サ高住は終の棲家になるか 日比谷花壇・東建不販「グレイプスガーデン西新井大師」
「グレイプスガーデン西新井大師」
日比谷花壇と東京建物不動産販売は9月9日、足立区西新井に完成したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グレイプスガーデン西新井大師」の記者内覧会を行なった。日比谷花壇が事業主・一部サービス提供事業者となり、東建不販が企業不動産(CRE)戦略支援として貸主・管理運営事業者、やさしい手がサービス提供事業者として参画する3社コラボレーションプロジェクト。
物件は、東武大師線大師前駅から徒歩8分、足立区西新井6丁目に位置する7階建て全62戸。専用面積は19.08~30.66㎡、月額賃料は62,000円~140,000円、管理費は11,000円~15,000円、基本サービス料は35,640円。10月1日から開業する。
日比谷花壇が物流センター-駐車場として使用していた土地に建設したもので、同社としては初めてのサ高住。1階の庭園と6階屋上庭園に年間を通じて100種以上の草花を配し、大学などと共同開発した「フラワーアクティビティプログラム」、植物との関わりや園芸作業を通じて体や精神機能の維持・回復を目指す「園芸療法」、「看取り」や「日比谷花壇のお葬式」も提供する。
内覧会に出席した同社宮島浩彰社長は、「サ高住は『花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する』企業理念にマッチした投資で、当社の高齢者向けサービスを直接提供するとともに、東京建物不動産販売さんの企画・コンサルティング、やさしい手さん、医療連携する社団あすは会さんなどのサービス・ホスピタリティを結集したプロジェクト」と話した。
また、東建不販・種橋牧夫社長は、「企業不動産(CRE)戦略として賃貸マンションなども検討したが、当社のサ高住と日比谷花壇さんの『ガーデン』を融合した提案を行なった。当社のサ高住としては4棟目の完成物件となるが、2016年までに11棟を予定している」と語った。
宮島氏(左)と種橋氏
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記者がこれまで取材してきたサ高住や民間の有料老人ホームは「自立」型のものが多かった。今回、日比谷花壇が「看取り」や「葬式」サービスを行い、医療連携する医療法人社団あすは会・髙本雄幸理事長が「医療難民をなくすためにも要介護度が高い方もどんどん受け入れていただきたい」と話したのにはやや驚いた。
確かに「入院医療」から「在宅医療」「地域包括ケアシステム」へわが国の社会保障・医療制度が急展開すると聞いたのはもう20年以上も昔だ。特養は入りたくても入れず、病院は長期入院患者を受け入れなくなった。
サ高住入居者の居住年数がどれくらいかよく分からないが、おそらく7~8年くらいだろう。東建不販が2009年に完成させた「グレイプス浅草」(98戸)ではこの5年間で30~40人が退去したという。退去理由は様々だろうが、死亡、長期入院、重度の要介護者がほとんどのはずだ。
この傾向を今回の物件に当てはめ、「エンディング」サービスが行なわれると年間に数件にのぼる。住棟内で頻繁に「看取り」「葬式」が行なわれたら、入居者はどう感じるのか髙本氏に質問した。髙本は「見ず知らずの人なら違和感があるかもしれないが、人間関係が築かれ時間が経過すれば、居室内での『看取り』は自然な形になる。サ高住がパンク状態になっている病院に代わる第二のベッドの受け皿になる」と話した。
特養との垣根も取り払われ、サ高住が終の棲家になるということか。
1階の庭園(左)と屋上庭園
ニッチの生け花
マンションの玄関ドアに引き戸は採用できないか
先日、ポラス中央住宅が分譲する板橋区のマンションを見学したが、玄関ドアはリモコンで開閉できるようになっており、カギ穴なしが採用されていた。これまでもカギ穴なし玄関ドアは見たような気がするが、そこで今回は玄関ドアについて考えてみた。
カギ穴なしの玄関ドアの是非はさておくとして、1964年完成の「川口アパートメント」(83戸)や1976年に建設された全892戸の「ニューステートマナー」、高級賃貸の「ホーマット」シリーズなどの玄関ドアは内開きだったように、現在はほとんど100%と言っていいくらい外開きになっていることの是非についてだ。
