糀谷駅前の再開発マンション好調スタート 旭化成不レジ・不燃公社

「ステーションツインタワーズ糀谷」完成予想図
旭化成不動産レジデンスが先に第1期1・2次91戸が完売したと発表した、京急糀谷駅前の再開発マンション「ステーションツインタワーズ糀谷」を見学した。一般の方には「糀谷」(こうじや)はあまり馴染みがないかもしれないが、住みやすそうな街で、坪単価290万円強もリーズナブルなものだと思う。
物件は、京急空港線糀谷駅から徒歩1・2 分、大田区西糀谷四丁目に位置する20階建て全268戸(非分譲132戸含む)の「フロント・ウエスト」棟と、18階建て全67戸(非分譲17戸含む)の「フロント・イースト」棟の2棟構成で、合計335戸(非分譲149戸)。専有面積は36.64~86.79㎡、第1期1・2次の価格は3,070 万~9,350 万円(最多価格帯6,400万円)、坪単価は290万円強。竣工予定は平成28年12月下旬。設計・監理は山下設計。施工は戸田建設。売主は同社のほか一般財団法人首都圏不燃建築公社。
現地は京急線と環八に挟まれた地域。再開発計画は、15年くらい前から持ちあがり、平成20年に都市計画決定。事業面積は約1.3ha。事業費は約219億円。小規模木造老朽住宅と狭隘な通路の解消を図るとともに、駅前広場の整備や商業・福祉(高齢者支援、子育て支援)・住宅などからなる複合建築物。
第1期1次(83戸)は3月21 日に抽選先分譲した結果、101件の登録申し込みがあり、第1期2次(9戸)は3月29日に抽選分譲し10件の登録があった。登録者の属性は30代・40代で50%、居住エリアは大田区が70%。品川へ7分、駅前の好アクセスが評価された。
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この物件については、モデルルームが観られる段階になったら見学しようと思っていたが、早期完売のほうが先になった。坪単価は300万円を突破すると聞いていたので、290万円強というのは納得だ。京急蒲田駅前が320万円だから、糀谷で300万円を超えても不思議ではないが、これくらいがちょうどいい。
糀谷は、昭和60年代に結構マンションの取材で訪れている。昔ながらの商店街があり、中小企業・町工場と住宅が混在していた。その後の不況でどんどん町工場は亡くなったが、それでも最先端技術が宇宙衛星に採用されたニュースが「糀谷」を全国区にした。
糀谷か京急蒲田かの選択肢は悩ましい。品川から見れば京急蒲田が玄関だろうし、羽田から見れば糀谷が玄関口だ。住むのなら記者は糀谷のほうが住みやすいと思う。
首都圏不燃建築公社(不燃公社)について。公的機関の不動産開発、住宅事業はバブルを境に環境が激変。各都道府県の住宅供給公社は一部を除きほとんど解散したか休眠状態に陥り、勤労者住宅協会、労栄協会なども破産・倒産した。
しかし、不燃公社だけは再開発物件を中心にコンスタントにいい仕事を継続して行っている。

東急不動産・三枝社長が辞任 愚劣な「週刊新潮」の記事も許せない
東急不動産は4月13日、同日付で代表取締役・三枝利行氏が退任し、新社長に代表取締役副社長・植村仁氏が就任したと発表した。
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同社のニュースリリースにはこれ以外に何も発表されていないが、三枝氏個人の不動産売買に関する4月16日号の週刊紙「週刊新潮」の記事が発端になったのは明らかで、三枝氏が〝引責辞任〟した模様だ。
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週刊誌の記事を読んだ限りでは辞任はやむを得ないと思う。やはり三枝氏のビヘイビアには問題がないとはいえない。
同社は、渋谷を中心とする再開発事業案件が目白押しで、昨年、三枝氏が社長に就任したとき、年齢も55歳と若く身長が183センチもあり、大手デベロッパーでは最長身の社長就任だったので、同社と業界の未来像を重ね合わせ、エールを送る記事を書いただけに残念でならない。
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しかし、「新潮」の下品愚劣な書き方には無性に腹が立つ。こんなことが許されていいのか。完全な名誉毀損に当たるのではないか。以下、「記事」を引用する。
「30年ほど前、<亭主元気で留守がいい>なんてテレビCMのコピーが世に広まったが、イクメンなる言葉が浸透した当世では、亭主は育児に積極参加し炊事洗濯もこなす。
3月半ばの夕刻、渋谷区内の高級マンション前。ベビーカーを押すスーツ姿の男性もご多分に漏れず、帰宅して家事を手伝うのだろう。なにげない日常のひとコマ、とやり過ごすところだ。彼が、『東急不動産』の三枝利行社長(56)でなかったら――。」
「冒頭のコピーと同じころ、<私はコレで会社を辞めました>も流行った。イクメン社長もそんな事態に陥るのだろうか。」
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どうだろう。このコピーは三枝氏にとどまらず、必死で働き子育てに励むサラリーマン世帯を愚弄するものだと記者は受け取った。
記者はかつて週刊紙誌をよく読んだ。「新潮」も「文春」も「週刊朝日」も少なくとも毎週、見出しだけはチェックした。夕刊紙の「フジ」は毎日読んでいたし、「ゲンダイ」もやはり毎日のようにチェックしていた。その他の「週刊ポスト」「週刊サンケイ」なども電車内でおおびらにはしなかったが、こっそり読んだこともある。
読まなくなったのはバブルが崩壊してからで、最近ではほとんど読まない。つまらないからだ。以前は著名な作家や評論家のエッセイが載っていたが、最近はだれが書いているか興味もない。
それにしても、この「新潮」の記事は下品極まりない。新潮社のやることか。こんな下劣な週刊誌に原稿料をもらって小説やら評論やらを書けるものだと小説家や評論家、文化人にも八つ当たりしたくなる。小説が読まれなくなるのは当然だ。皆さんも同罪といったら失礼か。
女性でも25㎏のセメント袋が軽々持ち上がる 大和ハウスのロボット

