分譲戸建て工事額・坪単価・広さ 長野県が1位 平成30年度 国交省住宅着工統計から
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別表は、国土交通省の住宅着工統計から平成30年度の分譲戸建て住宅の都道府県別戸数、1戸当たり工事予定額、坪単価、1戸当たり広さを調べ一覧にしたものだ。
この表から何が分かるか。まず、着工戸数。戸数が多いのはトップの東京都をはじめ神奈川、埼玉、愛知、千葉、大阪の順。逆に少ないのは鳥取、島根、徳島、高知、長崎の順。
戸数が多いのは大都市圏であり、少ないのは人口の少ない県であるのは当然だが、宮城県、広島県、熊本県などが比較的多いのは自然災害の影響か。
一戸当たり工事予定額は全国平均で1,564万円(坪単価49.8万円)となっており、多くの都道府県は平均値の前後の数値になっている。しかし、長野県は2,109万円と突出しており、隣の山梨県が1,933万円で2位。台風対策のためなのか高知県、沖縄県、三重県が1,800万円を超え、北海道、島根県なども比較的高い。低いのは宮崎県の1,383万円で、全国で唯一1,400万円を割っている。以下、福井県、滋賀県、和歌山県、石川県などが続く。
坪単価は全国平均で49.8万円。トップは長野県の60.4万円で、以下、沖縄県、高知県、山梨県などが50万円台の後半。低いのは福井県の41.6万円で、石川、滋賀県、群馬県などが続く。長野と福井では実に18.8万円の差がある。
一戸当たりの広さでは、全国平均は31.4坪。全国でもっとも広いのは長野県の34.9坪。以下、岐阜県、富山県、三重県、福井県、石川県が続く。狭いのはもちろん地価が高い東京の28.6坪で、京都府、青森県、神奈川県などが30坪を切っている。長野と東京の差は6.3坪。12畳大以上だ。
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面白いのは長野県だ。どうして住宅にお金を掛けるのか理由は分からないが、豪雪対策か地震対策か、健康住宅が浸透しているためか、それとも「海こそなけれ物さわに 万(よろ)ず足らわぬ事ぞなき」の長野県歌を知らない人はいないという勤勉で自立心が強く、反中央集権的県民性によるのか。少し昔だが、学校の図書館には「資本論」が備えられていたそうだ。
長野県宅地建物取引業協会事務局に聞いた。「個人的な見解ですが、土地が30坪の分譲戸建てなどはほとんどなく、車がないと動けない山岳部も多く、寒冷地でもあり、車が置けるスペースや防寒対策に費用をかけたりしているからではないか。飯田グループ? ほとんど聞きません。圧倒的に多いのは大手のハウスメーカー」とのことだった。
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もう一つ、分譲戸建てのガリバー企業、飯田グループホールディングスの影響が全国の分譲戸建て市場に大きな影響を及ぼしていると考えざるを得ない。
同社グループの2019年3月期の売上計上戸数は44,677戸で、単純比較はできないにしろ2018年度の住宅着工戸数の実に30.9%を占める。1戸当たり価格は2,678万円。土地代と建物価格の割合は分からないが、建物価格は坪30万円台のはずで、圧倒的な価格優位性を誇っている。
参考までに同社グループの空白区を紹介すると、富山県、鳥取県、島根県、高知県、長崎県、宮崎県の6件のみ。
ヒートショック予備軍 最多は千葉・宮崎 最少は長野 リンナイが都道府県ランキング(2018/11/3)
ポラス2019年3月期 売上高2,163億円 分譲戸建て契約2,654棟 ともに過去最高
中内氏
ポラスグループは6月24日、2019年3月期決算を発表。売上高は2,163億円(前年比8.4%増)、営業利益は129億円(同5.2%増)、経常利益は137億円(同7.2%減)、当期純利益は38億円(同9.7%減)となり、売上高は過去最高、2,000億円を初めて突破した。
