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「じゅうたく小町部会」一周年記念式典

 5月29日行われた全国低層住宅労務安全協議会(低住協)「じゅうたく小町部会」一周年記念式典で、式典の進行役を務めた大和ハウス工業人事部ダイバーシティ推進室次長・鳥生由起江氏は「いろんなことを考えるキックオフの場にしたい」と式典を締めた。

 その通りだと思った。日建連「けんせつ小町」が掲げる「もっと女性が活躍できる建設業を目指して」の取り組みも、低住協の「じゅうたく小町」が〝小町クローバー〟に込めた〝住まいを通じてお客様と幸せと安心を提供する〟などの4つの想いは実にわかりいい。

 しかし、式典は掛け声ばかりで一向に進まない〝女性活躍〟の実態を浮き彫りにした。2020年までに女性の管理職比率を30%に引き上げようという政府の目標「2030」なんか絶望的ではないか。以下、式典で拾った声を紹介する。男性にとって耳が痛い、ドキリとするものばかりだ。

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伊藤氏

 ・国土交通省大臣官房審議官・伊藤明子氏 これからはモノ・ハコから生活・暮らしの産業にならなければならないが、大事なのはコミュニケーション能力、創造力。これは女性のほうが(男性より)能力が高い

 ・鹿島建設・須田久美子氏 〝大きなものを作りたい〟というのが私の夢で、大学3年のとき土木はわたしの天職だと思った。周囲の応援があり、阪神淡路のときは24時間仕事に没頭することができた。わたしのこれからの仕事は、100年後に土木が職業人気ランク1位になる100年プランを作成すること

 ・(入社12年目、子供なし) 最初の3年間は6時に起きて7時半には現場。仕事を終えて家に着くのは9時前。食事は主人のほうが上手

 ・(入社6年目、二人の子どもとイクメン) 育休のとき一級建築士の資格を取得した。2人目の子どもが生まれたとき主人が育休を半年取ってくれたおかげで早く仕事に復帰できた。主人の協力があるとものすごくラク。本来は男も(家事労働負担は)は同じ(この方は「妊娠発覚」という言葉を用いた。われわれの時代は妊娠が判明すると赤飯をたいて祝ったりした。意図はないのだろうが「発覚」という言葉は現在の女性が置かれている立場を如実に物語っている。戦前の不況期と同じだ。それとも今が戦争の危機か)

 ・(女性が現場に出ることで変わったことについて各氏) みんなで早く帰ることができた 思ったことがすぐ相談できる 職場がきれいになる 残業が減った 快適トイレは男性も使いたいという声が上がった

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須田氏の特別講演

◇       ◆     ◇

 3回にわたって「じゅうたく小町」の記事を書いた。熊谷組の黒嶋氏は「みんなで週休2日を実現しよう」と呼び掛けた。鹿島の須田氏は建設土木の仕事が職業人気№1になる100年後プランを考えているという。その一方で、ドアに背中を付けながら用足しをしなければならない建設現場のトイレがあることも分かった。

 高邁な理想を掲げる女性がいる一方で、劣悪な労働環境で働いている女性がたくさんいる-このギャップをどう考えるか。残念ながら建設現場の女性の声を経営トップに伝え、実践させるのは極めて困難だろうと思う。この1カ月間、4~5人の経営トップに働き改革ついて聞いたが、全くと言っていいほど危機感など抱いていない。縮小するパイの奪い合いしか念頭にないようだ。

 「じゅうたく小町」の皆さん、本気で働き方改革を実行するのなら覚悟を決めたほうがいい。参考になる小説を一つ。最近読み始めた帚木蓬生「水神」(新潮文庫)だ。農民(皆さん)がお上(経営トップ)の顔を立てながら難事を成し遂げる物語だ。

 それにしても「全国低層住宅労務安全協議会」(低住協)などといういかめしい名称をよくも使い続けているものだ。記者は全労協(失礼。労働組合と思えばこれはこれで立派)かと思った。「低住協」の「低」もまた低級を連想させる。「じゅうたく小町」にふさわしい名称に変更すべきだ。「全国」組織にすることも急ぐべきだ。

