再開発が進む駅前で第1期分譲 三井不レジ「金沢八景」
「パークホームズ金沢八景ステーションベイフロント」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが第1期の登録申し込みを開始した「パークホームズ金沢八景ステーションベイフロント」を見学した。物件名にあるように、「駅近」と「ベイフロント」の再開発マンションだ。
物件は、京急本線金沢八景駅から徒歩3分、横浜市金沢区瀬戸に位置する10階建て全119戸(販売戸数は116戸)。第1期(89戸)の専有面積は63.79~101.94㎡、価格は3,880万~8,280万円(最多価格帯4500万円台・4700万円台)。竣工予定は平成28年02月下旬。施工は鴻池・淺沼建設工事共同企業体。
すでに3月7日(土)から登録申し込みが始まっており、締め切りは3月14日(土)まで。来場者は地元金沢区を中心に約500組にのぼっている。
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金沢八景のマンションを見学するのは4年ぶりだ。前回は東急不動産の「ブランズ金沢八景」だった。ちょうど東日本大震災の後だったので、海に近いことが販売面でマイナスになるかとも考えたが、そんなことはなかった。早期完売した。
この4年間で大きく変わったのは、駅前の再開発がかなり進んでおり、おぼろげながら街の将来像が描けることだ。
駅東側の約2.4haでは、横浜市の施行による土地区画整理事業が行われており、事業期間は昭和61年度~平成28年度。駅前広場を整備するほか、金沢シーサイドラインの金沢八景駅までの延伸、駅西側への通路、京急駅舎の橋上化なども行われる。
街区は全体で1~5街区に分かれており、すでに1街区ではパチンコ屋が完成しており、同社が分譲するのは第2街区。第3から第5街区については現段階で具体的計画が決まっていない。総事業費は約91億円。
今回の物件は価格が若干上昇しているが、建築費の上昇、区画整理事業の進ちょくを考えるとリーズナブルなものではないか。第1期で89戸も供給できることからも、ユーザーに評価されているようだ。北東向き住戸の中層階からは平潟湾が望める。
第3~第5街区に何が建つかによっても街の評価は異なってくるだろう。スピードアップが期待される。
野村不HD社長に沓掛氏、野村不社長に宮嶋氏 中井現社長は会長へ
沓掛氏(左)と宮嶋氏
野村不動産ホールディグスと野村不動産は3月6日、野村不動産ホールディングスの社長に沓掛英二副社長が、野村不動産の社長に宮嶋誠一副社長がそれぞれ昇格すると発表した。沓掛氏は6月の株主総会後に、宮嶋氏は4月1日付で就任する。宮嶋氏は同社初のプロパー社長となる。両社の社長を務める中井加明三氏は代表権のある会長にそれぞれ就任する。
沓掛英二氏(くつかけ・えいじ)は昭和35年生まれ、長野県出身。同59年明大卒。同年野村證券入社。平成20年執行役員、同24年副社長、同26年野村不動産ホールディングス副社長。
宮嶋誠一氏(みやじま・せいいち)は昭和33年生まれ、東京都出身。同56年早大卒。同年野村不動産入社。平成16年取締役、平成26年副社長。
わが国の経営幹部の6割はストレス増加 リージャス調査
わが国の6割の経営幹部は5年前と比べストレス増-ルクセンブルグに本社を置くリージャスの日本法人・日本リージャスがこんな調査結果を発表した。世界100カ国、2万2,000人以上の経営者や経営幹部に「働き方」についてアンケート調査したもの。
「5年前と比べて職場でストレスを感じるようになった」と回答した割合は日本がアメリカとともに57%。他の主要国でストレスが多いのは中国78%、サウジアラビア64%、ベルギー62%。少ないのはオランダ32%、フランス・デンマーク44%、カナダ46%、イギリス48%。グローバル平均は53%。
日本の回答者がストレスを感じる理由は「1位:人手が足りない(24%)」「2位:雇用が不安定(20%)」「3位:自身の能力不足(16%)」。ストレス解消の方法では74%の人が「いつもと異なる場所で仕事をする」と回答した。