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外開きか内開きかを考える前に、建築基準法など現行法ではどのような規定になっているか見てみた。
建築基準法施行令第百二十五条2には「劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない」とある。
また、東京都の火災予防条例第五十四条三では、「避難口又は地上に通ずる主たる通路に設ける戸は、容易に開放できる外開き戸とし、開放した場合において、廊下、階段等の幅員を有効に保有できるものとすること。ただし、劇場等以外の令別表第一(マンションなどの共同住宅を含む)に掲げる防火対象物について支障がないと認められる場合においては、内開き戸以外の戸とすることができる」となっている。
このほか、高齢者や身体障害者などが円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に関して東京都はQ&Aの形で「共同住宅の出入口は開閉動作の難易度からみると、引き戸が開き戸より簡単である。一般的に推奨される順位としては、1自動式引き戸、2手動式引き戸、3開き戸の順である」「共同住宅の住戸は利用居室に該当しないため利用円滑化経路に係る規定は適用されない」としている。
つまり法律では、不特定多数の人が利用する施設は避難方向にドアが開くようにしなければならないよう定めているが、マンションなどの共同住宅の専有部への出入口となる玄関ドアについては規定がない。建築物の適合性を審査する建築主事や建築基準適合判定資格者の判断に委ねられているのが現状だ。
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以上みたようにマンションの玄関ドアを外開きにしなければならない法律上の規制はない。ある自治体の担当者は「常識」といい、別の担当者は「外開きは避難時に有効で、防犯上は内開きがいい」と話した。
つまり、劇場や映画館と同様、建築基準法施行令や火災予防条例などに準拠して施主や設計者が自主判断で外開きにしているのであって、管轄する行政担当者なども「常識」に従ってそう指導しているということになる。ホテルがほとんど内開きになっているのは、防犯・安全性を考慮したというより、欧米の様式をそのまま取り入れたのに過ぎないのではないかと思う。
ここでは、ドアは引くより押すほうが力を入れなくて済む、内開きにすると外から雨やほこりが浸入しやすい・沓脱スペースが有効に使えない、外開きは通行・避難の邪魔になるなど巷間言われていることについては触れない。いちいちごもっともだし、どちらに軍配を上げるような問題でもない。
最近のマンションの玄関にはアルコーブが付いているので、外廊下を歩いている人に怪我をさせるようなことはほとんどない。では内開きがどうかだが、ドアの機密性が高まっているので内開きでも雨水やほこりが室内に入ってくる心配もしなくていい。むしろ、戸建てなどは水害時にドアが開かないというニュースを見ると、内開きがいいともいえる。記者はもう20年以上も昔、千代田区の高級マンションで内開き玄関ドアが採用されていたのを見ている。
そんな内か外かではなく、高齢者や身体障害者はもちろん大人も子どもも使い勝手がいい引き戸がいいのではないかということをいいたい。
実際、積水ハウスは今年1月発売した自宅や賃貸住宅、店舗などの多様な用途に対応する4階建て複合型多目的マンション「BEREO PLUS(ベレオプラス)」に引き戸を提案することを盛り込んだ。記者はそのとき〝これは分譲マンションにも採用できる〟と考えた。
ユニバーサルデザインの視点からも玄関ドアについて考えてみる価値はあるのではないか。引き戸にすればアルコーブ-玄関がパブリック、プライベートの中間的な空間として利用できるのではないか。横入りタイプにすれば玄関を開けたらリビングが丸見えということも防げる。「常識」を疑ってみることも必要だ。
高齢者向けはともかく集合住宅向けの玄関引き戸はないのかと思ったが、そうではないようだ。三和シャッターが14年前から「BL玄関引き戸」を販売している。開き戸と比べて単価は高いようだが、最近は月間30枚くらい売れているそうだ。
戸建ての落ち込み賃貸、ストックがカバー 木造も健闘 積水ハウス2Q決算
過熱(加熱)に順応、冷え込みに強い「木造」証明
