北海道最高峰は坪415万円 大和ハウス他「ONE 札幌ステーションタワー」始動
「ONE 札幌ステーションタワー」
大和ハウス工業は2月8日、参加組合員として事業参画している「札幌駅北口8・1地区市街地再開発組合」の中心をなす札幌市最大・最高層の分譲マンション「ONE 札幌ステーションタワー」(48階建て624戸)の記者発表会を行った。記者はオンラインで参加した。
物件は、地下鉄東豊線・南北線さっぽろ駅から徒歩2分、札幌市北区北8条西1丁目に位置する48階建て全624戸(一般分譲対象外住戸82戸含む)。専有面積は44.81~227.99㎡、売主は同社(事業比率35%)のほか住友不動産(同25%)、東急不動産(同25%)、NIPPO(同15%)。設計・監理は大成建設・ドーコン。施工は大成建設・伊藤組土建・スターツCAM共同企業体。着工は2020年7月。竣工予定は2023年12月。
物件の1階~3階は商業施設、2階・3階は芸術・文化施設、5階にはテレワークもできる個室ブースを備えた「オーナーズラウンジ」や「コミュニティラウンジ」「オーナーズサロン」、23階・24階の「ゲストルーム」は 6戸用意。29階には「スカイラウンジ」と「パーティールーム」を設ける。一般分譲住戸は1LDK~4LDKまで60以上のプランを用意し、高層階には天井高2.7mのプレミアム住戸を設けている。
30階以上の第1期244戸の登録申し込みを2021年11月27日~12月4日に受け付け、これまでに226戸を成約している。専有面積は49.69~227.99㎡、価格は5,160万~5億円(最多価格帯9,300万円台)、平均坪単価415万円。78戸が億ション。
契約者は、年齢は30代が約8%、40代が約22%、50代以上が約 70%、家族数は1~2人が約70%、・居住地は北海道内が約70%(うち市内が約55%)、北海道外(主に首都圏)が約30%。用途は実需が45%、セカンドハウスが40%、投資が15%。
再開発事業は、JR札幌駅北口から約200mに位置する開発面積約2.1haの大規模複合再開発プロジェクトで、マンションのほかオフィス・商業施設・多目的ホール(劇場)などからなるA棟と、ホテルからなるB棟の2棟で構成。札幌駅北口の活性化と札幌の玄関口に相応しい都市空間の形成を目指す。
発表会で再開発組合理事長・田中重明氏は、「スタートは30年以上前の1988年。その後、経済状況の変化などに左右され、紆余曲折があった。2014年に都市計画の決定があり、2019年の組合設立に至った。北口は北大のキャンパスにも近い住宅地。街づくりに貢献したい」と語った。
大和ハウス工業執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏は、「4社の力を結集したプロジェクト。市では今後再開発ラッシュが続くが、その皮切りとして、新しい札幌の顔としていいスタートを切りたい。再開発組合の30年の想いをつなげたい」と述べた。
オーナーズラウンジ
ゲストルーム デラックスツイン
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仙台と米沢市、蔵王より北には一度も行ったことがなく、札幌のマンション市場はさっぱり分からないが、坪単価はいくらになるかはとても興味があった。
横浜駅直結マンションの第1期が坪単価700万円を突破し、大阪・堂島は坪560万円、名古屋駅圏も坪400万円なので、札幌駅ともつながる最高峰ならこの単価もありかなと思う。
契約者の30%が首都圏居住者を中心とする道外というのもよく理解できる。断熱性能が気になったが、醜悪な顔を晒したくはなかったので、質問は控えた。
目の前が中大市ヶ谷キャンパス 小田急不の賃貸「リージア曙橋」竣工
「リージア曙橋」
小田急不動産は2月4日、賃貸マンション〝リージア〟シリーズ「リージア曙橋」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を行い、2月8日から募集を開始すると発表した。
物件は、都営新宿線曙橋駅から徒歩2分、新宿区片町2丁目に位置する13階建て全78戸。間取り(戸数)・専用面積・賃料は1K(65戸)・25.90~26.62㎡・11.5万~12.9万円、1LDK(11戸)・47.06㎡・22.2万~26.0万円、2LDK(2戸)・51.81㎡・31.0万~32.0万円。竣工は2022年2月。
現地は、靖国通りに面しており、道路を挟んだ対面には中央大学市ヶ谷キャンパスと、その先には防衛省庁舎があり、曙橋駅のほか丸の内線四谷三丁目、JR市ヶ谷駅が徒歩圏。
単身者やDINKSの居住者の利便性を高めるため、全戸キーレスのスマートロックを採用し、建物引き込み最大10Gbpsのインターネット環境を整えた。1階には新宿の付置義務により63台分の駐輪場を整備したほか、2階には1LDK1戸分の有料駐輪場を設置し、最上階には屋上テラスを設けている。
同社は2029年度までに「賃貸業の資産規模1,000億円」を目指しており、小田急線以外の東京都心部での賃貸事業を強化する。
屋上テラス
エントランスホール
有料駐輪場(奥に見える1畳大の個室タイプの月額賃料は6,000円とか)
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賃貸マンションのことはよく分からないが、現地の交通利便性、開放感などから判断して分譲マンションなら坪単価は最低で500万円、高値追求するなら580万円でも売れると判断した。同社も分譲事業と〝はかり〟にかけたようだが、資産として保有するほうを選択したようだ。
内覧会では、賃貸マンションの1Kなどの狭いタイプのリーシングが芳しくないことが話題に上った。コロナ影響だという。
なるほど。昨日も記事に書いたのだが、都のデータによると、令和4年1月1日現在の東京都の人口は推計で13,988,129人となり、前年より9,872人(-0.07%)減少した。23区は9,671,141人で、前年より8,508人(-0.09%)の減少となっている。物件が所在する新宿区の2月1日現在の人口は約34.1万人で、前年同月比4,570人(1.3%)も減少している。区の外国人の流失はすさまじく、2月1日現在の人口は33,611人で、令和2年2月の42,466人から実に8,855人(20.9%)も減少している。