セグメント別では、分譲住宅契約が2,654棟(同15.4%増)と過去最高となり、マンションも「浦和美園」や「新越谷」が好調で、契約戸数は468戸(同82.8%増)とこちらも過去最高。
戸建て注文住宅の契約棟数は576棟(同15.7%減)となり、分譲と注文の合計契約棟数は3,230棟(同8.3%増)となった。
プレカット事業などを手掛けるポラテックは、5工場体制による生産量の拡大や木造非住宅の強化により、売上高は810億円(同6.6%増)となり3期連続で過去最高を更新。
その他、仲介手数料は23億円(同7.6%増)、リフォーム受注高は79億円(同8.3%増)。
2020年3月期の連結業績予想は、売上高2,250億円(前年比4.0%増)、経常利益150億円(同9.0%増)としている。
発表会に臨んだ中内晃次郎・ポラスグループ代表は「2019年は創業50周年の記念すべき年であり、次の50年を誇りある未来にすべく『自他共存』の経営を推進し、圧倒的に美しい街づくり、デザイン・技術に優れた住まいの提案によるエリアシェアの強化を進める」と語った。
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記者が驚いたのは、品川典久・中央住宅社長が、総じて好調に推移している分譲住宅について語った中で、「江東、墨田などの城東エリアは、1宅地12、3坪の4,000万円を切る価格ありきの市場の中で苦戦している。数年前の年間140~150戸をピークに販売棟数は減少しており、昨年度は78棟に落ち込んだ。深刻な状況。より豊かな暮らしを提案する当社の経営理念からしてそのような戸建てとは競争したくないが、対策を考えないといけない」と話したことだ。
記者は、昭和50年代から60年代の前半にかけて徹底してミニ開発を批判する記事を書いた。定義は難しいが、概ね一宅地が30坪以下の数棟現場の建売住宅とした。
当時、都内の各区は開発指導要綱でミニ開発を排除する動きを示していたが、ひどい事例では、例えば60坪の土地に開発申請時は長屋として申請し、完成後は切り離した実質一宅地15坪の建売住宅がかなり供給された。ミニ開発のほとんどが建基法違反だった。そのような住宅を専門に分譲する業者が暗躍した。
事態を重く見た都市銀行などは一宅地30坪未満の戸建て分譲に対しては融資をしない措置を取った。
その後、時代は変わった。違反建築物はかなり減ったはずで、都市型戸建てに都市型3階建ても加わり、平成14年の都市計画法の改正により、自治体が面的な規制により最低面積を定めやすくなった背景もあり、一概に狭小住宅を「悪」と言えない市場(住宅は「幸せ」を売る商売であり、消費者が支持するものを「悪」と決めつけるのは難しい)が形成されているのも事実だ。
それでも、この問題は等閑視できない。どうして一宅地12、3坪の分譲が可能なのか、各区の対応はどうなっているのか、銀行融資はどうなっているのかなど時間をかけてでも取材して記事にしたい。
品川社長、そんな家とも呼べないような戸建てと競争などしないでいただきたい。きれいさっぱりそんなエリアと決別すべきだと思う。自治体の首長は、街のポテンシャルを引き下げるような戸建てをどうして放置しているのか。銀行はどうなっているのか。
品川氏
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決算発表会は記者懇親会とセットで行われているもので、記者も末席を汚している。懇親会ではいつも同社グループの料亭のような飲食店がつくった1500キロカロリーはありそうな弁当が配布され、酒も提供される。
記者はカロリーを気にしながら、きれいな女性からビールを勧められて断るのも失礼だと思い、一生懸命食べかつ飲んでいたら突然、「牧田さん、何かありませんか」と同社の広報マンから声がかかった。
一瞬ひるんだが、ただで弁当を貰いビールを飲ませてもらったのに何もしゃべらなければ、もう二度と声がかからないのではと思い、同社のマンションと戸建てについてひとこと話した。