積水ハウスは9月4日、2014年度第2四半期決算を発表。売上高9,101億円(前期比7.7%増)、営業利益717億円(同28.7%増)、経常利益752億円(同30.5%増)、純利益421億円(同23.9%増)となり、上半期過去最高の売上高となり、5期連続の増収増益。請負型、ストック型、開発型とも増収増益となり収益構造の安定化が業績を押し上げた。
セグメント別では主力の戸建住宅は消費増税の反動減で影響は受けたものの1棟単価が上昇し、相続税対策などで大幅に伸びた賃貸住宅が戸建ての落ち込みをカバーした。また、リフォーム、不動産フィー事業も高水準で推移し、戸建て分譲やマンションは利益率が改善した。国際事業では政治・経済改革の影響を受けた中国は不振だったが、オーストラリア、シンガポール、アメリカはいずれも販売は好調に推移している。
通期予想では売上高1兆8,200億円(前期比0.8%増)、営業利益1,420億円(同7.6%増)、経常利益1,490億円(同30.5%増)、純利益860億円(同7.8%像)を見込む。配当も期初予想通り50円(前期43円)に増配する予定。
受注状況では、消費増税の反動減を受け、戸建住宅は期初予想の15.3%減を大幅に上回る33.3%減となり、他の事業でカバーしたものの全体で10.2%減となった。
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記者は木造ファンだから書くのだが、同社の木造戸建てブランド「シャーウッド」が同社主力の「鉄骨戸建」を激しく追い上げ、消費増税の駆け込み反動減の厳しい環境下でも大健闘している。過熱(加熱)にも冷え込みにも「木造」は強いことを証明した。
同社の当第2四半期の戸建請負事業の鉄骨戸建(以下「鉄」)売上げ戸数が4,941戸(前年同期比4.8%減)、売上高が1,502億円(同13.1%減)となっている。一方、木造のシャーウッド戸建(以下「木造」)は戸数が2,102戸(同1.8%増)、売上高が721億円(同1.2%増)となっている。
また、分譲住宅事業の「鉄」の売上げ戸数が802戸(同8.7%減)、売上高が224億円(同9.2%減)となっている。これに対して「木造」は戸数が334戸(同5.9%減)、売上高が0.4%増)となっている。
受注高も同様だ。「鉄の」戸建請負の第2四半期受注棟数は「鉄」が3,302戸(同40.7%減)で、「木造」は1,743戸(同29.8%減)、分譲の「鉄は」639戸(同29.9%減)で、「木造」は308戸(7.2%減)だ。
絶対数が大きく異なるので単純比較はできないにしろ、木造が大健闘していると受け取れる。
この傾向は今期だけではない。ここ数年来続いている。2011年度の戸建請負の「鉄」が10,905戸だったのに対し「木造」は3,807戸だった。2013年度は「鉄」は10,658戸(2011年比2.3%減)であるのに対し「木造」は4,392戸(同15.4%増)となっている。つまり「鉄」はやや頭打ちで、「木造」がものすごい勢いで「鉄」を追い上げている構図だ。このまま「鉄」が横ばいを続ければ、10年後には「木造」が逆転する可能性もある。
この話をすると同社関係者は笑って取り合わない。営業マンの配置構成は「鉄」が7に対し「木造」は3だという。ならばこの比率を変えたらどうなるのか、あるいはまた鉄と木造の垣根を取っ払ったらどうなるか。これは興味深い。
同社も営業マンも受注するのなら鉄だろうが木造だろうがどちらでもいいはずだ。決めるのはお客さんだ。これは言い過ぎかもしれないが、住むなら鉄より木がいいに決まっているではないか。国も木造の普及促進に必死だ。同社の鉄と木造の数値は今後も注視したい。
ポラスの新ブランド「ルピアコート光が丘公園」〝新価格〟でどう挑む
「ルピアコート光が丘公園」完成予想図
ポラスグループの中央住宅マインドスクェア事業部は9月4日、同社の分譲マンションの新ブランド〝LEPIA COURT(ルピアコート)〟の第一号物件「ルピアコート光が丘公園」の見学会を行った。光が丘公園に徒歩3分の立地で、価格は未定だが〝新価格〟になるのは間違いない。
物件は、東武東上線成増駅から徒歩10分、東京メトロ有楽町線成増駅から徒歩8分、板橋区赤塚新町に位置する5階建て全50戸。専有面積は59.81~84.60㎡、価格は未定だが70㎡台で5,000万円を超える予定。完成予定は平成27年3月上旬。設計・監理はジェイ・ディ-・エス。施工は川村工営。販売代理は東京中央建物。10月中旬から販売開始する。
