〝郊外不振〟跳ね返す 京阪電鉄不動産他「イマジンテラス」
「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)完成予想図
京阪電鉄不動産(事業比率55%)、総合地所(同44%)、長谷工コーポレーション(同1%)の3社共同マンション「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」を見学した。南武線尻手駅から徒歩14分とやや距離はあるが、坪単価は173万円。圧倒的な価格の安さが人気で、第1期131戸に102戸の申し込みが入った。
物件は、JR南武線尻手駅から徒歩14分(矢向駅から徒歩15分)、横浜市鶴見区江ヶ崎町に位置する7階建て全338戸。専有面積は68.70~85.50㎡、3LDK、70㎡台が3,500万円台中心で坪単価は173万円。竣工予定は平成30年2月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、尻手駅からはやや距離があるが、敷地面積約1.3haの敷地に建物をロの字型に配し、その中央の3,000㎡超に中庭を設置。9つの企業とコラボして共用施設の充実を図り、入居者のコミュニティ支援を前面に打ち出したのが特徴。
川崎駅へ1駅で、圧倒的な価格の安さから9月13日に抽選分譲した第1期131戸には102戸の申し込みが入った。プライベートガーデン(専用庭)を設けた1階住戸は7階住戸と価格がほとんど同じだったにも関わらず、抽選になる人気で完売となった。4月からの来場者は約400件。申込者のうち約15%が東京都大田区の居住者で、歩留まりが高いのが特徴。
京阪電鉄不動産首都圏事業部東京営業部所長・高橋和寿氏は、「3LDKで3,500万円台中心という価格を何とか維持し、入居者がマンション全体を自然にシェアしながら自発的にコミュニティを形成していく仕掛けを施した。第1期が好調なスタートを切れたことで、〝郊外の販売不振〟の打開策に一つの答えを出せた」と語った。
アコースティックライブ
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「第一次取得層の取得限界は3,500万円というのがわたしの信念」-同社・高橋氏が前回取材した「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」でこう語ったが、今回の「イマジンテラス」でもこの信念が貫かれている。
この思いに記者も共感できる。ファミリー向けの3LDKで3,500万円台というマンションは、よほどの遠隔地マンションでないと供給できなくなってきた。ローン金利がただ同然になのは救いだが、一般所得層の実質賃金はバブル崩壊後低迷したままだ。その一方で、一挙にマンション価格が上昇してしまった。消費者の消費マインドも一向に上向く気配がない。
このような状況下で、どこが需要を創造するかずっと注目してきたのだが、同社が敢然と「3LDKで3,500万円台」に挑戦。結果を出している。いま郊外マンションの第1期分譲で成約できるのはせいぜい数十戸だ。いかにこの物件が〝人気〟になっているかよくわかる。
プロジェクションマッピングを活用した模型やモデルルームはよくできている。アウトドア用品ブランド「LOGOS」商品を盛り込んだ1階の専用庭付きモデルルームタイプが人気になったのも頷けるし、押入れクローゼットの提案もいい。
「LOGOS」の提案を盛り込んだ1階住戸(モデルルームタイプ)
押入れ収納
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8月26日付の同社「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」の記事と同様、高橋氏は「面積を70㎡台に抑え、基本性能は守りながらオプション工事にできる設備仕様はオプションにしている」と話した。
広告上の豪華さを競う一方、マンションの原価構成が一般消費者にはわかりづらいことが郊外の販売不振の原因にあるのではないか。「価格の上がる設備仕様のハードを競うより、コミュニティ支援によるソフトを充実させる」。記者は同社の正直な企業姿勢を支持するし、
きちんと説明責任を果たしていると思う。関西の狭い商圏でJRや他の私鉄と戦っている京阪電鉄(不動産)の強かな戦略がここにも見えてくる。〝三方よし〟など今のマンション市場ではありえない。
中庭
三菱地所レジデンス タイ・バンコクのマンション326戸が6日間で完売
