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「ザ・ガーデンズ東京王子」完成予想図

 三井不動産レジデンシャル・近鉄不動産・大和ハウス工業・三菱地所レジデンス・長谷工コーポレーションは9月16日、5社が共同で分譲している「ザ・ガーデンズ東京王子」の売れ行きが好調につき追加販売すると発表した。

 8月27日から9月3日まで第1期1次として今年の都内最多315戸を供給し、約300組の登録申し込みがあったため、第1期2次として9月下旬に追加供給する。

 物件は、JR東十条駅から徒歩5分、北区王子五丁目に位置する総開発面積約4.3haの全864戸。第1期1次(315戸)の価格は4,878万~7,588万円(最多価格帯5,900万円台)、専有面積は68.19~85.09㎡。5月からのモデルルーム来場者は約1,600組。

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 このマンションについては、別掲の記事を参照していただきたい。売れ行きがいいというのは業界内ではよく知られていたが、この種のプレスリリースが発表されるのは久々だ。300戸超の分譲で即日完売するのは当たり前だったからだ。

 ところが、ここにきて都心部も郊外部も市況が怪しくなってきており、リリースは売れ行きが好調であることをアピールし、秋の商戦につなげようとする狙いがありそうだ。

 今年の一挙供給の多さでは、相鉄不動産他「グレーシアタワー二俣川」が380戸を供給して好調なスタートを切った。

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 このリリースにタイミングよく、9月18日付の朝日新聞デジタルは、北区の魅力をPRするポスター「住めば、北区東京。」と、そのポスターを描いた漫画家・清野とおる氏を紹介している。漫画のタイトルは「東京都北区赤羽」で、「作者が主人公になり、赤羽を舞台に出会った人や発見したものなど多彩な魅力を独自の視点から取り上げた作品」(朝日新聞)だ。清野氏は13年前、板橋区から赤羽に引っ越したという。

 その「北区赤羽」のマンション坪単価は300万円をはるかに突破する。一般所得層が買えなくなってきている。東十条も取得限界にあるが、赤羽より坪数十万円は安い。「住めば、北区東京。」が効果を発揮することを期待したい。

 隣の区、板橋区(一部豊島区)では今から6年前、野村不動産が「プラウドシティ池袋本町」全785戸をわずか半年で完売して話題となった。来場者は12,000組に達した。最多価格帯は「東京王子」より約400万円安い5,500万円台だった。

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清野とおる氏が描いた北区の魅力をPRするポスター「住めば、北区東京。」の一つ

「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)は坪260万円台(2016/7/8)

記録的な一挙供給量380戸 「グレーシアタワー二俣川」は坪280万円(2016/8/22)

 

 

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「クレヴィア千鳥町」完成予想図

 伊藤忠都市開発は9月16日、ライフスタイルに合わせて間取りの設計変更や収納仕様、浴槽形状などを選択できる「カスタムオーダーメイド」を導入した「クレヴィア千鳥町」(総戸数61戸)のマンションギャラリーをオープンしたと発表した。

 物件は、東急池上線千鳥町駅から徒歩5分、大田区千鳥三丁目に位置する9階建て。専有面積は55.45~94.82㎡、竣工予定は2017年8月下旬。設計・監理は古沢建築工房。施工は鍜治田工務店。

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「ルピアージュ田無」

 ポラスグループの中央住宅は9月9日、同社2棟目の一棟リノベーションマンション「ルピアージュ田無」の記者見学会を行った。西武新宿線田無駅から徒歩10分の第一種低層住居専用地域に位置する全50戸で、5つのモデルルームから好みのプランを選べるのが特徴だ。

 物件は、西武新宿線田無駅から徒歩10分、西東京市田無町7丁目の第一種低層住居専用地域に位置する3階建て全50戸。専有面積は73.45㎡、第1期(3戸)の価格は4,198万円~4,548万円。坪単価は200万円強。建物は平成5年2月に竣工。施工は長谷工コーポレーション。改修は長谷工リフォーム。改修完了は平成29年2月中旬予定。販売代理は長谷工アーベスト。