「LEPIA COURT」とは、フランス語の定冠詞「Le」と「Utopia」(理想郷)を繋いだ造語で、「宮廷」を意味する「COURT」を合わせ「理想の空間」をコンセプトにしたもので、木の温かみを盛り込んでいる。
商品企画は、50戸のうち54%にあたる27戸が角住戸タイプで、実用新案取得のピアキッチン、ライトコート付き、奥行き3mのテラス付き、新しい提案を盛り込んだ中和室付きなどが特徴。食器棚は標準装備、引き戸は開閉ともソフトクローズ機能付き。
また、スマートキーシステムを採用し、カギ穴がない玄関ドア、不在でも玄関まで食品を届けるサービスも盛り込む。
発表会で同社マインドスクェア事業部長・金児正治氏は、「従来のブランド〝ライフピア〟を残しながら、あるべき姿を提案するために新ブランドを立ち上げた。戸建て採用している木の素材を取り入れた。まだまだ足りない部分があるか今後進化させたい。3年後には現在30億円のマンション事業を100億円に、主力の戸建て事業を150億円にして合計250億円にしたい」などと意気込みを語った。
「ピアキッチン」
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金児氏は冒頭、「挨拶は5分間の予定になっているが、それじゃ終わらない」と前置きし8分にわたってマンション、戸建て事業のほかジョイント・ベンチャー、リノベーション・リファイニング、再開発、建て替えなどについて語った。
ここでは一つひとつについて触れないが、ポラスが本格的な戦いを挑むという意思表明と受け取ることができる。だからこそマンションブランドに定冠詞「Le」をつけたのだろう。ここ数年、同社がアピールしているピアキッチン。これに似たものは億ションのモデルルームで採用されていたようにスグレモノだ。モデルルームにはないが中和室の提案もなかなかいい。引き戸、鍵穴なしの玄関ドアもしかり。問題はこれらの商品企画をどうユーザーにアピールするかだ。
「価格は未定」と担当者が強く言ったのでここでは書かない。2~3年前に成増駅前で分譲されたマンション坪単価より高いということにとどめておく。
ポラスだから言うのだが、あえて注文もつけたい。気のぬくもりがコンセプトになっているはずだが、本物の木が採用されているのはピアキッチンのみだ。床のフローリングは無垢材と見まがうほどではあったが、シート張りだった。同社の戸建てでは無垢のフローリングは常識だ。それなのにマンションはどうしてそれをやらないのか。「傷がつかないから」というのは、本物が採用できないデベロッパーの言い訳だ。
さらにもう一つ。これは他のデベロッパーも考えてほしい。モリモトのマンションについてだ。同社は8月8日付で「ディアナコート本郷弓町」(分譲40戸)が完売したとホームページで公開した。販売開始から2カ月くらいしかたっていないはずだ。
詳細は別掲の記事を参照していただきたいが、徒歩4分で坪単価は410万円。4年前、野村不動産が東大赤門前で分譲したマンションの坪単価は360万円だった。
分譲時期は異なるが、「プラウド」と互角以上の勝負をモリモトはやった。しかし、モリモトがここまで来るまでに20年かかっている。建築費を価格に転嫁しただけではユーザーを納得させることはできないということだ。
「中和室」
あっぱれ!モリモト階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)
乾杯は日本酒、国産材の輸出の話に花咲く 初めて木住協を取材
国産の銘木
日本木造住宅産業協会(会長:矢野龍住友林業会長、略称:木住協)の平成25年度の440社の会員による住宅着工戸数は97,479戸(前年度比107.5%)と5年連続して増加し、このうち木造戸建住宅は94,757戸で初めて9万戸を超え、国交省の新設木造戸建住宅着工に占める会員シェアは18.8%となった。9月3日行われた記者報告会&懇親会で発表した。
このほか、平成25年省エネルギー基準適合住宅の戸数は5,348戸となり、次世代省エネルギー基準適合住宅と合わせ、会員の両省エネルギー基準の適合比率は74.5%で、前年比1.7%増加した。
長期優良住宅戸建て着工戸数は31,390戸で、木住協戸建住宅に占める割合は33.1%となった。
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木住協を取材するのは初めてだった。これまで縁がなかっただけで、会員会社が供給する分譲戸建ては結構取材してきている。
