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「第24回全国女性建築士連絡協議会(略称:全建女)」(建築会館ホールで)

 日本建築士会連合会女性委員会(女性委員長:永井香織・日大准教授)は2月27・28日、全国から20歳代~70歳代の女性会員が集まり「第24回全国女性建築士連絡協議会(略称:全建女)」を開催した。今年のテーマは「未来へつなぐ居住環境づくり~大切にしたい暮らし方~」で、震災を経験したからこそ、女性だからこそ未来を見据えて子どもや高齢者など社会的弱者の暮らしを守り、未来を見据えた安心・安全の居住環境づくりに取り組んでいくとアピールした。赤ちゃんを抱えた参加者もいた。

 初日の27日は、日本建築士会連合会副会長・岡本森廣氏と来賓の日本女性学習財団理事長・村松泰子氏の挨拶に続いて、永井氏が「震災を経験したからこそ、将来の子どもたちの安心な居住環境づくりは私たち女性建築士の責務。未来に向けて新たなステージでの活動を行なっていこう」と呼びかけた。

 基調講演では、HITOTOWA INC代表取締役・荒昌史氏が「ネイバーフットデザイン~東日本大震災から学ぶ〝よき避難者〟を育成する防災減災~」をテーマに集合住宅でのコミュニティをどうマネジメントするか、来るべき大災害にどう備えるかなどについて話した。

 その後、秋田県、東京都の活動報告と福島・宮城・岩手の被災3県、液状化に見舞われた千葉県浦安市からそれぞれ被災地からの現状報告や取り組みが紹介された。

 2日目の28日には、8つの分科会で震災後の取り組み、歴史的建造物の再生、景観まちづくり、福祉住宅などについて報告・討論が行なわれ、「未来につなぐ居住環境づくり」「防災に対するハード・ソフト両面での取り組み強化」「震災復興に対する継続的な活動」「社会への情報発信」の4つのアピールを提言した。

 国交省と建設業関連5団体は、女性技術者・技能者を5年以内に倍増させる行動計画を打ち出している。

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永井氏

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 建築士への取材はたくさん行なってきたが、全国組織のしかも女性で構成される団体の取材は初めての経験だった。「建築士」は男性も女性もない「士」の集団だから、ことさら「女性」を枕詞に付ける意味がよく分からなかった。

 なので、永井氏に「どうして女性を付けるのか」という直截的な質問をした。永井氏は待ってましたといわんばかりに、「男女雇用機会均等法(1985年制定)後入社の私も同じ意見を持っていた。女性の建築士は20年も前から、子どもを連れて会議に出たり勉強会に出席したりして、男以上に頑張って社会とつながり仕事との両立を実践してきた。『女性』を付けているのは、女性だからこそという思いが込められている」と答えた。

 「女性だからこそ」――この言葉の意味、重さを探るのが取材の主な目的になった。永井氏が記者会見で強調したのも「女性だからこそ」果たせる活動だった。

 転機になったのは東日本大震災だった。「これから先どうした活動をしたらいいか模索していたとき3.11が起きた。地域・暮らしに根付いた活動のほかに原発の課題も加わった。われわれも震災に対する支援活動をやってきたが、復興は進んではいない。20年以上も前から子どもと弱者に寄り添ってきた私たちこそもう一度足元を見つめ、震災復興の取り組みを全国に発信していく」と永井氏は強調した。

 「協議会」のテーマをこれまでの「地域」から「未来」に転換したのも、より強く社会にアピールしていこうという決意が読み取れる。永井氏は「震災の支援活動を通じて安心・安全の居住環境づくりはハードだけではサポートが難しい。コミュニティを大事にしなければならないことに気づいた」とし、「初めて建築以外の方(荒昌史氏)を講師に招いた」と、ハードもソフトも備えた知識・技能集団として職域の拡大に意欲を見せた。

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 参加者へも直接「女性だからこそ」の質問をぶつけた。生後6カ月の子どもを抱えて参加した新潟県三条市から参加したiaトキワ専務取締役・渡邊久美氏は「主にインテリア関係の仕事をしていますが、わたしのような小さい子どもがいる家のリフォームも多いですからハンディがあるとは思いません」と話した。

 愛知県から参加した人は「みんな性別は意識していないと思います。男性の建築士と異なる点を強いてあげれば、仕事に真面目に取り組むことだと思います」と語った。

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三条市から参加した渡邊氏とお子さん

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 記者が「女性」という色眼鏡で観ていたこともあるのだろうが、気がついたことが二つあった。

