プレハブ建築協会 「エコアクション2020年」の2013年実績公表
プレハブ建築協会は11月4日、同協会の住宅部会20社のうち部会内に設置された環境分科会参加の10社による環境行動計画「エコアクション2020」における2013年度の実績調査をまとめ発表した。
10社の戸建て供給戸数70,437戸(前年比4.9%増)、低層集合住宅81,267戸(同22.4%増)が対象。
これによると、新築戸建住宅の居住段階でのCO2削減量は、太陽光発電システムや燃料電池コージェネレーションシステムの普及などにより、2010年比17.6%減の1,924㎏-CO2/戸・年(前年比6.7%減)となった。
低層集合住宅の居住段階のネットCO2排出量は2010年比14.8%減の1,551㎏-CO2/戸・年となり、順調に削減がすすんでいる。
既存住宅の居住段階でのCO2削減が大きな課題になっているが、2013年の既存住宅の太陽光発電システム設置工事件数は21,116件(同17.0%減)で、再生可能エネルギー固定価格買取制度がスタートした前年の反動減と買取価格の引き下げの影響を受けた。
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2020年までに数値目標を掲げ、低炭素社会の構築や循環型社会の実現を目指す「エコアクション2020」は、既存住宅を除いてはおおむね順調に推移しているようだ。
ただ、記者の取材フィールドである分譲住宅の「地域の生態系の保全に配慮した住宅地の緑化率」については注文もある。数値の「見える化」を図り、ユーザーにも分かりやすいデータで公表すべきだと思う。
2013年に会員各社が新規供給した建売住宅4,211戸(前年比443戸減)のうち、緑化面積率40%以上を確保した住宅は1,984戸(前年比49戸増)とのことだったが、この数値だけで「自然共生社会の構築」に貢献したのか、あるいは貢献していないのか分かる人はほとんどいないはずだ。
緑化率を高めた住宅の価格はどうだったのか、ユーザーの反応はどうだったか、売れ行きはどうだったかなどはデータとして取り出せるはずだし、それらの住宅が地球温暖化防止や環境や人に対してどのような影響を及ぼすかも分かるはずだ。
記者は環境や人に及ぼす緑の役割は極めて大きいと確信している。ぺんぺん草も生えないような建売住宅が淘汰されるよう、プレ協の会員会社は良好な住宅供給の先頭に立つべきだと思う。データもどんどん公開して啓蒙すべきだ。
併設のサ高住のサービスも受けられる NTT都市開発「ウェリス津田沼」
「ウェリス津田沼」完成予想図
NTT都市開発が12月上旬に分譲する「ウェリス津田沼」のモデルルームを見学した。「家族をつなぐ多世代永住の住まいづくり」がテーマで、分譲マンションに隣接して開発するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の施設を利用でき、購入者とその親族がサ高住に優先的に入居できるという業界で初の試み。
物件は、新京成線前原駅から徒歩8分、またはJR総武線津田沼駅から徒歩18分、船橋市前原西六丁目に位置する6階建て全58戸。専有面積は72.27〜83.87㎡、予定価格は2,900万円台~4,300万円台、坪単価は160万円台になる模様。入居予定は平成27年11月上旬。設計・監理は嘉環境建築設計。施工はナカノフドー建設。販売代理はフージャースコーポレーション。
現地は、NTTの社宅(独身寮)跡地。敷地を分筆して、今回分譲するマンションと、隣接地に70戸程度のサ高住「ウェリスオリーブ津田沼」を建設する。サ高住はNTTグループのテルウェル東日本が介護サービスやデイサービスを提供。棟内に訪問介護事務所、デイサービス施設を設置する。
マンション購入者はサ高住の見守りサービスや食堂が利用できるうえ、家族と親族が優先的にサ高住に入居できるのが最大の特徴。トイレと浴室には緊急コールボタンを設置し、調理台は高齢者にも配慮してIHクッキングヒーターを採用する。
同社は平成22年、運営会社のベネッセスタイルケアとともに第一弾のサ高住「ウェリスオリーブ新小岩」(45戸)を開設しており、今後2~3年間に10棟を開発する予定。そのノウハウをマンション事業にも生かし、それぞれの事業リスクの軽減を図るとともに、多世代永住型の住まいを提供していく。