 大手企業の社宅だったのをスケルトンでリノベーションし、共用部分・外構・植栽を一新。一部の住戸には最大52.85㎡の専用庭を設置。エントランスにはルーバーフェンスを設置。駐車場は38台分確保。

 住戸プランは、費用負担がかからないものから270万円の5つのモデルルームを用意し、好みのプランを選べるのが特徴。

 同社取締役マインドスクェア事業部長・金児正治氏は、「昨年分譲した『天王台』は残り3戸。いろいろなことを学んだ。今回はプランをパッケージ化して好みのものを選んでもらうようにし、施工したのが長谷工さんであり、今後の展開も考えて改修、販売代理も長谷工さんにお願いした。1棟リノベは『百合丘』21戸の仕込みも済んでおり、今後は年間2棟くらいを供給していきたい。事業部全体では来年度売り上げ100億円にチャレンジする」と語った。

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グランドエントランス

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 従前は大手企業の社宅で、建築確認が平成3年とあるからバブルがはじけた直後だ。分譲だったら坪単価は300万円近くしていたころだ。外観はタイル張りでバブル仕様であることをうかがわせた。

 ただ、同社が昨年分譲した「天王台」は90㎡が中心で今回は73㎡。ここに大きな差がある。企業の社宅に対する考え方や用途(幹部用か一般社員向けか)の差が出ているようだ。

 見学会で公開された5つのモデルルームは以下の通り。

①「Gathering House 笑顔のステーションを持つ家」(設計デザイン:中央住宅マインドスクェア事業部マンションDv、追加料金95万円)

②「SLOW HOUSE 包容力の豊かな家」(設計デザイン:中央住宅 マインドスクェア事業部女性チーム、追加料金115万円)

③「DECOR Houseデザインを魅せる家」(設計デザイン:中央住宅スタディ・スタイル一級建築士事務所、追加料金270万円)

④「DRESS HOUSE 優雅な時を奏でる家」(デザイン提案長谷工アーベスト、追加料金230万円)

⑤「Atelier HOUSE 『個』を大切にする家族の家」(デザイン提案:長谷工リフォーム、追加料金ゼロ)

 記者が一番いいと思ったのは①「Gathering House 」だった。モデルルームは8月27日からオープンされており、2週間で40組ある来場者の一番人気もこのタイプだそうだ。すでに〝十八番(おはこ)〟となっている〝ピアキッチン〟が標準装備されている。

 追加料金がもっとも高い270万円の③「DECOR House」は、建具や面材に「シナベニア」を多用し、コルク材の床、コンクリート打ちっぱなしの土間の提案など意欲的な作品ではある。世界的な流れを盛り込んだ企画意図もよくわかるのだが、「シナベニア」はいかにも「べニア板」仕様だ。同社が分譲する戸建てはいかにも「木」らしい素材感がある建具・家具を採用している。

 他のプランはオーソドックスなものだ。従前の間取りプランは、中央に玄関があり、北側に2住戸、南側にリビングと和室(洋室)に振り分ける平凡な田の字型プランだったと思われるが、今回も基本的にはそれを踏襲するものだ。世帯構成が激変し、ニーズも多様化している現在、もっと大胆な提案があってもよかった。5つのプランとも全て3LDKだった。

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①「Gathering House 笑顔のステーションを持つ家

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④「DRESS HOUSE 優雅な時を奏でる家」

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③「DECOR Houseデザインを魅せる家」

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②「SLOW HOUSE 包容力の豊かな家」

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⑤「Atelier HOUSE 『個』を大切にする家族の家」

ポラスグループ、“オールポラス”で初のリノベ 「天王台」はバブル仕様(2015/11/19)

 

 

 

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「Duo Veel銀座レジデンスギャラリー」

 フージャースコーポレーションがコンパクトマンションブランド「Duo Veel(デュオヴェール)」を立ち上げ、初弾の「Duo Veel飯田橋」「Duo Veel渋谷初台」の総合マンションギャラリー「Duo Veel銀座レジデンスギャラリー」を9月3日(土)にオープンした。

 マンション分譲事業で培ってきたものづくりのノウハウを生かし、女性ものづくりチームが中心となって商品を企画。メインターゲットとしている「都心でいきいきと、自分らしく働く女性」が快適に暮らせる住まいを提案する。

