「子育て」と「住まい」を考える情報サイト立ち上げ 野村アーバン
野村不動産アーバンネットは1月29日、「子育て」と「住まい」を考える情報サイト「ノムコムwith Kids」(http://www.nomu.com/withkids/)を開設した。
同社の子育てママ社員の提案で誕生したもので、サイト制作、コンテンツ企画やイベントなどはすべて子育てママ社員が担当。子育て世代の住みかえを「楽しく」「学んで」「探せる」よう工夫を凝らしている。
今後実施する座談会やセミナーなどのイベント企画にも、住みかえの最前線で働くママ社員を含めた当社の子育てママ社員が参加していく予定。
現在、住宅の購入検討者を中心に構成する「ノムコム」会員約25万人のうち、20歳代・30歳代の子育て世代が6割以上を占めている。
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「ノムコムwith Kids」をのぞいてみた。いきなり「色育」が目に飛び込んできて面食らった。こんな言葉があることすら知らなかった。
「新築がいいか」「中古がいいか」は女性が好みそうなテーマだ。ひとそれぞれで好きな方を選べばいいとは思う。中には「中古は絶対イヤ」という女性は多いが、そのような人を説得するのは難しい。反論する元気もない。
しかし、現実的にはそんなに選択の幅は広くないと思う。新築だって劣悪なものもあるし、中古にも新築以上に優れた物件もある。よく比較検討すればいい。どんな住まい方をしたいかでも答えは変わってくるはずだ。自分を縛らない方がいい。
ついでなので、中古物件の表示についてひと言。ネットでもチラシでも、中古マンションの分譲時の売主、建設会社の表示は、圧倒的に表示されないほうが多いように思う。不動産公取規約に定めもない。しかし、果たしてこれでいいのか。
ずっと新築市場を取材してきた記者は、分譲会社がどこかは欠かせない情報だと思う。分譲会社によってデザイン、外構、基本性能、設備仕様は明らかに異な る。だからこそ、デベロッパー各社の営業マンは他社との違いをアピールできる。中古市場でもその違いは変わらないはずだが、広告には表示されないほうが多 い。なぜなのか。
そこでもう一度、「ノムコムwith Kids」に戻る。女性がファッションや食べ物などと同じように、いやその半分でもいい、マンションのブランドにこだわればマンション業界は間違いなく変 わる。基本性能、デザイン、設備仕様など商品企画の一層の差別化を考えるはずだ。女性の厳しい評価が中古市場でもされるようになれば、中古市場も変わる。
「野村の仲介+」の広告が言うではないか。「ただ住まいを探すだけなら、不動産仲介なんていらないと思う。」と。新築の〝プラウド〟が評価されているように、〝ノムコム〟が同じような高い評価をえるよう挑戦して欲しい。
ポラス 第2回 学生・建築デザインコンペ 応募者募集
ポラスグループは1月31日(日)から4月30日(木)まで、「時のかさなり」をテーマにした第2回POLUS 学生・建築デザインコンペティション」応募作品を受け付ける。
昨年、同社グループ創業45周年の記念事業として第1回コンペを行っており、458件の応募があった。応募作品は実物件への具現化される可能性もある。
応募資格は、2015年4月1日時点で大学院、大学、短期大学、専修学校(各種学校)、高校の学生・生徒。1棟から最大10棟の木造建築物の提案をすること。
応募登録は公式HP〈http://www.kenchiku.co.jp/polus〉で。
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「時のかさなり」-難しいテーマだ。記者などはすぐ間取りの可変性や今流行の「シェア」などを思い浮かべるが、そんなありきたりの提案では審査員の先生方の心を揺り動かすことはできない。変わるものと変わらないもの。いま国交省で「日本らしく美しい景観」が論じられている。これはヒントにならないか。学生・生徒の皆さん、頑張ってください。