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屋上テラスに上がった途端、同業のY記者が「バブルの塔だ」と叫んだ。屋上から南西方向にそびえたっているタワーマンションのことだった。記者もすぐ思い出した。物件は見学しており、記事にも書いたことがある。坪単価は1,000万円だったか2,000万円だったか思い出せないのだが、施工は竹中工務店だった。分譲時期は運悪くバブル崩壊のときで、売主が破綻したために、しばらく野ざらしになっていたために、マスコミが「バブルの塔」とはしゃぎたてたマンションだ。(このようなマンションは他にもたくさんあったので別に珍しいことではなかった)。
記者もそうだが、Yさんも歳をとったものだ。よくぞ30年以上も前のマンションを覚えていたものだ。二人以外はだれも何のことやらさっぱり理解できなかったのではないか。
参考までに紹介する。皆さんは豊田商事事件をご存じか。ご存じないだろう。被害総額が2,000億円とも言われた詐欺事件だった。その詐欺集団の会長がマスコミが取材している最中に刺殺されるという事件も発生した。
その後、豊田商事は破産するのだが、何と会長が刺殺された後、本人名義のこの「バブルの塔」と同じくらいの値段の四谷のマンションの所有権が移転されたのを記者は登記簿で確認した。背筋が寒くなったのを思い出す。
関係のないことを徒然なるままに書き連ねたが、本日、3度目のワクチン接種を受けました。デベロッパー広報の皆さん、現地取材をお願いいたします。現場取材ができないのは堪えます。
屋上テラスから(右端に見えるのが「バブルの塔」と呼ばれたマンション)
マンション価格10年間で5割上昇 延床、敷地狭小化も進む 東京カンテイ・国のデータ
東京カンテイは1月31日、「マンションデータ白書2021」を発表。首都圏の新築マンションの供給戸数は前年比7.2%増の41,409戸で、1戸当たり平均価格は6,304万円となり前年の5,641万円より11.8%上昇、平均専有面積は61.79㎡となり前年の55.07㎡より12.2%増加し、平均坪単価は337.3万円となり前年の338.6万円より0.4%減少した。
また、中古マンションの平均価格は3,715万円となり前年の3,487万円から6.5%上昇し、平均専有面積は58.94㎡となり前年の61.95㎡から4.9%縮小し、坪単価は208.4万円となり前年の186.1万円から12.0%上昇した。
新築マンションの価格が2ケタ上昇したのは、前年の2020年は新型コロナの影響で高額物件の供給が絞り込まれたことと、ワンルームマンションの供給比率が相対的に高まったためとしている。
平均専有面積が拡大したのは、30㎡未満の供給比率が2020年は20.6%だったのに対し、2021年は13.2%に減少したことなどが要因としている。
専有面積については、70㎡台の供給比率は過去三年間で38.7%⇒32.9%⇒32.6%と減少傾向を示し、50㎡台は7.6%⇒8.4%⇒9.0%と拡大しており、60㎡台も2020年の18.4%から2021年は23.0%へ増加しているとしている。
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同社発表の供給戸数が先に発表した不動産経済研究所の33,636戸より7,773戸多いのは、不動研は調査対象を30㎡以上としているためで、その差が出たものと思われる。
よって、この7,773戸がワンルームなど単身者用・投資用と思われるが、首都圏分譲マンションの着工戸数が年間5~6万戸台で推移(2021年は5万戸割れ)していることからして、1万戸以上がデータには反映されていない。その要因として、記者は再開発マンションなどの地権者向けや事業協力者向けに年間数千戸が充当されており、さらに分譲から賃貸への用途変更、リートなどへの一括売却も相当数に上っているからだと思う。
不動研の記事でも書いたのだが、東京カンテイのデータでもマンションの質(専有面積はその一つではあるが)について言及がないのが残念だ。東京カンテイはその他の設備仕様などについても調査しているはずで、データを公表してほしい。
マンションの質とは直接関連はないが、市場が確実に縮小していることのデータを紹介する。国土交通省の住宅着工データから、全国の市街化区域内の共同住宅(分譲住宅)の10年間の着工戸数、延べ床面積、敷地面積の推移を表とグラフに示したのがそれだ。
年次によって多少の増減はあるが、ほぼ一貫して戸数も延床面積も敷地面積も減少していることがわかる。
いずれも2012年を100とすると、着工戸数は85.3%へ減少し、延べ床面積は70.5%へ縮小、敷地面積は66.0%へ落ち込んでいる。
〝駅近〟がもてはやされる一方で、戸数の落ち込み以上に延床面積(専有面積)、敷地の狭小化が進んでいることがデータにはっきり表れている。
このデータと、不動研や東京カンテイの価格、面積の推移と比較していただきたい。価格も坪単価もこの10年間でほぼ5割上昇した。その一方で敷地の狭小化、さらに基本性能・設備仕様レベルのダウン・退行を考えると、この先が心配だ。
住宅購入検討者が中古マンションに目を向けるのがよく分かる。中古マンションも玉石混交だろうが、いまの新築より立地、質が上回る物件がはるかに多いのは間違いない。
気になる質の低下 平均価格、単価とも過去最高2021年首都圏マンション 不動研調べ(2022/1/27)
「L'and+」企画ヒット 残り僅か〝そうなの!〟 東急リバブル「ルジェンテ日暮里」
「ルジェンテ日暮里ガーデン」
東急リバブルが分譲中のマンション「ルジェンテ日暮里ガーデン」を見学した。JR日暮里駅から徒歩8分の全24戸(分譲対象20戸)で、今春の引き渡しを前に残り3戸と好調。設備仕様レベルが高く、きめの細かい商品企画が目立つ。
