不動産会社などパートナー7社とスタートアップ5社の実証事業開始 デジタルガレージ
「Open Network Lab Resi-Tech第1期Demo Day」
デジタルガレージ(DG)は8月1日、不動産関連スタートアップを対象とした育成プログラム「Open Network Lab Resi-Tech」を通じ、大手不動産会社など7社とスタートアップ5社による実証事業を支援すると発表。同日、これまでの成果を発表する「Open Network Lab Resi-Tech第1期Demo Day」を行った。
実証事業として発表されたのは、「IT活用による集合住宅等の不在時宅配受取の検証」(Yper)、「先進技術を用いた、高齢者介護の支援の可能性検証」(Origin Wireless Japan)、「先進技術を用いた、施設の在籍状況モニタリングによるセキュリティ対策の可能性検証」(Origin Wireless Japan)、「物管理業務における点検および記録報告等の効率化の検証」(THIRD)、「小規模トランクルームサービスの需要及び利用満足度の検証」(データサイエンスプロフェッショナルズ)の5つのプロジェクト。
この中から、大量の紙とFAXが使われている不動産管理業務に着目し、建物の情報をアプリ、IoTデバイスなどで収集し、管理業務をAIに代替えするソフトウェア「管理ロイド」を開発したTHIRDが、審査委員による「ベスト コーポレート チーム アワード」と、来場者の投票による「ベスト オーディエンスアワード」の二冠を獲得した。
同社の井上惇社長は、「『管理ロイド』は16社、5万棟に採用されており、約67%のコストが削減できる。削減効果は1.3兆円」と話し、「テクと現場が乖離しているニッチな分野に泥臭く入り込んで爆発させたい」と喜びを語った。
当日は、シード期の育成・支援をメインとした4つのSeed Accelerator Program(シードアクセレレータープログラム)も発表され、今後、パートナー以外も含む企業からの投資や協業などが検討される。
DGは2018年11月、コスモスイニシア、竹中工務店、東急グループ、東京建物、野村不動産ホールディングス、阪急阪神不動産、三井不動産の7社をパートナーとするコンソーシアムを結成し、新規事業の創出や社会課題の解決を支援する「Open Network Lab Resi-Tech」を運営している。
「ベスト コーポレート チーム アワード」を受賞したTHIRD(右から2人目が井上社長)
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18:30から21:00までの約2時間半、登壇者が次から次へ難しい言葉や図表をプロジェクターに映し出し、機関銃のように話した。スマホも満足に扱えないアナログ人間の小生は必死でメモを取ったが、ほとんど理解できなかった。審査委員のDG代表取締役兼社長執行役員グループCEO・林郁氏が講評で「やや詰め込みすぎた」と語ったように、素人でも分かるようなプレゼンは出来ないものか。
だが、しかし、それぞれのプログラムはワクワクするものばかり。THIRDの「管理ロイド」が二冠を達成したのにも納得した。この前、三井不動産が働き方改革の一環として、年間約58,000時間の業務量と約840,000枚分の紙資料を削減すると発表したのと通じるものがあったからだ。
意味は全く分からなかったが、さもありなんと思ったのはOrigin Wireless Japanの「Life log」とTellus You Careの「Tellus」だった。前者はWi-Fiの電波を、後者は小型レーダーを用い、24時間365日、人の動き、睡眠時の呼吸、ドアの開閉、室内での転倒などをモニタリングして、健康寿命を伸ばそうという技術だ。
審査委員を務めた渋谷区長・長谷部健氏がこれに敏感に反応し、「Wi-Fiがいいか小型レーダーか、実験場を提供してもいい」と語った。
しかし、小生はこれは危ないと直感した。両刃の剣だ。24時間365日、人の動きを監視できる技術が悪用されたらどうなるのか。国がマイナンバー制度とリンクさせたら監視国家システムが完成する。われわれはタグを埋められた競走馬と一緒。ジョン グリシャムの最新作「危険な弁護士」(新潮文庫)にも一般市民が犯罪に巻き込まれた悲惨なシーンが描かれている。