さて、この木住協だが、木造建築工事業者だけでも約5万社もいるこの業界で会員が440社で、その会員の木造戸建住宅の着工戸数シェアが18.8%というのは高いのか低いのか。記者は判断材料を持たないが、会員の1社当たり着工戸数が約215戸で、省エネ基準適合住宅や長期優良住宅の着工比率などからすれば、わが国の木造軸組工法の普及・技術革新に貢献し、水準以上の〝良質住宅〟を供給している住宅メーカーの業界団体ということができる。
記者は木造住宅のファンでもあるが、初めての取材で面白いことをいくつも発見した。以下に紹介する。
ひとつは懇親会の乾杯について。同業の記者は40人くらいいたか。乾杯が始まるとき、甘い香りが漂った。スタッフが紙コップを配った。自分でビールを注げというのでもなかった。中に少量の水ではない日本酒が入っていた。
これには驚いた。30数年間、業界の記者をしていて日本酒で乾杯する会合は初めてだった。いま日本酒で乾杯する行事は神事か鏡割り、正月のお屠蘇くらいだろう。
挨拶に立った熊建夫・同協会専務理事は「木の文化は日本酒に通じる」と話した。なるほどと思った。いっぺんに熊氏が好きになった。熊氏は山口県出身だそうで、早速、記者と山口県の名酒「獺祭」の話になった。いつもは熊氏が手に入れた獺祭で乾杯するのだそうだが、最近は手に入らないので、この日は獺祭によく似た兵庫県の「龍力」が出された。誰も手を付けないから、記者は720mlの龍力をほとんど一人で飲んだ。熊氏は洒落者だ。龍力が獺祭に似ているのではなく、きっと矢野会長の「龍」にあやかったものだと思う。
熊氏は絨毯敷きのマンションの床をフローリングにするかどうか奥さんと検討しているそうで、記者は熊氏を挑発した。「木住協の専務理事が輸入材では情けない。ここは絶対国産材」と。熊氏は「コストと相談する」と話した。さてどうなるか。
もう一人は能勢秀樹・同協会運営委員長(住友林業顧問)の話だ。能勢氏は約5分間、住宅業界の近況を話したのだが、この間、「想像を超える苦戦」「こんなに悪いとは」「心配」「危惧している」「苦しい」「落ち込んでいる」「30代は住宅取得をあきらめざるを得なくなる」などと業界の置かれている状況を正直に話した。
能勢氏は、他の木造住宅に関する会合などで何度も話を聴いているが、能勢氏に「マイナスのことばかりではなく、一つ前向きの話を聞きたい」と水を向けた。能勢氏は国産材の輸出の可能性を熱っぽく話した。暗い話はすっ飛び、話に花が咲いた。
最近農産物の輸出の話はよく聞くが、国産材の輸出が有望な市場になるという能勢氏の考えは検討に値すると思う。木の話をさせたら能勢氏の右に出る人はいないのではないか。
熊氏と能勢氏には「木造住宅の普及のため、厳しすぎる防火・耐火基準を緩和すべきだと思うが、私は〝それじゃ燃えていいのか〟という反論には黙らざるを得ない」とはなしたら、能勢氏は「確かに。木は火に弱いという刷り込みをなんとかしないといけない」と話した。
ついでにもう一つ。会場となった木住協の会議室には225種くらいの世界の銘木見本が3つの額に収められ飾られていた。
木住協の銘木見本は貰ったもののようで、かつて喫煙室にあったそうだ。タバコに燻されていい表情を出すのかもしれないが、木を大切にする木住協としてはいかがなものか。今はちゃんときれいに掃除して飾っているとのことだった。
記者は戸建てやマンションの取材のとき、必ず使用されている床材や建具・家具の樹種を聞く。すぐに答えられる営業マンは少数だ。知らない記者も問題だか、どのような木が使われているか説明できない営業マンは失格だ。しっかり調べお客さんに説明すべきだろう。街路樹もそうだが、われわれは木について知らなさすぎる-ここに森林・林業の荒廃があり、鉄やらコンクリに押され気味の木造住宅の現状が象徴的に表れているような気がする。
外国産の銘木
代ゼミの廃校問題 法律の壁厚く不動産事業への展開は難しい
学校法人高宮学園が経営する三大予備校の一つ、代々木ゼミナールが全国28校舎のうち本部校(新宿)など7校拠点に集約し、その他の校舎については平成27年度から募集を停止することが話題になっている。
現段階では廃校になる校舎がどのようになるか代ゼミは公表していないが、校舎がほとんどすべて地方都市の一等地に立地することから、不動産業界が跡地利用に大きな関心を寄せている。