左から「下肢タイプ」「介護支援用」「単関節タイプ」「作業支援用」
「うわぁ、私の力じゃない。後ろから引っ張られているみたい」-大和ハウス工業は4月13日、介護・福祉施設や建設現場の作業負荷軽減のためのロボット商品の販売開始・実証実験開始の記者発表会を行ったが、作業支援用のロボットを装着したテレビ局の若い女性が25キログラムのセメント袋を軽々と持ち上げ歓声を上げた。
同社が5月1日からレンタル販売を開始すると発表したのは、CYBERDYNE(CEO:山海嘉之氏)が開発・製造する「ロボットスーツHAL自立支援用(下肢タイプ)」「同(単関節タイプ)」「同介護支援用(腰タイプ)」の3商品で、グループ内で実施用実験を開始すると発表したのは「同作業支援用(腰タイプ)」。
全ての商品とも装着者の皮膚表面から生体電位信号を読み取り、装着者の思った通りに動作をアシストするのが特徴。「下肢タイプ」は、下肢に障がいかある人や脚力がよわくなった人向け。レンタル料金は188,000円/月、重さは約14㎏、動作時間は約60分。全国の介護・福祉施設が販売対象で、販売目標は年間20台。
「単関節タイプ」は、膝や肘に装着するもので、重さは約1.3㎏と軽いのが特徴。レンタル料金は初期費用が400,000円、130,000円/月、動作時間は約120分。販売対象は「下肢タイプ」と同じ。
「腰タイプ」は、介護者が介護を行う際の腰部への負担を軽減するもので、作業する労力の約40%が軽減される。重さは約2.9㎏、作動時間は約180分。レンタル料金は初期費用が100,000円、78,000円/月。販売対象は全国の介護・福祉施設。年間販売目標は30台。
実証実験を開始する商品は、介護・福祉用とほとんど同じ機能を持っており、今後1年間をかけて同社グループの建設現場などに10台を導入して課題などを検証する。
同社執行役員ヒューマン・ケア事業担当の田村哲哉氏は「ロボット事業を拡大し、医療・福祉、建設分野で社会の課題に取り組み、貢献していきたい」と語った。
ロボット市場は現在の約1.6兆円から10年後には約5.3兆円へと飛躍的に伸びると予測されている。同社は2008年にロボット事業推進室を設け、これまで介護・福祉施設向けを中心にリース・レンタル事業を展開してきた。今回販売する商品は、これまで販売してきた商品の改良型。

「作業支援用」のデモンストレーション
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記者は話を聞きながら、これは体験しないと分からないと思い、体験を申し込んだが、テレビ局などの先約があり無理だと知らされた。そこで、テレビ局の若い女性が体験するのを見学することに決めた。
重さ25㎏のセメント袋をわたしは持ち上げることがほとんどできなくなっているほど腕力も腰の力も衰えている。しかし、その女性は相当の力持ちだ。苦労しながらも25㎏のセメント袋を腰のあたりまで持ち上げた。それでも女性にとっては大変な負担がかかるのは容易に理解できた。
驚いたのはロボットを装着して軽々と持ち上げ、冒頭の感嘆の声を上げたことだった。その女性は「重いものを持つ感覚はあるが、上に持ち上げるのは誰かが手伝ってくれているようで全然ラク。これなら建設業界に転職しても大丈夫」などと冗談も飛ばした。
重さ約3キロのロボットを腰に装着して他の作業がラクにできるかどうかの疑問はあるが、重いものを持ち上げたり降ろしたりする作業には効果的なのは間違いないし、介護・福祉施設でも普及しそうだ。
相撲も野球もゴルフも腰が肝心なのは聞いてはいたが、それを目の当たりにした。この補助ロボットを装着すれば、野球の打者は100発100中本塁打が打てるのか、ゴルフは軽々300ヤードを超えるのか。技術的には可能だろう。しかし、待てよ。投手が装着すれば、どういうことになるのか。これは好勝負だ。
さらにまた、記者が書きたいように記事を書いてくれるロボットが出現するかもしれない。しかも作家の名前を入力すれば、好みの文体に変換してくれて、誤字・脱字の校正もしてくれる時代がやって来ないか。

「介護支援用」(左)と「作業支援用」
価格の安さだけではない 巧みな需要喚起策 大成有楽不動産「品川勝島」

「オーベルグランディオ品川勝島」完成予想図
大成有楽不動産の「オーベルグランディオ品川勝島」を見学した。「品川勝島」といわれてもほとんど一般の方は知らないかもしれないが、圧倒的な価格の安さと、明快な商品コンセプトで地元だけでなく都下、さらには神奈川、埼玉、千葉方面からの需要も取り込む可能性を秘めている。〝価格表示〟はいかにあるべきかを問う物件でもある。
物件は、東京モノレール大井競馬場前駅から徒歩7分(京急本線立会川駅から徒歩11分他)、品川区勝島1丁目に位置する20階建て全452戸。専有面積は62.38~85.59㎡、予定価格は3,200万円台〜6,200万円台(最多価格帯4,300万円台)、坪単価は未定だが200万円台の前半に落ち着く模様だ。竣工予定は平成29年1月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は大成有楽不動産販売、長谷工アーベスト。
現地は、用途地域が準工業地域であることから倉庫街で、敷地北側には高速道路が走っている。敷地東側には東急不動産が昨年から分譲している「ブランズシティ品川勝島」が近接している。また、南方向には15階建ての官舎476戸が2016年に完成する予定。
建物はL字形で、住戸プランはファミリー向けが中心。共用施設としてはユニークなカフェラウンジ、ソフトサービスのほか、コミュニティ支援プログラムなどを用意している。
今年1月から予定価格をホームページで公開しており、これまで問い合わせ・資料請求は約2,000件に達している。4月18日から予約制でモデルルームを公開するが、すでに約300件の見学予約があるそうだ。反響は地元中心だが、神奈川県、埼玉県、千葉県からが約4割にのぼっている。