日本リージャスは、「メインのデスクやオフィスから離れて働くことがストレス解消に効果を発揮していることが明らかになった」としている。
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このリリースだけではよく分からない部分も多い。「ストレス」の定義が難しく、文化や個人によっても感じ方が異なるからだ。わが国の経営者は「ストレス」をバネに「やる気」に置き換える人が多いような気がするがどうだろう。
それにしてもベネルクス三国のベルギーとオランダとでは30ポイントもの差があるのはなぜ? 中国が突出して高いのも気になる。
三菱地所 45物件目の賃貸「PARK HABIO 赤坂タワー」212 戸が竣工
三菱地所は3月6日、賃貸マンションブランド「PARK HABIO(パークハビオ)」の45物件目となる「PARK HABIO 赤坂タワー」(全212 戸)が同日竣工したと発表した。2004 年の賃貸住宅事業の開始以来、累計50 物件、約4,300 戸となる。
「PARK HABIO 赤坂タワー」は、東京メトロ千代田線赤坂駅から徒歩3分。専用面積は21.96~57.56㎡。賃料は12.1万~31.4 万円/月(管理費別)。
端正で清潔かつ透明感のある外観デザイン、白と黒を基調にしたモダンなエントランスを備え、スカイラウンジ(17 階)、ジム(2 階)などの共用施設も設置。都心のアクティブな暮らしを志向する単身~DINKS の入居者のニーズに応える。
積水ハウス UR都市機構と江古田三丁目で「画期的」な複合タウン
「江古田三丁目地区(A・C街区)」完成予想図
積水ハウスは3月5日、都市再生機構(UR都市機構)と協働して中野区「江古田三丁目地区(A・C街区)」の公務員住宅跡地で子育て世帯向け賃貸マンション、多世代向け分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、有料老人ホーム、保育所などを整備し、子どもを軸にした持続可能な街づくりを進めることで合意したと発表した。
計画地は、広大な「江古田の森公園」に隣接した「江古田三丁目地区」(約4.4ha)の一角。A、B、C街区のうちA街区(約1.7ha)は同社が14階建て分譲マンション532戸を建設し、C街区(約1.5ha)は同社がUR都市機構から一般定期借地として借り受け、賃貸マンション260戸、学生寮130室、サ高住122戸、介護付き有料老人ホーム100室を建設。このほか認可保育所、学童クラブ、コンビニ、レストラン、地域住民の活動拠点なども整備する。B街区には夜間・休日診療、病児・病後児保育機能を備えた医療法人による医療施設が建設される予定。
今後、同社、UR都市機構、医療法人で「江古田三丁目地区まちづくり協議会」を発足させ、平成28年4月頃に着工、平成30年の竣工を目指す。
A、C街区は、UR都市機構が企画提案と価格を総合的に評価する総合評価方式で公募したもので、応募した4者の中から同社が選定された。伊藤滋・東大名誉教授が事業企画審査委員長を務めた。
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記者がこのニュースを知ったのは、翌日の6日に行われた同社恒例の決算・事業計画説明会の会場だった。リリースが配布されていた。
阿部俊則・代表取締役社長兼COOは駆け足で決算、事業計画について説明した後、このプロジェクトに触れた。「これは画期的なこと。当社のグループ力の成果。これからの街づくりのモデルケースにしたい」とスタッフの労をねぎらい、同時に「記事にしていたのは1社くらい。皆さんの見解が聞きたい」と、あまり報じられていないことに不満も漏らした。
記者は、関心がないどころか「さすが積水」と提案力に喝采を送った。阿部社長が話をしている間中ずっと〝どんな街になるのか、分譲はいくらになるか〟を考えていた。他の話はほとんど聞いていなかった。この種の複合プロジェクトは都心部では似たものがあるが、準都心部では初めてではないか。地域再生・活性化のモデルケースにもなるはずで、同社が他社を大きくリードしたのは間違いない。
