ポラス 衝撃的な戸建て「倒壊シミュレーション」開発
ポラス 衝撃的な記者発表会
日本初 地震の揺れを動画で見られる「倒壊シミュレーション」開発
上が耐震等級1、下がポラス仕様の等級3
シミュレーションでは建築基準法「耐震等級1」の全8棟が全半壊
ポラスグループのポラス暮し科学研究所は6月17日、3次元の立体検証が可能なオリジナル構造計算ソフト「ウッド・イノベーター」を 開発し、独立行政法人建築研究所の倒壊解析ソフト「wallstat (ウォールスタット)」と連携させることで、地震時に建物がどのように揺れるかを設計段階で確認できる「倒壊シミュレーション」が可能になったと発表し た。「倒壊シミュレーション」は同社グループのポラスタウン開発が8月に分譲する「グレースヴィラ越谷レイクタウン」(31棟)の全棟で検証する。実際に 分譲する戸建てでこの種の検証を行なうのはわが国初という。
同社グループはこれまでも分譲・注文住宅を建設する際、全棟で地盤調査や構造計算を行い建築をしてきた。従来の構造計算では2次元の 平面的な検証しかできなかったが、3年間の開発期間をかけて3次元の立体検証が行なえるソフトを開発した。これにより、2次元では難しかったスキップフロ ア、斜め壁や傾き壁などの検証も容易になり、適切な部材の選定や耐震性能の向上が図れるようになったとしている。
また、3年前に開発された wallstat は3次元の立体検証ソフトと連動させないと精度の高い解析が得られず、一部の研究者・構造技術者にしか活用されてこなかったという。
現行の建築基準法では、木造住宅は3階建て以上に構造計算が義務付けられているが、2階建て以下の木造住宅は「壁量計算」という仕様規定に基づいて建築確認申請を行なえばよいとされており、構造計算は長期優良住宅などを除き免除されている。
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耐震等級1のシミュレーション |
◇ ◆ ◇
同社が行なった「倒壊シミュレーション」の画像を見て衝撃を受けた。シミュレーションは、同社グループが実際に分譲する「グレースヴィラ越谷レイクタウン」の8棟を例に、JMA神戸波(阪神・淡路大震災)を想定して建基法の「耐震等級1」と「耐震等級3」とではどのような差が出るかを動画で示したものだ。
まず、同研究所の構造計算担当責任者の生産プロデュースG 主席研究員・上廣太氏の「誤解のないようにお願いしたいのは、これはシミュレーションであること。実際は外壁材など壁を設置することで強度は高まる」との前置きのあと、「耐震等級1」のケースの画像が映し出された。8棟のうち4棟は瞬く間に倒壊した。そのほかの4棟は倒壊は免れたものの、ほぼ全壊に近いダメージを受けていた。次に同社が実際に採用する「耐震等級3」のケースが映し出された。ほとんど損傷はなかった。
建物の耐震性については、耐震等級1でも倒壊する場合があるという研究データは発表されていたし、耐震等級3は「絶対安心」と言い切れなかった。建物の間取りや地盤、地震波によっても異なってくるからだ
しかし、それでも記者は阪神・淡路や東日本大震災の被害状況から判断して、現行の新耐震基準、つまり「震度6強から 7 程度の激震でも建物が倒壊せず、人が死ぬことはない」ということを信じてきた。
それが今回のシミュレーションで木っ端微塵に打ち砕かれた。あの阪神淡路で見た光景がまざまざとよみがえった。動画は上下左右、様々な角度からほとんど全ての柱や梁、筋交いの損傷具合が赤-黄などに色分けされリアルに映し出された。
次に沸いた疑問は、いったい耐震等級1で建設された注文住宅・分譲住宅はどれぐらい全国にあるかだった。年間数万戸はあると考えたがどうだろう。
耐震等級1のシミュレーション
◇ ◆ ◇
記者発表会に臨んだ同業の記者も衝撃を受けたようだ。なによりも質問が相次いだことにそのことが現れている。通常、記者発表会の質疑応答で質問するのは2~3人、多くて5人ぐらいしかしない。ほとんどないケースも少なくない。記者などは、わざわざ呼んでくれたのに質問しないと失礼と思い、極力質問するようにしている。今回はどうかというと10人ぐらいが質問した。時間も予定の10分を大幅に超える約40分に及んだ。
想定外の反応に同社関係者もびっくりしたのか、「これはあくまでもシミュレーション。間取りや開口部の状況、壁の量やバランスなどによっても異なってくるので、等級1でも倒壊しないケースもある」と、冷静・沈着な対応を求めた。(担当者が「冷静に」といえば言うほど、記者は関係者の間では耐震等級1は危ないということが浸透していると確信した)
他の記者がどのような記事を書くか分からないが、「倒壊シミュレーション」を見るユーザーは相当衝撃を受けるだろう。と同時に、同社の建物の耐震性能や居住性能の向上にかける意欲、執念も実感できるのではないか。
記者は、上廣氏も会見で挨拶した同研究所所長・菅原庸光氏も耐力壁ジャパンカップの取材などでもよく知っており、研究熱心なのはよく分かる。開発にいくらかかったかは聞いても教えなかっただろうが、3年間の苦労が実ったということか。
左から物件担当のシニアマネジャー山田徹氏、菅原庸光氏、上廣太氏
初ものづくし、満艦飾の三井レジ他6社共同「SKYZ」
ハイブリッド免制震など初ものづくし、満艦飾マンション
「東京ワンダフルプロジェクト SKYZ TOWER&GARDEN」
「東京ワンダフルプロジェクト SKYZ TOWER&GARDEN」完成予想図
