RBA OFFICIAL
 

 わが国の町内会組織など自主団体研究の第一人者である山梨学院大学法学部特任教授・日高昭夫氏は、詳細な情報を持ち合わせていないと断ったうえで、千代田区番町の地区計画変更に関して次のようなコメントを寄せた。

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 ポイントは、①地区計画決定過程で必要な「地区住民等の意見」にいう「地区住民等」が町会長等の意見で代表できるのか②その町会長の意見がそもそも町会を代表する正当性を有しているのか、といった点かと理解しました。

 このうち、①については、かつて山梨県の旧明野村の産業廃棄物処理場建設問題で、区長(自治会長)の意見を地区住民の意見として建設を進めた山梨県の行政対応が、その後深刻な行政対住民の対立と住民間の分断を生み、長期にわたって混乱と大きな行政コストをもたらしたことを思い出しました。

 千代田区の場合も、地区計画の趣旨に沿って、丁寧な地区住民の意見を聞く最初の手続きを誤れば、同様の結末にならないか懸念されます。

 私個人の見解ですが、行政が地区住民の代表として町会長の意見を日常的に聞くなどの仕組みや慣例そのものは、一概に批判されるものではないと思っていますが、それはあくまで日常的あるいは(暗黙にであれ)広く合意されている事項に限定されると思います。非日常的で合意が形成されていない事項についてまで、町会長に白紙委任されていると考えるべきではないと考えます。

 そこで、②についてですが、地区住民間で十分な合意が形成されていない事案で、しかも地区計画の本質的変更につながるような重要事項について町会長が公式に対外的に意見を表明する場合には、少なくとも町会としての明確な合意形成が前提条件ではないかと思います。

 その意味で、町会のガバナンスを問う今回の訴訟は画期的で、大変興味深いものだと思います。

 ただ、訴状の詳細も分かりませんし、私的自治がどう評価されるか、町会規約がどのようになっているか、メンバーシップや総会の規定など細かい点は不明ですので、どのような展開になるかはなんともいえません。

全国初 町会の民主的運営を問う裁判提起 二番町(日テレ通り)再開発の是非(2023/3/16)

管理協 地域共生セミナー 「管理組合と自治会は車の両輪」(2011/9/20)

 

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「川口栄町3丁目銀座地区第一種市街地再開発事業」

野村不動産は322日、参加組合員として事業参画している「川口栄町3丁目銀座地区第一種市街地再開発事業」が同日竣工したと発表した。

事業は、JR京浜東北線川口駅から徒歩3分、川口市栄町三丁目に位置する敷地面積9,069㎡、28階建て延床面積約66,572㎡。主要用途は住宅、店舗、事務所、医療施設、子育て支援施設、駐車場、駐輪場など。住宅は専有面積46.63115.77㎡、坪単価は340万円。設計・監理はINA新建築研究所。施工(特定業務代行者)は前田建設工業・埼和興産共同企業体。商業コンサルタントは野村不動産コマース。入居時期は20233月下旬。商業施設は524日グランドオープンする。

同プロジェクトは20066月に勉強会が発足し、20175月に都市計画決定、20183月に再開発組合設立認可、20202月に工事着手。約17年の歳月を経て竣工した。

商店街の活性化地域貢献地域分断化への配慮歩行空間の充実を図り、13階は商業・業務施設(樹モールプラザ)、428階は総戸数481戸のマンション「プラウドタワー川口クロス」を整備した。物件は川口市の「低炭素建築物認定」を受けており、30代を中心に単身世帯からファミリー、シニア層まで幅広い層に評価されているという。

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エントランス

 

 

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「パークウェルステイト千里中央」  

 三井不動産レジデンシャルは3月23日、大阪府最大規模となる豊中市の全548室の住宅型有料老人ホーム「パークウェルステイト千里中央」を3月27日に開業すると発表した。「パークウェルステイト」シリーズとしては2019年開業の「浜田山」(70戸)、2021年開業の「鴨川」(473室)に次ぐ第三弾で、関西圏では初となる。同社は来年秋開業予定の3物件を合わせ6物件2,695戸・室を開業する。