「地方創生」「販売促進」 一石二鳥の大和ハウス「東京駅ふるさと元気館」
「東京駅ふるさと元気館」
大和ハウス工業が1月24日(土)にオープンした、ふるさと応援ショップ「東京駅ふるさと元気館」を見学した。首都圏在住者に地方都市の観光・生活情報を紹介しつつ、同社の全国の分譲マンション情報を提供すもので、安倍政権の「地方創生」が重要課題の一つになっており、「ふるさと納税」にも関心が高まっている折から時宜にかなった一石二鳥の取り組みだ。
場所は、JR東京駅北口改札口から歩いて1~2分、駅構内1階キッチンストリート内。広さは約40㎡。一都三県を除く43道府県の観光情報などがパネルや幟、ポスター、映像で紹介されており、各自治体のアンテナショップの紹介、各県の銘菓の配布も行なわれている。コーヒーもふるまわれる。
さらに、宅建業法の「案内等」の規定により標識も掲げ、 同社が現在14道府県で分譲しているマンションのチラシ、パンフレットなどを備えている。
出身道府県、住みたい道府県、行って見たい道府県などを答えるアンケートも行なわれている。
東京駅を利用する首都圏在住者に対して、各自治体とタイアップしながら、その地方の魅力を発信し、さらに地方都市圏で展開する同社の分譲マンションを紹介することで、地方へのUIJターンを支援し、地域活性化をサポートするのが狙い。
同社マンション事業推進部企画室専任部長で今回の取り組みについて43道府県東京事務所との折衝等を担当する島田安夫氏(60)は、「世のため人のためは当社の伝統。地方創生に貢献するために、全国のふるさとの思いを込めた。ここは93日で終了するが、常設館も検討している」と話した。
奥さんらしい女性とソファに掛け休んでいた男性(88)にも声を掛けた。「今日は孫の卒業式で、岩手県平泉からやってきた。米寿だよ。ダイワハウス? 知ってるよ、盛岡にマンションがある」と語った。
オープンしてから1日当たり120~130人が訪れ、半数くらいがアンケートに答えているという。4月26日(日)まで93日間の期間限定だが、同社では常設館も検討しているという。
石川県七尾市出身の島田氏は七尾市の観光法被を着ていた
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一通り見学して帰ろうと思ったとき、石川県七尾市の観光法被を着た男性が来館者と談笑していた。新幹線が開業するので、勧誘のため現地から駆け付けたのだろうと思い声を掛けた。
そうではなかった。この人こそ島田氏だった。ハウスメーカーの社員にしておくのがもったいないほど法被姿が板についていた。それもそのはず、島田氏は七尾市出身で、「いしかわ観光特使」の名刺も持っていた。
旧知の仲であるかのように二人であれやこれや話し合った。一つひとつ紹介できないが、同社が金沢で分譲している「プレミスト香林坊」(113戸)は目の前に「四高記念公園」が広がり、その先の金沢城公園、兼六園につながっている加賀百万石の一等地だ。わが街多摩センターと同じ単価200万円には驚いたが、高いほうから売れているという。
賃料は「ここは東京の一等地ですよ」と具体的な数字は明かしてくれなかったが、別の場所での常設館を検討しているという。「課題もいろいろ見えてきた。ビジネスに発展できるかも」と、次の秘策を練っているようだった。
記者は本格的に「地方創生」と「マンションの販売促進」を図るのであれば、もっと充実させてもいいと思った。売り上げが3兆円に迫ろうかという企業だ。これくらいのPRを兼ねたCSRはやっていい。
一般のお客さん相手の同社グループの不動産流通業の日本住宅流通の店舗数は首都圏では数えるほどしかない。デベロッパーは三井不動産、三菱地所、住友不動産がワンストップの店舗展開をここ2、3年の間に進めてきた。同社は「地方創生」の大きな看板も掲げた。ポーズだけならやらないほうがいい。安倍総理がびっくりするように徹底してやっていただきたい。