カフェテラス

「ファミリー・ラボ」(ウォールドアが付いている)
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書きたいことがたくさんあるマンションだ。まず、価格の安さと価格の公開時期について。
安さについては言うまでもないだろう。東急不動産の物件より明らかに安い。問い合わせが広域にわたっているように、ユーザーが敏感に反応したのだろう。坪単価200万円では相当の郊外・遠隔地でないと供給されないことが浸透している証拠だ。
それよりも、ホームページを公開して間をおかずに予定価格を公表したのが嬉しい。このことについては、同社の「吉祥寺Ⅱ」の物件でも書いているので読んでいただきたいが、早めに予定価格を公表するのがデベロッパーの務めだと思う。「じらす(teases)」戦法は不動産に限らずあらゆる商品の常とう手段だが、この業界は半年も平気で「価格未定」と謳う。これほど消費者を馬鹿にした売り方はない。
もう一つ強調したいのは、販売事務所の設営、アピールの仕方が巧みであることについて。ここ数年、同社のマンションの商品企画が劇的に変わったことは何度も書いてきたが、この物件もそうとう力が入っていることがすぐ理解できる。
その代表的なものがカフェラウンジだ。コーヒーやパンのサービスを行うのは他社と同じだが、ここはパスタも販売するという。これは珍しいのではないか。コーヒーメーカーは〝コーヒーメーカーのフェラーリ〟と呼ばれる「LA-CIMBALI(ラ・チンバリー)」製だという。
記者は、フェラーリもポルシェもレクサスも車のメーカー・車種であることくらいしか分からないし、ラ・チンバリーなんて初めて聞く言葉だ。その価値がさっぱり分からないのだが、助け舟を出してくれた人がいた。一緒に見学した同業の記者が「フェラーリはここのマンションの2LDKと一緒くらいの値段。ラ・チンバリーは高級ホテルで使われているマシーン」と教えてくれたのだ。確かに頂いたコーヒーはエスプレッソに近い味がしておいしかった。コーヒーの味は分かる。ある著名な有料老人ホームの食事は最低だったが、リッツ・カールトンと同じ豆を使ったコーヒーは抜群に美味しかった。
これで終わらないのが今回の取材の面白いところだ。取材を終えてからその同業の記者と一緒に帰ったとき、何と赤いフェラーリ(フェラーリレッドと呼ぶのだそうだ)が走っているのをその記者が教えてくれた。なるほど、昔、子どもに買ってあげたおもちゃと一緒だった。
それだけではない。販売事務所では、来場者にカフェラウンジを体験してもらうために無料でこの〝フェラーリ〟コーヒーやパンなどを振る舞うのだそうだ。そのため接客フロアはサロン風の造りになっている。これもいい。
プロモーションビデオがまた面白い。デザイン処理された〝新品〟の文字がスクリーン上で乱舞した。記者はすなおだから当然〝シンピン〟と読んだ。ところが、これは〝シンシナ〟と読ませるのだそうだ。つまり、この「勝島」エリアはここ数年で約1,400戸ものマンション(官舎含む)が建設され、羽田や品川、大井町、大森にも近い住宅地に変貌することを強調するために、このような面白いプロモーションビデオになったようだ。
このほか、ゲストルームのベッドはウェスティンホテルで採用されているものと同じ。コミュニティ支援では、地元のNPOなど5社・団体のサポートが受けられるようにしている。
住戸プランでは、奥行き2メートルのバルコニー、同社オリジナルの収納のほか、多目的に利用できる1畳大のファミリー・ラボ、女性が化粧しやすいように照明の位置や鏡の位置を工夫した「オレンジドレッサー」を提案。食洗機は標準装備。オプションだが、和室のガラリ付きの木調扉がいい。防音性や断熱性にも優れた2重サッシを全窓に採用している。
全体的には、東急不動産の物件をかなり研究した跡がうかがわれる。この日の見学会に同業や関係者にも声を掛けていることからも、力の入れようが伝わってきた。管理会社と一体となった体制の効果もでている。
ついでに、競馬場の影響について。記者はかつて競馬ファンであった。大井競馬もよく行った。駅に降りるとすぐ厩舎があり、あの馬糞の臭いがたまらなく発走前の馬のように興奮状態になったものだが、マンションの現地まではその匂いはほとんど届かないそうだし、上層階からも馬が疾駆する姿も見えないそうだ。

販売事務所
埼玉県 子育て共助に力 コバトンに赤ちゃん誕生 積水ハウスのモデル事業

「コモンライフ武蔵藤沢駅前」モデル棟「ひとえんラボ」
積水ハウスは4月9日、子育て共助のまち「コモンライフ武蔵藤沢駅前」のグランドオープンセレモニーを行い、報道陣にも公開した。
「コモンライフ武蔵藤沢駅前」は、埼玉県の旧県営入間下藤沢団地跡地での共助の仕組みの普及を目的としたモデル事業に採択されたもので、「ひとえんコモン」と名付けた街区中央のコミュニティ形成の場となる共用空間や場づくりの街区設計や、NPOとの協働による子育て世帯と高齢者世帯相互の見守り、見守られる関係を誘導する仕掛けなどが施されている。国交省の「平成26年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」にも採択されている。
物件は、西武線武蔵藤沢駅から徒歩4分、入間市武蔵藤沢周辺区画整理事業地内の開発面積約2,968㎡、全16区画の建築条件付き宅地分譲。第2期(11区画)の土地面積は139.69 ~169.12㎡、価格は2,780万~3,490万円。
セレモニーで挨拶した同社埼玉営業本部長・新井冨士夫氏は、「街全体で子どもを育てる理想的な街づくりができた」と述べ、来賓として挨拶した埼玉県都市整備部長・秋山幸男氏は、「家族構成を考えた場合、4人を想定されるのが一般的でしょうが、県のマスコット『コバトン』の応援マークのこどもの数は今年2月に従来の2人から3人に増やした。元気な埼玉県を取り戻すために子育てに力を入れている県としても応援している」と語った。