年間30人分の業務と約7%の紙資料削減 三井不「働き方改革」で新システム導入(2019/7/12)
〝住まい〟切り口 スタートアップ育成プログラム組成・始動 デジタルガレージ(2018/11/8)
「日の出」の新しい顔「Hi-NODE(ハイ-ノード)」開業 野村不グループ×東京都
「Hi-NODE(ハイ-ノード)」
野村不動産とグループのNREG東芝不動産は8月2日、国家戦略特別区域の特定事業「(仮称)芝浦一丁目計画」の関連事業として東京都港湾局と連携して進めてきた「日の出ふ頭小型船ターミナル等整備計画」の「Hi-NODE(ハイ-ノード)」の開業式典を行った。「Hi-NODE(ハイ-ノード)」は3日開業する。
式典に出席した宮嶋誠一・野村不動産社長は「JR東日本さんと共同して進めている『芝浦一丁目計画』や浜松町・竹芝の再開発事業とも連携して水辺空間の賑わいを創出し、地域全体の活性化につなげていきます」と語り、出来栄えに満足していた。
小池百合子・東京都知事は「『水の都・江戸』を再生させるカギとなる『日の出』の新しい顔となる事業に敬意を表します。いま外国人観光客が最初に目指すのは箱根のようですが、『日の出』を『Hi-NODE(ハイ-ノード)』と読ませるのがとてもいい。都も積極的にPRしていきます」と祝意を述べた。
施設は、野村不動産グループは、今後、日の出ふ頭小型船ターミナルなどの施設を運営するとともに、水辺の賑わいと各エリアとの回遊性を創出し、舟運と地域の活性化を図っていく。
同計画は、土地所有者の東京都港湾局と野村不動産グループが協定を結び、事業を進めてきたもの。これまで閉鎖されていた日の出ふ頭と竹芝ふ頭をつなぐ連絡橋の耐震補強を行い、付近の信号・横断歩道を移設することにより開発が進む芝浦-日の出-竹芝の相互のアクセスを改善し、回遊性を向上させる事業も含まれている。
施設は、JR山手線・京浜東北線浜松町駅から徒歩9分、新交通ゆりかもめ日の出駅から徒歩4分、港区海岸二丁目に位置する延床面積約887㎡。事業主はNREG東芝不動産。設計は野村不動産。敷地所有者は東京都港湾局。
左から港区副区長・田中秀司氏、小池氏、宮嶋氏
小池氏(左)と宮嶋氏
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式典後、メディア向けの内覧会が行われた。〝緑のフェイクをやめよ〟と主張している記者だが、さすが野村不動産だ。店舗内には水盤付きの本物の蔦を使用するなど随所に緑が配されていた。大きな広場にはヤシなど南国風の植栽が施され、BGMには山や川で採取した3Dサウンドが流れるように工夫されていた。
驚いたのは芝だった。全面に天然芝が敷かれていると思ったが、そうではなく人工芝だった。しかし、安全性に課題もあるケミカル製品ではなく、原料にはわが国初で、イタリアの名門サッカーチーム・ユヴェントスが練習場に採用しているのと同様のヤシを使用したものだという。
触ってみたが、たしかに東京ドームのそれとはまったく異なっていた。ほんものの芝と間違えるほどだった。雑草ほどうするかは課題だ。
東京ウォータータクシーの海上タクシーも披露された。31カ所の乗降場の利用が可能で、8人乗りと6人乗りがあり1区間500円。酒も飲めるし、デッキではタバコも吸える。羽田空港(天空橋)-天王洲アイル-日の出-勝どき-築地-日本橋-浅草-押上などと繋がる。沢山の人が通勤・通学に利用する日がくるかもしれない。
広場
海上タクシー
整備された連絡橋(正面はインターコンチホテル)
店舗内の緑
平田元会長の独断専行が粉飾決算招く 住宅事業伸ばせ すてきナイス再生に期待
粉飾決算容疑ですてきナイスグループの元代表取締役会長兼最高経営責任者・平田恒一郎(71)ら3名が7月25日に逮捕されたのに衝撃を受けたが、その前日(24日)にすてきナイスグループから発表された本件嫌疑に関する「第三者調査報告書」には、平田容疑者らが有価証券報告書の虚偽記載を指示したことを示す内容が赤裸々に報告されている。
報告書は174ページにもわたる浩瀚なものだが、冒頭の部分で平田氏の独断専行が嫌疑を招いた要因であり、限りなく〝黒〟であることを匂わせている。引用するのもためらわれるが、二度とこのようなことが行われないよう他山の石にするためにも有益であると判断したので紹介する。
報告書の第2章「創業家一族の影響力」では次のように述べられている。