もちろんアンケートにも答えた。出身は「三重県・伊勢」で、「住みたい県」1位は「三重県」で、2位は「高知県」。酒がおいしく、四万十川のアユや土佐清水の鯖寿司がおいしいこともあるが、先日亡くなられた作家・宮尾登美子さんの出身県だからだ。3位はやはり好きな作家・丸山健二さんの出身県の「長野県」。
「行ってみたい県」は島田さんの出身県の「石川県」。もう一度「加賀屋」に泊まってみたい。2位はやはり「京都」。3位は「行ったことがない県」(8道県)にした。知らないところはどこでもいい。
また、期間中に訪ねてレポートしたい。
わが故郷・三重県を含む各道府県のポスター(10枚しか掲げられないので1週間サイクルで43道府県すべてを掲げるという)
各道府県の観光案内コーナー(三重県は小さな「三重テラス」のみ。奥ゆかしいのはいいのだが…他は2~5倍ぐらいあった)
三井不レジ 既分譲の戸建て「ファインコート」に「エネファーム」導入促進
戸建て用「エネファーム」
三井不動産レジデンシャルは1月28日、首都圏の東京ガス供給区域でこれまでに供給してきた分譲済戸建「ファインコート」(対象:15,110戸)の居住者に家庭用燃料電池「エネファーム」の導入を促進すると発表した。
同社は昨年3月、首都圏の東京ガス供給区域で供給する「ファインコート」の全戸に東京ガスの「エネファーム」を標準採用することを決定している。
4人家族を想定した試算によると、電気と都市ガス給湯器からの給湯を行なう方式と比べ、定格発電時にCO2排出量を約49%削減、一次エネルギー消費量を約37%削減でき、年間の光熱費を約5~6万円節約、年間のCO2排出量を約1.3トン削減できる。
希望小売価格(税別、設置工事費別)は190万円(燃料電池ユニット・貯湯ユニット・バックアップ熱源機・据置台・リモコンセット含む)。10年間の無償メンテナンスサポート付き。
戸建て、マンションの居住形態が意識を左右するか 三井ホームが調査報告会
「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」
三井ホームの企業内研究所「住まいと暮らし研究所」は1月28日、日本女子大家政学部居住学科定行研究室教授・定行まり子氏、三井不動産レジデンシャル、三井不動産リフォームと共同で研究を行ってきた「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」を開催した。
三井不動産グループの住宅を購入した人を対象にしたアンケートでは、「住まい」への愛着について戸建て居住者は「住空間」に、集合住宅居住者は「生活の利便性」に愛着を感じ、今後の住まいの選択意識については、戸建て居住者は多様な選択肢を持ち、集合住宅居住者は住み替え後も集合住宅を希望する傾向が強く、終の棲家のイメージでは、注文住宅、建売住宅、集合住宅居住者とも約42~48%が「夫婦二人」と答えた。
〝夢は庭付き一戸建て〟という住宅双六については、「いまだ残っているともいえるが、意識は薄れている」としている。
報告書は、「戸建て住宅派」「集合住宅派」ともに多様なニーズに応え、時を経ても資産価値が維持される住まいづくりと、環境づくりに業界全体で取り組む必要があるとまとめている。
報告会で挨拶した定行氏は、「わたしどもの大学もそうですが、三井さんグループの個々のデータをつなぎあわさればビッグデータになり、いい指導ができ、政策決定がスムーズに行える。これから人口減少、空き家の増加など多くの課題を抱えているが、生きるすべである生活の基盤の住まいづくりに研究成果を生かし、次につなげていきたい」と語った。
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なかなか興味深い報告会だった。終の棲家のイメージが「夫婦二人」というのは納得もしたが、「考え中、思いつかない」「のんびり、ゆっくり」がそれぞれ15~26%あり、「子の世話になる」は回答があったのかなかったのか、少なくとも報告はされなかったのには考えさせられた。報告を行った同社商品開発部長・吉澤敏幸氏か「これは私の考えだが、商品企画でいつも思うことだが、みんな将来のことをあまり考えない。せいぜい5年先くらい」と語ったのが印象的だった。時代は変わったということか。
