戸建て、マンションの居住形態が意識を左右するか 三井ホームが調査報告会
「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」
三井ホームの企業内研究所「住まいと暮らし研究所」は1月28日、日本女子大家政学部居住学科定行研究室教授・定行まり子氏、三井不動産レジデンシャル、三井不動産リフォームと共同で研究を行ってきた「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」を開催した。
三井不動産グループの住宅を購入した人を対象にしたアンケートでは、「住まい」への愛着について戸建て居住者は「住空間」に、集合住宅居住者は「生活の利便性」に愛着を感じ、今後の住まいの選択意識については、戸建て居住者は多様な選択肢を持ち、集合住宅居住者は住み替え後も集合住宅を希望する傾向が強く、終の棲家のイメージでは、注文住宅、建売住宅、集合住宅居住者とも約42~48%が「夫婦二人」と答えた。
〝夢は庭付き一戸建て〟という住宅双六については、「いまだ残っているともいえるが、意識は薄れている」としている。
報告書は、「戸建て住宅派」「集合住宅派」ともに多様なニーズに応え、時を経ても資産価値が維持される住まいづくりと、環境づくりに業界全体で取り組む必要があるとまとめている。
報告会で挨拶した定行氏は、「わたしどもの大学もそうですが、三井さんグループの個々のデータをつなぎあわさればビッグデータになり、いい指導ができ、政策決定がスムーズに行える。これから人口減少、空き家の増加など多くの課題を抱えているが、生きるすべである生活の基盤の住まいづくりに研究成果を生かし、次につなげていきたい」と語った。
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なかなか興味深い報告会だった。終の棲家のイメージが「夫婦二人」というのは納得もしたが、「考え中、思いつかない」「のんびり、ゆっくり」がそれぞれ15~26%あり、「子の世話になる」は回答があったのかなかったのか、少なくとも報告はされなかったのには考えさせられた。報告を行った同社商品開発部長・吉澤敏幸氏か「これは私の考えだが、商品企画でいつも思うことだが、みんな将来のことをあまり考えない。せいぜい5年先くらい」と語ったのが印象的だった。時代は変わったということか。
報告に対する疑問もあった。今後の住まいの選択意識についてだ。報告では、戸建て居住者は「リフォーム」(23.5%)「住み替え」(21.0%)「予定なし」(22.9%)「今は思いつかない」(27.2%)「建て替え」(5.4%)など選択肢が広く、集合住宅居住者は「住み替え」が圧倒的に多く52.0%に達し、住み替える居住形態も「分譲マンション」が81.4%と突出して高いとしている。
つまり、居住形態によって夢が異なってくるとしているのだが、記者は居住形態ではなく、将来の住まいに夢が描けるのか描けないのか、経済・資産状況によって選択肢はおのずと限られてくる現実の反映だろうと考える。
住宅双六も同様だ。われわれ日本人には「庭付き戸建て」の夢は心の隅にあるはずだが、少なくとも首都圏の利便性の高い地域に戸建てを取得できる層は数%しなないのではないか。都内23区ではマンションすら買えない時代になってきた。
もう一つ。面白いと思ったのは、アンケート回答者1,474の戸建てと集合住宅(マンションが圧倒的に多いはず)の比率だ。半々であることが報告された。
対象者は三井ホームと三井不動産レジデンシャルの顧客だが、三井ホームの顧客は約20万件であるのに対し、三井不動産レジデンシャルサービスが管理するマンションは約23万戸だ。分譲戸建ては数万戸あるはずで、マンション・分譲戸建て合計で30万戸を突破するのは間違いない(アンケート対象は首都圏で、すべてに用紙を送付したわけではないだろうが)。
注文と分譲の比率は2:3だから、アンケートの分母もその通りになるはずなのにそうなっていない。これは記者の推測だが、注文は、建てる側にしてみれば「希望通り」の家を建て、メーカーも「建ててからお付き合いが始まる」という意識が強く、これが顧客満足につながり、回答数に反映されたのではないかと。一方の分譲は、いまは各社とも顧客とのつながりを重視しているが、これまでは「事業離れ」(死語になっていないはず)という言葉に象徴されるように、購入者とのつながりを遮断するところも少なくない(三井がそうだと言っているわけではないが)。その結果が、アンケートの数字に表れたのではないか。