 一つは居眠りをする人の少ないことだ。初日の会合は300人近くが参加した。集会は午後1時から5時30分まで4時間30分に及んだ。休憩は2回のみ。この間、居眠りをしている人は皆無ではなかったが、男性の会合などと比べ極端に少なかった。記者などは1時間もじっとしていられない性質なので、これにはびっくりした。

 もう一つは、永井氏もそうだったが、報告者が「あー」とか「えー」とかの機能語をあまり話さなかったことだ。千葉県浦安市の「災害に強いまち〝浦安〟をめざして」について報告した度会紀子氏は約20分間、過不足なく論理的に語りかけたのに惚れ惚れして聞き入った。

 普段から無駄を省き、あいまいさを排除し、それこそミリ単位の仕事をこなしているからだろうか。「坪」「万円」単位でしかものごとを考えられない記者は恥じ入るしかなかった。全国女性建築士連絡協議会の略称は「ゼンケンジョ(全建女)」と呼ぶそうだが、「全賢女」に置き換えられそうだ。

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防災訓練

 千葉県習志野市の大規模マンション「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合は3月1日、竣工・入居開始後初めての防災訓練を事業主の三菱地所レジデンスと管理会社の三菱地所コミュニティのサポートを得て行なった。同マンションは三菱地所レジデンスが売主の2013年6月に竣工した総戸数721戸の規模。この日はかなりの雨が降り寒かったが、午前、午後の部をあわせて約160世帯350人が参加した。

 訓練開始は9時30分(午後の部は1時)。「震度6弱の地震が発生しました。ガラスやタイルなどが落下する恐れがあり危険ですので、慌ててマンションの外へ逃げないでください。カフェラウンジに災害本部が設置されました。これより安否確認を実施いたします。各住戸の玄関扉に『安否確認シート』を貼り、自宅で待機してください」のアナウンスが各住戸と敷地内共用部分に流れた。

 管理組合オリジナルの「防災計画書」に基づき、A~D棟それぞれ5名の理事と三菱地所コミュニティの担当者が階別の安否確認シートに確認した後、参加者は1階に集合。市消防署から消火栓の使い方やマンホールトイレの設置方法を学んだほか、「被災生活ワークショップ」、「防災セミナー」などを行なった。

 防災担当の理事、安部修氏(40)は「購入したのは震災後で、耐震性や災害時の対応が問題になっていたとき。理事になって2年目だが、自分たちでつくった防災計画書を実際に動かしてみようと行なった。問題なくこなせた。すごく勉強になった」と話し、同じ防災担当の吉野修史氏(35)は、「わたしも初めてのマンション居住。仕事以外で幅広い年齢層の方々と話す機会が増えておもしろい」と理事会活動について語った。

 訓練に参加した長崎守男氏(67)は、「これまで約35年間、分譲と賃貸を合わせ2,000世帯もある大規模なマンションに済んでおり、理事長も自治会長も経験している。震災で液状化も経験した。管理組合は個人情報の問題もあり災害時には活動に限界がある。自治会では高齢者などがどこに住んでいるのか把握しているので、大きな力になる」と話した。

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消火訓練

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安部氏(左)と吉野氏

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 先週末、国交省の第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が、マンション標準管理規約のコミュニティ条項を削除する方向を打ち出した直後のマンション防災訓練の取材だったので、とても興味があった。

  ここでは、いったいどこまでが管理組合の活動か自主的な住民の活動かは問わないし、線引きなどできないはずだ。生きるか死ぬかの災害時に法がどうとかなど言っていられない。家族の安否確認ができたら、ほとんど全ての人は隣近所の住民のことを考えるはずだし、近所づきあいがなければ隣のドアを叩くことすらためらうのではないか。

  ところが、「検討会」は任意団体の自治会活動は区分所有法上問題があるとして、明確に区分すべきという方向性を示した。この見解に疑義を挟まざるを得ない。別掲の記事も是非読んでいただきたい。以下に再度問題点を指摘したい。

 「検討会」に聞きたいことがいくつかある。

 まず、どうして2年6カ月間の空白があるのか。国交省の事情か委員の事情か、これははっきりさせなければならない。後回しにしていい課題ではなかったはずだ。

 もう一つ。当初、検討会の委員は6名だった。ところが途中から1人減った。第10回の会合では5人になっているから、補充はされていないはずだ。どうして1人減ったのか、議事録にはその記載はない。

 委員の増減決定は誰の権限でできるのか。欠格条件はあるのかないのか。検討会の規約第3条(委員等の任命)には「検討会の委員は、学識経験のある者のうちから、国土交通大臣が任命する」とあるから権限は国交省にあるようだが、その委員はどうして委員でなくなったのか、委員が一人減ったことは答申に影響を与えたのかどうか聞きたい。

