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「コンフォリア北葛西」(撮影:黒岩翼写真事務所)

 東急不動産とリノべる6月19日、築年数の経過に伴う空き家課題を抱える賃貸マンションにリノベーション工事を施しバリューアップした両社のリノベーション協業第三弾「コンフォリア北葛西」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を実施した。全56戸のうち空き家だった16戸と共用部分をリノベした結果、平均賃料は従前の12.9万円(坪6.3万円)から19.3万円(坪9.5万円)に改善し、竣工時までに12戸が成約するなど、周辺の築浅マンション同等の賃料水準を実現した。リノベ効果をまざまざと見せつけた。

 リノベーション協業第三弾は、築32年(当時)だった賃貸マンションを昨年9月にリノベーション工事を施すことを前提に東急不動産が取得。全56戸のうち空き家だった16戸と共用部分を対象に、リノベるがプロジェクトマネジメント、総合企画、設計・施工。陳腐化した間取りを変更するとともに、キッチンに食洗機を設置するなど水回り部分の設備を一新。共用部分は100台しか収容できなかった駐輪場を170台へ増設し、公園をイメージした緑をふんだんに植樹し、住まいや地域に愛着が持てるような演出を随所に施している。

 物件は、東京メトロ東西線西葛西駅から徒歩15分、江戸川区北葛西5丁目の第一種住居地域(建ぺい率70%、容積率300%)に位置する1991年竣工の8階建て全56戸(リノベーション実施16戸)。施工は戸田建設。平均専用面積は67.37㎡(20.38坪)。リノベーション施工は2025年4月。

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エントランス(before) エントランス(after)(撮影:黒岩翼写真事務所)

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左・左中・右中:階段室のウォールグラフィック。階ごとに動物が異なり、足跡も異なる。右:エレベーター内部をグラフィックウォールに(撮影:黒岩翼写真事務所)

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植栽(中庭)

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植栽(エントランス)

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壁は黒板クロス、床はインナーテラス風仕上げ

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玄関

◇        ◆     ◇

 築古の、特に駅からの距離がある賃貸マンションは、何もしなければ空きが大量に発生し収益の悪化を招くのは必至で、一方で、設備仕様を更新し外構・共用部分などの充実を図れば、築浅の周辺物件に負けない物件にすることができる好例だと思う。

 竣工が1991年4月だから、バブルが崩壊した1990年(平成2年)には着工されていたのだろう。当時、記者は賃貸マンションの取材はほとんど行っていないので、仕様レベルが高いか低いかは分からないが、天井高は2450ミリ、直天、二重床、サッシ高は1800ミリ、トイレ・浴室部分の段差などは分譲レベルでも見られたものだ。

 リノベに当たって、専用部の和室を洋室にし、従前はエアコンが使えなかった洋室にエアコンを設置し、玄関は下駄箱から棚にするなどのリノベ工事は当然として、子育てファミリーの入居を意識した共用部のリノベ工事が目を引いた。

 従前はどうだったか分からないが(多分、なにもなかったのだろう)、敷地の外周部と中庭には、一つひとつを公園に見立てた植栽がふんだんに施されていた。一般的な賃貸マンションではまずありえないし、分譲マンションでもここまで緑を配す物件は多くないはずだ。

 エレベーターや階段室には子どもが楽しめる動物のモチーフを用いたグラフィックウォールや足跡をデザインに取り込む仕掛けを施し、専用部の玄関サインには再生木を使用している。些細なことだが、このような心配りが消費者に支持されるのだと思う。

カテゴリ: 2025年度

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世古氏(第一ホテル東京で)

 マンション管理業協会は6月10日、定時総会を開き、前理事長・高松茂氏(三井不動産レジデンシャルサービス特別顧問)に代わって、新しい理事長に世古洋介氏(同社取締役会長)を選任した。総会後の懇親会での世古氏の挨拶は次の通り。

 本日は、皆様ご多用中のところ、多数ご出席いただきましてありがとうございます。

 ただいまご紹介いただきました、理事長の世古でございます。本日、定時総会後の理事会におきまして、高松前理事長の後任として、理事長に選任いただきました。

 高松前理事長が、マンション管理業の成長・発展のために勧めてきた様々な取り組みをしっかり継承させるべく、微力ながら全力で取り組んでまいりますので、どうぞ皆様のお力添えをよろしくお願いいたします。(中略)