ン「RHYTHM Ekkamai(リズム エカマイ)」完成予想図
三菱地所レジデンスは9月20日、タイ・バンコクのデベロッパーAP社と共同で分譲した第8号プロジェクトマンション「RHYTHM Ekkamai(リズム エカマイ)」(総戸数326戸)を9月3日から販売開始し、9月8日までわずか6日間で全戸完売したと発表した。タイの平均年収は140万円くらいだそうだ。
都心からのアクセス・生活利便性に優れ、人気のあるスクンビットエリアに位置する地上32階建て。専有面積は30㎡~80㎡、価格は536万バーツから。日本人向けの現地販売ツアーを行い、総戸数の約1割である計30戸に申し込みが入った。
バンコクは所得の上昇・人口の流入・核家族化の進行・公共交通機関の拡張等により、都心部での分譲マンションへのニーズが高まっており、同社グループは2014年からタイ・バンコクでの住宅事業に参画し、約2年間で計8物件、約6,500戸の販売を行ってきたが、約8割が分譲済み。同社は今後も事業を加速し、年間3~5物件、総売上200億バーツ規模での事業展開の継続を目指す。
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海外のマンション市場は全く分からないが、〝すごい〟のひとことだ。1バーツ2.92円で換算すると、日本円にして価格は1,565万円から。坪単価で172万円だ。
先週末、南武線尻手駅圏の京阪電鉄不動産「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」を見学したが、坪単価は173万円だった。タイ・バンコクとほぼ同じだ。
「イマジンテラス」は第1期131戸に対して102戸に申し込みが入り大健闘しているのだが、バンコクのマンションはその3倍の戸数がわずか6日間で完売するとは。年収倍率でいえば、日本もタイも同じくらいか。
「ザ・ガーデンズ東京王子」 販売好調/北区がPRポスター「住めば、北区東京。」
「ザ・ガーデンズ東京王子」完成予想図
三井不動産レジデンシャル・近鉄不動産・大和ハウス工業・三菱地所レジデンス・長谷工コーポレーションは9月16日、5社が共同で分譲している「ザ・ガーデンズ東京王子」の売れ行きが好調につき追加販売すると発表した。
8月27日から9月3日まで第1期1次として今年の都内最多315戸を供給し、約300組の登録申し込みがあったため、第1期2次として9月下旬に追加供給する。
物件は、JR東十条駅から徒歩5分、北区王子五丁目に位置する総開発面積約4.3haの全864戸。第1期1次(315戸)の価格は4,878万~7,588万円(最多価格帯5,900万円台)、専有面積は68.19~85.09㎡。5月からのモデルルーム来場者は約1,600組。
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このマンションについては、別掲の記事を参照していただきたい。売れ行きがいいというのは業界内ではよく知られていたが、この種のプレスリリースが発表されるのは久々だ。300戸超の分譲で即日完売するのは当たり前だったからだ。
ところが、ここにきて都心部も郊外部も市況が怪しくなってきており、リリースは売れ行きが好調であることをアピールし、秋の商戦につなげようとする狙いがありそうだ。
今年の一挙供給の多さでは、相鉄不動産他「グレーシアタワー二俣川」が380戸を供給して好調なスタートを切った。
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このリリースにタイミングよく、9月18日付の朝日新聞デジタルは、北区の魅力をPRするポスター「住めば、北区東京。」と、そのポスターを描いた漫画家・清野とおる氏を紹介している。漫画のタイトルは「東京都北区赤羽」で、「作者が主人公になり、赤羽を舞台に出会った人や発見したものなど多彩な魅力を独自の視点から取り上げた作品」(朝日新聞)だ。清野氏は13年前、板橋区から赤羽に引っ越したという。
その「北区赤羽」のマンション坪単価は300万円をはるかに突破する。一般所得層が買えなくなってきている。東十条も取得限界にあるが、赤羽より坪数十万円は安い。「住めば、北区東京。」が効果を発揮することを期待したい。
隣の区、板橋区(一部豊島区)では今から6年前、野村不動産が「プラウドシティ池袋本町」全785戸をわずか半年で完売して話題となった。来場者は12,000組に達した。最多価格帯は「東京王子」より約400万円安い5,500万円台だった。
