転んでもただでは起きないぞ 「不動産バブル崩壊前夜」見出しに釣られたが…
もう30年も前だ。扇情的な看板と客引きの甘言に釣られ、いかがわしい店に半ば連れ込まれ、ビール1杯飲んだだけなのに有り金(バブルと酒に酔っていたときで金額を書けばびっくりするはずだが書かない。タクシー代だけ残してもらった)全部をはぎ取られた経験があるのに、また同じような過ちを犯してしまった。「不動産バブル崩壊前夜」などという世の中がひっくり返るような見出しが躍っていた「週刊東洋経済」3月23日号を買ってしまったのだ。
週刊誌の『分譲か賃貸か』の特集記事や「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本を買ったのは、それを批判する目的で買ったのだから、文句は言わないが、今回は710円もしたのだから、その分お返しをしよう。
「不動産バブル崩壊前夜」は22ページにわたって報じられていた。記事の書き出しは「『高すぎて買えない』。30代の夫婦は第一子誕生を機に都内の新築マンション購入を考えた。しかし、価格のあまりの高さに断念した」だった。記者はこの5行を読んだだけで全て中身を把握したと思った。書き出しは、この種の記事の常とう句だ。
かくいう小生もマンション価格の高騰については何度も記事にしてきた。しかし、「普通のサラリーマンが」などと断りを入れた。ユーザーは千差万別、3,000万円の物件が買えない人もいれば、坪単価1,000万円でも楽々購入できるお金持ちもたくさんいる。十把一絡げで市場を見たりしない。いつも念頭にあるのは、デベロッパーはどこにターゲットを当てているか、その商品企画はユーザーの購買意欲をそそるものであるかどうかだ。
こんなことを言ったら失礼だが、週刊誌の記者は〝売れる記事〟つまり食・金・色などの欲求に訴え、その逆の不安をあおることに専心している。競馬新聞と一緒だ。記事が当たろうが外れようが関係ない。今回の同誌はさすがに気が引けたのか、2025年地価下落予想記事では「現時点の限定された範囲での予測であり、将来の地価変動を保証するものではない」と断っている。何をかいわんや。
記事にコメントを寄せるアナリスト、コンサルタントなどの方々も頼りにしているのは遅行指標のマクロデータのみ、現場を見ていない。〝森を見て木を見ず〟だ。新築マンション市場は供給が減っている、価格が暴騰している、契約率が落ち込んでいるなどというが、これも十把一絡げでしか市場を捉えられないからだ。マクロデータで世の中が動くのであれば世話はない。企業の社長さんは楽なものだ。業績が落ち込んだら全て景気、外的要因のせいにすればいいのだから。
さて、では「不動産バブル崩壊前夜」の記事は正鵠を射ているかどうか。小生はもちろんNOだと思う。一つひとつ反論する気にもなれないが、そもそも「バブル」とは何かを伝えていない。確かにかつてのバブルは常軌を逸していた。みんな狂乱人気に酔った。端的な例が広尾ガーデンヒルズだ。坪単価500万円くらいだったものが、マンション転がしのピーク時には坪3,000万円を突破した。リゾートマンションも熱海などは坪300~500万円まで跳ね上がり、億ションとなった。それが、バブル崩壊後はそれこそ株と同様〝半値八掛け二割引〟になった。今がそのような状況では絶対ない。
一部の投資家、賃貸オーナーは泡を食っているかもしれないが、小生に言わせれば自業自得だ(レオパレス21は一度も取材したことがない。その理由は書かない)。スルガ銀行の〝審査は甘い〟は業界の常識だった。この影響は少なからずあると小生は見ている。
このほか、米中関係、中国経済の停滞はわが国経済にも大きな影響を及ぼす-こんなのは当たり前でないか。大手デベロッパーやハウスメーカーはしっかり手を打っているはずだ。
同誌の記事は狭小住宅や老朽化マンションなど〝負動産〟についても触れているが、これなどはバブルと全く関係がない。10年も20年も昔から分かっていたことだ。
