三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス東銀座」1期30戸が即日完売
「ザ・パークハウス東銀座」完成予想図
三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス東銀座」第1期31戸が最高5倍、平均1.9倍で即日完売した。東京メトロ有楽町線新富町駅から徒歩1分の13階建て全36戸。専有面積は70.82~81.77㎡、価格は7,400万~1億800万円。坪単価は400万円弱。抽選会は11月24日。購入者の居住地は中央区を中心に全国都道府県。
評価された点は、新富町駅をはじめ徒歩8分圏内に6駅4路線が利用可能な交通利便性の高さ、全戸南向き、三方向角地、南面は前面建物まで約60mの距離が撮れていることなど。
重要事項説明(重説)のIT化はハードルが高い実感 国交省が第5回「検討会」
国土交通省は11月28日、第5回「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」(座長:中川雅之・日本大学経済学部教授)を行なった。国交省から重要事項説明(重説)に必要な要素や社会実験の進め方、最終取りまとめ骨子案などについて示され、各委員が論議した。第6回目の会合が年末に行われ、最終取りまとめ骨子案がまとめられる予定だ。
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初めて「検討会」を傍聴した。今年末までに最終取りまとめ案が決まると報道されており、いかなる内容になるかを確認するためだった。
個人的には重説のIT活用は大賛成だ。マンションなどの売買契約で行なわれる重説は84項目もある。賃貸は10数項目のようだが、数の問題ではない。宅建主任者が一つひとつを読み上げ、説明するのだが、最初から最後まで忠実に行なえば、2~3時間くらいかかるのではないか。書面の送付やメールのやり取りなどで済ませてもよい事項も少なくないと思う。外国人のマンション購入も増加している。法人や遠距離契約者への重説のIT化は避けられないと思っている。
また、不動産のプロ(主任者)が物件の瑕疵などを隠すはずがないと記者は思っている。トラブルを未然に防止するためにも資質向上を目指した「宅建取引士」への「格上げ」であるはずだし、コンプライアンスの徹底を各社は進めているはずだ。(もちろん例外はあり、これが問題なのだが)
消費者もまた高い買い物をするのだから、事前に十分調査、チェックすべきだ。トラブルになったとき、「知らなかった」では済まされない。契約書が全てだ。重説の「その他」もしっかり理解することが必要だ。
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「検討会」委員も重説のIT化に不動産業界はもちろん全員がもろ手を挙げて賛成するのではないかと思っていたが、そうではなかった。
「様々な制約をつけるべきでない」と全面的なIT化を推進すべきと主張したのは関聡司委員(新経済連盟)だった。関委員は「○×の意味が分からない」-つまり重説で求めている本人確認や説明が理解されているかどうかの双方向のやり取りについて国交省が提示した「テレビ電話」は○(可能)であり、「電話・メール」を×(不可)とする資料に異議を唱えた。このほか「(社会実験を経て本格運用することについて)ITで重説をどう実現するか期待したい」(熊谷則一委員=弁護士)「社会実験に向け登録する方向で検討を進めている」(加藤代理委員=全日本不動産協会)など肯定的な意見があった。
しかし、その逆に「IT化には反対してきた。賃貸のトラブル処理は大変(IT化でトラブルは防止できない)」(小林勇委員=全国宅地建物取引業協会連合会)とする声や、「事前の説明はITでもできるかもしれないが、契約は対面でないと難しいし、重説もテレビ会議でないと難しい」(本橋武彰委員=不動産流通経営協会)「賃貸契約は2年で解除となるが、トラブルはその後に発生する。社会実験を2年とするのは短すぎるのではないか」(土田あつ子委員=日本消費者生活アドバイザーコンサルタント協会)などの慎重論もあった。
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「検討会」は、宅建業法の趣旨が「購入者等が十分理解して契約を締結する機会を与えるため、専門的な知識、経験、調査能力を持つ宅地建物取引業者に説明義務を課している」ことであり、重要事項の書面による交付・説明を取引主任者が取引主任者証を提示し、直接契約者本人に伝達・理解を得ることを定めた業法35条の法体系を崩さないことが前提となって論議されている。