左から同社所沢支店長・長野太郎氏、秋山氏、新井氏
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開発規模は全16区画と大きくはないが、しっかりランドスケープデザインを施していると思う。街区中央の木造シャーウッドのモデル棟「ひとえんラボ」(平屋建て、小屋裏付き)の商品企画とこの住宅を取り囲む街路計画がいい。
「ひとえんラボ」は、「地縁」「血縁」「知縁」を繋ぐ造語からなり、高齢者世帯の入居を想定。延べ床面積は約108㎡。UDの考えを採用し、柱・壁の角は丸くし、廊下・階段幅はメーターモジュール。引き戸を多用している。吹き抜け部分の天井は無垢のヒノキ材。外構はベルバーン(陶板)を一部採用している。
ここまでは同社のよくある商品だが、舗道に面した東側のほぼ中央に約2畳大の土間を設置しているのが大きな特徴だ。外部との交流がしやすく、しかも防犯ガラスには外から見えづらいフィルムを貼る工夫も施している。
舗道は中央の部分のみだがインターロッキング舗装とし、さらに角を曲がる部分のみ道路幅を4m(他は6m)に狭め、車のスピードが出すぎないようにしている。その一方で、道路幅が狭い部分は住宅敷地をオープン外構とすることで狭さを感じさせない工夫も行っている。モデル棟が同社主力の鉄ではなく木なのもいい。
同社住宅の特徴でもある「5本の樹計画」もしっかり盛り込んでいる。今年1月から本格的に分譲を開始し、すでに4区画が契約済みであることから、引き続き第2期の分譲を4月11日に開始する。
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面白い話を2つ。一つは秋山部長が話したことについて。秋山部長はコバトンを引き合いに出して「子どもは3人かいい」と語った。これは確かにいいと思ったが、果たしてコバトンの子どもはそんなにいるのかと疑問に思った。社に戻り確認したが、あらゆる画像データを見ても子どもは2人(匹か羽か)しかいない。
秋山部長は勘違いしたか、これから3人に増やすのだろうかと思い県住宅課に電話したら、「従来子ども2人だったのを赤ちゃんが誕生したことにして3人に増やした。秋山が話したことに間違いはない」ということだった。画像データも送ってもらったので紹介する。
しかし、他のホームページではまだ2人のものが残っている。これは増やさないのか。それと、画像では子どもは女(メス)が1人、男(オス)が2人になっているが、これはどうしてか。「女の子が1人で男の子が2人というのが理想」と考える日本人が多いからか。ジェンダーフリーの人たちから批判されないことを祈る。頑張れコバトン! (これって埼玉県人には旧聞か)

コバトンの家族
もう一つは、面白くてニヤリとしてしまう誤植について。取材を終え、すぐ資料を読み始めた。ものの1~2分もしないうちに誤植を見つけた。「CONCEPT」の文章の中に「…人々が警戒に言葉を交わし…」とあった。明らかに「…人々が軽快に言葉を交わし…」の間違いだ。
人のミスを指摘するのは恥ずかしいことだし、鬼の首を取ったようにミスをあげつらうのははしたない行為だ。そもそも記者にそんな資格はない。誤字誤植だらけの記事を書いているからだ。つい最近も東京建物の「目黒」の記事で「天井高5.8m」「5,300haを緑化」など5カ所もミスをした。加齢に加え、メガネがあわないからだ。先日、健康診断をしたら、視力はメガネをかけたままで右も左も0.6だった。
そんなに目が悪いのに、記者の悲しい習性か、どうしても他の誤字誤植を見つけてしまう。誤字が「わたしを見つけて」と呼びかけてくるのだ。これが本を読む楽しみの一つでもある。村上春樹氏を押しのけてノーベル文学賞を受賞した莫言氏の超大作「豊乳肥臀」の和訳本で重大ミスを発見したときほどうれしかったことはない。発刊して10数年間、訳者も編集者もおそらく読者も気が付かなかったミスを発見したのだ。いまは重版が発行されているので、ミスは訂正されているはずだ。
話しが脱線してしまった。元に戻すが、「警戒に言葉を交わし」はひょっとしたら、これはミスではなく書いた人の意図が隠されている掛詞ではないかと考えた。つまり、「警戒するために言葉を交わす」という意味が込められているのではないかと。何の警戒もせずに「軽快に言葉を交わす」のは記者くらいではないか。

モデル棟(中央の部分が土間につながる引き違い戸。この部分のみ道路幅は4mしかないが、街区デザインに工夫を凝らすことで広く見せているのがポイント)
インテリックス 不動産小口化分譲に参入 第一弾「原宿」は人気必至

