデザインの考えも取り入れるべきとした。

 居住者の高齢化対応では、従来の管理規約や使用細則の概念を超えた新たなルールを整備し、地域との連携や多世代間交流の場と機械を提供すべきとしている。

 資産価値の維持・向上では、単体だけでなく地域全体で付加価値を高める連携態勢を取り、高経年マンションの管理の状態が適正に市場で評価される体制を構築すべきとした。

 こうした提言を実現するために、管理組合、管理業者、不動産流通業、政策当局など関係者はそれぞれの立場で最大限の努力をすべきとしている。

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齊藤氏から提言を受け取る山根理事長

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 記者が提言に注目したのは、修繕履歴などのマンション再生の実施状況や管理状態が中古市場で適正に評価される体制を構築すべきとした点だ。

 ここ1週間で2回、中古市場に関する取材を行った。現行の中古住宅の情報伝達手法を変える必要を感じている。旧態依然だから様々な外野からの批判も受けている。

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「プレミスト佃二丁目」完成予想図

 大和ハウス工業が3月19日(木)から第1期100戸の申し込み登録を受け付ける「プレミスト佃二丁目」を見学した。中央区佃エリアでは10年ぶりのマンション供給で、人気を集めそうだ。

 物件は、東京メトロ有楽町線・都営大江戸線月島駅から徒歩3分、中央区佃二丁目に位置する10階建て全153戸。第1期(100戸)の専有面積は54.01~92.79㎡、価格は6,078万~10,998万円(最多価格帯7,300万円台・8,000万円台)。坪単価は340万円。竣工予定は平成29年2月中旬。施工は長谷工コーポレーション。第1期の申し込み締め切りは21日。

 現地は石川島記念病院に隣接しており、敷地も石川島記念病院の跡地。北側は佃中学校・小学校に隣接。佃公園も徒歩3分。建物はエの字型で、南東向きと北西向きが9:7の割合。北西向き住戸からは学校の借景が望めるのが特徴でもある。

 住戸プランは50㎡台が1戸あるほかは全て70㎡台以上のファミリー向け。設備面ではディスポーザー、食洗機、ミストサウナなどが標準。億ションは6戸。

 販売担当者は「最大の特徴は立地。ぜひ豊洲や有明のマンション見学者に見ていただきたい」と競合を歓迎していた。100戸のうちすでに約7割に申し込み希望が入っているという。

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 佃エリアのマンション見学は、10年くらい前に大京とゴールドクレストがそれぞれタワーマンションを分譲したとき以来だ。物件の最大の〝売り〟はこの「佃」にある。ご存じない方も多いだろうが、物件の先にはバブル期に分譲されて圧倒的な人気を呼んだ三井不動産レジデンシャルの「リバーシティ21」がある。確か異常な申し込みが予想されたため、急きょ賃貸に変更された住棟もあったはずだ。

 佃は、このタワーマンション群(URの賃貸もあり)と、戦前からの古い街並みが融合とまでは言えないかもしれないが共存する街であることが最大の特徴だ。

 記者は取材するごとにじっくり時間をかけて散歩する。とにかく心が安らぐのだ。狭い路地を歩くと昔を思い出す。街のポテンシャルとしては豊洲や有明などとは比較にならない。

 さて、問題の価格。記者はマンションギャラリーのシアターを見ながらいつものように単価を予想した。出発点は坪320~330万円。これ以下はあり得ないと思った。シアターはホームドラマのような仕立てで中々の出来だったので、坪350万円に修正した。公園に隣接していればもっと高くても売ると読んだ。

 ただ、近くにある前出の大京とゴールドクレストのマンションの複合日影が気になったので、それを確かめた。真昼には双方のマンションの影響はほとんど受けないが、やはり午前と午後は影響を受ける。それで単価予想を引き下げた。「350万円はきつい」と担当者に話したら「第1期は340万円です」という答えが返ってきた。予想が当たって胸をなでおろした。

 ほとんどオプション仕様(2,000万円くらいか)だが、木目調のシート貼りを壁・建具などに多用した92㎡のモデルルームがいい。ステンレスのキッチンカウンタートップ、アクリルと木材を交互に挟み込んだ引き戸のリビングドア、有機ELを採用した三面鏡の提案もアッパーミドル・富裕層の心をくすぐるのではないか。

 同社の企業姿勢について。総合設計制度を利用すれば建物は35階くらいまで建てることができたのだが、北側の学校への影響を最小限に抑えるために10階建てに抑えたのが一つ。もう一つは、立地条件からしてコンパクトタイプの需要も想定されるが、投資用に買われる恐れがあり、それを避けるため住戸プランをほとんどファミリーにしたというのだ。嬉しいではないか。