「平田恒一郎氏は、ナイスグループ各社の部長以上の人事権を掌握していた。また、新会社の設立や主要なマンションの販売等多くの事業を自ら指揮ないし監督し、職務の内外において厳しい姿勢で経営にあたっていた。例えば、新築マンションの完成後、未販売物件(完成在庫)が残った場合、完売になるまで会議等において毎回、住宅部門の役員に起立の上謝罪させたり、『清く、正しく、まじめなナイス』という行動規範を示し、自ら定めた『ワイシャツは白』、『役員は喫煙禁止』、『ゴルフ禁止』等の決まりに違反した役員の降格を命じるなどしていた」
「平成27年3月期においては、何事も平田恒一郎氏の了解を得ずに進めることができない状況にあった。また、すてきナイスを含むナイスグループ各社においては、平田周次氏及び平田恒一郎氏という創業家の意向に反しないようにするという企業風土が醸成されることとなり、特に平田恒一郎氏に対して意見を述べることすら躊躇するような状況となっていた」(28~29ページ)
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「ワイシャツは白」の是非はさておき、喫煙も飲酒もゴルフも個人の趣向の問題で、役員だからと言って禁止するのはどうかと思うが、「清く、正しく、まじめなナイス」は小生も何度も聞かされている。これほど立派な行動規範、生き方はない。いつもそうありたいと思っている。
それだけに、平田氏の言動は信じられない。平田氏は赤字を出すことを極度に恐れていたとも報告書にあるが、有価証券報告書の虚偽記載を指示することの重大さをどう認識していたのか。免震マンションやパワーホーム、CLTの活用などまじめな事業を展開している会社のやることではない。創業社長の息子・穴吹英隆氏が社長を解任され、会社も破綻した穴吹工務店の事例を思い出した。穴吹氏も若いころは腰の低い方だった。
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粉飾決算の舞台となった平田氏が実質的なオーナーであるザナックを「益出し」として利用したのは否定できないようだ。
報告書は、ナイスとナイスエストが所有していた土地や店舗、マンション(75室)をザナックに売却し、平成27年3月期に売上高を約30億円、売却利益を約4億円計上した案件では、「すてきナイスでは、連結の範囲に関する会計基準及び実務上の判断基準を遵守して判断していたとは言えず」(40ページ)、「ザナックの本店事務所の面積はわずか7.4㎡であって、そこに設置されている主な備品は、机、キャビネット、会議用テーブルが各1つと椅子6脚のみである」(77ページ)で、入退室は、ナイスからの出向により管理され、預金通帳、実印、印鑑などもナイスが保管し、経理業務もナイスが行なっていたと報告。
結論として、「実現主義の原則」要件を満たしておらず、会計上認められないと断定している。
また、「ザナックという会社は、すべての意思決定をナイスが行なっており、主体的に経営を行うような会社ではなく、実質的にナイスグループが自由にコントロールすることができる、いわゆるペーパーカンパニーである。このため、上記の取引はいずれも、ザナックがその合理的な経営計画の一環として主体的に行ったものではなく、ナイスグループが、決算対策のためや、対外的に売却済みであることや他社のマンション計画であることを装うため等、専らナイスグループの目的のために、都合よく財貨の移転が行われたように、法形式を整えたにすぎない」(103ページ)
「ナイスグループにおいては、直接又は間接に大半の株式を有している子会社でありながら非連結子会社としていた会社に加えて、実質的にナイスが支配して意のままに扱い得るグループ外支配会社が存在しており、とりわけグループ外支配会社には、ナイスグループにおいて取り扱いにくい事業や取引を行わせてきており、そのような非連結子会社及びグループ外支配会社の不適切な利用の一環として、今回のザナック関連案件が実施されたものとみことができる」(175ページ)と指弾している。
小生は、売れ残りマンションを建設会社や関連会社、取引先に買わせたデベロッパーの話をたくさん聞いているが、このような架空取引は上場会社のやることではないのは確かだ。
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第三者委員会は、同社の従業員と役員合わせ441名にアンケートを実施し、333名から回答を得ている。