そもそも重説は電子メールなどの電磁的方法で交付することを認めていない。また業法でいう「説明」とは、「説明の相手方が判断又は意思決定できる状態にまで理解せしめることであって、相手方に一定の事実を知らしめる告知とは異なる」(逐条解説)としている。
このことを前提にするのであれば、IT化はきわめてハードルが高いといわざるを得ない。「IT化」の言葉だけが先行しているように思えてならない。悪意の業者・消費者を排除し、トラブルを未然に防止するためにも社会実験を通じて十分検証することが必要だろう。
ついでながら外国人に対する重説について一言。日本語を解さない外国人については相手が理解できるよう英語なり中国語なりその他の外国語に訳したものを交付し、場合によっては通訳も必要になるはずだ。ここで疑問に思うのは、通訳を通じて行なう場合だ。重説は本人に対して行なうのだから代理は想定していない。通訳の能力もさることながら、主任者は通訳が的確に訳しているかどうかを確認できないと説明したことにはならず、理解されたかどうかも分からないのではないか。その外国語に精通していないと主任者は務まらないということだ。
業界では「外国人の入居が増えたらトラブルが激増するのではないか」という声が多い。これからそのようなマンションが続々竣工する。マンション管理組合が右往左往する事態だけは避けて欲しい。
マンション9カ月振り増加 10月の新設住宅着工
国土交通省が11月28日、10月の新設住宅着工戸数を発表した。消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響が大きかった前年同月と比較すると、分譲住宅は増加したが、持家、貸家が減少したため、全体で12.3%減、8カ月連続減の79,171戸となった。
利用関係別では、持家は24,245戸(前年同月比28.6%減、9カ月連続の減少)、貸家は33,628戸(同4.1%減、4カ月連続の減少)、分譲住宅は20,820戸(同1.6%増、9カ月ぶりの増加)となった。分譲住宅の内訳はマンションが10,495戸(同23.3%増、9カ月ぶりの増加)、一戸建住宅が10,146戸(同13.8%減、6か月連続の減少)。
首都圏マンションは7,102戸(同85.0%増)で、都県別では東京都が4,870戸(95.7%増)、神奈川県が388戸(同37.5%減)、埼玉県が670戸(同7.4%増)、千葉県が1,174戸(同1,007.5%増)。
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首都圏マンションの着工減が取り沙汰されているが、適地・建築費の上昇などを考えるとこのようなものだろうと思う。ここしばらくは年間5~6万戸台で推移するのではないか。今年1月から10月までは51,227戸(前年同期比12.2%減)となっており、6万戸には届くのではないか。
都県別では神奈川県が6,615戸(同49.5%減)と大幅に減少しているのが気になる。デベロッパーも、高値追求して果たして売れるのかどうかの判断が難しく、市況が読み切れていないのではないか。神奈川県でも分譲坪単価は200万円をはるかに突破し、人気エリアでは300万円台の後半になるはずだ。
将来展望に明かり灯る 「マンション管理業の実態調査」報告 マンション管理協
「マンション管理業の実態調査調査結果」報告会(霞が関ビル)
マンション管理業協会(管理協)は11月26日、有識者への研究委託を進めている「マンション管理業の将来展望に関する研究」(代表研究者 大橋弘東京大学大学院経済学研究科教授)のうち、平成25年度に実施した「マンション管理業の実態調査 結果報告書№2」(A4判、94ページ)が刊行したのに伴い、その調査結果報告会を行った。会員会社から約100人が参加した。
今回の報告書は、24年度に実施した「マンション管理業の実態調査」の結果を踏まえて、マンション居住者のマンション管理に対するニーズや満足度の現状を定性的・定量的に明らかにした。調査はアンケートを中心に行われ、会員の回答数はフロント業務担当者を含め2,463人、マンション居住者は3,670人。
調査結果について報告した大橋氏は、マンション管理の知識を豊富に持ち、管理に対して高い関心を持つ居住者ほど設備の保守点検、清掃業務、緊急時の対応のほか、「理事会・総会の運営支援」「組合資産の運用方法の提案」「コミュニティ形成支援」などの充実を望む傾向があることを指摘した。
