穴吹工務店 日本初のマンション入館&宅配ボックス顔認証システム導入
大京グループの穴吹工務店は10月3日、フルタイムシステムと共同で日本初のマンション共用部分のオートロックと宅配ボックスに顔認証技術を組み合わせた「サーパスエスコートサービス+“F-ace”(フェイス)」を開発、富山市と広島県呉市のマンションに先行導入し、順次導入していくと発表した。
従来の「サーパスエスコートサービス」は非接触IC カードの認証機能を利用したセキュリティシステムで、対応キーでマンション共用部分のオートロックを解除し、宅配ボックスの荷物取り出しができるものだったが、「認証キーをかざすのが面倒」「忘れて外出した場合に入れなくなる」などの意見があったことから、今回の「鍵を落とす・忘れる」「なりすまし」の心配のない入館システムを開発したもの。より強固なセキュリティを採用することで便利で快適な暮らしを提供するとしている。
鍵やカードを使うことなくエントランスホールのセキュリティエリアに入館でき、宅配ボックスが利用できるほか、子どもの帰宅を保護者にメールで自動的に知らせることも可能になる。従来のキーヘッドやカードも利用可能。
顔認証セキュリティシステムを採用したマンションは、2012年分譲の山万「ユーカリが丘 スカイプラザ・ミライアタワー」が首都圏初とされており、賃貸ではレオパレス21が今年7月、麻布のマンションに導入すると発表している。
長谷工コーポ 「長谷工版BIM」をバージョンアップ 販売ツールへも導入強化
「長谷工オリジナルBIMビューワー」による3次元CG画像
長谷工コーポレーションは10月4日、「長谷工版BIM」のデータから直接3次元CG化する「長谷工オリジナルBIMビューワー」をパナソニックのエコソリューションズ社の協力を得て開発、VRを利用してマンションの販売ツールとしても積極的に活用していくと発表した。
同社は 〝マンション特化〟と〝設計・施工比率の高さ〟という特徴を生かし「長谷工版BIM」の水平展開と関連技術の開発を進めており、今回の開発によってBIMで設計したマンションの住戸全タイプを〝迅速かつ安価、そして綺麗に〟3次元CG化することが可能になった。3次元CG化されたデータは、VR(ヴァーチャルリアリティ)体験機器を利用してマンションの販売ツールやホームページ等BtoC領域での援用が期待できるとしている。
その第1号として総合地所「ルネ八王子トレーシア」へ採用する。今後は、同社が設計・施工する物件の事業主に対し、グループ会社の長谷工システムズを通じて積極的に導入提案をしていく。
同社設計部門エンジニアリング事業部統括室長・堀井規男氏は「BIMを2014年に開発して以来67件のプロジェクトで採用してきた。バージョンアップも図ってきた。現在は全体の2割強の採用率だが、3年後には100%にする計画だ。設計・施工のリソースを使って販売や管理、大規模修繕にもつなげていきたい」と話した。
「BIM」(Building Information Modeling)は、コンピューター上にパーツを組み上げて作成した3次元の建物のデジタルモデルに、仕上げや管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースのことで、同社は2020年3月期中にBIMによる実施設計100%の体制とし、2021年3月期からは板状型の全物件がBIM化される予定。同社の設計・施工比率は2017年3月期末で95.0%に達している。
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これはこれで結構なことだが、記者は各階層からの眺望画像を見えるようにすることも実現してほしいと思う。現在、そのような対応を行っているのはごく限られた物件で、一定の階層からの眺望しか体験できないのがほとんどだ。
ユーザー側にしてみれば、自分が購入しようと考える住戸の設備仕様・仕上げなどはモデルルームで確認することができ、VR機器を使った疑似体験も当たり前のようになってきた。
しかし、青田売りがほとんどのマンションで、自分が購入したい住居からの眺望を体験するすべはない。その一方で、デベロッパーは1層ごとに価格を上下させ、物件にもよるが、最下層と最上階とでは数百万円、中には1層あたり100万円以上の差をつける物件もある。
それだけ眺望に「価値」をつけているからだ。ならば、誰がそのコストを負担するかという問題もあるが、ユーザーにきちんと眺望を体験させることくらいやっていいはずだ。