具体的には、ザナック案件については言及する回答者が一定数あったほかは、①架空売り上げ計上に関与、あるいは役職員が関与したり、指示したりするのを見聞したことがあるのは全体の6%②他の会社との不適切な取引に関与したり、見聞したことがない人は97%③回答者の92%が自ら又は周囲の従業員が、利益追求と比較して、法令や倫理を重視する姿勢を有していると答えた④ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社だと思っている人は92%⑤上司の指示に法令や倫理の観点から問題があると思われる場合に、それを上司に言える、または上司以外の同僚に相談できる企業文化・企業風土があるか否かの質問に対しては、あまりないと答えた人は33%、ほとんどないと答えた人は5%-などが報告されている。
この結果に記者は安堵した。当然のことではあるが、92%の従業員も役員も「ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社」だと思っていることは、この会社は健全であることを示しているし、今回の事案を経験したからだろうが、法令順守に関する社内研修・教育体制の充実を求める声が37%あるのにも納得した。
すてきナイスグループは、この報告書も参考にしながら再生の道を歩むことになる。杉田理之社長は存じ上げないが、取締役の木暮博雄氏(前社長)はRBA野球大会に出場され、監督としても采配を揮っていた方だ。
今の野球部もベテランと若手が機能するいいチームだ。ナイスのいいところである〝アットホーム〟な風土を引き継いでいる。選手の皆さんには、野球部が主導して会社を元気にする気構えでこの難局を乗り切ってほしい。
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小生の取材フィールドである分譲住宅事業についてひとこと。同社の何よりの強みは地域を熟知している人材だと思う。同社はワンストップで様々なお客さんのニーズに対応するため、分譲と仲介・賃貸の垣根を取り払い、人的交流を進めている。これはやがて花を開くはずだ。
その人材からして同社の分譲事業はもっと伸ばせる余地があると思う。同社グループの2019年3月期の住宅事業の売上高は637億円で、内訳は戸建てが298億円、マンションが92億円、管理が246億円だ。一方で、営業利益は3億円で、売上高営業利益率は0.5%にしか過ぎない。ほとんど儲かっていないことになる。同規模の他社は4~5%は確保しているのと比べ極端に低い。
マンションも戸建ても同社が基盤とする横浜・川崎を中心とする神奈川県の競争は厳しいが、利益を生む事業に転換するのはそう難しいことではないと思う。
何よりも、「お客様の素適な住まいづくりを心を込めて応援する企業を目指す」経営理念はどこにも負けないからだ。この理念の具現化こそ免震マンションだ。免震マンションの供給実績7,471戸に上り、首都圏ではナンバーワンだ。
ただ、免震だけでは勝てない。最近のニーズを考えると立地条件に恵まれた用地の仕入れは必須要件で、商品企画の充実を図らないと生き残れない。基本性能・設備仕様レベルを向上させ、競争力を高めるべきだろう。商品企画では、コスモスイニシア、大和地所レジデンス、モリモトなどは参考になるはずだ。
地域の有力企業などと連携して街づくりなどに注力すれば年間500戸、250億円くらいには伸ばせるのではないか。
戸建てはよく分からないのだが、年間700~800戸というのは限界ではないか。背伸びしないでいただきたい。圧倒的な価格競争力がある飯田グループと競うのは容易なことではないし、大手デベロッパーなどとの競合も避けられない。長期優良住宅「パワーホーム」は大きな武器なのだろうが、何かが欠けているようにも思える。現場を取材して、その何かを探りたい。
CLTはこれから伸びる。先駆企業として事業拡大が望める。「木造ゼネコン®」のトップランナーになれるはずだ。
すてきナイス 元会長・平田恒一郎ら3人逮捕 粉飾決算容疑 横浜地検(2019/7/25)
ナイス逆転勝ち 山本スクイズ外す好判断 村尾が猛打賞 東急リバブル 先制及ばず(2019/7/10)
富士山に登らなくて済む!? 忙しいママ・パパ向け ナイス「DIWKS PARFAIT」(2019/1/13)
