〝アホぬかせ、東京目指しとんとちゃうねん〟淀屋橋odona前で「桜SAKEフェスタ」
「桜SAKEフェスタ」
三井不動産は4月5日、御堂筋まちづくりネットワークとともに御堂筋の活性化を目指す「御堂筋天国」プロジェクトを開始。プロジェクト第1弾として淀屋橋odona前で「桜SAKEフェスタ」を開催した。
プロジェクト名には、御堂筋を自由に新しく、親しみやすいエリアにしようという思いが込められている。今後はマルシェの開催だけでなく、大阪が世界中から注目される2025年までに産・官・学など、様々なステークホルダーを巻き込みながら、2037年には御堂筋エリアが新たな観光地として認知を獲得し、御堂筋に人が集まり、にぎわいのあるエリアとなることを目指していく。
プロジェクト説明会で三井不動産常務執行役員関西支社長・弘中聡氏は、「10年前にビルがオープンし、マルシェをスタートさせ、2年前からテナントの農林中金さんにも協力していただいている。さらに御堂筋を賑やかにするため、大阪市の協力も頂き今回のプロジェクトを立ち上げた。少なくとも年に4回はこのように夜も楽しめるイベントを開催し、点から線へ、線から面へ拡大していく」と挨拶した。
続いて登壇した農林中央金庫常務執行役員・松永諭氏は、「近畿管内の食と農林水産のステークホルダーの協力を頂き、消費拡大と御堂筋の賑わいの増大に貢献したい」と語った。
また、御堂筋まちづくりネットワーク事務局長(竹中工務店)・髙梨雄二郎氏は、「2001年、25社でスタートしたネットワークはテナントも含め49社に増えた。エリアマネジメントも導入して品格ある街づくりを進めたい」と話した。
大阪市都市計画局長・高橋徹氏は、「流失企業増加に歯止めをかけようと2014年度に従来の容積率1,000%を1,300%に、高さ規制50mを100mに緩和する地区計画を定めた。今後も2025年の大阪・関西万博、2037年の御堂筋100周年記念へと一体的に取り組んでいく」と述べた。
この日は、淀屋橋odona前に3mの本物の桜が飾られ、オープンスペースでは灘・伏見の日本酒や大阪のワイン、近江牛や犬鳴豚、 さくらびんちょうなどつまみも提供され、オフィスワーカーなどでにぎわった。
三井不動産と農林中央金庫は、淀屋橋odona前で過去8回マルシェを開催し、平均2,000人の来場を生み、御堂筋のにぎわいを創出してきた。2001年に設立された沿道のビルオーナーやテナント企業等で構成する御堂筋まちづくりネットワークは、活力あるビジネスエリアとして発展し続けていくことを目指して活動している。「大阪都市魅力創造戦略」でも、世界に発信するクオリティの高いにぎわい空間の形成に向けた歩行者空間の充実が位置づけられている。
1937年5月に開通した梅田-難波を南北軸で結ぶ御堂筋は幅員43.6m、総延長約4キロ。沿道には800本以上の銀杏が植えられている。
左から弘中氏、松永氏、高梨氏、高橋氏
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市営地下鉄御堂筋線淀屋橋駅に直結している2008年竣工の淀屋橋odonaに着いて分かったことが一つ。他のビルはほとんど歩道一杯に建てられているのに、このビルの柱は歩道から約4mセットバックされていたことだ。道路に面した建物の幅は50mはあった。つまり、4×50=200㎡(柱から壁までの距離を合わせるとこの倍くらいか)の空間が今回のイベント会場にもなったわけだ。
公開空地が確保されたのは、2004年(淀屋橋地区)に都市再生特別地区が指定され、高さ制限が緩和されたためのようだ。その後、市は2014年に地区計画を定めた。
「odona」はどのような意味か地元の人に聞いたら「大人も驚く」という意味だという。大阪弁ではないそうだ。
右端の酒は「月のケイ」ではなく「月のカツラ」です(念のため)。弘中氏のお勧めは菊政宗の「百黙」
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少しはイベントに貢献しようと、屋台に並んだ酒造・ワインメーカーの酒を1杯100円から飲み比べ3杯500円まで全て飲んだ。10杯くらいか。
酒ばっかり飲んだもんだから、勤務帰りの女性グループからは酒と共に「水飲んだほうがええよ」と水もおごってもらった。小生が「大阪は東京の半分」などと挑発したら、次のような小気味いい大阪弁が返ってきた。
「何、ぬかしとんねん、アホ、ボケ、アホヌカセ。大阪は東京目指しとんとちゃうねん。オンリーワンや」
この方たちは「何、ぬかしとんねん、アホ、ボケ、アホヌカセ…」とは別のグループ