物件は、JR日暮里駅から徒歩8分の荒川区東日暮里5丁目の準工地域(建ぺい率80%、容積率400%)に位置する10階建て全24戸(事業協力者区画4区画含む)。専有面積は35.03~65.42㎡、現在分譲中の住戸(3戸)の価格は5,490万~6,290万円(専有面積53.88㎡)、坪単価は360万円。建物は2021年11月16日に竣工済み。引渡し予定は2022年4月中旬。設計・監理はオーエーシー設計。施工は増岡組。
販売開始は昨年の10月から。11月の竣工までに10戸強が成約しており、12月から建物内にモデルルームを設け販売している。来場者は約80件で、残りは3戸のみ。1LDKタイプは女性に人気で竣工前に完売。
現地は、敷地西側の幅員12mと北側の幅員6メートルに面した角地。道路を挟んだ西側には高い建物がなく、用途地域は準工だが嫌悪施設はほとんどない。住戸は2階からで5階までと9・10階は1フロア3戸、6~9階は2戸の構成。住戸プランは1LDK(35.03㎡)が6戸、その他は53.88~65.42㎡のコンパクト・小家族向けファミリータイプ。角住戸比率は約70%。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、食洗機、フィオレストーンキッチン天板、床暖房、Low-Eガラス(一部除く)、下地補強処理壁(一部除く)、浴室タオル掛けなど。
販売担当の鈴木瞳維(Toi)氏は「これまでは竣工売りが多かったのですが、竣工前販売にチャレンジするためVRなどに力を入れました。収納に工夫を凝らした商品力と立地条件が評価されています。『ルジェンテ』は進化しています」と語っている。
同社女性広報によると、「ルジェンテ」シリーズは2005年から展開してから今回が33棟目、「長期間在庫を抱える物件はない」そうだ(口調は米倉涼子さんの「私、失敗しないの」とそっくりだったのにドキリとした)。坪単価460万円の「ルジェンテ文京湯島」(73戸)も竣工前に完売したという。そうなの!
【収納棚+キャットウォーク】
【テレビボード+装飾収納棚】
アイロンスペース(WIC内)
マルチバー(SIC内)
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同社の「ルジェンテ」を見学するのは2017年の「本郷三丁目」以来久々だ。確かに進化している。
現地は昨年、他社物件を取材したときに確認している。表通りの日暮里中央通りから一歩入っており、準工ではあるが嫌悪施設はなく、何よりも前面道路が広く交通量も少ないので、値段によっては早期完売すると予想した。坪単価はズバリ的中。駅近物件では坪単価400万円の事例もあり、高値追求もありうると考えたが、とてもリーズナブルな値付けだと思う。
強調したいのは基本性能・設備仕様レベルの高さだ。この単価水準でこれほどの仕様レベルを維持しているデベロッパーは3割もないはずだ(あったら手を挙げていただきたい)。
また、同社は昨年12月にプレス・リリースしたように、きめ細かな商品企画も好調な売れ行きの要因の一つだろう。
リリースには、2020年4月に不動産開発と新築販売部門の連携強化のため組織を統一し、製販一体による商品開発及び販売力強化を図り、分譲マンション「ルジェンテ」シリーズに、長年の新築販売の経験で培ったお客様目線を商品計画に反映させる企画として「L'and+」(エルアンドプラス)というオリジナル仕様を導入したとある。
「L'and+」の一つが壁面の下地補強処理だ。10キロくらいの重さに耐えられそうで、キャットウォークや飾り棚などにできるようにしている。寝室の収納にはアイロン掛けなどの作業スペースを確保。シューズインクロークもこの種面積にしては広めだ。
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同社のTVCMについて。記者は、東急不動産の〝環境先進を、住まいから。〟という正統的なCMもいいが、コミカルなCMが好きだ。人を食った〝オペンホウセ〟がそうだし、〝そうなの!〟を連呼する同社のCMが面白い。最近では〝1円玉を作るのに3円かかる〟というのにも意表を突かれた。〝そうなの? 〟と聞き返したくなるCMなど他にない。
〝リバブった〟も面白い。同社の仲介部門を通じで売買する人の94%の人がまた利用したいと答えたというのを分かりやすく伝えたものだ。手あかまみれの〝顧客満足度ナンバーワン〟より〝そうなの!〟と子どもに言わせるのがいい。
鈴木氏の名前がまたいい。「Toi」は中国語では「对」。「そうなの」という意味。(「ダメ」は「不对(プトイ)」)。
必見!抱腹絶倒!手を握ってもらいたくなる 東急リバブルの車内吊り広告(2019/12/26)
東急リバブル「ルジェンテ本郷三丁目」 坪単価は400万円強 早期完売か(2017/5/30)
令和3年の首都圏マンション着工5万戸割る 平成21年以来の低水準 住宅着工
国土交通省は1月31日、令和3年12月の新設住宅着工をまとめ発表。総戸数は前年同月比4.2%増の68,393戸で、10か月連続の増加となった。利用関係別の内訳は、持家は22,731戸(前年同月比0.4%減、14か月ぶりの減少)、貸家は25,222戸(同3.3%増、10か月連続の増加)、分譲住宅は19,927戸(同13.1%増、3か月連続の増加)。分譲住宅のうちマンションは7,091戸(同15.3%増、2か月連続の増加)、一戸建住宅は12,723戸(同12.4%増、8か月連続の増加)。
令和3年(1月~12月)では、総戸数は856,484戸(前年比5.0%増)で5年ぶりに前年比増加に転じた。利用関係別では持家が70,666戸(同6.3%増)、貸家が285,575戸(同9.4%増)、分譲住宅が243,944戸(同1.5%増)となり、いずれも増加した。分譲住宅の内訳はマンションが101,292(同6.1%減)、一戸建てが141,094戸(同7.9%増)。マンションと戸建ての比率はマンション41.5%:戸建て58.5%となり、マンション比率は平成21年に戸建てに逆転されてからもっとも低い水準となった。