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民間分譲マンションとサ高住を併設して、サ高住の施設を利用できるようにしたのはおそらく同社が初めてだろう。
サ高住の適正規模は60~70戸と言われており、その一方で、郊外マンションの場合は大型化することの販売リスクもある。今回のプロジェクトは双方のリスクを軽減するとともに、新たな付加価値を付与するものだと思う。
現段階でユーザーがどのような反応を見せるか不明だが、現地の後背地には戸建てエリアが広がっており、このエリアに住む高齢者にも関心を呼ぶのではないか。50歳以上の反響は通常マンションだと20%であるのに対し、今回は約30%という。
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記者は、分譲マンションと隣接・近接する高齢者向けマンションの共用施設を双方の入居者が利用できないものかとずっと思っていた。最近見学した都の「コーシャハイム千歳烏山」は賃貸居住者も併設されているカフェやサ高住の食堂が利用できるようになっていた。
都は今年度、「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」としてサ高住に一般住宅を併設した場合に補助金を出す制度を実施しており、募集3事業者のうち東急不動産とナルド・コミュニティネットの2事業者が決まっている。
唯一残っていた「近代化」が消える 不動産流通近代化センターが名称変更
設立から34年目にして「公益財団法人不動産流通近代化センター」の名称が変更される。11月4日、新名称募集を一般から募集するとホームページ上で発表した。募集期間は平成26年11月4日(火)~28日(金)まで。発表は平成27年4月。最優秀賞には3万円の商品券が贈られる。
応募方法はWebまたはFAXで。詳細は不動産流通近代化センター TEL:03-5843-2070へ。
同センターは昭和55年に設立された国土交通省が所管する特例民法法人で、不動産情報交換のためのコンピュータ・ネットワーク・オンラインシステム「レインズ(REINS)」の運営や不動産コンサルティング技能試験などを行っている。
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ついに不動産流通センターの名称が変更される。結構なことだ。記者にとっても念願の名称変更だ。
この呼称についてはもう30年も前から変更すべきという記事を書いてきたし、直接訪ねて呼称変更を〝お願い〟したことがある。
なぜか。当時、記者はデベロッパーを取材していたのだが、不動産業界に「近代化」なる言葉が付けられた公益法人があるのに驚いた。「近代化」なる言葉は歴史の教科書に出てくる「戦前」のことだ。「もはや戦後ではない」と経済白書が謳ったのは昭和31年だ。どうして昭和の50年代にもなって「近代化」をわざわざつけなければならないのか不思議に思った。
確かに「全国宅地建物取引業協会連合会」(全宅連)という会員数が約11万(当時約14万)を擁す、主に街の不動産会社などからなる業界団体があり、「前近代的」と思われる部分も少なくなかった。しかし、それでも大手デベロッパーや大手流通会社は良好な街づくりや住宅供給を行っており、他の業種を含めトップランナーだと記者は思っていた。「近代化」などと言われると、自分自身が時代遅れの俗物と言われているような気がした。
そこで「近代化」が付された団体があるかどうか調べた。今でこそネットで検索できるが、当時は電話帳やらその他の刊行物を調べ、「近代化」が付いている団体は不動産流通近代化センターのほかには、昭和44年に設立された財団法人東京タクシー近代化センターしかないことを突き止めた。東京タクシー近代化センターは平成14年に「東京タクシーセンター」に呼称変更されているので、現在、「近代化」のついている団体は不動産流通近代化センターしかないはずだ。