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定行氏(左)と吉澤氏
記者はこのような会見などはいつも後方の席に座る。ところが、今日の報告会は最前列しか空いておらずやむをえず定行氏と吉澤氏と向き合う形になった。吉澤氏とはこれまでもお会いしているのだが、定行氏とはどこかでお会いしたような声を聞いたような既視感にとらわれた。
なぜだろうとずっと考え、社にもどって確認した。既視感ではなく、一度お会いしていた。つまり記者が耄碌したということだ。2011年10月に行われた「多摩ニュータウン大規模団地問題検討委員会」の会合で定行氏は感動的な講義・講演を行っている。その時の記事を紹介する。
「『極めて意義深い』(上野委員長)『感銘を受けた。目がうろこ』(白岩委員)『他の地域との連携、広いエリアとしての多摩ニュータウンの価値を考えさせてくれた』(炭谷委員)『八王子にも500人の待機児童がいる。参考にさせていただきたい』(岡部委員)『地に足がついたプレゼン』(西浦委員)など、各委員から大喝采を浴びた」
この大喝采を浴びた人こそ定行氏だったのだ。各委員はそんじょそこらの人ではない。一癖も二癖もありそうな経験豊富な大学の先生方ばかりだ。その時、記者はこう書いた。「もちろん記者も感動したのだが(というより記者席と各委員の席はかなり離れており、さらに記者の目が悪くなり、耳が遠くなったのか、マイクがよく聞こえず、プロジェクターもよく見えず、報告の半分は聞き取れなかったのだが)」と。
そんなわけで、定行氏の講義は他の先生方の心を打ったのだろうが、記者はほとんど聞き取れなかったので記事には書けなかった。
これはあり得ない 「不動産価格は下がる」16.8% 野村アーバン調査
野村不動産アーバンネットは1月26日、同社の不動産情報サイト「ノムコム」の会員を対象にした「住宅購入に関する意識調査(第8回)」の結果をまとめ発表。「不動産の買い時感」については「買い時だと思う」「どちらかと言えば買い時だと思う」を合わせ53.5%で、前回調査(2014年7月)とほぼ同結果となった。有効回答数は約1,800人。
「買い時」と思う理由については、「住宅ローンの金利が低水準」が最も多く73.4%で前回調査から17ポイント増加、「今後、10%への消費税引き上げが予定されている」が41.5%(前回比0.6ポイント増)、「今後、不動産価格が上がると思われる」が34.2%(同12.5ポイント減)、「購入する上で税制などのメリットある」が21.5%(同3.2ポイント増)と続く。
「買い時だと思わない」の回答は23.8%で前回調査から3.6ポイント増加。「不動産価格は下がると思う」の回答は16.8%と前回調査から5.2ポイント上昇。
中古住宅購入検討者のうち、「購入時にリフォームすることを考えている」という回答は75.3%だった。
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記者は、よほど余裕のある人を除き、買わざるを得ない切羽詰まった状況にあるので「不動産はいつも買い時」だと思っている。なのでコメントしないが、今後「不動産価格は下がると思う」と考えている人が16.8%(前回調査比5.2ポイント上昇)もいるのには驚いたし、一言言っておきたい。
これはまずあり得ない。確かに第一次取得層向けのマンション価格は取得限界にきていると思うが、かといって専有面積を圧縮して分譲価格を抑える手法はあると思うが、価格(単価)が下がることはほとんどないと断言できる。
オリンピック選手村 都が事業協力者募集 どこが選ばれるか
東京都は1月23日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村及びレガシー検討に係る事業協力者の募集要領を発表した。
選手村予定地は約18haで戸数は約5,950戸。応募資格は宅建業者で、選手村でのマンション建築者として応募する意向があること、平成23年から25年まで年間少なくとも1度は1,500戸以上供給した実績があることなど。原則として1者1グループが選ばれる。プレゼンテーション・ヒアリングを経て26年度内に決定される。
事業協力者は、特定建築者の選考の評価の対象になるが、優先的に戸数が割り当てられるかどうかは不明。選手村の建設は28年度から。