 物件は、北大阪急行線千里中央駅まで専用シャトルバスで約10分、千里中央駅から梅田駅までは電車で19分、大阪府豊中市北緑丘1丁目に位置する敷地面積約17,909㎡、延床面積約45,120㎡、13階建て居室数548室(一般居室470室、介護居室78室)。一般居室の専用面積46.69~78.95㎡、料金は入居一時金3,135万~7,940万円(78歳・一人入居の場合)。竣工は2023年2月。設計・施工は長谷工コーポレーション。

 2021年7月にHPを開設後、約3,500件の問い合わせがあり、申込件数は約220件。申込者の居住地は豊中市約20%、吹田市約15%、大阪市約15%、兵庫県約15%、その他約30%。年齢は60歳代約10%、70歳代約40%、80歳代以上約50%。人数は1人70%、2人30%。男女比は女性70%、男性30%。

 大規模物件にふさわしいエントランスホール、広い空間と高い天井高とし、ラグジュアリーな空間を演出しているほか、ダイニングやバーカウンター、水景や松などの植栽を臨む「離れ」、箕面の山々を眺められる「屋上庭園」などを設置。

 入居者同士のコミュニティを図る共用施設では、露天風呂、ジャグジー、低温サウナ、数種類のシャワーが時間差で流れ落ちアロマが香る「エクスペリエンスシャワー」を備えた大浴場、約1,500冊の書籍を取り揃えたライブラリー、多目的ホール、フィットネスルーム、ビリヤードルーム、麻雀ルーム、カラオケルーム、シアタールーム、演奏室など。「季節湯」や「子ども食堂」など地域とのコミュニティを育むイベント、サークル活動などによりアクティビティの場を創出する。

 医療・介護サービスでは、医療法人との医療連携のほか、併設クリニックと薬局が電子的に処方箋を連携することにより、入居者の利便性を向上し、介護専用フロアの設置、24時間常駐の見守り・生活支援サービスを提供する。

 健康サポートでは、エイジングケアサポートプログラムや脳・活性化プログラム「i トレ」、三井住友銀行が運営する医療版情報銀行アプリを導入(大阪大学医学部附属病院監修)し、予防医療から先進医療、薬・介護まで連携した新たな地域医療サービスを提供する。

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メインエントランス(左)とラウンジ

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ダイニング(左)とサロン

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 離れ(左)と屋上庭園

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 この前の、今後7年間で3,000室以上を供給するという旭化成ホームズの自立~フレイル期シニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」記者発表会も驚いたが、コンセプト・ターゲットは異なるとはいえ、三井不動産レジデンシャルの「パークウェルステイト」もまた凄い。

 今回の「千里中央」と開業済みの「浜田山」「鴨川」、2024年秋開業予定の「湘南藤沢」(566室)「西麻布」(421室)「幕張ベイパーク」(617室)をトータルすると6物件で2,695戸・室だ。

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大浴場(左)と介護フロアリビング

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ウェルネスリビング

健康寿命延伸に効果発揮 旭化成ホームズ シニア向け賃貸「へーベルVillage」(2023/3/22)

サ高住の最高峰「浜田山」を超える 三井不動産36階建て421室「西麻布」着工(2021/6/7)

サ高住の最高峰 月額賃料は約94万円(59㎡) 三井不レジ「浜田山」竣工(2019/5/29)

 

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多摩市立グリーンライブセンター

 東京都多摩市にある「恵泉女学園大学」の閉学が3月22日決まった。同日、学校法人恵泉女学園理事長・学園長・学長の3氏は連名で「学校法人恵泉女学園は、2024年度以降の恵泉女学園大学・大学院の学生募集停止を、2023年3月20日開催の理事会において決定した」と発表した。近年の東京都内の4年制大学の閉学は、平成29年の東京女学館大学に次いで2件目。