「新梅田シティ」の里山
安藤忠雄氏の発案で建設された「希望の壁」
51階建て全871戸免震タワー「グランドメゾン新梅田タワーTHE CLUB RESIDENCE」建設現場(坪単価は350万円くらい予想したが、もっと高くなるか)
東急不HDグループ 「こま武蔵台」団地再生で東大と協働
「こま武蔵台」after(左)とbefore
東急不動産ホールディングス、東急不動産R&Dセンター、東京大学は4月4日、東急不動産が昭和52年(1977年)に供給した埼玉県日高市の「こま武蔵台」団地で、東京大学の学生が発案した空き家のリノベーションプランを実施するなど団地再生のサポートを共同で行ったと発表した。
同団地は、西武池袋・秩父線高麗駅圏の総面積約93ha、総戸数約2,210戸の大型団地。少子高齢化の進行により居住者の約半数が高齢者となり、空き家が増加する社会課題を抱えている。
この問題を解決するため、R&Dセンターと東大工学部都市工学科の学生が中心となり、空き家となったタウンハウスを若い世代向けにリノベーションを実施。東急ホームズが施工を担当した。
同大学工学部都市工学科准教授・樋野公宏氏は、「この一軒をきっかけにこま武蔵台全体の活性化につながることを狙っています」とコメント。R&Dセンターはこの取り組みをテストケースとし、若い世代を呼び込み、安心で快適な多世代交流や団地活性化をサポートしていくとしている。
住友林業が施工し、新素材研究所が設計した清春芸術村ゲストハウス「和心」公開
「和心」
住友林業は4月6日、同社が施工を担当した山梨県北杜市の清春芸術村ゲストハウス「和心」の内覧会を開催した。南アルプスを望む複合施設「清春芸術村」に隣接するもので、甲斐駒ヶ岳はまだ雪をかぶり、県の指定天然記念物「清春のサクラ」も一、二分咲きだったが、春に目覚めたのかウグイスは「妙なるかな、ホーホケキョ、ケキョケキョ」と大声で見学者を歓迎した。
「和心」は、現代美術作家の杉本博司氏と建築家の榊田倫之氏が率いる新素材研究所が設計し、同社が施工を担当。新素材研究所が表現したい空間の実現のため、同社オリジナルのビッグフレーム(BF)構法と鉄骨造の混構造を初めて採用。銅板葺きの大屋根を支えるとともに、角に柱を配置せず南側と東側の2方向に広がる大開口を実現した。
また、大屋根により生み出された広い軒先空間が建物と庭を繋ぎ、自然を楽しむことのできる空間を演出。素材に秋田杉(建具など)、十和田石・ヒバ(浴室)、玄昌石(土間)、庭には滝根石を用いているのが特徴。
物件は、山梨県北杜市長坂町中丸に位置する敷地面積約800㎡、延床面積約160㎡。木造(BF構法)+S造。竣工は2018年6月10日。宿泊は、清春芸術村に寄付を行っているサポート会員限定で1泊50万円。
清春芸術村は、創立者である吉井長三が、小林秀雄、今日出海、白洲正子、東山魁夷夫妻、谷口吉郎、正田英三郎らと桜の季節に当地を訪ね、その美しさに魅せられて1980年に設立された。「アトリエ清春荘」は小林秀雄が命名した。
敷地内にはシャガールやスーチンをはじめとする巨匠がアトリエ兼住居として利用したものと同じ設計の「ラ・リューシュ」、ルオー、梅原龍三郎、岸田劉生、バーナード・リーチなどの作品を収めた「清春白樺美術館」、安藤忠雄氏が設計した「光の美術館」、ルオーが制作したステンドグラスをはめ込んだ「ルオー礼拝堂」、梅原龍三郎のアトリエを移築した「梅原龍三郎アトリエ」、「白樺図書館」などがある。
杉本氏
左から吉井氏、杉本氏、榊田氏
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言葉などいらない。とくと写真をご覧いただきたい。杉本氏はニュース・リリースに一文を寄せ、次のように書き出している。「和風住宅とはなにか、それは庭と共にあることではないかと思う。古代、源氏物語絵巻に描かれる寝殿造りにも、壺と呼ばれる美しい庭があり、その部屋に住まう美しい人をも指していた」と。そして「現代は敗戦の痛手からか、日本人は庭を持つ気概を無くしてしまった。相続の度に家屋は縮小し、庭にはプレハブが嵌められ、畳は捨てられた。和風はかろうじて高級旅館にその名残を留めるだけとなってしまった」と。
建物の四囲を庇が囲っており、母屋は3分の1くらいに抑えられていた。軒裏には「もうこんな柾目の材料は手に入らない。最後かもしれない」と杉本氏が言った秋田杉の柾目の板が貼られていた。