ナイス 同社国内最大 延べ床5,000㎡の軸組「久喜ことぶき苑」特養見学会に200名(2018/9/8)
ナイス 首都圏の注文戸建て強化 同社初のモデルハウス「横浜」にオープン(2015/11/21)
ナイス 常識破りの「住まいるCafe」来館者は前年度比8倍増9.6万人(2014/4/3)
ナイス 桁外れの地域貢献「ヨコハマ オールパークス」が完成(2012/3/16)
9階建て玉川学園学生寮や10階建て大林組研修施設など 国交省 木造先導プロジェクト
国土交通省は7月26日、「木造先導プロジェクト2019」(第1回)について一般建築物6件、木造実験棟1件のプロジェクトを採択したと発表した。プロジェクトは次の通り。
【一般建築物】
大崎市鳴子総合支所庁舎等複合施設建設事業(地上2階建て延床面積1,745㎡、補助限度額82,422千円、講評:2層通しのCLTパネルを使用し、内部架構の簡易化や現しでの利用を可能とした木造建築)
中央大学多摩キャンパス学部共通棟新築工事(6階建て延べ床14,500㎡、補助限度額15,803千円、講評:CLT耐震壁の一部を現し仕上げにするなど構造材として積極的に木質材料を使いつつ、木を見せるための工夫が図られている
玉川学園学生寮建設工事(9階建て延べ床6,147㎡、補助限度額300,000千円、講評:9階建て学生寮を木造軸組構法と免震構造により建設する計画であり、これまでの木造建築の階数を大きく上回る規模のプロジェクト)
(仮称)OYプロジェクト計画(10階建て延べ床3,497㎡、補助限度額300,000千円、講評:10階建て大林組研修施設を木造軸組構法と免震構造により建設する計画。これまでの木造建築の階数を大きく上回る規模のプロジェクト)
京丹波町新庁舎整備事業(2階建て延べ床4,906㎡、補助限度額153,668千円、講評:地域産材を活用して、まちづくりとまちの防災の拠点となる新庁舎を建設するプロジェクト)
旧岡山市立福谷小学校改修計画(3階建て延べ床2,450㎡、補助限度額25,337千円、講評:校舎を事務所及び工場(育苗施設)に用途変更する、コンバージョン。一部の既存RC壁にCLT耐力壁で耐震補強を行う)
【木造実験棟】
CLT遮音実験棟新築工事(2階建て80㎡、補助限度額30,000千円、講評:国内に少ないCLT建築物の遮音性能を検証するための実験棟)
全役員がSDGsバッジ 住林は障がい者による手作り木製 熊谷組は市販のメタル製
「みどりとSDGsセミナー」(熊谷組本社で)
住友林業と熊谷組は7月24日、協業推進セミナー「みどりとSDGsセミナー」を開催。三井住友信託銀行 フェロー役員兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー・金井司氏がESGやSDGsの最新の動向、同行の取り組みについて講演したほか、金井氏と熊谷組 設計本部 副本部長・羽迫英男氏、住友林業緑化 生物多様性推進室長・伊藤俊哉氏のトークセッションが行われた。
セミナーには熊谷組の関係者を中心に約200名が参加。熊谷組 代表取締役社長・櫻野泰則氏、住友林業代表取締役副社長・佐藤建氏ら両社の役員・幹部らも多数参加した。
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最大の収穫は、住林は役員・執行役員のほぼ全員25名が愛媛県新居浜市の子会社で働く障がい者が手づくりで作った木によるSDGsバッチを付けており、今後、部長クラスにも配布すると聞いたことだった。
佐藤副社長に「わたしにも一つください」とおねだりしたが、「ダメ。これは売りものでもただで配るものじゃない。そんなに簡単に作れない」と断られた。(顔には〝お前のようなSDGsを理解しない者にあげられるわけがない〟と書いてあった)
熊谷組も同じで、この日参加した役員はほとんどSDGsバッジを付けていたそうだ。こちらはアマゾンでも買えるメタル製で値段は千数百円。
佐藤氏
佐藤氏が付けているSDGsバッジ
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この日(24日)の午前中は、「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」主催によるSDGsの先進的取り組みを紹介するイベント(別掲の記事参照)があったので、1日に2度もSDGsの取材ができると、記者はおっとり刀で熊谷組本社の会場に駆け付けた。午前のイベントの参加者は50~60名だったのに対し、こちらは約4倍の200名。両社による画期的な木造建築物の新工法でも発表されるのではないかと胸を膨らませた。