 同大学は「重要なお知らせ」として、「1988年の開学以来、神と人とに仕え、自然を慈しみ、世界に心を開き、平和の実現のために貢献できる女性を育成する最高学府として、多くの卒業生を輩出してまいりました。しかしながら、18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」と綴っている。

 また、学長・大日向雅美氏は同日の「学長の部屋」で、「自然に恵まれた美しいキャンパスの中、小規模大学の特性を生かした丁寧な教育のもと、学生一人ひとりが自分の大切さに気づき、他者を尊重する心を育みながらしなやかに成長していく姿を間近に見ることができることは、これに勝る喜びはありません」「卒業生にとっていずれ母校がなくなる日が迫っていることを思うとき、言葉もありません」「近年の国内外の情勢をみるとき、河井先生が目指された"『聖書』『国際』『園芸』の学びを礎として世界平和の構築に尽くす自立した女性"を育成する使命は、今、改めて求められているところと考えます」と述べている。

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 多摩市民の記者は、「京王プラザホテル多摩」が今年1月で営業停止となったのにもショックを受けたが、今回の恵泉女学園の閉学決定に同じような衝撃を受けた。

 キャンパスは、多摩センター駅からバスで約10分の多摩市南野2丁目に位置し、一本杉公園に近接。同大学はアダプト制度によるパルテノン通り沿いの植栽枡内の花壇の管理を行っており、年間4万人以上の利用者がいる多摩市立グリーンライブセンターの運営にも関わっている。

 同大学には用もないから数えるほどしか訪れたことはないが、わが国を含め全世界がファシズムへの道をまっしぐらに突き進んでいた1929年、女性キリスト者・河井道によって創立された同学園の建学の精神「神を畏れ 人を愛し いのちを育む」には胸を打たれる。

 バブル崩壊でデパート(そごう-三越)が消え、そして今年、開業33年にしてホテルが営業中止となり、今回の同大学の閉学決定だ。いま分譲されている三菱地所レジデンスなど錚々たるデベロッパーが名を連ねる「THE GRAND CROSS多摩センター(ザ・グランクロス多摩センター)」の坪単価252万円は、埼玉や千葉の郊外でやっと供給できるレベルの安さだ。単価は「橋本」に瞬く間に追いつかれ、坪100~150万円近く引き離されそうだ。多摩センターは地盤沈下する一方だ。

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グリーンライブセンターのボレロ

みどりの価値再認識すべき 三菱地所レジなど6社JV「多摩センター」は坪252万円(2023/3/21)

多摩グリーンボランティア森木会 10周年&「緑の都市賞」受賞記念講演会(2011/11/29)

 国土交通省は3月22日、令和5年1月1日時点の令和5年地価公示を発表。新型コロナの影響で弱含んでいた地価は、景気が緩やかに持ち直している中、地域や用途などにより差があるものの、2年連続で上昇。都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となった。

 全国平均では、全用途平均で1.6%(前年は0.6%)、住宅地で1.4%(同0.5%)、商業地で1.8%(同0.4%)といずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。

 三大都市圏では、全用途平均で2.1%(同0.7%)、住宅地で1.7%(同0.5%)、商業地で2.9%(同0.7%)上昇。東京圏は全用途で2.4%(同0.8%)、住宅地で2.1%(同0.6%)、商業地で3.0%(同0.7%)上昇となり、大阪圏、名古屋圏も全用途で2年連続上昇し、上昇率が拡大した。

 地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大。地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも10年連続で上昇し、上昇率が拡大した。

 その他の地域では、全用途平均・商業地は3年ぶり、住宅地は28年ぶりに上昇に転じた。

 都道府県別では、変動率がプラスの住宅地は前年の20から24に増え、変動率がマイナスの都道府県は前年の27から22へ減少。商業地は変動率がプラスの都道府県は15から23に増加、変動率がマイナスの都道府県は29から23へ減少した。

