隈研吾氏が設計監修 東通グループ ハイグレード賃貸「TOTSU PREMIUM」第一弾
「TOTSU PREMIUM 白金台二丁目(仮)」
東通グループは7月31日、ハイグレード賃貸マンション「TOTSU PREMIUM」シリーズ第一弾となる白金台の二丁目のプロジェクト「TOTSU PREMIUM 白金台二丁目(仮)」の設計監修を建築家・隈研吾氏が手掛けると発表した。
物件は、港区白金台二丁目に位置する敷地面積約614㎡、5階建て全8戸。着工予定は2025年11月28日、竣工予定は2028年1月28日。企画コンサルティングはケン・コーポレーション。
隈研吾氏は、「日本有数の幹線に徒歩で接続する白金台は、かつての上品な高級住宅地という枠を超え、新たな価値を帯びる街へと変化しつつある。斜面地に沿った閑静な住宅地の趣を継承し、前面道路に向けて植栽と石垣を設けることで、都市の中に森のような風景を創出する。各階に石垣・緑・空を感じられるデザインとしつつ、周囲のキャンパスや住宅地、文化財との景観的調和を図るため、ルーバーを用いて建物のボリューム感を繊細に分節することを目指した」とコメントしている。
同社はこれまで、スタンダードな賃貸物件シリーズ「THE TOTSU」を展開してきたが、今回の「TOTSU PREMIUM」は、東京の一等地で“上質な暮らし”の“賃貸”という選択ができる高級レジデンス。
期間72年の定借 伊藤忠都市開発「クレヴィア練馬」気になる京王線との差
「クレヴィア練馬レジデンス」
伊藤忠都市開発・フジ都市開発が9月に分譲する「クレヴィア練馬レジデンス」のコンセプトルームを見学した。期間72年の定期借地権付きで、坪単価は450万円くらいになる模様。高いか安いかよくわからないが、販売担当者によると、定借というのは販売のネックにはならず、21坪強(70㎡)でグロス8,000万円を超えてくるのがカギとなりそうだ。
物件は、西武線練馬駅から徒歩10分(中村橋駅から徒歩9分)・都営大江戸線練馬駅から徒歩12分、練馬区中村北2丁目に位置する期間72年の定期借地権付き全83戸。9月分譲予定の第1期1次(戸数未定)の専有面積は44.88〜82.73㎡、予定価格は5,700万円台〜13,900万円台(最多価格帯9,000万円台)。竣工予定は2026年11月下旬。設計・監理は日企設計。施工は木内建設。売主は同社のほか販売代理は伊藤忠ハウジング。
3月下旬からエントリーを開始しており、これまでの反響数は630件、コンセプトルーム来場者は70件。
現地は、練馬駅から続く商店街と千川通りの桜並木を抜けた、スーパーマーケット「LIFE」の隣接地。従前は駐車場。練馬駅と中村橋駅、それと大江戸線練馬駅が利用できるのがセールスポイントの一つ。建物は南向き・東向きの2棟構成。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、フィオレストーンキッチン天板、ディスポーザー、食洗器などのほか、全戸のリビング・ダイニング・キッチンの天井(一部)には、吸音・消臭・調湿性能を併せ持つ天井材「クリアトーン12SⅡ」を採用している。
エントランス(左)と中庭
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読者の皆さんは、坪単価を測るとき、どこを起点に考えられるか。おそらく交通利便性を重視して、(誰にとってかは不問にして)東京駅を考える人が大半を占め、あとはターミナル駅や浦和、横浜、千葉などの県都が続くのだろう。現在の単価地図を見ると、武蔵小杉が湾岸エリアと同等の評価を得ている例外はあるが、ほぼその通りになっているはずだ。
さて、練馬駅はどうか。記者は京王線に住んでいるので、新宿を中心に考える。乗換案内で検索すると都営大江戸線で新宿駅から17分だ。坪単価が600万円を超える石神井公園は、新宿駅からだと池袋経由で30分前後だ。池袋駅を中心に考えると、練馬は8~12分、石神井公園は9~13分だ。
生活利便施設の集積、街のポテンシャルなど総合的に判断すると、練馬駅より石神井公園駅を上位にあげる人が上回るかもしれないが(やはり公園の存在が大きい)、記者は互角の評価をする。練馬駅前に「ココネリ(Coconeri)」はあるし、区役所もある。
だから、わが京王線の笹塚の坪900万円、調布の坪500万円からして、西武池袋線の単価は高いような気がしないわけではないが、こんなもんだろうと思った。
ただ、価格が高いか安いかは、マンション購入検討者が考えることだからこれ以上は書かない。設備仕様レベルは水準以上だ。