「アセットシェアリング原宿」(左が「ペアシティ」、右が「原宿ハウス」)
インテリックスが不動産特定共同事業法の任意組合方式を活用した不動産小口化分譲事業に参入する。
同社が所有する一棟の不動産を一口100万円単位に小口化し、共有持分(所有権)で販売するもの。賃貸管理や修繕などを管理運営会社に一任するので、個人が1戸単位(1棟)で取得・運営するより安定的な収入が確保され、空き家・滞納リスクも分散されるほか、贈与・相続時には金融資産に比べ評価額が抑えられるため資産として大幅な圧縮効果も期待できるメリットがある。
記者会見に臨んだ同社の山本卓也社長は、「相続税の改正を睨んで一昨年から検討してきた。個人で不動産を取得するのは高額でもあり、様々なリスクも伴うので、小口化商品は相続対策として需要が高まると考えた。立地条件に応じて分譲マンション、オフィス、ビジネスホテル、中古リノベーションなど多様な手法で価値を提供できる。今回の物件も、普通のシェアハウスとは一線を画すもので、4.5%の表面利回りが期待できるとみている。今後は流動性を重視して1件5億円から20億円程度の規模で展開していく」と話した。
第一弾の「アセットシェアリング原宿」は、JR山手線原宿駅から徒歩7分、渋谷区千駄ヶ谷3丁目に位置する敷地面積約283㎡、地上3階地下1階建て延べ床面積約619㎡。建基法上の種類は寄宿舎で、部屋数は32室。専用面積は約5.9畳大で、トイレ、シャワールーム付き。約70㎡のラウンジ・キッチンとランドリー・ビューティルームが付いている。賃料は12万円前後。昨年2月から募集開始し、ほぼ2カ月で満室になったという。一口100万円(5口以上200口以下)で4月13日から募集開始する。総額は8億円。
不動産の小口化分譲はバブル期に流行ったが、その後バブルがはじけ不動産価格が暴落し、運営会社も倒産するなど立ち消えとなった。1995年に「不動産特定共同事業法」が施行されたことによって消費者保護が図られ、大手デベロッパーなどが様々な事業を展開している。

記念写真に応じる山本社長(左は同社執行役員で建物の管理を行うインテリックスプロパティ取締役・俊成誠司氏、セルリアンタワー東急ホテルで)
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山本社長の話を聞きながら、面白い事業だと思った。同社は年間1,000戸以上のリノベーションマンションを手掛ける〝老舗〟だ。物件情報や土地情報も相当数あるはずだ。その情報を逃す手はない。
小口化商品は新しい事業ではないが、不動産投資を考えている人には受け入れられるのではないか。金融資産だけでなく、不動産を取得したいというニーズは一定数ある。空き家リスク、修繕の煩わしなどの負担が軽減されるのがいい。
土地・物件の特性に応じてマンションだけでなく、シェアハウス(同社は〝ソーシャルアパートメント〟と呼ぶ)もビジネスホテル、オフィスも価値の最大化を考えれば当然だ。

ラウンジ・キッチン
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記者は「原宿」の価格を予想した。場所はおおよそ想像がついた。延べ床面積が約619㎡で、坪単価を600万円くらいと低めに見積もって10億円、つまり1,000口くらいで分譲するのではないかと考えた。
結果は8億円で、記者の予想は外れたが、第一弾でもあり、失敗は許されないとこのような低い価格設定になったのではないかと思う。関係者からも記者の予想は的外れでないことを示唆された。
現地見学もしたが、周囲は「原宿ペアシティ」「原宿ハウス」「秀和神宮レジデンス」や高級賃貸マンションが建ち並ぶ一角。建物はコンクリート打ちっ放しで、約60㎡のラウンジ・キッチンの床は無垢材。居室は狭いが、トイレ・シャワールームが付いているのが特徴。
購入希望者が販売予定口数を超え抽選になるのではないかと思うがどうだろう。

居室
問題はらむ議決権割合に価値割合の導入 マンション管理検討会
国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)は、総会などの議決権割合を変更してはどうかという提案も行っている。
区分所有法第14条(共用部分の持分の割合)には「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による」とし、この規定は「規約で別段の定めをすることを妨げない」ともしている。また、同法第38条(議決権)では「各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による」としており、専有面積割合ではなく平等にしているところも少なくない。
そしてまた、建て替えの場合などは、同法第62条(建替え決議)で「集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数…」としている。つまり議決権だけではなく、区分所有者が分母になるケースもあり、個人や法人が複数住戸を所有していても区分所有者としては一人としてカウントすることが決められている。
検討会は、これを見直すことを提案している。「近年は、大規模で店舗と分譲住戸のある複合用途型のマンション、超高層マンション等の出現により、高層階と低層階、あるいは住戸と店舗とでは、床面積割合によっては住戸の財産価値(眺望、景観、日照等の付加価値)が適正に反映されないケースがみられるようになってきたため、現行のように議決権を床面積割合によって与えるのは、公平性等の点で問題がある…」というのだ。
そこで、①各住戸の床面積割合に加え②価値割合を加味し③住戸1戸につき1個の議決権を与えてはどうかとしている。
この提案は様々な問題もはらんでいる。難しい問題だ。一般的に、デベロッパーは、日照や眺望、間取り、設備仕様、向き、市場性などを総合的に判断して値付けを行っており、超高層マンションの場合などは低層階と上層階とでは10倍くらいの価格差のあるものが少なくない。
具体的にはどれぐらい異なるのか。分かりやすい例で示そう。最近書いた東京建物「Brillia Towers目黒」の場合、平均単価は600万円だが、30㎡台の最低価格の住戸の坪単価は550万円くらいになりそうだ。一方、最高価格の150㎡台は880万円くらいになる模様だ。単価差で1.6倍、価格差で8倍だ。
検討会が示した議決権割合をこれに適用すると、4億円台の住戸を取得する人はワンルームの購入者の8倍の議決権を持つことになる。これが公平かどうか記者は分からない。
そもそも、先にも書いたようにマンションの値付けは不公平が生じないよう、付加価値の高いものは価格を高くし、その分だけ購入者に負担を求めている。価値の高い住戸ほど購入者の金銭的な負担が大きいのだから、ある意味ではこれもまた公平だ。共用施設の利用でも、高い値段の住戸を買った人と低い住戸を購入した人とで差別をつける例は皆無ではないがほとんどない。お金持ちもそうでない人も公平に扱っている。
住戸1戸につき各1個の議決権を与えるべきというのも危うい。これが認められれば多数派工作は容易になる。買い占めればいいわけだ。
検討会は、価値割合を採用した場合の課題として、「床面積割合という基準が客観的かつ普遍的であるのに対し、階層別や位置別の効用は主観的かつ流動的であり、また、それが販売価格に適正に反映されているとは限らない」ことを上げている。そして、「分譲後の環境変化に伴う効用の変化(例えば分譲時の眺望が隣接のマンション建設で大きくその価値が低下したなど)の問題が可能性として生じ得ることは否定できない」としながら、「床面積割合と価格割合に相当の乖離がある場合の不公平の問題の方が大きい」と結論付けている。
これも難しい問題がある。確かに値付けは主観的判断で行なわれるので、価格が適正であるかどうかだれも分からない。しかし、あらゆる商品はそのようなものではないか。ダイコンだってキャベツだって、価格は主観的に付けられるのではないのか。適正であるかどうか結局は市場(消費者)が判断するものではないのか。
購入後の環境変化も無視できない。検討会は「床面積割合と価格割合に相当の乖離がある場合の不公平の問題の方が大きい」としているが、マンション購入後に、その敷地の前面、隣接地にマンションなどが建設され、日照・眺望が奪われるのは日常茶飯だ。複合日影といって、複数のマンションからの日影の影響を受けても、個々の建築物は違法にならないのが現行法だ。
だから、記者はユーザーには用途地域だとか立地条件には十分注意を払うようにと忠告してきた。購入時の価値判断が将来にわたって正しいかどうか、なんともいえない。
もう一つ、固定資産税や都市計画税、不動産取得税は、価値割合ではなく、いずれも土地や建物の持分比率が基準で算定される。これとの整合性はどうなるのかという問題もある。
以上、議決権割合に価値割合を反映させよという提案は説得力があるようで極めて危険な問題もはらんでいると思う。お金(力)のある富裕層が益々富み、そうでない人は益々貧しくなる、発言力も弱まる21世紀の資本主義社会がマンションでも完成するのか。
売り上げ年間450~500億円見込む 三井不動産「ららぽーと富士見」10日開業