今回の呼称変更は、「より安全・安心な不動産取引を実現する不動産業の健全な発達に関する支援により、一般消費者の利益擁護を充実したい今、『近代化』の名称は、現在の事業内容に照らし、十分ふさわしいものと考えられません。私たちはもう一度、原点に立ち返り、皆様にとって、もっとわかりやすく、より身近で、信頼できる名称に変更したいと思います」(同センターホームページ)というのが理由のようだ。
この業界にはもう一つ、取りようによっては不動産の「適正取引が行われていない」と誤認させるような「一般財団法人不動産適正取引推進機構」という宅建試験を行う団体もある。合併してもいいように消費者にも分かりやすい名称にしてほしいと願うのみだ。
細田工 構造材と床材に無垢材を採用した「プレミアム」発売
左からヨーロピアンオーク、ヨーロピアンアッシュ、ビーカン
細田工務店は10月31日、構造材と床材に無垢材を採用した注文住宅「<木ここち杢>プレミアム」を発売した。
既存ブランドの注文住宅「<木ここち杢>」をベースに、土台に純国産「乾燥無垢檜」を採用。さらに、これまでの3種類の無垢床材に加え、新たに3種類(ヨーロピアンオーク、ヨーロピアンアッシュ、ビーカン)を追加した。
工法は標準仕様となっている高耐震+制震の2つの性能を併せ持つ「ハイブリッドキューブ」を採用。住宅性能表示の耐震等級で最高の「3」を取得可能。
詳細は次のホームページまで。
美しい日本橋の再生を 78名のミス・インターナショナルが勢ぞろい
「ミス・インターナショナル お披露目ショー&フォトセッション」(三越1階)
「2014年ミス・インターナショナル世界大会」に出場する世界の美女ら78名が11月1日、日本橋に集結して街行く人々を楽しませた。イベントは、三井不動産などが協賛し「東京中央大通会」が主催するもの。11月11日に行なわれる 「2014年ミス・インターナショナル世界大会」出場者78名が3組に分かれ、「やかた船 船上ショー」「日本橋案内所」「三越本店寿司祭り」「高島屋」「日本橋西川」などのイベント「中央区日本橋世界文化交流プロジェクト」を行った。
日本代表
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きれいな女性は毎日のように見ているし、一番美しいのは伊勢神宮が奉っている天照大神と、その美しさを引き継ぐ「大和なでしこ」だと思っている記者にとって、ミス・インターナショナルなんて興味がない。水着姿も審査対象になっているイベントがフェミニストによって批判されるのも理解できる。
それでも取材する気になったのは、世界の〝美女〟が日本橋川に架かっている高速道路をどう感じるかを聞くためだった。
片っ端からインタビューしようと思ったが、外国語が話せないし取材の規制もあり、やむなく通訳を通じて聞くしかなかった。質問は「日本のど真ん中の川が高速道路によって覆われている、暗渠になっている景観、風景をあなたはどう思うか」だ。
最初に聞いたスペイン語圏の女性は「大丈夫(No problem)」のひと言だった。日本語が通訳に通じていないのか、その彼女が何を勘違いしたのか分からないが、記者は唖然とした。ミス…などしょせんその程度のものか、知性は問われないのかと思った。
しかし、これでは取材目的が達成できない。関係者にお願いして、パラグァイの代表に聞くことができた。彼女は「高速道路を外して、観光客が入りやすいようきれいにすべき」と、通訳を通じて話した。
彼女は、すぐ「COREDO室町1」の地下「日本橋案内所」に備えられている「首都高速道路の撤去を求める」署名に記名した。ミス・インターナショナルの本大会は11月4日に行われるが、記者はパラグァイの女性に一票投じたい。
「首都高速道路の撤去を求める」署名に記名するパラグァイ代表
パラグァイ代表らの記念写真
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「きやぁ、人形みたい」「おなじ人間と思えない」などのねたみやら感嘆の声が沿道から発せられた。メディアは金魚の糞のように美女軍団の後にくっついていく。記者はこの屈辱に耐えられなかった。
列から離れようと思ったとき、三越店内でその一団を椅子に腰掛けて眺めている妙齢とはいいがたいが、若いときはミス彼女たちに負けないと確信させる凛とした女性を見つけた。総しぼりの羽織を着ていた。その女性は「みなさん、おきれいでいらっしゃる。でも、わたくし…よく見ていなかったわ」と話した。