さて、分譲の価格。UR都市機構の意向を考え価格は抑制するとみた。そこで「坪単価は〇〇〇万円くらいでどうですか」と聞いたら、阿部社長は「言えないが、いい線だ」と話した。記者の予想通りだったら申し込みが殺到するはずだ。隣接する江古田の森公園などと合わせると全体で10haくらいの複合タウンになる。
再開発進む駅前一等地&公園に隣接 明和地所「クリオ東小金井パークフロント」
「クリオ東小金井パークフロント」完成予想図
明和地所が3月下旬に分譲する「クリオ東小金井パークフロント」を見学した。再開発が進むJR中央線東小金井駅北口から徒歩2分、南向きの住戸の目の前が公園と広場で、後背地は戸建て住宅街という一等地に立地。人気を呼ぶか。
物件は、JR中央線東小金井駅から徒歩2分、小金井市梶野町5丁目に位置する8階建て全89戸(分譲61戸、非分譲20戸、非分譲事務所6戸、非分譲店舗1戸、管理事務室1戸)。専有面積は53.87~102.34㎡、価格は未定だが、坪単価は300万円前後になる模様。入居予定は平成28年4月下旬。施工は大和小田急建設。
駅北口前は交通広場となり、その次が公園、そして歩道を挟んでマンション敷地。駅まで遮るものが一切ない。区画整理事業完了が2020年で、街並みが整うまで時間があり、将来像が描きづらいが、間違いなく駅前のランドマークマンションになる。
建物はL字形で、1階が店舗、2階が住戸と事務所。リビング・ダイニングの天井高が4mのロフト付タイプや屋上ルーフバルコニー付きのプレミアム住戸もある。
設備仕様はディスポーザー、食洗機、ミストサウナが標準装備で、キッチンカウンターはフィオレストーン、全戸玄関窓付き。スマートマンション認定も取得している。
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現地をみてびっくりした。間違いなく一等地だ。坪単価は300万円をはるかに突破するのではないかと予想したが、それほど高くならないようだ。
来場者の中には、同社が20年近く前に三鷹駅北口で分譲し人気を呼んだ全戸100㎡でディスポーザー付きの「クリオレミントンハウス武蔵野」102戸のような物件になるのかという質問をする人がいたそうだ。あの業界を驚愕させた「武蔵野」の物件に近いものをユーザーも願っていたのだろう。記者も当時の記憶が一挙に蘇った。
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同社は来期で創業30年目を迎える。現在新たなコーポレートステートメントを準備しており、4月には発表したいとしている。その意気込みに期待しよう。当時の同社のDNAは生きているはずだ。
住友不動産 高田馬場のタワーマンションが竣工 売れ行きも好調
「スカイフォレストレジデンス」
住友不動産の業務・住宅・多目的ホールで構成される「新宿スカイフォレスト」のマンション棟「スカイフォレストレジデンス」が竣工し、報道陣に公開された。
物件は、JR山手線高田馬場駅から徒歩6分、新宿区大久保3丁目に位置する26階建て全361戸。専有面積は41.86~81.74㎡、価格は5,000万円台前半から8,000万円台後半。坪単価は380万円。住戸プランは3LDKが中心で、コンパクトタイプは70戸。引き渡しは平成27年3月。施工は大林組。
昨年3月から分譲されており、これまで197戸が契約済み。契約者の住所は新宿区が約34%、豊島・中野・杉並・練馬区が約20%、その他東京が約26%、年齢は40歳代~50歳代が約49%、20歳代~30歳代が約37%、入居予定は0~1人が約33%、2人が約35%。購入動機で投資用というのはほぼ2割という。
購入者に評価されたのは、山手線内側の都心立地に、戸山公園近接の豊かな緑と交通の利便性、文教エリア、免震構造の安心性など。
全体竣工は来春。オフィス棟の入居も3割くらい決まっているという。オフィス棟の上層階には賃貸住居も併設される。
エントランス
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この物件については分譲開始時にも記事にしているのでそちらを参照していただきたい。率直な感想を言えば、よく売れていると思うし、隣接するオフィスビルとお見合いする一部北側のコンパクトタイプを除けば、南東から南西にかけての眺望がすばらしい。