報告に対する疑問もあった。今後の住まいの選択意識についてだ。報告では、戸建て居住者は「リフォーム」(23.5%)「住み替え」(21.0%)「予定なし」(22.9%)「今は思いつかない」(27.2%)「建て替え」(5.4%)など選択肢が広く、集合住宅居住者は「住み替え」が圧倒的に多く52.0%に達し、住み替える居住形態も「分譲マンション」が81.4%と突出して高いとしている。
つまり、居住形態によって夢が異なってくるとしているのだが、記者は居住形態ではなく、将来の住まいに夢が描けるのか描けないのか、経済・資産状況によって選択肢はおのずと限られてくる現実の反映だろうと考える。
住宅双六も同様だ。われわれ日本人には「庭付き戸建て」の夢は心の隅にあるはずだが、少なくとも首都圏の利便性の高い地域に戸建てを取得できる層は数%しなないのではないか。都内23区ではマンションすら買えない時代になってきた。
もう一つ。面白いと思ったのは、アンケート回答者1,474の戸建てと集合住宅(マンションが圧倒的に多いはず)の比率だ。半々であることが報告された。
対象者は三井ホームと三井不動産レジデンシャルの顧客だが、三井ホームの顧客は約20万件であるのに対し、三井不動産レジデンシャルサービスが管理するマンションは約23万戸だ。分譲戸建ては数万戸あるはずで、マンション・分譲戸建て合計で30万戸を突破するのは間違いない(アンケート対象は首都圏で、すべてに用紙を送付したわけではないだろうが)。
注文と分譲の比率は2:3だから、アンケートの分母もその通りになるはずなのにそうなっていない。これは記者の推測だが、注文は、建てる側にしてみれば「希望通り」の家を建て、メーカーも「建ててからお付き合いが始まる」という意識が強く、これが顧客満足につながり、回答数に反映されたのではないかと。一方の分譲は、いまは各社とも顧客とのつながりを重視しているが、これまでは「事業離れ」(死語になっていないはず)という言葉に象徴されるように、購入者とのつながりを遮断するところも少なくない(三井がそうだと言っているわけではないが)。その結果が、アンケートの数字に表れたのではないか。
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定行氏(左)と吉澤氏
記者はこのような会見などはいつも後方の席に座る。ところが、今日の報告会は最前列しか空いておらずやむをえず定行氏と吉澤氏と向き合う形になった。吉澤氏とはこれまでもお会いしているのだが、定行氏とはどこかでお会いしたような声を聞いたような既視感にとらわれた。
なぜだろうとずっと考え、社にもどって確認した。既視感ではなく、一度お会いしていた。つまり記者が耄碌したということだ。2011年10月に行われた「多摩ニュータウン大規模団地問題検討委員会」の会合で定行氏は感動的な講義・講演を行っている。その時の記事を紹介する。
「『極めて意義深い』(上野委員長)『感銘を受けた。目がうろこ』(白岩委員)『他の地域との連携、広いエリアとしての多摩ニュータウンの価値を考えさせてくれた』(炭谷委員)『八王子にも500人の待機児童がいる。参考にさせていただきたい』(岡部委員)『地に足がついたプレゼン』(西浦委員)など、各委員から大喝采を浴びた」
この大喝采を浴びた人こそ定行氏だったのだ。各委員はそんじょそこらの人ではない。一癖も二癖もありそうな経験豊富な大学の先生方ばかりだ。その時、記者はこう書いた。「もちろん記者も感動したのだが(というより記者席と各委員の席はかなり離れており、さらに記者の目が悪くなり、耳が遠くなったのか、マイクがよく聞こえず、プロジェクターもよく見えず、報告の半分は聞き取れなかったのだが)」と。
そんなわけで、定行氏の講義は他の先生方の心を打ったのだろうが、記者はほとんど聞き取れなかったので記事には書けなかった。
これはあり得ない 「不動産価格は下がる」16.8% 野村アーバン調査