また、マンション管理業は労働集約的な業態であり、人的資本の塊であるフロント業務担当者の役割が重要とし、モチベーションをいかに高め、維持していくのか、居住者のサービスへの満足度の向上、中長期的な生産性の向上につながるような教育訓練が必要と述べた。
報告を受けた後に行われたパネルディスカッションでは、コメンテーターを務めた明海大学不動産学部教授・齋藤広子氏は、「フロント業務担当者のモチベーションが高いほど居住者の満足度が上がる結果が出たのが一番うれしい。管理業務に詳しい入居者ほど多様なニーズがあることも分かった。勇気と感動をもらった」と話した。
パネリストとしても参加した大橋氏は、「居住者のニーズは複雑。これがファイナルバージョンとは思えない。謎を残したままだ」「業の定義が難しい。パッケージがない。認証制度のようなものをつかってポジティブに見ればやりがいはもっと拡大する」「(管理とは何かの)見方を変えるいいチャンス。ハードのみならず、居住者との接点にもビジネスチャンスがある。従来の延長線ではできない。錘の置き方に期待したい」と語った。
同じ調査研究者でパネリストの摂南大学経済学部講師・西川浩平氏は、「多様な企業が参入しているが、商品の質の違いが見えない。質の見える化を図らないと、価格競争から逃れられない」と話した。
フロント業務担当者としてパネリストになった日本ハウズイング・若林達矩氏は「居住者のコミュニティ形成のきっかけを作るフロントの役割は重要」と話し、ダイワサービス・勝又由起子氏は「コミュニティが充実していると入居者トラブルも少ない」などと語った。
大橋氏
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腑に落ちるとはこのことを言うのだろう。報告とパネルディスカッションを聴いて、わだかまりが消えすとんと胃に収まったような満足感を覚えた。マンション管理業とマンション居住者の目指すべき方向性がはっきりわかった。
大橋氏は、標準委託契約業務以外の緊急時対応、資産向上、コミュニティ形成などに居住者ニーズが高いことを定量的に明らかにした。齊藤氏が「ワクワクした」というのもこのことではないか。記者もこれに目を覚まされた。
つまり、管理会社が行う日常業務は無難にこなして当たり前。居住者はもっと高次のサービスを期待していることが明らかになったということだ。ところが、委託契約業務以外だから当然そこにはフィーは存在しない。フロントがいかにサービスを提供しようが、顧客満足度を高めようが〝ただ働き〟の評価しか受けない。だから、組合の要求は「過剰要求」になり「業務の負担増」につながっていく。
このギャップを埋めるのが業界の最大のテーマであるし、だからこそこの難問に解を見出せば、管理業は新たなステップに進める。大橋氏が「外から形を作っていくしかない」と言ったように、これまでの延長線上にはその解はない。高いサービスを提供してそれがきちんとフィーとして評価される仕組みをどこがつくるか楽しみだ。
齊藤氏
左から大橋氏、西川氏、若杉氏、勝又氏
主役は参加者 マンションコミュニティを考える 三井レジのシンポに340名
「Mirai Mansion Meeting」(COREDO室町 日本橋三井ホール)
昨日11月26日、マンションの管理・コミュニティに関する極めて興味深い、示唆に富んだ催しが2つ行われた。一つは、マンション管理業協会(管理協)が主催した「マンション管理業の実態に関する調査」結果報告会で、もう一つは三井不動産レジデンシャルなどが主催した「コミュニティ」を切り口にマンションの未来像を語るシンポジウム「Mirai Mansion Meeting」だ。
アプローチの方法は異なっているが、前者のパネルディスカッションでコメンテーターを務めた明海大学不動産学部教授・齋藤広子氏は「感動しました」「ワクワクしました」と何度も繰り返した。齊藤氏と申し合わせたわけではないだろうが、三井レジのイベントのテーマの一つは「私たちのワクワクするマンション」を探ることだった。記者もつられてワクワクし感動した。ぼんやりした未来像がくっきりと浮かび上がった。歳のせいか涙腺も緩んできているが、涙が出るほどうれしかった。是非、二つの記事を合わせ読んでいただきたい。
左から岩田氏、藤林氏、藤村氏
各テーブルに置かれていた謎のボックス