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「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」

 国土交通省は3月12日、第4回「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」(座長:進士五十八・東京農大名誉教授・元学長)を開き、喫緊の課題になっている保育所など子育て施設を公園内に設置することなどを了承し、近く先行とりまとめとして公表することを決めた。

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 約2時間行われた会合の内容は、細大漏らさずメモをしたので引き起こせないこともないが、国交省が議事録として公表するはずだからそちらを読んでいただきたい。

 保育所などの施設を都市公園内に設置することに対して多くの委員は、「軒先貸して母屋取られるでは困る」「行政から攻め込まれているイメージが強い。子育て機能は公園が持っている本来的な機能。こちら側から積極的にメッセージを送ってはどうか」などとし、攻めの姿勢に転換することを申し合わせた。

 国交省の舟引敏明・大臣官房審議官は、「(様々な外野から)攻め込まれているとは思っていないが、(相手の)攻めてくるスピードが速い。公園を利用する人が増えれば予算的にも人的に公園事業はやりやすくなる。公園法がブレーキになっている部分もあるが、いかに応援団を増やすかだと考えている。夢のある世界を描いていきたい」と語った。

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 この「検討会」を傍聴するのは2度目だが、実におおらかでいい。「検討会」というタイトルは同じだが、マンション管理会社は姑息な手段を使って儲けることをたくらむ集団だとか、600万人の居住者の声を反映した「意見書」を「私の授業なら『不可』にする」などと罵倒し、委員とオブザーバー間でバトルを展開した「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」とは雲泥の差だ。

 どうしてこのような差が出るのか考えた。それは今回の「検討会」の座長を務める進士氏の人徳もそうだろうが、各委員が農学や園芸学、環境学、家政学など人と自然・みどり、人と環境などについて研究をされてきた方々の品格の反映だろうと結論づけた。

 今度、ピケティ氏の「21世紀の資本」を読もうと思っているが、富の集中と格差社会の蔓延を助長する21世紀の経済学者と農学者とではこの点で対極をなすのではないかと思う。

 「検討会」は来年度以降も継続して行われるようだが、都市公園の再編によって都市居住者の生活がどのように変わるのか注視したい。

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 おおらかさ、和やかさを象徴する場面があった。会合が終わった後、国交省のスタッフが各委員に進士氏が平成27年(第9回)「みどりの学術賞」を受賞したリリースを配布した(記者席には配布されなかった)。すぐ拍手が巻き起こった。進士氏は相好を崩した。

 「みどりの学術賞」は、「みどり」についての国民の造詣を深めるために、国内において植物、森林、緑地、造園、自然保護等に係る研究、技術の開発その他の「みどり」に関する学術上の顕著な功績のあった個人に内閣総理大臣が授与するもの。進士氏は寺島一郎・東京大学大学院理学系研究科教授とともに受賞した。

 進士氏の受賞理由は、進士氏が「日本庭園は日常生活から隔離された特殊な空間ではなく、自然との共生により育まれてきたわが国の生活・文化が凝縮されたものであることを解明し、みどりに対する国民の理解増進に寄与した」というもの。

 進士氏は、受賞に対して「日本庭園が究極の都市づくりであることを言い続けてきたことが認められてうれしい」とコメントした。

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この日の進士氏(リリースの写真よりはいいはずだ)

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 この種の会合はかくあるべしというようなエピソードも紹介しよう。進士氏はときどき、涌井委員に対して「涌井」と呼び捨てにした。進士氏と涌井氏の関係を知らない人だったら仰天するだろう。座長と委員の差は毫ほどもない。ましてや涌井氏はタレント並みの活躍をされている押しも押されもせぬ学者兼コメンテーターだ。

 なぜ進士氏が涌井氏を呼び捨てにしたのか。理由は簡単。東京農大の同窓同級生だからだ。歳は進士氏が一つ上だ。

 呼び捨てにされた涌井氏も口では進士氏に負けない。国交省から配布された資料に写っている進士氏の写真をみて、「これじゃご霊前に飾る写真だ」と言い放った。記者は「涌井先生、進士先生の次(の受賞は)は涌井先生でしょ」と声を掛けたら「いやいや、演芸(園芸の洒落のつもりか)賞はないの? 」と絶妙の切り替えしをした。確かに農学・造園を茶の間に演芸の手法でもって浸透させた功績は「みどり学術賞」にぴったりではないか。

