三井不動産 物流事業で海外初進出 第一弾 タイ バンコクで2物件
三井不動産は4月26日、タイ三井不動産を通じ、タイ バンコクの2物件の物流施設事業に参画することを決定したと発表した。
共同事業者の「Frasers Property(Thailand)Public Company Limited(以下、Frasers)」の子会社「Frasers Property Industrial (Thailand)Company Limited」と事業契約を締結。2020年に第一期開業予定。
同社グループ初の海外における物流施設事業で、総事業費は2物件合計で53 億タイバーツ(約185億円、1バーツ=3.5円)。同社グループの事業シェアは49%。Frasers社ははタイ最大級の財閥の一つであるThai Charoen Corporation Groupのグループ会社。
同社は、物流事業を東南アジアでのオフィスビル、商業、住宅、ホテルに次ぐ新たなアセットとして位置づけており、事業展開を拡大する。
「平成の終焉」⇒「平成の時代から令和の時代」変更 国交省「不動産ビジョン2030」
こんな嬉しいことはない。記者は4月2日付記事で「国交省にはデリカシー、リテラシーに欠ける『平成の終焉』をやめていただきたい」と書いたが、昨日発表された問題の「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~」の「おわりに」は「平成の終焉」の文言が消え、「平成の時代から令和の時代を迎えつつあるこの機をとらえて」とあるではないか。
まさか小生のような記者の声を聞き入れてくれたわけではないだろうが、当初の「平成の時代が終焉を迎えつつある」よりは数段勝っていると誰もが思うはずだ。
〝隠蔽文書〟具体的中身示さず 週刊文春 選手村記事は〝大山鳴動鼠一匹〟の類
「週刊文春」5月2日・9日ゴールデンウィーク特大号の記事
「週刊文春」5月2日・9日ゴールデンウィーク特大号が報じた「五輪選手村マンション1500億円値引き 小池百合子隠蔽文書を入手」という賑々しい見出しの記事を読んだ。
ノンフィクション作家・清武英利氏とライターの小野悠史氏と同誌取材班が6ページにわたってまとめたもので、これまで東京都が公表してこなかった選手村用地売却に関する不動産鑑定会社による「調査報告書」の全文119ページを独自入手したとある。入手先は「(大幅値引きに)強い疑問を感じた」選手村事業関係者だとしている。
つい一昨日(23日)、メディア向けの分譲概要発表会があったばかりのタイミングの良さだ。何が飛び出すか興味津々ではあったが、読む前は、不動産鑑定のプロが作成した「調査報告書」に瑕疵など一点もなく、同紙が指摘する〝のり弁〟の部分が公表されても、不動産鑑定手法に疑義を挟む余地などないという確信めいたものがあった。
記事は、〝のり弁〟部分について「デベロッパーが儲け過ぎだと疑われたり、マンション分譲の際に不利になりそうな点を隠している」と指摘はしているものの、それが何を指すのか具体的には書かれていない。
この核心があいまいにされているので、週刊紙の常とう手段の〝見出しで釣る〟〝大山鳴動して鼠一匹〟の類の記事そのものと言わざるを得ない。(第2弾、3弾があるのか)
記事を読んでも〝疑惑〟は深まるが、消化不良に終わる可能性のほうが高いのではないか。以下、記事を読んだ率直な感想・意見を述べる。
◇ ◆ ◇
まず、記事全体が下品であるということだ。ノンフィクション作家の清武英利氏の名前をどこかで聞いたような気がしたので調べたら、やはりあの読売巨人軍の球団代表だった。いつからノンフィクション作家に転向されたのか知らないが、ノンフィクションの〝巨人〟佐野眞一氏も下品な「週刊朝日」の記事と剽窃で糾弾されたのを思い出した。
かくいう記者も性格丸出しの下品な記事を書くが、〝記事はラブレター〟-〝愛〟を記事に込める。だから、多少ひどいことを書いても〝あのバカ記者が書いたのだから〟と目をつぶってもらえていると勝手に解釈している。でなければ年間数十万件のアクセスがあるわけがない。
記事中に頻繁に登場する事業関係者、不動産業者、告発者、都幹部は全て匿名だ。名前が公表されたら都合が悪いのだろうが、記事の影響度を考えれば堂々と名乗るべきだ。匿名を条件に不確かなことを公言するのは卑怯だ。何をしゃべってもいい自由はまだわが国にはあるはずだ。
極めて重大で、かつ悔しかったのは「素人には理解困難な開発法」の記事部分だった。
記者も取材中に「不動産鑑定書」ではなく「報告書」にどうしてなっているのか不思議に思った。