インブルームと共同で開発した新たな洗面空間「MOTリネン」もギャラリーに展示されている。洗濯物を乾燥機から取り出してその場で畳んで、その場で収納でき、リネン庫の収納力を大幅に向上させたことに加え、様々な使い方ができるカウンターを備えており、吊戸棚、縦型収納、引き出し、ハンガーパイプなど様々な形状の収納スペースを備えているスグレモノだ。(この物件には装備されていない)
練馬駅圏では3年前に分譲されたモリモト「ピアース練馬レジデンス」(76戸)が坪440万円だったそうだ。
伊藤忠都市開発の定借マンションとしては、平成17年竣工の第一号の「タンタタウン」(678戸)以来、今回が5物件目だ。「タンタタウン」は首都圏で初めて長期の期間70年を設定した物件で、来場者は実に8,000件に達した。
「MOTリネン」
天王洲駅圏で定借と所有権付きツインの全449戸 総合地所など4社共同
「ブランズシティ品川ルネ キャナル」(左)と「ブランズシティ品川テラス」
総合地所、東急不動産、よみうりランド、長谷工コーポレーションは7月29日、東京海洋大学の敷地内にある期間70年の定期借地権付き「ブランズシティ品川テラス」と、その対面に位置する報知新聞本社跡地の所有権付き「ブランズシティ品川ルネ キャナル」の共同マンションギャラリーを設け、販売面で連携すると発表した。双方で449戸の大規模ツインマンション。
「ブランズシティ品川テラス」は、東京モノレール天王洲アイル駅から徒歩6分・JR品川駅から徒歩13分、港区港南四丁目に位置する敷地面積約4,000㎡の期間70年の定期借地権付き、14階建て全216 戸。専有面積は61.67~80.57㎡、価格は未定。竣工予定は2026年11月。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト、東急リバブル。販売開始は9月上旬の予定。
外観デザインテーマは「VOYAGE」で、2層吹き抜けのエントランスホール、吹き抜け空間上部には「水の流れや海面のウェーブ」をイメージしたフリンジアートを吊り、間接照明によって柔らかく室内空間を包み込む演出を施している。屋上緑化やZEH Oriented・低炭素建築物認定取得、太陽光パネル、ラウンジ、ワークスペース、冷凍冷蔵宅配ボックス、長谷工グループの可動収納ユニット「ウゴクロ」や「家事ラク動線」を導入している。
ラウンジ
「ブランズシティ品川ルネキャナル」は、東京モノレール天王洲アイル駅から徒歩6分、JR品川駅から徒歩14分、港区港南四丁目に位置する敷地面積約4,103㎡の19階建て全233戸。現在先着順で分譲中の住戸(4戸)の専有面積は56.33~61.85㎡、価格は12,900万~13,390万円。竣工予定は2026年10月下旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
ZEH-M Oriented、ABINC認証を取得。開放的な運河沿いに面した立地を活かし、1LDK+S〜4LDKまで多様な間取りを用意。多目的ラウンジ・ワークラウンジ・ランドリーカフェ、鳥の巣箱やバードバス、エコスタックを設置。「ウゴクロ」や無勾配排水工法「サイホン排水システム」、「フラットスラブ二重床」を採用。災害対策として雨水を貯水し、日常の植栽への水やりに利用しながら、非常時の飲料水を確保する「スマート・ウォーター・タンク」、非常用飲料水生成装置「WELLUP」を用意。災害による断水時には居住者の飲料水約6日間分(一人1日当たり約3L)を供給できる。
イメージ図
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現地は、マンションの取材で何度も通ったところだ。リリースには、「品川テラス」は東京海洋大学の敷地内にあるというので定期借地権付きで、「品川ルネ」は報知新聞の本社跡地にあるので「よみうりランド」が売主に入っているのに納得した。〝ルネ〟が前者には付いていないのは事業比率が異なるからか。
定借と所有権付きのツインマンションはおそらく業界初で、検討者はどちらを選択するか、とても興味深い。敷地は別々だから管理組合も別々のはずで、それぞれの共用施設は双方がつかえるのかどうか。
リリースを読んだ限りでは、設備仕様レベルが高く、価格は割安感がありそうだ。
マンション円滑化法 容積緩和の適用第一号 旭化成不レジ「千歳烏山」販売好調
「アトラスシティ千歳烏山グランスイート杜ノ棟」