「三井ショッピングパークららぽーと富士見」
三井不動産は4月10日、同社の大規模郊外型商業施設としては13施設目の「三井ショッピングパークららぽーと富士見」をオープンする。東武東上線エリア最大級の敷地面積約15.2haに293店舗が出店する。年間の売り上げ目標は450~500億円。開業に先立って6日、報道陣や招待客などに公開され、3~4万人が訪れた。
施設は、東武東上線鶴見駅から約1.5㎞(バスで約6分)、埼玉県富士見市山室に位置する敷地面積約15.2ha。鉄骨造4階建てで延べ床面積約18.5ha、店舗面積は約8.0ha。店舗数は293店舗。設計施工は安藤・間。
埼玉県を含む北関東の基幹店と位置付けており、商圏半径10㎞圏内の約160万人。若年層だけでなくシニア層もターゲットに据え、ワンストップで需要を満たすことを目指す。商業施設では初となる三越伊勢丹、京王、丸広百貨店のサテライト店も出店する。
施設コンセプトは、「コミュニティ」「空間」「体験」「ショッピング」の4つをキーワードとする「人・モノ・文化が交差する新拠点~CROSS PARK~」。
「コミュニティ」では、地域との共生を大切にするため認可保育所、クリニックを設置し、交通広場も整備する。地産地消を促進するため地元「JAいるま野」と提携し、「いるマルシェ」「彩の国レストラン」が出店する。
「空間」では、約4.2haを緑化し、ららぽーと公園やドッグランを整備するほか、ママにも優しいキッズテラス、女性目線で創られたトイレ空間を提案している。本物の樹木「シマトネリコ」を植えたフードコート「森のダイニング」も売りの一つ。シマトネリコは数本植わっていた。
「体験」では、日本初の「Media Mation MX4D」が体験できる「TOHOシネマズ」、商業施設初の「セガソニック鉄道」などのエンターテイメントを誘致し、「ショッピング」は多世代ニーズに応える293店舗を揃える。
冒頭、挨拶に立った同社常務執行役員商業施設本部長・石神裕之氏は、「『船橋ショッピングセンターららぽーと』を開業してから35年目の節目の年にリージョナル施設としては13店舗目となる施設オープンとなる。ワンストップショップとして地域に根ざした施設になるよう努力していく」と語った。

「森のダイニング」
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地元埼玉を意識した施設でもある。「いるマルシェ」には、生産者の名前が入った野菜などがたくさん並んでいた。新タマネギは1個50円くらい(100g33円)で売っていた。
「彩の国レストラン」もお勧めだ。埼玉県産の約80種の食材を用いたビュッフェレストランで、大食漢にはたまらないのではないか。ただ、すいとんに似た郷土料理「つみっこ」はやや味が濃かった。
「TOHOシネマズ」の「Media Mation MX4D」も体験した。これは怖かった。万里の長城から電動自転車のようなものが転げ落ちるアニメ映画で、画面が飛び出し、シートが縦横上下に動き、足元に何かが触る、いやな匂いではないが、何だか変な香りもする。石が飛んできたので目をつぶったらその途端、水しぶきが顔面を襲った。約7分間。汗びっしょりになった。心臓の弱い人は敬遠したほうがいい。