投資用に購入した人が2割くらいというのも納得だ。分譲当初は同社の池袋の「グランドミレーニアタワー&スイート」と比較されたが、記者はこちらのほうが立地に優れているし、単価的にも高くなると読んでいた。その通りで、分譲開始時の単価は「池袋」が340万円くらいで、「高田馬場」は360万円くらいだった。現在は約20万円高くなっているが、これから都心部の高値のマンションが続々供給されるので、いまとなっては安いくらいか。今後は、期分けごとに単価が上昇する局面もあるかもしれない。
都の総合設計制度の適用を受けているので、公開空地などの緑がよく整備されているのも特徴の一つだ。
用地取得から9年…「スカイフォレストレジデンス」分譲へ(2013/10/14)
マンション建替法改正の課題 旭化成ホームズ メディア懇談会
旭化成ホームズ「マンション建替え研究所」(向田慎二所長)は3月4日、マンション建替え円滑化法改正後の展望と高経年マンションのコミュニティをテーマとした「第4回目メディア懇談会」を行った。多数のメディア関係者が参加した。
第一部では、阪神・淡路の被災マンションの再生や建て替えなどに詳しい弁護士の戎正晴氏(戎・太田法律事務所、明治学院大学法科大学院教授)と同研究所・大木祐悟主任研究員が「マンション建替え円滑化法改正後の展望と課題について」パネルディスカッションを行った。
昨年12月24日に施行された円滑化法の「マンション敷地売却制度」は、マンション敷地の買受人をあらかじめ決め、特定行政庁から「要除却マンション」認定を受けたうえ、敷地売却決議-敷地売却組合の設立-不参加者に対する売渡請求-分配金取得計画の決定-組合がマンション敷地の権利を取得-買受人に敷地を売却-買受人がマンションなどを建設-するもので、手続きが簡素化され、一気通貫で敷地売却-建て替えができる制度として注目されている。一定の要件を満たせば、容積率が最大1.5倍まで緩和される。
一方で、自治体によって建築物の絶対高さ制限、接道制限、公開空地、外壁の後退距離などを定めた総合設計制度などにより、容積率の割り増しを受けてもマンションは建てづらいなどの報告もされた。店舗などの借家人への補償、団地型は不可などの問題も残されていると戎氏は語った。
第二部では、同社が参画した建て替えマンションの事例を基に「高経年マンションの区分所有者とコミュニティの高齢化」について向田氏と同研究所・杉山直美氏が報告した。
区分所有者の平均年齢は60歳以上が70.7%(70歳以上は41.9%)で、従前の空き家率は24%、単身世帯は41%など、多くの問題点を抱えていることが語られた。
建物の解体までに少なくとも8回くらいの説明会が行われ、女性スタッフなどによる高齢者などへの個別サポートは数えきれないほどという苦労話も杉山氏は話した。
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マンション敷地売却制度は、業界からも「画期的」制度として歓迎されたが、記者は冷ややかに見てきた。すんなり決議ができればいいが、様々な思惑が交錯し5分の4の賛成を得るのも容易でない。しかも、容積率が割り増しされて、高さ規制も日影規制も用途規制もなく、なおかつ居住性の優れたマンションが建つ案件は都心の商業地くらいにしか残っていないのではないか。
個人的には不参加者に対する売渡請求の金額算定にも問題があると考えている。請求額は素地価格から解体費用などを除いた額となるようだが、敷地を売却することによって二束三文の価値しかなかったマンションが建て替え後は数倍に跳ね上がるわけだから(そうならないケースもあるが)、その利益も考慮していいような気がする。
例えが適当かどうか分からないが、囲繞地とよく似ている。公道につながっていない囲繞地はそれこそ何の価値もない。資材置き場か畑にしかならない。しかし、公道につながる土地の所有者(不参加者)から土地を買収できれば相場の数倍のお金を払ってもいいケースはたくさんある。その意味で、不参加者の意向は事業の成否のカギを握る。