三井不動産レジデンシャル、東京建物、三菱地所レジデンス、東急不動産、住友不動産、野村不動産の大手デベロッパー6社が勢ぞろいした豊洲の「東京ワンダフルプロジェクト SKYZ TOWER&GARDEN」(全1,110戸)のモデルルームを見学した。長いマンションの歴史の中で大手6社が結集するのは初めてであり、日本初のハイブリット免制震システムにはじまり、地中熱利用、天体観測ドームの設置、販売センターとしては過去最大級のゲストサロン、さらには全16ページにもわたるニュースリリースの量の多さなど、初ものずくしの満艦飾のマンションだ。
物件は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩12分、ゆりかもめ新豊洲駅から徒歩5分、江東区豊洲六丁目に位置する44階建て全 1,110戸。専有面積は53.25~130.92㎡、予定価格は3,500万円台~1億3,900万円台(最多価格帯5,500万円台)、坪単価は 250~260万円。竣工予定は平成26年8月下旬。設計は清水建設。外観デザインは光井純氏。
豊洲新市場をはじめ分譲住宅や賃貸住宅、業務、商業、公益施設など約110haに及ぶ開発が進む豊洲ふ頭の一画に位置し、そのリーディングプロジェクトとして位置づけられているプロジェクトで、敷地面積は約3.2haもある。今回のマンションのほかに550戸のマンションと幼保連携型の認定こども園も予定されている。全体で住宅規模は1,660戸にのぼる。
主な特徴は、①初の総合デベロッパー6社による共同分譲②デザイン性、眺望、緑量に優れた地上約150mのトライスタータワー③光井純氏をはじめ国内外で活躍する建築家による外観・共用空間デザインと天体望遠鏡の設置④地中熱利用など自然エネルギーの活用⑤日本初のシミズ・トライスター型ハイブリッド免制震システムの採用--などで長期優良住宅認定を取得しており、都の「マンション環境性能表示」制度で満点の星3つ(15個)を獲得している。
天体観測ドーム
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このマンションは、先週に記者発表会があり、すでに各社がいろいろ書いていることについてはあまり触れない。記者はうっかりして参加できなかったのだ。
まず、大手6社の共同分譲について。過去、3社共同というのは真っ先に三井不動産レジデンシャル・野村不動産・三菱地所の「ザ・センター東京」を思い出すし、4社も三井不動産レジデンシャル・野村不動産・三菱地所・東京建物の「ザ・豊洲タワー」がある。5社共同というのは記者の記憶ではない。海浜幕張の「パティオス」は各社が分譲しているが、これは共同というより〝競演〟だった。
今回、大手が揃い踏みしたのは、震災後の厳しい状況下でみんなが手を組んで湾岸の市場を盛り上げようということで意見一致したと見られる。本音としては避けたいが、かといって乗り遅れたくないという心理も働いたのではないか。6社とも豊洲エリアでは供給実績があり、今後も周辺でたくさん供給する。メンバーに外れたら今後の展開に影響を及ぼしかねない。
単価についてはリーズナブルなものだろう。中央区アドレスの晴海が274万円だから上値が抑えられている。いくら豊洲が人気だからといってそれより上回るのはありえない。かといって東雲などよりは高くなるのもまた当然だ。
いわゆる億ションは最上階の6戸だけにとどまるようだ。これは正解。いくら眺望がいいとはいえ、江東区豊洲の億ションではステイタスはそれほどない。問題は戸数の多さだ。単価が異なるのであまり競合しないかもしれないが、晴海では三菱地所レジデンスのほか住友不動産が着工したし、三井不動産レジデンシャルのタワーマンションもある。月島では三井不動産レジデンシャルと野村不動産の物件があるし、勝どきでは再開発マンションもある。戸数は数千戸。人ごとながら大丈夫かといいたくなる。
プール
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幹事会社に三井不動産レジデンシャルがなっているように、商品企画は明らかに同社のものだ。光井純氏を外観デザインに起用したのがその表れだ。光井氏は同社の首都圏のマンションで10物件以上手掛けている。ベージュなとのアースカラー、マリオン、頭頂部などを見ればすぐ光井氏の作品であることが分かるぐらい記者も好きだ。トライスター型の形状も、光井氏が「芝浦アイランド」で採用したのと同じだ。
このほか三井不動産レジデンシャル以外の光井氏が手掛けたマンションでは東京建物の3物件を知っているが、ほかは単独ではないのではないか。
モデルルームタイプで75㎡台のものがあったが、これも同社が考えたプランだろう。LDKを中央に配し、主寝室(7.2畳大)とマルチルーム(9.2畳大)をそれぞれ左右に配したプランだ。これに似たプランを記者は武蔵小杉で見ており、「これはいい」としっかり頭の中に叩き込んだ。それが今回のプランになったのではないか。担当者に聞いたらこのプランが一番人気だという。プランに特許はないはずだから、同業他社もこれを真似るといい。絶対にヒットする。
それにしても光井氏も含む〝オール三井〟のマンションで、一番得をするのはどこだろう。三井不動産レジデンシャルの事業比率は50%もないようだ。