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いよいよ選手村の建設に向かって本格的に動き出した。これほどのビッグプロジェクトに事業参画できるのはデベロッパーとしても光栄なこと。事業協力者に選ばれた場合の「名誉」を金額に換算したら代表企業は数億円をくだらない。その他のぶら下がり企業も数千万円の価値はある。手を挙げる資格のあるデベロッパーはまず全員が代表者として名乗り出たいはずだ。
しかし、名乗り出る資格があるのは、もちろん資力なども求められるが、具体的には年間1,500戸の供給実績があることだ。とすると、応募資格者は三井不動産、三菱地所、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、近鉄不動産、積水ハウス、大和ハウスあたりに絞られる。
とはいえ、この各社が単独で応募する可能性は小さく、記者はコンソーシアムを組むとみている。選ばれるのは「複数ということも可能性としてはゼロではない」(都)が、原則1者だ。どこも受かりたいだろうから、応募グループはもっと絞られるはずだ。晴海を中心に湾岸で供給実績があるのは三井、三菱、住友が抜けている。まずこの3社は代表として名乗りを上げそうだが、再開発事業では住友の実績がやや劣る。
野村はどうか。〝プラウド〟の沽券にかけて手を挙げたいだろうが、ここは勝ち組に乗る戦法だろう。記者はユニバーサルデザインの取り組みで突出している積水ハウスも有望とみているが、同社も単独では動かない。どこが積水を取り込むか。ここと組んだところが有力とみた。大和ハウスも住友とは共同事業の実績はある。
東急、東建、近鉄も代表者として応募するより勝ち組に乗る戦法と見た。1,500戸の供給実績がある大京、NTT都市開発、新日鉄興和不動産、伊藤忠都市開発、住友商事なども同様。どこかのグループにぶら下がるとみた。
ゼネコンもみんな参加する。ただ、単独でマンションの年間1,500戸の供給実績はないから、どこかにぶら下がる。デベロッパーとしてはいま長谷工コーポレーションに足を向けて眠れないだろうから、どこが取り込むかも興味深い。
ここまで書いてきて、六本木防衛庁跡地再開発(東京ミッドタウン)をめぐる当時の状況を思い出した。もう正確には思い出せないが、記者は落札される半年前、「落札価格は1,750億円」と予測記事を書いた。応札企業は4社グループだったはずだ。1,800億円で落札したのは三井不動産など6社コンソーシアム(積水含む)だった。予想がズバリ的中して舞い上がったのを思い出す。三井の他では三菱、住友、それと当時名を馳せた桃源社が応札したのではなかったか。
そこで不意に閃いた。三井も三菱も住友も一緒に組むことの可能性についてだ。これもあり得ない話ではない。かつて中曽根民活第1号マンションと言われた「西戸山タワーホウムズ」は、わざわざ開発会社まで設立して全員参加型の開発を行った。
ここで3社が組めば万事ことは丸く収まる。「SKYZ」「BAYZ」の再現だ。事業協力者に決まったからといって利権が生じるわけではないから、談合などと批判されることもないと思うがどうだろう。この3社からはじかれたデベロッパーがコンソーシアムを組む可能性もある。
よって事業協力者の記者予想は次の通り。相当の自信がある。
◎三井不動産(積水ハウス)○三菱地所▲三井・三菱・住友(2社も含む)△住友不動産△その他
三井不動産 商業施設「竹下通り スクエア」3月7日オープン
「竹下通り スクエア」完成予想図
三井不動産は3月7日、原宿・竹下通りの新たな商業施設「竹下通り スクエア」をオープンする。
地下1 階~地上3 階には三越伊勢丹グループが展開する「ALTA」が出店し、「原宿ALTA」になり、新業態や原宿初出店を含む全19 店舗がオープンする。
JR原宿駅から徒歩2 分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩6 分。敷地面積約190坪、地下2 階、地上3 階建て延べ床面積約521坪。
東急不動産 東京メトロ明治神宮前に全16店舗の「キュープラザ原宿」開業
「キュープラザ原宿」完成予想図
東急不動産は3月27日、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮駅前の商業施設「キュープラザ原宿」をオープンする。