首都圏マンションは49,962戸(前年比7.3%減)となり、平成21年の40,041戸以来12年ぶりに4万戸台に落ち込んだ。都県別では東京都が31,221戸(同5.1%減)、神奈川県11,181戸(同15.2%増)、埼玉県が3,975戸(同33.7%減)、千葉県が3,585戸(同32.6%減)。
左利きの数ほどいるLGBTのニーズ満たす コスモスイニシアのリノベ「中野南台」
「センチュリー中野南台」モデルルーム
コスモスイニシアが分譲開始したDINKSやLGBT世帯向けリノベーションマンション左利きの数ほどいるLGBTのニーズ満たす コスモスイニシアのリノベマンション「センチュリー中野南台」を見学した。百聞は一見に如かず。SDGsやユニバーサルデザインを考えるうえでもとても参考になった。
物件はLGBT当事者が中心となって運営を行っている不動産仲介会社「IRIS」(アイリス)と共同で開発したもので、東京メトロ丸の内線中野新橋駅から徒歩10分、中野区南台1丁目に位置する2001年5月竣工の14階建て「センチュリー中野南台」(全57戸)の2LDKで、専有面積64.55㎡、価格は6,180万円。
昨年末から予約制で住戸を公開しており、毎週コンスタントに集客があり、これまで案内したのは16件。見学者の2~3割が同性カップル、他は家族、プレファミリーがそれぞれ同率。同社は来場者の声を聞きながら、LGBTでも住宅ローンが組める「パートナーシップ証明書」を発行済みの渋谷区、中野区などを中心に導入を検討していく。
同社流通事業部流通二部一課・末吉渉氏は「従来、LGBTカップルは収入合算やペアローンで住宅ローンが組めなかったのですが、自治体が『パートナーシップ証明書』を発行するようになってから借り入れ可能な金融機関が出てきました。この『証明書』はLGBTカップルが2人でローンを組んで購入するという選択肢を付与したという点で意義深い。LGBTカップルの世帯年収は1,000万円を超え、個性的な飲食店やスポーツジム、花屋さんが近くにあることを重視されることも分かりました。SDGsが当たり前になったように、数年後にはLGBTカップル対応のプランが当たり前の時代がやってくる」
また、同課・阿久澤恵里氏は「LBGTの方は左利きの方と同じくらいいらっしゃる」との興味深い話をした。(「私の彼は左利き」という歌を思い出した)
「センチュリー中野南台」外観
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百聞は一見に如かず。プレス・リリースではよく分からなかった部分がすんなりと理解できた。〝なるほど〟と合点がいくものがたくさんあった。
物件はフルリノベーションしたもので、原形をとどめるのは2400ミリのリビング天井高、1800ミリのサッシ高くらいで、梁型の存在が気にならないようダウンライトを設けるなどの工夫を行っている。
玄関に入ってほとんど瞬時にLGBT仕様の企画意図を理解した。玄関サイドに設置されている「ハーフ土間収納」だ。扉はソフトクローズ機能付きの引き戸で、大きさは1坪くらいか。ゴルフバッグが2つ入るスペースも確保されていた。ゴルフバッグが2つ入るクローゼットが用意されている一般的な20坪程度のマンションモデルルームなど見たことがない。カップルがそれぞれの趣味を共有できるようにという配慮が伝わってきた。
居室は5.5畳大と4.8畳大の2つ。これは高齢者世帯のニーズも満たすものだが、洗面所は普通のモデルルームと全然違っていた。高級マンション並みの2ボウルで鏡も2つ。一つは調光機能付きで朝の顔、昼の顔、夜の顔に使い分けることができ、音楽が流せるスピーカー付き。床にはヘルスメーター。共働き世帯が多く、出勤時間が同じだとバッティングすることを解消するためだという。
浴室は16×16サイズで、扉にはタオル掛けが2つついており、調光機能付き。浴槽は自動洗浄機能付き。これも家事労働の負担を軽減するためだ。
L字型キッチンにも工夫があった。従前は6畳の和室だったのを模様替えしたもので、システムキッチンはL字型で、二人で調理したり友人を呼んで語らいをしたりできるよう、カウンタートップは敢えてフラットにし、幅は90cm確保している。シンクはユーティリティ。
このプランはDINKSや高齢者世帯にも通用し、SDGsやユニバーサルデザインの考えとも合致する。
「ハーフ土間収納」
洗面室
ヘルスメーター
浴室(タオル掛けも2か所)
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記者は、スーツの襟にSDGsバッジをつけるようになって2年以上経過する。「誰一人残さない」持続可能な社会を2030年までに実現するという趣旨に賛同するからだ。
しかし、SDGsが掲げる17のゴール目標を全て実践しているかと問われると自信はない。思うことと実践することは異なるからで、実践しているのは17項目のうち半分くらいではないか。
LGBTも同様だ。LGBTに対する差別に反対するが、住宅購入に際して共有名義でローンが借りられないとか、住宅の設備にも改善すべきことがあることなど考えたことなど全くない。
考えてみれば、様々な法律の壁や世間の冷たい風にさらされながら、自己の人間としての尊厳、自由を希求し実行しているのはLGBTだ。花屋を求めるのも「美しい生き方」を貫き通すためだと理解した。これは名もない野草をこよなく愛す記者と通じるものがある。
LGBT対応をテーマにした分譲マンションを企画したのはおそらく同社が初めてだろう。これは、いつも先進的な取り組みをする同社のDNAだ。拍手喝さいを送りたい。
IRISによると、「パートナーシップ証明書」を発行しているのは東京都では12、全国では130の自治体だという。また、LGBTの全人口に占める割合は1.6~8.9%と推定されるという。推定値の幅が大きいのは潜在的な人数の把握が難しいためのようだ。