 変動率トップ10では、住宅地は北海道北広島市共栄町1丁目の59,800円/㎡(変動率30.0%)を筆頭に全て北海道。商業地も北広島市栄町1丁目の86,000円/㎡(同38.4%)以下全て北海道。

 三大都市圏の最高価格は、住宅地は東京圏は港区赤坂1丁目の5,120,000円/㎡(変動率2.4%)、大阪圏は大阪市福島区福島3丁目の1,160,000円/㎡(同7.4%)、名古屋圏は名古屋市中区栄2丁目の1,700,000円/㎡(同8.3%)。商業地は東京圏は中央区銀座4丁目(山野楽器本店)の53,800,000円/㎡(変動率1.5%)、大阪圏は大阪市北区大深町(グランフロント大阪)の22,400,000円/㎡(同1.4%)、名古屋圏は名古屋市中村区名駅4丁目(ミッドランドスクエア)の19,000,000円/㎡(同2.7%)。

購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売(2022/9/21)

 

 

お客様心理の変化に敏感に対応

野村不動産代表取締役社長・松尾大作氏

 今回の地価公示は、コロナ前への回復傾向が顕著となり、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については3 大都市圏・地方圏のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大、商業地については大阪圏が3年ぶりに上昇に転じたことで、三大都市圏・地方圏いずれにおいても上昇し、上昇率が拡大した。

 住宅市場に関しては、用地案件の減少などにより供給が限られるなかで需要は引き続き堅調であり、売れ行き好調な状況が続いている。共働き世帯の増加やテレワークの浸透等により、住まいで過ごす時間を豊かにしたいという新たな需要が生まれたことなどを背景に、中古を含めて需要は底堅く、また富裕層の動きも活発である。今後は、多様化するニーズを捉えた商品企画や、CO2排出量実質ゼロ住宅、駐車場へのEV 充電設備設置、国産木材の活用など脱炭素に寄与するサステナブルな商品・サービスがさらに求められる。

 開発手法の面では、通常の土地取得に加え法定再開発や公有地利活用、その他多様な手法を用いるとともに、地方中核都市におけるコンパクトシティ化へのニーズへ対応した中心市街地の再開発への参画など、継続的かつ中長期的な取組みが大切だと考える。
 なお、注視している建築費の上昇や住宅ローン金利の動向などに加えて、昨今のエネルギーコストの高騰やインフレによる家計への影響など、お客様心理の変化についてこれまで以上に敏感になってゆく必要がある。

 オフィス市場に関しては、賃料は緩やかな下落傾向にあり、空室率は一進一退の状況が続く。一方でオフィスへの回帰や、好調な企業業績を背景にオフィスの拡張移転を行う事例も増えている。リアルなコミュニケーションの再評価や採用拡大など、オフィスの意義や価値を重視し、センターオフィスの機能を充実させる動きもみられるようになった。働き方のニーズはさらに多様化しており、当社ではこうした変化に対応すべく、大規模オフィスに加え、中規模ハイグレードオフィスのPMOシリーズ、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1T などを組み合わせた「オフィスポートフォリオ戦略」を提案することにより、企業のフレキシブルな働き方を支援してゆきたい。また、オフィス空間の提供にとどまらず、入居企業をサービス面から支援する取組みもさらに進化させる必要がある。

 商業市場に関しては、コロナ前の状態に完全に戻ることは難しいと考えるが、食料品などの生活必需品を扱う地域密着型施設を中心に着実に回復に向かっており、独自性のある施設運営により差別化を図っていく。
 ホテル市場に関してはコロナの影響から回復しつつある。すでに国内の利用客増により稼働率は上昇しており、今後のインバウンド需要の戻りによる本格的な需要回復に備える。