メディアに公開されたのは金井氏の講演の後の後半の部分のみで、その冒頭に住友林業緑化と熊谷組が作成したSDGs・環境不動産の8ページのパンフレットの紹介が行なわれた。
パンフレットの表紙は、二人の子どもが手を繋いで逆光の森を歩くあのユージン・スミスの写真そっくりだったので〝大丈夫か〟と心配になり、事例紹介として熊谷組が施工した台北市の「陶朱隠園(タオヂュインユェン)」や「愛知学院大学名城公園キャンパス」はともかく、35年も前の施工は熊谷組でなかった「三井住友海上火災の駿河台ビル」が掲載されているのにあきれ果ててしまった(住林は素晴らしい木造の非住宅事例がたくさんあるはず)。
トークセッションでも真新しい取り組みは紹介されなかった。この時点で小生のフラストレーションは最高潮に達した。
極めつけは、熊谷組の櫻野社長の締めの挨拶だった。櫻野社長は「恥ずかしながら、熊谷組は(SDGs・環境不動産)の取り組みに後れを取っている。意識を鼓舞してSDGsに貢献したい」と語った。
これは身内に語った率直な声だったのかもしれないが、少なくないメディア(20人くらいいた模様)の前で話してほしくなかった。聞きたくもなかった。
セミナー後、櫻野社長に記者は「後れを取っているというのは、木造建築の耐震・耐火・遮音・コスト全てという意味か」とストレートに質問した。櫻野社長は「後れを取っているというのは意識の問題。木造建築では10階建ての木造建築を建てるライバルの大林組さんなどに負けない」と答えた。
パンフレット表紙
櫻野氏
〝世界に発信〟 企業×自治体 先進的SDGs取り組み事例紹介「City Lab Ventures」(2019/7/25)
すてきナイス 元会長・平田恒一郎ら3人逮捕 粉飾決算容疑 横浜地検
すてきナイスグループの元代表取締役会長兼最高経営責任者・平田恒一郎(71)、元代表取締役副会長・日暮清(67)、経理担当の元取締役・大野弘(63)の3容疑者が7月25日、金融商品取引法違反により横浜地方検察庁に逮捕されたことを各メディアが報じた。逮捕容疑は、2015年3月期決算でペーパーカンパニーを通じて架空取引を行い、有価証券報告書に4億9,600万円の経常利益があったなどと虚偽の報告を記載したため。
同社は当日、「当社元代表取締役等が逮捕されたことを極めて重く受け止めております」「第三者委員会の調査報告の内容につきましても十分に検討のうえ、可能な限り速やかに再発防止策の策定等の必要な対応を進めてまいります」とコメントした。
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大変ショックを受けた。この日(25日)、同社が昨夜(24日)発表した174ページにもわたる「第三者委員会調査報告書」を途中まで読み、取材のため出かける昼過ぎに平田元会長らが逮捕されたことを知った。3人とも取材や決算発表会で何度もお会いしており、平田元会長とは、同社に入社したころからのお付き合いで、年齢も近いことなどから親近感があり、免震マンションや木造建築物、CLT活用などについての応援記事を書いてきただけに残念でならない。
唯一の救いは、第三者報告書では一連の粉飾決算は平田元会長らごく限られた役員しか関与しておらず、多くの社員は同社はきちんと法令順守している会社だと思っていたことだ…だからこそ裏切られたという気持ちも大きいだろうが…。
第三者報告書はほぼ目を通したので、気が付いたことを改めて紹介したい。
〝世界に発信〟 企業×自治体 先進的SDGs取り組み事例紹介「City Lab Ventures」
「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」オープンイベント
サスティナビリティ特化型のベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures(シティラボ ベンチャーズ)」は7月24日、「地域との共創」をテーマとした第1回目のオープンイベントを開催。TBM×神奈川県、ユーグレナ×石垣島、自然電力×小布施町のベンチャーと自治体の共創・連携事例が報告された。