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まずは三井レジのシンポジウムから。会場となった定員300名のCOREDO室町1の日本橋三井ホールには約340名の参加者で溢れかえっていた。圧倒的に多かったのは20~30歳代の若い人だった。
シンポジウムは3部構成で、第1部では藤村龍至建築設計事務所代表・藤村龍至氏、同社・藤林清隆社長、三井不動産レジデンシャルサービス・岩田龍郎社長が、三井不動産グループが掲げる〝経年優化〟の原点である「サンシティ」と、3.11後のコミュニティを重視した「パークコート東雲」などを紹介しながら、「家族、入居者、地域の3つのコミュニティへの期待が高まっていることに対して、暮らしソフトをどう埋め込んでいくかが課題」(藤林氏)「マンションが変われば地域、日本が変わる」(岩田氏)などの意見が出された。
第2部では、三井不動産・NPO日本橋フレンド代表・川路武氏がモデレーターとなり、enaAMICE代表・蛯原英里氏、チームラボ代表取締役・猪子寿之氏、issue+design代表・筧裕介氏がセッション形式で話し合った。
度肝を抜かされたのが第3部だ。参加者が6~7人のグループに分かれ、マンション管理組合の理事に選出された設定のもとで、未来のマンションについて冒頭の「ワクワクするマンション」像を語り合うもので、おにぎりとお菓子などを食べながら侃々諤々、1時間近く話し合った。見ず知らずの人とどうしてそんなにフランクに話せるのかとあ然とした。
その結論がまたすごい。「私たちのワクワクするマンション」とは、「井戸端会議の生まれる場所がある」「カベのないマンション」「顔と名前が一致するマンション」「子どもをダシにするマンション」「ゆるいコミュニティ」「自給自足型」「SHAREするのが楽しい」「自分たちだけで完結しないマンション」「地球と共生するマンション」などだ。
みんなドキリとさせられるものだった。「井戸端会議のある場所」を提案したグループのひとり20歳代の女性は「私は谷中の一戸建てに住んでいます。おばあちゃんとも仲がいい」と話した。井戸など都会ではまず見られなくなっているし、井戸端会議がどのようなものか知らないはずの若い人がそれを望んでいることに衝撃すら覚えた。
「カベ」とはもちろん戸境壁を取っ払えという提案ではないだろうが、家族、入居者、地域のそれぞれに重く垂れこめている「壁」を取っ払おうとする強い意欲の表れだしメッセージだ。「地球との共生」を堂々と打ちだしたグループには声を失った。
登壇者のフォトセッション
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このシンポの大きな特徴の一つは、従来の型、殻を打ち破ったことだ。参加者が主役、中心にいることだ。最初から最後まで3時間くらいあったが、途中で退席する人も私語を交わす人も居眠りをする人もほとんどいなかった。
なぜかを考えた。シンポを仕掛けたのが三井不動産レジデンシャル市場開発商品企画グループであることを知り、その謎が解けたような気がした。このグループは、女性が「住」について興味を持つ機会を提供する女性向けwebサイト「モチイエ女子web」を立ち上げた部署だ。このサイトは従来の男性中心の商品企画に対する反旗だと思う。今回のシンポも同様だ。既成の概念を打破しない限り新しいものは生まれない。いつの時代でも世の中を変えるのは若者だ。若者に依拠しようというこの商品企画グループに拍手喝采だ。参加者から寄せられた多くの声は宝の山だろう。藤林社長も「今後の商品企画に生かしたい」と語った。
参加者がそれぞれの思いを書き込むカード
カードを基に行われたミーティング
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会場で面白いプロジェクトが紹介されていた。「Neighbors Next Project」だ。26歳以下のメンバーが理想のマンションを実現するため調査、研究、体験を通じて2020年までにマンションを建設しようというものだ。
現在、会員は15名だそうで、三井レジが2011年に有識者などとともに立ち上げた、今回のシンポの主催者でもあるサステナブル・コミュニティ研究会が活動に協力している。
これもいいプロジェクトだ。詳細はウェブhttp://u26.jpへ。
「ミライ・マンション・ミーティング」後に各グループがコンセプトを発表しあった
左から「Neighbors Next Project」の代表・江副生氏(24)、山本遼氏(24)。江副氏は「2016年には着工したい」と語った。来春、ある独立行政法人に入社が決まっている。山本氏は不動産会社勤務。「シェアハウスに興味がある」とのことだった。