 さて、近年わが国では、既存マンションの長寿命化が重要な課題と位置付けられており、我々マンション管理業が果たすべき役割の重要性もますます高まっていると認識しております。

 一方で、人手不足やコストの上昇などマンション管理の現場では様々な課題も山積しています。

 こうした課題に適切に対応し、マンション管理のプロとして、難易度が増している管理組合運営に対して適切なサポートを行い、お客様の信頼を得ながら、わが業界がますます発展成長していけるよう、鋭意努力してまいりたいと思います。

 理事長就任に当たり、取り組むべき重要課題について3点申し上げたいと思います。

 1つ目は、マンション管理適正評価制度の更なる伸長と定着です。本制度は、マンション管理に関する様々な項目を整理・点数化し、星の数で評価することで、管理の現状や課題を、お住いの皆様にも、また市場において見える化し、もってマンションの長寿命化を実現する素晴らしい制度だと認識しています。

 こうした本制度の意義を、管理組合の皆様にも、また実務を担う管理会社の皆様にも、改めて認識いただき、すでに8400を超える登録を頂いていますが、今年度はさらに1万5000件へと伸長させ、社会に定着させていきたいと考えています。皆様の引き続きのご協力をよろしくお願いいたします。

 2つ目は、今後さらに幅が広がっていくと思われます、新しい管理の在り方への対応です。新築から築年数40年超まで、あるいは小規模から大規模タワーマンションまで様々なマンションがあり、マンション管理におけるニーズは多様化しています。

 例えば、今般のマンション法改正で法制化された「管理業者管理方式」や近年進んでいる様々な管理ツールのDX化など、管理組合運営も今後さらに変化・多様化していくことが見込まれています。こうした変化を的確にとらえ、業界として適切に対応していけるよう取り組んでいきたいと思います。

 3つ目は、マンション管理業に携わる人々が生き生きと働ける魅力ある管理業界となることです。今申し上げた2つの課題にしっかり取り組みながら、我々管理業業界の役割や長年培ってきた専門性などをお客様によく理解していただき、また、評価していただくことで、業界で働く人々のやりがいにつなげていければと考えています。

 皆様のお力をお借りしながら、こうした管理業を取り巻く諸課題に全力で取り組み、業界の発展に少しでも貢献していけるよう鋭意努力してまいります。

 今後ともご指導ご鞭撻・ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 結びに、本日お集りの皆様のご健勝、ますますのご活躍をお祈り申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。

 

カテゴリ: 2025年度

 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は6月10日、2025年4月の首都圏流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,841件(前年同月比35.0%増)で7か月連続の増加、坪単価は277万円(同10.2%増)で20年5月から61か月連続の上昇、成約価格は5,311万円(同9.9%%増)で7か月連続の上昇、専有面積は63.18㎡(同0.3%減)で6か月連続の縮小となった。

 中古戸建の成約件数は1,784件(前年同月比62.8%増)で7か月連続の増加、成約価格は3,880万円(同0.4%増)で3か月ぶりの上昇、土地面積は145.63㎡(同6.4%増)、建物面積は103.54㎡(同0.3%増)となった。


 

 

カテゴリ: 2025年度

 東京カンテイは6月2日、全国の億ション供給動向をまとめ発表した。2024年に全国で供給された億ションは5,531戸で、このうち首都圏は約75%の4,157戸(前年4,180戸)を占めている。都県別では、東京都がもっとも多く3,625戸で、次いで大阪府753戸、神奈川県329戸の順。宮崎県で初めて2戸供給されたため、累計の億ション空白県は山形、鳥取、香川、徳島、佐賀の5県となっている。

 2024年12月末時点の累計供給戸数は68,351戸で、分譲実績が確認されたのは42都道府県。圏域別では首都圏が54,569戸、近畿圏が8,899戸、中部圏が2,221 戸、地方圏が2,662戸。都道府県別では東京都の48,183戸が最多で、全国シェアは70.5%となっている。