 さらにもう一つ。10回目の会合では「第三者管理方式」という文言は出ていない。最初の会合で「第三者管理という言葉は、管理組合と管理会社と結びつくイメージが強い。名称を変えたほうがいい」という意見が出されたが、この声の影響はあるのかどうか。

 さて、これからが本題。最終的な答申がどうなるか分からないが、少なくとも標準管理規約から「コミュニティ条項」は削除される方向が示され、第三者管理方式に大きく道を開くことになるのは確実のようだ。

 旗幟を鮮明にしておく。記者は管理組合の財産管理とコミュニティは車の両輪と考えている。いずれかが機能しないと健全なマンション管理運営はできないと思っている。機能不全を起こしているマンションに対しては、救いの手を差し伸べるべきだが、他方で、コミュニティ活動を萎縮させるような今回の案には承服しかねる。

 そこで、考えたい。第三者管理方式を導入することでだれが得をするのか損をするのか、コミュニティ活動をけん制することがどのような影響を及ぼすかについてだ。思いつくままに書く。

 手間も暇もかかるのにお金にならないコミュニティ形成に専門家は関わろうとはしないしできない。専門家に出来るのは法の定めに従い粛々と事務的にことを進めることだ。

 報酬がどうなるか分からないが、常識的には月額5万円から10万円くらいではないか。これなら10件くらい受託できれば専門家としてのプライドを満たし生活もできてゆくだろう。

 そうなれば、〝俺がやりたい〟と組合員である入居者が管理者として名乗りでるかもしれないが、仮にその人が専門家の資格を持っていても、「利益相反」「欠格要因」に該当する可能性が大きい。よってそれは不可だろう。

 管理会社はどうか。これも「利益相反」が大きな壁になりそうだ。検討会委員の中には、管理会社をプリンターとトナーの関係と同じ(つまり、プリンターのリース料を安くして、トナーなどの維持管理費で儲けるというたとえ)と語ったほどだ。検討会は管理会社が管理人になることに足かせをはめるだろうし、管理会社も受けたがらない。痛くない腹を探られるのが怖いからだ。

 となると、第三者管理方式の採用で儲けるのは自ずと限られてくる。問題は、管理組合が報酬を払えるかどうかだ。富裕層向けや投資向けにはピッタリかもしれない。自分が理事になることもないし、財産をきちんと管理してくれればそれ相応の報酬を支払うことに何のためらいもないはずだ。

 検討会の委員の方へ。今回、コミュニティ条項を削除する方向を打ち出したことの意味を皆さんはよく考えたのか。

 分からないでもない。記者は組合員として理事として20数年間マンション管理に関わってきたが、いつも考えるのは「これは本来の法に基づく活動かどうか」「コミュニティ活動は法の趣旨に逸脱した活動だ。もし事故が起きたら誰が責任を取るのか」-これは多くの居住者が考えていることだ。この悩ましい問題に皆さんは正面から受け止めず、結局〝悪法も法なり〟と法を最優先した。しかし、皆さんの役割はあれやこれや評論することではないはずだ。財産管理とコミュニティをどう両立させるか、その隘路を解き明かし、解決策を提示することにあるのではなかったか。

 今からでも遅くない。考え直していただきたい。生きるか死ぬかの緊急時、専門家はほとんど役に立たないと断言できる。この日、三菱地所レジデンスからは約35人、三菱地所コミュニティからは約25人、合計約60人が応援のために駆けつけた。どこのデベロッパーも管理会社もコミュニティこそが非常時に大きな力を発揮することが分かっているからこそ必死で取り組んでいる。

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安否確認シール(左)と全世帯に配布されている防災リュックとその中身

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「被災生活ワークショップ」(トイレの問題は軽視できないこと、個人情報保護が非常時には師匠になることなどが話しあわれた)

標準規約からマンションコミュニティ条項が消える?第10回「管理ルール検討会」(2015/2/27)

 

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壁の耐力を大きくする「ロッドマン」について説明する担当者

 三井ホームは2月26日、枠組壁工法(2×4工法)では国内初の4階建て有料老人ホーム「あっとほーむ鎌倉山」の上棟現場見学会を行なった。

 建物は、鎌倉市笛田5丁目に位置する敷地面積約1,400㎡、4階建て延べ床面積約2,300㎡の耐火建築物。70室。工期は2014年10月から2015年6月の予定。運営は医療法人光陽会鎌倉ヒロ病院。