なぜそうなったのかは、開発規模が大きく、オリンピック選手村に利用されるなどの特殊要因があるために、「不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査を行うことができる」(国交省ガイドライン)に添ったものと思われるが、「報告書」は「意見を述べたもの」という解釈、つまり不動産鑑定士は法律に問われる責任はなく、報告書の内容を是とした都の「保留床等処分運営委員会」の決定こそが全てになるのかどうかということだ。記者も分からない。疑問のままだ。
そして、事業関係者が「数字的にいくらでも評価額を操作できて、かつ素人には理解困難な開発法というやり方だけで価格を決定しています」とコメントしている部分は、不動産鑑定の法律そのものを否定する重大発言だと思う。この事業関係者も〝素人〟と判断するが、〝評価額を操作〟できるのが鑑定士なら、そもそもそんな資格などないほうがいいではないか。
一つだけ、よくぞ書いてくれたという部分もある。「敷地譲渡契約締結後、東京都の事由により事業計画を変更する場合及び特定建築者が応募時に提案した資金計画に比べ著しく収益増となることが明らかとなった場合は、敷地譲渡金額について協議するものとします」という譲渡契約書を引用し、この「特別条項」を行使すべきと書いている部分だ。
これには賛成だ。記者は記事にも書いたが、「HARUMI FLAG」はレガシーマンションにふさわしい基本性能・設備仕様の高さだと判断した。ありえないことだが、立地条件、土地値の安さ、戸数の多さなどを考慮せずそのレベルだけを評価すればいまの坪300万円台、400万円台の物件よりはるかに優れていると思う。しかし、土地代の安さを価格に反映しないのは納得できない。
文春記事にも出てくる鹿島建設「勝どき ザ・タワー」、住友不動産「ドゥ・トゥール」、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス晴海タワーズ」、三井不動産レジデンシャル「パーク・タワー晴海」なども記事を添付したので読んで頂きたい。これらのマンションと比較しても、今回の「HARUMI FLAG」は質では負けないと断言できる。
文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価300万円か 「HARUMI FLAG」(2019/4/24)
「HARUMI FLAG」土地代の安さ 価格に反映を 坪250万円が妥当と考えるが…(2019/4/21)
三井レジ他「パークタワー晴海」「有明」と競合必至 価格はいくらになるか(2017/4/26)
「驚きの次元が異なる」鹿島建設他「勝どきザ・タワー」(2014/4/18)
住友不動産 晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」来春分譲へ(2013/11/22)
UDS 「旅館」文化をデザイン・サービスに生かす「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」開業
「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」外観
UDSは4月23日、日本特有の「旅館」のよさを取り込んだホテル「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」を5月8日に開業するのに先立ちメディアに公開した。
「旅館」には日本のおもてなし文化が凝縮されていることから、客室の間取りやデザイン、サービスなどを現在の宿泊者ニーズや環境に合わせて編集した旅館。インバウンドも含めた観光マーケットにおける新たな選択肢を提案している。
エントランスには数寄屋門や四季を感じる庭園、手水鉢など伝統的な和のしつらえを取り入れ、ヒノキやスギなどの白木の無垢材、和紙、漆を模した天板などの「和」の素材で、「陰影」を意識した日本らしい繊細な表現を随所に施している。最上階の18階大浴場には、箱根「小田急 山のホテル」の自家温泉「芦ノ湖温泉 つつじの湯」から運ぶ温泉露天風呂を設けている。
客室は、雪見窓を多用し視線を低く集め空間全体に広がりを感じさせるデザインとし、コンパクトな空間でも快適に過ごせる工夫を凝らしている。
レストラン「夏下冬上」には、福岡県産の全長8mのイチョウの木をカウンターに採用。その上部は網代(あじろ)編みとし、テーブル上部にはスギの無垢材を渡すなど本物の素材を使用しているのが特徴。