「庭」と言えば龍安寺をすぐ思い浮かべるが、この「和心」の庭も美しい。庭には凹と凸型の滝根石が鎮座していた。杉本氏によると、福島原発から30キロの山奥で「岩盤から数億年の眠りを覚まされて剥がされた数千個の石達の中から、特別な気配を送ってくる二つの石に邂逅した」とのことで、その形から杉本氏は「風神雷神関係であり、夫婦和合そのもの」と形容した。男石は重さ5~6トンくらいで、「女石(逆にすると石女)の窪みからは汲めども尽きぬ清水が滾々(原文は懇々)と湧き出る」という。
杉本氏は、「建物はよくできたので、江戸後期の真言僧の篇額『和心』をプレゼントした」と語り、「(清春芸術村オーナーの)吉井さん(仁実氏)のお子さんは6カ月。女石で水浴びさせよう」と冗談を飛ばした。
小生は伊勢しかないかいづの干物を「夫婦和合の干物」と呼ぶが、確かに「和心」の二つの石はぴったりと重なりあっていたと思われるほどの対をなしていた。小生と同年代と思われる山梨の女性に「どっちが上ですかね」と尋ねたら、意味は通じたのか通じなかったのか、「もちろん女が上」と返ってきた。
手前が「男石」
手前が「女石」
伊勢のかいづの干物
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過去2度、三菱地所の「空と土プロジェクト」を取材しており、北杜市を訪ねるのは3回目だった。甲斐駒ヶ岳は雪をかぶり、梢を揺さぶる風の音にたじろいだが、清澄なウグイスのさえずりに春を感じた。
清春芸術村は1日かけても飽きない施設だろう。24畳大のアトリエがそのまま再現された「梅原龍三郎アトリエ」には梅原が好きだった紅殻色の京壁とモデルを横たえさせたであろう床の間があり、邸の近くには小林秀雄邸にあった枝垂れサクラが植えられていた。ルオーの制作した唯一のステンドグラスはいったいいくらの値がつくだろうかと想像するだけで楽しくなった。
藤森照信氏が設計した茶室「徹」とセザールのオブジェ「親指」だけは理解できなかった。
「光の美術館」
「ラ・リューシュ」
「梅原龍三郎アトリエ」
紅殻色の京壁(左)とパレット
ルオーが制作したステンドグラス(左)と岡本太郎のオブジェ
茶室「徹」(左)セザールのオブジェ「親指」
レストランのウッド製テーブル(光と影が戯れていた)
世界旗艦店の「無印良品 銀座」「MUJI Diner」「MUJI HOTEL GINZA」開業
「無印良品 銀座」外観
良品計画は4月2日、世界旗艦店となる「無印良品 銀座」、レストラン「MUJI Diner」、および「MUJI HOTEL GINZA」を中央区・銀座三丁目の読売並木通りビルに2019年4月4日(木)開業するのに先立ち、メディア向け内覧会を行った。午前と午後の部合わせて約600名の報道陣が参加した。
同ビルは、東京メトロ各線銀座駅から徒歩2分、JR有楽町駅から徒歩3分、中央区銀座3丁目の並木通りに面する敷地面積約1,343㎡、延床面積約14,241㎡の地下3階、地上10階建て。基本設計・工事監理・実施設計監修は石本建築事務所。実施設計・施工は竹中工務店。施主・事業主は読売新聞社。三井不動産がデベロップメントマネージャーとして、開発計画の立案、設計・施工管理、テナント誘致などを行い、竣工後はテナントへのマスターリースを担う。
今回オープンする世界旗艦店は、「人と人」「人と自然」「人と社会」のより良い関係をつくるプラットフォームでありたいという考えのもと、世界中から訪れる人や銀座界隈ではたらき生活を営む人、生産者など店舗に関わる人たちがそれぞれに想いを馳せ、出会い、繋がりが生まれる場となることを目指している。来館者は約230万人を目指す。
地階が「MUJI Diner」、1階から5階が食品、紳士・婦人ウェア、バッグ、靴下、インナー、文房具、キッチンテーブル、収納家具、デザイン工房などの物販店、6階から10階が中国・深圳、北京に次いで3店舗目で日本初となる「MUJI HOTEL GINZA」と「ATORIE MUGI GINZA」。
ホテルは6階から10階部分で、客室は79室。客室面積は13.62~51.62㎡。ルームチャージは14,900円(14~15㎡)~55,900円(52㎡)。企画・内装設計・運営はUDS。
良品計画社長・松﨑曉氏は、「2001年に開業した旧有楽町店は、それまでせいぜい150坪くらいだった店舗面積を1,000坪に挑戦したものだった。昨年末、再開発で店を閉めることになったが、来店者は190万人にまで伸びた。次のロケーションを考えているとき、運命的な出会いともいうべき、この(読売新聞が所有し、三井不動産が開発したビルへの入居)話が持ち上がった。そして、UDSさんとも組んで三位一体の世界旗艦店をつくることになった。ホテルは長い間の夢だった。当社は1880年に西友のプライベートブランドとしてわずか40品目でデビューしたが、現在では約7,000品目に上り、店舗数は世界で990店舗となった。今回の店舗は、環境、売り場、サービス、接客も含め当社の世界観が常に感じられ、また地域の文化・伝統も大事にして取り組んだ」などと挨拶した。