「いるマルシェ」(左)と「彩の国レストラン」
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来場者にも話を聞いた。小さい子どもをあそばせながらママさんたちが寛ぐ「スタジオカフェZooAdventure」を利用した20代の女性は、「小さな子どもの声がうるさいとネットでよく書かれるので、ここは子どもをあそばせながら私たちもリフレッシュできる。とてもいい」と話した。「遊び場」の利用料金は30分500円から。
施設の近くに住むという20代の女性は「近くに商業施設は全然ない。わたしは車が利用できないので、自転車で来ることができる。楽しみ。富士見市も知られるようになる」と大歓迎していた。
娘さんが地元に住んでおり、誘いを受けたので静岡県下田市からやってきた60歳代の夫婦は「立派な施設だが、地元の商店街がかわいそう」と、既存の商店街への気遣いをみせた。
川越から車で10分くらいかけて来館した60代の男性は「娘が招待されているので来たが、同じような施設は川越にも入間にも川口にもある。どこに行くか悩ましいほどだ」と過当競争を心配していた。
それにしても3~4万人とは驚いた。昨日の西武プリンス球場の観客数は約22,000人だ。それの2倍近いとは。

「京王」(左)と「三越伊勢丹」

2階から写す

「スタジオカフェZooAdventure」

女性用トイレ(女性スタッフに撮ってもらった写真。「とてもきれい。化粧直しブースは2カ所。もっとあったらいい」と話していた)