物件は、東京メトロ副都心線・東京メトロ丸ノ内線新宿三丁目駅から徒歩7分、新宿区新宿5丁目に位置する敷地面積約1,034㎡、18階建て延床面積約5,521㎡全193室。客室は12㎡から51㎡までの7タイプ。宿泊料金はセミダブル(12㎡)9,000円から。開発事業主は住協。所有者はJA三井リース建物。企画・設計・運営はUDS。
チェックインカウンター
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同社が運営する銀座の「MUJI HOTEL GINZA」を先に見学した際、デザインがいいと思ったので、今回のホテルも見学させていただいた。
「旅館」は嫌いではないが、何しろサービスがひどい。年をとってからほとんど利用しなくなった。朝早く叩き起こされ、強制的に食事を取らされ、10時には叩き出される(ずいぶん改善されているはずだが)。
このホテルは「旅館」のデザインなどいいところを取り込んでいる。客室は狭いが、これは最近の宿泊客のニーズの反映なのだろう。
レストラン「夏下冬上」がいい。8mもあるイチョウのカウンターなど最近はほとんど見なくなった。値段は200万円くらいかそれ以上するのではないか。ほんものの網代編みもいい。
陰影もテーマの一つのようで、デザインを担当した同社マネージャー・瓜生一雄氏によると、谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」は建築家、デザイナーの必読書だそうだ。三井不動産の「日本橋」のホテルには昔の体裁のその本が客室に置いてあった。
レストラン「夏下冬上」
サスティナビリティ特化 東建 ベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures」始動
左から自然電力 風力・水力・バイオマス事業部長・花吉哲芝氏、ボーダレス・ジャパン副社長・鈴木雅剛氏、ウィファブリック社長・福屋剛氏、東京建物専務執行役員・福居賢悟氏、TBM代表取締役CEO・山﨑敦義氏、ユーグレナ特命担当室テクニカルディレクター・村花宏史氏、DG TAKANO代表取締役・高野雅彰氏
東京建物は4月19日、同社が運営するコワーキング・スペースとカンファレンススペースからなる「City Lab TOKYO(シティラボ東京)」で、サスティナビリティ特化型ベンチャー6 社を発起人とするベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」を始動したと発表した。
発起人は、サステイナビリティへの貢献を事業の中核としているTBM、ウィファブリック、ユーグレナ、ボーダレス・ジャパン、DG TAKANO、自然電力の6社。4月19日から「City Lab TOKYO」を拠点に活動を展開していく。
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先月は三菱地所の「アクセラレータープログラムDemo Day」を取材した。訳の分からないことばかりだったが、それだけにワクワクさせられ、とても楽しい時間を過ごさせてもらった。
今回は、他の取材もあり場所を間違ったため、途中からの取材となった。会場に着いたときはユーグレナの村花氏のプレゼンだった。この会社は創業当時から注目していたが、わずか15年で東証に上場し、売上高は100億円を超える。ミドリムシ(ユーグレナ)をバイオに活用するなどという奇想天外な発想が面白い。
次のボーダレス・ジャパンの田口氏はいきなりプロジェクターに「資本主義」の文字を大写しした。マルクス・ガブリエル氏のような難解な哲学論でもぶつのかと思ったら、資本主義社会が抱える様々な社会課題を解決するという強いメッセージだった。田口氏はまた「当社は23の事業を展開しており、1つ紹介するのに5分はかかる」と話したように、ぶっ通しで2時間くらい話してもらってもよかった。
DG TAKANOの高野氏の話がまた面白かった。1000分の2の誤差しか許されない父親の金属加工技術を生かし、洗浄力を高めながら95%の節水を実現したノズルを開発したというではないか。バーチャル・ウォーターという考えがある。節水ノズルとバーチャル・ウォーターを融合させたら革命が起きる。記者が投資家だったらこの会社に投資する。
自然電力の花吉氏の話も説得力があった。地産地消の100%再生可能エネルギー事業を展開しており、社員約200人のうち40~50人は外国人の多国籍企業だという。こういう会社が社会を変えるのだろう。座布団3枚!