 物流市場に関しては、eコマースニーズの拡大を背景に旺盛な需要があり、用地取得競争は過熱しているものの、多様な開発手法を用いて順調に用地取得が進んでいる。当社の開発ノウハウを活かすとともにテナント支援の取組み等をさらに進め、引き続き積極投資を行う。

 当社は、社会環境の変化や人々の価値観の多様化を念頭に置きつつ、これまで同様、お客様一人ひとりの生活や時間に寄り添い新たな価値を生み出す新規事業に取り組むなど、まだ見ぬ価値創造に向け挑戦をし続ける。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

コロナ前への回復傾向が顕著

三菱地所執行役社長・吉田淳一氏

 令和5年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2 年連続上昇し、上昇率が拡大した。地域や用途などにより差があるものの、ウィズコロナの下、景気が緩やかに持ち直している中、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となったと見られる。

 住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、直近では「ザ・パークハウス広尾」が早期に完売、また最高水準のグレードを目指したザ・パークハウスのフラッグシップシリーズ「ザ・パークハウス グラン 三番町26」の販売も好調に推移している。政府による水際対策緩和に伴い、インバウンドニーズが徐々に顕在化しており、「ザ・パークハウス京都河原町」ではその引き合いを実感している。

 アウトレットでは、国内需要は引き続き好調に推移し、コロナ前と同水準を維持している。昨年10月には当社グループとして約10年ぶりに「ふかや花園プレミアム・アウトレット」が開業し、単なる買い物の場だけでなく、地元地域と共生し、情報発信・観光拠点の場となっている。

 ホテルは、国内需要が底堅く推移しており、昨年10月の入国制限の緩和を受けインバウンド需要が徐々に回復傾向だ。昨年11月には「ザ ロイヤルパークキャンバス 銀座コリドー」を開業した。お酒や音楽などナイトライフをより充実させるコンテンツを提供し、国内外の観光需要をうまく取り込みながら好調なスタートを切った。

 オフィスは、コロナの収束に伴い、業容が拡大している企業を中心に移転検討が活発化しており、リーシングにおいては、都市中心部への需要の底堅さを実感している。本年2月に竣工した「3rd MINAMI AOYAMA」は、次世代のワークスペースとして、各執務フロアにインナー/アウターバルコニーを整備する等、多様な働き方を可能にするオフィス空間を実現し、順調にリーシングが進んでいる。

足元の国際経済情勢などマクロ要因注視

東急不動産代表取締役社長・岡田正志氏 

 今回の地価公示では全国の全用途平均は2年連続で上昇した。昨年までは新型コロナウイルスの影響で地価は弱含んでいたが、アフターコロナをにらんだ人流の回復やテレワークから出社への移行、そしてインバウンドの回復基調などが影響している。ただ、ロシア・ウクライナ情勢による世界情勢の不安定化や世界経済の先行き不安、物価高騰による国内景気への悪影響などの不安定要素もあり、当面は地価の動向を注視していく必要があるとみている。

 地価の上昇地点をみると北海道、特に札幌市近郊の好調さが目立つ。2030年の北海道新幹線の札幌駅への延伸を見据え、札幌駅周辺を中心に市内で開発が進んでいるほか、グループの東急コミュニティーが管理する北広島市の新しい野球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の周辺でも地価上昇が続くなど、札幌市近郊部の住宅地、商業地にも地価上昇の流れが波及している。札幌市とその近郊に人口集積が進んでいることも影響している。当社も札幌の中心部「すすきの」の玄関口であるススキノラフィラ跡地で、ホテルや商業施設のほかシネマコンプレックスなどが入る2023 年秋開業予定の大型再開発「(仮称)札幌すすきの駅前複合開発計画」(地上18 階建て)を手掛けているほか、環境先進型の分譲マンション「(仮称)ブランズ新札幌」を開発するなど、注目度が高まる札幌市内でも積極的に開発事業を進めている。