野村不動産アーバンネットは1月26日、同社の不動産情報サイト「ノムコム」の会員を対象にした「住宅購入に関する意識調査(第8回)」の結果をまとめ発表。「不動産の買い時感」については「買い時だと思う」「どちらかと言えば買い時だと思う」を合わせ53.5%で、前回調査(2014年7月)とほぼ同結果となった。有効回答数は約1,800人。
「買い時」と思う理由については、「住宅ローンの金利が低水準」が最も多く73.4%で前回調査から17ポイント増加、「今後、10%への消費税引き上げが予定されている」が41.5%(前回比0.6ポイント増)、「今後、不動産価格が上がると思われる」が34.2%(同12.5ポイント減)、「購入する上で税制などのメリットある」が21.5%(同3.2ポイント増)と続く。
「買い時だと思わない」の回答は23.8%で前回調査から3.6ポイント増加。「不動産価格は下がると思う」の回答は16.8%と前回調査から5.2ポイント上昇。
中古住宅購入検討者のうち、「購入時にリフォームすることを考えている」という回答は75.3%だった。
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記者は、よほど余裕のある人を除き、買わざるを得ない切羽詰まった状況にあるので「不動産はいつも買い時」だと思っている。なのでコメントしないが、今後「不動産価格は下がると思う」と考えている人が16.8%(前回調査比5.2ポイント上昇)もいるのには驚いたし、一言言っておきたい。
これはまずあり得ない。確かに第一次取得層向けのマンション価格は取得限界にきていると思うが、かといって専有面積を圧縮して分譲価格を抑える手法はあると思うが、価格(単価)が下がることはほとんどないと断言できる。
東建不販 「住まいのコンシェルジュ」Webサービス開始
東京建物不動産販売は1月26日、住まいに関する様々な相談を受ける「住まいのコンシェルジュ」Webサービス(http://sumai.goodnews.jp/concierge/)を開始したと発表した。
「住まいのコンシェルジュ」とは、同社および東京建物グループ各社で提供しているサービスを、同社お客様サービスセンターが窓口となりワンストップで案内するサービス。
新築マンション・中古マンション・賃貸マンション、リフォーム、不動産の相続対策・有効活用に関する相談・要望に対応する。
オリンピック選手村 都が事業協力者募集 どこが選ばれるか
東京都は1月23日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村及びレガシー検討に係る事業協力者の募集要領を発表した。
選手村予定地は約18haで戸数は約5,950戸。応募資格は宅建業者で、選手村でのマンション建築者として応募する意向があること、平成23年から25年まで年間少なくとも1度は1,500戸以上供給した実績があることなど。原則として1者1グループが選ばれる。プレゼンテーション・ヒアリングを経て26年度内に決定される。
事業協力者は、特定建築者の選考の評価の対象になるが、優先的に戸数が割り当てられるかどうかは不明。選手村の建設は28年度から。
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いよいよ選手村の建設に向かって本格的に動き出した。これほどのビッグプロジェクトに事業参画できるのはデベロッパーとしても光栄なこと。事業協力者に選ばれた場合の「名誉」を金額に換算したら代表企業は数億円をくだらない。その他のぶら下がり企業も数千万円の価値はある。手を挙げる資格のあるデベロッパーはまず全員が代表者として名乗り出たいはずだ。
しかし、名乗り出る資格があるのは、もちろん資力なども求められるが、具体的には年間1,500戸の供給実績があることだ。とすると、応募資格者は三井不動産、三菱地所、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、近鉄不動産、積水ハウス、大和ハウスあたりに絞られる。