建設現場の週休2日制導入 待ったなし 「じゅうたく小町」参加者に聞く(2017/5/31)

建設現場の仮設トイレ利用しない」 「じゅうたく小町」会員の声をどう聞くか(2017/5/30)

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)

 

カテゴリ: 2017年度

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「じゅうたく小町部会」一周年記念式典(すみだ産業会館で)

 記者のいまの最大の関心事はマンション価格が下がるかどうか、そのカギを握る建設費はこの先どうなるかだ。5月29日行われた全国低層住宅労務安全協議会(低住協)「じゅうたく小町部会」一周年記念式典の取材の第一のテーマも、建設現場の労働時間短縮、週休2日制の導入は可能か否かだった。

 というのも、「こだわり記事」でも書いたが、日建連・中村満義会長は「建設業の長時間労働の是正には週休二日の定着が必要でありますが…建設業としては、この政府の決定を真摯に受け止め、長時間労働の是正に精いっぱい努力してまいります」とコメントしているように、5年間の猶予期間を待たずに労働時間短縮に取り組む姿勢を明らかにした。週休2日は待ったなしだ。

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黒嶋氏(左)と須田氏

 式典でこの問題に積極的に踏み込んだ参加者がいた。熊谷組経営企画本部ダイバーシティ推進室担当副部長・黒嶋敦子氏だ。

 パネルディスカッション「これからの建設業女性活躍について」のパネラーとして登壇した黒嶋氏は、ダイバーシティ推進室を昨年スタートさせ、ダイバーシティパトロールの実施、女性用作業服の採用、約100名の女性技術者による交流会の実施、健康経営優良法人「ホワイト500」に初認定されたことなど同社の取り組みを紹介したあと、「建設業は残業が多すぎる。女性が働きやすい職場は男性にとっても働きやすい職場だと思う。みんなで週休2日を実現しよう」と呼び掛けた。

 式典後、この問題についてさらに聞いた。「(週休2日を)オリンピックまでに対応するのは難しいが、今年から土木と建設でそれぞれモデル現場の設定を目指している。意識を変えないといけない。日建連からも実現に向けて努力するように言われている」と話した。

 同じように週休2日制の導入に前向きな考えを示したのは、特別講演として自らの現場経験を話した鹿島建設・須田久美子氏だ。記者の「週休2日制の導入はその分コストアップ要因にならないか」という質問に「大きなコストアップにつながらないよう工夫してやらないといけない。オリンピック後? いえ、それよりも早く取り組む必要がある」と語った。

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小谷氏(左)と鳥生氏

 しかし、ハウスメーカー側は簡単にイエスと答えられない事情がありそうだ。ネラーとして登壇もした積水ハウス経営企画部ダイバーシティ推進室部長・小谷美樹氏は「業界全体の働き方改革として考え、当社としても課題だととらえています」と明言を避け、式典の進行役を務めた大和ハウス工業人事部ダイバーシティ推進室次長・鳥生由起江氏も「業界全体としてそのような動きにあります」と話すにとどめた。

 ビル・マンションなどと戸建てなどでは建設現場での週休2日制の導入には温度差があることが分かった。 

建設現場の仮設トイレ利用しない」 「じゅうたく小町」会員の声をどう聞くか(2017/5/30)

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)

 

カテゴリ: 2017年度

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「じゅうたく小町部会」一周年記念式典(墨田区すみだ産業会館で)

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部会長・前田直子氏

 魚に例えればやはりめでタイか。刺身でも焼いても煮てもおいしく愛でても美しい、料理のし甲斐、記事の書き甲斐のある取材ができた。5月29日行われた全国低層住宅労務安全協議会(低住協)の「じゅうたく小町部会」一周年記念式典だ。参加者約160名のうち約60名が女性会員で、約20基のお祝いの花輪が会場を華やいだ雰囲気で包んだ。