日本最大の音楽チャンネルスペースシャワーTVを運営するスペースシャワーネットワークのエンタテインメント・コラボカフェ「AREA-Q」、ポートランド創業の老舗のパンケーキ店「オリジナルパンケーキハウス」、カフェ&鉄板グリル「グッドモーニングカフェ&グリル」など日本初や新業態など多彩で個性的な16店舗が出店。渋谷から表参道をつなぐ新たなランドマークとして、ショッピング、カフェ&レストラン、サービス、ウェディングなどを集積する。
敷地面積約655坪、地下2階地上11階建て延べ床面積約2,500坪。施工は竹中工務店。
大京 サ高住の第一弾「中野南台」(28 戸)オープン 今後10年で60棟
大京は1月13日、同社グループの第1 号で中野区では初めてのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「かがやきの季(とき) 中野南台」(28 戸)の入居を2月1日(日)から開始すると発表した。
「かがやきの季 中野南台」は、大京と個人が共同で所有する社員寮(1991 年竣工)を、サ高住の登録基準に適合した建物にコンバージョン(改修)したもの。提携先のウイズネット(本社:埼玉県さいたま市)が併設する訪問介護事業所を運営し、生活相談、安否確認、緊急時対応、食事サービスを提供するほか、エクセリーベが提供する業界初の「TV 電話による見守りサービス」を導入する。
物件は、東京メトロ丸ノ内線方南町駅から徒歩5 分、中野区南台3 丁目に位置する4階建て28戸。専用面積は19.11~19.16㎡。建物管理はオリックス・ファシリティーズ。家賃は125,000円、共益費は35,000円、基本サービス料は55,000円、食事サービス費は54,000円。合計で269,000円(消費税込)。
大京は、利便性の高い立地環境と必要なものだけを選択できる介護サービスをコンセプトに今後10 年で「かがやきの季」シリーズ60 棟の稼動を目指す。
マンション広告に絵文字はどうか 「ヤバイo(^-^)o」は効果ないか
たまたま時間があったので、住宅情報誌に掲載されているマンションのキャッチコピーを読んでみた。これがなかなか面白い。次のようなコピーが目に留まった。
「購入者からも『デザインが素敵!』との声、多数」
一般の方はこの文言をどう理解されるか分からないが、業界関係者なら「えっ、こんな表現許されるのか」と思うはずだ。
不動産業界には、業界の自主規制団体「不動産公正取引協議会連合会」(不動産公取協)があり、「不動産の表示に関する公正競争規約(公取規約)」で広告に関する様々な基準・規制を設けている。とくに消費者に誤解されるような、事実と異なる表示には厳しく、同規約18条(特定用語の使用基準)では、「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」などは、根拠が示せるものを除き原則禁止されている。
ここで一つ断っておきたい。記者などが書く記事にはこの規約はまったく適用されない。当然だ。これは憲法によって表現の自由が保障されているからだ。記者が書く記事に規約が適用されたら、ほとんど「不可」になるはずだ。最近書いた「人気必至」などは誘因行為として公取協から厳重注意を受けるはずだ。
さて、では冒頭の「デザインが素敵!」という文言はどうか。住宅情報誌は記事の体裁を取ってはいるが、これは「記事広告」でもなくチラシ広告と同じ扱いになる。使用する文言には先の厳しい制約があるが、「素敵」そのものは禁止されていないし、発行する側も十分審査しているはずだから問題はないと判断したのだろう。
しかし、「素敵」も「最高」も意味はほとんど同じで、記者なども連発する。感嘆符(!)も1つどころかダブル(!!)で使うときもあるし、感嘆疑問符(!?)もよく使う。「素敵」の根拠を示さないのは問題がないとはいえないが、購入者の声などをどんどん使用してもいい。手あかのついた文言より効果があるのではないか。
それにしてもマンションの広告担当者の仕事も大変だ。使用する文言の制約を受け、かつコピーで物件の特徴を表現しなくてはならない。いくつか紹介しよう。( )内は記者のコメント。
「堂々完成!」「特別事前案内会」(完成して残っているという意味にもとれるが、「特別」とは何か意味不明)
「足元に緑を纏う」「静謐を纏う邸宅」「東京・城南に住まう」(よくある広告手法。この業界は「静謐」「纏う」「邸宅」「至福」「住まう」などの言葉が好きなようだ)
「バス停まで徒歩4分」「『東京』駅20分」(松戸からバス便)「柏駅徒歩10分」(ズバリそのもの)