◇        ◆     ◇

 面白いデータだ。全国で供給されるマンションは、投資向けやコンパクトを除けば約10万戸(首都圏は約5万戸)だろうから、そのうち約5%(首都圏は約10%)が億ションと捉えることができる。

 気になったのは、全体市場をどこまで捕捉しているかだ。不動産経済研究所の調査では、首都圏の2024年億ション供給戸数は3,648戸(前年4,174戸)となっている。不動研は着工戸数の半分も捕捉できていないので少ないのは分かるが、東京カンテイとの差はそれほどでもない。東京カンテイに非分譲住戸をカウントしているのかどうか聞いたが、同社はデータをカウントする際に総戸数をカウントしているが、クローズド販売など一般分譲されない億ション戸数は含めないとのことだ。例えば、「グラングリーン大阪」のように全484戸のうち236戸しか一般分譲されなたかった物件は、残りの戸数はカウントされていないということだ。

 だとすれば、実際の億ションの供給戸数は、同社発表戸数より数千戸多い可能性もあるということだ。「供給」の定義を考えないといけないかもしれない。

 もう一つ、同社はバブル期を1988年(昭和63年)から1992年(平成4年)の5年間としているが、これには異論をはさまざるを得ない。

 バブル発生はもう少し前の1886年(昭和61年)ころだと思う。この年、民活第一号マンションの「西戸山タワーホウムズ」が分譲されたが、モデルルーム来場者は5万人を突破し、申込者は、北は北海道から九州まで全国に及んだ。完全に〝バブル〟だと思った。業界関係者もそう見ているはずだ。

 バブルが崩壊したのは1990年(平成2年)9月だ。これも間違いない。同年8月、湾岸戦争が勃発したのを機に株価が暴落し、9月のマンション月間契約率は確か50%を割ったはずだ。その後、マンションの値引き・解約が相次いだ。

 ただ、マンションは土地の仕入れから着工・分譲までかなりずれがあるから、単純に供給が多かった1988年(昭和63年)から1992年(平成4年)の5年間をバブル期としたのも分からないわけではない。そのように断ればよかった。

 同社は今後、億ション市場についてレポートするとしている。期待したい。かつて同社は詳細な億ション市場動向をまとめ発表している。用途地域別では、住居系エリアが大多数を占め、商業・工業系は数えるほどしかなかったのを覚えている。いまはその逆で、商業系が過半を占めているのではないか。消費者のニーズが居住環境より利便性を重視するように変化したのか、デベロッパーがそのように誘導したのかは分からない。

 

カテゴリ: 2025年度

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「グラン レ・ジェイド三宿通り」 

日本エスコンは62日、最上位ブランド〝グラン〟を冠した「グラン レ・ジェイド三宿通り」が販売開始からほぼ1か月、531日に完売したと発表した。

物件は、東急田園都市線池尻大橋駅から徒歩14分・三軒茶屋駅から徒歩14分、世田谷区池尻一丁目に位置する6階建て全10戸(会員優先分住戸5戸含む)。一般分譲5戸の価格は20,990万~25,490万円。平均坪単価は820万円。入居予定は20263月。

外観は、カーテンのように波打つデザインにより外壁が光と影のコンストラストを演出し、平均専有面積100㎡超で、ルーフバルコニーや専用ガレージ付き住戸など多彩なプランを用意。一般エントリーを41日に開始し、これまでのエントリー数は約520件。販売開始は421日から。

全戸にホワイエ(屋内廊下)土地の価値を最大限引き出す日本エスコン「渋谷富ヶ谷」(2017/4/24

ライトコート付きのプラン秀 日本エスコン 首都圏初の〝グラン〟「若松町」(2016/11/4

 

 

 

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 マンション管理業協会は515日に行われた恒例の記者懇親会で、同協会と不動産情報サービスのアットホームが連携し、横浜市立大学の「マンション管理適正評価制度の情報開示が市場価格に与える影響」に関する研究を支援すると報告した。

アットホームは、同協会から提供を受けたマンション管理適正評価の登録情報を「不動産情報サイト アットホーム」に202211月から掲載している。今回の研究は、中古マンションの購入者側の情報の不足、情報の非対称性が著しい現状に着目し、同制度の情報が価格に与える影響を可視化するというのが目的。