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「パートナーシップ証明書」を最初に導入したのは渋谷区だ。同区は平成27年11月、「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」に基づき、男女の人権の尊重とともに、「性的少数者の人権を尊重する社会」の形成を推進することを目的に同証明書を発行した。
同証明書は、戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係を「パートナーシップ」と定義し、一定の条件を満たした場合、法律上の男女の婚姻関係と実質的に異ならないパートナー関係であることを証明するものだ。
条件として付されているのは、①区内に居住し、住民登録があること②20歳以上であること③配偶者がいないこと及び相手方当事者以外のパートナーがいないこと④近親者でないこととなっている。
同証明書の交付を受けることで、ペアローン、連帯債務型、連帯保証型(収入合算)の住宅ローンの借り入れも可能になった。このほか、公営住宅などへ家族として入居可能で、生命保険の受取人として指定でき、クレジットカードの作成、社会福祉施設の利用が可能となった。
DINKSやLGBTs向けのリノベマンション開発・分譲 コスモスイニシア&IRIS(2022/1/16)
気になる質の低下 平均価格、単価とも過去最高 2021年首都圏マンション 不動研調べ
不動産経済研究所は1月25日、2021年の首都圏マンション市場動向をまとめ発表。新規発売戸数は前年比23.5%増の3万3,636戸となった。エリア別では東京23区が1万3,290戸(前年比21.8%増)、都下が2,921戸(同9.9%減)、神奈川県が8,609戸(同54.1%増)、埼玉県が4,451戸(同32.2%増)、千葉県が4,365戸(同5.9%増)。
契約率は、毎月の初月契約率は前年の66.0%を7.3ポイント上回る73.3%となり、2015年以来6年ぶりの70%台となった。エリア別では23区が72.5%(前年比6.3ポイント増)、都下が74.8%(同25.2ポイント増)、神奈川県が71.8%(同1.8ポイント増)、埼玉県が70.6%(同9.4ポイント増)、千葉県が80.3%(同3.4ポイント増)。累積契約率は前年の78.5%から9.6ポイント増の88.1%となった。
1戸当たりの平均価格は前年比2.9%上昇の6,260万円で、1㎡当たり単価は前年比1.2%上昇の93.6万円(坪308.9万円)となり、平均価格は3年連続、1㎡単価は9年連続の上昇。過去最高だった1990年の平均価格6,123万円、1㎡単価93.4万円(坪308.2万円)より平均価格は177万円(2.2%上昇)、1㎡単価は1.1万円(0.2%上昇)それぞれ上回る最高値となった。
エリア別の平均価格・坪単価は、23区が8,293万円(前年比7.5%上昇)・423.1万円(同2.5%上昇)、都下が5,061万円(同7.3%下落)・244.5万円(同8.0%下落)、神奈川県が5,270万円(同3.1%下落)・257.4万円(同4.6%下落)、埼玉県が4,801万円(同5.2%上昇)・233.3万円(同6.0%上昇)、千葉県が4,314万円(同1.4%下落)・203.3万円(同0.8%上昇)。
億ションは2,760戸で、前年の1,818戸からほぼ倍増した。(過去最多は1990年の3,079戸)。
12月末の販売在庫は6,848戸で、前年12月末の8,905戸より2,057戸減少している。
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コロナ禍であるにも関わらず供給量が増え、売れ行きも好調に推移し、平均価格、分譲単価とも過去最高となったのは、ひとえに住宅ローン金利が低水準にあり、旺盛な住宅取得意欲(賃貸住宅の賃料が高く、質が劣ることの裏返し)、価格の先高観が背景にありそうだ。バブル崩壊までは市場としてなかった単身者向けが一定の比率を占めるようになったのも大きな要因だと思う。アフターコロナの働き方改革を見据えた住宅取得意向の変化も市場を後押ししているのではないか。
ただ、同じような調査を行っている調査会社を含めて、肝心な質についても調査して報告してほしい。
今回の調査結果からも分かるように、平均価格を単価で割った専有面積は23区では19.6坪で、他のエリアも20坪前後だ。価格、単価は上昇の一途で、肝心の居住面積はどんどん縮小している。さらにまた、天井高や各種の設備仕様レベルも退行する一方だ。
基本性能・設備仕様レベルダウンを考慮すると、実質的な価格上昇は前年比でも10%くらい上昇しているではないかというのが記者の実感だ。
販売在庫は、供給量からして高水準にあるような気がする。12月末の販売在庫6,848戸のうち大半は完成在庫と思われる2017~2020年分の残戸数は2,829戸になっており、販売在庫に占める割合は41.3%に上っている。
活況を呈し、しかも大手デベロッパーの市場占有率が高まっている中で、根雪のように積みあがっていくこれらの完成在庫はどのような物件なのか。ものすごく興味がある。
さらにもう一つ。同研究所の調査は専有面積30㎡以下や投資向け、一棟売り、地権者住戸などは調査対象外で、記者はこれらだけで年間1.5万戸はあるとみている。
それらを足してもなお、毎年5~6万戸台で推移している首都圏マンション着工戸数とは1万戸くらいの〝空白〟がある。この毎年消える1万戸の行方が知りたい。不動産リートへの売却なのだろうか…。
相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1期129戸完売 坪717万円
「THE YOKOHAMA FRONT」(ザ ヨコハマ フロント)