マンションについては、「ルピアグランデ浦和美園」の商品企画を褒め、戸建てでは、数年前に三井不動産レジデンシャルが分譲してよく売れた「ファインコート浦和美園」の施工がポラテックであり、三井レジは「施工がポラスグループ」であることをパンフレットで大々的に扱ったことを紹介した。
広報マンは「うちの物件の取材をたくさんやってください」とまぜっかえしたので、「それは違う。ポラスの物件の取材ばかりしていたら、他社の商品企画がわからない。たくさんみて比較検討することが大事」だと言い返してやった。
どうもハウスメーカー担当の記者の方は、デベロッパーのマンションや戸建てを取材しない。これじゃ正確な市場を把握できないと思う。最近の分譲戸建てのリビング天井高が高くなってきたのは、間違いなくポラスの影響だと思う。
建築基準不適合物件は約3,800棟 前回発表より倍増 大和ハウス工業
大和ハウス工業は6月18日、建築基準の不適合問題に関する外部委員会の「調査報告書」を発表し、前回4月12日に公表した数値にデータ漏れがあり再調査した結果、建築基準不適合物件は戸建て・賃貸を含め追加棟数は1,885棟にのぼり、前回発表時の1,878棟と合わせ合計3,763棟に増加したと訂正。同時に再発防止策を発表した。
外部調査委員会は「調査を進めるなかで、驚きを禁じ得なかったことは、日本を代表するハウスメーカーである大和ハウス工業が、型式適合認定制度の在り方について、あまりにも迂闊に集団的な誤信を起こしてしまった経緯である」「大和ハウス工業は、本件不備により社会的信頼を損なったことを虚心坦懐に受け止めて、今後の改革に活かしていただくことを期待する」としている。
型式適合認定制度の理解・認識不足 大和ハウスの建基法不適合問題 外部調査委報告(2019/6/2)
驚天動地の「週刊住宅」「住宅新報」元編集長・顧問の本多氏のインタビュー記事
あ然、呆然、驚天動地-いかなる言葉でもってしても形容しがたい、もう絶句するしかない、あきれ果ててものも言えない(だから書くのだが)記事がわが業界紙の「週刊住宅」6月17日号に掲載された。8ページ建ての最終面(つまり裏表紙)の書籍紹介コーナートップに、競合紙の「住宅新報」の元編集長で顧問でもある本多信博氏の書籍「認知症にならない暮らし方 百歳住宅」(プラチナ出版社)のおためごかし※の紹介文だけならまだしも、何と全6段の4分の3くらいのスペースを割いて、本人のインタビュー記事を紹介しているのだ。
インタビーで語っている本多氏の発言も聞き捨てならない内容が含まれているのだが、これは後述するとして、よりにもよってお互いライバルと言ってよい業界紙が一方の元編集長・顧問が書いた本をインタビュー付きで、しかも題字下で紹介するなど常識的には考えられないことだ。さらにまた、住宅新報も本多氏も相手を〝格下〟と考えているのかもしれないが、そんな企画記事に無分別にも乗るなんて、狂っているとしか言いようがない。双方が痴呆状態に陥っているのではないか。
例えは適当でないかもしれないが、朝日新聞が読売新聞を、あるいはその逆をヨイショするようなもので、これはもうメディアの自殺行為だ。かつて、東急不動産の金指潔会長が「このままでは生き残れない業界紙」と苦言を呈したのを忘れたか。
こんな紙面を見ると、何だか負け犬がお互いの傷をなめあっている絵図そのものに思えてきて実に不愉快だ。ひょっとしたら両紙は持ちつ持たれつの兄弟紙か。そういえば、住宅新報の元編集長は現在、週刊住宅の記者として記事を書いている。私事だが、小生は同業の記者にはほとんどお友達がいないし、言葉もあまり交わさない。
※おためごかしとは、他人(ここでは本多氏)を持ち上げているように見せかけて実は自分(週刊住宅)の利益をもくろんでいるという意味。そのわけは、プラチナ出版は週刊住宅が破綻したあとに同社の社員らが2017年5月に立ち上げた会社であることからもこの言葉がぴったり。
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「聞き捨てならない」と書いたのは次の部分だ。