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東建へ。いま企業はESG、SDGsの取り組みに懸命だ。今回の「City Lab Ventures」はサスティナビリティに特化しているのがいい。三菱地所は先にスタートアップ企業やベンチャーキャピタルへの出資額が100億円に達したと発表した。負けないよう頑張ってほしい。
一つ問題もある。配布された資料に「CLT」があった。えっと思った。「CLT」は「クロス・ラミネーティッド・ティンバー(Cross-Laminated-Timber)」しか知らなかった。同社はそうではなく「City Lab TOKYO」の略だそうだ。今後の活動次第だが、国家事業の木造の「CLT」に飲み込まれるのは必至だ。存在感を示すためにもどんどん情報を発信してほしい。(先の三菱地所のイベントは酒のふるまいもあった)
無限の可能性秘める 三菱地所「アクセラレータープログラムDemo Day」(2019/3/26)
〝安心が途切れないシームレスな住宅〟 旭化成ホームズ 要介護向けサ高住に参入
旭化成ホームズは4月19日、「要介護期」を対象としたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「Village(ヴィラージュ)リーシュ」シリーズを立ち上げたと発表した。これまで展開してきた健常期からフレイル(虚弱)期のシニア向け賃貸住宅「へーベルVillage(ヴィレッジ)」シリーズが好調に推移しており、健康や家族の状況に応じて〝安心が途切れないシームレスな住宅〟を提供するのが狙い。
シニア・中高層事業推進本部長・田辺弘之氏は、「2005年に始めた自立型の『へーベルVillage』は35棟464戸を運営しており、入居率は95%超に達している。他にないコミュニティラウンジ、相談室などの共用部を備えているのが評価されている。2025年度までに500棟6,000戸に拡大する。『Village リーシュ』は、健康や家族の状況に応じて〝安心が途切れないシームレスな住宅〟を提供できるよう訪問看護・居宅介護支援事業所を併設する」などと話した。
第一号の「Village リーシュ上石神井」は、西武新宿線上石神井駅から徒歩9分の3階建て53戸。専用面積は18.90~21.68㎡。18.99㎡の月額料金は254,000円(家賃130,000円、共益費39,000円、生活支援サービス費35,000円、食費50,000円)。事業主は4月1日付で設立した同社100%出資の子会社「リーシュライフケア」。運営委託はやさしい手。今年10月に開業する。
◇ ◆ ◇
自立型シニア向け賃貸「ヘーベルVillage」が好調に推移していることから、介護付きサ高住への参入は予想されたことだ。
記者も見学した「ヘーベルVillage」は、田辺氏も話したように特別な設備仕様が施されているわけではないが、爆発的に増やしているのは、他の賃貸住宅やサ高住にはないニーズにしっかり応えているからだろう。
逆に言えば、圧倒的多数派の自立型高齢者が入居をためらう玉石混交のサ高住のあり方が問われている。国交省のサ高住に関する有識者による懇談会がどのような方向を示すか注目したいし、〝入居を拒否しない〟セーフティネット住宅についても〝貧困ビジネス〟にならないよう注視する必要がある。
サ高住は老人福祉法の「施設」の受け皿・代替えになるか 国交省・懇談会(2019/3/11)
ニッチからコアへ 旭化成ホームズ シニア向け賃貸「ヘーベルVillage」受注加速(2018/8/24)
料理をもっと楽しく 栗原はるみプロデュース「harumi's kitchen」トクラス発売
可動式ワゴンについて説明する栗原氏(栗原さんはそんな服を着て調理されるのか)
トクラスは4月17日、料理家・栗原はるみ氏がプロデュースした「harumi's kitchen」発売記念イベントを開催した。同社とゆとりの空間、東邦ガスの3社が〝料理をもっと楽しく〟をコンセプトに共同開発した商品で、キャスター付きのワークトップワゴン、奥行き70cmの人造大理石カウンター、好みのものが置ける棚などが特徴。4月22日から発売する。
イベントに出席した栗原氏は「わたしは家を6回住み替え、キッチンは11回模様替えしました。一日中いますから使い勝手がいいだけではだめで、シンプルなのも問題がある。両方を兼ね備えた楽しく過ごせるようにすることが大切」「白と紺が好きで、今日の衣服も白と紺。キッチン収納扉もややブルー掛った紺にしましたし、カウンターはグレーに近い人造大理石ですが、汚れが目立たないからいいかも。子ども用の椅子も用意しました」などと話した。