旭化成不動産レジデンスは7月23日、全国初となるマンション建替え円滑化法第105条に基づく容積率緩和を受けた「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」が完成したのに伴う記者内覧会を実施。同社開発第二事業本部マンション建替営業部長・島寛治氏、同社マンション建替え研究所所長・重水丈人氏、同社開発第二事業本部マンション建替営業部課長・酒井厚氏、同社開発第一事業本部・永谷摩鈴氏らが参加し、高経年マンションの建て替え問題に一石を投じるプロジェクトになることを強調した。この日は気温が35度を超える猛暑日となったが、20人超のメディアが駆けつけるなど、関心の高さがうかがえた。価格(坪単価450万円)は決して安くはないが、残りはわずかで好調な売れ行きを見せている。
物件は、京王線千歳烏山駅から徒歩9分・仙川駅から徒歩14分、世田谷区給田三丁目の第一種低層住居専用地域※(建ぺい率50%前後、容積率140%前後)に位置する敷地面積約13,247㎡、4階建て「風ノ棟」121戸(非分譲住戸48戸含む)と4階建て「杜ノ棟」127戸(同56戸含む)の全248戸(同124戸含む)。専有面積は39.60~90.98㎡(従前は50.25~57.53㎡)。7月下旬に販売予定の「風ノ棟」最終期(2戸)の専有面積は70.83・71.18㎡、予定価格は8,600万円台・9,000万円台。先着順で分譲中の「杜ノ棟」の住戸(2戸)の専有面積は64.23・69.58㎡、価格は8,980万円・9,198万円。竣工予定は2025年7月末。売主は同社のほか丸紅都市開発。設計・監理はNEXT ARCHITECT &ASSOCIATES。施工は大末建設。
※このほか「杜ノ棟」の敷地の一部は第1種住居地域に位置するが、大半は1低層
販売開始は2024年2月。これまで未分譲2戸を含み残戸数は4戸のみ。購入者は30代を中心とするファミリー層。従前マンション区分所有者の再取得予定は約61%の104戸。
プロジェクトは、1971年竣工の東京都住宅公社の7階建て2棟「給田北住宅」(171戸)の建て替え事業。2011年の東日本震災によるひび割れなどの被害を受け、2012年に耐震診断を受けた結果、耐震基準を満たしておらず、設備インフラの老朽化、間取りの陳腐化などの課題があることから2016年に「再生推進決議」がなされ、2017年に事業協力者を募集し、2018年に応募があった3グループの中から同社と丸紅都市開発が選定され、2021年、団地の一括建て替えが決議され、2022年建て替え組合設立、2023年7月に工事着手された。工期は2年。
建て替え決議は、所有者167人に対し賛成151人、非賛成16で可決。区分所有法第63条の催告により14人が建て替えに参加、2人は売渡請求権を行使した。
内覧会に出席した島氏らは、建物が竣工してから高さ規制10mの第一種低層住居専用地域に用途指定され、既存不適格建築物になり、耐震不足、居住者の高齢化(多くは分譲開始時からの入居者)、コロナ禍、資材費・人件費高騰、アスベストの除去、不成形な敷地条件への対応、近隣住民への説明などに苦労したこと、敷地内貫通道路を設置することで建物の高さ規制が10mから12mに緩和され、2014年のマンション建替円滑化法改正による「容積率緩和」措置(全国で15件の申請のうち同社は5件)により指定容積率が100%から137~139%になったことが事業化につながったことを強調した。
鳥瞰図
「アトラスシティ千歳烏山グランスイート杜ノ棟」
「給田北住宅」
中庭
中庭
中庭(中庭と屋上にはハーブがたくさん植えられている)
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このマンションについては昨年5月に取材しているので、その記事を参照していただきたい。基本性能・設備仕様については省略するが、今回の取材では、東京都の「マンション環境性能表示」で満点の★5つを取得しているのは15物件しかなく、とくに「みどり」とデザインの出来栄えを重視して見て回った。
「みどり」は、想像していた通りだ。とてもよくできている。同制度でこれまで「みどり」で満点の★3つを獲得したマンションはわずか160件しかない。各デベロッパーはここにもっと力を入れてほしい。
デザインも秀逸。「風ノ棟」と「杜ノ棟」の間に幅員2.4~3.8mの歩道状空地を設け、建物を雁行させているランドスケープは、10年前に同社が分譲した「アトラス調布」を彷彿させた。中庭に、樹齢はかなり違うはずだがシンボルツリーとしてサルスベリを植えているのも同じだ。
欲を言えば、もう少しマンション全体の外構などを見たかったが、一部は工事中でほとんどが契約済みであることなどから見学不可だったのは残念だった(お陰で汗だくにはならなかったが)。