松﨑社長
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食品、雑貨はよくわからないので、「ATORIE MUGI GINZA」と「MUJI HOTEL GINZA」を集中的に見学した。「ATORIE MUGI GINZA」では、クスノキのカウンターに驚いた。4枚を繋ぎ合わせたもので、長さ10m×幅約1.3m×厚さ20cmくらいあった。小田原城内にあった古木で樹齢は約400年。20年前に伐採され、保存されていたものを利用。値段は1,400万円とか。デザイここで酒を飲むのも、備え付けの本を読むのもいい。開業にあわせ行われる「言葉からはじまるデザイン 栗の木プロジェクト展」も面白い。
ホテルは、「アンチゴージャス、アンチチープ」がよく表現・演出されていた。自然素材に徹底してこだわっているのが特徴で、ロビーカウンターの壁に100年以上前の都電の敷石が用いられていたほか、古い船の鉄板や古材・廃材が共用部に多用されていた。床のオーク材は幅30cmもあった。
客室のメインは2.5m×10mのウナギの寝床のような形状だったが、それほど違和感はなかった。それよりオーク材、塗り壁、布クロスが用いられ、天井高が2800~2900ミリあったのに唸らされた。
予約は代理店を通さないで直接ホテルのホームページに限定するというが、これも賛成。ホテルの料金は訳が分からない。6月まではすでに満室だという。
「ATORIE MUGI GINZA」ギャラリー
「ATORIE MUGI GINZA」サロン
「言葉からはじまるデザイン 栗の木プロジェクト展」
クスノキのカウンター
「ATORIE MUGI GINZA」
「MUJI HOTEL GINZA」
Aタイプ
廃材を利用した壁とサイン
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記者はデパートなどで時間を浪費するのが好きではなく、「無印良品」のことはよく知らないのだが、〝ノーブランド〟でありながら品質にこだわった理念に惚れこんだ。外から眺めるだけだったが、店舗デザインなどが美しいと感心した。西武ライオンズファンでもあり陰ながら応援していた。
西武・西友グループから離脱したとき、「無印良品」と別れるのは西武にとって自殺行為だと思ったものだ。
改めて同社の企業理念を調べた。①良品価値の探求 「良品」の新たな価値と魅力を生活者の視点で探求し、提供していく②成長の良循環 「良品」の公正で透明な事業活動を通じグローバルな成長と発展に挑戦していく③最良のパートナーシップ 仲間を尊重し、取引先との信頼を深め、「良品」の豊かな世界を拡げていく-とある。この日、内覧会に臨んだ松﨑社長からもぶれない理念をしっかり聞いた。
理念・哲学をしっかり守ってきたからこそ今日があるのだろう。同社の平成30年2月期の売上高は3,795億円、経常利益は459億円だ。
1階青果売り場
レストラン「MUJI Diner」
リテラシーに欠ける「平成の終焉」やめて 国交省 新・不動産ビジョン2030(案)
記者は3月29日付「こだわり記事」で「『たたむ』『心理的瑕疵』『平成の終焉』に違和感 国交省 新・不動産業ビジョン2030」の見出し記事で、「「『幕を閉じる』もあまりいいイメージではないし、『たたむ』も適当でない。平凡だか『平成から〇〇へのリレー』『平成から〇〇へ年が明ける』などのほうがよほどいいと思うがどうだろう」と書いた。「平成の終焉」はビジョン(案)の「おわりに」の冒頭でそう記されていたのに違和を感じたからだ。
なので、「平成」から「令和」への改元をマスコミはどう伝えたのだろうかと、新元号発表があった4月1日の全国紙4紙の夕刊(産経新聞は2002年に夕刊を廃止した)を買って読んだ。
朝日新聞は「『平成は』は、残り1カ月で幕を閉じる」(1面)「時代はいよいよ『平成』から『令和』へとバトンタッチされる」(11面)と書いた。
読売新聞は「ゆく平成 くる令和」の見出しを2面で用いた。また、1面の「よみうり寸評」氏は「耳が痛くなるよう時事川柳を、ちょっと前に東京版の紙面で読んだ。〈平成を最後最後とこき使い〉。◆小欄にも身に覚えがある◆乱発気味だった『平成最後の』という言い方も今月限りで姿を消す」と書き出し、最後は「明治以降、誰も経験していない30日間のカウントダウンが始まった」と締めている。