狼少年のような記事は〝読まない 書かない 売らない〟ようにしよう。これで710円の半分は取り戻したか。〝忘れたころに…〟を教えてくれた価値は350円はありそうだ。
東京とはまったく異なる宮古島の植生にびっくり
「漲水御嶽(はりみずうたき)」のガジュマル
沖縄は今回で3回目だが、宮古島の植生は東京などとまったく異なるのに改めて認識させられた。記者でも判別できたのはデイゴ、ソテツ、ヤシ、バナナ、サトウキビ、ポトス、ゴムくらいで、その他街路樹に植えられていた樹木や雑草は初めて見るようなものばかりだった。以下、写真を紹介する。間違っていたらごめんなさい。
「漲水御嶽(はりみずうたき)」のガジュマル
石垣に食い込むが手丸の根
ガジュマルはみんな絞め殺すのだという(宮古島市役所近くの公園で)
巨大なポトス(レストラン「のむら)」で)
3階まで伸びていたモンステラではないか(レストラン「のむら)」で)
モクマオ
モモタマナ(下地島空港の街路樹)
アダン(下地島空港の中庭で)
デイゴ(下地島空港の中庭で)
野良猫(全然付き合ってくれなかった)
「エコアイランドにふさわしい施設整備」 三菱地所・吉田社長 下地島空港竣工式典
鏡割りの記念写真に納まる左から宮腰氏、吉田氏、玉城氏
三菱地所は3月16日、既報の「みやこ下地島空港ターミナル」が竣工したのに伴う神事・竣工記念式典を行った。約400名が参加した。
冒頭、同社執行役社長・吉田淳一氏は、「沖縄県が戦略目標に掲げている世界トップレベルの観光都市の実現に向け総力をあげて整備に取り組んできた結果、世界屈指のリゾート地にふさわしい施設として整備できたと確信している。空間づくりには日建設計さん、施工は国場組さんと大米建設さん、インテリアデザインは乃村工藝社さんにお願いした。CLT材を利用してこれほど開放的で青い空と海にマッチした建築物は日本で初めてで、今後、ネット・ゼロエネルギー施設として『エコアイランド宮古島』を盛り上げていく」と語った。
吉田氏はまたCLT材を使用した仙台市の「高森」、隈研吾氏がデザイン監修した「晴海プロジェクト」にも触れ、「耐火・防火の現行法では木のよさを見える化できない難しい問題もあるが、海外では透明の耐火被覆が認められており、わが国でも実現する可能性は広がっていく」と、記者団の質問に答えた。
式典には、来賓として内閣府特命担当大臣・宮腰光寛氏、沖縄県知事・玉城デニー氏、宮古島市長・下地敏彦氏がそれぞれ祝辞を述べ、宮古市に縁の深い世界的オペラ歌手・中丸三千繪氏が「アヴェ・マリア」「ねむの木の子守歌」「ありがとう愛する友よ(ベルディ)」などを熱唱した。
屋根構造材を「現し」でできたのは、同社のCLT事業の推進役の一人、住宅業務企画部CLTユニット主事・海老澤渉氏によると「下地島空港の敷地は無指定地域ですので、分棟化して各棟の面積を小さくすることで準耐火建築物としています。また準耐火構造とした1-ロ準耐火(外壁不燃)にしたため、防煙区画は必要ですが、内装制限は受けていません」とのことだった。
◇ ◆ ◇
タクシーの運転手さんに聞いた。島の北部は民家などが多く、地価はそれほど上がっていないが、南部は空港整備が決定したころから上昇しており、海岸線を中心に土地の取引が活発だという。空港の土地は県有地とのことだった。空港に近い伊良部字国仲屋敷90番の2018年基準地価は3万6,363円/坪となっている。近く2019年の地価公示が発表される。宮古空港から車で30分くらいだったのが、羽田と結ばれるのだから大幅に上昇するのは間違いない。
記者団の質問に答える吉田氏
満面笑みの杉山博孝・三菱地所会長(右は下地幹郎議員)
「みやこ下地島空港ターミナル」(瓦はスペイン瓦)
地下水を利用している水盤
中庭(手前の樹木はデイゴ)
防風林の樹木として植えられているテリハボクのカウンター(長さは20mはあった)
AI清掃ロボット
地元紙はCLTを伝えなかった/主役の座を奪った中丸氏 音響効果は? (2019/3/17)
地元紙はCLTを伝えなかった/主役の座を奪った中丸氏 音響効果は?