長谷工システムズ取締役常務執行役員・篠﨑松雄氏は「技術的には問題なくできる。中住戸と両端の住戸くらいは用意することはコスト的にも障壁とならない。うちがそれを最初にやりたい」と語った。長谷工に期待したい。日影図も含めて〝見える化〟に力を入れてほしい。
VR体験機器を用いた実演(新橋駅前ビル1号館で)
大激戦区 鹿島の免震構造の相鉄不他「グレーシアタワーズ海老名」 坪単価は240万円
「グレーシアタワーズ海老名」
相鉄不動産(事業比率50%)・伊藤忠都市開発(同30%)・鹿島建設(同20%)3社JVマンション「グレーシアタワーズ海老名」を見学した。「ららぽーと海老名」に隣接する鹿島施工の免震25階建てツインタワー477戸。エリア全体で約2,000戸が供給される注目物件の一つだ。
物件は、相鉄本線・小田急小田原線海老名駅から徒歩5分、海老名市扇町に位置する25階建てツインタワー全477戸(イースト棟239戸、ウエスト棟238戸)。専有面積は56.95~107.29㎡、価格は未定だが、坪単価は240万円くらいになる模様。竣工予定はイースト棟が平成31年5月下旬、ウエスト棟が32年1月下旬。販売代理は野村不動産アーバンネット、伊藤忠ハウジング、相鉄不動産販売。設計・施工は鹿島建設。販売開始は10月下旬。
現地は「ららぽーと海老名」に隣接。このエリアでは、このマンションのほか、小田急不動産がメインのタワーマンション3棟約900戸を駅前で予定しており、サンケイビル他「海老名 ザ・レジデンス」(412戸)、三井不動産レジデンシャル「パークホームズ海老名フォレストプレミア」(84戸)などトータルで約2,000戸が分譲される激戦区。
建物は鹿島の免震構造と柱・梁型の突出が少ないダブルチューブ構法が最大の特徴。天井高2600ミリ、サッシ高2170ミリ、シーザーストーンのキッチンカウンター、良水工房、ミストサウナ、食洗機などが標準装備。最上階はプレミアム仕様で、天井高は2750ミリ、オーダーメイド。
8月に行われたプロジェクト発表会には約300組が参加しており、ユーザーの関心は高い。
スカイラウンジ
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坪単価は想定通りだった。今年6月、「海老名 ザ・レジデンス」の記事を書いたとき、相鉄のマンションは坪230~250万円くらいと予想した。ちょうどその中間に落ち着きそうだ。ということは、10月末にモデルルームがオープンする予定の小田急不動産のマンションは駅に近接している分価格は高くなり、坪単価は250万円くらいになるはずだ。
駅からややあるサンケイビルや三井不動産レジデンシャルの物件は単価も異なるので競合はしないが、ユーザーにとって小田急か相鉄かの選択は悩ましい。双方を見比べて決断することになるはずだ。
小田急のモデルルームがオープンしたら見学して、改めてこの海老名のマンションについて触れたい。
イーストラウンジ
東京建物「Bloomoi(ブルーモワ)」が企画 機能的で美しい 公園隣接の「大山」
「Brillia大山Park Front」完成予想図
東京建物が10月下旬に分譲開始する「Brillia大山Park Front」を見学した。同社女性社員を中心とする働く女性が提案する住まいの共創プロジェクト「Bloomoi(ブルーモワ)」の企画商品が随所に採用されている、出色の出来のマンションだ。
物件は、東武東上線大山駅から徒歩7分、板橋区大山西町に位置する7階建て135戸。専有面積は56.91~83.16㎡、予定価格は4,400万円台~8,000万円台(最多価格帯5,900万円台)、坪単価は270万円台。竣工予定は平成30年10月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。分譲開始は10月下旬。
「Bloomoi(ブルーモワ)」は、平成24年10月に発足した、同社女性社員を中心とする組織で、翌年にはメンバーが考案した商品企画を盛り込んだ第一弾マンション「Brillia大山 The Residence」「Brillia下丸子」が、一昨年には第二弾「Brillia日本橋三越前」が分譲されている。
今回の「大山」は、昨年2月、「理想のリビング空間」として公開したものを採用しているのが特徴。
1階には小規模認可保育園が設置され、隣接する公園と調和するようファサードデザインに木調横ルーバーを採用している。