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約10分のシアターがなかなかだ。イメージキャラクターの俳優・江口洋介さんは全然知らなかったが、もう40年も昔にヒットしたルイ・アームストロングの名曲「この素晴らしき世界」(What a Wonderful World=歌手は日本の女性だった)がBGMとしてずっと流れたので、その意図はよく分かった。
3.11以降はこのような癒し、絆をテーマにしたシアターが主流になりつつある。5面シアター、2層のエスカレータを登りながら星空を再現してみせる仕掛けも若い人には理解されるだろうと思った。
マルチルーム
長期優良住宅が「CASBEE」で評価されないのはなぜ
長期優良マンションが「CASBEE」では評価されないのはなぜ
昨日の記事で三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ LaLa 新三郷」は免震構造・長期優良住宅認定マンションでありながら、環境性能を評価する「CASBEE 埼玉」では満点の星5つ(素晴らしい)に1つ欠ける4つ(大変良い)しか獲得できておらず、同じように埼玉県で初の免震・長期優良住宅認定マンションで、168戸が即日完売した野村不動産「プラウド大宮」も「CASBEE さいたま」では星3つ(良い)の評価しかされていないと書いた。100点満点で言えば「新三郷」は80点、「大宮」は60点ということになる。
いうまでもなく「長期優良住宅」は、平成21年4月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」によって構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性の性能を有し、かつ、良好な景観の形成に配慮した居住環境や一定の住戸面積を有する住宅が認定されるものだ。認定を受けた住宅は、住宅ローンや不動産取得税、固定資産税などの税制面で優遇措置を受けられるようになっている。
一方の、「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、国交省の支援のもと財団法人建築環境・省エネルギー機構が中心となって10年ぐらい前から推進しているもので、建築物の環境品質と建築物の環境負荷の両面から評価し、評価結果を「Sランク(素晴らしい)」から「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階のランキングによって示されるものだ。自治体によっては条例で環境性能評価の届出を義務づけ、数値を広告などに表示するよう義務づけているところもある。
首都圏では東京都は「CASBEE」ではないが、同様の「マンション環境性能評価」制度を平成17年に設け、一定規模以上のマンションの広告に環境性能を示すラベルの表示を義務付けている。当初は「建物の断熱性」「設備の省エネ性」「建物の長寿命化」「みどり」という4つの評価項目につきそれぞれ星3つで評価(満点は星12個)し、平成22年度からは「太陽光発電・太陽熱」の項目を追加し、5項目全てで満点の場合は星15個となっている。このほか埼玉、神奈川県の各県と主要な都市が実施している。千葉市と柏市を除く千葉県には評価制度がない。千葉県のマンションの価格が相対的に低いのはこのためかどうかは書かない。
では、どれぐらいのマンションがSランク(都の場合は満点の星3つ)を獲得しているか。
都の満点は結構ある。22年度以降の新制度では三井不動産レジデンシャル「パークコート六本木ヒルトップ」(270戸)、野村不動産「プラウド東雲キャナルコート」(600戸)、三井不動産レジデンシャル「パークタワー東雲」(585戸)、三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見」(505戸)、大手デベロッパー6社共同「SKYZ TOWER & GARDEN (東京ワンダフルプロジェクト)」(1,110戸)の5物件が星3つ(15個)だし、旧制度の星3つ(満点で12個)では10物件ぐらいある。
他の県は極端に少ない。埼玉県下ではSランクのマンションはこれまで1件もないし、神奈川県は長谷工コーポレーション他「ブリージアテラス淵野辺」(220戸)の1件のみだ。横浜市は三菱地所レジデンス他「M.M.TOWERS FORESIS」(1,226戸)、野村不動産「プラウド綱島」(99戸)、東京建物他「Brillia City 横浜磯子」(1,230戸)の3件、川崎市は東京建物「Brillia e-SQUARE」(129戸)と川崎市住宅供給公社「川崎ゲートタワー」(110戸)しかない。
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記者は長期優良住宅はもちろんだが、「CASBEE」についてもマンションを見学した際や住宅情報誌を見るとき必ずチェックする。もちろんデベロッパーがSランク(都の場合は星3つ=15個)を取得して欲しいからだし、ユーザーもマンションの選択に役立つと思うからだ。
ところが、冒頭のようなことが起きた。どうしてこのような結果が出るのか。それは長期優良住宅と「CASBEE」の評価のモノサシが異なるからだ。長期優良住宅は基本性能や「居住」環境を評価するし、「CASBEE」は居住環境よりも「自然」環境性能を評価している。この差だ。