「みやこ下地島空港」竣工内覧会を報じる「宮古新報」
この日(16日)、午前11時にホテルをチェックアウトする際、前日の「みやこ下地島空港」竣工内覧会を地元紙はどう報じているかを確認した。
「宮古新報」(全8ページ)は1面で取り上げ、6面は全ページを割いて写真特集としていた。ところが、記事には「CLT」は一言も触れられていなかった。
「沖縄タイムス」も読んだが、3段見出し記事の中にはやはり「CLT」の記述はなし。
唯一取り上げていたのは「琉球新報」だったが、記事は「特別な工法で強度を上げた『CLT(直交集成材)』と呼ばれる木材を使用した」となっていた。
3紙とも成田-下地島路線の就航が決まっているジェットスター・ジャパン代表取締役社長・片岡優氏の囲み取材の模様を詳しく伝えていた。
これには落胆した。内覧会で三菱地所空港事業部統括兼下地島エアポートマネジメント常務執行役兼企画部長・平野敦士氏は「国内最大のCLT材を採用した」としっかり説明した。
にもかかわらず、地元2紙は一言も触れず、琉球新報も「特別な工法で強度を上げた」と、間違いではないが正確ではない捉え方をしていた。
国内外の旅行客はあの圧倒的な木造の大空間に魅入られるはずだ。その魅力を地元紙も取り上げていただきたい。
三菱地所はどれほど「CLTの現し」の価値があるかをもっと分かりやすく伝える必要がある。RC造と組み合わせ、面積要件をクリアしたのだろうが、記者もどうして耐火・防火基準をクリアしたのかいまだによく分からない。
◇ ◆ ◇
中丸氏
宮古島に住んだことがある中丸三千繪氏の熱唱に約400名の参加者が酔いしれたことを書いた。冒頭の三菱地所・吉田淳一社長の挨拶に続いて来賓として祝辞を述べた内閣府特命担当大臣・宮腰光寛氏、沖縄県知事・玉城デニー氏、宮古島市長・下地敏彦氏には失礼だが、中丸氏は完全に主役の座を奪った。
小澤征爾氏の指揮で日本デビューし、ルチアーノ・パヴァロッティと共演し、ベルサイユ宮殿でダイアナ妃のユネスコ活動を支援するコンサートを行なうなど世界的に知られた中丸氏がまさか30分も歌われるとは夢にも思わなかった。美智子皇后陛下が作詞された「ねむの木の子守歌」も披露された。鳥肌が立った。
中丸氏は3月30日の開業日には国歌を斉唱されるのだそうだ。
ピアノを担当したのはクロアチアで活動する安達朋博氏だった。YAMAHAの電子オルガンには苦労されたのだろうが、違和感はなかった。
それどころか、これほど心地よく聴こえるのはCLTの音響効果もあるのかと、同社の音響に詳しい女性広報担当に聞いた。彼女は「床のコンクリなどは音の反響が大きく、全体としてはどうか」と語った。CLTと音響効果を研究してほしい。よくないハスはないと思うが…。
ピアノを担当した安達朋博氏(グランドピアノは宮古市には1台しかないという)
感謝! 中丸氏の熱唱に酔い、宮古島・下地市長から泡盛古酒ボトル(飲みかけ)頂く
「みやこ下地島空港ターミナル」搭乗手続きエリア
「みやこ下地島空港ターミナル」の取材は満足できるものだった。期待以上の成果が得られた。招かれた約400名の関係者も世界的オペラ歌手・中丸三千繪差氏の約30分にわたる熱唱と振舞われた泡盛に酔いしれたはずで、小生も取材後おねだりして4~5杯飲んだ。度数は25度くらいか。古酒ではなかった。
帰途につくためタクシーに乗ろうとしたら、同社のAI清掃ロボット取材のときに詳しい説明を受けた三菱地所ビル運営事業部兼経営企画部DX推進室統括・渋谷一太郎氏が高級外車(レンタカーのはず)で宮古空港まで運転手役を買ってくれた。車中でいろいろ楽しい話をしたが、これは書かない。
11時に「海ぶどう丼」の具だけ食べたほかは、泡盛しか飲んでいなかったのでさすがにお腹がすき、宮古空港で食事をした。頼んだのはソーキそばによく似た「長寿そば」(意味不明)と30度の泡盛。それにしてもレストラン「ぱいぱい のむら」-「(おっ)ぱいぱい のむ」とはよくぞ名付けたものだ。
勘定を済ますときはもう相当酔っていたのだろう。店の人に何と言ったか覚えていないが、「そばも、古酒ではなかったが泡盛は最高に美味しかった」とでも言ったのか。すると、小生の後ろで支払いを待っていた数人のグループのうちのお年寄りが「宮古島市長 下地敏彦」と書かれた名刺を差し出し、「これ、あなたにあげる」と仰るではないか。