相鉄不動産(事業比率50%)と東急(同)は1月26日、日本で初となる国家戦略住宅整備事業「横浜駅きた西口鶴屋地区第一種市街地再開発事業」(施設名称 THE YOKOHAMA FRONT/ザ ヨコハマ フロント)内のタワーマンション「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」(ザ ヨコハマ フロント タワー)のモデルルームを横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ内に2月下旬にオープンすると発表した。同日、メディア向け記者発表会・モデルルーム内覧会を行った。
すでに高層階の住戸を中心とする第1期129戸を供給済みで、坪単価は717万円の高額ながら、ほとんど申し込み済み。記者が懸念した〝嫌悪施設〟が隣接することに対して、関係者は「減価要因にはまったくなっていない」と断言した。
物件は、JR他横浜駅きた西口から徒歩3分、横浜市神奈川区鶴屋町1丁目の商業地域(建ぺい率75%、容積率850%)の敷地面積約6,687㎡に位置する43階建て全459戸(一般販売対象外住戸35戸含む)。第1期129戸の専有面積は55.48~161.62㎡、価格は1億630万~6億6,800万円。坪単価は717万円。施工は大林組。竣工予定は2024年3月。販売代理は東急リバブル、三井不動産レジデンシャル、東急ラフィア。ファサードデザインは光井純&アソシエーツ建築設計事務所。
現地は、市のまちづくりガイドラインによって、地域の就業者や居住者の利便性を高め。賑わい機能を誘導するとともに多世代の交流を支援する機能や安全・安心をサポートする機能の集積を図るべき地域として指定されているエリアの一角。
「横浜駅きた西口鶴屋地区第一種市街地再開発事業」は施行面積約0.8haで、2010年5月、再開発準備組合が設立され、2016年9月に都市計画決定。組合員は11名。事業コンサルタントとして松田平田設計、UG都市建築、東急設計コンサルタントが参画。2016年9月、全国第1号の国家戦略住宅整備事業に認定されている。
建物は、2階部分に既設の歩行者デッキで駅と結ばれており、1階から4階は複合施設(4階にホテルロビー)、5階は住宅共用・ラウンジ(居住者専用ガーデン)、6階から10階がホテル、11階から12階がサービスアパートメント、13階以上が住宅ゾーン。
共用施設としては、39階の「ベイビューラウンジ」のほか、5階にはラウンジ、ガーデン、パーティラウンジ、キッズスペース、ランドリー、ライブラリー、ワークプレイス、シガールーム、フィットネスルームなどを設置する。
居住者サービスとして、横浜ベイシェラトンのレストランシェフの派遣、デリバリー、横浜高島屋の外商サービス、ジョイナスの提携サービスを用意している。
専有部の主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井(スラブ厚260~330ミリ)、リビング天井高2700~3500ミリ、シーザーストーンキッチン天板、ディスポーザー、食洗機、グローエ水栓、食器棚、ミストサウナ、Low-Eガラス、良水工房など。
記者発表会に臨んだ再開発組合理事長・中山久招氏は「準備組合を設立してから12年の歳月が流れた。事業を通じて地域の発展と駅周辺の賑わいの創出に貢献したい」と述べた。
分譲事業について、相鉄不動産分譲事業部分譲事業センター課長・菅沼圭太氏は「当社と東急さん2社の集大成のプロジェクト。グローバルな視点でホテルライクな様々なサービスを提供する。第1期の購入者からは立地の希少性、複合開発の資産性・先進性、2社の安全・信頼のブランドが高い評価を頂いている」と話した。
第1期の申込者の属性は、居住地は横浜が6割、東京都が3割、その他が1割。購入動機は実需が6割、2割が買い増し・セカンド利用、投資が2割。
眺望
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記者はつい最近まで、このようなプロジェクトがあることを全く知らなかった。横浜出身の同業の記者の方から見学会が行わることを聞いたとき、とっさに昨年末に見学した東京建物「Brillia Tower 堂島」と住友不動産「梅田ガーデンレジデンス」が思い出され、坪単価は700万円でも不思議でないと予想した。
ところが、その記者の方から、「鶴屋町」は地元の人なら知らない人はいない歓楽街で、物件の目の前には「ソープランド」=「嫌悪施設」があると知らされた。さらにまた、別の取材でやはり横浜出身のマンション販売担当者にそのことを話したら、その方も眉をしかめた。
その時点で、予想単価を大幅に下方修正した。「歌舞伎町」「黄金町」と同じだったら坪単価600万円でも高いと。
この嫌悪施設について少し補足する。嫌悪施設の定義はなく、不動産の広告規制を行っている不動産取引公正協議会も嫌悪施設の有無について広告に表示することを義務付けていないし、宅建業法の重要事項説明項目には嫌悪施設の項目はない。ただ、購入者に嫌悪施設があることを知らせなかったケースで、民事裁判で訴えられた不動産会社が敗訴した判例もあり、行政も不動産会社には嫌悪施設の有無を告知するよう指導しているようだ。(嫌悪施設について説明している不動産流通促進センターの記事を添付する)
記者はこのことが頭にあったので、はぐらかされることを承知の上で菅沼氏にストレートにその対応と、仮に嫌悪施設が減価要因になるとすればいくらくらいかと質問した。
菅沼氏は「重説に盛り込んでいるが、嫌悪施設が減価要因には全くなっていない」と断言した。
疑り深い記者は現地を確認した。確かに「ソープランド〇〇」がマンションの敷地の裏側(西側)に存在した。とてもクラシックな歴史を感じさせる3階建てで、派手な呼び込み広告看板などはなく、老いぼれ記者の生き写しそのものの侘しい佇まいに拍子抜けした。小さな窓から若い女性が手を振る気配はまるでなく、手摺には全て赤さびが浮き出ていた。「男性スタッフ急募」の張り紙が張ってあった。
これで菅沼氏の言葉に嘘がないことを確信した。さらに言えば、「心理的瑕疵」のガイドラインもできたことだ。「嫌悪施設」についても国土交通省ははっきりした見解を示すべきだ。施設側から見たらマンションこそが「嫌悪施設」になることもありうる。〝なんでもあり〟の用途指定をしておきながら、現実はそうなっていない。