本多氏は、「住まいは生活習慣病の源」と持論を述べた後、「認知症を患いづらい住まいとは」という週刊住宅の記者の質問に対して「1年を通じて四季を感じられる住まいである…脳を活発に動かせる環境づくりが重要…その意味からマンションより戸建住宅のほうが認知症になりづらい家作りを実践しやすいと思っている」「認知症になりやすいのは独り暮らし」などと語っている。
さらにまた、積水化学の住宅カンパニーの「認知症の早期発見、重症化予防プロジェクト」を紹介し、「住友林業や東急不動産、東京建物などが高齢者向けの住まいに先導的に取り組んでいる」とも述べている。
「住まいは生活習慣病の源」なのかどうかはよくわからないが、小生の糖尿病は住まいと関係ない。言うまでもないことだが、食生活に問題がある。飲酒によって何かの病気を発症したとしても、やはり住まいとは関係ないはずだ。ただ、劣悪な住環境が生活習慣病を発症する要因になるかもしれないことについては否定しない。
しかし、認知症と住まいを関係づけるのは暴論だ。本人も話しているように認知症発症メカニズムは解明されていない。つまり、分からないのだ。分かっていないことについて勝手にしゃべるのもまた自由で、だからこそそう話しているのだろうが、マンションや戸建てを中心に約40年間取材している小生は承服しかねる。
「マンションより戸建てのほうが認知症になりづらい」とか「認知症になりやすいのは独り暮らし」などと、専門家の疫学的な調査研究を根拠に、したり顔で話すのはやめたほうがいい。
貴殿が「家庭内における役割分担と決まりごとに対する郷愁がシェアハウスの台頭の陰にある」(やや意味不明)と絶賛するシェアハウスはマンション形式が絶対的に多いはずで、だとすればシェアハウスは認知症の巣窟・予備軍にならないのか。圧倒的に独り暮らしが多いサ高住もまた認知症患者を発生させる「先導的役割」を果たすことになりはしないか。認知症発症率はマンションが少ない地方のほうが高いという研究も報告されている。
「このままでは生き残れない業界紙」 東急不動産HD・金指潔会長が苦言(2017/3//9)
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するものWebとの融合・連携 ④(2018/4/5)
住宅リフォーム 今年度からGDP統計に反映 規模は数兆円か
住宅リフォーム推進協議会(代表理事:國井総一郎・ノーリツ社長)の定時総会後の懇親会が6月14日行われ、初めて取材した。勝手が違うし、リフォームのことはよく分からないので早々に退散した。
唯一の成果は、住宅リフォーム統計が今年度からGDPの統計に反映されることだった。
現在、住宅リフォーム工事の着工届が必要な延べ床面積が10㎡以上のものは「建築物着工統計」に反映されており、住宅投資に含まれているが、着工届を必要としないものについては、計算が難しいためGDPには含まれていない。
このため、平成26年3月に閣議決定された「公的統計の整備に関する基本的な計画」に基づき、国土交通省は平成28年度から「建築物リフォーム・リニューアル統計」調査を開始し、今年度からGDP統計に含まれることになった。
建築物リフォーム・リニューアル調査によると、平成28年度の受注高は約10兆1,358億円、29年度は8兆6,578億円(住宅投資額は16.0兆円)だ。
住宅リフォームがGDP統計に反映されたらどれくらいの増額になるのかわからないが、数兆円はGDPを押し上げることになるのか。
しかし、国民生活センターに持ち込まれる住宅リフォームに関する相談件数はずっと年間1万件くらいで推移しているはずだ。GDP統計に反映されるのは結構なことだが、悪徳業者を排除する取り組みも必要だ。
ポラテック プレカット「名古屋工場」が稼働 全国で月産5,200棟体制へ
「名古屋工場」
ポラスグループでプレカット事業を展開しているポラテックは6月6日、100%子会社ポラテック西日本の新工場「名古屋工場」の稼働を5月21日から開始したと発表した。