 低住協は、ハウスメーカー、専門工事店、安全関連機材など約60社が参加し、労災防止や労務管理の改善などに取り組んでいる団体で、「じゆうたく小町」はその下部組織。日本建設業連合会(日建連)が推進する「けんせつ小町」と連携して①建設現場の環境整備②技術者としての勤続促進と支援③育児と仕事の両立支援-などに取り組んでいるハウスメーカーの女性技術者・技能者集団。現在、9社70名が参加している。

 本題に入る前に、まずは建設現場の仮設トイレについて。

 先週末、東急不動産「パークフロント日比谷」の竣工見学会で女子トイレに女優ミラーなるものが備えられているのを見た。調光機能付きの光と鏡で〝夜の女〟に変身するための設備だそうだ。

 中身を磨くほうが大事だとは思ったが、女性にとってトイレはものすごく重要なのも理解できる。国交省が協議会を設立して検討を開始したし、明大の人気が劇的にアップしたのもトイレをきれいにしたからだとまことしやかに伝えられている。

 にもかかわらず建設現場の仮設トイレは男性の記者ですら入りたくない。小はともかく大はかがまなければならない。女性が入りたくないと思うのは当然だ。昨年、じゅうたく小町の会合を取材したとき、仮設トイレを利用せずコンビニに行くという人の話を聞いてびっくりしたのだが、今回の式典でも仮設を利用しない人がたくさんいた。

 パネルディスカッションのパネラーの一人は「若いとき(今でも若いが)利用したが、職人さんの気配が気になった。カギも不安で、ドアに背中を付けなければならなかった。それ以来、2度と利用しないと決めた」と語った。

 ゼネコンもハウスメーカーも女性用トイレ環境を整えるべきだと思う。いい商品も開発されている。施主が事情を話せば隣近所で借りることもできるのではないか。

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日野興業の仮設トイレ

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)

 

 

 

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「日比谷パークフロント」(左のケヤキは高さ15m) 

 東急不動産は5月26日、植物が持つ力を最大限に活用し、日本の新しい働き方をデザインする「Green Work Style Project」の第一弾「日比谷パークフロント」が5月31日(水)に竣工するのに伴い、プレス説明会・内覧会を行った。同社は本拠の渋谷や竹芝の再開発など6つのビッグプロジェクトが進行中だが、その勢い見せつけるビルが完成した。

 物件は、同社とケネディクス、日本政策投資銀行の3社共同事業として開発を進めてきたもので、東京メトロ千代田線他「霞ケ関」駅から徒歩3分、千代田区内幸町2丁目に位置する地下4階地上21階建て延べ床面積約67,000㎡。設計・施工は鹿島建設。制振構法を採用。同社がプロジェクトマネージャーとして開発およびリーシングを行い、竣工後はマスターリース兼プロパティマネージャーとして管理運営を実施する。

 1フロア約630坪で、天井高は最上階が4mで標準階は3m。サッシは幅3200ミリの特注品を採用。標準階の賃料は4万円/坪。現在約6割がテナント決定済み。

 「Green Work Style Project」は、働くことで生じる課題を、植物の力によって活動的・精神的に"デザイン"(解決)し、オフィスワーカーの作業効率や生産性の向上、コミュニケーションの活性化などを目指すもの。

 デザインアソシエーションNPOとの共同プロジェクトで、コンセプト構築には同NPOの理事も務める脳科学者の茂木健一郎氏、プラントハンター・そら植物園主宰・西畠清順氏、意と匠研究所代表・下川一哉氏が参画している。

 外構、オフィスロビーなどには日比谷花壇、設計施工の鹿島建設、デザイン監修の日建設計、ランドスケープを担当したランドスケープデザイン、さらには同社グループの石勝エクステリアなどが協業している。