 今後、この2物件を含め秋葉原・学芸大学・上野松が谷・赤羽で計6物件約250戸(上記2物件含む)の供給を予定している。2021年3月期には年間供給約300戸のコンパクトマンションを手掛けていく計画。

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 このプロジェクトの説明会が9月28日(水)に行われるで、取材してレポートしたい。

 

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「アルファグランデ千桜タワー」完成予想図

 スターツグループのスターツデベロッブメントと安田不動産が分譲している「アルファグランデ千桜タワー」を見学した。神田や日本橋も徒歩圏の都営新宿線岩本町駅から徒歩1分、免震工法を採用した期間70年の定期借地権付きで坪単価は350万円。中堅所得層でも手が届く価格帯が評価され、好調な売れ行きを見せている。

 物件は、都営地下鉄新宿線「岩本町」駅徒歩1分、千代田区神田東松下町に位置する25階建て全276 戸(事業協力者住戸27戸、非分譲住戸65戸含む)。専有面積は56.14〜110.51㎡、坪単価は350万円。竣工予定は平成30年6月中旬。設計は山下設計・大成建設。施工はスターツCAM・大成建設共同企業体。事業主はスターツコーポレーション。売主はスターツデベロップメントと安田不動産。

 プロジェクトは、千代田区立千桜小学校の跡地と隣接の民有地を一体として開発するもので、区のコンペによって応募7社(グルーブ)の中からスターツグループが選定された。評価されたのは免震工法を採用したこと、建物の高さを抑え周辺環境に配慮したこと、防災機能を備え公開空地を確保したこと、定期借地権付きとしたスキームであること、周辺住民・地権者・住宅購入者・区のいずれにも偏らない計画であることなど。

 建物の1階から7階までは店舗、事務所、非分譲住戸で分譲住戸は8階以上。住戸は50~60㎡台の小家族向けから70~80㎡台のファミリー向けがバランスよく配置されているのが特徴。共用部分には江戸小紋や江戸切子をモチーフにしたデザインが施されている。最上階のプレミアム住戸は突板仕様の建具・壁が採用されている。

 これまで178戸が供給され、販売は極めて好調に推移している。

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 この前は、やはり期間70年の定期借地権付き「ブランズ世田谷中町」を紹介したが、今回もまた同じ期間70年の定借マンションだ。都心部や準都心部のマンションは地価・建築費の高騰で中堅所得層の取得が困難になりつつあるが、この二つのマンションは何とか手が届く範囲内だ。「千桜」は、3LDKが5,000万円台で取得できる。人気になるのも当然だ。

 現地は千葉周作の道場があったところだそうで、「神田東松下町」は「神田紺屋町」「神田東紺屋町」「神田鍛冶町」「神田北乗物町」などに隣接・近接しており、昔ながらの下町の風情が残っているところもある。きれいとは言えないが神田川もすぐ近くに流れる。

 広告表示では、岩本町駅まで徒歩1分(80m、広告表示では駅の出入り口までの距離を表示することになっている)だが、私道を通れば数十秒で行けるそうだ。記者はその私道を見つけられなかった。そもそも私道は許可なく立ち入ることは不可だ。土地所有者は黙認するのだろうか。

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エントランス

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「ブランズシティ世田谷中町」(右)と「グランクレール世田谷中町」完成予想図

 東急不動産が9月中旬に分譲する大規模複合マンション「ブランズシティ世田谷中町」を見学した。敷地規模が約1万坪(シニア住宅含む)の第一種低層住居専用地域に位置する低層マンションで、期間70年の定期借地権付き。同社の記念碑的なマンションの一つになるのは間違いない。

 物件は、東急田園都市線桜新町駅・用賀駅から徒歩15分、世田谷区中町五丁目の第一種低層住居専用地域に位置する4階建て6棟構成の全252戸。専有面積は70.58~90.98㎡、予定価格は5,800万円台~9,400万円台(最多価格帯6,600万円台)、坪単価は308万円。期間70年の定期借地権付き。竣工予定は2017年7月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。