将来展望に明かり灯る 「マンション管理業の実態調査」報告 マンション管理協(2014/11/27)
危機に瀕する地方の社会・経済の再生を 「まち・ひと・しごと創生法」に期待
少子高齢社会の進展に的確に対応し、人口減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への過度の人口集中を是正し、活力ある社会を維持していくための「まち・ひと・しごと創生法案」と、地域の雇用機会の創出と地域の活力の再生を推進する「地域再生法の一部を改正する法律案」が11月21日、参院で可決、成立した。
「まち・ひと・しごと創生法」では、国民一人ひとりが夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会(まち)を形成し、地域社会を担う個性豊かで多様な人材(ひと)の確保、地域における魅力ある多様な就業(しごと)の機会の創出が目的となっており、国や都道府県がまち・ひと・しごと創生に関する目標や施策に関する基本的方向などを示すことになっている。
「地域再生法の一部を改正する法律」では、新たに民間が発意提案できようにしたほか、認定地域再生計画の事業を金融面で支援する補給金制度を創設した。
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「創生法」は来年の地方選をにらんだ政府与党の〝やる気〟を示したものと受け取れなくもないが、地方の社会・経済の再生・活性化は待ったなしだ。今後、具体的な各地域の再生策が打ち出されることに期待したい。
あらゆるデータをみても地方の社会・経済状況はひん死の状態だ。コミュニティや文化の衰退も急速に進んでいる。過疎化、高齢化による山林の管理放棄、田畑の耕作放棄、里山の荒廃による害獣の被害増大がいい例だ。もはや対症療法的な活性策は焼け石に水だろう。都市と農村の対立的な構造を打破する以外に道はない。地方が死滅して都市だけが生き残れることは絶対ない。
法の目的である「国民一人ひとりが夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会」を構築するビジョンを政府は示してほしい。
その成否のカギを握るのは、様々な規制の緩和もそうだが、縦割り行政の打破と「民」や「学」との連携だろう。縦割り行政の弊害はこれまでも指摘されている。官主導ではものごとがはかどらないのも証明されている。強い指導力を発揮して縦割り行政から脱却してほしい。
NPOや民間企業の支援も欠かせない。デベロッパーやハウスメーカーは地域づくり、街づくりのノウハウを持っている。人材を支援活動にどんどん送り込んでほしい。大学、研究機関も同様だ。現場でしか社会・経済は学べない。知見を検証するためにも地方再生プログラムへの参加は絶好の機会であるはずだ。
参院本会議では「ビジョンなきバラマキ」などとの理由から採決に欠席した政党があったというのが気がかりな材料ではある。与党、野党が対立しているようでは都市と地方の両立も期待できないのではないか。
日本綜合地所「ヴェレーナ木場公園」 木場・東陽町駅圏&同社物件の最高値更新
「ヴェレーナ木場公園」完成予想図
日本綜合地所が分譲を開始した「ヴェレーナ木場公園」を見学した。同社のマンション坪単価の最高値で、木場・東陽町駅圏でも少なくともバブル崩壊後では最高値と思われる坪単価280万円には心底驚いたが、商品企画は高値更新を納得させるもので、大手デベロッパーのそれをしのぐものだ。
物件は、東京メトロ東西線木場駅から徒歩7分・東陽町駅から徒歩11分、江東区東陽五丁目に位置する13階建て全36戸。専有面積は61.00~75.60㎡、現在分譲中の住戸(2戸)の価格は4,968万円・4,988万円(60㎡)、坪単価は280万円。竣工予定は平成28年1月中旬。施工は大木建設。11月1日から1期1次20戸の販売が開始されており、これまでに18戸が販売済み。
現地の用途地域は準工業地域(江東区は23区でもっとも工業系用途の多い区)だが、大通りから一歩入っており、マンション化が進んでいるエリア。徒歩2~3分に都立木場公園と豊住公園がある。
住戸プランは1フロア3住戸ですべて角部屋タイプ。1住戸に7~8つの窓が付いており、通常の中住戸の開口率が10%くらいなのに対して、ここは約16~24%あるのが大きな特徴。