記者が気に入ったポスター(キャッチコピーは「オジサンだって女子だもん」)
マンションコミュニティを否定するのか 国交省マンション管理検討会
平成24年1月から27年2月まで途中2年半の中断を挟み合計11回の会合を経て国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)が終了した。最終とりまとめとして近く発表される。標準管理規約に盛り込まれている「コミュニティ条項」が削除されるのは確実で、その是非をめぐって内外野から議論が巻き起こりそうだ。
この「検討会」について記者は、都合3度だけ傍聴できなかったが、ずっと取材してきた。初回の会合でいきなりビンボールまがいの発言が飛び出し、第三者管理方式、コミュニティ活動、議決権の要件などについて激論が交わされた。意見がまとまらず、第9回以降2年半も会合が開かれなかったので、空中分解、雲散霧消したものとばかり考えていた。しかし、この空白期間に何かがあったのか、最終的には現場サイドの声は全く反映されず、「コミュニティ条項」を削除するという方向が打ち出された。
いま、「コミュニティ」はマンション業界の大きなテーマの一つだ。デベロッパーも管理会社も管理組合も自治体などと連携してこの取り組みを強化している。どうしてこのような時代に逆行する、流れを遮断しようという動きになったのか。振り返ってみた。
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検討会は、機能不全に陥った管理組合をどう救済するかがメインテーマと思われたが、第1回会合から各委員と現場サイドの専門委員・オブサーバーとの間で意見の相違が表面化した。
中でも激しいやり取りが交されたのはコミュニティ形成についてだった。区分所有法にはコミュニティや自治について規定はまったくなく、国交省が作成したマンション標準管理規約の「コミュニティ条項」だけが管理組合の自治・コミュニティ活動に対してお墨付きを与えていた。これが問題視された。
問題を整理しよう。管理組合と自治会の関係については、前者は区分所有法による明確な法的根拠があり、目的、構成員、禁止事項なども定められている。同法は、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」(第3条)「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(第6条)と規定している。
一方、地方自治法では「(地縁による団体)は、その規約の定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」(第260条の2第1項)とあり、目的は「地域住民の親睦、福祉、防犯、文化等にかかわる諸活動を行う」と自治会などを規定し、構成員は「区域に住所を有する者で加入を希望する者」となっている。
このように両者は明らかに異なる団体だ。双方に関する裁判例でも、「町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する事項ではなく、区分所有法第3条の目的外の事項」であり、「この町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規約等で定めてもその拘束力はない」(平成19年8月7日、東京簡易裁判所判決)と、代理徴収は無効とされている。
今回の「検討会」でもこの問題が蒸し返された。当然と言えば当然だ。記者も現行の「コミュニティ条項」は法的な担保力が希薄で、やや無理があると思う。しかし、財産管理の組合活動とコミュニティ活動は車の両輪だ。どちらかが機能しなければ、マンションは極めて住みづらい〝ハコ〟に成り下がる。コミュニティはマンションの財産・生命・文化を守り発展させるエンジンでもある。
記者は、堂々巡りの白熱した論議を聞きながら、最終的には両論併記で丸く収められるのではないかと思ったが、そうではなかった。福井座長は第9回目の会合で次のように述べている。
「町内会費の徴集は無効だとまで言われているわけですから、仮に違法な活動に管理費を使っていた場合に、法的紛争が起きて同様の判断が裁判所で相次ぐことにでもなったら、標準管理規約以前のみっともない事態に陥る。そういう意味での安全運転をするという前提で議論いただきたいと思います」
「安全運転をする」-この言葉に福井氏の強い意志が込められている。これを聞き逃したのはミスだった。具体的にはどのようなやり取りがあったか。少し長くなるが、議事録から引用する。
自らマンション居住者だという村辻義信委員(弁護士)は、財産管理団体としての管理組合の本質的な目的を理解していない人が多いとし、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成、これに管理費を充当するんだという、この条項が明記されたことによって、さらに混迷を深めているという状況にある」と、福井座長の考えに概ね賛成であると述べた。
コミュニティ条項を削除すべきという意見の急先鋒、安藤至大委員(日大大学院総合科学研究科准教授)は、「私は村辻委員のご意見よりもさらに厳格にとらえるべきだと考えております。先ほど、防災の取り組みにバーベキューを組み合わせるという話ですが、これに全員が喜んで参加しているのかということが知りたいですし、また全員が喜んで参加するようなイベントであれば、参加費を本人たちから徴集すれば良いと思います。仮に、防災訓練には参加したいがバーベキューには興味がない人、かつ区分所有者の方からしたら、自分たちのお金が目的外に使われている状況なわけですから、これは明確にすべきです。勝手に流用されては困るという考え方もあるのです。
また、防災がそれほどまでに大事なのであれば、防災訓練の参加を現時点で、ちゃんと強制して行っているのかについても気になります。全員参加しているのでしょうか。それをせずに、参加できる、そして参加したい人だけで防災訓練を行い、気の合った人たちだけでバーベキューをやるというようなことにもし管理組合のお金を使っているのであれば、それこそまさに目的外使用であり、この最高裁の判例とかの考え方からすれば、もう完全に逸脱していると考えております」と、バーベキューなどの飲食に管理費を充当するのは目的外使用と主張した。
これらの意見に対して、村裕太専門委員(三井不動産レジデンシャル開発事業本部都市開発二部部長)は、「コミュニティの形成が良好なマンションというものが、よく清掃が行き届いていたりとか、設備の保守、維持がちゃんとできていたりと同等になるぐらい、やっぱり資産価値を高める、もしくは維持するのに必要なソフトだという認識がご購入者の方に強いからだというふうに私ども分譲主としては思っておりまして、逆に、売り主としてはコミュニティの形成に必要ないろいろなイベントなどを企画したりサポートしたりというようなことをむしろ積極的にお勧めしたり、お手伝いをしたりというようなことをやっております」と反論した。
すかさず、安藤氏は、「今、村専門委員がおっしゃったことが仮に正しいのであれば、別に管理組合がお金を出さなくても、住人全員が自分たちで進んで町内会に参加し、町内会の経費でそのような取り組みをするはずですので、まさに管理組合と町内会とを混同する必要がないということを、ご説明されたのではないでしょうか」と再反論した。
こうしたやり取りが続き、結局、議論は平行線のまま散会となった。
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さて、皆さんはこのやり取りと結論をどう理解されるか。ひと言で言えば、コミュニティ削除派が法律を楯に存続派を押し切った形だろう。
いずれにしろ、今回の決定は、これまで国交省が示していた標準管理規約(コメント)の「コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。管理費からの支出が認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動である」とする見解から180度の転換だ。
しかし、その一方で、検討会は専門委員やオブザーバーの主張を考慮したのか、自治会活動は合意形成や地域の防犯面、資産価値向上につながる効果は否定できないとし、「政策論からコミュニティ活動は展開すべき」という意味がいまひとつ分からない悩ましい文言が盛り込まれた。
この相反する結論を600万人の区分所有者はどう受け取るのだろうか。一方で否定され、他方で奨励されれば、また裂き状態に陥るのではないか。
そもそも、どうしてこんなに議論が紛糾するのかという根本問題について考えないといけない。記者は区分所有法に問題があると思っている。多くの法律には「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)のように第1条に目的規定がある。ところが、区分所有法の第1条(建物の区分所有)は「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所…は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる」としか規定されていない。この種の規定は趣旨規定というのだそうだが、やはり哲学がない。 ここに根本原因があるのではないか。
一つだけ、聞き捨てならないことがあるので言わせていただく。安藤氏が防災活動とバーベキュー活動を攻撃したことについてだ。ここまで言われると、もう完全な自主的な住民の自治活動、コミュニティ活動に対する敵視だ。悪意すら感じられる。
失礼ながら安藤氏の発言・言葉には険がある。どこか人を小ばかにするもの言いで、喧嘩を売るメディアのディベート番組を観るようで気分が悪くなる。
どこの管理組合も予算の半分以上は恒常的な建物の維持管理費に消える。少ない予算をやりくりしイベントなどの費用を捻出しているのが実情だ。役員はほとんどボランティアだ。企業の交際費や政治家の政務活動費とは訳が違う。コミュニティ活動が違法な活動であるかのように言われるのには腹が立つ。
話は横道にそれるが、安藤氏は第三者管理に御執心のようだが、富裕層向けや投資用マンションはいざ知らず、一般的なマンションや機能不全に陥ったマンションの管理組合は専門家などに支払う報酬をどう捻出するのだろうか。飲食費をそのままフィーに充てても足りないのではないか。
書きだすととまらなくなる。記者の悪い癖だ。もう最後だ。つたない記事に付きあっていただきたい。
記者も町内会が戦前、住民同士が監視し合い、大政翼賛の一翼を担わされていたことを学んだ。今でも行政の下請け的なことをやっているのかもしれない。自治会が毛嫌いされるのはそんな理由からだろう。
しかし、冠婚葬祭に代表されるようにわが国の伝統的な文化を継承し、地域ぐるみで様々な問題を主体的に解決し、行政などに街づくりを提案するなど、自治(町内会)活動は、地域社会の活性化に大きな役割を果している。今後もその役割は増大するはずだ。緊急時には公助は当てにできず、自助・共助こそが生死の鍵となることを3.11でわれわれは学んだのではなかったか。
「自治(self-governance)」とは「自分たちが決めたことは自分たちで守る」という意味ではないのか。安藤氏の主張は、マンション居住者の自治権を奪い、その権限を一部の専門家や富裕層に集中させようという企みではないかと勘繰りたくなる。細かく規制をかけるより、管理組合の創意工夫に任せたほうがマンションの価値はあがる。コミュニティがマンションの価値を計る指標の一つになる時代は必ずやって来る。
「福井先生を連れてきたかった。残念」 管理協理事長、「検討会」を批判(2015?3/13)
三井ホーム 国内初の2×4工法による大規模木造5階建て受注
国土交通省の「平成26年度木造建築技術先導事業」に採択された国内初となる木造(ツーバイフォー工法)による耐火5階建て特別養護老人ホーム「(仮称)第二足立新生苑」の工事を三井ホームが請負うことが決まった。落札価格は約27億4,889万円。応札したのは、辞退者があったため同社のみだった。
建設地は足立区花畑4丁目。敷地面積は約4,551㎡、建物は5階建て延べ床面積約9,016㎡。1階が鉄筋コンクリート、2~5階が木造ツーバイフォー工法。27年度末に竣工する予定。
これまで規模の小さい混構造の木造5階建ての事例はあるが、これほど大きな規模の木造5階建ては国内初となる。
わが国初の木造5階建て特養 国交省が先導モデルとして決定(2014/8/25)