黒瓶なので中身の量は分からなかったが、その重さから空ではなくまだ十分入っていそうだったし、ラベルから古酒であることが瞬時に分かった。双方は初対面、下地市長は小生が記者であることを知らないはずで、小生もまたレセプションで市長の挨拶は聞いてはいたが、顔までは確認しなかった-酔いで鈍っていた頭をフル回転させて、これは供与でも買収でもなく公職選挙法違反にはならないと判断し、「市長、所有権はわたしに移転しましたからね」と念を押した。
早速、機内に持ち込んだ。小生は通路側、隣は空席だった。アテンダントの方は優しい方で、「どうぞ膝に抱えて、飲んでいただいても結構ですよ」というではないか。窓際の女性の方もまた実に機転が利く方だった。抱えていた泡盛を隣のシートに横たえ、シートベルトを締めてくれ、スマホに収める写真撮影も手伝ってくれた。
試飲もした。30度だった。芳醇な香りが五臓六腑に染み渡った。文字通り満腔の敬意をもって下地市長にお礼申し上げます。ネットで調べたら、市長は1945年生まれだから小生より4年も先輩だった。
中丸氏
この中に下地市長もいらっしゃるはず
長寿そば(さすがに全部は食べられなかった。黒いのは昆布巻き、肉は多分アグー、緑はよもぎ)
頂いた宮古の泡盛「菊之露 V.I.P GOLD」(シートベルトで横たわっていたのを縦にした写真)
三菱地所 1棟のCLT使用量では国内最大 「みやこ下地島空港」竣工

共用待合室
搭乗手続きエリア
シンプルで端正な姿が美しい 三菱地所 わが国初のCLT高層「高森」完成
「PARK WOOD 高森」
三菱地所は3月13日、CLT材を床材に採用したわが国初の高層建築物となる仙台市泉区「泉パークタウン」内の賃貸マンション「PARK WOOD 高森」の竣工式・記者見学会を行った。
物件は、敷地面積約3,550㎡、延床面積約3,605㎡の木造(CLT床・耐震壁、燃エンウッド)+鉄骨造のハイブリッド構造10階建て39戸。専用面積は51.74~89.46㎡、賃料は93,000円~141,000円。設 計・監理・施工は竹中工務店。
床と壁の約220㎥にCLTを構造材として使用し、4~10階の床に2時間耐火仕様としたわが国初の高層建築物。
CLTを利用することで、通常の鉄筋コンクリート造に比べ乾式工事の範囲を拡大できたことで工期を3カ月短縮。
全住戸のうち全7戸をプレミアム住戸とし、木造柱のほかリビング・洋室の天井や壁など内装を木質化している。
竣工後は木材特有の乾燥収縮やクリープによる変形量をモニタリングし、今後の建築に生かす。賃料は相場(ないようだが)より高いが十数戸に申し込みがある。
竣工式に出席した、同社執行役常務・駒田久氏は、「木のよさを現せないなどの課題はあるが、今回の『高森』や『下地島』『晴海』などの経験値を積み上げ、今後も積極的にCLT事業に取り組んでいく。国産材の利活用にも貢献する」と語った。
プロジェクトは、平成28年の林野庁「CLT建築物普及促進事業」、平成29年度の国交省「サステナブル建築物等先導事業」の補助金制度を活用している。
同社のCLT建築物は、近く開業する沖縄県・下地島空港の旅客ターミナル施設の屋根の構造材として採用し、先に発表した隈源吾氏デザイン監修の「CLT晴海プロジェクト」がある。このほかにも事務所ビルや賃貸マンションなどで計画を進めている。
工事中のCLT
エントランス
プレミアム住戸(中央の柱が燃エンウツド)
◇ ◆ ◇
「建物は女性と一緒、バックシャン(後ろ姿)だよ」と言ったのはSD建築企画研究所・清水修司社長だが、これは、北側斜線が秘儀しいエリアのマンションで、規制を掻いくぐって出隅入隅だらけのグラマラスな形状に仕上げたことについてだった。
この建物もその通り北側が美しいのだが、意味は全く逆だ。つまり、敷地は1,000坪を超えるのに野へ床面積もほぼ同じ約1,000坪(容積率は200%はあるはずで、隣接地にRC造の賃貸マンションが建設中だった)。建物は北側斜線制限の影響は受けていないのか、白を基調にした黒の庇やサッシ、縦格子のバルコニー枠が白を基調にしたファサードをきりりと締める役割を果たし、あたかも全体女性がもっとも美しく見える礼服のような実にシンプルでシンメトリックな端正な姿ですくっと建っていた。