例えば、長期優良は居住面積や建物の維持・管理、可変性も重要な評価ポイントになるが、「CASBEE」は居住面積、居住性などはあまり重視していない。強いてあげれば「サービス・性能」という評価項目だが、これはマンションの機能のすべてを包含する項目ともいえるが、逆に極めてあいまいな評価項目だ。お叱りを受けるかもしれないが、「CASBEE」は環境には優しいが、人に優しいという哲学が欠落しているように思う。
もう一つは、デベロッパーの姿勢、インセンティブの有無だ。長期優良は住宅ローンなどの優遇措置があり、ユーザーにアピールしやすいので各社は取得に積極的になっている。一方の「CASBEE」は、住宅ローン金利を引き下げたり容積率の割増を行っているところもあるが、全体としては優遇策は少ない。
これまで長期優良認定を取得した首都圏マンションは記者が把握している範囲内で20件近くあるが、このうち「CASBEE」でSランクを取得しているのは「東雲」「六本木」「千代田富士見」「川崎」の4物件しかない。
何度も言うが、免震で長期優良マンションが「CASBEE」の評価では満点の100点が取れず、せいぜい60~80点しか取れないのであれば、だれも満点を目指さないのではないか。ハードルを低くしろとは言わない。関係者がよく話し合って双方の整合性を図るべきだ。このままではユーザーから見放されることになる。
ある大手デベロッパーの関係者は「われわれは独自の基準を持っておりプライドもある。長期優良など挑戦しがいのあるものはもちろん取得を目指すが、様々な認定制度で評価されることが最大目標ではない」と語った。
日本土地建物販売 「高井戸」の全戸が即日完売
日本土地建物販売
「ラヴィアンヴェール高井戸」が全戸即日完売
当欄既報の日本土地建物販売の建売住宅「ラヴィアンヴェール高井戸」全12戸が即日完売した。5月25日に抽選分譲した第1期(8 戸)は最高5倍、平均2.3倍、6月8日に抽選分譲した第2期(4戸)は最高6倍、平均3.2倍だった。問い合わせ件数は600件以上、来場者は135件以上にのぼった。
鹿島の品格を見た 借地権の「テラス武蔵野中町」
「鹿島の品格」を見た「テラス武蔵野中町」 売れ行きも好調
「テラス武蔵野中町」完成予想図
鹿島建設が分譲中の普通転借地権付きマンション「テラス武蔵野中町」を見学した。「鹿島の品格」をここでも実感した。5月上旬から販売開始されており、激戦のエリアでこれまで全148戸のうち80数戸が販売され、約9割が契約済みというから売れ行きも好調だ。
物件は、中央線三鷹駅から徒歩10分、武蔵野市中町3丁目に位置する5階建て全148戸。専有面積は52.65~85.80㎡、現在分譲中の住戸(9戸)の価格は4,030万~6,420万円(最多価格帯5,500万円台)。月額地代は7,897円~11,868円、保証金は189,528円~284,832円。竣工予定は平成26年2月上旬。設計・施工は鹿島建設。販売代理は三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス。
現地はも駅北口からかたらいの道(文化会館通り)をまっすぐ進んだもくせい公園の南側に立地。用途地域は準工だが、マンション化が進んでいるエリアだ。
建物はウエストテラス、センターテラス、イーストテラス、パークテラスの4棟構成で、柱や梁型が少ない壁式工法を採用。各住戸は敷地の南側に8階建てのマンションが建っているために西向きや東向きが中心。イーストテラスとセンターテラスの間には中庭を設置し、太陽光発電のほか、風・光・緑を取り込むため全部で7カ所にボイド(ライトコート)を設置したほか、中庭の散水には雨水を利用し、敷地の一部に環境に配慮した「レインガーデン」を設置している。
住戸内はすっきりしたデザインで、廊下幅は一部を除きメーターモジュールを採用。内法で113×150の大型サイズのトイレを採用している住戸もある。床は天然木のような感触が得られるフローリング材だ。オプションを極力少なくしているのも特徴だ。駐車場も駐輪場も地下に設置している。地主さんは、同社のマンション敷地をはじめ一帯を所有しているお寺さんだという。
◇ ◆ ◇
記者は鹿島のマンションを見るのが好きだ。鹿島ファンといってもいい。これまで同社の自社マンションはほとんど見学してきた。基本性能はもちろんだが、とにかく品格がある。美しい。建築家の丹下健三が「美しいもののみが機能的である」と言ったそうだが、鹿島のマンションにそれが当たる。
今回のマンションでも建築美にこだわった仕掛けが施されている。例えば中庭に面した住戸の目隠しアルミルーバー。その間隔をアトランダム(とはいえきちんと計算しているのだそうだが)に配しているのがそうだ。見る方向、角度によって表情をかえる。強度や耐食性に優れた粉体塗装の玄関扉を採用しているのもその一つだ。
一つ残念なのは、同社の最近のマンションはほとんどが富裕層向けかアッパーミドルをターゲットにした物件であることだ。一次取得層が買える坪単価にして200万円を切る、できれば150万円ぐらいのマンションを分譲して欲しいのだが、どうもその期待はかなえられそうにない。
今回、物件の説明をしてもらった同社開発事業本部事業部次長・村松達也氏も「郊外部で最近分譲されているような単価の安いマンションは当社はコスト的になかなか難しい。今回のマンションも借地権付きなので割安感があるとお客さんも判断されているようで、多くの方に購入いただいていますが、当社の社員はなかなか買えない」と苦笑した。
鹿島の経営陣の皆さん! どうか御社の社員が入社10年目ぐらいで買えるような自社マンションを分譲してください(10年ぐらい前の千葉みなとは素晴らしかった)。
◇ ◆ ◇