 説明会に臨んだ同社取締役専務執行役員都市事業ユニット長・岡田正志氏は「Green Work Style Projectのコンセプトに基づき公園の中で働いているようなオフィス空間とホテルのようなグレード感を演出した。今後の渋谷や竹芝のプロジェクトもこのような地域と環境との共生を目指す」などと語った。

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ガーデンプロムナード

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1階エントランス

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2階ロビー

◇       ◆     ◇

 同社には申し訳ないが、発表会の冒頭にあいさつした同社取締役専務執行役員都市事業ユニット長・岡田正志氏以下の概要説明、3名によるトークセッションはほとんど耳に入らなかった。聞いていなかった。

 発表会の前にビルの外周部や2階のエントランスロビーの植栽・デザインにほれ込んで、また、会見場の20階から眺めた日比谷公園の圧倒的な緑とビルの支配人で同社野球部監督・潮田喜一郎氏とばったり会って舞い上がってしまったからだ。説明を受けるまでもなく、極めてレベルの高いビルであることを理解した。

 ビルの規模や立地、緑の総量では、このビルを上回るものはたくさんあるはずだが、借景の日比谷公園の緑をビル内に取り込んだコンセプト、その緑の質の高さや同社グループの最高級ホテル「ザ・キャピトルホテル東急」とそん色ない(これは異論があるかもしれないが)デザインにほれ込んだ。

 例えば樹種。同社によると100種以上の中高本を敷地内と2階ロビー、屋上などに植えている。シンボルツリーのケヤキは高崎の山から運んできたもので高さ16m。バクチノキ、ナンジャモンジャなど見たこともない樹木もたくさんある。この質にも驚いた。

 内覧会では、仕事もできる入居者専用のスカイガーデン(150坪)とスカイラウンジ(50坪)、2階グリーンラウンジ、セキュリティゲートとエレベータの連動による先行階登録システム「ELE NAVI(エレ・ナビ)」、黒が基調の1階エントランスから2階ロビー、ナナメ壁かどか印象に残った。女子トイレの夜の女性に変身する女優ミラーは意味不明。

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2階の生木

◇       ◆     ◇

 同社は、かつて街づくりや環境共生の取り組みでは他社を圧倒していた。「かつて」と書くのは、バブル崩壊後はやや精彩を欠いていたからだ。

 しかし、「新青山東急ビル」(2015年竣工)、「東急プラザ銀座」(2016年竣工)「世田谷中町プロジェクト」(2017年一部竣工)などで、そのDNAは健在であることを示した。

 今回のビルは「Green Work Style Project」の第一弾だが、今後目白押しの渋谷や再開発、竹芝のビッグプロジェクトが楽しみだ。同社の勢いを見せつけるビルが竣工した。

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スカイガーデン(ここで仕事をするのも可能)

東急不動産 「世代循環型」の街づくり「世田谷中町プロジ ェクト」一部完成(2017/4/28)

東急不 「東急プラザ銀座」3月31日開業 ターゲットは玄人の「大人」(2016/3/28)

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屋内消火栓放水体験(消防士でも17~19秒かかるのに同社の若い女性の記録は2秒とか)

 三井不動産レジデンシャルサービスは5月25日、マンション管理について「見て、触れて、学べる」体験型研修施設「すまラボ」を豊洲本社内に開設し、6月から同社が管理するマンションの管理組合・居住者にも公開すると発表した。

 東京都から東京都職業訓練校としての認定を受け、訓練校初の「コンシェルジュ養成コース」をはじめとする社内研修のほか、管理マンション居住者や近隣地域住民を対象としたコミュニケーションイベントスペースとして利用できるようにしている。

 「すまラボ」では、「火災時の実物消火栓での放水体験」や「避難の際のバルコニー隔壁板蹴破り体験」など多くの体験型研修企画を盛り込み、従来の施設とは一線を画した体験型コミュニケーション研修施設になっている。