さらにまた、建物はほぼ正方形なので、東側も南側も西側もほぼ同じ形状のファサードだ。建物は美しくなければならない。さすが地所だ、竹中だ。
肝心の内装はどうか。竹中の「燃(モ)エンウッド」は頬ずりをしたくなるほどすべすべで美しい肌をしていた。このほか、壁、天井、共用部のエントランスなどにも九州産のスギが用いられており、あの独特の芳香を放っていた。
しかし、CLTの床材がむき出しだった工事中の建物とは全く異なっていた。美しいCLTを耐火・防火基準に適合させるためにコンクリートで覆い隠し、その上に被覆SLプラスターを貼り、二重三重にガードされていた。CLTとコンクリと被覆材、石こうボードの厚さは何と410ミリもある。美全体を100とすればせいぜい20%くらいしかなかった。残念。無花果の葉っぱは正か非か。(それでも二重床にして天井高は2500ミリ確保しているが)。
主旨から外れるが、最近はカリスマ美容師がものすごく流行っているそうだ。弁護士や医者並みの年収というではないか。それだけ女性(あるいは男性も)美しくなることにコストをかけている。耐火・防火の規制を緩和すれば、間違いなく30%のコスト削減ができ、あらゆる女性を凌ぐ美しさも確保できる。
〝燃えていいのか、死んでいいのか〟という反論は、耐火・防火基準とはまた別の問題で、これはすり替えだ。消防技術も関東大震災と比較にならないほど向上している。抜本的に耐火・防火の基準を見直すべきだ。
◇ ◆ ◇
もう書く時間がない。書かなければならない記事は仙台のサ高住「アンダンチ」、大和ハウス工業「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」、同「プレミスト湘南辻堂」、マンション管理業協会の懇親会などがあるが、明日は4時起きでCLTの「下地島」の取材がある。行きは乗り継ぎだから都合6回の飛行機が墜落するリスクがある。皆さんも、落ちないことを祈っていただきたい。週明けには「下地島」も含め発信できるはずだ。再见!アシタマニアーナ!
◇ ◆ ◇
今日(14日)夜、ある青年の会合で「あいうえお遊び」が行われた。「幸せ」つまり「し・あ・わ・せ」を頭文字にして詩をつくるものだ。最優秀賞は確か「しっぱいは あしたのせいこうだ わたしはしんじて せいいっぱいがんばろう」だった。
そこで記者も一句。「しんだら あなたと わたし せきはどうなるの」-言葉足らずの字余り。「こめんなさい」はモンゴル語で「オチタレ」だそうだ。あっ、日付が変わる。
北側からの外観
仙台市のサ高住「アンダンチ」で飼われている父もちたろう、母あん子の子ども牡2歳のだいふく
わが国初 CLT床材を利用した高層建築物 三菱地所 仙台「高森2丁目」現場見学会(2018/9/15)
〝美しい〟〝画期的〟隈研吾氏が連発 三菱地所「CLT晴海プロジェクト」(2019/2/14)
「住宅新報」「週刊住宅」も1面はつまらない 豚のように木に登ろうではないか
今週の業界紙の1面は「住宅新報」(3月12日付)が一括受電方式を専有部にまで適用する管理組合決議は違法とする最高裁の判決記事、「週刊住宅」(3月11日付)が拡大するネコ市場に関する記事だ。
まず住宅新報の記事。この問題は一般紙でも先週の5日、6日当たりで報じられた。何か新しいことが盛り込まれているかと読んだが、ほとんどなし。この種の他紙、それも一般紙が報じた後で取材する、いわゆる後追いほど記者にとってつらい仕事はない。この記事を書いた記者の気持ちはいかばかりか。
判決そのものは極めて穏当だと思う。区分所有法を読めばそうなるだろうことは素人でも分かる。共用部への一括受電はともかく、各戸へそれを強要するのは無理がある。例えが適当かどうか分からないが、〝一括購読すれば料金が安くなるから〇〇新聞を購読しよう〟という組合決議が通用しないのと一緒だ。専有部はいわば排他的経済水域だ。誰もその使用方法について指示・命令などできない。記者の個人的な考えでは、専用使用権が認められているバルコニーでの喫煙を禁止する原始規約は違法ではないかと考えている。仮にそのような議案が提出されたら徹底抗戦する。人権無視だと。
ただ、今回の事案は、何も裁判に訴えることではないと思う。話せばわかる問題だ。どこかで感情的な衝突が起き、双方が引くに引けない事態に陥ったのではないか。同紙もそのあたりを探るべきだった。それにしても、トップ記事よりタタミ記事のほうが大きいスペース配分は頂けない。バランス・美的感覚はどうなっているのか。