こんなことは書きたくないのだが、取材する側のメディアの知識不足が目立った。内覧会に20人超が参加していたのはとても嬉しく、同社は質疑応答に約40分もかけ、一つひとつ丁寧に答えたのはいいのだが、メディアの質問の大半は建て替えに関するもので、基本的なことを理解していない人が多すぎる。例えば、塔屋は高さ規制の12mに入るのか、投資需要はあったか、中庭は容積緩和の要件か、特急停車は販売上のメリットがあるか、再取得率は上げたいのか、小規模の建て替えは可能か…などだ。
塔屋が高さ規制12mの対象になったら、4階建てなど絶対建たないではないか(日影規制など建基法には制限もあるが)。駅から徒歩9分で、価格(坪単価)も安くないマンションに投資需要があるわけがない。中庭を設置して容積が緩和されたらほとんどのマンションがそうなる。最寄り駅が各駅停車と特急停車駅では価格が異なるのは当然だ。再取得率は市場が決めること。建て替え事業は慈善事業ではない。(配布された資料は30ページに上るもので、説明も分かりやすく、小生は聞きたいことなどほとんどなかった)
関係者ですら経験したことがない高値圏に突入しているのでやむを得ない部分もあるが、価格(坪単価)は高いのか安いのか判断できない人もかなりいた。小生は坪450万円は高いような気がするが、他の沿線の物件や基本性能などを考慮すれば、こんなものかとも思う。残り4戸というのが何よりも消費者に理解されていることを物語っている。
興味深い話も聞けた。重水氏が質疑応答で話したことだと思うが、居住者の中には従前マンションを購入して以降50年間一度も引越しをしたことがない方も多く、不用品の処分についての相談も多く受けたとか。リバースモーゲージを利用された方も若干あったようだ。また、酒井氏は建築費・工期について「仮にこれから着工した場合、肌感では工期はさらに1年くらい伸びたのではないか」と話した。建築費の高騰、工期の長期化は他のデベロッパーでもよく聞く。お手上げ状態のようだ。マンション購入検討者の方も覚悟した方がいいと思う。価格上昇は序ノ口の段階だと思ったほうがいい。
エントランスホールの坪庭(石は栃木県那須産の芦野石)
屋上の緑化(ハーブ類がたくさん植えられていた)
雁行デザイン
植栽帯
立地、仕様、離れ、デザインなど抜群単価は坪500万円弱小田急不「調布」(2024/10/30)
わが国初の全棟「ZEH-M」全戸「ZEH」駅徒歩3分の1低層大京「八幡山」(2024/10/4)
京王線初か1低層の大規模環境性能表示満点の★15個旭化成不レジ他「千歳烏山」(2024/5/24)
「道」を景観に取り込んだプラン秀逸 旭化成不動産レジ「アトラス調布」完成(2015/5/20)
〝便立地、好立地〟三井レジ・三菱地所レジ「天王洲」分譲開始
「パークタワー品川天王洲」
三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスは7月18日、「パークタワー品川天王洲」(275戸)の第1期(79戸)の販売を7月19日(土)から開始すると発表した。これまで7,700組超の問い合わせがあり、モデルルーム来場者は670組超。
建物は、総合設計制度の適用を受け、免震構造を採用し、ZEH-M Orientedを取得。外観デザインは、周辺の水辺との調和をテーマとした「航跡波(こうせきは) 」をイメージしたグラデーションを描くデザインとし、天王洲の街の新たなランドマークを目指す。
エントランスホールは天井高約9mの吹き抜け空間とし、屋内でも自然を感じられるインナーグリーンを植栽。共用施設のフィットネスルームやランドリーラウンジ、スタディコーナー、パーティールーム、キッズルームは運河沿いに配置。
設計では、住戸のプロポーションを横長にすることで全ての居室にバルコニーに面した窓を設置している。専有部の天井高は最大約2.6m(プレミアムフロアは約2.8m)を確保。
物件は、東京臨海高速鉄道りんかい線・東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅から徒歩4分、品川区東品川2丁目の商業地域に位置する34階建て全275戸。第1期(79戸)の専有面積は65.49~107.01㎡、価格は1億4,110万~3億9,980万円。竣工予定は2027年8月下旬。施工は長谷工コーポレーション。建物デザインは日建設計。