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 脇道にそれてしまったが、本題に戻る。ここ数年、記者が気がかりに思っていることを委員の池邊このみ・千葉大大学院教授が代弁してくれたので紹介する。

 池邊氏は、「公園の統廃合という文言が使われているが、再編・再構築が適当ではないか。維持管理について触れられていないのもどうか。管理費がどんどん削られ、街路樹も削られ汚くなっている。だから〝あんな公園いらない〟になっていく。管理コストの削減は自己否定ではないか。景観の言葉も少ない。もっと美しい公園にしていくことが大事ではないか」と話した。

 進士氏は「都市公園条例は管理条例になっている。運用条例にしないといけない。人口率ではなく、面積率で公園の広さを考えるべき」などと本質的な問題点を指摘した。

公園に保育所、マンション岩盤規制を打ち破れるか国交省公園のあり方検討会(2015/2/2)

 

 

 

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 左から小倉氏、三津川氏、一色氏(霞ヶ関:東海大校友会館で)

 一般社団法人次世代不動産業支援機構(代表理事:三津川真紀氏)は3月16日、ICT(information and communication technology)技術を駆使して消費者が住宅選択する際の判断指標となり、既存住宅の流通促進を後押しする「次世代不動産業あり方検討会」を発足させたと発表した。

 既存住宅を単なる物件概要にとどまらず、ICT技術を用い趣味・エンターテイメント、仕事・雇用、交通・地域、環境・エネルギー、医療・介護、教育・子育て、家事・家庭などの切り口からアプローチし、それぞれの価値の見える化、可視化を図り、すべての不動産を統一した評価軸でラベリングしようという試み。「スマートリボン住宅」として商標登録している。

 「検討会」の座長は同機構顧問で神奈川工科大教授・一色正男氏が務め、内閣府、小林史明衆議院議員が協力する。元日本テレビアナウンサーで現在フリーの小倉淳氏が理事・プロモーション統括として名を連ねている。

 主な構成メンバーはイオン、NTTデータ経営研究所、日本コムシス、パナソニック、エコソリューションズ社など。

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三津川氏

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 記者発表会は、代表理事・三津川氏が冒頭、現在の既存住宅は必ずしも消費者目線にあっていないことを指摘した。

 つまり、①様々な取り組みは領域ごとに論議されており、内容に偏りがある②領域ごとの取り組みは領域単位でしか把握されていないので、消費者は理解しにくい③領域ごとの議論は融合されておらず、統一した評価軸(指標)がない③住まい(暮らし)や地域(周辺環境)のバリューを可視化し、情報として開示・提供すべき-などで、三津川氏は「たとえばヘムスなどと言われても消費者は理解できていない。住宅も生活も街も消費者の判断基準でアイデンティティの転換が必要」と強調した。

 記者は三津川氏の話をいちいちごもっともだと聞いていた。新築マンションの場合、デベロッパーは単に物件情報だけでなくありとあらゆる情報を広告に盛り込んで物件特性をアピールしている。〝〇〇は日本一〟〝〇〇は東京初〟〝主婦の評価№1〟などだ。その意味でかなり可視化は進んでいる。物件規模が大きければ可視化に伴う費用もかけられる。

 ところが中古住宅の場合、最近は流通会社が詳細な情報を提供はしているが、消費者がほしい情報は自ら探すしかない。ネガティブ情報などがとくにそうだ。まず、仲介会社はそのような情報を積極的に開示しない。〝旧耐震〟〝歓楽街に隣接〟〝前に建物あり、日照不可〟などは絶対表示されない。かといえば、〝〇〇(スーパーゼネコン)施工〟などと物件概要に書かれていないことまで大文字で色つきでアピールする。

 その意味で、先日、スムストックのシンポジウムで中川日大教授が話した「情報の非対称性」は厳然として存在する。

 とはいえ、不動産は極めて個別性の高い商品だし、消費者の物件選考要素は多様化しており、それこそ十人十色、千差万別。様々なファクターを可視化したところで役に立たない場合も想定される。例えばコミュニティ。三津川氏はコミュニティを可視化したいと語った。記者も大賛成だ。これが実現したら中古市場は変わるはずだ。

 しかし、「コミュニティなど関係ない」という消費者は少なくない。〝コミュニティ濃密〟などと表示したら即選考の対象外にされる物件もあるはずだ。街のポテンシャルも測りづらい。そのあたりをどうするかが課題だろう。