H氏の居酒屋紹介も二週続けて読んだ。なに、またなくなった飲み屋の話? いよいよ過去に生きる人になったか。このコラムはよく読まれていると聞くが、そこに同紙の課題が集約されている。深刻に受け止めたほうがいい。
週刊住宅のネコ市場。記者は、愛玩=哀感動物としてすっかり骨抜きにされている犬より、人間よりはるかに自立心の高いネコ、とくに誰にも媚びない野良猫が好きで、いつも顔を合わせると〝寒いのにお前も大変だなあ。しっかり食べてるか、彼女がいない? なに、去勢された? 〟などと会話を交わしていたのだが、最近はすっかり姿を見せなくなった。スズメすら見かけなくなった。近くのすし屋がなくなって数年。多摩市限定販売の名酒「原峰のいずみ」が買えた米屋・酒屋も店をたたんだ。
どんどん住みづらい世の中になってきたというのに、いつも元気で人を馬鹿にしているのはカラスだけだ。小生はかみさんであろうと誰であろうと馬鹿にされても全然こたえないが、カラスだけは我慢ならない。鳥獣保護法に引っかかるので自分から攻撃することは控えているが、敵もさるもの、殺気を感じるのか襲ってこない。カラスの頭がいいのには頭にくる。
さて、週刊住宅の記事。はっきり言ってつまらない。記者はもう30年くらい前、ペット裁判を取材したことがある。現地を見て裁判を傍聴し、原告、被告それぞれの側も取材した。そのとき書いたのは〝ペット飼育禁止を盛り込んだ原始規約を改めよ〟だった。主だったマンション管理会社に「ペット飼育は人権だ」と詰め寄ったが、どこも相手にしてくれなかった。当時、ペット飼育を認めていたのは鹿島建設「北赤羽」のほか数えるほどしかなかった。
それが、平成7年ころだったか。手のひらを返したように「飼育可」にした。「ペット飼育は人権」を認めたわけでは断じてない。マンションの販促手段として用いたのだ。
このような歴史を知っている記者は、ペットがもてはやされる時代を冷ややかに見ざるを得ない。いつ何時人権が脅かされるかわかったもんじゃない。
両紙に言いたいのは、分かり切ったことを書くなということだ。小生はいつも「豚もおだてりゃ木に登る」記事を書こうと思っている。
「週刊住宅」地所ホームの記事が圧勝 不可解「住宅新報」野村不も東急不も触れず(2019/3/6)
開発用地は枯渇 地域活性化に方向転換 小田急不動産 「栗平」にコミュニティ施設開業
「CAFÉ &SPACE L.D.K.」エントランス
小田急不動産は3月14日(木)、小田急多摩線栗平駅前のコミュニティ施設「CAFÉ &SPACE L.D.K.」を開業する。これまでは住宅供給の拠点だったものから、地域活動の活性化に寄与する空間に転換する。
施設は、小田急多摩線栗平駅北口から徒歩1分、川崎市麻生区栗平2丁目に位置する「小田急マルシェ栗平」の2階部分。カフェ、レンタルスペース、ワークスペースからなる面積約208㎡。企画・運営は小田急不動産・WAT。
カフェでは、地域の食材を使用し、手作りの食事、季節のフルーツタルトやパンケーキ、プリン、ドリンクなどを提供する。座席数は36席。
レンタルスペースは、間仕切りによって3つのスペースに分けることができ、最大76㎡(着席48名)。1室はキッチン付き。ワークスペースは4月下旬開業の予定。
開業に先立つ8日、竣工内覧会を行い、同社・金子一郎社長は、「1974年に小田急多摩線を開業して以来、多くの住宅を供給してきたが、開発用地は枯渇している。今後はリノベ再販などストックの流動性を高める仕掛けを構築し、地盤沈下しつつあるエリアの活性化に取り組み、コミュニティの核となる機能を設けることで、多世代交流型の街づくりを進める」などと語った。
施設は、5月にオープンする予定の黒川駅前のシェアオフィスとともに「平成30年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」に選定されている。施設には神奈川県産材のスギを多用している。
左から経営企画部経営企画グループサブリーダー・石川敦己氏、金子社長、同部顧客開発・IT推進グループ上席チーフ・菊地友佳氏