しかし、問題は簡単ではない。記者発表の後で、どこかの女性記者に「嫌悪施設って何ですか」と聞かれた。仕方なく「ソープランドです」と答えた。また別の女性記者はこう話した。「私にも子どもがいますから…でも、買えるなら買いたい」と。
ベイビューラウンジ
ライブラリーサロン
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嫌悪施設について長々と書いたが、この問題が氷解した。坪単価予想は700万円に再び上方修正する。650万円の「堂島」、600万円超の「梅田」との単純比較はできないにしろ、「横浜」と「大阪」を比較したらやはり「横浜」に軍配を記者は挙げる(「大阪」では〝負けたらいかんぞ、東京に〟と発破をかけたが)。2期以降の価格は未定で、常識的には600万円台の半ばだろうが、坪700万円台に乗っても記者は驚かない。
根拠を示せと言われても困るが、物件の基本性能・設備仕様レベルは極めて高い。一つひとつ紹介する余裕はないが、鈴木ふじゑ氏と門井鮎美氏がモデルルームのコーディネートを担当している161㎡の「PREMIUM」は間違いなく富裕層の心を捉えるはずだ。
もう一つ、91㎡の「SUPERIOR」を担当しているJun SAKAGUCHI氏と、55㎡の「SUPERIOR」を担当している三井デザインテックの辻瑠衣氏のデザインがよく、設備仕様レベルは都内の坪単価500万円クラスよりはるかに高いと断言できる。
菅沼氏は「物件エントリーは1日100組のペース」と語った。分譲開始まで数千件に達するのではないか。
モデルルーム会場になっている「横浜ベイシェラトン」の宴会場の広さは500~600坪とか。この前オープンした住友不動産「汐留」は710坪なので広さは負けるが、グレードは負けない。ホテルに聞いたら、850㎡の宴会場は会議用で2時間100万円だそうだ。
Four Seasonsとの複合 東建「堂島」第1期1・2次185戸 平均4.6倍で完売(2021/12/17)
〝どう見ても美しい〟大阪の市場を変える 東京建物「堂島」は坪単価650万円(2021/11/25)
「心理的瑕疵」「嫌悪施設」とは何か 釈然としない国交省「死の告知ガイドライン」(2021/10/10)
基本性能・設備仕様レベル高い 驚嘆のIoT設備 伊藤忠都市開発「大泉学園」
「クレヴィア大泉学園」
伊藤忠都市開発が3月に分譲する予定の「クレヴィア大泉学園」のモデルルームを見学した。常設の「ギャラリークレヴィア新宿」内に1月8日にオープンしたもので、1月16日現在、913件の反響を呼んでいる。坪単価は300~350万円の予定でかなりレンジ幅はあるが、基本性能・設備仕様レベルは高い。
物件は、西武池袋線大泉学園駅から徒歩7分、練馬区東大泉1丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て全68戸。専有面積は45.56~102.12㎡、価格は未定だが、坪単価は300~350万円になる模様。竣工予定は2023年3月下旬。売主は同社のほか日鉄興和不動産。設計・監理は三輪設計。施工は谷津建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、敷地西側と東側の2方に接道。建物は西向きが中心の34戸のA棟、南向き20戸のB棟、東向き14戸の3棟構成。主な基本性能・設備仕様は二重床・二重天井、リビング天井高2400~2450ミリ、扁平梁、ディスポーザー、食洗機、フィオレストーンキッチン天板、グローエ水栓、ユーティリティシンク、床暖房、ミストサウナ、Low-Eガラス、サッシ高2150ミリなど。
1階共用部にワークスペースを備えたコミュニティラウンジや中庭を設けたほか、外出先から空調・家電などをスマートフォンで操作できるIoT設備を全戸に導入しているのが特徴。
コミュニティラウンジ
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まずは、オミクロンが猛威をふるっているにもかかわらず見学をセットしていただいた同社広報担当と、物件の説明をしていただいた同社都市住宅本部都市事業第一部(兼)リノベーションチーム・瀬谷匠氏、伊藤忠ハウジング販売営業第2部販売営業第6課長補佐・西水祐雄氏にお礼申し上げる。
この物件についてはプレス・リリースが発表されており、そのままコピペすることもできたのだが、それでは記者の役割は果たせない。言うまでもないことだが、企業が伝えたいことと記者が知りたいこと、読者に伝えたいことは微妙に異なるからだ。記者の仕事で大事なのは住宅購入希望者の視点からものを見る目だ。これまで何度も書いてきた。この視点がいまの業界紙記者に欠けている。マンションの質が落ちているのはメディアの責任でもある。
さて、見学して小生がとても新鮮に映ったのはIoT設備だ。スマホ一つで外出先からふろの湯を沸かしたりエアコンなどを作動させたりすることは三菱地所レジデンスの取材などで知っているが、室内の映像を確認するカメラがあることは知らなかった。同社はそれを購入者にプレゼントするそうだ。
驚いたのは、「ダメ、待て、お座り」などと呼び掛けることができることだ。ただ、これは夫婦間では具合が悪い。かみさんが留守のときこっそり酒を飲もうと冷蔵庫を開けたとたん、そんな叱声を浴びせかけられたらたまったものではない。奥さんだって夫のいない間に肌もあらわに化粧に夢中になっている姿など覗かれたくないはずだ。間違いなく不仲の原因になる。しかし、ペットや介護にはこれは使える。同社もそのようなシーンを想定している。
防犯カメラもセットすることができる。暴漢が闖入しようものなら警報ブザーがけたたましく鳴り、一発で痴漢を撃退できる銃や火災を予知する機器も開発されるのではないか。
西水氏の説明も堂に入っていた。キッチンパネルは樹脂とホーローが選べることのほかに、スパイスラックはコンロの左端とシンクとの間に2か所ついていることの便利さについて身振り手振りで説明した。びっくりしたので聞いてみたら、西水氏(45)は冷蔵庫の残り物などを使って料理するのが好きで、トンポーローが十八番とか。