 現地は、NTT東日本の社宅跡地。敷地規模1万坪超の第一種低層住居専用地域に位置するマンションは、世田谷区内では過去に三井不動産他「パークシティ弦巻」しかなく今回は2件目。

 街づくりコンセプトは〝LOVE &INNOVATION〟。米国・ポートランドの街を参考に世代が交流しあう循環型のモデルシティを目指す。東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」第一号案件でもある。

 分譲マンションのほかに、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」(サービス付き高齢者向け住宅シニアレジデンス176戸・ケアレジデンス75戸)と、グランクレールの敷地にはコミュニティサロン、カルチャールーム、介護事業所、認可保育園が併設される。コミュニティサロンは東京都市大学と連携して様々な空間設計・プログラム企画を行う。

 「ブランズシティ世田谷中町」は全住棟が南東向き。各棟の間にはシーズンプロムナード、プライベートキッチンガーデン、キッズベース、ハーヴェストガーデンなどを整備。五感で感じる自然を演出し、みんなが集まる仕掛けを施す。用賀駅への直通専用シャトルバスも運行する。

 住戸は70㎡台のファミリー向けが中心。御影石のカウンターキッチン・洗面カウンター、ミストサウナが標準装備。

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シーズンプロムナード

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 上野毛駅近くに設けられているゲストサロンに入ってすぐ、回転すしの小型コンベアに老若男女、様々な生活シーンを描いた工作物が流れているのが目に飛び込んできた。壁の棚には米国・ポートランドのグッズが並べられていた。

 「循環型モデルシティ」のコンセプトが集約されており、なかなかいい仕掛けだと感心したら、その奥の模型もまたよくできていた。先週は約4.7haの第一種低層住居専用地域の野村不動産「プラウドシティ阿佐ヶ谷」を見学し、その圧倒的な緑に驚いた。今回はそれより規模は小さいが、1万坪に広がる4階建ての美しいスカイラインが表現されていた。

 定期借地権付きというのもいい。プランはショートスパンの70㎡台の住戸も少なくはないが、だからこそ、普通のサラリーマン層でも容易ではないが何とか手が届く価格帯になるのではないか。所有権分譲だったら、坪単価は300万円台の後半になっていたはずだ。

 見学しながらずっと同社の他の大規模マンションと比較して考えていた。最近ではタワー型の「みなとみらい」が出色だったが、中低層型のマンションでは2001年竣工の「東急ドエル イディオスあざみ野」(321戸)が真っ先に浮かんだ。確か大手銀行の社宅跡地だった。

 今回はNTTの社宅跡地だ。シアターやパンフレットには「ブランズの集大成」とあったが、間違いなくそう言える。同社の記念碑的マンションの一つに加えたい。

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コミュニティサロン

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ゲストサロン

東急不HDグループ 「世田谷中町プロジェクト」で東京都市大と産学連携(2016/8/9)

 

 

 

 

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「レーベン府中西府」完成予想図

 タカラレーベンが分譲中の「レーベン府中西府」を見学した。JR南武線西府駅から徒歩1分の全48戸で、坪単価は230万円。4月から販売しており、8月26日時点で28戸が成約済み。コンスタントに売れている。

 物件は、JR南武線西府駅から徒歩1分、府中市西府町1丁目に位置する7階建て全47戸。専有面積は43.49~87.98㎡、坪単価は230万円。竣工予定は平成29年1月下旬。施工は埼玉建興。設計・監理はトータルブレイン。売主は同社のほか三信住建。

 現地は、2009年に開業した西府駅のすぐ前。道路を挟んだ対面にはスーパーがあり、保育園へは徒歩1分、小学校は徒歩2分の立地。

 住戸は南東向きと南西向き。二重床・二重天井、食洗機、超微細な気泡により洗浄力が高く温浴効果もある「たからのバブルマイクロトルネード」が標準装備。

 4月から販売開始されており、これまでに地元住民中心に28戸が販売済み。

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 西府駅圏のマンション取材は約3年前、三信住建が分譲して早期完売した「プレミアムレジデンス府中西府駅前」45戸以来だが、今回はその隣接地。当時、まだ空き地だった対面にはスーパーもあった。