モデルルームタイプは68㎡で、間口7.8mのワイドスパン。バスルームを含め窓は8カ所。北側のスカイツリー・豊住公園、西側の木場公園の眺望を確保している。リビング・ダイニングと一体利用ができる約5㎡のオープンエアスペースを設置している。設備仕様は、御影石のキッチンカウンタートップ、食洗機が標準装備。
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木場、東陽町駅圏のマンションは結構見学しているが、「木場公園」と言えば、10年近く前に明豊エンタープライズが分譲して人気になった「シェルズ木場公園」(127戸)がすぐ思い出される。外断熱工法を採用し、東京都が始めたばかりの「マンション環境性能評価」制度で星3つの満点(12個、現在は15個)を獲得した第一号物件だった。坪単価は240万円だった。
この単価がいかに高かったか。当時、東陽町駅すぐで分譲されていた物件の単価は210万円だった。これだけでも当時の相場と、「シェルズ」のレベルが高かったかが理解されると思う。
今回、日本綜合地所が分譲する地域の立地条件と建築費の上昇を考慮して、記者は坪単価250万円とはじき出した。ここ10年間で木場・東陽町駅圏の最高値マンションは坪260万円だ。
販売を担当する入社14年目の同社課長・大竹氏が正直に話してくれた。
「物件情報を公開したら一挙に3週分の来場予約が入りました。手応えを感じましたが、楽観はできないと思いました。値段を公開していませんでしたし、当社の物件より駅に近いところでこれまで野村さん、三井さん、三菱さんなどが分譲している物件は坪230~260万円。さて、いざ値段をお伝えすると、皆さん、やはりどなたも『安い』とはおっしゃらない。だが、線路際でもない、大通りにも面していないオンリーワンの立地であることは納得していただきました。20戸供給して18戸が成約できたのも立地が評価され、プランが評価された結果。坪単価280万円というのは当社のこれまでの物件でもっとも高い単価です」
大竹氏が「評価された」というプランはどうか。〝オープンエアスペース(バルコニー)〟と聞いてどのようなスペースのことが分かる方がどれくらいいるだろうか。記者は同社が業界に先駆けて第1号物件を供給したのをよく覚えている。17年くらい昔だ。南武線中野島駅圏で同社は全開口サッシを採用するとともにバルコニー側にウッドデッキを敷くことでリビングとバルコニーを一体利用できる提案を行った。
興味深かったのは値付けだ。一般的に中高層マンションの値付けは1階部分がいちばん安く、上階に行くにつれ数十万円から数百万円上げていくのが常識だ。ところが、同社は1階部分を中層階より高く設定したのだ。それがものの見事に成功し、1階住戸から売れていった。値付けの常識を同社が打ち破ったのだ。それが今日まで同社の商品企画として生かされている。
記者は1993年に同社が設立されてからずっと取材を続け、今日に至るまでその歴史を見守ってきた。今回、大手にも負けない商品企画が健在であることを確認し、木場・東陽町駅圏と同社のマンションの歴史を塗りかえる最高値を更新したのがなによりうれしい。
オープンエアスペース
ハウスメーカー2強 〝住〟を深掘りする積水、多角化進める大和ハウス
積水ハウス 請負型・ストック型・開発型3つの輪が核
積水ハウス代表取締役社長兼COO・阿部俊則氏は11月14日に行われたメディア向けの経営計画説明会で、請負型・ストック型・開発型の3つの輪が相互に連接する〝住〟に特化した成長戦略を展開し、2016年までにROE10%以上を定着させる筋肉質の会社にすると、1時間近くにわたってよどみなく語った。
業績については別掲の表を参照していただきたい。2期にわたって過去最高売上&過去最高利益を更新したことから舌は滑らかだった。全体で38もあるシートを時おり補足しながら説明した。
記者が強く印象に残ったのは、阿部氏が「当社の根本哲学は人間愛だ。コミュニケーションワードである〝家に帰れば、積水ハウス〟にすべてが凝縮されている」と企業理念・哲学について語ったことだ。
住環境がすべてではないが、人の人格形成に大きくかかわるのは間違いなく住まいであり、住まいを取り巻くコミュニティにあると思う。ここに腹を据え、さらに深堀していく戦略にいささかのぶれもない。「住宅が変われば社会が変わる」というのも真理だ。そして、同社のブランド力で今後のわが国の課題である「環境」「ストック」「高齢化社会」にどうチャレンジしていくか。