 発表会に臨んだ同社執行役員・山村勝治氏は、「私が入社した昭和62年はまだ〝住宅すごろく〟(国土交通省調査による永住希望は31.1%)が通用していた時代だったが、現在は当社が管理する約25万戸のマンション居住者の65%(同52.4%)が永住を希望されるなど劇的に変化した。これまでの『安心・安全』に加え、『快適』『便利』へとお客さまのニーズは多様化・高度化している。ハードはもちろん、変化する居住者ニーズに対応するためソフトを含めた管理の品質の向上を図るのが目的」と開設の理由を話した。

 同社関係者によると「ビル1棟が施設の会社もあるが、このようなソフトを重視した体験型の施設は業界初だと自負している」と語った。

 場所は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩6分、NBF豊洲キャナルフロント5 階。面積は約230坪。エントランス、コンシェルジュカウンター、専有部モデルなど11のエリアに分かれている。

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隔壁板け破り(ハイヒールのヒールで蹴ったほうが安全だと記者は思う)

◇       ◆     ◇

 マンション管理会社はほとんど情報開示をしないのも原因だろうが、よくもまあ「マンションは管理を買え」などと恥ずかしい記事を書いてきたものだと改めて感じた。驚愕ものの見学会だった。

 これまで、管理会社の研修施設は3カ月前、大京アステージの施設で1日体験取材をしており、三井不動産レジデンシャルサービスの「月島」で2度くらい取材したことがある。長谷工コミュニティの施設もずいぶん昔だが見学している。

 これだけで同業他社との比較は難しいが、同社関係者が「うちが初めてだと自負している」の言を借りれば、「驚愕もの」という表現は的を外していないのだろう。

 マンションの基本的な構造、設備仕様、管理会社の日常業務などはどこにでもあるが、隔壁板を破るのにどれだけの力が必要なのか、スプリンクラーが作動したら1分間に約80リットルの水が出るそうだが、それがいったいどのようなものかを見たり、消火時間を競い合ったりできるとか、避難はしごの使い方などが体験できることなど初めての経験だった。

 さらにまた、バリアフリー法と建築基準法の定めるスロープの差がどのようなものであるかも確認できる。4階の「お客さまセンター」では、スタッフが1日24時間365日体制でどのような対応をしているかも、ガラス越しに見ることができる。このガラスがまたスグレモノで、スイッチ一つでスモークガラスに変わり中の様子が見えなくするようにもできる。

 これを見て、マンションの窓に採用したらカーテンが必要なくなるととっさに考えたが、相当高価なものらしく一般に普及するのは難しいとのことだった。

 「お客さまセンター」では1日300~350件の電話による相談に、平日日中は7~8名、夜中は2~3名で対応しているという。

 相談内容は同じようなものは多くて10%くらいだというから、実に多岐にわたっていることも分かった。

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専有部分の裏側エリア

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いろいろ設備エリア

◇       ◆     ◇

 同社は、この施設を管理員(同社はライフサポーターと呼ぶ)の研修や管理組合など向けに開設したが、記者はマンション購入を検討している人向けにも公開してはどうかと思う。モデルルームなどではここまで基本性能、構造、マンションの管理がどうなるかを説明しない。仮に口頭で説明してもユーザーが深く理解することは不可能だ。

 ここに来れば、それこそマンションのイロハが分かる。同社と同業他社との比較(劣っているものは見せないだろうが)が一目瞭然となれば、マンション販売促進につながる。

 もう一つ考えたのは、近い将来深刻化するマンション管理員不足に対応するため、高いスキルと人材確保のために同社は先手を打ったのではないかということだ。

 マンション管理業協会の岡本潮新理事長は、就任会見の場で「マンション管理は階層でいえばデベロップメントの下支え的な位置にランクされている。ハード・ソフト両面で事業体としてきちんと整備しないといけない」とし、私見としながらも女性・高齢者・外国人の活用は避けられないと語った。