同様の調査・研究は昨年4月、横浜市立大学(国際教養学部・齊藤広子教授)と同大(データサイエンス学部・鈴木雅智准教授)が行っている。オール満点の★5つのうち3以上のマンションは評価を取得していない物件と比べ価格は高く、11%の価格プレミアムが生じていると報告している。今回の調査・研究はその第2弾。

        ◆     ◇

 同制度は20224月にスター。良好なマンション管理が市場で適正に評価されるよう★の数(満点は★5つ)で〝見える化〟するのが目的だ。3月末の登録件数は8,250件となっている。

 この日の同協会の報告を受け、記者はてっきりアットホームの物件情報サイトに掲載されている★が付いているマンションは、近傍同種の物件と比較して価格が高いのか低いのかすぐ分かるものだと思った。

 ところがそうではなかった。調査・研究の結果報告は1年くらい先で、個別物件の価格がどのような評価を受けたかは公表されない可能性が高い。

 これにはがっかりした。学者・先生が★の多寡を数値的に処理し研究するのはいいことだが、調査期間が1年だとすれば、調査に要する時間とエネルギーをお金に換算したら多額に上るし、しかも、その結果報告はマンション購入検討者には届かない。

 いま必要なのは、★が付いたマンションを増やすことで、★の数が多いマンションほど市場で高い評価(価格)を受けていることを伝えることだ。

 学者・先生の研究を待たなくても、中古市場に精通した不動産流通会社の担当者なら★がついているマンションの属性、質がどのようなものかすぐ分かるはずで、近傍同種の物件との価格差も瞬時にはじき出せるはずだ。

 その担当者がはじき出した査定価格が適正かどうかの根拠となっているものの一つにレインズデータがある。レインズ情報は登録している不動産会社しか利用できず、消費者など一般の人がどのようなテータが搭載されているか知ることはできない。記者がある不動産会社でちらっと見た限りでは、成約価格の履歴もわかる。まさに〝打ち出の小槌〟だ。

 今回の同大学の調査・研究も、このレインズデータを利用できればいいのだが、もレインズデータの扱いは厳しく、以下のような規制がある。

 (1)会員(不動産会社)は、レインズ情報を、購入や売却等を検討する顧客への物件紹介、また取引価格を設定する根拠として明示すること等の不動産取引を成立させるため以外の目的で利用することはできません。レインズ情報を用いたデータベースや不動産検索サービス等を第三者に提供する行為や、レインズ情報を直接顧客に検索・閲覧等させるようなサービスを提供する行為は目的外利用に該当します。

(2)会員は、レインズ情報を、媒介行為その他の宅地建物取引業の用に供する目的以外の目的で利用し、利潤を得ることはできません。また、利潤を得ていない場合も、上記(1)の目的以外の目的で同情報を外部に提供・開示すること自体が、レインズ利用規程第14条第3項及びレインズ利用ガイドラインに違反します。

このように、レインズ情報は不動産会社が独占的、排他的に利用できるものだ。情報の非対称性がこれほどはっきり明示されている事例はほかにあるのか。同大学もレインズ情報にはアクセスできないはずだ。

だが、しかし、先にも書いたように仲介会社は、レインズデータに頼らなくても、独自のデータから★付きマンションの価値(価格)判断は瞬時にできるはずだ。登録件数が少ない今だからこそやるべきだと思う。同制度が世の中に浸透し、みんな★5つか★4つになったら、情報の希薄化が進み、価値判断の材料にならなくなる。

マンション管理適正評価 ★5つは11%のプレミアム 横浜市立大・齊藤教授らが報告(2024/4/2

 

 

カテゴリ: 2025年度

 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は5月12日、首都圏の2025年4月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,950件(前年同月比21.5%増)となり、6か月連続で増加。新規登録件数は15,885件(同6.0%減)で24年3月から14か月連続で減少。在庫件数は44,008件(同4.4%減)で12か月連続で減少した。

 成約㎡単価(坪単価)は前年同月比3.9%増の81.11万円(坪267.7万円)となり、20年5月から60か月連続で上昇し、90年11月の80.14万円(坪264.5万円)を上回った。前月比も2.7%の上昇。新規登録㎡単価は前年同月比25.7%増の92.61万円(305.6万円)となり、12か月連続で上昇した。前月比も。