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天王洲アイルといえば、「シーフォートスクエア」を思い出す。三菱商事、第一ホテルエンタープライズ、第一ホテル、宇部興産によるホテル、マンション、オフィス、商業施設からなる複合開発だ。マンション(139戸)の分譲開始はバブルの頃で、価格(坪単価)は思い出せないのだが、一般分譲されたのは一部の住戸で、2~3億円、坪1,000万円を超えていたのではないか。飛ぶように売れた。ホテルも最高に素晴らしかった(現在は「ANAホリデイ・イン東京ベイ」)。
その後、天王洲アイルのマンションは数物件取材したが、価格の上昇には唖然とするほかない。今回のマンションは〝便立地、好立地〟だと思う。坪単価は不明だが、1,000万円には届かないのではないか。
全254戸がキャナルビュー住友不動産「シティテラス品川イースト」(2015/2/9)
マンション再生メニュー 2つ⇒7つへ 旭化成ホームズ 区分所有法改正セミナー
左から大木氏、戎氏、鎌野氏、重水氏(神保町三井ビルディング4階ファミリーホール)
旭化成ホームズ・マンション建替え研究所は7月18日、「11回 高経年マンション再生問題 メディア懇談会」を開催。同研究所特任研究員・大木祐悟氏がモデレーターとなり、早稲田大学名誉教授・鎌野邦樹氏、弁護士・戎正晴氏、同研究所長・重水丈人氏による「区分所有法改正で、マンション再生はどうなるのか? 」をテーマにしたパネルディスカッションを行った。
区分所有法の改正は、建物の老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」の社会課題を解決するためのもので、2025年5月23日の国会で成立した。改正法では、区分所有法で定められている議決要因「全員の同意」「5分の4以上の賛成」などが緩和され、集会(総会)に出席しない・意思表示しない区分所有者や「所在等不明区分所有者」を分母から省いて決議してもいいことになり、再生メニューは、従来の建て替え決議とマンション敷地売却決議の2つに加え、建物の取り壊し敷地売却決議、取り壊し決議、再建決議、敷地売却決議、建物の更新決議の5つが加わるのがポイント。一部を除き2026年4月1日に施行される。3氏のコメントは以下の通り。
鎌野邦樹氏 今回の区分所有法改正に当たっては、法務委員会で16回、国土交通省の検討会でも同じくらいの回数にわたって論議され、大きな改正がなされた。従来は、法務省管轄の法制審議会、国会の法務委員会で論議がなされてきたが、今回は国交省所管の国土交通委員会でなされた。これは国民にとってマンションはもっとも重要な財産だという共通認識が背景にある。私は結果的によかったと思う。課題は、建て替えなど費用などお金の問題。法改正によって様々な再生メニューが示されたが、それに乗らない管理不全マンションがあちこちにできると、経済的にも地域にとっても非常な損失となる。それを未然に防ぐことが重要。
戎正晴氏 今回の法改正は、建て替えの意味が変わってきたということ。国の文章にもあるように、マンションは区分所有者の責任と費用で解体されなければならないのだが、マンションは解体責任を全然認識していない、解体までの費用が担保されていない現状がある。解体責任を果たすために、区分所有者にとってもっとも有利なのは建て替えで、今までの資産が新しい資産になり、終の棲家にもなる。これからは、解体積立金か解体保険になるか分からないが、解体費の確保を重視するマンション施策が中心に位置付けられるようになる。出口戦略を本気で考えなければならない時代になったということ。
重水丈人氏 この法改正の議論が始まったのは2022年の10月から。それ以降、当社のマンション建替え研究所ホームページへの問い合わせ件数は大幅に増加している(資料では、2022年度以前の3年間の問い合わせは240件前後だったのが、2023年度は324件、2024年度は335件に増加)。関心が高まっているということがはっきりしている。当研究所も、関心を持っていただいた方々へよりわかりやすくする情報を発信していくことに注力していく。マンションの合意形成で一番苦しいのは、反対されることではなくて、関心を持ってもらえないこと。たとえ違う意見でもちゃんと意見を戦え合わせれば前には進める。それが我々の役割。世に広めていきたい。
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今回のパネルディスカッションは、マンションの建て替えを中心とする再生(戎氏は「終活」と語った)がテーマなので、全体的な改正法については、国土交通省が7月8日に行った「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」の記事を参照していただきたい。