物件ゲストサロンのチーフアドバイザー・島田康光氏は「構造やらを廃したBloomoi(ブルーモワ)に特化した事務所の設えやモデルルームの評価が高い」と話している。
モデルルーム リビング
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いま、「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」という、デベロッパーが卒倒しそうなおどろおどろしい帯がついた本が店頭に並んでいる。記者はこの種の本を読まないので中身はわからないが、いかにもじり貧の出版業界がやりそうな一発逆転の、あるいは当たりそこないのポテンヒットを狙ったハウツー本であるのは間違いない。
その伝でいえば、この「大山」は駅から徒歩7分、坂もないからぴったり。関係者は胸をなでおろしているかもしれないが、そんな些末(これは言い過ぎか)なことよりはるかにアピールできる魅力をこの物件は持っている。
それは、敷地南西側は区立板橋公園に隣接しているということだ。もともと敷地は区立小学校が建っていたところで、隣接地は交通公園と一体として整備される。
もう一つの特徴は、「Bloomoi(ブルーモワ)」の商品企画を世に問う第一号案件ということだ。詳細は添付した記事を読んでいただきたいが、昨年2月、「理想のリビング空間」としてメディアに公開された「アイランドキッチン」「ブルーモワライブラリー」「ブルーモワポケット」「壁面収納」などが商品企画に盛り込まれている。
モデルルームは76㎡の東南角の住戸だから表現できた部分もあるが、とにかく機能的でかつ美しい。一つひとつ紹介しないが、玄関の見せ方が巧みで、5畳大の子ども部屋もうまく処理している。特に記者がほれ込んだのは細い木調枠を施したキッチン収納だ。この木調枠と白の面材は絵画のようだ。住戸内の床はシート張りフローリングだが、突板仕上げのように映る。
辛子色や淡いブルーのクッションを配したキャンパス地のようなL字型ソファーセットは、〝こんな提案がしたかったのよ〟と言いたそうな、「Bloomoi(ブルーモワ)」のメンバーの誇らしげな顔が目に浮かぶ。
この〝最強〟の女性目線のマンションの販売を担当するのが、RBA野球にも参加している加覧憲一氏をリーダとするチームだ。加覧氏はかつて国学院久我山の選手として、今でいえば清宮くんみたいに騒がれた人だが、本人とチームメンバーの加齢により弱体化する一方で、今では〝最弱〟チームに成り下がっている。
この最強と最弱の取り合わせが面白い。販売事務所は商品企画意図を最大限表現できていると記者はみた。販売動向に注目だ。加覧氏の名誉のために言い添えるが、加覧氏は同社のヒット作をたくさん担当している。
「Bloomoi(ブルーモワ)」収納
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公園に隣接・近接するマンションをここ1~2年たくさん取材してきた。同社のマンションでいえば、加覧氏がリーダーを務めた「Brillia上野池之端」がそうだ。
今回の「大山」は、都の民設公園制度を活用した第一号「Brillia萩山四季の森公園」を彷彿とさせるような物件だ。詳細は省くが、この民設公園制度はその後一件も供給されていない。残念だ。
美しく機能的な「Brillia大山Park Front」を演出する東建・加覧-磯田コンビ(2017/9/19)
東京建物 「Bloomoi(ブルーモワ)」が「理想のリビング空間」公開(2016/2/18)
「緑環境と広い空が最高」入居者 東急不 「世田谷中町プロジェクト」 完成祝うまつり
「世田谷中町プロジェクト」
東急不動産は9月18日、分譲マンションとシニア住宅の都内屈指の大規模複合開発「世田谷中町プロジェクト」のマンション「ブランズシティ世田谷中町」第2工区が竣工し、全ての街区が完成したのに伴う「世田谷中町まつり」を開催した。
様々な縁日のほか洗足音楽大学学生による金管5重奏コンサートや地元学童クラブのソーラン節、東急ハンズの手作りワークショップ、ヨガ教室、マンション見学ツアーなど多彩な催しに、マンションやシニア・ケア住宅の入居者を始め近隣住民など数百人が参加し賑わった。