 それでも「検討会」には大いに期待したい。流通業界に風穴を開ける気持ちで取り組んでいただきたい。 

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「お客さま係」イメージ図

 大京グループの管理会社、大京アステージは4月1日付でマンション居住者宅を訪ねて〝困りごと〟を解決する女性の専門職「お客さま係」を本格展開する。

 同社はこれまでも、専用サイトやフリーダイヤルなどで居住者の悩みごとなどに対応してきたが、居住者の高齢化が進行する中でよりきめ細かな対応をすることが重要と判断し、2013年10月から首都圏の約150 物件2,000戸を対象に試行的にマンションの排水管清掃に合わせて戸別訪問を行ってきた。

 その結果、半数以上で掃除や手入れ、不具合などの悩みごとを持ちながら相談できていない実態が分かったという。

 このため、「お客さま係」に対する潜在ニーズは高いと考え、本格展開を決定した。4 月1 日付で本社・ライフサービス事業部内にCA(カスタマーアドバイザー)推進室を新設。既存の5 名に加え、グループ内から女性社員を公募する。段階的に支店への配置を進め、2017 年までに全国24カ所の全支店に複数名の「お客さま係」を配置、将来的には60名体制を目指す。

 同社は大京が分譲した約41万戸のマンションを管理する戸数では民間トップ企業。

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 よくぞ思い切って踏み込んだものだ。4分の1の人と「季節の話題」が交わせることに象徴的に表れている。よほど手ごたえを感じているのだろう。

 管理会社の業務はあくまでもマンションの共用部分の維持管理で、専有部には〝アンタッチャブル〟という暗黙の了承があった。しかし、建物の老朽化、居住者の高齢化という「二つの老い」が加速度的に進み、様々な問題を解決するには専有部サービスが欠かせないと各社はここ数年、専有部サポートに力を入れている。ただ、同社のように戸別訪問までするところはないようだ。

 担当者は〝御用聞き〟ではないというところがミソだ。御用聞きでは居住者のニーズを引き出せない。そのため、担当者にはマンションの商品企画や設備に関する専門知識を持たせるという。

 「お客さま係」は、間違いなく潜在的な様々なニーズを掘り起こすことになるはずだ。将来的には60名体制にするというのも頷ける。一つの問題解決は数百、数千倍の効果をもたらすはずだ。大輪が咲くのではないか。

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 マンション管理業協会は3月13日、「マンション管理受託動向調査」をまとめ発表、わが国のマンションストックは約604万戸で、そのうち91.1%に当たる約551万戸を同協会が管理しているなどとしている。

 平成26年4月1日現在、同協会会員が受託管理しているマンションは全国で89,390組合、107,289棟、5,505,549戸。5年間で戸数は14.3%増加した。マンションストックに対する受託シェアは年々伸びており、平成26年度で91.1%まで増加した。

 地区別管理戸数では関東がトップで55.0%、近畿が22.3%。都道府県別では東京都25.9%、神奈川14.2%、大阪11.9%、埼玉6.9%、兵庫6.8%、千葉6.8%の順。最低は2,995戸の福井県で0.1%。増減率では対21年比で沖縄が36.9%増加した。東京都は18.2%の増加率。1組合当たりの平均戸数は約61戸。

 

  

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「スムストックシンポジウム2015」(御茶ノ水:連合会館で)

 良質な中古住宅の流通を促進する事業を行っている任意団体・優良ストック住宅推進協議会(会長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は3月13日、「日本の中古住宅流通が変わる」をテーマにした「スムストックシンポジウム2015」を行った。

 「スムストック」は、わが国の主要ハウスメーカー10社とその流通グループからなる①住宅履歴 新築時の図面、これまでのリフォーム、メンテナンス情報等が管理・蓄積されている②長期点検メンテナンスプログラム 建築後50年以上の長期点検制度・メンテナンスプログラムの対象になっている③耐震性能 「新耐震基準」レベルの耐震性能がある-の基準をもとに「スムストック査定」を行い、その基準を満たした住宅のこと。

 一般的に、中古戸建ては築20年で建物の評価はゼロになるが、スムストックは20年を過ぎても新築時の3割くらいの価格が維持されており、ほぼ査定された価格で成約されている。

 ハウスメーカーが供給した戸建てストックは353万戸あり、毎年約1.4万戸が流通市場で取引されており、このうち約1,200戸が10社とその流通グループを通じて成約されている。累計の成約件数は3,644棟。

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 中古の戸建て住宅が仲介市場でほとんど評価されない、物件によっては買った時点で中古並み、つまり建物価格がまったく評価されない現状を考えると、スムストックは市場で正当に評価されている。