日経新聞は第1版のトップ記事のリードで「平成は…30年4カ月で幕を閉じる」と報じ、第4版でも1面の記事のなかでそう書いた。
毎日新聞は「4月30日に退位する陛下は『上皇』となる」「明治以降では初の退位に伴う改元となる」と記した。
産経新聞は「平成の終焉」などと絶対書かないだろうと予想したが、その通りだった。翌日の「主張」は、「花咲かす日本を目指そう」という見出しで新元号をほめちぎり、「天皇を戴く日本の国が、途切れることなく独立を保ち続けた」「天皇と国民が相携えて歴史を紡いできた」「将来は制度を改め、閣議決定した元号を新天皇陛下が詔書で公布されるようしていただきたい」などと皇国史観を彷彿させる力の入れようだった。24~25面社会面では「希望の花 咲かそう 祝賀列島 幸せ続け」と字余り字足らずの見開き見出し記事を発信した。
このように、「平成の終焉」などと報じたところは1紙もなかった。
だから言う訳でもないが、国交省にはデリカシー、リテラシーに欠ける「平成の終焉」をやめていただきたい。
同省が勝手に変更できないというのであれば、ビジョンをまとめた社会資本整備審議会産業分科会不動産部会の各委員の了解を得ればいいはずだ。
朝日新聞
日経新聞
毎日新聞
読売新聞
産経新聞
(デザインは朝日が一番美しいと思う。毎日は考案を委嘱した3氏をすっぱ抜いた。〝実績〟がある意地か)
「たたむ」「心理的瑕疵」「平成の終焉」に違和感 国交省 新・不動産業ビジョン2030(2019/3/29)
課題山積のマンション・戸建て 再生・活性化の道示す 国交省 住宅団地の再生検討会
第6回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」
国土交通省は3月29日、第6回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」(座長:浅見泰司・東大大学院教授)を開催。住宅団地再生に向け、検討会に設けたマンションワーキンググループ(座長:小林秀樹・千葉大大学院教授)、戸建てワーキンググループ(座長:大月敏雄・東大大学院教授)で行った議論について報告がなされ、意見交換した。
マンションWGでは、マンションストックが高経年化していく中ではストックをできるだけ活用する努力が必要という考えから、地方公共団体が管理組合による適正な維持管理を促す方策や、管理が適正に行われていないマンションに対して行政が関与できる仕組みを構築する方向で検討すべきとした。
また、建物の老朽化により生命・身体に危険を及ぼす蓋然性が高まったマンションについて、マンション及びその敷地を売却し、買請人による除却などを促進する方向で引き続き検討すべきとした。これまで建て替えが実現したマンションのうち200戸超は約8%であるのに対し、建て替え検討中の団地の約8割は200戸超の大規模団地であることを報告。タワーマンションの増加で管理の専門化・複雑化が不可避であるともした。
さらに、団地型マンション内の一部棟を存置・改修しながら、建て替え・売却を行うことが可能な柔軟な再生の仕組みについても引き続き検討すべきとした。
戸建てWGは、5ha以上の住宅団地は全国で約3,000団地存在し、居住者の高齢化、空き家の急増が懸念されることから、若者・子育て世帯にとって魅力的な場所として転入を促し、高齢者が安心して住み続けられるよう職住近接の就業機会を創出することが必要と報告した。
また、用途が住宅に特化した団地が多く、多様な機能を導入することが困難なことから、多様な主体が参画し、住宅以外の機能や用途、就業の場の確保、ワンストップの行政手続きを可能とする方策が必要としている。
左から大月氏、浅見氏、小林氏
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この種の検討会が国交省内にどれだけあるか知らないが、これほど困難でなおかつ緊急を要すテーマは他にないのではないか。毎年ストックが積み上がる一方で遅々として進まない建て替え・再生、加速度的に進行する居住者の高齢化と比例するように下がる資産価値、こじれたら梃子でも動かない合意形成の困難さなどを思うと、記者などは頭が痛くなり、2時間も話を聞いていられない。記者と同じか、傍聴席ではコクリコクリと舟をこぐ人もいた。
しかし、各委員は大したものだ。しわぶき一つしないで報告に聞き入っていた(聞いているふりをしていた人はいないはず)。記者がファンの櫻井敬子委員(学習院大学教授)が欠席されたのは残念。先生の本は素人でもよく分かる。先生の都合に合わせて会合の日にちを設定してほしい。