まつりに参加した70代の奥さんとマンションに住む80代の男性は、「6年前にグッドデザイン賞を受賞したM社の等々力のマンションを買った。中庭もあって住居そのものは天井高が高く快適だったのだが、集会室など共用部分が狭かった。ここ(世田谷中町)は車で通って、これはいいと一発で購入を決めた。私は緑の環境、家内は空の広さに満足している。駅から遠い? 車もバスもある。毎日が日曜だから不便さは全く感じない。終の棲家にしたい。娘夫婦は桜新町の中古だが120㎡のマンションを買った」と、環境のよさにほれ込んでいた。
また、主催者がセットしたマンション入居者インタビューでは、85歳の男性Kさんは、「購入を決断した理由は2つ」とし、「一つは、これまで住んでいたたまプラーザの家は坂が多く、家内(82歳)の通院、リハビリにも何かと不便だった。ここは、姪から『いい物件がある』と紹介された。ケアに移り住めるシステムが気に入って購入した。もう一つは、私は世田谷生まれの世田谷暮らし。岡本の社宅に住んだこともある。皆さんは知らないだろうが、世田谷区の鳥はオナガで、昔はたくさんいたんだよ」と、地縁があるのも大きな購入動機と話した。
もう一人、奥さんと2歳の娘さんの3人家族のSさん(35)は、「結婚して子どもが生まれ、賃貸より分譲がいいと判断し、また、私は高津駅に勤務しているので通勤、通学の便、沿線イメージを考慮して田園都市線を選択した。道路沿いは嫌だったので、緑が豊富なここが気に入った。バス便はハンディにならなかった。一つ気掛かりなのは、定期借地権付きなので娘に資産を残せないこと。終の棲家にするかどうかは…」と語った。
「ここにはオナガがたくさんいたんだよ」Kさん 「娘に資産を残したいが…」Sさん
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「世田谷中町プロジェクト」は、第一種低層住居専用地域に位置する約1万坪のNTT社宅跡地で開発が進められているもので、分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」252戸(うち第一工区131戸は分譲中)と、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」251戸(シニアレジデンス176戸、ケアレジデンス75戸)、地域住民も利用できる「コミュニティプラザ」、認可保育園などからなる複合開発。第一種低層住居専用地域の複合開発としては都内屈指。
東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」第一号選定プロジェクトでもあり、地域包括ケアの拠点として子育て期から高齢期までの多世代が気持ちよく暮らすことができる「世代循環型」の街づくりを目指す。
シニアレジデンスからケアレジデンスへの住み替えが可能。マンションからケアレジデンスへの住み替えに際してはマンションの買い取り保証サービスも実施する。
様々な社会課題に対する取り組みを行うのも大きな特徴の一つで、シニア向けワンストップ型生活サービス「ホームクレール」では、介護予防プログラムや入居者自身が講師として活躍できるカルチャースクールなどのメニューを提供する。また、英国スターリング大学、順天堂大学、東京都市大学などの「学」との連携も行う。
分譲マンションの第1工区131戸は90戸が分譲済み。第2工区はこれから分譲される。シニアレジデンスは176戸のうち100戸超が契約済み。
洗足音楽大学学生による金管5重奏コンサート(左)と地元学童クラブのソーラン節
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以前にも書いたが、この分譲マンションの購入者の約4割が高齢者だ。果たして、ケアレジデンスへ移り住むことができるというだけの理由なのか、ほかにも高齢者を引き付ける何かがあるのか興味深い。
また、Sさんの「定借は子どもに資産として残せない」という言葉にドキリとさせられた。定借も含めてマンションは資産になるのかどうかも考える必要がありそうだ。
この問題については稿を改める。
直線距離100m、臨棟間隔25mの舗道空間
東急不「世田谷中町」シニア向け 契約は過去最高ペース 分譲の4割が60歳以上(2017/6/29)
東急不動産 「世代循環型」の街づくり「世田谷中町プロジ ェクト」一部完成(2017/4/28)
東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円(2016/9/3)
三井不レジ他 4,500戸「幕張ベイパーク」第一弾分譲へ 価格はさて?