 坪単価230万円は当時の200万円強から高くはなっているが、これも地価・建築費の上昇を考えるとやむを得ないのかもしれない。

 モデルルームは、同社の他のマンション同様かなり派手だが、一つの提案としては面白い。

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 ここ最近ずっと考えているのは、どうしたら郊外マンションが売れるかということだ。念頭にあるのは一般的な夫婦と子どもが1~2人の家族が無理なく取得できる「3,500万円以下のファミリーマンション」だ。居住面積を70㎡とすると、坪単価165万円以下だ。

 この坪165万円以下というマンションはこのところの地価・建築費の上昇でほとんど絶望的になってきている。これが記者を悩ませている。

●マクロデータ

 マクロデータでみてみよう。

 まず、首都圏マンション市場の概観から。不動産経済研究所(不動研)の調査によると、2016年上半期(1~6月)の首都圏マンション市場動向は、①供給量が前年同期比19.8%減の14,454戸となり、微増となった埼玉県以外の都県は二ケタ以上の大幅減②初月契約率は平均68.4%で、前年同期の76.1%より7.7ポイントダウン。上半期としては7年ぶりの70%割れ③1戸当たり価格は5,686万円で、430万円(8.2%)の上昇④3.3㎡(1坪)当たり単価は270万円で、前年同期より22.8万円(9.2%)上昇――などとなっている。

 郊外マンションの価格動向については、2015年の平均分譲価格(坪単価)は神奈川県が5,080万円(238万円)埼玉県が4,295万円(196万円)、千葉県が4,050万円(180万円)となっており、2016年上半期も上昇傾向が続いている。

 供給量も激減している。これまでもっとも供給量が多かった2000年(全体で9万5,635戸)には神奈川県の供給量は約25,000戸で、埼玉、千葉県は約10,000戸だったのが、2015年には神奈川県が約8,000戸で、埼玉県も千葉県は4,000戸を割り込んだ。

 こうした結果、2000年は全供給戸数のうち34.2%に当たる3万2,754戸が66㎡以上で3,500万円以下のファミリー向けマンションだったのが、最近では戸数も比率も減少し、その比率は20%を割り込んでいると思われる。

 これほど市場が縮小しているのは需要がないからではない。国土交通省の調査によると、全国の住宅不満は平成5年の35.4%から平成25年には22.1%へ13.3ポイントも改善はしているが、マンションの主な需要層である賃貸居住者の住宅不満は50%を超えるはずだ。賃貸の質が劣っているからマンションへの移住を考える〝賃貸脱出派〟が分譲市場を支える構造に変化はない。

 それでも需要が潜在化したのは、供給サイドが需要に見合う商品を供給できないからだ。住宅ローン金利が2.95%(固定金利選択型10年)と史上最低水準にあり、それだけ買いやすさは増しているものの、借金をすることに変わりはなく、将来の経済・雇用不安などの理由から需要が顕在化してこないというのが現状だ。

●プレーヤー

 次にマンション市場のプレーヤーの動向について考えてみる。

 長谷工コーポレーションの「CRI」の調査によると、大手デベロッパー7社の今年上半期の供給量は7,678戸で、前年同期比5.1%減だ。

 大手のメインターゲットは富裕層・アッパーミドルだ。大手が後半供給を伸ばすかどうかわからないが、昨年の1万6,961戸(全体に占める供給比率41.9%)を下回ると見ている。タワーマンションの供給が増えそうになく、中堅所得層向けの一部の物件で売れ行きが芳しくないからで、年間では1万6,000戸を下回るのではないかと見ている。

 一方で、中堅のメインターゲットは第一次取得層だ。後半戦のカギを握るのは、この第一次取得層向けのマンションが売れるかどうかにかかっているのだが、これは悲観的に見ざるを得ない。中堅の供給シェアはリーマン・ショック前の2007年は73.4%だったのが昨年は58.1%にまで低下している。大手の寡占化が進行し、全体として大手の動向に左右されるのが中堅だ。

 どちらかと言えば、大手は大量宣伝・大量集客によって需要を喚起し、地引網のように顧客を獲得する戦法を得意とする。中堅はこの戦法が取れない。徹底した差別化を図り、きめ細かな対応で大手と互角に戦ってほしいと願うほかない。