改正マンション関連法に関する説明会に約480人 国土交通省&法務省(2025/7/8)
「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%の意味 3割打者と同じ価値があるのか
昨日(7月16日)、コスモスイニシアが今年度着工するリノベマンションの30%を「住宅省エネルギー性能証明書」付きにすると発表した記事を書いたのだが、記者はこの「30%」の意味が全然分からなかった。以下は、野球好きの記者が「30%」「3割」の意味を考えて書く記事だ。外れたら謝るほかないのだが、リノベーション業界全体が取り組むべきだと思うので書くことにした。
まず、プロ野球の「3割バッター」について。3割バッターとは、打者が打席に立ち、そのうち四死球、犠打・犠飛を除く打数に対して3割以上の安打を放った選手に贈られる〝称号〟だ。91年の歴史を誇るNPBの中で通算打率.300以上の成績を残した選手は在籍者約1万人の中でわずか26人しかいない。長嶋茂雄さんの通算打率は3割ちょうど。3割を切りたくなかったから、〝永遠〟名セリフを残して引退したのだと思う。ちなみに、2024年の規定打席(試合数×3.1)以上打席に立った選手の個人打撃成績で、打率3割以上の成績を残した選手はセ・リーグが2人、パ・リーグが1人しかいない。
例外はイチロー選手だ。NPB通算打率は.353、米国・MLBの通算打率は.311、日米通算打率は.322だ。これを抜く選手はまず現れない。
これだけ書けば、「3割」がすごい数字だとわかっていただけるか。
「3割」といえば、「3割自治」という言葉がある。地方公共団体の歳入に占める自主財源である地方税の割合が3割程度しかないことを表す言葉で、3割以上の自治体は3~4割程度と言われている。もっとも自主財源比率が高い都道府県は東京都の90.6%(令和5年10月東京都財務局)。
「3割」は他にもある。医療費の自己負担比率だ。小生などの後期高齢者は原則「1割負担」だが、70最以下の人は原則「3割負担」だ。
本題に戻す。「住宅省エネルギー性能証明書」に関する公的データはない。証明書を発行している各機関・企業も年間どれくらい証明書を作成しているか公表しているところはないはずだ。ZEH水準の工事を施した物件がどれだけあるか、杳として知れない。
そうなると、限られた公表データから推測するほかない。国土交通省・総務省のデータによると、令和5年の住宅着工戸数は82.6万戸、既存住宅取引件数は15.9万戸、流通市場シェアは16.2%だ。住宅ストック約5,400万戸の断熱性能を満たす住宅(H11年基準)はストック全体の約18%(令和4年推計)。わが国のマンションストック総数は約704.3万戸(2023年末時点)。東日本レインズのデータによる2024年の首都圏中古マンション成約件数は37,222件、新規登録件数は190,880件。「2022年の中古住宅買取再販市場規模(中古戸建及び中古マンションの買取再販戸数の合計)は成約戸数ベースで前年比5.1%増の41,000戸と推計した」(矢野経済研究所)…などだ。
これらの数値から、記者はZEH水準の既存マンション流通量は2~3千戸くらいではないかと考えるのだが…だとすれば、コスモスイニシアの「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%は極めて高い水準のような気がする。
だが、しかし、分譲マンションも分譲戸建てもZEH水準が当たり前になりつつある。既存住宅もZEH水準が当たり前になるようすべきだと思う…リノベマンションの3割がZEH水準になり、それが当たり前になったら、3割バッターとの比較はどうなるのか…この記事は全然整合性が取れていないではないか。
「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%へ コスモスイニシア リノベマンション
「コスモポリス品川」の3住戸で「住宅省エネルギー性能証明書(ZEH水準または省エネ基準)」取得
コスモスイニシアは7月16日、リノベーションマンション事業「INITIA & Renovation」について、今年度着工する既存マンションから「住宅省エネルギー性能証明書(ZEH水準※1・省エネ基準※2)」取得率30%を目標値とすることに決定したと発表した。証明書を取得するとローン控除の優遇措置や補助金申請が受けられる。