記者は、学校法人のことや廃校となる校舎の敷地規模、権利関係はいっさい分からない(抵当権などはついていないと思われるが)ので適当なことは言えないが、学校法人のまま不動産事業を展開するにはハードルが高すぎるような気がする。
代ゼミが「受験人口の減少や現役志向の高まりに伴う浪人生の減少」を理由に校舎の集約を行い、27年度以降も継続して募集すると発表したのは、本部校(新宿)、札幌校、新潟校、名古屋校、大阪南校、福岡校、および造形学校(渋谷区原宿)の7拠点。
廃止するのは仙台校(仙台駅東口前)、高崎校(高崎駅東口前)、大宮校(大宮駅西口2分)、柏校(柏駅西口4分)、津田沼校(津田沼駅南口1分)、池袋校(池袋駅東口5分)、立川校(立川駅南口5分)、町田校(町田駅東口5分)、横浜校(横浜駅東口5分)、湘南キャンパス(大船駅5分)、浜松校(浜松駅1分)、京都校(京都駅中央口8分)、大阪校(江坂駅2分)、神戸校(三宮駅2分)、岡山校(岡山駅8分)、広島校(広島駅5分)、小倉校(小倉駅10分)、熊本校(熊本駅1分)など21校。
各校の交通便を見ると、すべてが最寄駅から10分圏内というより、かつて丸井がCMでヒットしたのと同じ〝駅のそば〟だ。もっとも駅から遠い小倉校も川を挟んだ対面は北九州市役所。ここも市内の一等地であるのは間違いない。首都圏の池袋校、柏校、大宮校、津田沼校、町田校、横浜校などは仮に分譲マンションだったら坪単価は最低でも二百数十万円はするし、池袋校なら400万円を突破する。敷地規模がまったく分からないが、すべての校舎の資産価値は千億円単位だろう。
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デベロッパーならずとものどから手が出るほど欲しい物件だが、処分するなり代ゼミが不動産業を営むのはかなり難しいハードルがある。
学校法人は、その公共性・公益性を考慮して様々な税制上の優遇措置が講じられている。法人税・事業税は収益事業から生じた所得に対してのみ課税され、税率も軽減措置が取られている。国税の所得税などは非課税だし、校舎などの不動産については不動産取得税・固定資産税、都市計画税などが非課税となっている。
収益事業とは日本標準産業分類に定められている18業種で、ほとんどの事業ができることになっている。禁止されるのは投機的事業、風俗業、規模が学校の状態に照らして不適当なもの、その他学校法人としてふさわしくない方法によって経営されるものなどだ。
代ゼミが廃校する施設を売却するなり自らが事業を興す場合は、法律に基づき管轄する東京都の許認可が必要になる。
これが難問だ。東京都は「現在、代ゼミさんからは何の相談もないのでコメントできませんが、学校経営より収益事業が大きくなる場合は難しいですし、売却する場合でもきちんと審査します」と話している。
小泉内閣による一連の規制改革で、設立認可の弾力化によって学校法人を作りやすくし、株式会社による学校法人の経営参画をやりやすくする方針が打ち出された。
代ゼミの問題はその逆だ。「受験人口の減少や現役志向の高まりに伴う浪人生の減少」を理由に、いとも簡単に廃校-収益事業に転換できるとしたら「教育」を隠れ蓑に課税を逃れ、営利事業ができることにならないか。とはいえ、廃校となった一等地の不動産をどう活用するのかはしっかり論議すべきだ。
積水ハウス 暗闇の世界が体験できる「対話のある家」
積水ハウスは9月2日、同社の大阪の情報受発信拠点「SUMUFUMULAB(住むフムラボ)」でダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの共創プログラム「対話のある家<秋~冬プログラム>」を9月28日から12月22日まで実施し、実施に先立ち9月5日からチケットを発売すると発表した。
光が完全に遮断された「純度100%の暗闇」の中にグループ(6人まで)で入り、暗闇のエキスパートである視覚障がい者のアテンドのサポートのもと、住まいにおける様々な生活シーンを体験する。
昨年の開催から約5,700人が来場しており、対話の大切さ、五感で感じる心地よさ、家族の絆など新たな発見や新鮮な気づきがあったという来場者の声がたくさん寄せられているという。
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これは記者もお勧めだ。田舎育ちの記者は「真っ暗闇の世界」が日常だった。今と違って、昔は街灯などなかったから、夜、外に出ると真っ暗闇の世界が広がっていた。明かりは月と星、夏ならホタルくらいだ。聞こえるのは風の音と梢のささやき、せせらぎの音、虫の音、犬の遠吠え、フクロウのラブコールくらいだった。