●社会・経済状況の変化

 需要が顕在化しない理由を、社会・経済状況からアプローチした。

 最近の労働力調査では就業者、就業率、失業率などの数値は改善が見られるが、正規・非正規の雇用形態に変化はそれほどみられない。

 総務省の調査によると、1990年に881万人だった非正規雇用者数は、2015年に1980万人と2倍以上になっており、正規・非正規雇用者の合計に占める割合は1990年の20.2%から2015年には37.5%へと2倍近く上昇している。正規は1990年代の半ば以降ほぼ一貫して減り続けている。

 一般労働者(正社員・正職員)の平均賃金1,958円/1時間であるのに対して、正社員・正職員以外の平均賃金は1,258円/1時間とかなりの差がある。非正規雇用の増加は高齢者だけでなく、全階層でも増加しているのが特徴だ。

 世帯構成も激変している。1980年(昭和55年)には専業主婦世帯1,114万世帯に対し共働き世帯は614万世帯だったのが、2015年(平成27年)では共働き世帯が1,114万世帯なのに対し専業主婦世帯は687万世帯となっており、ほぼ正反対の関係になっている。

 少子化が進んでいるのに待機児童・学童保育問題が大きな課題になっているのは、このようにバブル経済の崩壊による経済・社会構造が一変したからだ。

 これら就業のあり方も含めた雇用の問題、待機児童・学童保育の問題を解決しないと、第一次取得層向けマンション市場の本格回復は難しいと言わざるを得ない。

●若年層の意識

 若年層の意識はどうか。厚労省の2013年時点で若年層(15~39歳)の意識調査では、現在の生活に「満足している」「どちらかといえば満足している」人の割合は約6割にのぼる。その理由は、経済的な豊かさ(5.7%)より精神的な充実(82.6%)を挙げる人が圧倒的に多い。

 一方で、日本の未来は明るいかという問いでは、「(どちらかといえば)そう思わない」と回答した人が45.1%と半数近くを占め、「(どちらかといえば)そう思う」と回答した人(19.2%)の倍近くある。

 不安の理由は、財政悪化や社会保障制度に対する不安を挙げる人が72.9%にのぼり、経済不安(60.9%)、雇用不安(49.2%)などとなっている。

 経済的な豊かさより精神的な充実に重きを置き、いまの生活には満足している一方で、社会保障制度、経済不安、雇用不安などから明るい展望を持てない若年層の姿が浮かび上がる。

 さらに、若年層の意識を探るのに何か手がかりがつかめるかもと思い、第155回芥川賞を受賞した36歳の村田沙耶香氏の「コンビニ人間」を読んだ。村田氏の体験をもとに描かれた小説で、主人公は、コンビニで働いているときだけ存在感が感じられる36歳の恋愛経験のない独身女性だ。

 読んでみてさっぱり理解できなかった。選考委員の山田詠美氏が「十数年選考委員をやってきたが、候補作を読んで笑ったのは初めて。そして、その笑いは何とも味わい深いアイロニーを含む」と語っているが、記者はどうしてこのような作品が選ばれるのかということも含めて「訳が分からない」というのが正直な感想だ。奥泉光氏の「主人公の孤立ぶりには慄然とさせられる」や、村上龍氏の「(主人公は)実はどこにでもいる」という選評に近い。

 芸術作品も時代を反映するとすれば、「コンビニ」の内も外も狂っているのがいまの社会なのか。

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「ジ・オーシャンテラス豊崎」完成予想図

 大和ハウス工業(事業比率50%)・大京(同40%)・コスモスイニシア(同10%)は8月26日、沖縄県豊見城市のマンション「ジ・オーシャンテラス豊崎 シーサイドテラス」を8月27日から販売開始するのに伴い、東京サテライトオフィス「東京インフォメーションサロン」でVR(仮想現実)を用いて沖縄での暮らしを疑似体験できるプレゼンテーションシステムを導入すると発表した。

 同システムを導入するのは、昨年12月から分譲を開始し、早期完売した「ジ・オーシャンテラス豊崎 サンセットテラス」(102戸)でも首都圏から沖縄への移住・セカンドハウス需要があると見込み、「東京インフォメーションサロン」で営業活動を行った結果、契約者の約7割が県外居住者(うち約5割が首都圏居住者)だったことによるもの。