住宅の省エネルギー化の推進にあたり、YKK AP、u.company、エヌ・シー・エヌの3 社と協業体制を構築しており、これらの企業と連携しながら、設計や仕様検討の段階から、各物件に応じたZEH水準・省エネ基準到達に必要な条件の提示、申請業務のサポートなど、技術面・制度面において実務的な支援を受けながら省エネルギー化を進めているとしている。
※1 ZEH水準:建築物の断熱性能及び設備に関する基準を満たした住宅で、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅
※2 省エネ基準:建築物の断熱性能及び設備に関する基準を満たした住宅で、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅
14年も前から断熱窓の提案に驚愕インテリックス「青山リノベーションスタジオ」(2025/7/4)
リスト 最高価格72.5億円のアジア初のポルシェブランドマンション タイで分譲開始
リストグループのリストインターナショナルリアルティ(LIR)とリストインターナショナルリアルティタイランド(LIRタイオフィス)は7月15日、アジアで初となる高級スポーツカーのポルシェをモチーフとしたブランデッドレジデンス「Porsche Design Tower Bangkok(ポルシェ デザイン タワー バンコク)」22戸を9月末日から共同で販売開始すると発表した。最高価格は72.5億円(坪単価2,108万円)となる予定。
LIRタイオフィスは、2018 年に高級不動産仲介ブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ®」 のタイ国内独占営業権を取得。これまでのタイ国内での高級不動産の販売実績が評価され、今回の物件の販売権利を取得。LIR東京オフィスと共同で、日本国内で初めて同物件を先行案内するイベントを6月25日にポルシェ銀座スタジオで開催した。
価格は約20億6,480万円から約72億5,000万円(専有面積約525~約1,135㎡)を予定している。
1戸25億円の分譲戸建て「元麻布」リストが分譲、契約済み(2025/7/10)
中古マンション市場も二極化 都心と郊外は雲泥の差 東日本レインズデータから
既報の通り、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)による令和6年6月の首都圏中古マンションの成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)、坪単価は275万円(同6.9%増)、成約価格は5,209万円(同5.1%増)、専有面積は62.50㎡(同1.7%減)、築年数は26.96年(前年同期は24.36年)となったのだが、もう少し詳しくデータを見ることにした。都心と郊外は雲泥の差であることが分かる。マクロデータのみに頼っていては、市場を見誤ることになりかねないということだ。
都県別成約状況では、東京都の成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)、坪単価は386万円(同13.2%増)、価格は6,791万円(同5.1%増)、専有面積は58.04㎡(同2.5%減)、築年数は25.87年(同2.60年増)。
神奈川県の成約件数は1,003件(同40.5%増)、坪単価は186万円(同5.2%減)、価格は3,751万円(同6.6%減)、専有面積は66.66㎡(同1.5%減)、築年数は27.62年(同3.08年増)。
埼玉県の成約件数は509件(同47.1%増)、坪単価は143万円(同2.8%増)、価格は2,906万円(同1.9%増)、専有面積は67.09㎡(同0.8%減)、築年数は27.49年(同0.91年増)。
千葉県の成約件数は427件(同12.1%増)、坪単価は121万円(同9.8%減)、価格は2,629万円(同9.3%減)、専有面積は71.89㎡(同0.5%増)、築年数は30.85年(同3.69年増)。
これらの数値を見比べると、東京都の成約件数は首都圏全体の54.9%を占め、坪単価は首都圏平均の1.4倍、価格は首都圏平均の1.3倍になっており、一方、他県の坪単価は横ばいか下落しており、価格は東京都の半値で推移していることが分かる。また、専有面積は各都県とも一貫して縮小しており、築年数は千葉県が30年超となっているのが目立つ。
記者がもっとも興味があるのは、いま自宅マンションを売却する人は買値を上回っているのか下回っているのかだ。世間では分譲と賃貸都ではどちらが得かが俎上に上る。記者は住宅を損得で考えるべきではなく、ライフスタイルによって自由に選択できる市場になることを願っている。