美女たちが帰ったあとで、もう一度、その女性に声をかけた。失礼だとは思ったが、「ずいぶん美しいお着物を召していらっしゃいますね」と話しかけたら「ありがとうございます。これ、結城ですのよ」と紬も見せてくれた。「ありがとうございます。お歳は70歳代でよろしいですか」「いえ、もう少し上でございます」
やはり日本の女性は美しいと思いながら、三越本店の1階ホールで行なわれた「お披露目ショー&フォトセッション」を見ていた中年の女性にも声をかけた。「とてもきれい、目の保養になる。フェミニストの批判? 身体だけでないでしょ、総合的な美しさが評価の基準」と話した。彼女もさすがだ。
「やかた船 船上ショー」
野村アーバン タワーマンション売りやすくする「ホームステージングサービス」
野村不動産アーバンネットは11月1日からタワーマンションを対象にした「ホームステージングサービス」を期間限定で実施する。
「ホームステージング(Home Staging)」とは、売却不動産を家具や小物で演出することで、早期に好条件での売却を目指す販売手法。中古住宅流通量の多いアメリカでは、過去30年以上、不動産売却時に有効な手法として用いられている。単にインテリアコーディネートをするのではなく、その住宅の購入を検討する人が住まい心地を実感できるよう演出するもの。
「野村の仲介+(プラス)」各店では2014年8月から「野村のステージング」サービスを開始しており、今回はそれをさらに発展させた。
対象不動産は首都圏の20階以上のタワーマンションで、専有面積が60㎡以上。利用期間は2014年11月1日から2015年3月31日まで。売り出し価格が同社査定価格の125%以内であることなどが条件。
空室の場合は、同社が無料でリビング・ダイニング・キッチンの家具、玄関からリビングの導線、水回りのコーディネートを行い、居住中の場合はコーディネートのほか室内荷物の一時預かりも行う。
カンナ社長 手づくり名刺入れ「お手入れ講座」を公開
宮沢社長(カンナ社長)の手づくり名刺入れの「お手入れ講座」
宮沢社長手づくりの名刺入れ
アキュラホームが10月28日、同社・宮沢俊哉社長が成績優秀者に贈呈している手づくり名刺入れの「お手入れ講座」を行ったのを取材した。約3時間、宮沢社長は20人くらいの参加者を前に「名刺入れの手入れは家と同じ。使いこなし、使い心地、使い応えを伝えるもの」だと、カンナ掛け薄削りの見本を示しながら話した。
名刺入れの贈呈は5年前から行っているもので、これまで113個を製作している。当初は1個作るのに7~8時間かかっていたのが、試行錯誤を重ね、改良も加えた結果、今では2~3時間で仕上げるという。
「カンナ社長」の異名を持つだけに、看板に傷がつくようないい加減な仕事はしない。形状や技、細部にもこだわる。一般にも販売されている四角形のものではなく、機械ではできない丸みを持たせた美しいものから、最近は大工さんが使う「大工道具箱」をモチーフにしたものに進化させた。材料はヒノキで、強度を持たせるために溝を掘ったり竹ひごを忍ばせたりしている。
カンナ掛けでは、ヒバ材をミクロ単位で削り、「どうですか、女性の肌と一緒。鏡のようにものを映すでしょう」と子どものようにはしゃいでいた。手入れ具合を見るコーナーでは、「これは使いこなせていないな」などと笑いながら役員には冗談も飛ばした。
11月8、9日には全国の腕自慢の大工さんがミクロンのカンナ削りの技を競いあう「第30回全国削ろう会」が小田原市で行われる。宮沢社長もこれに出場する予定だ 。
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薄削りをするカンナ社長 薄絹のような鉋屑がするすると吐き出された
文字が映る薄削りした板
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3個の名刺入れをもらっている同社カタクラ営業所所長・藤堂加奈子氏に話を聞いた。藤堂氏は入社10年目、営業時代は何度も優績者として表彰されており、所長となった現在は全国67ある営業所の中で上位の営業所をまとめている。