発言者は少なかったように思ったが、これは議論が出尽くし各委員で課題・方向性を共有できているからではないかと推測される。
そんな中で、宮原義昭委員(アール・アイ・エー会長)が「(建て替え・売却・除却などに際して)居住者の受け皿をどうするかを考えるべき」と、合意形成を容易にする取り組みを強化すべきと指摘した。心しないといけないことだ。
最近の再開発、団地の活性化の事例では旭化成ホームズ「アトラス品川中延」と、鳩山ニュータウンを見学した。こちらも読んで頂きたい。
旧同潤会の長屋など木密地域を一新 旭化成不レジ・不燃公社「品川中延」竣工完売(2019/3/28)
「たたむ」「心理的瑕疵」「平成の終焉」に違和感 国交省 新・不動産業ビジョン2030
国土交通省は3月28日、不動産業が持続的に発展していくための中長期ビジョンの策定に向けて、平成31年3月28日(木)に、第39回「社会資本整備審議会産業分科会不動産部会」を開催し、「新・不動産業ビジョン2030」(仮称)のとりまとめに向けた議論を行った。
同部会は、少子・高齢化、人口減少社会の進展、AI・IoTなどの技術革新が進展し、社会経済が大きな変化を遂げており、また、オリンピック・パラリンピック東京大会後の概ね10年程度先を見越した不動産業の目指すべき方向性を共通して認識できる指針づくりが必要として中長期ビジョンの策定に向けた議論を進めているもの。
新ビジョンは4月中に発表される予定。
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こんなことを言っても詮無いことだが、「新・不動産ビジョン2030」(仮称)の取りまとめ案を読んで「おやっ」と思ったことが3つある。「たたむ」「心理的瑕疵」「平成の時代の終焉」いう文言だ。もちろん法律用語でもないので住宅・不動産行政に直接的な影響を及ぼすとは考えられないが、正直に言えば違和感がある。
「たたむ」は、A4で全62ページのなかで3度登場する。①「ストック型社会」の実現に向けて「(空き家・空き地など)有効な活用方策が見込めない不動産は思い切って『たたむ』ことも視野に入れ、そのための適切な『たたみ方』や、その後の活用方策を探る必要がある」②「建替え、コンバージョン、リニューアルなど多様な選択肢の中から不動産の『たたみ方』を含めて提案し」③「不動産を早期に『たたむ』ことへの動機づけなど」だ。
文脈からして「布団をたたみ収納する」というような意味ではなく、「店をたたむ」、つまりおしまいにするという意味で使われているのは間違いない。部会を開催した同省不動産業課でも公式文書で初めて用いた文言だという。
どうもこの言葉は、東京都市大学教授・饗庭伸氏の著作「都市をたたむ」(花伝社、2015年12月)が初出のようで、饗庭氏は「それほど変わった言葉をつくったつもりではないのですが、拙著がきっかけで使われることになったと思います」とのコメントを寄せた。
もう一つの「心理的瑕疵」は、「既存住宅市場の活性化が不可欠であるが、その実現を阻害しかねない要因として、昨今、過去に物件内で自殺や事件があった事実などいわゆる『心理的瑕疵』を巡る課題をどのように取り扱うべきかが課題となっている」と書かれている。
「心理的瑕疵」は業界用語で、既存住宅市場や賃貸住宅市場で用いられており、事件などが起きたことを告げなければ重要事項説明違反に問われることもあるようだ。だが、しかし、これは社会的通年が優先するはずで、国交省の公式文書に使うべき類の「課題」ではないと思う。
そんなことが問題になるのなら、事故死、孤独死が日常の特養や一部のサ高住はどうするのか。入居費を安くするのか。死後も「死に方」がずっと問われるのであればそれこそ死者も浮かばれない。四十九日法要(神式は五十日祭)か一周忌法要(キリスト教は1年後の昇天記念ミサがあるようだ)を過ぎれば重要事項説明から除外したらどうか。
もう一つの「平成の時代が終焉」は、ビジョンの「おわりに」の冒頭で「平成の時代が終焉を迎えつつある…」といきなり出てくる。ここで読み進めなくなった。
「終焉」はよく使われる言葉だ。小生も「バブルの終焉」などと何度も使用した。この語彙には有無を言わさない断絶、終息、滅亡などの強い意志が込められている。
だから、「平成の時代が終焉」などと言われると、何だか平成と次の元号との間には大きな隔たりがあるように感じられてならない。そうならないように生前退位-新元号決定(公表)-退位・即位の儀が行なわれるのではないか。