 この10年間の成約件数約3,600棟が多いのか少ないのか、そのうち10社とその流通グループの流通捕捉率が10%に満たないのはどう評価していいのか記者は分からないが、圧倒的に仲介営業力が欠けるハウスメーカーの現状の反映だろうとは思う。流通事業を拡大し、各社の営業マンとの連携を強化すればもっと伸びるはずだ。今後の一層の活動に期待したい。

 建築後20年で建物評価額がゼロという一般住宅の「常識」についても早急に改善すべきだろう。

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 シンポジウムで記者が違和感を覚えたのは、中川雅之・日大教授が基調講演の中で「情報の非対称性」が流通促進を阻んでいる大きな要因として取り上げたことだ。

 中川氏にとどまらず、多くの方がこの「情報の非対称性」やら「利益相反」を持ち出す。中川氏が持ち出した論理はこうだ。

 きちんと管理されていない中古住宅を売りたい売り手の希望価格を50とし、良好に管理された中古住宅を売りたい人は100の希望価格を付けたとし、一方、良好に管理されているかどうか判断できない消費者は2分の1の確率で高品質を希望し、2分の1の確率で低品質を希望すると仮定し、一定の計算式で付値を85とはじき出す。つまり、付値が85だから、50なら売ってもいいと考える売り手の低品質住宅だけが成約し、高品質住宅が壊滅するという論理だ。

 しかし、この論理には当初の仮定に問題がある。そもそも一般の売り手と買い手には中古がどのように評価されているか分からないはずだ。だから「50で売りたい」「最低100で売りたい」という考えそのものが成り立たない。買い手にとってもいったいいくらで買えるのか予備知識がなければ皆目見当がつかないはずだ。

 だからこそ、専門のプロである不動産仲介業者が介在する。宅建取引主任者(4月1日から宅建取引士に名称変更)が実際に仲介役を果たす。宅建業法では取引主任者の資質についてはほとんど触れられていないが、本来的には売主にも買主にも偏らない公平な立場で物件価格を査定することが求められるはずだ。よって仲介業者が介在する取引では「情報の非対称性」も「利益相反」もあってはならないことだと記者は思う。だからこその「士」への〝格上げ〟ではないのか。

 そもそも「情報の非対称性」「利益相反」が堂々と関係者の間で流通していること自体、不動産流通業界が売主や買主に偏った仕事をしているように言われているようではないのか。記者は不愉快だ。

 ひとつ追加すれば、実際の不動産取引では、居住面積や設備仕様、コミュニティの熟成度、住環境などの質(質とは何ぞやという問題はあるが)よりは、交通便や将来の値上がり期待・思惑(それも質の一つだろうが)がより重要視されて価格が決定されている。「売り急ぎ」「買い急ぎ」などの特殊要因も価格を左右する。「不動産は生き物」ということだ。机上で決まるものではない。

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 不動産仲介会社のみなさん。この記事の最後「『不動産は生き物』ということだ。机上で決まるものではない」に対して、記者がもっとも信頼する不動産仲介に詳しいある記者から「不動産は生き物だ。机上で決まるものではないという理屈で、まっとうな査定をしてこなかった仲介業者の罪は重い」と指摘を受けた。

 ぐさりと胸を衝かれた思いがした。記事は記者が思ったことを書いたのだから、的外れであっても訂正も削除もしないが、心当たりのある「宅建士」は少数派であることを祈りたい。

 

 国土交通省は3月13日、東洋ゴム工業が平成15年から23年にかけて製造した免震材料に建築基準法の基準を満たさないものがあると同社から報告があったと発表した。

 現時点で大臣認定不適合が判明したのは55棟(販売された免震材料は2,052基)。

 物件の所在は宮城県5棟、福島県1棟、茨城県2棟、埼玉県3棟、東京都5棟、神奈川県6棟、新潟県1棟、長野県1棟、静岡県4棟、岐阜県2棟、愛知県5棟、三重県4棟、京都府1棟、大阪府2棟、香川県1棟、愛媛県2棟、高知県9棟、福岡県1棟。物件の用途は共同住宅25棟、庁舎12棟、病院6棟、倉庫4棟、データセンター2棟、工場2棟、研究施設1棟、個人住宅1棟、事務所1棟、複合施設1棟。物件の規模は15階建て以上のものが10棟程度。

 同省は同日付で、免震材料の大臣認定を取り消し、同社に構造安全性の検証などを行ない、報告することを求めた。

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 詳細は分からないが、たいへんな事件だ。一部は不正であることを承知して大臣認定を取得したというから悪質だ。業界は姉歯で懲りているはずだが…。

 

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