武蔵野市は平成26年1~2月をめどに建築物の絶対高さ規制を都市計画決定する予定だ。同社のマンションのある地域は23mと17mなる(敷地が5,000㎡以上なので26mと20mまで認定により緩和される特例もあるが、5階建てなので全然問題なし)。隣接する8階建てのマンションは既存不適格建築物になる可能性が高い(建て替え時には現行のまま建てられる緩和措置もある)。
それにしても高さの刻み方が商業地を除く地域が17m(緩和で20m)、20m(同23m)、23m(同26~38m)、26m(同 29~38m)、商業地が40m(同48m)、50m(同60m)となるのはさっぱり理解できない。記者は規制をかけるならマンションなどはワンフロアを3.1~3.4mとし、その倍数で規制すべきだと思う。そうすれば良好なストックが形成されるはずだ。
エントランスホール
三井不レジ・大栄不 新三郷で免震&長期優良
埼玉県で2件目の免震&長期優良住宅認定
三井不レジ・大栄不「パークホームズ LaLa 新三郷」
「パークホームズ LaLa 新三郷」完成予想図
三井不動産レジデンシャル(事業比率80%)と大栄不動産(同20%)は6月11日、埼玉県三郷市新三郷ららシティ内で開発中のマン ション「パークホームズ LaLa 新三郷」のモデルルーム見学会を行い、販売を7月中旬に開始すると発表した。三井住友建設の新構法「架構集約型免震構造」を採用し「長期優良住宅認定」を 取得した。埼玉県で免震構造を採用し長期優良を取得したのは野村不動産「プラウド大宮」に次ぎ2件目。
物件は、JR武蔵野線新三郷駅から徒歩3分、三郷市新三郷ららシティ2丁目に位置する19階建て全250戸。専有面積は 69.58~83.93㎡、予定価格は2,800万円台~4,200万円台(最多価格帯3,200万円台)、坪単価150万円。竣工予定は平成26年9月 中旬。設計・施工は三井住友建設。
資料請求は、昨年11月の受付を開始から約 2,000件、来場者数は3月30日に事前案内会を開始してから約800件にのぼっている。
特徴は、①「職、住、遊」の機能を持つ街「新三郷ららシティ」の中央に立地②「ららぽーと」「イケア」「コストコ」が揃う充実した ショッピング環境③免震構造の採用と「長期優良住宅認定」の取得④電力一括受電や太陽光発電による電気料金削減、電力消費量の見える化や電力のピークカッ ト-など。
モデルルームは、「イケア」と「三井デザインテック」がそれぞれプランニングした2タイプが設置されている。
◇ ◆ ◇
マンション建設地は、開発当初は商業施設用地とされていたところで、震災後にマンションに変更したようだ。坪単価はほぼ予想したとおりだ。施工が長谷工コーポレーションであれば、越谷レイクタウンや吉川美南駅前のマンションのように140万円ぐらいに収まるのだろうが、三井不動産レジデンシャルは差別化のため同じようなものをつくらないと思っていた。
しかし、まさか免震で長期優良にするとは考えていなかった。三井住友の新構法は柱や梁型が出にくいもので居室内がすっきりしていていい。競合物件より単価は高いが十分競争できると読んだ。
この坪単価150万円というのは、おそらくここ10年間では三井不動産レジデンシャルの首都圏所有権マンションで最低単価だと思う。定期借地権付きでは4年前の「橋本レジデンス」が坪130万円だった。
設備仕様もこの単価では水準以上だと思う。「イケヤ」モデルではオプションだが物干しポールがリビングに取り付けられていたにの嬉しくなった。押入れにアイロン掛けができる作業スペースが設けられていたのには驚いた。
◇ ◆ ◇
このほかにも注目すべきことがある。長期優良住宅と「CASBEE」の評価の違いだ。これは改めて書くが、このマンションは免震で長期優良住宅でありながら、環境性能を評価する「CASBEE埼玉」では満点の星5つ(素晴らしい)に1つ欠ける4つ(大変良い)しか獲得できていない。
同じように168戸が即日完売した野村不動産「プラウド大宮」も免震で長期優良住宅でありながら、「CASBEEさいたま」では「良い」の評価の星3つしか獲得できていない。
それぞれ評価のモノサシが違うといってしまえばそれまでだが、免震で長期住宅のマンションがCASBEE評価だと「素晴らしい」S評価が得られないのか、さっぱり分からない。「CASBEE埼玉」「CASBEEさいたま」と表記が異なるのは、前者は埼玉県の評価基準によるもので、後者はさいたま市の基準によるものだからだ。
◇ ◆ ◇
もう一つ、これはいいという販売活動について。キッチンの食品庫を除くカップボードはオプションになっているのだが、モデルルームに4回来場しスタンプを押してもらうとカップボードがプレゼントされるというのだ。カップボードだって数十万円する。みんな4回足を運ぶのではないかと思った。これまでの約800組の来場者のうち100組ぐらいは4回訪れているようだ。
〝損して得取れ〟-記者はこのポイント制に三井家発祥の三井高利の商才を見た思いがした。数十万円のカップボードをプレゼントはするが、来場者は「ららぽーと」「イケヤ」「トストコ」できっとお金を落とすという読みだろう。
◇ ◆ ◇
もう一つついでに。同社の関係者の挨拶・物件説明のあとの質疑応答で、ある記者が「初めて新三郷駅に降りたが、ららぽーとの店の食事は高い」と話した。これにはびっくりした。何を基準に高いか安いかを判断するのは難しいが、記者などはららぽーとがない頃にマンションの取材で何度も訪ねている。喫茶店も食堂も駅周辺になくて難儀したことがある。食べたくとも食べるところがないのもつらいものだ。