と、ここまで書いたが、この問題は解消されるようだ。つまり、補償額は建て替え後の価値が上昇することを想定して算定されるので、不参加者の不利益にはならないということだ。記者の不勉強だった。
もう一つは、従前と比べ価値がそれほど上がらない修繕はともかく、新築の8掛けくらいに価値を上げられる改修もこれからは大きな選択肢になるということだ。
好例を紹介する。青木茂建築工房がリファイニング建築手法を用いて設計・監修を担当した再生マンション「千駄ヶ谷緑苑ハウス」の解体現場見学会には行政、不動産、設計事務所、研究者ら約300人が押し寄せた。マンションは相場の8掛けくらいで早期完売した。
同工房は近く「笹塚」の見学会を行うが見学申し込みが殺到したため、申し込みを途中で打ち切った。ここも設計図書などない古い建物だという。取材してレポートしたい。
第二部では杉山氏の話が興味深かった。同社の建て替え事業が他社よりぬきんでているのは、そうした裏方の合意形成にいたる努力があってこそではないかとずっと思ってきた。裏方の取材はできないものだろうか。
震災から4年 「希望」はあるのか 陸前高田に見る復興事業
陸前高田市(岩手県の資料より)
2011年3月11日の東日本大震災からもうすぐ4年目の春を迎える。岩手県陸前高田市は、県内でもっとも多くの多くの死者1,559人を出し、いまだに行方不明者が215人いる。死者・行方不明者の1,814人は人口の7.78%に達する。また、日本の白砂青松100選にも選ばれていた「高田松原」の砂州と約7万本の松が消滅した。「奇跡の一本松」は「希望」のシンボルとして〝全国区〟になった。
そしていま、陸前高田市は「IPPON MATSU」を合言葉に急速に復興への街づくりを進めている。数字から過去-現在-未来へアプローチする。
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別表は陸前高田市の震災前の平成22年と震災後の26年の数字を比較したものだ。人口は約3,000人減少し約2万人になった。市町村税も約1割減少した。その一方で、一般会計は120億円から1,293億円へ約11倍に膨れ上がった。予算規模は、人口約32万人の東京都中野区の1,206億円を上回る。
歳出を目的別にみると、災害復旧費が約223倍、土木費が約46倍、総務費が約27倍と激増した。もちろん、増加した分はほとんど国や県からの支出・補助金による復興事業に充てられている。
その復興の目玉でもあるのが住宅地を高台に移転し、あわせて市街地の整備を行う土地区画整理事業だ。
市では別表のように「高田地区」と「今泉地区」合わせて約303ha、計画戸数2,120戸、事業費約1,200億円の区画整理事業が進行中だ。
事業前の土地の評価額は約415億円で、事業後は約716億円へ約300億円、1.7倍増加する。1,200億円の事業費を投入してもそのうち900億円は回収できないという計算も成り立つ。
復興のもう一つの目玉は防災集団移転促進事業(防集事業)だ。国費から宅地造成費、住宅建設補助金として360億円が投じられ503戸が建設されることになっている。1戸当たりに換算すると約7,200万円だ。このほか災害復興公営住宅が約300戸建設される。
これら区画整理事業、防集事業、災害復興公営住宅による住宅建設戸数は約2,900戸。震災で蒙った全壊と半壊戸数3,341戸の86.8%が新たに建設される計算だ。
「復興への希望の象徴となり、岩手県民だけでなく国内外の多くの人々を勇気づけてきた」(高田松原津波復興祈念公園基本構想)「奇跡の一本松」はどうなるのか。消滅した砂丘は、計画では国営追悼・祈念施設を含む約124haの県営公園として生まれ変わる。具体的な整備計画はまとまっていないが、整備費に約100億円かかると試算されている。
「奇跡の一本松」(同)
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記者は昨年の3月、宮城県名取市に別件の取材で出かけ、閖上地区を見て、仙台空港アクセス線美田園駅前の仮設住宅に住む被災者にインタビューをした以外、3.11はまったく取材していない。
取材もしないで、復興のための土地区画整理事業について書く資格はないのかもしれない。それでも書かざるを得ない。果たして大丈夫かと。