「幕張ベイパーク」完成予想図
三井不動産は9月14日、「幕張ベイパーク」の分譲第一弾となる「幕張ベイパーク クロスタワー&レジデンス」のモデルルーム見学会を行った。全体で開発面積が約17万㎡超で、2029年度までに約1万人、住宅4,500戸の首都圏最大級の街づくりを整備する計画の成否を占うプロジェクトだ。
物件は、JR京葉線海浜幕張駅から徒歩15分、千葉市美浜区若葉三丁目に位置する地上37階建て448戸のタワー棟と49棟のレジデンス棟の全497戸。専有面積は59.77~106.77㎡(平均81㎡)、価格は未定。設計・施工は熊谷組。デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所。竣工予定は2018年12月中旬。売主は同社と野村不動産、三菱地所レジデンス、伊藤忠都市開発、東方地所(千葉銀行系)、富士見地所(京葉銀行系)、袖ケ浦興業(千葉興銀系)の7社。販売開始は11月下旬。現在の問い合わせ件数は3,000件超。
敷地内にはサ高住、保育所、コミュニティコワーキングスペース、コンビニなどが併設される。街全体のコンセプト「ミクストユース(複合利用)」の象徴となる物件として位置づけられている。
タワー棟は免震工法を採用。ワイドスパンが中心。モデルルームは75㎡と106㎡。天井高はタワー棟が2600ミリ、レジデンス棟が2450ミリ。
販売センターの階段
販売センター
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今後分譲されるプロジェクトの販売事務所になる販売センターは非常によくできている。2層で延べ床面積は約2,700㎡もある。階段は上りと下りで3.5メートル幅。白を基調のデザインが美しい。シアターには最初に「この街には、自由がある」「この街には、未来がある」などと印象的なフレーズが流れた。座席は固定だが、画像が動くので浮遊感を感じる(三井不動産レジデンシャル「パークタワー晴海」や大和ハウス「プレミスト湘南辻堂」は座席が動く)。
スカイビューラウンジ
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さて、価格について。同社は「価格は未定」としか話していない。なので以下は記者の独断と偏見による意見だと受け止めていただきたい。
モデルルームを見学した際、記者は単刀直入に坪単価を聞いた。「坪200万円でどうですか」とかまをかけた。スタッフからは「今のところ坪200万円超を考えています」との返答。ここに別の記者が現れ、「75㎡で5,000万円台後半だとか」と話した。えっ、とっさに記者は計算した。75㎡で5,000万円台の後半ということは坪単価250万円くらいになる。これはありえない、聞き間違えか言い間違えか。
いくら人気の海浜幕張で「自由がある」「未来がある」街づくりが今後行われるとしても、徒歩15分だ。〝75㎡で4,000万円台の後半〟ならわかる。坪220万円くらいだ(この前、大和ハウスが記者見学会を行った辻堂駅から9分の「プレミスト湘南辻堂」も坪単価は220万円台に収まるはずだ)。
しかし、価格が高いか安いかは、消費者が決めることだ。そこで、オープンしたばかりのコミュニティアウトドアパーク「PARK MAGIC」を利用していた地元の人らしき女性4人組にインタビューした。事情を話し、「皆さん20代、30代でよろしいですね」と声を掛けた(女性にインタビューするときは見た目より10歳若く言うのが鉄則)。
記者は〝挑発〟した。「首都圏のマンション価格は東京が一番高く、神奈川、埼玉、千葉の順。浦和とか大宮は条件がいいところは坪300万円を突破していますが、千葉県はそんなところはありません。千葉県は埼玉県よりイメージが低い。それは県と政治家の責任(あなたたちの責任でもと口に出そうなのをこらえた)。皆さん、ここの20坪で価格が4,500万円はどうですか」と尋ねた。一様に「高い」「ここ(若葉地区)はいいイメージがない」と答えた。一方で「埼玉県より千葉県のほうがイメージが低いというのは理解できない。あなた(記者)、埼玉の人」とあからさまに嫌悪感も示した。
これ以上書かないが、この街と比較する材料はある。JRの線路を挟んだ対面には「幕張ベイタウン」がある。その第一弾「パティオス」は千葉県が主導し、大手デベロッパー、ゼネコン、商社などによる6つの企業連合が共演して圧倒的な人気を呼んだ。あれから約20年。賃貸、定借も含めて9,000戸を20年かけて整備してきた。