同社の「5本の樹計画」「スムストック」「サ高住」事業や、ホンダとのコラボによるロボット、さらに東芝を加えた「スマートハウス実験」などが実を結び、新たな事業を生み出すのではないかと期待したい。
説明会では人財の育成・活用、職場環境、ダイバーシティなどについてはあまり語られなかったが、これらについてもトップランナーとして業界を引っ張る責任が同社にあると思う。
記者の取材フィールドのマンションについては、売上高は2014年度が580億円、2015年度が740億円、2016年度が640億円と抑制された数字になっている。これは「いま一つ先が読めないし、建築費も上昇し競合も激しい。うちらしい事業しかやらない」(稲垣士郎・副社長兼CFO)とのことだ。敢えて火中の栗を拾うようなことはしないということだ。これも大正解だろう。
大和ハウス「その他」売上げ全体の15.1%占める
大和ハウス工業は2015年3月期の通期見通しで、売上高は消費増税の反動減が響き戸建住宅は3,650億円(前期比7.5%減)にとどまるが、賃貸住宅が7,770億円(同12.8%増)、住宅ストックが950億円(同9.6%増)などと伸びることから全体では2兆8,000億円(同3.7%増)となり、営業利益は、戸建住宅の落ち込みを賃貸住宅や事業施設などがカバーし1,730億円(前期比5.8%増)と当初予想を上方修正した。
業績をけん引しているのは賃貸住宅事業だ。売上、営業利益とも前期より二ケタ以上伸ばす。賃貸住宅管理戸数は約42万戸に上り、入居率は95.7%の高水準を維持している。記者はハウスメーカーの賃貸はよく分からないが、最近、ある一般のユーザーから「ダイワさんの賃貸が間取りも設備も他と比べて素晴らしい」という声を聞いた。差別化が徹底されているということだろうか。
利益率がアップしたのは「事業施設」セグメントに入っているフジタの利益率の改善が大きく寄与した。フジタは売上こそ減収だったが、・フジタは減収だった一方で、売上高総利益率が3.8ポイント上昇し7.1%になった。利益率の高い案件に選別受注ができているためだ。
同じ建設会社では、傘下の大和小田急建設も平成27年3月期の業績予想を売上高700億円(5月発表予想時増減なし)、営業利益23億円(同35.3%増)、経常利益24億円(同50.0%増)、当期純利益14億円(同55.6%)に上方修正した。
見逃せないのが「その他」の事業だ。その他の事業とはメガソーラーの建設請負、ホームセンター、ホテル・リゾート事業、フィットネス事業、環境、農業などだが、売上高は主力の戸建住宅を上回る4,230億円(同7.4%)に達し、全体の15.1%を占める。営業利益も全体の8.7%を稼ぎ出す。
このことが積水ハウスやデベロッパーとはまったく異なるところで、他の業種と比較しても同社が特異な存在であることをうかがわせる。積水ハウスは「その他」の売上高は950億円で全体の5.0%だ。三井不動産の「その他」は約1,000億円で全体の6.9%だ。
少子高齢社会の進展で、住宅市場は縮小していくのは間違いない。同社代表取締役会長・CEOの樋口武男氏は「創業者の石橋信夫から創業100周年には売上高を10兆円にしてほしいといわれている」とことあるごとに売上10兆円の夢を語るが、カギを握るのはこの「その他」の事業だ。何が飛び出すか分からない。記者は全てひっくるめて〝ソリューション(問題解決)〟事業だと思うがどうだろう。
子どもへの住宅資金贈与額564万円 マンション価格上昇の半分賄えるか
子どもの住宅購入時に資金贈与した親の平均贈与額は564万円-アットホームが子どもへ住宅購入資金を贈与した親300名、贈与していない親300名にそれぞれアンケートしたところこんな結果が出た。
親の平均年齢は64.6歳、子どもは平均2.2名で、平均贈与額564万円を男女別にみると、子どもが男性の場合は616万円、女性の場合は498万円と約100万円の差があった。贈与金額の分布では、「500~600万円未満」がもっとも多く22.9%で、「100~200万円未満」が19.8%、1,000~1,500万円未満」が13.0%、「300~400万円未満」が12.6%と続く。親子が同じ居住地に住んでいるほうが平均額より約100万円高い642万円となった。
贈与した理由は「より良い生活を送ってほしいから」が41.7%でもっとも多く、「贈与税の非課税制度があるから」は34.0%。「親の義務だと思っている」29.3%、「自分も親から贈与してもらったから」20.3%、「気兼ねなく、子どもの住宅に遊びに行けるから」9.3%などもあった。「老後の世話をしてもらえることを期待して」は5.0%だった。