かつて区画整理事業は「都市計画の母」ともてはやされた。ところが、バブル崩壊後は、高い梯子を外されたのと同じ格好で、ほとんどの事業が行き詰まった。首都圏ばかりでなく広島や岡山の悲惨な事業も取材している。死屍累々ということばがぴったりだった。「姥捨て山」と書いて怒られたことがある。
そもそも区画整理事業は、そこに住む人を呼び込むポテンシャルがあり、土地が上昇することが前提となっている。右肩下がりでは保留地がねん出できず、金利負担だけが覆いかぶさってくる。
しかし、「震災復興」の大義名分のためにはだれも「無謀」などと異論を挟めない。それでも、緑の木々が切り倒され、赤土がむき出しになった区画整理の無残な姿を見ている記者は「大丈夫か」と言わざるを得ない。
陸前高田市と同じように、被災地では50カ所くらいで土地区画整理事業が進められている。「日本創成会議」が昨年、2040年までに東北4県は全市町村の8割以上が人口半減すると予測し、大騒ぎになった。立派な「街」を造れば人口は維持できるのか。国土強靭化政策は実を結ぶのか。
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この記事を書き出したころ、発刊されたばかりの重松清氏著「希望の地図3.11から始まる物語」(幻冬舎文庫)を読んだ。現地取材をもとにしたドキュメントノベルだ。
重松氏は巻末の「四度目の春を前に-文庫版あとがきにかえて」で、2014年暮れに取材したときの陸前高田の風景を次のように書いている。
「2011年秋の時点では悲しいほど静かだった町に、絶えることなく工事の音が鳴り響く。自衛隊や警察の車輌が行き交うだけだった国道を、ダンプカーが土埃を舞い上げて駆け抜ける。どこも大規模な工事だった。文字どおりゼロからつくりあげているのだというのが、まざまざとわかる。
…もしかしたら、いまの陸前高田は、『復旧』はもちろん、『復興』をも超えて、ふるさとの『創造』の段階に足を踏み入れているのかもしれない。
…『町』の時計が前へ前へと進んでいく一方で、『ひと』の時計は行きつ戻りつを繰り返す。それを忘れるな、と自戒した。書き手として自分が言葉を尽くして伝えるべきものは、『町』と『ひと』のどちらなのか――わかっているよな、と肝に銘じた」
重松氏はまた、「単行本版のときは見過ごしていたことに気がついた。…『目処』という言葉が、驚くほど数多く用いられていたのだ。…それは書き手として恥じ入るべき話である。…いまだに『目処』すら立たない原発事故など幾つもの事柄に、あらためてやりきれなさや憤りがつのらないか? 」と書いている。
しかし、記者は「目処」よりも「希望」が頻繁に出てくるのに戸惑いを覚えた。タイトルからして「希望の地図」だから多いのはやむを得ないが、ざっと数えたら95個もあった。「人々の希望を背負って」「涙と希望の成人式」「希望というのは、未来があるから使える言葉なんだよ」などだ。ページ数は280ページくらいだから、3ページに1回出てくる勘定だ。
さすがに重松氏も自らをとがめたのか。「『希望』の響きや字面が、甘くはないか。軽くはないか。とても怖い。単行本刊行からの三年間で、『希望』という言葉は、こんなにも磨り減らされ、疑われ、色褪せて、時として欺瞞や偽善や選挙活動の小道具にまで貶められたのだから。
もしも題名に冠した『希望』に違和感を覚える方がいらっしゃったら、そして、その違和感が辛い記憶を呼び起こしてしまったり、悲しい思いを生んでしまったりしたなら、書き手として心からお詫びしたい」と書く。
記者も「希望」に違和感を覚えた一人で、「希望」やら「平和」やら手あかにまみれ陳腐化した言葉などむやみやたらに使うものではないと思っている。
重松氏の作品をいま一つ好きになれないのは次の一文に象徴的に表れている。「そのうえで、しかしあえて、改題は行わずに文庫化させていただく。『希望』とは未来に向けての思いである。キツい現在を踏ん張るための底力である。…『希望』はある。絶対にある」――まだ「希望はあるというものでもなく、ないというものでもない」と書いた魯迅のほうが正直だ。
施工は鹿島 日立の見守りシステム付き 東建・日立アーバンのサ高住「グレイプスフェリシティ戸塚」