その秘訣は、「テクニックではありません。心です。当社の商品がどこにも負けないということを自信を持って伝えられるかどうか」と話した。職場については「男女の差がない環境がいい」と語り、社内でも良いモデルケースとなっているようだ。
名刺入れの手入れをする藤堂氏
宮沢社長を中心に「お手入れ講座」参加者の記念撮影
快適住まい 購入希望住戸から360°CG映像が見える「目黒都立大」
バーチャルモデルルームが設置されている「快適サロン工房」
ばかばかしい前置きから読んでいただきたい。
本日(10月30日)、長谷工コーポレーションが記者発表した「BIM(ビム)」の記事を書き、毎号頂いている、封がしているままになっていた長谷工総合研究所の「CRI」435号を読もうとした。「シングル層の住宅事情」が特集として取り上げられていた。全6ページ。最初のほうはマクロデータが紹介されていた。ざっと読んだ。
3ページ目に、記者も面白いと思っている三井不動産レジデンシャルの「モチイエ女子web」が紹介されていた。
そして、最後の6ページ目に「独身女性のマンション購入を応援したい」という見出しのコラム記事で、(社)女性のための快適住まいづくり研究会代表の小島ひろ美氏が載っていた。その中に「今回初めて売主として『サクラティアラ目黒都立大』(総23戸)を販売しましたが…」とあった。
考えるより先に行動するタイプの記者だ。あとは読んでいない。すぐ快適住まい研究会に電話した。モデルルーム見学をお願いするためだ。小島代表が出られて「バーチャルモデルルームは近くにありますが、それでよかったら私がご案内します」と仰った。飛んで行った。
以下が小島代表からお話を伺い、バーチャルモデルルームを見学した記事だ。「長谷工」がきっかけで見ることになったのだが、バーチャル映像の考え方はひょっとすると長谷工を超えるかもしれない、それほど面白い企画だ。
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「サクラティアラ目黒都立大」は、東急東横線都立大学駅から徒歩9分、目黒区大岡山に位置する敷地面積約347㎡(容積率200%)の地下1階地上4階建て全23戸。専有面積は30.19~44.17㎡、現在分譲中の住戸の価格は2,698万~4,688万円、坪単価は342万円。竣工予定は2015年2月下旬。施工は村本建設。事業主は首都圏不燃建築公社。売主は快適住まいづくり。企画は女性のための快適住まいづくり研究会。販売代理は丸紅不動産販売。
360°のCG画像(ほとんどの住戸からどのように眺望が展開するか分かる)
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ここで詳しく紹介する余裕はないが、売主の快適住まいづくり(木村吉伸社長)と企画した女性のための快適住まいづくり研究会は以前から取材しており、一言で言えば、単身女性がマンションを買うようになった平成7年ころから一貫して女性のマンション購入を支援してきた会社と団体だ。コンパクトマンションを手掛ける多くのデベロッパーは小島氏に足を向けて寝られないはずだ。企画・販売協力は735物件、女性会員は74,670名にのぼっている。
その会社・団体がどうして自社分譲なのか。ここが一番の興味の的だ。きっかけが面白い。たまたま小島さんが物件が売りに出ているのを見つけて、直接売主の建売住宅業者に電話して取得したのだそうだ。建売住宅にすると価格は当然1億円をはるかに突破する。売れないと読んでいたその業者にしてみれば〝渡りに船〟だったに違いない。
そこからは圧倒的な会員数と企画・販売協力してきた実績がものを言う。事業主は首都圏不燃建築公社、販売代理は丸紅不動産販売、管理は三菱地所丸紅住宅サービス、セキュリティシステムはセコム。これ以上ない事業スキームを立ち上げた。
商品企画はお手のものだ。過剰と思える設備機器はすべて排除した。直天に床暖房はなし(オプション可)、エアコンスリーブは1カ所などだ。そのかわり収納や使い勝手のよいフックなどはしっかりと設けたという。