親の貯金額は贈与している親は2,339万円、贈与していない親は1,128万円で、1,000万円以上の差があった。親の月収は贈与した親が35.3万円、贈与していない親が33.4万円。
「贈与しない理由」としては、「自分は自分、子どもは子ども」というのが43.0%、「自分の資金に余裕がなかった」は39.0%。
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親の属性が平均値でしか示されていないので、はっきりしたことが分からないが、おおむねこのようなものだろうと思う。贈与する親しない親、少額しか贈与できない親と多額の贈与が可能な親など、贈与にも格差社会が反映されていると思う。
不幸なのは子どもも同じだ。このところ建築費の上昇でマンションの分譲価格も上昇しており、東京23区内だと564万円の贈与額では20坪のマンション換算で上昇分の半分も賄えない。贈与がなければ普通のサラリーマンは23区で取得するのが絶望的になってきた。年収500~600万円の普通のサラリーマンが無理なく取得できる3,500万円以下のマンションは、千葉、埼玉、神奈川の郊外部でも姿を消しつつあるのが現状だ。
もう一つ、やや驚いたのが親の月収、生活費の低さだ。月収約35万円で、生活費は約26万円。この差額を預貯金に回し、老後の備えにしたり子どもへの贈与にしたりしているのだろうか。切ない話だ。これを平成の「貧乏物語」と呼んだら失礼か。
国分寺崖線に重なるランドスケープ秀逸 三菱地所レジデンス「二子玉川」
「ザ・パークハウス二子玉川ガーデン」完成予想図
三菱地所レジデンスが近く販売を開始する「ザ・パークハウス二子玉川ガーデン」を見学した。国道246号に面しているが、丘の上で敷地の一部と後背地は第一種低層住居専用地域。国分寺崖線にも重なっており、ランドスケープデザイン、設備仕様レベルも高い。人気必至と見た。
物件は、東急田園都市線・大井町線二子玉川駅から徒歩10分、東急田園都市線用賀駅から徒歩10分、世田谷区瀬田4丁目に位置する地上9階建(建築基準法上は地下1階地上8階建)全130戸。専有面積は59.35~97.33㎡、第1期(戸数未定)の価格は5200万円台~13900万円台(最多価格帯7,400万円台)。竣工予定は平成28年1月上旬。施工は東急建設。
現地は、会員制スポーツクラブと「瀬田温泉」の敷地約7,600㎡の跡地。二子玉川駅から比高差にして約14mのなだらかな坂を上った頂上にあり、9階建てのD棟と5階建てのA棟との差も約3m。A~C棟が南西向きでD棟が北西向き。A~D棟は約2層分のエントランスホール・ギャラリーと連なっている。全体として提供公園や植栽帯、隣接の低層住宅街に面して配棟されているのが大きな特徴だ。
ランドスケープデザインはパレスホテル東京・赤坂サカスなどを手掛けた「ソラ・アソシエイツ」が監修。周辺の低層住宅街と連なるように緑地帯を設置。樹高約23mのケヤキなど40本以上の既存樹も保存する。移植については、造園を担当する「石勝エクステリア」の「TPM工法」を採用している。屋上は緑化し、太陽光発電を実施する。
外観デザインはマリオンと外壁スリットをランダムに配して豊かな表情を演出するとともに、人の目線に触れる1・2階部分は「のこびき」細工の天然石を使用する。また、2階ギャラリーはガラス張りとし、「雪山銀狐」と呼ばれる御影石を壁面に配置。後方から光を当てることで夜間には幻想的な文様が浮かび上がる仕掛けになっている。
設備仕様レベルも高い。玄関床・キッチン・洗面化粧台・トイレ内カウンターのトップは全て御影石。バックカウンター・収納も標準装備。有償オプションだが輸入クロスもグレード感がある。
11月29日から第1期分譲を開始するが、戸数は80戸くらいになる模様だ。
外観
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現地を見た段階では坪単価は350万円くらいかとも考えたが、レジデンスギャラリーで説明を聞き、モデルルームを見学して坪380万円でもおかしくない単価だと確信した。
既存樹の巨木を残したランドスケープが秀逸。北西向きの住棟も敷地内の緑地帯や後背地の国分寺崖線の緑が展望されるはずだ。
唯一気になるのは国道246号に面していることだが、ものは考えようだ。これが国道から一歩入った閑静な住宅街だったら、坪単価は400万円をはるかに突破する。温泉付き会員制クラブ「Aqua sports&spa」も隣接地に建設される。
模型(左)と「雪山銀狐」