 今回の「すまラボ」は管理組合に管理の質とソフトサービスの違いの「見える化」を図った。同業も対応を迫られるのは必至だ。新たな管理会社同士の競争に同社は火をつけたのではないか。マンション管理会社の変更のことをこの業界では「リプレイス」と呼ぶそうだが、劣悪なサービスしかしない管理会社は「リプレイス」される動きが加速するのではないか。

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水を操るエリア

マンション管理協 新理事長に岡本潮氏(東急コミュニティー会長) 山根氏は相談役(2017/5/18)

〝掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/2/25)

 

 

カテゴリ: 2017年度

 「このほど」の記事が多すぎるとこのほど(5月3日)、当欄で書いたばかりだが、5月23日付「住宅新報」は「このほど」と日にちの記載がない記事が46本のうち24本もあった。

 日にちが明記されなくても不都合が生じない記事はもちろんある。しかし、「三菱地所ホームは4月29日、神奈川県横浜市のみなとみらい地区に初のリフォームショールームをオープンした」と、3週間も前の出来事に日にちを入れる一方で、「NTT都市開発はこのほど、牧貞夫社長が取締役相談役に退き、中川裕副社長が社長に昇格する人事を発表した」と平気で書く。人事発令の日付は極めて重要だと記者は考えるし、大手上場会社の社長人事に〝このほど〟とは失礼極まりない。

 さらにまた、「『中高齢者の農業参加と住まい』について研究する会がこのほど発足した」とあるが、これは会の名称が「中高齢者の農業参加と住まい」なのか、ほかに正式な名称があるのか全く不明。もちろん「このほど」もいつのことかさっぱりわからない。

 不思議なのは、先週の5月12日、日本郵政が野村不動産ホールディングスの買収を検討する旨のビッグニュースが飛び込んできたのに、同紙はこれにまったく言及がないことだ。取材する時間はたっぷりあったはずだ。無視する出来事では絶対にないはずだ。

 1面の企画記事は、デベロッパーなど34社の平成29年3月期決算と次期業績予想の数値が記載されているのだが、売上高、経常利益、純利益の数値と前期比の増減だけ。専門紙のやることか。いっそやるなら全ページを割き、他のデータも盛り込んでそのページだけ切り取ればいつでも読めるようにすべきだ。

 是非はともかく、週刊新潮と週刊文春が取次店を巻き込んで〝スクープ〟〝特ダネ潰し〟合戦を展開しているというのに、わが業界紙はなんとのんびりしていることか。「住宅新報」1紙になったら少しは改まるかと思ったが絶望的になってきた。(記者は1年前、同紙に「このほど」はやめたほうがいいと伝えている)

慣用句か枕詞か なぜか頻繁に登場する「このほど」 不動産業界紙の記事(2017/5/3)

 

 

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故・飯沼喜章氏の「お別れの会」(帝国ホテルで)

 急性冠症候群のため平成29年3月3日に死亡した三井不動産代表取締役副社長執行役員・飯沼喜章氏(享年64歳)の「お別れの会」が5月22日、同社が主催して帝国ホテルで行われた。喪主はご令室の飯沼菜保美さん。同社・グループ会社社員を含めた参列者約2,400人が故人と最後の別れを惜しんだ。

 以下は、当日参会者に配布された同社・菰田正信社長の「ご挨拶」の一部。

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◇      ◆     ◇

(前略)

 故人は、昭和50年に慶應義塾大学を卒業後、弊社に入社以来、オフィスビル事業、宅地造成事業、商業施設事業と弊社の基幹事業全般において第一線で活躍した後、平成25年に代表取締役副社長執行役員に就任し、社業と業界の発展に尽力いたしました。

 特に、昭和55年から約20年間にわたり携わった宅地造成事業では、バブル期前後の市況の変動が非常に激しい時期にも拘らず、行政や地権者などの関係者と粘り強く地道な交渉を続けることによって相手の信頼を勝ち取った結果、いくつもの難局を乗り越え、事業を軌道に乗せることに成功いたしました。