清野とおる氏が描いた北区の魅力をPRするポスター「住めば、北区東京。」の一つ
「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)は坪260万円台(2016/7/8)
記録的な一挙供給量380戸 「グレーシアタワー二俣川」は坪280万円(2016/8/22)
伊藤忠都市「クレヴィア千鳥町」 設計変更も可能「カスタムオーダーメイド」採用
「クレヴィア千鳥町」完成予想図
伊藤忠都市開発は9月16日、ライフスタイルに合わせて間取りの設計変更や収納仕様、浴槽形状などを選択できる「カスタムオーダーメイド」を導入した「クレヴィア千鳥町」(総戸数61戸)のマンションギャラリーをオープンしたと発表した。
物件は、東急池上線千鳥町駅から徒歩5分、大田区千鳥三丁目に位置する9階建て。専有面積は55.45~94.82㎡、竣工予定は2017年8月下旬。設計・監理は古沢建築工房。施工は鍜治田工務店。
ポラス パッケージ化した5プランが選べる一棟リノベ「ルピアージュ田無」
「ルピアージュ田無」
ポラスグループの中央住宅は9月9日、同社2棟目の一棟リノベーションマンション「ルピアージュ田無」の記者見学会を行った。西武新宿線田無駅から徒歩10分の第一種低層住居専用地域に位置する全50戸で、5つのモデルルームから好みのプランを選べるのが特徴だ。
物件は、西武新宿線田無駅から徒歩10分、西東京市田無町7丁目の第一種低層住居専用地域に位置する3階建て全50戸。専有面積は73.45㎡、第1期(3戸)の価格は4,198万円~4,548万円。坪単価は200万円強。建物は平成5年2月に竣工。施工は長谷工コーポレーション。改修は長谷工リフォーム。改修完了は平成29年2月中旬予定。販売代理は長谷工アーベスト。
大手企業の社宅だったのをスケルトンでリノベーションし、共用部分・外構・植栽を一新。一部の住戸には最大52.85㎡の専用庭を設置。エントランスにはルーバーフェンスを設置。駐車場は38台分確保。
住戸プランは、費用負担がかからないものから270万円の5つのモデルルームを用意し、好みのプランを選べるのが特徴。
同社取締役マインドスクェア事業部長・金児正治氏は、「昨年分譲した『天王台』は残り3戸。いろいろなことを学んだ。今回はプランをパッケージ化して好みのものを選んでもらうようにし、施工したのが長谷工さんであり、今後の展開も考えて改修、販売代理も長谷工さんにお願いした。1棟リノベは『百合丘』21戸の仕込みも済んでおり、今後は年間2棟くらいを供給していきたい。事業部全体では来年度売り上げ100億円にチャレンジする」と語った。
グランドエントランス
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従前は大手企業の社宅で、建築確認が平成3年とあるからバブルがはじけた直後だ。分譲だったら坪単価は300万円近くしていたころだ。外観はタイル張りでバブル仕様であることをうかがわせた。
ただ、同社が昨年分譲した「天王台」は90㎡が中心で今回は73㎡。ここに大きな差がある。企業の社宅に対する考え方や用途(幹部用か一般社員向けか)の差が出ているようだ。
見学会で公開された5つのモデルルームは以下の通り。
①「Gathering House 笑顔のステーションを持つ家」(設計デザイン:中央住宅マインドスクェア事業部マンションDv、追加料金95万円)
②「SLOW HOUSE 包容力の豊かな家」(設計デザイン:中央住宅 マインドスクェア事業部女性チーム、追加料金115万円)
③「DECOR Houseデザインを魅せる家」(設計デザイン:中央住宅スタディ・スタイル一級建築士事務所、追加料金270万円)
④「DRESS HOUSE 優雅な時を奏でる家」(デザイン提案長谷工アーベスト、追加料金230万円)
⑤「Atelier HOUSE 『個』を大切にする家族の家」(デザイン提案:長谷工リフォーム、追加料金ゼロ)
記者が一番いいと思ったのは①「Gathering House 」だった。モデルルームは8月27日からオープンされており、2週間で40組ある来場者の一番人気もこのタイプだそうだ。すでに〝十八番(おはこ)〟となっている〝ピアキッチン〟が標準装備されている。
追加料金がもっとも高い270万円の③「DECOR House」は、建具や面材に「シナベニア」を多用し、コルク材の床、コンクリート打ちっぱなしの土間の提案など意欲的な作品ではある。世界的な流れを盛り込んだ企画意図もよくわかるのだが、「シナベニア」はいかにも「べニア板」仕様だ。同社が分譲する戸建てはいかにも「木」らしい素材感がある建具・家具を採用している。