記者は忙しくて食事を取っていなかったので、見学後ららぽーとのフードコートでカレーライスを食べた。600円だった。量が多くごはんを少し残した。
280円の牛丼がある時代だから600円は高いのか。記者は一度280円の牛丼を食べたが、「並み!」と大声で叫ばれたときは人格まで貶められたような気分になった。この種の店はブロイラーにされたようで落ち着ついて食べられなくなる。
タカラ フェンス排除した驚嘆の戸建て「大泉学園」
タカラレーベン 境界のフェンスを全て排除した
建売住宅「レーベンプラッツ大泉学園」
「プラッツ大泉学園」
タカラレーベンが6月から分譲を開始した建売住宅「レーベンプラッツ大泉学園」を見学した。隣り合う住戸間のゆるやかなコミュニティ を醸成するため全27棟の境界のフェンスなど工作物を一切設置せず、隣戸間の空間には低中木の緑をたくさん確保した。この種の建売住宅の例は首都圏ではほ とんどなく、必見の物件だ。
物件は、西武池袋線大泉学園駅からバス13分、徒歩3分、練馬区大泉学園町8丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率 100%)に位置する全27棟。敷地面積は100.21~128.95㎡、建物面積は82.39~101.17㎡、価格は4,798万~6,268万円 (最多価格帯5,700万円台)。建物は木造2階建(在来軸組工法)。全棟完成予定は平成25年9月中旬。
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最大の特徴は、4棟を1ユニットにした「アウトサイドラウンジ」と呼ばれる緑の空間を設置し、東西軸も南北軸も境界にはフェンスなどの工作物を一切設けていないことだ。
記者はこれまで30余年の記者生活の中で、4~5棟で共有するコモンスペースや南北軸の間に舗道(路地)を設けた建売住宅は見ているが、隣戸間の境界にフェンスを設けていない27棟もある団地を見学するのは初めてだった。これには驚愕すると同時に快哉を叫んだ。
記者が子どもの頃の田舎の住宅は垣根こそあったが、隣戸間の境界などあってないようなものだった。隣の敷地を通ろうが敷地に立ち入ろうがとがめるものなどなかった。子どもも親も自由に行き来した。玄関を通らずとも勝手口、台所、居室が出入り口になった。味噌、醤油などの貸し借りは日常茶飯だった。
今回の物件も、フェンスがないから、通ろうと思えばどこからでも出入りできる。おそらく子どもたちはそのような利用をするのではないかと思った。
それだけではない。建物の外壁には薄っぺらいサイディングではなく、厚さ約 1 センチのガラス素材を用いた塗り壁やタイルが採用されている。塗り壁は櫛引仕上げのものが多用去れている。ベランダは黒のルーバーが多用されていた。建物は周囲の建物と調和させるため寄棟のデザインとなっている。
南側道路の住宅の庭
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いったい、どうしてこのような驚嘆すべきランドスケープデザインのプランを考え出したのか、非常に興味があったので設計を担当した㈱ HIRAMEKI の重松剛氏に電話で聞いた。重松氏は次のように語った。(重松氏は同じようなプランの「はちおうじこまち」で2009年にグッドデザイン賞を受賞している)
「八王子でも同じようにフェンスを設けない戸建てを供給している。そのときは、高齢者には抵抗を示された方もいたが、ターゲット層の30歳代は全然問題がなかった。今回も分譲する以前にアンケートをとったが、八王子と同じような傾向となった。それで『これで行けそうだ』となった。同じようなプランは首都圏では他にないだろうが、全国で見るとゼロではない。
全体的なコンセプトとしては過剰な設備を排除し、できるだけ自然のエネルギーを取り込んだパッシブデザインを採用した。庭などに用いた石は軽石で、敷地北側に中木や軽石を多用したのは、緑や軽石の気化熱を利用して夏場の冷気を北側から取り込み南側に送ろうという狙い。4戸1ユニットにしたのは、これぐらいの規模のほうがコミュニケーションがとりやすいということだ」
左側が北側住戸、右が南側住戸
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タカラレーベンの建売住宅を見学するのは2度目だった。見学する前は「アウトサイドラウンジ」なるものがどのようなものかチラシには説明されていなかったので、全然知らなかった。〝価格ありき〟の物件で見るべきものがなかったらどうしょうとも思った。
それが冒頭の素晴らしいランドプランだ。よくぞ、このような建売住宅の分譲に踏み切ったとタカラレーベンの決断を賞賛したい。まず他のデベロッパーだったら「ノー」だろう。とはいえ、村山義男社長や島田和一副社長をよく知っているから、ゴーサインを出したのも納得できる。同社には社員のやりたいことをやらせるいい社風がある。ぜひともこのプロジェクトを成功させて欲しい。
モデルハウスのLDK
地所 顧客の声を生かす「EYE'S PLUS(アイズプラス」
三菱地所レジデンス 顧客の声を商品企画に生かす
「EYE'S PLUS (アイズ プラス)」始動
左からMR ・カスタムアイズ室の加藤智里、櫻井紅美、渡辺尚子、久保倉大、鈴木健治の各氏
食洗機はシンク下がいいか横がいいか 三井 VS 三菱の戦い見もの