名古屋工場は、臨海部に立地し、物流拠点としての役割を担っているのが特徴。愛知県海部郡飛島村木場1丁目に位置し、敷地面積約12,702㎡、延床面積約6,896㎡。月産能力は羽柄材/5,000坪、合板加工/3,000坪。社員数10名。配送エリアは愛知県、岐阜県。初期投資額は14億円。
同社のプレカット工場はこれで茨城県、滋賀県、宮城県、静岡県、佐賀県の5拠点、構造材生産能力は月産合計176,000坪(1棟34坪換算で約5,200棟分)となり、プレカット業界最大手。
五輪エンブレム制作者の野老氏も参加 日本橋の街と企業の暖簾制作 三井不がイベント
北斎の版画を背景に語る野老氏(日本橋室町三井タワーで)
野老氏
三井不動産は6月5日、東京2020 オリンピック・パラリンピックエンブレムを制作した美術家・美術家 野老(ところ)朝雄氏を迎えたデザイントークイベント「個と群と律~紋と文様の話~」を開催。野老氏がエンブレムに込めた思い、制作過程などについて語ったほか、野老氏も参加して日本橋をテーマに「街を表現する暖簾」と「企業を表現する暖簾」を制作・展示するイベントの講師陣によるトークセッションを行った。日本橋に所在する企業関係者約70名とクリエイター約30名が参加した。
「個と群と律」をテーマに語った野老氏は、エンブレムは三角定規とコンパスがあれば子どもでも制作できる「組市松紋」手法を用い、大・中・小の四角形3個を基本に45個のピースを回転させたりして円形にデザインしたもので、オリンピックとパラリンピックを同じ個数にしたのは「平等」を、多くのパターンを用いたのは「多様性」を表現し、組織委員会の要求に応えたことなどを話した。紋の生地にも使われる藍染めについても熱い思いを語った。数学者の計算によるとエンブレムのパターンは237億通り以上もあるそうだ。
「街を表現する暖簾」と「企業を表現する暖簾」のトークセッションでは、波戸場承龍氏が「麒麟」をモチーフにした暖簾を参考に、判じ絵や見立て紋などの紋の文化について語った。
また、中村新氏は「弥生時代を起原に江戸時代に完成した紋はいかにも日本らしい文化。無形の財産」と語り、戸田宏一郎氏は「〝広告は企業の窓〟暖簾はつくったことがないが、難しそうだが奥行きも感じる。内と外をつなぐ新しい装置に挑戦したい」と述べた。
矢後直規氏は「ラフォーレ原宿ではカラフルな広告を手掛けたが、いま、ものすごい量の日本橋に関する本を読んでいる。とてもやりがいを感じる」と意欲を見せた。
参加するデザイナーを一般公募することから講師陣は「既成概念をぶっ壊すような大胆な提案をしてほしい」(戸田氏)「別の視点、とっぴな発想に期待」(中村氏)「紋は白と黒と線が基本。その単色の世界を表現してくれると嬉しい」(波戸場耀次氏)「日本橋のイメージを塗り替え、次代の日本橋が見られるようなものがいい」(矢後氏)などとエールを送り、司会役を務めた朴正義氏は「昨年のイベントではクリエイターが企業と繋がることができた。野心をもってアイデアをぶつけてくれたら嬉しい」と呼び掛けた。
「企業を表現する暖簾」には約30社の企業が名乗りを上げている。
左から波戸場承龍氏、波戸場耀次氏、矢後氏
左から朴氏、戸田氏、中村氏
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記者は昨年の日本橋「未来ののれん展」を取材している。ものすごく面白かった。前回の参加企業は数社だったが、次回は30社にも達するという。どのような暖簾が出来上がるか、いまから楽しみだ。
野老氏は三角定規とコンパスがあればエンブレムは作図できると話したが、記者はとっさに正七角形を思い浮かべた。円周(360度)を7で割っても整数にならないではないか。となると、各辺の長さが同じで各頂点が正円に接する正七角形は出来ないと思う。
なのに車のホイールには七本の軸(線)があるのはなぜか。七福神、七色の虹、セブンイレブン、女性セブン、七人の侍、ラッキーセブン、七味唐辛子、七つの大罪、七宝、七曜日、七転び八起き、七つの子…小生は割り切れない。野老さんはこれをどう説明するか聞きたかったが…。