他のプランはオーソドックスなものだ。従前の間取りプランは、中央に玄関があり、北側に2住戸、南側にリビングと和室(洋室)に振り分ける平凡な田の字型プランだったと思われるが、今回も基本的にはそれを踏襲するものだ。世帯構成が激変し、ニーズも多様化している現在、もっと大胆な提案があってもよかった。5つのプランとも全て3LDKだった。
①「Gathering House 笑顔のステーションを持つ家
④「DRESS HOUSE 優雅な時を奏でる家」
③「DECOR Houseデザインを魅せる家」
②「SLOW HOUSE 包容力の豊かな家」
⑤「Atelier HOUSE 『個』を大切にする家族の家」
ポラスグループ、“オールポラス”で初のリノベ 「天王台」はバブル仕様(2015/11/19)
フージャースコーポ コンパクトブランド「Duo Veel」立ち上げ・分譲へ
「Duo Veel銀座レジデンスギャラリー」
フージャースコーポレーションがコンパクトマンションブランド「Duo Veel(デュオヴェール)」を立ち上げ、初弾の「Duo Veel飯田橋」「Duo Veel渋谷初台」の総合マンションギャラリー「Duo Veel銀座レジデンスギャラリー」を9月3日(土)にオープンした。
マンション分譲事業で培ってきたものづくりのノウハウを生かし、女性ものづくりチームが中心となって商品を企画。メインターゲットとしている「都心でいきいきと、自分らしく働く女性」が快適に暮らせる住まいを提案する。
今後、この2物件を含め秋葉原・学芸大学・上野松が谷・赤羽で計6物件約250戸(上記2物件含む)の供給を予定している。2021年3月期には年間供給約300戸のコンパクトマンションを手掛けていく計画。
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このプロジェクトの説明会が9月28日(水)に行われるで、取材してレポートしたい。
中堅所得層でも手が届く坪350万円 スターツ・安田不の定借「千桜タワー」
「アルファグランデ千桜タワー」完成予想図
スターツグループのスターツデベロッブメントと安田不動産が分譲している「アルファグランデ千桜タワー」を見学した。神田や日本橋も徒歩圏の都営新宿線岩本町駅から徒歩1分、免震工法を採用した期間70年の定期借地権付きで坪単価は350万円。中堅所得層でも手が届く価格帯が評価され、好調な売れ行きを見せている。
物件は、都営地下鉄新宿線「岩本町」駅徒歩1分、千代田区神田東松下町に位置する25階建て全276 戸(事業協力者住戸27戸、非分譲住戸65戸含む)。専有面積は56.14〜110.51㎡、坪単価は350万円。竣工予定は平成30年6月中旬。設計は山下設計・大成建設。施工はスターツCAM・大成建設共同企業体。事業主はスターツコーポレーション。売主はスターツデベロップメントと安田不動産。
プロジェクトは、千代田区立千桜小学校の跡地と隣接の民有地を一体として開発するもので、区のコンペによって応募7社(グルーブ)の中からスターツグループが選定された。評価されたのは免震工法を採用したこと、建物の高さを抑え周辺環境に配慮したこと、防災機能を備え公開空地を確保したこと、定期借地権付きとしたスキームであること、周辺住民・地権者・住宅購入者・区のいずれにも偏らない計画であることなど。
建物の1階から7階までは店舗、事務所、非分譲住戸で分譲住戸は8階以上。住戸は50~60㎡台の小家族向けから70~80㎡台のファミリー向けがバランスよく配置されているのが特徴。共用部分には江戸小紋や江戸切子をモチーフにしたデザインが施されている。最上階のプレミアム住戸は突板仕様の建具・壁が採用されている。
これまで178戸が供給され、販売は極めて好調に推移している。
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この前は、やはり期間70年の定期借地権付き「ブランズ世田谷中町」を紹介したが、今回もまた同じ期間70年の定借マンションだ。都心部や準都心部のマンションは地価・建築費の高騰で中堅所得層の取得が困難になりつつあるが、この二つのマンションは何とか手が届く範囲内だ。「千桜」は、3LDKが5,000万円台で取得できる。人気になるのも当然だ。