それと比べて「幕張ベイパーク」は規模は半分だが、時代が異なる。都市間競争は益々激化する。取材を終え、駅まで汗みずくになりながら坪250万円はあるか、それば絶対ないなどと自問自答した。
駅に着き、タバコが吸いたくて喫茶店に入った。よく利用するSカフェだった。いつもは216円なのに270円だった。Sカフェ本社に聞いたら「東京などの駅に近いところではSサイズ216円が多いが、郊外のショッピングセンターなどではSサイズがある店は少ない」とのことだった。つまり、競争がないところではメーカーは価格を自由に設定できると理解した。幕張もそうなのか。いや、三井は絶対そんな高値では売らない、常識的な坪200万円を少し超えるくらいの値段を設定すると思う。
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「PARK MAGIC」に入るとき、「赤羽西を担当しました…」と同社千葉支店事業部主事・長戸早紀子氏に声を掛けられ、一挙にあの素晴らしいプランがよみがえった。長戸氏は今回、街の活性化の仕事をされているようで、ならば坪単価は多少上方修正すべきかとも思った。同社千葉支店はこれまで業界をリードするマンションを供給してきた実績がある。〝高い〟という記者の判断を覆してほしい。
「PARK MAGIC」
三井不レジ、キッチンを動かせる画期的商品「Imagie(イマジエ)」開発 「パークホームズ赤羽西」に採用(2015/9/8)
三菱地所レジ・旭化成不レジ 港区・三田のマンション建て替えで容積率緩和認可
「(仮称)メゾン三田建替計画」
三菱地所レジデンスと旭化成不動産レジデンスは9月11日、両社が事業協力者として参画している「(仮称)メゾン三田建替計画」事業が「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)に基づく「容積率許可」を東京都より取得し、港区からマンション建替組合の設立が認可されたと発表した。マンション建替法第105条に基づく容積率の緩和特例制度を適用したマンショ ン建替え事業としては国内第一号。
同制度は、除却の必要性に係る認定(耐震性不足の認定)を受けたマンションの建て替えで一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて特定行政庁が許可した場合に容積率が緩和される制度。
「メゾン三田」は1968年10月竣工の11階建て全67戸。歩道がない道路に対して敷地内の接道箇所すべてに歩道状空地を設け、歩車分離とすることで地域の安全性・快適性を高めるとともに、周辺環境と連続した緑豊かな公開空地を設けるなど街並みの形成に貢献することで、マンション建替法容積率許可を取得。これにより、建物の容積率を400%から463.5%へ約63%割り増すことが可能となった。
両社は2012年12月に事業協力者に選定され、2016年7月に建て替え決議が成立した。2017年12月頃に解体工事に着手、2020年に竣工予定。建て替え後は地下2階地上23階建て、総戸数115戸のマンションになる。
業界初の体力測定装置に狂喜 大和ハウス「プレミスト湘南辻堂」 同社は販売に自信
「プレミスト湘南辻堂」完成予想図
大和ハウス工業は9月16日、JR東海道線辻堂駅圏の大規模マンション「プレミスト湘南辻堂」のモデルルームをオープンすると発表。オープンに先立つ11日、モデルルームやウェアラブルデバイスなどを用いたIoT技術やAI(人工知能)と、同社グループのスポーツクラブNASが監修する運動メニュー提案が体験できるコーナーを報道陣向けに公開した。
物件は、JR東海道本線辻堂駅から徒歩9分、藤沢市羽鳥一丁目に位置する敷地面積約35,000㎡の全914戸の規模。敷地は今回分譲開始するA敷地(約18,000㎡)とB敷地(約16,000㎡)に分かれているが一団地認定を取得。管理組合は一つで、共用施設なども全体で共有する。
A敷地は14階建て全404戸で、専有面積は72.22~93.18㎡、価格は未定だが全体の80%を占める74.88㎡で5,000万円前後(単純計算で坪単価は222万円)。竣工予定は2018年12月。設計・施工は長谷工コーポレーション。B敷地の建物は13階建て全510戸で、A敷地の建物が竣工してからそれほど期間を置かずに着工する予定。事業主は同社のほか神奈川中央交通、長谷工コーポレーション。