 VRは、那覇空港に到着後、夫婦二人で「美らSUNビーチ」を散歩したり、海の家での食事、子世帯とのバーベキューなど楽しんだりするシーンが約3分間にまとめられている。

 「ジ・オーシャンテラス豊崎」は、沖縄県豊見城市字豊崎に位置する14階建て全102戸。専有面積は63.21~113.68㎡、予定価格は2,600万円台~8,900万円台、坪単価は185万円の予定。設計・施工・監理は大林組。竣工予定は2017年9月下旬。

 「東京インフォメーションサロン」は都営大江戸線大門駅から徒歩1分、港区浜松町2丁目の浜二ビル2階。

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「東京インフォメーションサロン」

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使用イメージ

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 ニュース・リリースの多さでは他のハスウメーカーやデベロッパーを圧倒する大和ハウスだが、マンションのモデルルーム見学会はほとんど皆無だ。今回もモデルルームはなし。VR体験サロンの開設を告知する発表会だったが、それでも多くのメディア関係者が駆けつけていた-デベロッパーはまずこれほど集まらない-さすが大和ハウスというべきか。記者自身は、これまでもVRに似たようなものを体験しているので、それよりも沖縄のマンション市場の実態を聞くのが主な目的だった。

 その成果は十分得られた。驚いたのは売れ行きと県外購入者比率の高さだった。昨年末から分譲開始した「ジ・オーシャンテラス豊崎 サンセットテラス」(102戸)は坪単価160万円で半年もたたずに完売。現地を見ないで購入した人も17人いたという。

 購入者の居住地は県外が65.4%を占めた。購入目的はセカンドハウスが50%を占め、資産運用が15%、居住用が35%だ。セカンドハウス用に購入した人は、50~60歳代が中心で、リタイア後の移住を考えている人も多いというのが特徴のようだ。これは明らかに首都圏近郊のリゾートマンション市場と異なる。

 そして今回の「シーサイドテラス」。単価は明らかにされていないが、「サンセット」より15万円高い185万円くらいに設定される模様だ。これまたすごい。同社は数年前、オリックス不動産、大京の3社同社の30階建て「RYU:X TOWER(リュークスタワー)」全676戸を坪170万円で早期完売した実績があり、マーケットを熟知しているからこその今回の単価設定になったのだろう。

 発表会で同社マンション事業推進部販売推進部部長・土井徹氏は、沖縄県での事業展開について「今後も年間200戸くらいを供給していきたい」と話した。沖縄での絶対的なシェアを占めようという戦略だと理解した。同県での実績が豊富な大京と組むのもそのためだろうと読んだ。

 VRそのものについては、とてもよくできている。以下、VRの画像。同社には各階からの眺望が疑似体験できるものも開発してほしい。

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那覇空港に到着(左)と「美らsunビーチ」を散策

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アウトレットモール(左)とオーシャンアクティビティ

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「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」完成予想図

 極めて売れ行きがいい郊外大規模複合マンション「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」を紹介する。売主は京阪電鉄不動産(事業比率55%)、相鉄不動産(同40%)、長谷工コーポレーション(同5%)で、JR武蔵野線、北総線・成田スカイアクセス線東松戸駅から徒歩2分の全382戸。今年4月から販売されており、これまでに160戸が供給されており、140戸が契約済みだ。来場者は約550件で、歩留まりが実に25%にも達する。人気の要因は都心の東京、大手町へ30分圏内という利便性と、坪単価170万円、グロスにして3,500万円台という買いやすさにある。

 物件は、千葉県松戸市東松戸二丁目に位置する19階建て全382戸。9月中旬分譲予定の第2期2次(戸数未定〉の専有面積は57.53~83.57㎡、予定価格は2,400万円台~4,500万円台(最多価格帯3,400万円台)、坪単価170万円。施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2018年1月。販売代理は相鉄不動産販売、長谷工アーベスト、フージャースコーポレーション。