「1LDK・ゆとりの44㎡台」(44㎡の1LDKが〝ゆとり〟の広さであるかどうかは異論のあるところ)
「光と風が満ちる」「中枢を自在に使いこなす」「心に響く私邸の品格に出会える」「明るさ・楽しさ・暮らしやすさが集う街」(豊島園)「本当の豊かさと出会い、美しき家族の時をここに刻んでゆく」(これらも不動産広告ではよく使われる。イメージ戦略も重要だ。豊島園はそんなに住みよい街だったか)
「最大520万円の価格改定!」「返済不安の方に相談会開催」(これから年度末に向かって値引き物件は増える。価格は市場が決めるもの。「返済不安のある」人に相談会とは意味が分からない。きちんと書くべき)
広告の表現に四苦八苦するのだったら、いっそのこと絵文字はどうか。記者は絵文字をまったく理解できないが、若い人たちはみんな利用しているではないか。「素敵!」と書く代わりに「ヤバイo(^-^)o」などと書いたら、来場が殺到するのか見向きもされないのか。
もうずいぶん昔だが、公取協は不動産広告の事例集をまとめたことがある。なかなか面白いものだった。記者が印象に残っているものでは、売れない郊外マンションは「駅まで徒歩15分、格好のジョギングコース」と謳った。貧すれば鈍するの見本のような広告だった。
東京建物 5棟目のサ高住「大森西」開業 中長期的に50棟目指す
「グレイプス大森西」
東京建物グループは1月8日、東京建物シニアライフサポートが介護サービス(居宅介護支援・訪問介護)を提供する初のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グレイプス大森西」の現地案内会を開き、1 月17 日から開業すると発表した。12月から募集しており、7区画に申し込みが入っている。
「グレイプス大森西」の主な特徴は、①24時間365日、介護スタッフが常駐②入居者をサポートする〝もう一人の家族〟のコンシェルジュ③各部屋に設置したセンサーによる最新型の見守りシステム④家庭の味を大切にした現地調理で提供する食事サービス⑤分譲マンション「Brillia」準拠の設備・仕様⑥終身建物賃貸借と入居一時金不要の賃貸方式-など。
発表会に臨んだ東京建物シニアライフサポート・加藤久利社長は、「2009年にサ高住の第一弾『グレイプス浅草』の営業を開始して以来、やさしい手などの外部オペレーターに依存してきたが、これからは外部オペレーターとコンソーシアムを組んでより質の高いサービスを提供することで顧客満足度を高めていく。当社グループは高齢者向け住宅事業を重点分野と位置付けており、今後、中長期的には50棟(今回の物件で5棟目)を目指す」などと話した。
物件は、JR 京浜東北線蒲田駅から徒歩13分、大田区大森西七丁目に位置する5階建て全56戸(ほかに訪問介護事業所・居宅介護支援事業所)。専用面積は18.60~53.67㎡、月額賃料は127,000~383,000円。管理費は15,000円(浴室あり)・20,000 円(浴室なし)。基本サービス(税込)は37,800円(1人入居)・54,000円(2人入居)。食費(税込)は朝食:540円昼食:756円夕食:864円、3食30日分:64,800円。事業主は東京建物、貸主は東京建物不動産販売、運営受託は東京建物シニアライフサポート。設計・監理はINA 新建築研究所。施工は古久根建設。
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同社グループのサ高住事業が軌道に乗り、いよいよ加速度を高めるようだ。サ高住は〝玉石混淆〟と言われるが、同社は「サ高住」「有料老人ホーム」双方を検討している顧客のニーズを幅広く取り込む戦略で、居室面積を広くしたり、サービスを充実させたりして差別化を図っていく。
今回の物件では、敷地に制約があり、サ高住の適正規模といわれる60~70戸を確保するため約18~21㎡のコンパクト住戸を36戸設けているが、一方でニーズが高い広めの約35~53㎡の住戸も5戸設置しているのが特徴だ。
有料老人ホーム・サ高住事業は、積水ハウスなどのハウスメーカーが積極的に取り組んでおり、デベロッパーでは東急不動産グループ、オリックス不動産グループ、NTT都市開発グループなどが力を入れている。
今後は、入居者の資産管理・運営、所有建物の空き家管理・処分、土地の有効活用などの周辺事業も期待される。どこが抜け出すか。
「グレイプスホール」(左)と共用浴室