企画担当の東邦ガスリベナスショールーム所長・久米むなみ氏は「当社はリフォームを強化する取り組みを行っており、食を支えるキッチンが重要だと考え、平成20年からCMなどに出ていただいている栗原さんに相談したらとんとん拍子に企画が進みました」と開発の経緯について話した。
開発担当のトクラス経営企画部商品事業戦略マネージャー・緒方彰氏は「当社は旧ヤマハ時代、キッチンメーカーとして1976年にわが国で初めて人造大理石カウンターキッチンを発売した実績がある。今回の新商品をプロモーションしたら97%の方にワゴンを欲しいと仰っていただいた」と語った。
また、ユーザーに情報を発信するコミュニティ組織「harumi's kitchen ambassador」について、同部副部長・水野宇多子氏は「女性の管理職比率、働き方改革では時間を単位に目標を掲げますが、会社でも家庭でも『もっと楽しむ』という『仕事の質』を上げることが人生を豊かにし、世の中の発展にもつながる」「まだまだ古い体質の残るこの建築業界で女性がリーダーシップをとる面白いWAVEになれば」などと説明した。
メインキッチンの標準仕様は幅255cm×奥行70cm×高さ85cm。価格は1,598,000円(税別)。食洗器付きは1,731,600円(税別)。
左から緒方氏、水野氏、久米氏、栗原氏
◇ ◆ ◇
女房を亡くしたために約10年間、小さい子ども2人を育て、少なくとも食事だけはほぼ完ぺきにこなしたと思っている記者は、この日のイベントを楽しみにしていた。栗原氏がいかに楽しく料理をしているかはよく伝わってきた。何事も楽しくなければつまらない。揚げ物は苦手だったが、鰹節を削って利尻昆布でタイの潮汁を作ってごらんなさい。アップルパイもよくつくった。
しかし、その一方で、調理が楽しくならない現実をずっと考え続けた。マンションも戸建ても普通の家庭が持てるのは20坪から30坪の住宅だ。キッチンの広さも3畳大から広くても5畳大あるかどうかだ。
油がパチパチと音を立て、湯が沸騰しているキッチンは戦場と化す。記者の経験からいって広さ3畳大では夫婦や子どもと一緒に調理するのは難しい。危ない。そこにはゴミ箱があり古新聞のラックがあり、ビールケースなどもある。ワゴンは便利だが、すぐ物置になる。住宅のなかでもっとも冷たいのはキッチンではないか。
なので、「夫婦と子ども1~2人の理想のキッチンスペースはどれくらいか」と聞いたら、緒方氏は「キッチン・ダイニング合わせて18畳大を想定している」と回答した。この広さを確保できる住宅に住む家庭はどれくらいあるだろうか。多くはリビングスペースを含めてこれくらいではないか。
もう一つ、記者は「楽しく」料理するためには、中華は絶対ガスがいいし、安全性を考えるとIHもまた必須ではないか考えるので、「ハイブリッドの商品はないか」と聞いたら、「(需要がないためか)15年前にやめた」(緒方氏)ということだった。ハイブリッドはそれだけ什器が必要だが、あおりがうまくいったせいでチャーハンやホイコーローがプロ並みにできたときの嬉しさは何にも代え難い。失敗したらしたで〝今度こそ成功するぞ〟という闘志も湧く。
さらに追加。最近のキッチンカウンターは水返しがなくなった。あっても床が水浸しになることがあるのになくして大丈夫か。解せない。
言いたいことはほかにもあるがこの辺でやめておく。「料理を楽しく」というアプローチはとてもいいと思う。住設メーカーもデベロッパーもハウスメーカーもそのようなキッチンの開発をどんどん進めてほしい。
「この棚は奥行きがないから好みのものが置けるんです。大きいと鍋などを置いてしまう」(なるほど、これはいい)
可動式ワゴン(記者も物販店で買って重宝したが、そのうちに物置になった)
わが国初 既存ビル含め非常時も電力安定供給 プラントは住宅300戸分 三井不・東ガス
左から内田氏、菰田氏(日本橋室町三井タワーで)
三井不動産と東京ガスは4月15日、日本初となる既存ビルを含む日本橋室町周辺地域に電気と熱を安定供給する「日本橋スマートエネルギープロジェクト」を開始したと発表した。
プロジェクトは、平常時はもちろん、非常時でもエネルギー供給が可能なエネルギーレジリエンス向上や省エネ・省CO2を達成するエコフレンドリーな街づくりを実現し、災害に強く、国際競争力の高い街・日本橋を目指すもの。
共同で設立した三井不動産TGスマートエナジー(持ち株比率三井70%、東ガス30%)を通じ、このほど竣工した「日本橋室町三井タワー」内の「日本橋エネルギーセンター」にプラントを設置して稼働させた。