実は本日、里山を保全しつつ持続可能なライフスタイルを提案するNPO「よこはま里山研究所(NORA)」のメルマガに掲載されているNORAの理事でもある松村正治・恵泉女学園大学准教授のコラムを読んだのだが、それは激減する「草地」のことが書かれていた。(NORAのメルマガはhttp://nora-yokohama.org/)
記者は早速、「私などは少年のころ、草地に寝そべり、あれやこれや夢想しはらはらと涙を流したものです…野原一面に咲いた彼岸花を木切れでなぎ倒す快感を皆さんは理解できるでしょうか」と返事した。
「真っ暗闇」も同じだ。流れ星を数えながら家族のこと、世のはかなさ・せつなさ、初恋の彼女などを思いめぐらし甘くてしょっぱい涙をハラハラと流した。涙には「痛い」涙があることは失恋して初めて知った。自然の暗闇と人工の暗闇とは全然異なるだろうが、疑似体験を経験してみる価値はありそうだ。
ところで皆さん、先日、千歳烏山の「七つの子」の記事を書いたが、「七つの子」とは「7羽」なのか、やはり人間で言えば「7歳の子」なのか、どちらでしょうか。「カラスの勝手」などと言わないでください。昔、農家の母親はみんなカラスが家に帰るころになっても野良から帰ることはほとんどありませんでした。
大成有楽不動産「オーベル志村城山」全67戸が2カ月で完売
「オーベル志村城山」完成予想図
大成有楽不動産は9月2日、都営三田線志村坂上駅から徒歩3分のマンション「オーベル志村城山」(全74戸のうち分譲67戸)が5月29日の販売開始から約2カ月で完売したと発表した。
専有面積は62.29~101.68㎡、価格は3,690万~7,490万円(最多価格帯3,800万円台・5,000万円台・5,100万円台)。問い合わせ件数は約1,100件、総来場者は約500件。
同社は人気の要因として、「『志村坂上』周辺エリアにおける一等地にふさわしいハイスペックな商品企画を採用した」ことを上げている。
契約者の属性は、現居住地は板橋区が44.8%、年齢は30歳代が44.8%、40歳代が25.4%、家族構成は夫婦と子ども52.5%、夫婦27.1%、居住形態は賃貸マンションが49.2%、社宅・官舎が28.6%、自己資金は1,000万円以上が53%、年収900万円超が37%。
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早期完売は当然だと思う。アッパーミドルをターゲットにしたのが大正解だろう。
このマンションについては4月に取材しているので、その記事を参照していただきたい。記事では「モデルルームは100㎡のオーダータイプ。同社のオリジナル商品を開発していく取り組み『O-range LABO(オレンジラボ)』から生まれた『オレンジ収納』をフル装備しているほか、大理石、御影石をふんだんに用いている。キッチンシンクはユーティリティシンクを採用。ドア把手は壁面から出っ張らないようセットバック。物干しポールをリビングに取り付けている」と書いた。
「モチイエ女子」は自立する女性が多い 「モチイエ女子project」調査
三井不動産レジデンシャルが立ち上げた〝今どきモチイエ女子の赤裸々な暮らしぶりを明らかにする〟「モチイエ女子project」が、家で過ごす平均時間からひとりごとの実態、飲食事情、家事、風呂上りに着るものなど職場の同僚、友人・知人には見せない家の中での生活実態を調査した結果をWebで公開した。
調査結果によると、「モチイエ女子」が「外出せずに、家にずっといても平気な日数」「毎日酒を飲む」「一人で外で食事をする」「家事頻度」などの項目で他を圧倒していることが報告されている。
調査対象は、住宅を購入した「モチイエ女子」、「賃貸一人暮らし女子」、実家暮らしの「実家女子」の3タイプで、大都市圏に住む年収が250万円以上の25歳から45歳の単身女性。
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「モチイエ女子project」のWebは、派手な色づかいといいたくさんマンガが出てくるのには面食らってしまうし、「30歳のとき、家でゴキブリを発見したことを機に引っ越しを決意し、賃貸ではなく家を購入」した主任研究員、「悩みを人に相談することはあまりしないタイプ。でも実は寂しがり屋。今住んでいる賃貸マンションのお風呂が狭いことがちょっと不満」の賃貸一人暮らし研究員、「マイペースな性格で、読モ経験があるほど可愛い」実家暮らし研究員の行動や考えが理解できない。