とはいえ、この各社が単独で応募する可能性は小さく、記者はコンソーシアムを組むとみている。選ばれるのは「複数ということも可能性としてはゼロではない」(都)が、原則1者だ。どこも受かりたいだろうから、応募グループはもっと絞られるはずだ。晴海を中心に湾岸で供給実績があるのは三井、三菱、住友が抜けている。まずこの3社は代表として名乗りを上げそうだが、再開発事業では住友の実績がやや劣る。
野村はどうか。〝プラウド〟の沽券にかけて手を挙げたいだろうが、ここは勝ち組に乗る戦法だろう。記者はユニバーサルデザインの取り組みで突出している積水ハウスも有望とみているが、同社も単独では動かない。どこが積水を取り込むか。ここと組んだところが有力とみた。大和ハウスも住友とは共同事業の実績はある。
東急、東建、近鉄も代表者として応募するより勝ち組に乗る戦法と見た。1,500戸の供給実績がある大京、NTT都市開発、新日鉄興和不動産、伊藤忠都市開発、住友商事なども同様。どこかのグループにぶら下がるとみた。
ゼネコンもみんな参加する。ただ、単独でマンションの年間1,500戸の供給実績はないから、どこかにぶら下がる。デベロッパーとしてはいま長谷工コーポレーションに足を向けて眠れないだろうから、どこが取り込むかも興味深い。
ここまで書いてきて、六本木防衛庁跡地再開発(東京ミッドタウン)をめぐる当時の状況を思い出した。もう正確には思い出せないが、記者は落札される半年前、「落札価格は1,750億円」と予測記事を書いた。応札企業は4社グループだったはずだ。1,800億円で落札したのは三井不動産など6社コンソーシアム(積水含む)だった。予想がズバリ的中して舞い上がったのを思い出す。三井の他では三菱、住友、それと当時名を馳せた桃源社が応札したのではなかったか。
そこで不意に閃いた。三井も三菱も住友も一緒に組むことの可能性についてだ。これもあり得ない話ではない。かつて中曽根民活第1号マンションと言われた「西戸山タワーホウムズ」は、わざわざ開発会社まで設立して全員参加型の開発を行った。
ここで3社が組めば万事ことは丸く収まる。「SKYZ」「BAYZ」の再現だ。事業協力者に決まったからといって利権が生じるわけではないから、談合などと批判されることもないと思うがどうだろう。この3社からはじかれたデベロッパーがコンソーシアムを組む可能性もある。
よって事業協力者の記者予想は次の通り。相当の自信がある。
◎三井不動産(積水ハウス)○三菱地所▲三井・三菱・住友(2社も含む)△住友不動産△その他
根づくかシニア向け分譲マンション 年間500戸の市場へ
「デュオセーヌつくばみらい」(写真右。左はファミリーマンション。手前にもう1棟マンションが建設中)
フージャースコーポレーション
「デュオセーヌつくばみらい」竣工見学会
挨拶する藤井社長
フージャースコーポレーションは1月23日、開発を進めている高齢者向け分譲マンション「デュオセーヌつくばみらい」が竣工したのに伴い、関係者向けに見学会を行った。約130人が集まった。
物件は、つくばエクスプレスみらい平駅から徒歩7分、茨城県つくばみらい市陽光台二丁目に位置する9階建て全150戸。現在分譲中の4期(18戸)の専有面積は51.19~70.95㎡、価格は2,698万~4,248万円(最多価格帯2,800万円台)、坪単価170万円。管理・修繕費は約5万円。食事代は1カ月利用した場合約5万円。建物は平成26年12月11日に竣工済。施工は長谷工コーポレーション。事業主は同社とダイヤモンド地所。
物件の特徴は、①入居条件として満50歳以上で、自分で身の回りの世話ができること②共用部に天然温泉浴場、娯楽室、カラオケパーティルーム、健康管理室、訪問看護・介護事業所が併設されているほか一般も利用できるダイニング・レストラン付き、専有部は引き戸を多用、人感センサー付き③地元の医療機関と提携して医療サービス、看護・介護サービスが受けられる-ことなど。