上段で書いた設備機器は、坪300~350万円の物件では間違いなくトップレベルだろう。沿線には人気になっている三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス石神井公園テラス」86戸(坪単価360万円)などもあるが、互角に戦えるはずだ。
二人の説明を聞きながら、同社のものづくりのDNAは全然退行していないどころか、どんどん進化していることを確認できた。瀬谷氏も建築費が上昇しているからといって、必要な設備仕様を落とすようなことはしないと話した。西水氏も「タオル掛けがないマンションなど想像がつかない」と語った。同じ沿線で分譲して人気になった「中村橋」と「練馬」の記事も添付する。一緒に読んでいただきたい。
室内の様子を写すカメラ(左)とスマホに映し出される室内の様子
室内の温度なども自動でセットできる
2か所にあるスパイスラック(この便利さは調理をしないと分からない)
スマホ一つで住設機器・家電など操作・ 管理 三菱地所 スマートホームサービス開始(2021/11/4)
1階は花屋 坪270万円は安い 伊藤忠都市開発「クレヴィア練馬中村橋」(2015/1/25)
「Torch Tower」の賃貸マンションの家賃は124万円(坪5.8万円)でどうか 記者予想
「Torch Tower」完成予想図
三菱地所は1月13日、東京駅日本橋口前の日本最高層の「Torch Tower」の地上高さ約300mのフロアに約50戸(70㎡台~400㎡台)の賃貸マンションを導入すると発表した。
大手町・丸の内・有楽町エリアでは初めての賃貸レジデンスとなり、東京駅前かつ東京駅・大手町駅直結という高い利便性、日本最高層クラスの圧倒的 な眺望、高層部に導入するスーパーラグジュアリーホテルとのサービス連携、足元の約2.0haの屋外空間や複合機能集積により、TOKYO TORCHでしか味わえないエクスクルーシブな超都心住機能を提供するとしている。
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読者の皆さんもそうだろう。一番関心があるのは賃料がいったいいくらになるかだ。記者にもプレス・リリースが届いたが、ただコピペするだけでは意味がないとそのままにしていたが、思い切って賃料を予想することにした。記事化に当たっては、同社広報に「ヒントになる情報提供を」とお願いしたのだが、「賃料については全くの未定」としか返ってこなかった。
なので、以下の記事は同社とは全く関係なく、競馬予想と同じくらいの価値もない記事のつもりで読んでいただきたい。予想が外れたからといって責任を取れと言われても困るし、〝あのバカが〟と笑って済ませていただきたい(いま小生はドストエフスキーの「白痴」=「馬鹿」に挑戦している)。
なにしろ竣工予定は5年も先の2027年だし、大・丸・有エリアで初の賃貸だ。予想は至難を極める。ただ、これが分譲マンションだったら、そこそこ的中させる自信はある。それなりの実績もある。
「HARUMI FLAG」だ。7年前、都がオリンピック選手村となった用地を事業者に売却した時点で坪単価は250万円と大胆予想した。その後、「週刊文春」が2019年、「日本不動産研究所の『調査報告書』をもとに不動産鑑定士らの手を借りて分析した結果、当初分譲1㎡当たり単価は74万円(坪単価244万円)であった」と報じた。真偽のほどはともかく坪250万円と差額はわずか6万円だ。
三菱地所レジデンスが2013年に分譲したフラッグ・シップマンション「ザ・パークハウス グラン千鳥ヶ淵」の坪単価800万円もズバリ的中させているし、「六本木ヒルズ」の地権者住戸が分譲されれば坪1,000万円と予想したが、ほぼその通りになったはずだ。
マンションだけではない。東京ミッドタウンの用地(元防衛庁施設跡地)を2001年に三井不動産など6社が1,850億円で落札したが、記者はその半年前に「落札価格は1,800億円」と予測記事を書いた。
さて、では「Torch Tower」に分譲マンションを導入したらいくらになるか。地価公示で一番高いのは中央区銀座4丁目「鳩居堂」の坪1億7,688万円(2021年)だが、記者は利便性と居住性を兼ね備えた日本一のマンション適地は「東京駅」だと思っている。JRは容積を周辺ビルに売却したが、駅上にマンションを建てたら坪単価は最低で3,000万円、ひょっとしたら坪5,000万円でも売れるのではないかと考えている。駅前の「丸ビル」も同じ評価だ。(東京駅周辺の居住環境としての最大の難点は図書館がないこと。どこかの再開発ビルが誘致すべき)
「東京駅」より「Torch Tower」はやや割引だが、足元の約2.0haの屋外空間は価値がある。よって坪単価は価格時点で2,000万円と評価する。(もっと高いか)
賃貸の利回りを3.5%とすると、2,000万円×3.5%=70万円/坪が年間家賃。月額で坪5.8万円だ。70㎡換算で約124万円となる。最大400㎡だと月額家賃は約703万円。もちろん、社会経済状況次第では坪6万円もありうるし、「Torch」=トイチに合わせた110万円(70㎡)もありうると見た。
この賃料水準は〝日本一〟のはずで、かなりいい線ではないかと思う。申し込みが殺到するのではないか。周辺には名だたるラグジュアリーホテルがたくさんあり、サービスアパートメントもあるが、居住の自由度、たとえばペット飼育などホテルでは禁止されていることも可能なはずで、それらと十分勝負になる。
参考となる賃貸マンションは皆無ではない。三井不動産の全54室の「パークアクシスプレミア日本橋室町」だ。賃料は40万~160万円(54~140㎡)=2014年発表当時。天井高は最大3m、家具付きモデルやナラ材の突板を用いたナグリ仕上げの空間提案もあった。賃料単価は「ミッドタウン六本木」と同じくらいだった。
「パークアクシスプレミア日本橋室町」が入居する「室町古河三井ビル」
三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」(2014/1/29)