都市ガスを活用した分散型電源である大型CGS(ガスコジェネレーションシステム)と系統東京電力による電源の多重化を実現し、日本初の既存ビルを含めた周辺地域へ電力を供給し、CGSが生む発電時の排熱とCGSが生む発電時の廃熱と高効率熱源設備を活用した熱供給の効率化を図り、供給エリアのCO2を約30%削減する。広域停電時にも建物のBCP(Business Continuity Plan)に必要な電気の供給(年間ピークの50%)が可能。
両社は今後、豊洲(2020年竣工予定)など他エリアでも連携し、国内外に向けて発信できる「スマートエネルギー事業」の先進モデルを構築していく。
会見に臨んだ三井不動産・菰田正信社長は、「これまでも『柏の葉』『日本橋再生』『ミッドタウン』などのプロジェクトでもスマートシティの取り組みを進めてきたが、今回、東京ガスさんと共同で、災害時でも安定的に電力を供給し、地球環境へも貢献し、都市防災力を強化し環境性能の向上につなげる。経年優化の街づくりにもSGDsの理念にもかなうもの」と挨拶した。
また、東京ガス・内田高史社長は、「今回のプロジェクトに採用する当社の中圧ガス導管は、阪神・淡路や東日本大震災でもほとんど影響を受けなかった。地域の既存ビルにも電力を供給するのは当社も初の試みだが、エネルギーレジリエンス向上と省エネ・省CO2の取り組みを今後も強化していく」と話した。
「日本橋室町三井タワー」は、区域面積約2.1haの「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業」によって建設された地上26階建て・地下3階建て延べ床面積約168,000㎡。3月38日に竣工した。テナントは全て決まっている。
プラントは約8,000㎡。供給範囲は日本橋室町・本町地区の一部約150,000m、延床面積約1,000,000m²。予定電力供給能力は一般家庭約14,000戸に供給するのと同じ約4.3万kW。冷熱は約110GJ/h、温熱は約60GJ/h。ガスエンジンは7,800kW×3台。廃熱ボイラは4t/h×3台。
供給エリア
CGS(ガスコジェネレーションシステム)プラント
◇ ◆ ◇
1時間近くにわたって難しい説明を受けた。記者はちんぷんかんぷん。しかし、原理そのものは、愛を与え奪い分かち合う、時には自家発電も行う男女関係とよく似ている。中学の理科で学んだのと一緒。熱を与えたり奪ったり、冷ましたりするもので、水力やら火力、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーを電力に変換することに変わりはないと理解した。
それより記者が驚いたのはプラント設備の大きさだ。地下3階の心臓部といえるCGSと地下二階の最新のICT技術を導入した中央監視室などプラント全体の面積は約8,000㎡もある。
ただ広いだけではない。地下3階は天井高が約8mだから、一般的なマンションのリビング天井高の3層分だ。つまり8,000㎡を容積に換算すると約24,000㎡にもなり、これを一般的な専有面積70㎡のマンションに置き換えると300戸近い大規模マンションになる。
プラントはもちろん容積不算入で、国土交通省、経済産業省、東京都からの補助も受けている。東京ガス・内田社長は「補助金がなければ、既存のビルのオーナーが(持ち出しが増えるので)納得したかどうか」と話した。
どうして太陽光や地熱やら再生可能エネルギーも採用しなかったのかという疑問も湧くが、関係者によると検討はしたが、安定的に電力を供給することを優先して決断したという。
もう一つ、よく分かったようでわからないのがプラントの災害対策。「壺型潜水艦構造」により、地震などの揺れの影響が小さい地階3回に設置し、しかも浸水を防ぐためにプラント全体をすっぽりと包み、出入り口には22トンもの水圧に耐えられる厚さ約30センチの放水扉を施しているという。どうして福島原発にはなかったのか。
「日本橋室町三井タワー」
中央監視室
東急電鉄・東急不 渋谷エリア最高峰「渋谷スクランブルスクエア 第Ⅰ期」11月に開業
「渋谷スクランブルスクエア」完成予想図
東京急行電鉄と東急不動産は4月10日、渋谷エリアの再開発プロジェクトの目玉である「渋谷スクランブルスクエア 第Ⅰ期(東棟)」、「渋谷フクラス」内の「東急プラザ渋谷」、「渋谷駅桜丘口地区再開発」に関する最新情報を公表した。
「渋谷スクランブルスクエア」は、東京急行電鉄、東日本旅客鉄道、東京地下鉄が事業主で、デザインアーキテクトは日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、SANAA事務所。運営会社は渋谷スクランブルスクエア(東京急行電鉄、東日本旅客鉄道、東京地下鉄の3社共同出資)。設計は渋谷駅周辺整備計画共同企業体(日建設計、東急設計コンサルタント、JR東日本建築設計、メトロ開発)。開業は第I期(東棟)が2019年11月、第II期(中央棟・西棟)が2027年度。