 敷地の縁から建物を1~3mセットバックさせて、ケヤキやサクラなどの並木道を整備し、モール棟にはスーパー、ドラッグストア、クリニック、カルチャースクールなどを誘致する商・住・医一体の大規模複合開発であるのが最大の特徴。

 東京駅や大手町駅へ30分圏というアクセスのよさと、駅から徒歩2分の立地の良さが人気になっており、今年4月からこれまでに140戸が契約済みだ。来場者は約550件で、歩留まりは25%にも達する。集客は地元松戸市が45%、市川市が10%、船橋市7%など。

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 東松戸駅のマンションを見学するのは実に10数年ぶりだ。藤和不動産(現三菱地所レジデンス)の駅前のマンション以来だ。「寅さん」の舞台になった新柴又、伊藤佐千夫の「野菊の墓」に描かれている「矢切」を通りながら、いつものように坪単価を考えた。

 藤和のマンションは140万円くらいだったか。数年前までならせいぜい150万円のエリアだ。しかし、このところの用地・建築費上昇を考えると170万円以上で、180万円くらいではないかと予想を立てた。

 現地で対応してもらった京阪電鉄不動産首都圏事業部東京営業部所長・高橋和寿氏から「いくらだと思いますか」と逆取材されたので、その通りに答えたら「170万円です」と返ってきた。予想した最低ラインだった。

 この単価を聞いて小躍りするくらいうれしくなった。同社の販売姿勢をほとんど一瞬にして理解できたからだ。高橋氏の言葉を紹介する。

 「第一次取得層の取得限界は3,500万円というのがわたしの信念のようなものですが、このエリアは坪単価140~150万円で、居住面積は80㎡というのが主流でした。まずまずの売れ行きを見せてきました。ところが、このところの価格上昇で、土地代がただでも150万円は難しい。そこで、購入者の方には申し訳ないが、面積を70㎡に抑え、基本性能は守りながら設備仕様も落としました。長谷工さんにも工事代を抑えていただき、私どもも利幅を抑えました。つまり三方一両損なんです」

 確かに高橋氏が言うように設備仕様は高いとは言えない。ディスポーザは標準装備だが、食洗機はオプションだしスパンは6mが中心だ。

 しかし、三方一両損を選択して〝3LDKで3,500万円〟を死守する姿勢がうれしいではないか。この姿勢がユーザーに支持されたことは歩留まりが25%という数字に表れている。

 京阪電鉄不動産はこの「東松戸」のほか、「ファインシティ王子神谷リバー&フォレスト」(319戸)でも坪単価160万円に抑え、これまでに120戸を成約し、この秋には南武線尻手でも3,500万円台の338戸を供給する。

 高橋氏は「この3物件だけで今年は1,000戸を超える。首都圏では初めて。3,500万円のコンセプトを守り、+αをつけて業界を元気づけたい」と話した。

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 社内の若いスタッフに「矢切の渡しって知ってる? 」と聞いたら「山口百恵」と返ってきた。ネットで調べたら確かに山口百恵さんの歌にあった。我々の世代はみんな「野菊の墓」を読んだ。若い方に是非読んでいただきたい。文庫本で数百円だろうし青空文庫でも読める。青空文庫より一節を紹介する。

 「船で河から市川へ出るつもりだから、十七日の朝、小雨の降るのに、一切の持物をカバン一個につめ込み民子とお増に送られて矢切の渡へ降りた。村の者の荷船に便乗する訣でもう船は来て居る。僕は民さんそれじゃ……と言うつもりでも咽がつまって声が出ない。民子は僕に包を渡してからは、自分の手のやりばに困って胸を撫でたり襟を撫でたりして、下ばかり向いている。眼にもつ涙をお増に見られまいとして、体を脇へそらしている、民子があわれな姿を見ては僕も涙が抑え切れなかった。民子は今日を別れと思ってか、髪はさっぱりとした銀杏返しに薄く化粧をしている。煤色と紺の細かい弁慶縞で、羽織も長着も同じい米沢紬に、品のよい友禅縮緬の帯をしめていた。襷を掛けた民子もよかったけれど今日の民子はまた一層引立って見えた」(青空文庫より)

 

カテゴリ: 2016年度
 

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