一昨年から分譲開始されており、これまでにこれまで約7割が分譲済み。購入者の平均年齢は70最弱。夫婦は約5割、親子、姉妹入居が各1組。女性と男性の割合は6:4。要介護者は1割弱。前居住地は東京が35%、千葉県が20%、茨城県・埼玉県・神奈川県が各15%。居住形態は戸建てが8割、マンションが2割。全体の2割が自宅を売却して入居する意向。
竣工パーティ
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この物件については、昨年見学しており記事にしているので、そちらも参照していただきたい。
まず、驚いたのは売れ行きだ。隣接地では同社が坪単価130万円のマンション130戸を分譲しており約100戸が売れているが、同じくらいの売れ行きということだ。坪にして40万円の差があるが、温泉付き、医療、看護・介護サービスが受けられる、居室面積が広い、転売ができることなどが高い評価を受けたということがうかがわれる。サ高住と決定的に異なる点だ。
もう一つ驚いたのは関係者の関心の高さだ。三井不動産レジデンシャルが10人くらい参加していたほか、東京建物不動産販売、NTT都市開発、大成有楽不動産、モリモト、アズパートナーズ、銀行関係者などが参加。三井不レジ関係者は「賃貸として検討している」と話した。同様の物件はコスモスイニシアが「武蔵浦和」で開発を進めている。
見学会に臨んだ同社・藤井幸雄社長は、「同様のマンションは『柏の葉』『「町田』でも計画を進めており、他のシニア事業を含め全体に占める事業比率を20%くらいに高めていく」と話した。
パイオニア的な存在のダイヤモンド地所・外所行則社長は、「平成17年に『ダイヤモンドライフ湘南』198戸を分譲開始して以来、『森の里』128戸と今回の『つくばみらい』150戸を供給した。他社も参入するので年間500戸くらいの市場になる」と話した。
問題は、有料老人ホーム、サ高住などと競合するのかしないのか。また、中古市場でどのような評価をされるのか、要介護度が高くなったらどうするかだが、外所氏は「生活に飽きて自宅に帰る人もいる。売却事例が少し出てきているが、それほど価格が下がっているわけではない。近く専門のサイトも立ち上げる。介護については、みなさんはすぐ車椅子生活を連想されるが、実際は8割くらいの方は普通の生活を続けられる」と語った。
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記事とはあまり関係ないが、ダイヤモンド地所の外所氏とお会いして懐かしさがこみ上げた。同社はかつてマンションを分譲していた「丸善建設」のOB会社で、バブル崩壊後、丸善建設のブランド「ダイヤモンド」をそのまま引き継いで事業を展開してきた。
もう時効だろう。記者はバブルがたけなわのころ、西新宿で地上げを派手に行っていた最上恒産の動向を探る目的もあってよく丸善建設に取材に行っていた。坪200~300万円から始まった買収価格は最終的には坪3,000万円まで跳ね上がったこと、接道するところは坪1億円で取引されたことなど、最上の動きが手に取るようにわかった。幹部からよくうな重をおごってもらった。その方は3年前亡くなられたことを外所氏から聞いた。
ダイヤモンド地所がシニア向け分譲マンションのパイオニアとして再び脚光を浴びるのがとても嬉しい。
外所氏
グロス価格はやや張るが坪単価は〝旧価格〟 大成有楽「吉祥寺Ⅱ」
「オーベルグランディオ吉祥寺II」完成予想図
大成有楽不動産が2月下旬に分譲開始する「オーベルグランディオ吉祥寺II」を見学した。JR中央線三鷹駅、あるいは吉祥寺駅からのバス便ではあるが、坪単価は〝旧価格〟の205~210万円。2年前に分譲された隣接の第一弾「オーベルグランディオ吉祥寺Ⅰ」(177戸のうち分譲は131戸)は4カ月で完売している。今回は面積が広くなるのでグロス価格は張るが、再び人気になるか。