小生の身近な人にも「平成の時代が終焉」をどう思うかについて聞いた。「終焉」を肯定的にとらえる人もいたが、「終焉という言葉は好きではない」「デリカシーに欠ける」「中国でも使うことがあるが、意味は結末」などと話した。小生も同感だ。「幕を閉じる」もあまりいいイメージではないし、「たたむ」も適当でない。平凡だか「平成から〇〇へのリレー」「平成から〇〇へ年が明ける」などのほうがよほどいいと思うがどうだろう。
このように書くと、反論もあるかもしれない。天皇陛下御自身が「天皇の終焉」と述べられたことがあるからだ。
平成28年8月8日に宮内庁から発表された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」の中には「これまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります」と記されている。
このお言葉に対して、8月12日付毎日新聞は西川恵氏の署名入りコラムで「天皇陛下が生前退位の意向を示唆されたお言葉で、強く印象づけられたのが『天皇の終焉(しゅうえん)』という表現だ。『逝去』でも、『死亡』でもない。ここには一個人の死を超えた、天皇が体現してきたシステム、体制、時代がピリオドを打つという意味が込められているように感じる」と報じている。
しかし、どうだろう。天皇陛下はまさに「逝去」「死亡」について触れられていると小生は考える。天皇の逝去には重い殯(もがり)や喪儀に関連する行事が続くということを説明されたのだと思う。
だからこそ、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」退位を決断されたのではないか。
そしてまた、「憲法で定められた象徴としての天皇像を模索する道は果てしなく遠く、これから先、私を継いでいく人たちが、次の時代、更に次の時代と象徴のあるべき姿を求め、先立つこの時代の象徴像を補い続けていってくれることを願っています」「私がこれまで果たすべき務めを果たしてこられたのは、その統合の象徴であることに、誇りと喜びを持つことのできるこの国の人々の存在と、過去から今に至る長い年月に、日本人がつくり上げてきた、この国の持つ民度のお陰でした」(在位30周年記念式典でのおことば)につながる。
このお言葉からは、「平成の終焉」はもちろん、(国家・社会)システム、体制、時代がピリオドを打つという意味の「天皇の終焉」を示唆するものは全くないと思う。
「はがきの木」タラヨウ植樹 日本郵便 社宅活用の老人ホーム、保育園、賃貸竣工
「グランダ目白弐番館」
日本郵便は3月28日、社宅跡地を活用した「グランダ目白弐番館」、「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」、「JPnoie三田」が完成したと発表した。
「グランダ目白弐番館」は介護付き有料老人ホームの「グランダ目白弐番館」と保育所の「ベネッセ目白保育園」の複合施設。ベネッセスタイルケアに一括賃貸し、同社がそれぞれ運営する。
施設は、豊島区西池袋二丁目に位置する3階建て延べ床面積約3,116㎡。定員は有料老人ホームは58名で、2019年3月開設。保育所は60名で、2019年4月開園予定。
「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」は、同社が建設した保育所としては「ベネッセ板橋三丁目保育園」、「ベネッセ目白保育園」に次いで3棟目。ニチイ学館に一括賃貸する。
施設は、豊島区上池袋二丁目に位置する木造1階建て延床面積約497㎡。定員72名。施工は住友林業。2019年4月開園予定。
「JPnoie三田」は全23戸の賃貸住宅で、「JPnoie」ブランドによる賃貸住宅としては6棟目。
物件は、港区三田四丁目に位置する13階建て延べ床面積約1,744㎡、全23戸。設計・施工は髙松建設。賃貸管理は東急住宅リース。
「ニチイキッズかみいけぶくろ保育園」
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2019年3月期の経常収益12兆9,203億円、経常利益9,161億円の日本郵政グループが建設した施設がどのようなものか見学したかったのだが、すでに開設していることなどの理由で敵わなかった。
面白いのは、全ての物件に「はがきの木」と呼ばれるタラヨウを植樹し、保育所のエントランスには「ゆうびん」を表す点字をデザイン化し、子どもたちが手紙文化に触れるきっかけになればとの思いを込めたゲートを配置している。