 敷地条件とコストを考慮して中廊下を敷地なりにクランクさせ、1階は食堂や浴室などの共用スペースと地域住民との交流やイベントが可能なスペースを設置。上層階と壁位置を極力抑えているのが特徴。

 1階部分の壁の端部には大きな引抜力が加わるため、同社が独自に開発した耐力が大きい「ロッドマン」を10本採用している。

 RC造は最近の資材高騰・職人不足が顕著になっており、同社では木造のよさと工期の短さ、コストの低さなどから福祉介護施設などの受注増に期待している。建築コストは一般的なRC造と比較して2割近く抑えられている模様だ。

 木造による大規模耐火建築物では、国内初の2×4工法(1階はRC)による5階建て延べ床面積約9,000㎡の特養施設の入札が近く行なわれる。国交省の先導モデルにもなっている。

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 いつも思うことだが、木造は美しい。どうしてこの木の上にボードなどの不燃材で被覆しなければならないのか。〝燃えていいのか〟と言われれば黙るしかないし、「法の定め」と言われればそれまでだ。

 平成15年の東京都消防庁「隣棟建物への延焼阻止に関する調査研究」(消防科学研究初報40号)には、建物構造別の焼損床面積について次のように書かれている。

 「木造、防火造、準耐火造、耐火造と建物の不燃化が進むにつれて、平均焼損床面積の割合が減少していく傾向が見られた」

 「平成12年度第6回東京都市街地状況調査から、特別区と多摩地区との合計東京都建物構造別比率は、木造15%、防火造57%、準耐火造13%、耐火造15%となっている」

 「出火建物及び延焼被害建物構造別比率は、木造31%、防火造54%、準耐火造5%、耐火造10%となっている」

 そしてまた、「延焼受害性、延焼加害性の双方を考慮し、その火災の綿密な延焼経路、屋根、軒裏、壁、開口部等の防火性や窓などの開口の有無等、様々な基礎データを集積していくことが望まれる」としている。

 調査研究は、木造のほうが非木造と比較して2倍の延焼被害があることを証明している。当たり前だ。

 しかし、それでも「木造住宅は日本の文化だ」と言いたい。美しいわが国の文化をコンクリやら化学製品で覆い隠さないとだめなのか。記者は理解できない。木は燃えるものだ。コンクリや鉄の土俵で木造を戦わせることに無理があるし不公平だ。どんなに頑張っても鉄やコンクリは木のような美しい表情をつくれない。

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建築中の老人ホーム

 

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「プラウド日本橋三越前」

 問い合わせ・資料請求が4,500件を突破している野村不動産「プラウド日本橋三越前」を見学した。「日本橋三越前」と「プラウド」人気が相乗効果を呼んだ数字だが、モデルルームは間違いなくその期待に応えるとみた。いかに顧客満足度を向上させるか、商品企画の参考にしたいマンションだ。

 物件は、銀座線・半蔵門線三越前駅から徒歩6分(総武快速新日本橋駅から徒歩4分他)、中央区日本橋堀留町1丁目に位置する12階建て全88戸。専有面積は41.54~72.02㎡、予定価格は4,600万円台~10,000万円台(最多価格帯6,000万円台)、坪単価は380~390万円の予定。竣工予定は平成28年8月上旬。施工は三井住友建設。

 現地は、三越前駅から再開発が進む同社の「YUITO」、三井不動産の「COREDO室町」を抜けて、昭和通り(首都高速1号線)を渡った商住混在地区。

 建物は扁平梁と梁型の出ない戸境壁を採用した三井住友建設の独自工法を採用。内廊下方式で、住戸は60~70㎡台の南向きと40~50㎡台の北向きがそれぞれ1フロア4戸ずつ。

 設備仕様を高めているのが大きな特徴で、リビング床はチークの突板仕様で、玄関・ホール、キッチン天板・袖壁、洗面・トイレカウンターなども天然石張り。

 第1期の登録申し込みは3月7日~15日(日)。モデルルームオープンは2月28日(土)。これまで問い合わせ件数は4,500件を突破している。

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 「ものすごい人気」だとは同社の関係者から聞いていたが、問い合わせ件数の多さにびっくりした。戸数が数百戸規模ならこれくらいの問い合わせは不思議ではないが、この程度の規模にしては信じられない多さだ。三井不動産レジデンシャルの「銀座」の人気にも驚いたが、「日本橋」も負けてはいない。

 単価は決して安くはないが、最近の価格上昇を考えればリーズナブルな値段といえなくもない。かつてコンパクトマンションが流行した平成10年ころ、プロバストが分譲した「プラティーク日本橋」などは坪200万円を切っていたし、人形町界隈の価格の高い物件でも相場はせいぜい220~230万円くらいだったことを考えると、時代は変わったものだ。