物件は、JR中央線・総武線、京王井の頭線吉祥寺駅からバス12分徒歩2分、またはJR 中央線・総武線三鷹駅からバス13分徒歩2分、三鷹市牟礼六丁目に位置する8階建て全284戸。専有面積は72.27~93.68㎡、予定価格は4,100万円台~6,200万円台(最多価格帯4,,900万円台)、坪単価は205~210万円。竣工予定は平成28年1月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は大成有楽不動産販売。
現地は昭和30年代に入居が開始された旧日本住宅公団「牟礼団地」の建て替え事業地の一角。賃貸棟は全て建設済み。分譲棟は第一弾として同社が2013年初頭に109戸を分譲。間取りプランが1DK(35.87㎡)~4LDK(87.65㎡)と豊富で、価格帯も1,800万円台から5,100万円台(坪単価181万円)と、商品性と価格のバランスがよかったことからわずか4カ月で完売している。
今回はその第2弾で、専有面積は最低でも72㎡台、平均で約78㎡と広くなっているのが第一弾と異なるのが特徴。坪単価も約10%高くなる。
販売を担当する大成有楽不動産販売のプロジェクトリーダー・沢信吾氏は、「第一弾は価格を抑制気味にし、プランも多彩だったことからお客さんが殺到した。今回は価格が若干上昇するが、当初の予定から設備仕様レベルを上げた。間取りプランも50種揃えた。この価格が浸透すれば、地元はもちろん広域から集客できるのでは」と期待を寄せている。
「ファミリーラボ」(左)と「マルチ シューズ シェルフ」
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「牟礼団地」のことはよく知っている。吉祥寺、三鷹からのバス便だが、運行本数は多い。いつものように単価を予想した。同じような立地のマンションは坪単価260万円だが、同社はそんなに高くないと踏んだ。アッパーは250万円で、平均すると240万円くらいではないかと読んだが、結果は大外れ。それより30万円以上も安かった。
205~210万円という単価は、23区内では皆無で郊外部でも駅近物件はこんな安値ではまず供給されない。埼玉、千葉方面でも都内寄りでは無理だ。
価格が低いからレベルが低いわけでもない。モデルルームの提案はよくできている。同社の最近のマンションについてはかなり書いてきたので省略するが、「オーベルオリジナル収納」は〝ここまでやるか〟と思うほどきめが細かい。多目的に利用できる「ファミリーラボ」の提案もいい。
単価は低くても面積が広いからグロス価格は張るが、この物件特性をアピールできれば、第一弾と同様圧倒的な人気を呼ぶ可能性を秘めている物件だ。
上下前後可能ハンガー
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沢氏と歓談し、意見の一致をみたのはデベロッパーはなるべく予定価格を早く公開することだった。最近は各社とも価格にはナーバスになっており、記者の取材などでも坪単価を公開することを渋るところが激増している。
どこも〝新価格〟であり、サラリーマンの取得限界にきていることが分かっており、予定価格が速く知れ渡ったら敬遠されるのではないかと恐れているのだ。その一方で、同業他社が高値をつけるのを待って、後だしジャンケンのようにおっとり刀で駆け付けようとしている。
いま、記者の手元にある1月中旬号の住宅情報誌を調べてみたら、「予告広告」のマンションが約380件あるうち、「予定価格」を表示しているのは4割以下の150件弱だ。分譲開始が1月下旬でも価格は「未定」になっているのも少なくない。記事風広告も「分譲中」を除けば、予定物件の半分は「価格未定」だろう。ひどいのになると、もう半年以上前からずっと「資料請求受付中」のマンションもある。
この情報誌は「価格ゼロ」だからみんな読むのだろうが、有料だったらまず読まない。
判断が付きやすいよう予定価格(坪単価)は堂々と早めに公表すべきではないか。価格を公表しないのは顧客に対して失礼だし、売る側の営業マンもかわいそうだ。
スーパーの店頭に「価格未定」の野菜を並べたら明日からお客さんはまず来なくなる。それとも高級すし店のように「時価」商売をやろうとしているのか。売れる値付けをできないのはデベロッパー失格といっては失礼か。