販売事務所を設置し、モデルルームやらパンフレット、模型などを作っていたのではそうでなくても利益率を抑えているのに利益などでない。会員を中心に分譲し、営業経費や広告宣伝費を削減することで数千万円の販管費を節約している。
唯一と言っていいくらいお金を掛けたのがバーチャルモデルルーム。全16タイプの住空間を見ることができ、3階、4階の全住戸からは360度の眺望を見ることができる(2階は固定画面)。10億円以上も投資する長谷工の「BIM(ビム)」には質的に劣るが、バーチャル映像は素晴らしい。これこそ記者がデベロッパーに希望するものだ。
さらにきめ細やかな配慮もしている。購入希望者には1回2時間の「ゼミ」をトータルで5回、つまり10時間受けてもらう。ここで不動産の基礎をしっかり学んでもらい、納得の上で購入してもらうのが目的だという。
すごいのは「ゼミ」の終了ごとに「カルテ」を提出してもらって、疑問などを書き込んでもらって、小島氏が直々に返事を書くというものだ。分厚いファイルを見せてもらったが、細かい手書きの文字でそれは埋められていた。52人分あった。
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まだまだ書きたいことがある。小島氏は他の女性もそうだろうが、間違いなく石橋だろうが鉄の橋だろうが叩いて渡るタイプだ。売れなかった時のリスクもきちんと考えている。頭金が不足していたり、ローン返済に不安を持っていたりしている人には車の試乗と同じように賃貸で貸すことも考えているという。
最初賃貸で住んでもらって、購入する際にはその賃料のなにがしかを返戻することまで考えている。
これは名案だ。かつて東急不動産は住宅が売れないころ、昭和50年代の後半だったと思うが、所有権と賃借権の選択制を採用したことがある。それとよく似ている。土地価格が下がる一方の局面では難しいかもしれないが、都心部の地価・建築費はまだまだ上昇する。これはヒットするかもしれない。
同社は最近、コンパクトマンション事業を展開するためスタッフ3人の分譲事業部を新設した。2件目の「石川台」の分譲も決まっているという。自社分譲となると、企画・販売協力会社と競合しないかという心配もあるが、デベロッパーがやるような土地では間違いなくなさそうだ。
ゼミの模様
三井不動産レジデンシャル、女性向けサイト「モチイエ女子web」(2014/7/29)
“マンションを買って結婚する”女性増える 快適住まい・木村社長(2012/9/21)
〝やるなら今でしょ〟 長谷工コーポ BIM(ビム)で3割コストダウン目標
「ブランシエラ板橋西台」完成予想図
長谷工コーポレーションは10月29日、新しい設計手法である「BIM(ビム)」を企画設計から実施設計-施工-販売まで活用したマンション「ブランシエラ板橋西台」の説明会を行った。
「BIM(Building Information Modeling)」とは、コンピュータ上にパーツを組み上げて作成した3次元の建物のデジタルモデルに、仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースのことで、設計業界を中心に広まっている最新の技術。同社は2012年10月にBIMの活用を推進する体制を立ち上げた。今年4月には設計と施工部門を統合した「BIM設計部」を新設。約10.2億円を投資して、2016年度には「長谷工版BIM」を同社が設計・施工する全ての物件に実施設計ベースで導入する。
BIMは設計情報の「連動性」「可視化」「一元性」を容易にし、同社の強みである95%という高い設計・施工比率とマンションに特化していることなどから他社との差別が図れる。今後は販売やマンション管理、リフォームにも活用していく。
発表会に臨んだ同社取締役兼常務執行役員・池上一夫氏は、「これまで2億円を投資して開発を進めてきたが、設計-施工-販売まで完成した。当社の強みである一貫体制を発揮して、将来的には建物の維持管理、リフォームまで活用してトータルな顧客満足度を高めることができる。トップランナーとしてまだまだ進化させていく」などと話した。