ゴキブリを発見しただけでマンションを購入するということは資金がないとできないことだし、賃貸マンションの風呂が狭いのは当たり前だし、悩みを打ち明けられる人をつくるべきだし、「読モ」はもうさっぱり分からない。ウィキペディアで調べたが女性雑誌の表紙を飾ることか。
それでも確かに独身女性の一人暮らしぶりが〝赤裸々〟に報告されていると思う。飲酒で言えば、「モチイエ女子」は酒を楽しみ、「実家女子」はストレス発散のために飲む機会が多いというのは面白い。湯上り後、「パンツだけ」とか多くはないが素っ裸でいる「モチイエ女子」がいることも驚いた。
「うわ」「ふざけんな」「ムカツクー」「ただいま」「がんばるぞ!」などぶつぶつと独り言をしゃべっているのは、職場や地域で正当な扱いを受けていない独身女性の叫びであり自分を奮い立たせる努力であろうと思うと、男としての責任も感じるし、「より輝ける文化を醸成する」ことが目的の「モチイエ女子project」にエールを送りたい。
調査結果から何を読み取るかは人それぞれだが、記者は「モチイエ女子」がより自立した女性が多いと理解した。我田引水だが、自立を促すマンションの記事を書いてきたことは間違っていないと確信する。
「立川」に続き「京急蒲田」 駅直結の威力まざまざ野村不動産
「プラウドシティ蒲田」完成予想図
野村不動産・住友商事の「プラウドシティ蒲田」を見学した。野村不動産のマンションでは先に驚異的な売れ行きを見せた「プラウドタワー立川」と同じ、駅とペディストリアンデッキで結ばれた「駅直結」の再開発マンションで、単価も人気も同じ展開になりそうだ。
物件は、京浜急行線京急蒲田駅から徒歩1分、大田区蒲田4丁目に位置する20階建て全320戸(分譲は161戸)。専有面積は38.25~101.50㎡、1期(予定120戸)の予定価格は3,599万~11,999万円(中心は5,000万円台半ばから7,000万円台)。設計・監理はアール・アイ・エー。施工は東急建設。竣工予定は平成27年12月下旬。第1期分譲は9月13日(土)の予定。
再開発計画が持ち上がったのは1996年。京急線の連続立体交差事業計画に伴って地元、行政が一体となって「けいかまみらい2025」を提案。2009年に再開発事業の都市計画決定がなされ、野村不動産が参加組合員に決定。その後、2013年に住友商事が参加組合員に加わった。
4層からなる駅舎とは2階部分のペディストリアンデッキで結ばれ、建物の地下1階から3階までは生活利便施設が整備される。
建物はコの字型で、南東向きと北西向きが中心。スケルトン・インフィル(SI)、制震構造が採用されている。
商品企画では、キッチンカウンターは御影石、ディスポーザー、食洗機が標準装備。浴室の床は畳のように柔らかく、ヒヤッとしないTOTOのマンションでは初採用の「ほっカラリ床」が採用されている。
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見学に出かけるとき、同行してもらう同社の広報マンと新宿駅でばったり出くわした。その道すがらマンション市況やら景気のことやらを話したのだが、「蒲田」の物件にふさわしく広報マンに「カマ」を掛けた。「蒲田と言っても京急ですからね。私はJRと必死で戦っている京急が好きですが、まさか坪300万円はしないでしょうね」と。広報マンは「そんなに安くない」と記者を一蹴した。
現地の販売担当者からは「坪単価は書かないで」と言われたのでここでは書かないが、坪単価は300万円をはるかに突破し、「立川」の340万円よりは安いととどめておく。
しかし、京急蒲田が国際空港・羽田と5分でつながり、品川へ6分、リニアが開業すれば名古屋へも1時間くらいになると考えれば、この単価はあり得ない単価ではない。
今から4年前、JR大森駅から徒歩6分、京急大森海岸駅から徒歩3分の「免震」と「外断熱」の両方を兼ね備えたナイス「アルシア大森」(36戸)は坪単価279万円だったが瞬く間に売れた。それとの比較からしても第1期で120戸供給というのも納得できる。
それにしても「立川」に続き「京急蒲田」でも野村不動産は「駅直結」の威力をまざまざと見せつけた。これはすごい。