神奈川県のいのち・SDGs担当理事・山口健太郎氏は「『SDGs日本モデル』宣言を世界に向けて発信した。すでに148の企業・団体などの賛同を得ている。県がハブとなって走りながら考え、行動に移していく」と話した。神奈川県は、国からSDGs達成に向けた先導的な取り組みを行っている10の「自治体SDGsモデル事業」に選定されている。
山口氏
県の報告を受けたTBM経営企画本部 ニュービジネスデザイナー・岡澤友広氏は、「LIMEXを世界に向けて発信していく」と語った。LIMEXは同社が開発した主成分が石灰石からなる新素材で、プラスチック代替製品として期待されている。先に同社や県などの22団体・企業から構成される「かながわアップサイクルコンソーシアム」が結成され、2021年の自走を目指している。
岡澤氏
ユーグレナは、ミドリムシの食品化と大規模培養プラント建設に成功し、2005年に設立されたベンチャー企業。へルスケアやエネルギー・環境事業などの多角化を進めており、2014年に東証一部に上場。同社特命担当室テクニカルディレクター・村花宏史氏は、「石垣島はミドリムシの生産拠点で、当社にとって〝聖地〟。ネーミングライツによって商店街を『ユーグレナモール』としたのは大きなメリット」と話した。
村花氏
小布施町役場企画政策課(地域おこし協力隊)・塩澤耕平氏は、「小布施町は40年前から街づくりに取り組んでおり、今後も町内外の企業、団体、大学などとの協働を積極的に」進めていくと語り、塩澤氏の奥さんでもあるながの電力・塩澤美幸氏は「小布施町の使用電力の20%供給を目指すとともに、通信、インフラ、農業、非観光、小売り事業なども展開していく」と夢を語った。
塩澤ご夫妻
小水力発電によって長野県小布施町の約350世帯に電力供給している自然電力エナジーデザイン部マネージャー・佐藤李子氏は「『1% for community』基金事業では、熊本のクラフトビール、こども食堂、塾アブなどいくつか投資先が決まっている」と報告した。
佐藤氏
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わが国のどんどんシュリンクしていく経済社会、齢70のわが身の行く末を考えると世紀末の像しか描けないのだが、この日の若い方たちの熱のこもった報告を聞いて〝日本も捨てたもんじゃない〟と思えてきた。とてもハッピーな気分になった。明るい未来がほのかに見えてくるではないか。
報告の中でもっとも注目したのは自然電力の「1% for community」だ。頭が下がる。
同じような呼称としては「経団連1%(ワンパーセント)クラブ」があるが、これは経常利益や可処分所得の1%を社会貢献活動に拠出しようという活動だ。
経団連の報告によると、2017年度(357社)の社会貢献活動支出合計額は1,997億円で、1社平均は5億9,300万円だ。
これが多いか少ないか、記者は判断材料がないのでよく分からないが、企業の2017年度末の内部留保額は446兆円にものぼっていることを考えると、やはり少ないのではないか。GDP550兆円の1%をSDGsに充当すれば、消費増税と同額になる。SDGsにどんどん投資する企業・団体・個人が増えることに期待したい。
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小生は、BSやCSで毎日のように西武ライオンズの中継を観るのだが、ユーグレナはCMのスポンサーにいつも登場するので名前はよく知っている。
この日(24日)、イベント終了後、同社から乳酸飲料「飲むユーグレナ」が振舞われた。とても美味しかったので、もう1個もらってかみさんに飲ませた。「とても美味しい」とのことで、「30本入り7,020円は妥当な値段」と評価した。
皆さんにもお勧めだ。
野村不 従業員10名未満のオフィスビルブランド「H¹O(エイチワンオー)」始動
「H¹O 日本橋室町」ントランス
野村不動産は7月17日、従業員10名未満の小規模オフィスビルブランド「H¹O(エイチワンオー)」(H¹O:Human First Office)を立ち上げ、第一弾の「H¹O 日本橋室町」を2019年11月にオープンすると発表した。