 成約価格は、5,047万円で前年同月比0.6%増と、ほぼ横ばいながら6か月連続で上昇。専有面積は62.22㎡で、前年同月比3.2%減となった。

 中古戸建て成約件数は1,777件で前年同月比45.3%増となり、6か月連続で増加。平均価格は3,804万円で前年同月比5.7%減と2か月連続で下落。

 土地面積は151.06㎡(前年同月比1.1%増)、建物面積は102.09㎡(同2.0%減)となった。

 

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 三菱地所は5月12日、2025年3月期決算を発表、売上高1兆5,798億円(前期比5.0%増)、営業利益3,092億円(同11.0%増)、経常利益2,629億円(同9.0%増)、純利益1,893億円(同12.4%増)となり、売上高、営業利益、純利益は過去最高を記録。ROEは7.6%となり、通期予想7.2%から大幅に向上。

 セグメント別では、コマーシャル不動産事業は売上高5,388億円(前期比396億円増)、営業利益1,246億円(同99億円増)。オフィスビルは、堅調なリーシング等により増収となり、商業施設及びアウトレットモールは、店舗売上の増加等により、ホテルは、稼働率の上昇等により増収となった。

 丸の内事業は、売上高3,945億円(前期比135億円増)、営業利益961億円(同9億円減)。丸の内オフィスの2025年3月末の空室率は1.73%。

 住宅事業は、売上高4,219億円(前期比230億円増)、営業利益480億円(同91億円増)。マンション計上戸数は1,787戸(前期2,271戸)。完成在庫は67戸(前期53戸)。

 海外事業は、売上高襟上げ打間営業収益は13,583百万円減収の1,601億円(前期比135置く円減)、営業利益458億円(同56億円減)。米国、英国の前期の物件売却の反動等により減収となった。

 投資マネジメント事業は売上高409億円(前期比100億円増)、設計監理・不動産サービス事業は売上高821億円(同89億円増)。

 次期業績予想は、売上高1兆8,500億円(前期比17.1%増)、営業利益3,250億円(同5.1%増)、経常利益2,700億円(同2.7%増)、純利益1,950億円(同3.0%増)を見込む。ROEは8%程度を予定。年間配当は46円(前期43円)の増配の予定。

◇      ◆     ◇

 記者が驚いたのは国内分譲マンションの数値だ。売上高は1,596億円(前期比0.2%増)、計上戸数は1,787戸(同21.3%減)、粗利益率は28.6%(同2.7ポイント増)、完成在庫は67戸(同14戸増)となった。次期予想は売上高2,020億円(同26.6%増)、計上戸数は1,700戸(同4.9%減)、粗利益率は35.0%(同6.4ポイント増)になると公表した。

 売上高、計上戸数はそれほど驚くに値しない。今期予想の売上高を計上予定戸数で割った1戸当たり平均価格は1億1,882万円(前期は8,932万円)となり、三井不動産の1億4,286万円(前期は1億225万円)に次ぐ数値だが、驚いたのは粗利益率だ。

 35.0%という数値はいかに高いか。バブル期の数値は思い出せないのだが、バブル崩壊後の37年間でこれほど高い数値を記録したのは同社にとって初めてのはずだ。かつてリーマン・ショック時には10%を割り込んだ年もあった。20%台に乗ったのもここ数年だ。

 記者は、バブル崩壊後で粗利益率が30%を超えたデベロッパーは東京建物しか知らない。同社は2017年12月期で33.3%(計上戸数971戸)、2022年12月期で33.3%(同1,435戸)、2023年3月期で33.4%(同1,058戸)を記録している。三菱地所は東京建物の記録を抜く。

 この他、住友不動産も高い数値を示している。2024年3月期の販売事業の粗利益率は27.8%だ。同社の2025年3月期決算発表は本日5月13日だ。30%超となるかもしれないが、35%には届かないと見た。

 もう一社、三井不動産も直近は30%を超えている可能性がある。同社の2025年3月期の国内分譲住宅の売上高は4,135億円で、営業利益は964億円、営業利益率は23.3%となっているが、同社は粗利益率は公表していない。