 ただ、グレードの高さは、当時の物件とは比較にならないほど高いし、近年の銀座、八丁堀あたりの物件と比べてもはるかに高い。

 ここが「プラウド」の他社物件との違いだ。それを端的に示しているのが、玄関・ホールに採用している大理石だ。

マンションギャラリー副所長の村田大輔氏は、この石を「ビンテージマンションとして知られている『広尾ガーデンヒルズ』の玄関床に使用されたイラン産のゴハレベージュです」と説明した。

 「希少種の…産です」と説明するデベロッパーの営業マンは少なくない。それだけで貴重な石であることは分かるのだが、「広尾ガーデンヒルズと一緒」と説明されたらどう感じるか。もう40年近く前のマンションだが、今もわが国の億ションとして燦然と輝いている。そのマンションと同じものを採用したと聞いたら、ほとんどの来場者は感動するはずだ。

 住宅は感動を売る商売でもある。野村不動産はいかに人を感動させられるかをよく弁えている。同じようなことだが、同社は「1418サイズ」のオハナの浴室を説明するときは「これは親子風呂ですよ」という。もちろん親子が一緒に入れるくらい広いという意味だ。「広めの1418ですよ」というのと「親子風呂ですよ」というのとでは、響き方がまったく異なる。これが同業他社と「プラウド」の差だ。

 一つだけ注文も付けたい。マンションギャラリーは草月流の師匠がコーディネートしており、高価そうな袋帯が4本も5本も飾られていた。ところがだ。8,000万円はしそうな豪華なモデルルームに飾られていたカサブランカは造花だった。かつてのプロバストは白と黒が基調のモデルルームに飾る赤いバラの花を東京中の花屋から探してきた。

 記者は「これはない」と話した。ひょっとしたら28日のオープン時には本物のカサブランカが飾られているかもしれない。

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モデルルーム(造花のカサブランカも写っている)

 

 国交通省は2月26日、第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)を開き、主な論点とその検討の方向性について話し合った。あと1回くらいの会合を開き、最終的な考えが示される模様だ。

 同省から示された案によると、最大の論点である「第三者管理方式」については、「随時必要に応じて、外部の専門家に管理運営の執行権限を与え、区分所有者がそれを監視するという管理方式に移行できるよう、専門家を活用した多様な管理方式の類型を用意していく必要性があるのではないか」とし、「理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型」など3つのパターンを提案している。

 専門家については、「専門性のある資格、能力認証を持つ者に幅広く門戸が開かれていることが望ましいのでないか(マンション管理士や理業務主任者に加え、例えば、弁護士、司法書士、建築士、マンション管理会社OB、企業法務担当経験者など)」としている。

 また、専門家や理事会の役員についての報酬についても言及しており、「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者であることから、役員がその個人的資質、能力を発揮してマンションの管理に寄与するものであれば、その点を考慮して報酬を支払うことも考えられる」として、役員や専門家に対して正当な報酬を支払ってもいいという方向性を示した。

 しかし、その一方で、「役員としての不適格者の排除を確実、迅速に行なうことができるよう…役員の欠格要件の規定を設けることが適切」といった意見もあるとしている。その際の「利益相反取引」の要件などを具体的に示し、外部監査などのチェック機能が必要としている。

 もう一つの論点である管理組合と自治会の関係、コミュニティ活動については、「管理費からの支出をめぐる意見の対立・内紛(合意形成阻害)や訴訟等の法的リスクを回避し、適正な管理、自治会活動を図る観点から、マンション管理と自治会活動の関係、特に自治会費の徴収方法の改善策を提示すべきではないか」とし、「標準管理規約第27条(管理費)」及び32条(業務)から、『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』という規定は削除してはどうか」としている。

 さらに、「管理費の支出は、区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理という目的の範囲内で認められるという基本的な考えを示すことが適切ではないか」という声も盛り込まれている。

 これに関連する声として、「会議での飲食については、議論や決議、ひいては管理の質を向上させるために必要か疑義があるものが多い(飲食が役員への対価、即ち報酬の代わりであるとしているマンションもあるが、今後報酬を払う場合も考えれば、ますます飲食の必要性は無くなってくる)」と、会議や様々なイベントでの飲食についても問題を提起している。

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 第9回が行われたのが2012年8月29日だから、2年6カ月ぶりに開かれた。記者はこの日、他の取材があり会合を傍聴できなかった。どうしてこれほどの空白があったのか会合で釈明があったかどうか知らない。会合後の同省の担当者からも明快な答えは得られなかった。