現地は千葉周作の道場があったところだそうで、「神田東松下町」は「神田紺屋町」「神田東紺屋町」「神田鍛冶町」「神田北乗物町」などに隣接・近接しており、昔ながらの下町の風情が残っているところもある。きれいとは言えないが神田川もすぐ近くに流れる。
広告表示では、岩本町駅まで徒歩1分(80m、広告表示では駅の出入り口までの距離を表示することになっている)だが、私道を通れば数十秒で行けるそうだ。記者はその私道を見つけられなかった。そもそも私道は許可なく立ち入ることは不可だ。土地所有者は黙認するのだろうか。
エントランス
東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円
「ブランズシティ世田谷中町」(右)と「グランクレール世田谷中町」完成予想図
東急不動産が9月中旬に分譲する大規模複合マンション「ブランズシティ世田谷中町」を見学した。敷地規模が約1万坪(シニア住宅含む)の第一種低層住居専用地域に位置する低層マンションで、期間70年の定期借地権付き。同社の記念碑的なマンションの一つになるのは間違いない。
物件は、東急田園都市線桜新町駅・用賀駅から徒歩15分、世田谷区中町五丁目の第一種低層住居専用地域に位置する4階建て6棟構成の全252戸。専有面積は70.58~90.98㎡、予定価格は5,800万円台~9,400万円台(最多価格帯6,600万円台)、坪単価は308万円。期間70年の定期借地権付き。竣工予定は2017年7月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。
現地は、NTT東日本の社宅跡地。敷地規模1万坪超の第一種低層住居専用地域に位置するマンションは、世田谷区内では過去に三井不動産他「パークシティ弦巻」しかなく今回は2件目。
街づくりコンセプトは〝LOVE &INNOVATION〟。米国・ポートランドの街を参考に世代が交流しあう循環型のモデルシティを目指す。東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」第一号案件でもある。
分譲マンションのほかに、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」(サービス付き高齢者向け住宅シニアレジデンス176戸・ケアレジデンス75戸)と、グランクレールの敷地にはコミュニティサロン、カルチャールーム、介護事業所、認可保育園が併設される。コミュニティサロンは東京都市大学と連携して様々な空間設計・プログラム企画を行う。
「ブランズシティ世田谷中町」は全住棟が南東向き。各棟の間にはシーズンプロムナード、プライベートキッチンガーデン、キッズベース、ハーヴェストガーデンなどを整備。五感で感じる自然を演出し、みんなが集まる仕掛けを施す。用賀駅への直通専用シャトルバスも運行する。
住戸は70㎡台のファミリー向けが中心。御影石のカウンターキッチン・洗面カウンター、ミストサウナが標準装備。
シーズンプロムナード
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上野毛駅近くに設けられているゲストサロンに入ってすぐ、回転すしの小型コンベアに老若男女、様々な生活シーンを描いた工作物が流れているのが目に飛び込んできた。壁の棚には米国・ポートランドのグッズが並べられていた。
「循環型モデルシティ」のコンセプトが集約されており、なかなかいい仕掛けだと感心したら、その奥の模型もまたよくできていた。先週は約4.7haの第一種低層住居専用地域の野村不動産「プラウドシティ阿佐ヶ谷」を見学し、その圧倒的な緑に驚いた。今回はそれより規模は小さいが、1万坪に広がる4階建ての美しいスカイラインが表現されていた。
定期借地権付きというのもいい。プランはショートスパンの70㎡台の住戸も少なくはないが、だからこそ、普通のサラリーマン層でも容易ではないが何とか手が届く価格帯になるのではないか。所有権分譲だったら、坪単価は300万円台の後半になっていたはずだ。
見学しながらずっと同社の他の大規模マンションと比較して考えていた。最近ではタワー型の「みなとみらい」が出色だったが、中低層型のマンションでは2001年竣工の「東急ドエル イディオスあざみ野」(321戸)が真っ先に浮かんだ。確か大手銀行の社宅跡地だった。
今回はNTTの社宅跡地だ。シアターやパンフレットには「ブランズの集大成」とあったが、間違いなくそう言える。同社の記念碑的マンションの一つに加えたい。
コミュニティサロン