 いずれにしろ、粗利益率が35%というのはバブル崩壊後では業界初の可能性が高い。

三井不動産今期マンション計上予定2,800戸平均価格は14,286万円に(2025/5/10)

カテゴリ: 2025年度

三井不動産 分譲マンション売上高・計上戸数・平均価格・完成在庫の推移

年度

売上高

(億円)

計上

戸数

平均価格

(万円)

完成在庫

(戸)

2000 2,210 4,831 4,575 140
2001 2,409 5,333 4,518 175
2002 2,286 5,118 4,467 485
2003 2,542 5,566 4,567 455
2004 2,974 5,130 5,798 490
2005 1,809 4,341 4,167 236
2006 2,024 4,487 4,510 267
2007 2,346 5,240 4,477 453
2008 2,749 5,206 5,281 826
2009 2,565 4,651 5,515 872
2010 2,660 5,455 4,877 638
2011 2,138 4,512 4,739 380
2012 2,362 4,956 4,765 223
2013 2,955 6,557 4,506 170
2014 2,495 4,858 5,136 83
2015 2,534 4,391 5,772 88
2016 2,772 5,200 5,330 321
2017 2,470 3,707 6,663 108
2018 2,522 3,283 7,683 141
2019 2,360 3,194 7,390 128
2020 2,903 3,775 7,689 150
2021 2,067 3,208 6,442 82
2022 2,356 3,196 7,373 55
2023 2,806 3,280 8,554 24
2024 3,776 3,693 10,225 32
2025 4,000 2,800 14,286  

 ※2025年度は同社の業績予想

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 既報の通り、三井不動産は5月9日、2025年3月期決算を発表。売上高は13期連続、営業利益、経常利益、純利益は3期連続で過去最高を更新した。また、記者は決算発表の2日前の5月7日付で「三井不動産2025年3月期決算 絶好調マンション 計上3,650戸 平均価格1億円超へ」と題する予想記事を書いた。計上戸数は予想より43戸多い3,693戸となったが、平均価格は予想通り10,225万円となった。今期の計上戸数は大幅に減少する見込みだが、1戸当たり平均価格はさらに上昇して14,286万円になる模様だ。

 別表・グラフを見ていただきたい。2016年度は計上戸数5,200戸で、1戸当たり平均価格は5,330万円、完成在庫は321戸だ。その後、計上戸数は減少しているものの平均価格はほぼ上昇の一途で、2024年度の平均価格はついに1億円を突破した。この9年間で2倍近くに上昇したことになる。

 注目すべきなのは、今期の業績予想だ。営業収益は前期比224億円増の4,000億円で、計上予定戸数は前期比893戸減の2,800戸だ。この通りだと、1戸当たり平均価格は4割近くアップの14,286万円になる。

 平均価格が大幅に上昇するのは、同社が幹事会社となっている「HARUMI FLAG SKY DUO」1,455戸(事業比率は未公表)、「パークコート ザ・三番町ハウス」193戸、「パークシティ高田馬場」325戸などの大規模・高額マンションが計上されるからだ。期初の計上予定戸数に対する契約進捗率は88.5%に達しているので、計画通り引き渡しが完了するのは間違いない。

 今期だけでなく、価格上昇は来期以降も続く。 「パークコート青山高樹町 ザ タワー」85戸、「パークシティ中野」807戸、「パークシティ小岩 ザ タワー」731戸、「パークタワー向ヶ丘遊園」241戸などか続々竣工する。

 三井不動産レジデンシャルの販売用不動産は用地取得関係費の期末残高は2.5兆円に上っている。同社だけでなく、大手デベロッパーは軒並み都心部の高額・再開発にシフトしている。野村不動産も総額23,560億円相当分(戸数換算19,760戸)の分譲用地のストックを確保していると公表した。競争は激化するが、よほどの景気変動がない限り、都心部の高額マンション坪単価は3,000万円以上、20坪で10億円以上になると記者は見ている。