 また、平成12年から生涯にわたり担当することとなった商業施設本部では、卓越した感性とリーダーシップを発揮し、商業施設事業を当社の大きな柱に育て上げました。当本部の売上は故人が配属された当初の実に約9倍の規模まで成長しています。

 とりわけ故人の功績は、「人と社会に新しいライフスタイルを提供する」という概念の商業施設に取り入れたことでした。「お客様のニーズの変化」「Eコマースの拡大」「という時代の流れを的確に捉え、商業施設を「買い物をする場」から「豊かで楽しい時間を過ごしていただける場」へと変革させたのです。まさにそれまでの常識を覆す新たな価値創造でした。

(中略)

 こうして振り返りますと「考えるだけでは何も変わらない。サイコロをふってゲームを始めなければ、どんな地の利も活かすことはできず、運も人の縁も引き寄せることはできない。物事を動かすためには、とにかく思い切って行動を起こすことが重要だ。」という故人の一貫した哲学がこのような結果につながったのだと思っております。

 胸に去来する思いは尽きませんが、私どもはこのような故人の遺志を引き継ぎ、更なる事業の発展、社会への貢献に邁進する所存です。

(後略)

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「グレイプス用賀」

 東京建物と東京建物シニアライフサポートは5月19日、東京都公営企業用地を活用した福祉インフラ整備事業第1号案件のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グレイプス用賀」をオープンした。公募により交通局所有の土地を借り受けて施設の整備を行った事業。地域包括ケアシステムの拠点としての役割も担い、保育所と看護小規模多機能型居宅介護事業所が併設されている。

 特徴は、①多世代の福祉支援の拠点となる多様な施設を整備②自立から軽介護の人向けの「レジデンスフロア」と認知症など見守り支援が必要な人向けの「ケアフロア」が選択できる③「ケアフロア」は24時間体制でスタッフが見守るなど「コンシェルジュ」サービス-など。

 物件は、東急田園都市線用賀駅から徒歩7分、世田谷区用賀三丁目に位置する6階建て120戸。専用面積は28.02~73.16(1R 54戸、1LDK 37戸、2LDK 29戸)。月額賃料は142,870~428,250円、月額管理費は39,850円(1人入居)・59,350円(2人入居)。レジデンスフロアの基本サービスは38,880円(1人入居)・66,960円(2人入居)、ケアフロアの基本・見守りサービス費は98,280円(1人入居)・164,160円(2人入居)。食材費は朝食:324円・昼食:540円・夕食:702円・3食30日分:46,980円。

 共用部はフロント・ラウンジ・ダイニング・プライベートダイニング・テラス・厨房・シアタールーム・リラクゼーションルーム・娯楽室・多目的室・応接室・相談室・屋上テラス・コミュニティラウンジ・共同浴室・機械浴室など。

 管理運営は東京建物シニアライフサポート。医療連携は医療法人社団はなまる会・やさしい手。施工はフジタ。

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エントランス

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 同社がサ高住の第一弾「グレイプス浅草」を竣工させたのが2009年12月。以来、16物件1,271戸(計画中含む)まで増やし、グループの有料老人ホームも4物件215戸(計画中含む)運営している。着々と地歩を固めている印象を受けた。同社は高齢者向け住宅事業の拡大・サービス強化のため、介護人材派遣会社のケアライクの全株を4月1日付で取得している。

 今回の物件は、東急不動産が先に竣工させた「グランクレール世田谷中町」と競合しているのではないかと聞いたら、「ほとんど競合はない。数千万円の支払いが必要な一時金払い方式と異なり、月額方式のほうがハードルが低いと考えていらっしゃる方が多い」とのことで、オープン時までに30戸の契約を済ませているようだ。

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グレイブスホール

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モデルルーム

東急不動産 「世代循環型」の街づくり「世田谷中町プロジェクト」一部完成(2017/4/28)

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「居住者セミナー」(南青山・新青山ビルで)