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現地案内会には、やさしい手から出向している東京建物シニアライフサポート取締役介護運営部長の小林新吾氏も同席していた。記者は「外から入ってこられてデベロッパーの印象はどうですか」と聞いた。小林氏はすぐさま「お客さま第一主義を貫かれている点ではデベロッパーらしくないかもしれませんが、すべての事業もこれが一番大切。全然違和感はありません」と答えられた。
この答えには記者もびっくりしたが、コツンと胸に響くものがあった。東建を30数年間取材してきているが、まさに〝デベロッパーらしくない〟のが同社の特徴だ。みんなおっとりしている。時には他社の後塵を拝することもあるが、長い目でみればこの姿勢がもっとも必要なことかもしれない。
ついでにもう一つ。見学会は業界紙記者向けだけでなく、証券会社のアナリスト向けにも行っており、こちらのほうは業界紙向けより多い約30人が参加したという。アナリストは机上の計算しかしないと思っていたが、大間違いだ。ごめんなさい。
25㎡の居室(浴室なし)
不動産流通研究所「R.E.port」が圧勝 42社・団体トップの年頭所感を一挙紹介
不動産流通研究所の「R.E.port」が圧勝-今年の住宅・不動産市場がどうなるか、業界各社はどう動くかを探る意味で年初に業界紙各社が報じる「年頭所感」は大きなヒントを与えてくれるが、今年も不動産流通研究所の不動産ニュースサイト「R.E.port」が過不足なく伝え、他者を圧倒した。
「R.E.port」が紹介した年頭所感は5日と6日で太田国交相の1573字(400字の原稿用紙で4枚)を筆頭に42団体・会社に及んだ。ハスウメーカーはやや少なく、デベロッパーは大手が中心でややもの足りないが、不動産流通業界の団体・会社はほぼ完璧に網羅しているのではないか。
所感の中身も具体的で、各社のつばぜりあいが手に取るように伝わってくる。いくつかを紹介しよう。
東急リバブル・中島美博社長のそれは檄文だ。「不動産流通業界は今後も大きく変化していくだろう。その中で当社の取り組みとしては、新規出店を積極的に行うとともに、インナーブランディングである『スピード』『専門性』『サービス』の強化を徹底することで、他社以上の変化と成長を実現していきたい」「今のような変化の激しい時代には、常に新しいことに取り組み、イノベーションしていくことが成長の絶対条件である」と呼びかけている。
三井不動産リアルティを激しく追う住友不動産販売・田中俊和社長も「既存の直営店舗網を拡充し、当社の強みである『地域密着』を深めつつ…今年は更に発展させていきます。全役職員は『住友ブランド』にふさわしい社員としての行動を日々徹底するよう、心がけてほしい」と更なる飛躍を期した。
東京建物不動産販売・種橋牧夫社長は「顧客基盤と独自性のある機能をさらに拡充し、差別化戦略を追求する」など三本の矢を掲げ、全社一丸となるよう檄を飛ばした。
不動産流通業界のトップをひた走る三井不動産リアルティ・竹井英久社長は余裕があるのかないのか分からないが、「行く先に『生い茂っている』不動産流通の旧習や古い常識を打破し、“新しい不動産流通の創出”、“新しい会社への改革”を力強く推し進めてまいる所存です」と、意識改革・人材育成に意欲を見せた。
ここまで紹介したら、2013年から新ブランド「野村の仲介+(プラス)」を掲げ、〝ただ住まいを探すだけなら、不動産仲介なんていらない。〟などと同業他社に挑戦状を突きつけている野村不動産アーバンネットの宮島青史社長の所感がありそうなものだがそれがない。「R.E.port」は頼んだのか頼まなかったのか、野村不動産アーバンネットが拒んだのかどうか、それは謎だ。
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「R.E.port」がここまで紹介しているのに、同業他社はまったく掲載なし。週刊紙だから読者には年初に新年号が届いてはいるのだろうが、不動産は生き物。じっくり読ませる記事ももちろん必要だが、その時々の空気を伝えないといけない。ネットは最大の武器の一つだ。コピー&ペーストで済む年頭所感をいくら掲載してもコストはかからないし、一般の読者(ユーザー)をつなぐ大きな役割を担っているはずだ。