会場の室町三井ホール(手前は波戸場父子が制作した暖簾)
不動産流通経営協会(FRK)新理事長に山代裕彦氏(三井不動産リアルティ社長)
山代氏(ホテルオークラで)
不動産流通経営協会(FRK)は6月6日、定時総会を開き、新しい理事長に同協会副理事長の山代裕彦氏(三井不動産リアルティ代表取締役社長)を選任した。前理事長の榊真二氏(東急リバブル代表取締役社長)は副理事長に、前副理事長の田中俊和氏(住友不動産販売代表取締役社長)は顧問に就任した。
山代氏は次のように就任のあいさつをした。
不動産流通市場は、低金利政策の下支えの下、順調に推移しています。
レインズによりますと、平成30年度の首都圏の既存住宅市場としては、成約件数、取引金額ともに前年度を上回り、マーケットとしては底堅い動きで、総じて堅調な一年だったと言えるかと思います。
当協会は、社団法人としては昭和45年に不動産センターとして設立され、来年の令和2年5月29日には創立50周年という節目の年を迎えます。
この度、国土交通省の「不動産業ビジョン2030~令和時代の不動産最適活用に向けて~」に示されているように、当協会も不動産流通を担う一因として「ストック社会」の実現などビジョンに掲げられた目標の達成に向け、その貢献が強く求められているところです。
このような重要な時期に、わたしは理事長に就任することになりました。当協会が時代の流れを敏感に読み取りながら、新しい価値の創造と実現を目指し、令和時代の要請にしっかりと応えていくことが重要だと考えております。
このため、わたしとして、特に力を入れてまいりたいことを3点ほどお話ししたいと思います。
まず、一点目として、不動産流通市場の活性化、円滑化を進めるための「政策提言」と、その基となる「調査研究」、そして適時・適格な「情報発信」を重点活動として、これまで以上に努めてまいりたいと思います。
特に、当協会の長年の課題でもあります、既存住宅の入通促進のための税制改正です。
人生100年時代を迎え、ライフスタイルやライフステージに応じて多様化する住宅ニーズを支えるための税制改正要望については、関係諸団体と協力して、しっかりと活動してまいりたいと存じます。
次に、第二点目として、不動産の特性や需要に即して、柔軟かつ的確なビジネスが展開できるよう、新たな不動産流通制度・システムの構築に貢献してまいりたいと考えております。
次に、三点目として、お客さまの視点に立って、お客さまが抱えている問題を的確に解決できる仲介サービスを提供することが肝要であります。ネット時代を受け、不動産流通会社と消費者との情報格差が格段に縮小する中にあって、質の高いサービスを提供できる不動産会社が選択される時代となっています。
こうした時代だからこそ、人が主役の不動産流通業として、その果たす役割は、ますます重要になってくると思われます。
消費者の皆さまから信頼され、評価される不動産流通業たるべく、その担い手となる営業従事者への教育研修には、これまで以上に注力してまいりたいと考えております。
目の前には解決を要する課題が山積しております。来年4月には民法制定後、実質的に初めての債権法に関する改正民法の施行が目前に迫っております。不動産流通の現場で不安や混乱が生じることのないよう、万全を期したいと考えております。
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山代理事長には、三井不動産リアルティ社長としてお願いを一つした。「社長、(RBA野球の星の)志村さんを試合に出させてください」と。
山代氏は笑って「わかりました」と話した。
これで本日の取材の目的は達せられた。山代社長は、記者の話を了解されたのか、志村さんに試合に出るよう勧めるのかどうかは不明。記者は志村さんと、旭化成ホームズの北寒寺さん、野村不動産アーバンネットの中川さん、トラバースの梅田さんや木ノ内さんなどとの対決をみたい。生きているうちに実現してほしい。ストレートに弱くなった北寒寺さんはバントヒットを狙うような気がする。