 記者の勝手な推測だが、検討会はコミュニティの評価、管理組合と自治会の役割などについて論議が紛糾し収拾がつかない事態となり、みんな頭を冷やそうということになったのではなかったのか。さらに言えば、検討会は空中分解し、そのままうやむやに済まされるのではないかとさえ思っていた。それほど真っ向から委員間の意見が対立していた。

 それでも第10回目の会合を開くのは、お互いの主張を認め、この種の会合の答申にありがちな〝玉虫色〟の両論併記のあたりさわりのないものにまとめるためではないかと思った。

 ところが、あにはからんや。甘かった。「悪法もまた法なり」だ。示された案は現行の区分所有法を楯にほとんど全てコミュニティを否定する内容となった。

 過去にも書いたが、確かに区分所有法とコミュニティはなじまない。法はコミュニティなどまったく想定していない。コミュニティを多とする側は標準管理規約を唯一の拠りどころとしてきたが、やはり無理がある。理論武装が足りない。法の改正を迫るべきだった。

 ここを衝かれた。しかし、それにしても法を振りかざす委員は、ようやくコミュニティや「絆」を真剣に考えるようになってきたデベロッパー、管理会社、マンション管理組合に冷水を浴びせかけるようなことをよくもやったものだ。記者はこの日2月26日は「マンションコミュニティが死んだ日」として忘れまい。マンション600万戸の居住者のみなさんも、管理組合とはそのようなものだということをしっかり認識すべきだ。

 もう腹立ち紛れだ。案は役員を「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者であることから、役員がその個人的資質、能力を発揮してマンションの管理に寄与するもの」と規定している。それができないから第三者管理方式が提示されたのだ。つまり、自らの財産の管理を行う能力、資格に欠けるマンションが多いというのだ。あろうことか、会議での飲食についても疑義があるとされた。

 記者もマンション居住者だし理事の経験もある。組合員も理事も役割は「ひとりがみんなのために、みんなはひとりのために」が基本だ。少ない予算で様々なイベントや会議を行い、その後の発泡酒と乾きものの慰労会に疑義を挟まれたら、それこそ「理事などやってられない」になるのではないか。

 「大所高所」…結構な言葉だ。しかし、多くの組合はそれぞれの知見を持ち合い懸命に努力してマンションの価値を維持しようと頑張っている。なんだか600万戸の居住者みんなが大所高所から判断する能力、資質に欠けていると言われているようで無性に腹が立つ。役員の「欠格要件」などを提示されたら、みんな理事になることをしり込みするはずだ。どこから「欠格者」の矢が飛んでくるかわからない。

 適格者になれるのは、酒も飲まないタバコも吸わない(最近のマンションは共用部分での喫煙を禁止しているものが多い)ヒットラーのような独裁者しかいないのではないか。

 「検討会」はやりたがらない理事を益々難しいものにし、その仕事を専門家に独占させるような管理を目論んでいるのではないか。

 議決権割合を土地持分割合ではなく、価値割合つまり眺望、日照、方角などを加味した高額住居居住者の権利を土地持分割合に付加してはどうかという暴論も出るくらいだから、不公平を増大させ、格差社会をより進めようとしているとも受け取れる。

迷走する「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(2012/8/29)

 

 

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「スマートコミュニティ稲毛」

11.4haにマンション771戸とクラブハウス、グラウンド

 スマートコミュニティ(千葉市稲毛区、染野正道社長)は2月25日、アクティブシニア向けの所有権付きマンションと会員制クラブハウス利用権をセットにした「スマートコミュニティ稲毛」の記者発表会&内覧会を行なった。5年前から開発を行なっているもので、マンションは全5棟771戸の規模で、隣接する延べ床面積約34,000㎡のクラブハウスやゴルフ練習場、テニスコートなどを備えた約74,000㎡のグラウンドが利用できる。戸数は計画中も含め1,200戸くらいまで増やす計画だ。

 マンションは、JR総武線稲毛駅からバス18分徒歩2分、千葉市稲毛区長沼町に位置する敷地面積約22,000㎡、4~14階建てA~E棟全771戸。今回竣工したD棟(103戸)とE棟(41戸)の専有面積は28.81~76.48㎡、価格は29㎡のタイプが1,890万~、76㎡のタイプが3,830万円~。施工は鵜沢建設。50歳以上の健常者が購入条件。