しかし、かくいう記者も紹介できたのは10社のみ。完敗だ。それでも、法人税率の引き下げや岩盤規制の突破に言及した三井不動産・菰田社長、大都市の国際的競争力を高めるのは地方創生にとっても有効と話す不動産協会・木村理事長、女性活躍(ダイバーシティ)をさらに推進するとした積水ハウス・阿部社長と野村不動産ホールディングス・中井社長など、それぞれが考えていることが少し分かった。
法人税率の引き下げで恩恵を受けるのは誰か、都市と地方の共生は可能か、女性活躍でリードするのはどこか。それぞれが今年の大きな取材テーマになりそうだ。明日は不動産協会の新年賀詞交歓会だ。菰田社長には、法人税はマンション価格に転嫁されているのか、引き下げで価格は下げられるのか是非聞いてみたい。
マンション〝新価格〟続出 この1年間を振り返って
今年も残りわずか。この1年間で書いた「こだわり記事」は378本。分野別の内訳はマンションが155本(うち95本がモデルルーム・現地取材)、一戸建てが48本(うち30本がモデルハウス・現地取材)。記事の半数以上は分譲マンション・戸建てだった。コピー&ペーストの記事はあまり書かなかったつもりだ。RBAの野球記事も200本くらい書いた。マンション市場を中心にこの1年間を振り返ってみる。
その前に、誤字脱字だらけの独断と偏見に満ちた記事を読んでいただいた皆さんに紙面ならぬ画面を通じて感謝し、お詫びいたします。
一つだけ言い訳をさせていただくと、記事は〝ラブレター〟であり、スピードが勝負です。私のモノサシで書くので誤りはつきもので、急げば急ぐほどミスも増えます。近眼・老眼が加速度的に進んでおり、集中力が欠けるのは以前からですが、加齢が追い討ちをかけています。どうかこの事情を汲み取っていただき、お許しいただきたいと思います。
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分譲マンションでは、1年間を通じて価格(単価)の上昇が強く印象に残った。〝新価格〟がとくに後半から続出した。単価予想も外れることが多かった。来年はもう一段高くなるのは間違いない。都心部の一等地では坪700~800万円台が一般化するのではないか。23区内ではよほど立地条件の悪いところでないと坪200万円以下はなくなりそうだ。
サラリーマンの実質賃金は上昇していないので郊外部の価格上昇は懸念材料だ。前半では坪130万円台も供給されたが、後半は最低でも150万円くらいになってきた。第一次取得層の取得限界は坪180万円と見ているが、限界に近づいてきた。設備仕様レベルを落とす物件も増加した。
単価上昇を表面化させないよう専有面積圧縮でグロス価格を抑制する物件も目についた。いつか来た道だ。3~4人家族で30坪(90㎡)というのが記者のデベロッパーに託す夢だが、当分実現しそうにない。
売れ行きは総じて好調だった。ベスト3マンションの記事でも書いたが、野村不動産「立川」と三井不動産レジデンシャル「三田綱町」が瞬く間に売れたのには驚いた。いま売れ残っている物件も、来年は新価格が満遍なく浸透するだろうから根雪のように残ることはなさそうだ。
供給減がマスコミでも報じられたが、年間4~5万戸というのが適正な戸数だとわたしは考えている。レベルの高いリフォーム・リノベーションも増加しており、新築だけでなく中古マンションも取引が活発になるのは間違いない。全体として市場は緩やかに縮小し、大手の寡占が加速する。中小デベロッパーは企画力が勝負になりそうだ。
分譲戸建ては取材回数が少ないので分からない部分も多いが、記者が見学した物件は総じてレベルの高いものばかりだった。積水ハウスの「5本の樹」は他社も見習うべきだ。年末に見たミサワホームの「熊谷」は最高の物件だった。三井不動産レジデンシャルと野村不動産の首位争いもみものだった。野村は戸数の少ない物件もこれからは供給しそうだ。都内に進出したポラスも意欲的な物件を供給した。フージャースアベニューの商品企画も光った。老舗の細田工務店はもっと自社のPRに力を入れてもいい。
いわゆるパワービルダーの取材をここ数年行なっていないが、業界紙記者も物件見学はほとんど行なっていないようだ。マンションと同じくらい供給されているのに、なぜ取材しないのか。
業界団体では、マンション管理業協会の意欲的な活動が目立った。ハウスメーカー・デベロッパーの課題でもあるが、コミュニティの「見える化」をぜひ進めて欲しい。
国交省の取材はあまり行なわなかった。業界紙は宅建取引主任者の「宅建士」の〝昇格〟をずっと記事にしており、重大ニュースの一つにしているようだが、これが解せない。それより「日本らしく美しい景観」とは何ぞやの答申が待ち遠しい。