内覧会に臨んだ同社東京本店マンション事業部第一営業部事業部長・松岡康成氏は「利便性の高いエリアで、コンセプトは〝モノよりコト〟。子どもからシニアまで利用できる16の共用施設を配置し、業界初のAIやIoT技術を盛り込んだ業界初のプロモーションを行う」と話した。
販売事務所長・二改隆広氏は、「これまでの来場予約は想定通りの600組。A街区は竣工までに(販売の)めどをつけ、B街区も早期完売につなげたい」と語った。
ゲストルーム
松岡氏
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このマンションについては今年1月、同社が記者発表している。コンセプト、その他については当時の記事を参照していただきたい。
まず紹介したいのか毎日の体力・認知機能を測定・記録し、個別アドバイスが受けられる「Fit with AI Trainer」システムについて。
ブースは10人くらいが座れるスペースだった。システムを開発したソニーモバイルコミュニケーションズの担当者がデモンストレーションとして、記者を含めた男性3人と女性2人の太ももにセンサーを装着し、反応速度、筋力、下肢協調性を測定した。
テストされた5人のうち記者が突出して年齢が高く、ほかの記者は30~40代か。体力が著しく低下しているのを自覚している記者は他に負けじと年甲斐もなく必死で足などをバタバタと動かした。
その場ですぐ結果がプリントされた。最低数値を覚悟していた記者はデータに驚愕し、歓喜した。なんと総合80点で、髪が薄い(男性ホルモンが優っている)男性の96点に次ぎ2位だったのだ。他は77点、73点、49点。96点記者以外は年寄りに花を持たせようと忖度し手抜きしたのはありありだが、データを改ざんしていないことを確かめた。記者の後輩女性記者は「まさか負けるとは」と悔しがって見せた。
総合点が2位に甘んじたのは下肢協調性(下半身の衰えを計るものではなく、どちらかといえばリズム感)に問題があったためだ。これは5人中最低だった。(言い訳だが、年齢差を加味したら記者がトップではないか。協調性のなさは小さいころからで、みんなが右を向けば小生は左を向いていた。体力と全然関係ない。むしろ名誉なことだ)
記者生活40年で、これほどマンション販売事務所ではしゃいだのは初めてだった。桐生さんのたかが0.02秒で大騒ぎするのがよくわかった。これはインパクトがある。水準以下の数値が出た人はそっぽを向く可能性もあるが、予想外のいい結果が出た来場者はみんな購入に動くのではないかと思ったほどだ。
「Fit with AI Trainer」測定数値(80点が記者)
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「Fit with AI Trainer」が強烈だった割には、客席が360度回転するシアターは物足りなかった。初めて経験する人にとっては驚きだろうが、われわれ記者は三井不動産レジデンシャル「パークタワー晴海」を経験している。三半規管を揺り動かされた。
それと比べると今回は穏やかで、客席が360度回転しているというより、映像が動いているだけのように思えた。いっそやるなら、昆布だしか塩サバかの匂いを含ませた湘南の潮風を吹き付けるとか、波を浴びせるのは逆効果だろうからせめてミストを降り注ぐくらいの演出があってよかった。
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松岡氏が語った「コンセプトは〝モノよりコト〟」について。同感、至当だと思う。これほど成熟した市場になると、富裕層向けはいざ知らず郊外型では基本性能・設備仕様で差別化を図るのは難しい。いかに消費者の感性に訴え、需要を創造するかが勝負だ。これはマンションだけでなく、あらゆる商品について言える最近のトレンドだ。
同じように感性に訴えるマンションとして記者が注目しているのが、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス オイコス赤羽志茂」だ。キャッチフレーズは〝早く家に帰ろう。〟だ。ここもマンションのモノ(住戸)そのものではなく、コト(様々な仕掛け)で勝負しようというのがありありだ。
アリーナ
シャトルバス
三井レジ他「パークタワー晴海」 「有明」と競合必至 価格はいくらになるか(2017/4/26)