 管理については、「管理者管理方式」を採用しており、同社の子会社が管理受託者となりマンション管理会社と委託契約を結んでいる。第三者管理方式に近いものだろう。

 クラブハウスは、商業施設イトーヨーカ堂をリノベーションしたもので4階建延べ床面積約34,000㎡。敷地面積約74,000㎡のグラウンド付き。レストラン、カフェ&バーラウンジ、フィットネスルーム、音楽スタジオ、カラオケルーム、アトリエ、ダンスホール、テニス、ゴルフ練習場などが利用できる。毎日行なわれるアクティビティメニューは数十にのぼる。初期費用は入会金、私設利用権が1人入居の場合190万円、2人入居の場合285万円。月額費用はコミュニティサービス費と朝・夕の食事費込みで1人利用が84,763円、2人利用が160,002円。

 具合の悪いときは部屋まで食事の宅配を行なうほか、日常の安否確認、看護士の常駐、協力医院との連携、マンションとクラブハウスとの送迎バスなどのサービスも受けられる。

 マンションの敷地は大地主の屋敷跡地。築300年以上の屋敷などがあったという。地主がイトーヨーカ堂を誘致して事業を始め失敗、屋敷を手放さざるを得なくなり同社が取得。イトーヨーカ堂の店舗も「格安」で取得しクラブハウスにリノベーションしたという。

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染野社長

 発表会に臨んだ染野社長は、「アメリカで人気になっているリタイア後の高齢者が健康なうちに入居し、終身で過ごすことができるCCRCを学んでわが国に生かそうと考えたのが事業のきっかけ。月額9万円の年金の範囲内で安心・安全の生活を楽しめるというのがコンセプト。5年前に始めたころは苦労したが、最近は順調に推移しており、会員数は600人になっている。クラブハウスの運営の損益分岐点は800戸くらいと考えており、隣接地でF棟103戸の分譲を始めるのをはじめ、G棟も計画中で、当面1,200戸くらいまで増やす。もう少し規模の小さいプロジェクトもやっていきたい。住民一人が年間200万円くらいを消費すると考えられ、1エリア1,000人として年間20億円が地元に還元でき、高齢者コストも大幅に削減できる」などと話した。

 会員の属性は女性:男性比が58:42、単身:2人比が74:26、平均年齢が71歳。前居住地は都内と千葉県が各30%、その他首都圏が40%。永住希望が多いという。要介護者は現在13人。

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 マンションとクラブハウス、グラウンドの合計敷地面積は約11.4ha。そのスケールの大きさに驚いた。他に事例がなく、ましてやリーマンショック後だ。事業を始めた同社・宮本雅史会長に信用力と資金力がないとできないことだと思った。よくぞここまでやってこられたものだ。年間100戸を上回る分譲スピードは、こういった高齢者専用分譲マンションのニーズが確実にあることをうかがわせる。

 マンションは分譲当初、坪100万円くらいで始め、最近は坪130万円台で、今後は建築費の上昇の影響から坪165万円前後になるという。単価そのものは相場より高めだが、一般的な分譲マンションと単純な比較はできない。各住棟にはほとんど共用施設がなく、設備仕様も高くはないが、クラブハウスの利用権とセットで考える必要がある。今年1月に見学したフージャースコーポレーション「デュオセーヌつくばみらい」も坪170万円で販売は好調に推移している。

 85歳のご主人と84歳の奥さんが楽しそうに焼き物を楽しんでいた。図書コーナーには入居者からの寄贈による図書約6,000冊が収められていた。貸し出し簿などへの記入も必要ない。これらの価値はマンション単価で測れない。

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クラブハウス内

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図書コーナー

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 課題もありそうだ。入居者の高齢化に伴う重度要介護入居者の増加や死亡に伴う退去の増加だ。そうなった場合の中古市場での評価はどうなるのか。

 染野社長は「クラブハウスなどの利用権付きなどを考えれば、一般的なマンションより評価は高くなるのでは。要介護の入居者には訪問介護などのケア事業も考えている」と話したが、ビジネスモデルの完成にはもう少し時間が必要かもしれない。

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85歳のご主人の素焼きの作品(左)とご夫婦の合作(バイオリンがご主人の焼き物の、花は84歳の奥さんの粘土の作品)

根づくかシニア向け分譲マンション 「デュオセーヌつくばみらい」(2015/1/26)

 

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左から入賞した馬場氏、東吉氏、小林氏

 ポラスグループは2月23日、特級、1級及び単一等級の技能者がその熟練の技を競う「第28回技能グランプリ」の大工部門で、同社グループのポラスハウジング協同組合から参加した東吉雄一氏が第2位を、小林保博氏と馬場和樹氏が敢闘賞を受賞し、参加した3名全員が入賞したと発表した。