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建築物に限らずあらゆる商品がコンピュータで作図されるのは常識だろうが、いとも簡単に自由自在にマンションの設計図が完成するのを目の当たりにすると驚きだ。部品は約5,000。部品一つ変えるとコストがどれくらい違ってくるか瞬時にはじき出される。構造計算もできる。これはすごい。
記者は設計-施工-販売にBIMを採用すればどれくらいの時間とお金が削減でき、顧客の満足度が上がることの価値を金額に換算したらトータルでいくらコストダウンできるか聞いた。
これに対し池上氏は「トータルなコスト削減を定量的に測るのは難しい問題。目標としては3割くらいに置いている」と話した。
3割のコストダウン-これには驚いた。マンションの建築費はこれまでもかなり上昇したが、これからも少なくとも1割はアップする。3割もコストダウンできれば上昇懸念は吹っ飛ぶではないか。記者は「いつまでにやるのですか、やるのなら今でしょ。オリンピックが終わってからでは遅すぎる」と突っ込んだが、池上氏は時期を明確にしなかった。
しかし、同社がマンションの設計・施工では圧倒的優位な立場に立つことだけは間違いない。マンションの設計では日建ハウジングシステムが採用しているそうだが、日建は設計だけだ。施工、販売、さらには管理までトータルで提案できるのかどうか。
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「ブランシエラ板橋西台」の販売は長谷工アーベストではなく第一弾ということもあり同社が行う。お客さんの反応をフィードアップさせる狙いがあるのだろう。
従来の販売事務所と異なるのは模型図がないこと。外観も各戸の間取りも商談ブースのパソコンでバーチャル住空間が体験できる。設備仕様を瞬時に変更できるし、変更したらいくらになるのかも分かるはずだし、カラーリングも自由自在。重いパンフレットなどいらなくなる可能性を秘めている。
物件は、都営三田線西台駅から徒歩9分、板橋区高島平9丁目に位置する9階建て80戸。専有面積は67.45~87.57㎡、価格は未定だが、坪単価は190万円+α。販売開始は2016年1月下旬。
記者は23区内で坪単価180万円以下のマンションは建設できないと思っているが、そのことを証明したことだけは確かだ。この単価にBIM効果が反映されているかどうかは微妙。
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課題がないわけではない。外観が映し出された画像は自由自在に見ることはできるのだが、樹木は貧弱だった。マンションの外構は大事な要素だ。いくらお金がかかるか知らないが、やはり樹種によって樹形、樹皮、さらには経年による成長具合などを見られるようにすべきだろう。これができたら完璧と言いたい。
もう一つは、好きな住戸からどのような眺望が展開するのか分かるようにはできないかということだ。同業他社もこれだけはできていない。お金を掛ければ技術的には可能だろうから、実費で見られるようにはならないか。
色や質感を出すのも課題だ。画像では化粧板なのか無垢材なのかは分からないし、自然素材の色、質感を表現するのも不可能だ。これだけはいかに技術が発達しようが無理だ。高性能カメラだって人の肌や草花の微妙な色を表現できない。自然光を表現できないのと一緒だ。
ペンブローク ミッドタウン隣接ビル着工 施工は竹中、デザインに光井氏
「TRI-SEVEN ROPPONGI(トライセブンロッポンギ)」完成予想図
米国ボストンに本社を置くペンブローク・リアルエステートの日本法人ペンブローク・リアルエステート・ジャパンは10月28日、ペンブローク日本初のオフィスビル「TRI-SEVEN ROPPONGI(トライセブン ロッポンギ)」の工事に着手したと発表した。
「TRI-SEVEN ROPPONGI」はペンブロークが日本で手がける4件目のプロジェクトで、初の商業施設併設型のオフィスビル。東京ミッドタウンの向かい、外苑東通りに面したグレードA品質の14階建て延べ床面積約31,500㎡。竣工は2016年春の予定。
設計施工は竹中工務店、外装コンセプトデザインに光井純&アソシエーツ建築設計事務所、マネージメントアドバイザーとして東京ミッドタウンマネジメントを起用。世界水準の技術とノウハウを有する開発チームを組成した。