住友不動産 納得の坪700万円 総合設計適用「シティタワー恵比寿」
「シティタワー恵比寿」完成予想図
住友不動産が分譲を開始した「シティタワー恵比寿」を見学した。恵比寿駅から徒歩7分、恵比寿ガーデンプレイスへ徒歩4分、東京都の総合設計制度の適用を受けた23階建て全310戸。坪単価700万円前後だが、劇的に変化しつつある山手線沿線でしかも内側。規模と立地が評価され好調なスタートを切った。
物件は、JR山手線恵比寿駅から徒歩7分、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩12分、渋谷区恵比寿一丁目に位置する23階建て全310戸(非分譲住戸3戸、その他住戸13戸含む)。専有面積は40.72~150.89㎡、坪単価は700万円前後。竣工予定は平成31年2月下旬。設計・施工は西松建設。
現地は、恵比寿通りに面した四方道路の角地。近隣商業地域(建蔽率80%、容積率400%)だが、東京都の総合設計制度の適用を受け、容積率は約680%(容積対象面積を単純に敷地面積で割った数)。緑地面積を敷地面積約3,360㎡の30.58%、約1,027㎡確保したことが高く評価されている。従前は様々な建物が建っていたところで、同社は約10年かけて集約化した。
基本性能・設備仕様は、内廊下方式、階高約3.15m、リビング天井高最高2,550ミリ、ダイナミックパノラマウィンドウ、キッチン・洗面・トイレカウンターは御影石、突板フローリングなど。
広報担当者は、「従前は商店や一戸建てなどが建っていたエリア。当社が10年間くらいかけて用地をまとめた。高さ規制は50mだが総合設計制度の適用を受けて75mの緩和を受けている。7月から販売を開始しており、3割近くが成約・成約見込み。好調に推移している」と話している。
公開空地
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単価を聞いたときは〝高い〟という印象を受けたが、よくよく考えてみると納得できる値付けだ。
山手線エリアのマンション相場を東京建物「Brillia Towers目黒」が劇的に変えたのはご存じのはずだ。記者はこの「目黒」600万円を基準に山手線エリアの近未来の坪単価を予想したことがある。トップは東京駅(〝大・丸・有〟)の3,000万円とはじいた。品川も1,000万円以上と予想した。
ところが、「東京駅(〝大・丸・有〟)は5,000万円ではないか」と、名前は明かせないがうそぶく人がいた。なるほど。国際都市・東京の評価はそれくらいの値がついていい。仮に東京駅(〝大・丸・有〟)が5,000万円ならリニアの品川をはじめ浜松町、渋谷、その他の都心一等地は軒並み1,000万円以上で3,000万円だってありそうだ。恵比寿の坪700万円はいい線に思えてくる。
ここは、分譲開始時に徹夜で並ぶ人が現れたモリモト「ディアナコート恵比寿」(1999年竣工、110戸)がすぐ近くにあり、道路を挟んだ対面にはこれまた人気になった積水ハウス「グランドメゾン恵比寿の杜」(2004年竣工、145戸)が建っている。恵比寿ガーデンプレイスへも徒歩4分だ。
モデルルーム
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この物件が都の総合設計制度の適用を受けていることを強調したい。近年はハードルが高くなっており、以前は年間30~40件くらい認定されていたのが、最近は10件を下回り、うちマンションも数件しか許可されていない。
同社はこの物件のほか、この2年間に「西新宿六丁目計画」「渋谷区宇田川町計画」も適用を受けている。全体でマンションは9件だから、3分の1が同社だ。
記者は建築物の高さ規制には大反対で、このように公開空地を確保し、環境に配慮した建物は思い切って容積の緩和(高さ規制の緩和)をすべきだと思っている。足元に公開空地・緑を確保することがどれだけ街ゆく人に安心感を与え、街のポテンシャルを上げるか、言うまでもない。
建設現場
旭化成不レジ 「四谷コーポラス」 解体前の建物を一般公開 9/7~9/10
旭化成不動産レジデンスは9月7日~10日、「四谷コーポラス」の建て替えに伴う建築研究を目的とした一般見学会を実施する。
希望者は旭化成ホームズ広報室(メール)このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。へ。
参考までに同社提供の写真を添付します。