ゲストサロン
東急不HDグループ 「世田谷中町プロジェクト」で東京都市大と産学連携(2016/8/9)
タカラレーベン「レーベン府中西府」 駅前でスーパー、保育園、小学校が近接
「レーベン府中西府」完成予想図
タカラレーベンが分譲中の「レーベン府中西府」を見学した。JR南武線西府駅から徒歩1分の全48戸で、坪単価は230万円。4月から販売しており、8月26日時点で28戸が成約済み。コンスタントに売れている。
物件は、JR南武線西府駅から徒歩1分、府中市西府町1丁目に位置する7階建て全47戸。専有面積は43.49~87.98㎡、坪単価は230万円。竣工予定は平成29年1月下旬。施工は埼玉建興。設計・監理はトータルブレイン。売主は同社のほか三信住建。
現地は、2009年に開業した西府駅のすぐ前。道路を挟んだ対面にはスーパーがあり、保育園へは徒歩1分、小学校は徒歩2分の立地。
住戸は南東向きと南西向き。二重床・二重天井、食洗機、超微細な気泡により洗浄力が高く温浴効果もある「たからのバブルマイクロトルネード」が標準装備。
4月から販売開始されており、これまでに地元住民中心に28戸が販売済み。
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西府駅圏のマンション取材は約3年前、三信住建が分譲して早期完売した「プレミアムレジデンス府中西府駅前」45戸以来だが、今回はその隣接地。当時、まだ空き地だった対面にはスーパーもあった。
坪単価230万円は当時の200万円強から高くはなっているが、これも地価・建築費の上昇を考えるとやむを得ないのかもしれない。
モデルルームは、同社の他のマンション同様かなり派手だが、一つの提案としては面白い。
第一次取得層向けの郊外マンションは復活するのか
ここ最近ずっと考えているのは、どうしたら郊外マンションが売れるかということだ。念頭にあるのは一般的な夫婦と子どもが1~2人の家族が無理なく取得できる「3,500万円以下のファミリーマンション」だ。居住面積を70㎡とすると、坪単価165万円以下だ。
この坪165万円以下というマンションはこのところの地価・建築費の上昇でほとんど絶望的になってきている。これが記者を悩ませている。
●マクロデータ
マクロデータでみてみよう。
まず、首都圏マンション市場の概観から。不動産経済研究所(不動研)の調査によると、2016年上半期(1~6月)の首都圏マンション市場動向は、①供給量が前年同期比19.8%減の14,454戸となり、微増となった埼玉県以外の都県は二ケタ以上の大幅減②初月契約率は平均68.4%で、前年同期の76.1%より7.7ポイントダウン。上半期としては7年ぶりの70%割れ③1戸当たり価格は5,686万円で、430万円(8.2%)の上昇④3.3㎡(1坪)当たり単価は270万円で、前年同期より22.8万円(9.2%)上昇――などとなっている。
郊外マンションの価格動向については、2015年の平均分譲価格(坪単価)は神奈川県が5,080万円(238万円)埼玉県が4,295万円(196万円)、千葉県が4,050万円(180万円)となっており、2016年上半期も上昇傾向が続いている。
供給量も激減している。これまでもっとも供給量が多かった2000年(全体で9万5,635戸)には神奈川県の供給量は約25,000戸で、埼玉、千葉県は約10,000戸だったのが、2015年には神奈川県が約8,000戸で、埼玉県も千葉県は4,000戸を割り込んだ。
こうした結果、2000年は全供給戸数のうち34.2%に当たる3万2,754戸が66㎡以上で3,500万円以下のファミリー向けマンションだったのが、最近では戸数も比率も減少し、その比率は20%を割り込んでいると思われる。
これほど市場が縮小しているのは需要がないからではない。国土交通省の調査によると、全国の住宅不満は平成5年の35.4%から平成25年には22.1%へ13.3ポイントも改善はしているが、マンションの主な需要層である賃貸居住者の住宅不満は50%を超えるはずだ。賃貸の質が劣っているからマンションへの移住を考える〝賃貸脱出派〟が分譲市場を支える構造に変化はない。
それでも需要が潜在化したのは、供給サイドが需要に見合う商品を供給できないからだ。住宅ローン金利が2.95%(固定金利選択型10年)と史上最低水準にあり、それだけ買いやすさは増しているものの、借金をすることに変わりはなく、将来の経済・雇用不安などの理由から需要が顕在化してこないというのが現状だ。
●プレーヤー