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若い方はご存じないかもしれないが、小田急多摩線の新百合ヶ丘-五月台-栗平-黒川-はるひ野で同社は約2,300戸ものマンション・戸建てを分譲してきた。バブル期には沿線のマンション坪単価は300万円を突破(新百合ヶ丘)し、戸建ては1億円を超えた。それでも飛ぶように売れた。
昭和57年に竣工したRC2階建ての記念碑的な「栗平タウンハウス」の話をしたら、関係者は「生まれていなかった」という方ばかりだった。
しかし、金子社長も「開発用地は枯渇した」と話したように、今後の新規分譲はまずないはずだ。(沿線の町田、八王子、相模原市には調整区域や山林を電鉄が所有しているかもしれないが)わが京王電鉄もそうだが、これからどのような事業で活路を見出すのか。
コミュニティカフェ
コミュニティカフェ(神奈川県産材スギなどの面材が美しい)
◇ ◆ ◇
記者は乗ったことがないが、小田急多摩センター-新宿は最速33分で370円だ。ダイヤ改正のたびに速くなっている。
一方の京王相模原線は同区間で最速39分、319円なので、51円安いが速さでは6分も負ける。時給を1,500円とすると6分は150円の価値があるということになる。ヨーイドンで走ったら皆さんはどちらを選ぶか。試しに社内のスタッフに電車名を伏せて聞いた。記者と同じ高齢者は京王を選んだ。仕事ができる30歳代の女性はためらいなく小田急を選んだ。
おっと、記者は京王ファンだ。こんなことを書くと、また京王は小田急に客を奪われるか…。小田急が喫煙ブースを設けたら小田急に乗り換えるが、絶対ないはずだし、仕事ができる人は小田急で、そうでない人は京王-そんな事態にもならないと思うが…。
コミュニティカフェ
サ高住は老人福祉法の「施設」の受け皿・代替えになるか 国交省・懇談会
国土交通省は3月8日、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の今後の取り組みについて助言を得る第2回懇談会(座長:髙橋紘士・高齢者住宅財団顧問・東京通信大学教授)を開催。サ高住の現状や多様性に関する調査報告、主な課題と対応などについて活発な論議を行った。
懇談会の冒頭、髙橋座長は「サ高住に対する関心は高まっているが、(老人福祉法に基づく)『施設』として捉えられている」と不満を示し、「サ高住は〝腕〟が期待されている。よさをどう発信していくかが問われる」などと各委員に呼び掛けた。
高齢者住宅協会がまとめた「多様性に関する調査報告」に対しては「極めて示唆的な調査」と評価した。
◇ ◆ ◇
記者が注目したのは、五郎丸徹委員(サービス付き高齢者向け住宅協議会理事・学研ココファン社長)がサ高住の多様性に関し、オプションの一つとして「サ高住が特養などの施設の受け皿になってもいい」と発言したことだ。サ高住と施設の垣根が取り払われたらどうなるのか-五郎丸氏は鋭い問題提起を行った。
髙橋氏も指摘したように、特養などの高齢者向け施設とサ高住はそれぞれ法律によって厳然と区分け・峻別されていると記者は考えてきた。「施設」の文言も、特養などの施設について定めた「老人福祉法」には86カ所、サ高住について定めた「高齢者の居住の安定確保に関する法律」には2カ所にしか用いられていないことからも明らかだ。前者の「施設」は施設そのものを規定するものとして、後者のそれはサ高住と区別する文脈の中で用いられている。
しかし、サ高住や民間の介護付き有料老人ホームが施設の「受け皿」になっている現実は否定できない。これまでの調査でもその差異を明確にできていない。
懇談会の座長を務める髙橋氏を委員長とする「平成26年3月有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査」もその一つだ。
アンケート回収は1,034件(回収率:36.0%)だったことから、髙橋氏は「残念ながら、調査にご協力いただけなかったホーム、住宅も少なくなかったので全貌を示したというには憚られることもないわけではない…」「正確な実態把握のための環境が早急に整うことを期待したい」と述べている。忸怩たる思いが伝わってくる。
記者も事業者から「サ高住は玉石混交の世界。『見守り』などあってないようなもの」と聞いており、未回収の64%のサ高住がどのようになっているのか気掛かりだし、明らかにしなければならない。