「グレイプスフェリシティ戸塚」
東京建物と日立アーバンインベストメント(旧・中央商事)は3月1日、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)共同事業第1弾「グレイプスフェリシティ戸塚」を開業した。施工は鹿島建設で、大手介護事業者ツクイが生活支援サービスを行い、日立製作所が開発した見守りシステムが採用される。
入居者をサポートするコンシェルジュが日中常駐し、介護の必要がない人から要介護5まで入居者の要望に応じてパッケージプランが用意されている。居室は分譲仕様の全24タイプ、終身建物賃貸借契約で、入居一時金不要。
開業に先立って26日行われた記者見学会で、東京建物シニアライフサポート・加藤久利社長は「当社のサ高住はこれで7棟目。日立アーバンインベストメントさんとはこれまでマンションの共同事業があるが、サ高住は初めて。日立さんが開発した見守りサービスを採用し、次世代型のサ高住を目指す」と話した。
両社共同事業の第2弾「(仮称)戸塚町361計画」74戸も開発を進めている。竣工は平成27年11月。
物件は、JR東海道本線・横須賀線・湘南新宿ライン・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅から徒歩15分、横浜市戸塚区吉田町字上打越に位置する6階建て全97戸(ほかにデイサービス、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所)。専用面積は19.08~62.02㎡。月額賃料は74,000円~265,000円。管理費は16,500円(浴室あり)・21,500円(浴室なし)。基本サービス費は32.400円(1人入居)・54,000円(2人入居)。食事は3食30日分で48,600円。事業主は東京建物、日立アーバンインベストメント。貸主は東京建物不動産販売。運営受託はツクイ。医療連携は福和会横浜さくらクリニック。設計・監理は日立建設設計。施工は鹿島建設。
1月27日から入居募集を開始しており、南向きや50~60㎡台の全戸をはじめ22戸に申し込みが入っている。
モデルルーム
デイサーピス(左)と介護浴室
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加藤社長はあいさつの中で「日立アーバンインベストメントさんはこれまで戸塚で1,500戸のマンション供給事例がある」と話した。記者は日立アーバンインベストメントを全然知らなかったが、1,500戸も供給していれば知らないはずはないと思った。日立系の中央商事ならよく知っている。桜並木が美しい高台で素晴らしいマンションを分譲したことがあるし、その他も取材している。
ひょっとしたら社名を変更したのではないかと、発表会に出席していた同社不動産営業本部事業開発部部長・服部三次郎氏に聞いたらその通りだった。中央商事が2012年、現社名に社名変更したのを記者が知らなかっただけだ。
そんなことより大事なのは施工が鹿島である点だ。記者はサ高住のことはよく知らないが、施工が鹿島というのはほとんど事例がないのではないかと思う。スーパーゼネコンも少ないはずだ。ましてやゼネコンはオリンピックやら復興やら都市の再開発などビッグプロジェクトに忙しく、利益率の低いマンションやサ高住など受注するはずがない。
そこで、「なぜ鹿島か」とぶしつけな質問をした。服部氏は「敷地は日立系の社宅跡地で、鹿島さんには施設やマンションなどを多く手掛けていただいており、地域住民からも美しい桜並木を壊さないでという要望があったので、実績が豊富な鹿島さんにお願いした」と話した。「コストは? 」と畳み掛けたら「安くはない」と服部氏は笑って答えた。この答えで鹿島の読みも理解した。
日立アーバンインベストメントがこれからどのような事業を展開するか注目したい。
居室内のセンサーなどと組み合わせた日立の見守りシステムもなかなかいい。しかし、この種の技術は日進月歩。いちばんいいのは24時間365日、入居者の健康が管理できることだ。人権問題もあるが、タグを耳などに埋め込むのはどうか。
フェリシティホール(食堂)