次にマンション市場のプレーヤーの動向について考えてみる。
長谷工コーポレーションの「CRI」の調査によると、大手デベロッパー7社の今年上半期の供給量は7,678戸で、前年同期比5.1%減だ。
大手のメインターゲットは富裕層・アッパーミドルだ。大手が後半供給を伸ばすかどうかわからないが、昨年の1万6,961戸(全体に占める供給比率41.9%)を下回ると見ている。タワーマンションの供給が増えそうになく、中堅所得層向けの一部の物件で売れ行きが芳しくないからで、年間では1万6,000戸を下回るのではないかと見ている。
一方で、中堅のメインターゲットは第一次取得層だ。後半戦のカギを握るのは、この第一次取得層向けのマンションが売れるかどうかにかかっているのだが、これは悲観的に見ざるを得ない。中堅の供給シェアはリーマン・ショック前の2007年は73.4%だったのが昨年は58.1%にまで低下している。大手の寡占化が進行し、全体として大手の動向に左右されるのが中堅だ。
どちらかと言えば、大手は大量宣伝・大量集客によって需要を喚起し、地引網のように顧客を獲得する戦法を得意とする。中堅はこの戦法が取れない。徹底した差別化を図り、きめ細かな対応で大手と互角に戦ってほしいと願うほかない。
●社会・経済状況の変化
需要が顕在化しない理由を、社会・経済状況からアプローチした。
最近の労働力調査では就業者、就業率、失業率などの数値は改善が見られるが、正規・非正規の雇用形態に変化はそれほどみられない。
総務省の調査によると、1990年に881万人だった非正規雇用者数は、2015年に1980万人と2倍以上になっており、正規・非正規雇用者の合計に占める割合は1990年の20.2%から2015年には37.5%へと2倍近く上昇している。正規は1990年代の半ば以降ほぼ一貫して減り続けている。
一般労働者(正社員・正職員)の平均賃金1,958円/1時間であるのに対して、正社員・正職員以外の平均賃金は1,258円/1時間とかなりの差がある。非正規雇用の増加は高齢者だけでなく、全階層でも増加しているのが特徴だ。
世帯構成も激変している。1980年(昭和55年)には専業主婦世帯1,114万世帯に対し共働き世帯は614万世帯だったのが、2015年(平成27年)では共働き世帯が1,114万世帯なのに対し専業主婦世帯は687万世帯となっており、ほぼ正反対の関係になっている。
少子化が進んでいるのに待機児童・学童保育問題が大きな課題になっているのは、このようにバブル経済の崩壊による経済・社会構造が一変したからだ。
これら就業のあり方も含めた雇用の問題、待機児童・学童保育の問題を解決しないと、第一次取得層向けマンション市場の本格回復は難しいと言わざるを得ない。
●若年層の意識
若年層の意識はどうか。厚労省の2013年時点で若年層(15~39歳)の意識調査では、現在の生活に「満足している」「どちらかといえば満足している」人の割合は約6割にのぼる。その理由は、経済的な豊かさ(5.7%)より精神的な充実(82.6%)を挙げる人が圧倒的に多い。
一方で、日本の未来は明るいかという問いでは、「(どちらかといえば)そう思わない」と回答した人が45.1%と半数近くを占め、「(どちらかといえば)そう思う」と回答した人(19.2%)の倍近くある。
不安の理由は、財政悪化や社会保障制度に対する不安を挙げる人が72.9%にのぼり、経済不安(60.9%)、雇用不安(49.2%)などとなっている。
経済的な豊かさより精神的な充実に重きを置き、いまの生活には満足している一方で、社会保障制度、経済不安、雇用不安などから明るい展望を持てない若年層の姿が浮かび上がる。
さらに、若年層の意識を探るのに何か手がかりがつかめるかもと思い、第155回芥川賞を受賞した36歳の村田沙耶香氏の「コンビニ人間」を読んだ。村田氏の体験をもとに描かれた小説で、主人公は、コンビニで働いているときだけ存在感が感じられる36歳の恋愛経験のない独身女性だ。
読んでみてさっぱり理解できなかった。選考委員の山田詠美氏が「十数年選考委員をやってきたが、候補作を読んで笑ったのは初めて。そして、その笑いは何とも味わい深いアイロニーを含む」と語っているが、記者はどうしてこのような作品が選ばれるのかということも含めて「訳が分からない」というのが正直な感想だ。奥泉光氏の「主人公の孤立ぶりには慄然とさせられる」や、村上龍氏の「(主人公は)実はどこにでもいる」という選評に近い。
芸術作品も時代を反映するとすれば、「コンビニ」の内も外も狂っているのがいまの社会なのか。