三菱地所レジデンスは6月6日、分譲マンションの商品開発にお客さんの声を生かし、マンションのリーディングカンパニーとしてのプロ の視点を加えた取り組みを強化するため「EYE'S PLUS (アイズ プラス)」を始動し、各種分析・検証を行なう拠点となる「EYE'S PLUS LAB(アイズプラス ラボ)」を開設したと発表した。同日、記者内覧会を行い、第一号商品「EYE'S PLUS KITCHEN 」を公開した。
「EYE'S PLUS(アイズ プラス)」は、顧客と直接コミュニケーションを図って商品開発を行い、開発のプロセスを公開するのが特徴。開発の意図や顧客の声を開示していく。開発拠点 の「EYE'S PLUS LAB(アイズプラス ラボ)」では、キッチン、カラースキーム、洗面室、浴室、扉、収納などの試作品や完成品を設置するほか、顧客の声を聞く座談会なども行なっていく。
「EYE'S PLUS KITCHEN」は、昨年7月から開発に取りかかり、約5,000件のアンケートやグループインタビュー、WEBサイト「スマイラボ」を通じたコミュニ ケーション、ママ社員などの声をもとに開発したもの。幅2400ミリ、奥行き650ミリの限られたキッチンを有効に活用するため、シンク幅を800ミリか ら650ミリに縮めることで作業スペースをその分広くし、ホーローパネルを採用。また、立ち上がりを23センチ確保することで、開放感と収納の両方を満足 させたのが特徴。
浴室のシャワースライドバーには身長がことなる家族が利用しやすいようにシャワー掛け具を 2 カ所に設置したものを提案している。さらに、同社はディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、開閉両側ソフトクローズ機能付き引き戸などを基本的に標準装備 していくことを明らかにした。
内覧会に臨んだ同社商品企画部 MR ・カスタムアイズ室室長の鈴木健治氏は、「業界ナンバー一であり続けるためにもより一層お客さまとの接点を多くし、ものづくりにまい進して、市場にフィードバックしていく」と話した。
「EYE'S PLUS KITCHEN」
◇ ◆ ◇
同じような取り組みでは、先日、東京建物が「Bloomoi(ブルーモア)」の発表会を行なった。女性の視点もお客さんの視点も非常に大事なことだ。今回の三菱地所レジデンスの第一号商品「EYE'S PLUS KITCHEN 」は、主夫生活10年の記者も納得の商品だ。キッチンは広いほうがいいのに決まっているが、限られたスペースをいかに無駄なく効率よくできるかがポイントだ。シンクを小さくすることで作業スペースをより広くするのは大賛成。幅が92センチあればずっと調理は楽になるはずだ。立ち上がりを高くしたのも理解できる。リビング側から汚れたなべや食器類などは隠したいものだ。
細かいことを言えば、天板は水返しをもう少し高くしたほうがいいし、バックガード付はいいのだが、できればサイドも欲しい(阪急不動産は標準化している)。
インタビュー研究スペースとカラースキム展示
◇ ◆ ◇
面白い話も聞いた。同社の食洗機はシンクの横に設置されていた。記者は意地悪な質問だと思ったが、「三井不動産レジデンシャルさんは食洗機をシンク下に設けることを打ち出したが…」と聞いた。
返ってきた答えはこうだ。「どちらがいいかということをお客さまにも聞きました。シンク下にあるのは、腰をかがめないといけないという声もありました」
なるほど。記者は食洗機が販売開始されたころ卓上型を購入した。出し入れ口はシンクに向かって取り付けられず正面に向くようにセットせざるを得なかった。そのため、食器類を入れるとき床に汚れた水などが散らばるのに難儀もした。だから、三井がシンク下にしたのに「さすが三井」と思った。しかし、確かにかがまないと出し入れできない難点もある。家族数や食器の数にもよるが一度の出し入れに20回はしゃがまないといけない。
どちらがいいかは分からない。三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスの食洗機の設置位置を巡って激しい〝戦い〟が展開されるのもみたいものだ。三井はこういうかもしれない。「シンク下はあまり利用しないスペース。そのスペースに食洗機を設置したほうが有効利用できる」と。
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カラースキームの展示 | トイレの展示 |
細田工務店 意欲的な「「木ここち 杢」ショールーム
細田工務店 意欲的な「木ここち杢(きここちもく)」本社ショールーム
「木ここち杢(きここちもく)」のショールーム
細田工務店が先にオープンした注文住宅の新商品「木ここち杢(きここちもく)」のショールームを見学した。注文住宅としては2010年に発売した「L'fits <ラフィス>」に次く3年ぶりの新商品だ。
ショールームは本社内の商談コーナーに設置したもので、外観などは分からないが意欲的な商品であることは伝わってきた。
まず、目を引いたのがナグリ調仕上げコーナーだった。大工さんが現場で釿(ちょうな)で削って仕上げるものではなく、工場で生産されたものだったが、それでも 35,000 円/㎡ぐらいする高価な無垢のオーク材が用いられていた。
このほか建具面材などは全てウォルナット、ブラックチェリー、メープルなどの無垢材や珪藻土、麻などの自然素材が用いられていた。
◇ ◆ ◇