全国住宅産業協会(全住協)会長に内田橋住宅社長・馬場研治氏 神山氏は名誉会長
昨日(6月5日)、全国住宅産業協会(全住協)の新会長に東海住宅産業協会理事長で内田橋住宅社長の馬場研治氏が就任し、18年間会長を務めた日神不動産会長兼最高経営責任者・神山和郎氏は名誉会長に就任したことを業界紙が報じた。
記者は訳あって十数年前に同協会とは縁を切った(正確には同協会事務局と)のだが、神山氏の次の会長は誰が就任するのだろうという関心はあった。同協会の会長は創業社長が就任するという不文律があった(と思い込んでいるだけかもしれないが)からだ。思い当たる人は何人かいたが、そうではなく、また東京以外の会社の社長が就任したのにやや驚いた。
しかし、これも時代の流れか。名古屋市が本拠の内田橋住宅の創業は昭和10年というではないか。三井不動産の創業は同16年(越後屋の創業は1673年)だからそれより長い。そして、東海圏の会社社長が同協会のトップに就任するのが何よりも嬉しい。
不動産流通研究所のWeb「R.E.port」に掲載された馬場氏と神山氏の挨拶文を以下に引用する。
馬場氏は「住宅や住生活サービス面で何をどう取り組んでいくかが大きな課題となっている。われわれの主要なターゲットは多様な庶民。首都圏と地域経済とのバランスを図りながら、社会の隅々まで光が当たるような協会活動、政策提言に全力を傾け取り組んでいきたい」と語った。
神山氏は、「理事長・会長を拝命して18年間、皆さまのご指導、ご協力により無事務め上げることができた」「組織は常に代替わりをして新しい血を入れていかないと長続きしない。令和の幕開けに、世代交代して新しい体制を発足することができた」と話した。
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同協会には少なからぬ縁があるので少し追加する。
小生は、同協会の前身、住宅産業開発協会(住産協)を立ち上げ、初代会長に就任した大京創業者の故・横山修二氏が活躍されていた頃からずっと取材を続けてきた。マンションのイロハを教わったのが大京であり、中堅デベロッパーを応援したい気持ちがあったからだ。
同協会のもう一つの前身、日本ハウスビルダー協会の会長を務めていた木下工務店の創業者で社長だった故・木下長志氏にも懇意にしていただいており、大手デベロッパーが中心の不動産協会や、マンションデベロッパーの団体だった日本高層住宅協会(後に不動産協会と統合)に負けない団体に成長することを願っていた。
実際、少なくともバブルが崩壊するまでは、マンションも分譲戸建ても〝中堅〟が主役だった。マンションは大京やダイア建設などの会員会社が市場の半分くらいを占めていたはずだ。当時の大京は首都圏だけでも年間1万戸くらい供給していた。分譲戸建て市場でも木下工務店、細田工務店、六建建設などが市場をリードしていた。
その後の経緯については省略する。同協会が住宅・不動産業界で存在感を示す団体になってほしい。
参考までに、横山氏と木下氏の追悼記事を添付する。
らしき建築物発見!住宅不可の151haの江東区・新木場に88人が住む不思議
空っぽの貯木場(新木場二丁目で)
前回は、「都市計画法ではありえない住宅不可の、駅前に行かないと飲食店はなく、フーゾクもない151haもの広いエリアに男女比71:17の88人の方はどのような生活をしているのか、職業は何か興味をそそられないわけではないが」と書いたが、やはりその興味というか誘惑には抗えなかった。早速取材に出かけた。
「(仮称)三井リビングラボ新木場」は駅から徒歩9分の表示だが、長丁場も予想し、スタミナを温存する意味もあり、また情報を仕入れる意図もありタクシーに乗った。「人? 住んでないですよ。飲食店? ありません」運転手はつれない返事。空振り。
建物が解体中の「(仮称)三井リビングラボ新木場」の前から取材開始。運よくバイクに乗っている郵便局員に出会えた。「住宅? 分かんない」またも空振り。なんのなんの、西武の山川のような気分だ。空振りを恐れて取材ができるか。