気掛かりと言えば、サ高住とも密接に関連している住宅セーフネット制度もそうだ。平成29年10月に施行されたこの制度は平成31年3月現在、登録住戸は受付・審査中も含め10,367戸ある。うち大阪府が51.9%に当たる5,377戸で、東京都は289戸だ。大阪府が突出して多いのは、府は高齢単身者世帯の所得は200万円未満が64.5%と高く、65歳以上の単身世帯の88.5%は居住面積29㎡以下という現状を深刻に受け止め、事業者の申請条件を緩和し、手続きの代行を行っているからだと言われている。
そのことの是非はともかく、記者は東京都の事例について調べたことがある。バスもトイレもないわずか7㎡(2.1坪、4.2畳)でも、家賃は都心の億ション並といえる坪2万円を超えるものが少なくなかった。審査は書類のみだった。このままでは〝貧困ビジネス〟につながるのではないかと背筋が寒くなった。
髙橋座長や各委員に「バスもトイレもない7㎡」の部屋を「住宅」と呼べるのか、入居を拒否されないためには億ション並の家賃を払わないといけないのか、現地を調査しないで審査が通っていいのかと聞きたい。
今回の調査報告にも見逃せないものがあった。「サ高住」の利用者の従前の居住形態は持ち家が8割なのに対し、賃貸が2割というデータだ。これは持ち家と賃貸の全国比率約6:4(東京都の持ち家比率は46%)と大きく異なる。
しかも、居室面積が25㎡以下は全登録件数約23.5万戸のうち実に77.8%、約18.3万戸を占め、約15万戸は台所・浴室がないことだ。
これら25㎡未満の台所・浴室もないタイプに住む居住者の平均年齢は84.1歳で、要介護1、2の人45.8%と要介護3~5の人38.1%と合わせ83%に上る。
これらのデータからすると、圧倒的多数の賃貸居住者には多様な選択肢はあるのかという問題が浮かび上がる。さらにまた、平均余命からしてサ高住居住者はこの先6~10年間の間、中身がよく分からない〝サービス〟(見守り・その他)を受けながら看取られるのか、それとも施設に転居するのか、約4割と言われる認知症を発症している人の尊厳、家族の負担はどうなるのか…。
さて、サ高住と施設の垣根を取っ払ったらどうなるか。水が高いところから低いところへ流れるように、サ高住は施設化し、施設もまたどんどん質は低下し、双方が錐もみ状態となって深い地底に沈んでいくことにはならないか。
これらに対し、園田眞理子委員(明大理工学部建築学科専任教授)は、「サ高住の従前の住まいは持家8割、借家2割ということに経済格差が内包されている。セーフティネット住宅も含めしっかり仕分けして考えるべき。サ高住の前(自宅は空き家になる)と後ろ(戻るところがあるのか)を同時に考えないといけない」などと指摘した。
問題はそれだけではない。吉村直子委員(長谷工総合研究所主席研究員)は、「事業者サイドから考えると(職員などの)人手不足は課題というより深刻な問題。みんな危機感を持っている。さらに、老人ホームの一時金方式は2021年から全額を初期償却できなくなる。一括償却して自転車操業的なやりくりしているところは相当の打撃を受ける」と注意を喚起した。
これも記者はよくわかる。記者は20年くらい前だったか、取材目的で特養と民間有料老人ホームに体験宿泊したことがある。老人ホームの食事はコンビニ・ケータリングとほとんど同じだった。
特養の施設は億ション並に立派だったが、食事はのどを通らなかった(まずいというのではない。経験しないと分かってもらえない)。娯楽の時間に認知症の人から1時間くらい戦争のことなど同じことを聞かされた。無視することもできず、自分が痴呆を演じるしかなかった。夜は個室を与えられたが、奇声を上げる人は少なくなく一睡もできなかった。もちろん酒はダメ。家に帰って半日寝込んだ。
それより職員から「オンとオフの切り替えができない職員は精神病にかかる」と言われたことにショックを受けた。サ高住も施設も「認知症」「死」は日常だ。職員の側からもアプローチしないといけない。精神疾患などで労災の認定を受ける職員が急増していると報じられている。
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国交省と懇談会には「健康で文化的な最低限度の生活を営める」サ高住の方向性を示してほしい。〝地獄の沙汰も金次第〟と言ってしまえば身もふたもない。