 今回の第28回大会は2月20日から23日の4日間、全28職種から444名が参加。大工部門では41名が参加。優勝1名、第2位3名、第3位3名、敢闘賞7名がそれぞれ表彰された。

 ポラスグループの入賞は第25回から今回の第28回まで4大会連続。

 東急リバブルは2月23日、売買仲介店舗「久が原センター」(東京都大田区)、「武蔵浦和センター」(埼玉県さいたま市)の2店舗を3月1日(日)に開設すると発表した。

 今回の出店により、今年度の売買仲介店舗新規出店数は11店舗となり、売買仲介と賃貸仲介をあわせた全国のリバブルネットワークは157カ所となる。

 新規出店は多かった昨年の12店舗に迫る勢い。出店スピードは最近の三井不動産リアルティ、住友不動産販売を上回る。

 三菱地所レジデンス、相鉄不動産、丸紅は2月23日、「ザ・パークハウス西新宿タワー60」(全954戸)の第1期325戸の登録申込を2月22日に締め切り、最高14倍、平均2.19倍で即日完売したと発表した。2014年10月のモデルルーム事前案内会開始以降、2,000件超の来場があった。

 第1期の価格は3,198万~35,000万円(最多価格帯6,100 万円台)、専有面積33.90~156.99㎡。登録総数は7,474件。

 登録者の年齢は40 歳代(25%)、50 歳代(25%)が中心。居住地は新宿区(19.4%)、その他23 区内が中心。家族数の最多は2 人家族(36.4%)。

「ザ・パークハウス西新宿タワー60」 コミュニティー支援イベント開催(2014/1/21)

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「パークリュクス銀座mono」完成予想図

 「春が来た」というより「春爛漫」のこの日2月23日、「バブリー」というより「バブル」そのもののマンションを見学した。三井不動産レジデンシャルが今週末28日に抽選分譲する「パークリュクス銀座mono」だ。場所は「銀座八丁目」、坪単価は415万円だが、単身居住にキャピタルゲインを狙う投資用にと申し込みが殺到しており、第1期55戸は即日完売の可能性が高い。

 物件は、東京メトロ銀座線・日比谷線・丸の内線銀座駅から徒歩10分(都営大江戸線築地市場駅から徒歩3分)、中央区銀座8丁目に位置する13階建て70戸。第1期(55戸)の専有面積は25.23~43.40㎡、価格は3,188万~5,358万円(最多価格帯3300万円台)、坪単価415万円。入居予定は平成28年6月下旬。施工は松井建設。

 2月21日から申し込みが始まっており、締め切りは2月28日。ほとんどの住戸に申し込み、あるいは申し込み希望が入っている。抽選は28日。

 現地は、ビル、マンションなどが建ち並ぶ一角。元駐車場。近くには三井ガーデンホテル、東京吉兆、竹葉亭などがあり、築地市場へも徒歩5分。

 住居は北西向き。2・3階のメゾネット72㎡を除きすべてがコンパクトタイプ。

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 坪単価415万円と聞いて、「高いがこんなものだろうと」と納得もした。2、3年前だったら坪350万円でも高いと思うが、もう銀座、日本橋では坪400万円以下はあり得ない。

 それより、どんな人が購入するのだろうと思った。案の定というか、投資狙いの顧客が殺到しているようだ。申し込み・購入希望の人の半数近くはそのような人たちだ。つまり、勝っても住んでもいいという人たちで、築地市場の再開発が決まれば値上がりするだろうからと、インカムよりキャピタル狙いの人がいるというから驚きだ。不動産のプロも買っているという。

 さらに驚いたのは、銀座の中古マンションの相場が450万円になっているというのだ。外国人が投資用に古いビルやマンションを買いあさっているのが相場を引き上げている要因のようで、同社のマンションは中古相場より安いのが人気を呼んでいる要因の一つだ。賃貸でも表面利回りで5%弱が期待できるという。

 販売担当者も「北西向きですから日照も、採光も眺望も期待できませんとはっきり説明している。一挙に70戸売らないのは、契約がおっつかないから」とのことだった。同社は隣接地で10階建て50戸の建築確認も取っているが、分譲するか一括で売却するかは未定だ。

 野村不動産が近くモデルルームをオープンする「プラウド日本橋三越前」には事前の問い合わせが殺到しているようで、物件ホームページには「ご予約無しでご見学頂けますが、大変な混雑が予想される為、個別のご案内が出来ない場合がございます。また、混雑の状況次第では、入場制限をさせて頂く場合がございます。予めご了承下さい」とある。

 都心部のマンションはいよいよ狂乱の様相を呈してきた。「いつか来た道」だ。こういう記事がまたバブルをあおるのだろう。

 

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