 完成在庫について。記者は5月7日付の記事で、「完成在庫数は3Q末の9戸を上回るか下回るかは不明だ。販売戦略上『三田』は未分譲住戸が数十戸ある模様で、そうだとすると〝完成在庫〟としてカウントされる可能性もある」と書いた。期末の完成在庫数は32戸だ。同社はこの32戸に「三田」が含まれているかどうかはコメントしなかった。

 そこで提案だ。完成在庫の定義を変更してはどうか。野村不動産ホールディングスは数年前から完成在庫を「販売中」と「未販売」に分けて公表している(今期末は「販売中」が248戸で、「未販売」は279戸)。同社に倣って「販売中在庫」と「未販売在庫」にわけてはどうか。

三井不動産2025年3月期決算増収増益売上高、営業利益、純利益は過去最高更新(2025/5/10)

三井不動産 2025年3月期決算絶好調マンション計上3,650戸平均価格1億円超へ(2025/5/7)

「HARUMI FLAG」タワー棟第1期573戸平均15.3倍で即日完売坪単価421万円(2023/7/18)

 

 

カテゴリ: 2025年度

三井不動産 分譲マンション売上高・計上戸数・平均価格・完成在庫の推移

年度

売上高

(億円)

計上

戸数

平均価格

(万円)

完成在庫

(戸)

2000 2,210 4,831 4,575 140
2001 2,409 5,333 4,518 175
2002 2,286 5,118 4,467 485
2003 2,542 5,566 4,567 455
2004 2,974 5,130 5,798 490
2005 1,809 4,341 4,167 236
2006 2,024 4,487 4,510 267
2007 2,346 5,240 4,477 453
2008 2,749 5,206 5,281 826
2009 2,565 4,651 5,515 872
2010 2,660 5,455 4,877 638
2011 2,138 4,512 4,739 380
2012 2,362 4,956 4,765 223
2013 2,955 6,557 4,506 170
2014 2,495 4,858 5,136 83
2015 2,534 4,391 5,772 88
2016 2,772 5,200 5,330 321
2017 2,470 3,707 6,663 108
2018 2,522 3,283 7,683 141
2019 2,360 3,194 7,390 128
2020 2,903 3,775 7,689 150
2021 2,067 3,208 6,442 82
2022 2,356 3,196 7,373 55
2023 2,806 3,280 8,554 24
2024        

 

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 三井不動産の2025年3月期決算が5月9日に発表される。同社が2024年5月発表した期末業績予想では、賃貸・分譲・マネジメント・施設営業セグメントで事業利益は過去最高となる見通しだ。記者が注目しているのは国内分譲マンションだ。今後、上場デベロッパーの期末決算が発表されるが、同社の数値が飛びぬけて高くなりそうだ。

 同社の2025年3月期3Q決算では、国内分譲マンションは売上高2,008億円、計上戸数2,150戸、1戸当たり平均価格9,340万円、完成在庫9戸(戸建ては25戸)となっている。期末では三菱地所レジデンスとのJV「三田ガーデンヒルズ」1,001戸(事業比率は非公表)が計上されることになり、同社予想では売上高3,800億円、計上戸数3,650戸となっている。戸建てを含む国内分譲事業の売上高は4,200億円(戸建て400億円)、計上戸数は4,100戸(戸建て450戸)、営業利益は960億円、営業利益率は22.9%を予定している。

 この通りだと、マンションの売上高は前期比35.4%増となり、2000年度以降で最高だった2004年の2,974億円を1,000億円近く上回ることになる。1戸当たり平均価格は、2000年以降で最高だった2023年度の8,554万円を上回り1億円を突破することになりそうだ。平均価格が1億円を突破するのは業界初となる。

 完成在庫数は3Q末の9戸を上回るか下回るかは不明だ。販売戦略上「三田」は未分譲住戸が数十戸ある模様で、そうだとすると〝完成在庫〟としてカウントされる可能性もある。いずれにしろ、予定していた計上戸数3,650戸をクリアし、平均価格が1億円を突破しても〝売れ残り〟を出さない-こんなことはかつてなかった。

 過去の数値を見てみると、リーマン・ショックの影響を受けた2009年度は計上戸4,651戸に対して完成在庫は872戸で、在庫率は18.7%に達していた。戸建てを含む住宅事業の営業利益率は3.8%だった。

 

カテゴリ: 2025年度
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