建売住宅が飛ぶように売れた昭和50年代、同社は木下工務店(現木下ホールディングス)、日本電建、殖産住宅、六建建設などとともにトップメーカーとしてそれぞれしのぎを削っていた。バブル崩壊後は、日本電建も殖産住宅も六建建設も破綻するなどで第一線から退き、木下もサーベラス傘下に入り業態はすっかり変ってしまった。
その意味では、現在まで建売住宅の供給・他社受注を継続しているのは同社ぐらいだ。まさに〝老舗〟だ。同社の創業は昭和22年(1947年)だから今年で64年目だ。建売住宅メーカーとしては〝老舗〟の域に達しつつある供給トップの一建設(旧社名、飯田建設工業)は昭和42年(1946年)だし、兼六ホームは昭和43年(1968年)、ポラスは同44年(1969年)だから20年以上も差がある。
それなのに細田だけがバブル崩壊後ずっと業績が低迷しているのがよく分からない。〝老舗〟に胡坐をかいているとは思えない。同社のホームページには 2004 年以降に竣工した法人受注物件のリストがあるが、記者も見学した素晴らしい団地がたくさん掲載されている。しかし、なぜか自社の優れた団地は全く掲載されていない。これは老舗としての謙譲か。記者などは真っ先に「グローイングスクエア杉並和泉」を代表作として掲げる。
とにかく注文も建売住宅も同社には頑張って欲しい。
記者がほれ込んだ阿佐ヶ谷駅前の首都圏不燃建築公社・三菱地所レジデンス「バークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」
細田工務店 注文住宅の新商品「木ここち 杢」発売(5/30)
後姿が美しい「マンション環境性能表示」☆3つ 「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」(2010/3/8)
日土地 次世代制震装置装備の「高井戸」1期即完
さすが日土地 土地の魅力を最大限引き出す
「ラヴィアンヴェール高井戸」 第1期が即日完売
「ラヴィアンヴェール高井戸」
日本土地建物販売が先に第1期8戸を即日完売した建売住宅「ラヴィアンヴェール高井戸」を見学した。高井戸駅から徒歩3分の高台立地で、由緒ある土地の魅力を最大限に引き出した好物件だ。並木道や神田川沿いの緑が美しい街だ。
物件は、京王井の頭線高井戸駅から徒歩3分、杉並区高井戸西1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%・50%、容積率80%)に位置する全12戸。第1期(8戸)の敷地面積は125.19~140.25㎡、建物面積は98.12~104.12㎡、価格は7,480万~9,100万円。建物は2×4工法2階建て3月下旬に竣工済み。施工は細田工務店。5月25日に抽選した結果、最高5倍、平均2.3倍で即日完売した。来場者は135件、問い合わせは60件にのぼった。引き続き第2期(4戸)が6月8日に分譲される。
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高井戸駅を降りると直ぐに現地が分かる。見たとたん即日完売を納得した。駅から現地まで神田川沿いの緑道を通り、高さ約5mの階段を上ったところが現地だ。法面の高木がいかにも歴史のありそうな敷地であることをうかがわせる。
販売担当者によると、地元の社会福祉法人浴風会の社員寮跡地とのことだった。浴風会についてネットで調べたら、発祥は「関東大震災の被災老人の援護を目的として皇室の御下賜金を含む義捐金を基として内務省社会局の手により財団法人として設立…内務省社会局によって90,750平方メートル(約27,500坪)のこの地(当時は東京府豊多摩郡高井戸村)に、本館・入居棟・付属建物合わせて54棟の建物…の施設を設置したのが浴風会の始まり…浴風会本館は、大正15年に内田祥三(うちだよしかず)氏並びに土岐達人氏により設計されました。中央に塔を配置し、両翼を広げた姿は、内田氏が手掛けた『東京大学安田講堂』と共通する表情を見せています」とホームページに書かれていた。
ランドプラン、建物外観は由緒ある土地にふさわしい風格、気品のあるものだ。基礎には地震エネルギーを約46%吸収する次世代制震装置SSダンパーを採用したほか、外壁は写真のように日射を遮りながら通風・採光も確保する遮蔽壁を採用しているのが特徴だ。その他設備仕様レベルも高い。
坪庭
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他のデベロッパーも喉から手が出るほど欲しい土地だろう。同社の用地取得の経緯は聞いていないが、さすが日土地。数は多くはないが、バブル崩壊後も継続してレベルの高い建売住宅を供給してきたからこそ、この土地の魅力を最大限に発揮したといえる。
価格もリーズナブルだ。現地を見て、さすがに1億円は越えないだろうと読んだが、2期も最高価格は8,880万円だ。同社は隣接地でも用地を取得しており、戸数は今回の物件より少なくなりそうだが建売住宅になるのは間違いない。
細田の施工もいい。創業以来60余年、ずっと戸建ての分譲、施工を続けてきた技術力・デザイン力がうかがわれる。今回の建物は2×4だが、これもなかなかいい。記者がこれまでたくさん見てきた自社、法人受注物件のうち2×4はどれぐらいの比率なのだろうか。自社物件は軸組が圧倒的に多いはずだが、法人受注では2×4も意外と多いような気がする。
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現地の法面 | 神田川沿いの緑道から現地を望む |