 三菱地所コミュニティは5月21日、同社が管理するマンション居住者を対象とした「居住者セミナー」を開いた。

 午前の部は危機管理アドバイザー・国崎信江氏の「熊本地震の教訓からマンションの防災対策を考える」講演が、午後の部は収納王子コジマジック(小島弘章氏)の「収納王子コジマジックの笑って学べる収納セミナー」が行われた。それぞれ約100名が参加した。午後の部は参加希望が多かったため追加講演を行い、約80名が参加。「防災」や「収納」に対する関心の高さをうかがわせた。

 午前の部に参加した横須賀市の大規模マンション管理組合理事(60歳代)は、「大変参考になった。これまで備蓄品を蓄えることばかりに力を注いできたが、トイレ、風呂、洗濯などをどうするかの課題が見えた。高齢者も増えてきているので、準避難所として申請して自助で対応できるようにしていきたい」と話した。

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国崎氏(左)と小島氏

◇      ◆     ◇

 セミナーが行われた会場は、1カ月前まで弊社が事務所を置いていた港区南青山の新青山ビルだった。昼の休憩時間に地階に降りたら、よく利用していたカフェ「EL GRECO」が開いていた。

 土曜・日曜日は休みではないかと思ったが、小森珠子社長が「あら、久しぶりね。今日は特別のコンサートの日で店は休みですけどコーヒーだけならどうぞ」と招き入れてくれた。コービーもごちそうになった。

 「EL GRECO」は、16~17世紀に活躍したスペインの宗教画家・エルグレコにふさわしいクラシックで家庭的な雰囲気がする店だ。昼食では家庭料理が食べられる。

 この日のコンサート「響の宴」では、チェコで学び、国内外で活躍するテノール・井出則太郎氏、バイオリン・遠藤万理氏、ピアノ・井出愛氏による「コモレスク(ドヴォルシャーク)」「サロン風ポルカによる第3番(スメタナ)」「モラヴィア民謡」「愛の挨拶(エルガー)」「アヴェ・マリア(シューベルト)」などが演奏された。

 青山1丁目駅に降り立ったらぜひどうぞ。記者のお薦めだ。

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「EL GRECO」

カテゴリ: 2017年度

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 コスモスイニシアは5月17日、2017年3月期決算説明・中長期事業戦略説明会を行った。高木嘉幸社長が主力のマンション事業や最近力を入れているソリューション事業などについて説明した。

 マンション事業については稿を改めるとして、記者が注目しているのはアパートメントホテル事業だ。

 これについて同社は1月、ニュース・リリースで①東京・京都・大阪エリアで、ターミナル駅周辺等交通利便性が高い立地②客室数40室程度の比較的小規模なものから事業化③4名以上でも快適に過ごせる、1室40㎡程度中心。寝室とリビング・ダイニング空間を全室に確保④暮らすように滞在することが可能な、ミニキッチンと食器及び調理器具を常備⑤客室は「和」を意識-などが特徴としている。

 この日は、10棟のプロジェクトが進行中として、「上野」40室、「赤坂」40室、「日本橋」32室、「京都」42室、「八丁堀」66室など474室を明らかにした。高木社長は「ルーム単価は約3万円。圧倒的な利便性と安全性を確保して、近い将来1,500室の供給と運営を目指す」と語った。

◇       ◆     ◇

 アパートメントホテルがどのようなものかわからないのだが、各社が取り組んでいるサービスアパートメントは基本住宅で、アパートメントホテルは建築確認の手続きではホテルとのことだった。海外では結構あるという。

 もっとも速く竣工するものは来年の2月だから、しっかり取材してレポートしたい。1室40㎡というのがいい。宿泊予算や目的にもよるが、そのようなニーズは間違いなくある。連泊などの希望者には掃除やリネンを省いて料金を安くするサービスも行うようだ。客室は「和」をデザインするというが、外資系ホテルのような東南アジアか無国籍風のデザインになるのか。そうだとしたら日本人を意識していないということか。

カテゴリ: 2017年度
 

 

 

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