スモールビジネス(従業員10名未満の事業者)のニーズを徹底分析し、①プライバシーが確保された個室執務空間②有人受付コンシェルジュが日中常駐③共有会議室・ラウンジを設置④全室個別空調、一部物件シャワールーム・駐輪場・宅配ボックス設置-などが特徴。
今後、東京都心五区を中心に新築、リノベーション、PMO内、大規模ビル内に設置し、2023年度末までに新規15拠点の開設を予定している。
「H¹O 日本橋室町」は、9階建てPMO日本橋室町内にあり、最小1.43坪(1~2名用・3区画)~最大21.37坪(21~24名用・1区画)。
「H¹O 神田」完成予想図
足立区 150㎡以上の宅地開発の1宅地最低敷地66㎡に 10月に条例施行
東京都足立区は10月1日から、150㎡以上の宅地開発事業を対象に戸建て住宅の最低敷地面積を66㎡以上と定めた「足立区宅地開発事業調整条例」を施行する。
「良好な住環境の保全及び安全で快適な生活環境を形成することを目的」(同条例第1条)とするもので、建ぺい率が80%の地域(商業、近隣商業地域を除く)と建ぺい率が60%の地域(駅から概ね500m以内)は66㎡、建ぺい率が60%の地域(駅から500m以上)は70㎡、建ぺい率が50%の地域は83mとしている。
同一の事業者が宅地開発事業により戸建て住宅を建築し、検査済証の交付を受けた日から起算して3年以内に行う一体的な事業は、1の宅地開発事業とみなす。
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7月8日付で「狭小住宅」の取材を開始すると書いたが、この足立区の条例は全く知らなかった。今日(7月16日)、足立区に取材に行って初めて知った。それまでの「足立区環境整備基準」はあくまでも「指導要綱」だ。拘束力が異なる。
記者も賛成だが、これでは150㎡未満の敷地分割は防げない。仮に140㎡を3分割したら46.7㎡(14.1坪)だ。150㎡と140㎡の土地が連坦していたら、前者は2戸しか建てられないが、後者は3戸建つ。また、150㎡の土地を50㎡と100㎡に分筆して2業者に売れば、やはり50㎡の戸建てが3戸建つ。これで良好な住環境の保全が図れるのか。
記者が取材したいのは敷地面積が60㎡以下の狭小住宅がどれくらい建設されているかだ。相当あるようだが、全く見当もつかない。
各自治体はデータを持っているはずだが、「建築計画概要書」が閲覧できるのは場所を特定しなければならず、しかも1回10件以下の制限を設けている。本気で住環境の保全を考えるなら、いったい敷地が60㎡以下の狭小住宅がどれくらい建設されているのか広く住民に伝えるべきだと思う。
都心部で増殖する「狭小住宅」とは何か 「居住の自由」か居住環境の保護か(2019/7/8)
埼玉県「彩の国みどりの基金」への寄付累計1473万円 上田知事から感謝状 積水ハウス
上田知事(右)から感謝状を受け取る木村氏(中央)
積水ハウスは7月11日、同社の環境配慮型住宅「グリーンファースト」の売り上げの一部を埼玉県「彩の国みどりの基金」に寄付している額が昨年度122万8千円、累計1,473万2千円(7,366棟)に達したことを受け、上田清司埼玉県知事から感謝状の贈呈を受けた。
県庁で行われた感謝状贈呈式で上田知事は、「埼玉の豊かな自然を守り育てるため多大な寄付をされた」と謝意を述べ、同社埼玉営業本部の木村良典営業本部長に感謝状を手渡した。
木村氏は、「当社は幸せな住まいを一貫して追求している。家は百年、一生もの。いいものをつくり、次の代はリフォームして、ずっと住んでいただきたい」と応えた。
「彩の国みどりの基金」は緑の創出や森林保全を推進するもので、同県が08年に自動車税の一部と寄付金を財源として創設。校庭の芝生化や森林整備、県民参加の植樹会などの事業を行い、昨年度は1,203haの緑を再生した。
同社は2010年、基金制度に賛同し、県内で建設した「グリーンファースト」1棟につき2千円寄付することを始めた。戸建て住宅1棟に〝3本は鳥のために、2本は蝶のために〟の「5本の樹」計画を盛り込むことを基本としている。
昨年度は木育事業として県農林部から50万円の助成を受け、県内5カ所のショールームで、キッズルームを県産材に触れられる空間にリニューアル。床と壁の一部及び玩具に県産の杉と檜を取り入れた。
同社のグリーンファーストの割合は堅調に推移し、昨年は79%、埼玉県内では8割超となった。
上田知事と懇談する関係者(知事室で)