皆さんはタラヨウの木をご存じか。記者は小さい頃、葉っぱの裏に字を書いて遊んだ記憶がある。
「JPnoie三田」
またまた怒り心頭 住宅新報の地価公示は住宅地のみ しかも千円未満は切り捨て
3月26日号の「住宅新報」は36ページ、3月25日号の「週刊住宅」は14ページ。双方とも地価公示特集だから増ページしたのだろうが、紙数は新報が圧勝。しかも同紙は「安心R住宅」と「不動産テック」の特集を組んでいる。
これまで記事批判ばかりしてきた小生は、特集を組む辛さもよくわかっているので、労をねぎらうことに決めた。そして褒めようと…新聞をたたもうとしたのだが、誤字脱字が「わたしを見つけて」と呼び掛けてくる感覚と同じだ。〝小さくて読めない〟新報の地価公示の紙面がささやきかけてきた。とたん、飛び上がらんばかりにびっくりした。何かの間違いだと。そして、またまた怒りが沸々と湧きあがり、やがて沸点に達した。我慢がならない。なぜだ。
紙面は、北は北海道から南は福岡まで12ページにわたって公示地点の価格を掲載しているのだが、住宅地だけで、商業地、工業地、調整区域をオミット(ミスではないはず)しているではないか。しかも1㎡当たり千円表示の「千円未満は切り捨て」だ。
冗談ではない。小生は鑑定士がどのように調査するかよく分からないが、手抜きなどしていないはずだ。住宅地も商業地も林地も平等に調査しているはずだ。地価公示の調査地点は26,000地点あり、用途別では約70%を住宅地が占めているのだが、他を除外していいはずはない。同紙はこれまでもそのようなことをしてきたのか。地価公示などどうでもよく、広告収入がはいればよいという魂胆がありありだ。国交省も読者もクレームを付けないのか。紙がもったいない。(個人的には地価公示はやめたほうがいいと以前から主張してきたが)
「千円未満の価格切り捨て」にも我慢がならない。不動産公取規約では、消費者の不利益にならないよう分譲価格や駅からの距離は切り上げ、敷地面積は切り捨てることになっている。地価公示で千円未満を切り捨てたら1坪で約3,000円、30坪で約10万円の差となる。小生も含めわが業界は坪でしか不動産価格を計れなくなっているが、どんぶり勘定は改めたほうがいい。同紙の記事が国交省のデータをそのまま引き写したのであれば、同省に苦情が殺到するはずだ。ただでは済まない。
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参考までに、地価公示の紙面の編集・製作がどれほど大変だったかを紹介する。
昔は国交省から文書データで渡され、印刷工場の植字工が一字一字拾って組み立てていく作業が必要だった。その手間と特集する取材時間を見込んで、報道解禁の10日前に資料が配布されていた。
校正作業が大変だった。ミスは許されない。どこのマスコミも元原稿を読む人と校正ゲラを読む人と2人一組で校正作業を行ったはずだ。
住居表示が浸透している東京都などはやさしいが、地方都市は難しい読めない漢字、例えば「匝瑳」(いすみ)などがたくさん出てくる。しかも「大字」「小字」などと長い。そうなると「えっと…読めない」「早く読め」「そんな字が読めないのか」とけんか腰になり、「ダメだ。代われ」となる。
具体例を示そう。兵庫県神戸市北区には「大沢町日西原字小屋かち2106--1」「山田町下谷上字猪ころび4-73」「有野町唐櫃字水ナシ2-12」がある。
「かち」「ころび」「みずなし」は発音する側からすれば「かちはひらがな」「猪ころびの猪は漢字、ころびは平仮名」「みずなしの水は漢字、なしはカタカナ」とでも読み上げないと正確に伝えられない。聞いているほうも「えっ、猪ころびの猪は漢字でころびは平仮名とは何だ」と聞き返さないとしっかり校正できない。「櫃」(ひつ)も死語と化している。読めやしない。ネットで調べたら「唐櫃」は「からと」と読むらしい。…こんなのをやってごらんなさい。泣けてくる。それでも記者はこうして漢字を覚えた。いつも作業は徹夜になった。そのあとで酒を飲む楽しみはあったのだが。
今はエクセルデータで各報道陣に配布されているはずだから手間は省けるし校正ミスなど起きない。音読の校正作業もなくなったのではないか。
「東京ミッドタウン日比谷」開業1周年 来街者2,200万人 売上高160億円超 三井不
「東京ミッドタウン日比谷」
三井不動産は3月27日、同社が運営する大規模複合施設「東京ミッドタウン日比谷」の来街者数が開業1周年を迎える2019年3月29日(金)に約2,200万人、売上高は160億円を超え、目標を大きく上回る勢いで伸長していると発表した。