ここではこの問題に深入りすることをしないで、単純に考えることにする。築年数26.96年といえば、今から約27年前の1998年(平成10年)だ。デベロッパーはバブル崩壊の痛手から立ち直っていたころで(退場を余儀なくされたデベロッパーはたくさんあったが)、マンション市場は活況を呈していた。不動産経済研究所のデータによると、1998年の首都圏マンション供給量は約6.6万戸で、坪単価は193万円、平均価格は4,168万円、平均専有面積は71.01㎡だ。その後、2008年のリーマン・ショック後の一時期を除けば価格、単価は右肩上がりで推移している。2024年の平均価格は7,820万円、坪単価は388万円だ。
中古マンションはどうかというと、1998年の成約件数は22,356件、坪単価は115万円、価格は2,192万円、専有面積は62.87㎡、築年数は15.20年だ。現在の中古マンションの成約状況を当時と比べると、坪単価と成約価格は約2.4倍へと大幅に上昇している。当時、マンションを買った人は損切りしないで売却できているという計算が成り立つ。これが現在の活況を呈している中古マンション市場の大きな要因の一つだろう。
問題を指摘するとすれば、専有面積の圧縮だ。現在の新築マンションの平均専有面積は66.95㎡で、1998年比で4.06㎡(1.23坪)縮小している。中古マンションの専有面積は1998年の62.87㎡よりも狭い62.50㎡だ。〝便立地、好立地〟(資産性)のために住宅の基本的な質である居住面積を犠牲にしていることが分かる。
30年経過しても、住宅の質はそれほど向上していないとも受け取れるが、この〝便立地、好立地〟(資産性)が重視されるのは分からないわけではない。〝時は金なり〟だ。移動に伴う時間を金額に換算したらいくらになるか。これは人それぞれだろうが、仮に1時間2,000円としたら(オフィスワーカーの賃金を時間給にしたらもっと高いはずだが)、駅から徒歩10分なら往復で666円、月に約2万円、年間で約24万円だ。夫婦ならこの2倍。〝コスパ〟を重視する若い人にとっては無視できない額だ。
では、居住面積を金額に換算したらいくらになるか。首都圏賃貸住宅の相場を坪1万円とすると、年間で12万円だ。夫婦で共有すれば1人当たり6万円となる。
この数値から、時間か居住性かを問われれば、やはり時間を重視する人が多数を占めるだろう。〝便立地、好立地〟が住宅市場で優位にあることの説明がつく(絶対ではないので、郊外の価格が安くて居住性に優れた住宅が一定の支持を受けているのもよくわかる)。
成約状況をさらに詳しく見ると、面白いことが分かる。2025年4月から6月の成約件数12,090件の1,000万円ごとの価格帯別分布でもっとも多いのは6,000~7,000万円の1,904件(全体の15.7%)だが、10,000万円以上は1,189件(8.8%)で昨年同期の715件(7.6%)から大幅に増加している。10,000万円以上を都県別にみると、東京都が1,104件(前年同期は663件)を占め、他の3県合計は85件だ(前年同期は52件)。ちなみに、他県の1,000万円ごとの最多価格帯はいずれも1,000~2,000万円で、神奈川県500件(17.8%)、埼玉県325件(23.1%)、千葉県289件(23.4%)、3県合計で1,114件だ。東京都の億ション成約件数のほうが多い。
この数値からは、東京都の高額住戸が市場を左右していることが浮き彫りになり、中でも都心3区(千代田区・中央区・港区)の数値が突出している。東京都全体の6月の成約状況は先に見たが、都心3区の成約件数は都全体の7.1%の306件(前年同月比29.1%増)で、坪単価は766万円(同26.8%増)、価格は13,502万円(同33.7%増)、専有面積は58.16㎡(同5.5%増)、築年数は20.45年(前年同期は20.05年)となっている。
坪単価、価格とも大幅に上昇しているが、興味深いのは築年数だ。他の地域では城東地区24.08年、城南地区28.22年、城西地区27.11年、城北地区26.89年、多摩地区27.97年となっており、かなりの差がある。
なぜそうなのかは詳細な分析が必要だが、先に見たように築年数が浅いほど中古市場での評価が高く、ここ数年の新築価格の暴騰の恩恵を高額マンション居住者が受けていることをうかがわせる。一部では投機的需要も発生しており、中古価格が新築価格を上回る逆転現象もみられる。
月並みな言葉だが、首都圏中古マンション市場も二極化が広がっているということか。
6月の中古マンション・戸建て 成約件数は大幅増加 東日本レインズ(2025/7/10)