片っ端から営業している材木屋、倉庫などに声を掛けた。「10年位前からいるけど、そんな人知らないなあ」「歩き? 駅前にレンタル自転車あるけど。そんな恰好(スーツにネクタイ)して歩いたら、熱中症になって死にますよ」(ありがとう)「ここはそうじゃない。他を当たって」「ここは住んじゃいけないことになっている。知らない」「〇〇の息子さんが住んでいるという噂を聞いたが…まあ、どこだって事務所に住もうと思えば住めなくもないが…」
ここまで約1時間。10カ所くらい回ったが、全て空振り。汗が噴き出す。野球の試合の取材では6時間くらい平気だが、もう限界。空っぽの貯木場の写真を撮って帰りのタクシーを呼んだ。「住宅? それらしきもの知ってますよ」「えっ、それじゃ、そこ行ってください」
その現場に着いた。建物は鉄筋か木造か判別できないが、住宅といえば住宅だし、事務所のようでもある3階建てが建っていた。窓はあったが、男性も女性も子どもも下着は干されていなかった。表札には法人らしき名札が3つ4つかかっていた。業種までは分からない。フーゾクではなさそうだった。外観からは何屋さんか分からない。
小生は意外と無鉄砲なところがある。その筋の人が出てきたらどうしょうかとも考えないではなく、近くの貯木場に丸太ではなく、枯れ木の流木みたいな土左衛門として浮上し、カラスの餌にされるのではないかという恐怖も襲ってきたが、ええーいっ、ままよとばかり、郵便配達人のようにコツ、コツと二度ドアをノックした。
ものすごく長く感じたが、おそらく待つこと数秒。返事がないのに安堵した。小生はそれほど馬鹿でもない。写真を撮る勇気はなかったが、住所も法人名も控えた。もうこれ以上書かない。
ところで皆さんは建築基準法でいう「住宅」とは何かご存じか。第二条に「共同住宅」「居室」などはあり、建築物の細かな規定はあるが、「住宅」そのものの定義はない。
どうなっているのか。江東区の担当者は「法律をつくった国土交通省に聞いてほしい」といったし、国土交通省の担当者は「個々の案件は特定行政庁が判断する」とのことで、つまり、定義などは存在しないことのようだ。小生が「師匠」と仰ぐあるハウスメーカーの建築の専門家も「調べるから時間をください」としか答えてくれなかった。
ここでクエッション。そもそも法律ではっきりした定義がないものを地区計画で禁止する行為はいかがなものか。
参考までに、総務省の「住宅・土地統計調査」では「住宅」とは次のように定義している。
「一戸建の住宅やアパートのように完全に区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができるように建築又は改造されたものをいう」とし、「『完全に区画された』とは、コンクリート壁や板壁などの固定的な仕切りで、同じ建物の他の部分と完全に遮断されている状態をいう。また、『一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができる』とは、次の四つの設備要件を満たしていることをいう。①一つ以上の居住室②専用の炊事用流し(台所)③専用のトイレ④専用の出入口屋外に面している出入口又は居住者やその世帯への訪問者がいつでも通れる共用の廊下などに面している出入口」とある。
しかし、これも、バスもトイレもないわずか7㎡(2.1坪、4.2畳)の部屋を1戸とみなすセーフティネット住宅との整合性をどう説明するのか。
それにしても、このような地域にライフサイエンスの最先端ベンチャーを誘致する三井不動産はすごい!マンションではないから、RBA・話題のマンションベスト3には入れられないが、某媒体の今年のヒット商品番付で横綱になるのは間違いないと思うが、どうだろう。
「(仮称)三井リビングラボ新木場」の建築予定地
新木場2丁目の街並み
こちらの貯木場も空
駅前の看板(駅の南側が新木場1丁目、島の部分が新木場2丁目、下が新木場3丁目、辰巳3丁目は地図の左上の部分)
新木場駅前(左の建築物がホテル。今年8月に竣工予定)