「第I期」は渋谷エリアでは最高峰となる高さ約230mの地下7階、地上47階建て延べ床面積は約181,000㎡。14階・45階~屋上の展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」、17階~45階のオフィス、15階の産業交流施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」、地下2階~14階の商業施設などから構成される。2019年11月に開業する。
「SHIBUYA SKY」は、世界的な注目を集めるクリエイティブ集団・ライゾマティクスを起用。日本最大級の屋上展望空間(約2,500㎡)など既存の展望施設の概念を超える新しい体験を提供する。
渋谷最大級の広さを誇るオフィスの総賃貸面積は約73,000㎡で、全27フロアのリーシングが完了している。
「SHIBUYA QWS」は、多様な人が交差・交流し、社会価値につながる種をうみだす会員制の施設。2019年7月から会員募集を開始する。
施設の開業に伴い、エレベーターやエスカレーターにより地下やデッキから地上に人々を誘導する歩行者動線「アーバン・コア」を整備する。
「渋谷フクラス」は18階建て延べ床面積約58,970㎡。「東急プラザ渋谷」は2~8階、17、18階部分。コンセプトは〝本物・本質的・普遍的なものの良さ〟を大切にする意味を込めた「MELLOW LIFE(メロウ ライフ)」で、商環境デザイナーにGLAMOROUS(グラマラス)の森田恭通氏を起用。2019年12月に開業する。
2023年度竣工予定の「渋谷駅桜丘口地区」は59棟の解体工事が始まった。敷地面積約16,970㎡、延床面積約254,830㎡で、2023年度に竣工する予定。
両社は渋谷エリアで8つの再開発プロジェクトに関わっており、コンセプトに「エンタテイメントシティSHIBUYA」を掲げ、世界を牽引する新しいビジネスやカルチャーを発信するステージの実現を目指している。
現在の空撮写真
2027年ころの完成予想図
三井不動産 最寄り駅も新国立競技場も徒歩1分のホテル「神宮外苑」11月開業
「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」
三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは4月9日、新国立競技場に近接する「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」を2019年11月22日(金)に開業し、本日4月9日から予約を開始したと発表した。
同ホテルは、都営大江戸線国立競技場駅から徒歩1分、JR中央・総武線千駄ヶ谷駅から徒歩5分の13階建て362室。客室は平均約25㎡。宿泊料金は22㎡で1.8万円、24.7㎡のツインで2万円。の現在建設中の新国立競技場からは徒歩1分。主な設備はレストラン・ベーカリーショップ(1 階)、 大浴場・フィットネスジム・ラウンジ(2 階)、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(2 階)、屋上テラス(13 階)など。
「三井ガーデンホテルズ」のプレミアシリーズとして全国で5施設目、都内では3施設目となる。「Japanese New Vintage」をデザインコンセプトとし、木や石などの自然素材を外観や客室・共用スペース内の壁面などに多用しているほか、自然をモチーフにしたアート作品を館内の随所に配し、周辺の緑やビル群の眺望を楽しめるよう全客室にバルコニーを設置した。
1階には約200㎡の自然光が差し込むロビーを、2 階には大浴場のほかフィットネスジムや多目的室を設置。建物内のテナント区画(2 階)には「暗闇のソーシャルエンターテイメント」としてダイアログ・イン・ザ・ダークの常設会場が出店を予定している。
◇ ◆ ◇
記者はRBA野球大会の取材で神宮外苑軟式野球場によく行ったが、困ったのは取材を終えてシャワーを浴びることができるホテルが全く周辺になかったことだ。
宿泊料金が高いか安いかよくわからないが、地方からの野球・スポーツ観戦には絶好の立地だ。もちろんアスリートも利用できる。いつも国立競技場駅を利用しているのに、このホテルは全く気が付かなかった。