 当社は「環境先進企業」を目指して、環境に配慮した事業展開を全国で進めているが、特に北海道では小樽市や松前町、釧路市などで風力発電や太陽光発電所を開発・運営しているほか、石狩市では再生可能エネルギー100%のデータセンターの開発を計画するなど、北海道を重点地域の1つとして事業を推進している。また、インバウンド需要が回復した国際リゾートのニセコでも「ホテルニセコアルペン」のホテルコンドミニアムへの建て替えを含む大規模開発計画「Value up NISEKO 2030」を進めている。

 全国の住宅地をみると都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。低金利環境の継続など政策面でも需要を下支えしている効果がある。また、商業地では都心部を中心に店舗の需要のほか、オフィス需要なども堅調で、地価上昇につながっている。インバウンド需要で地価が過熱気味だった都心部の地価がコロナ禍による需要喪失で下落する場面もあったが、一時的な現象と捉えており、「アフターコロナ」によるインバウンドの復活などで、都市中心部の地価回復は当面続くとみている。

 当社では今年11月に竣工する「Shibuya Sakura Stage」をはじめとする「広域渋谷圏」の100年に一度ともいわれる再開発を、東急グループで連携して進めている。再開発ビルの開発で渋谷のオフィス床面積の拡大や渋谷駅周辺のバリアフリー化を進め、渋谷の街の魅力向上に努めている。都心5 区ではオフィス賃料の下落、空室率の上昇などがみられる地域もあるが、当社の本拠地である渋谷はITやコンテンツ産業を中心にオフィス需要が旺盛で賃料水準も安定し、空室率も低い状態が続いている。

 中長期的な不動産市場については、足元では国際経済情勢などのマクロ要因などを注視する必要があるが、不動産市況は回復基調が続くだろう。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか、今後の不動産市場では「環境」が大きなテーマになるとみている。

 当社では2月末時点で開発中も含め全国に86事業、発電能力を示す定格容量で1,405メガワット(一般家庭の年間電力使用量ではさいたま市とほぼ同程度の約67.6万世帯分)の再生可能エネルギー発電所を全国に有しており、この再エネ電気を活用して昨年末、保有する全244施設の再エネ化を完了した。すでにオフィス市場では外資系を中心に「再生可能エネルギーではないビルには入居できない」という企業も出てくるなど、世界的な環境意識の高まりが不動産市況にも影響を与えている。当社はハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域を生かしたソフトサービスという付加価値を組み合わせて事業展開を進めていくとともに、再生可能エネルギーの活用のほか、ZEBやZEHなど環境に配慮したオフィスビルやマンションの開発を進めるなど、今後も積極的に環境対応を進めていく方針だ。

 

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左から旭化成ホームズくらしノベーション研究所所長・河合慎一郎氏、同社取締役兼常務執行役員・大和久裕二氏、大渕氏、同社執行役員兼シニア・中高層事業本部長・田辺弘之氏、同社シニアライフ研究所所長・伊藤香織氏

 旭化成ホームズは3月20日、自立~フレイル期シニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」入居者への追跡調査を実施した結果、新サービス「安心・安全・健康長寿応援メソッド」が入居者の健康寿命延伸に効果を発揮していることを確認したと発表した。

 調査は2022年8月~2023年1月、自立~フレイル期の「へーベルVillage」入居者112名を対象に実施。対象者の性別は男性27.7%、女性68.8%、年代は70代20%、80代45%、90代以上22%(平均83.8歳)、世帯構成は単身57%、夫婦35%など。調査の結果、健康寿命延伸につながる健康行動(活動量・食事・交流)を維持・向上した入居者割合は97%に達し、フレイル該当者数が約5%減少したことが分かった。

 行動していなかった状態から行動に移せた入居者の割合では、食事が25%と最も多い結果となったほか、活動量では外出頻度が毎日1回以上と答えた割合が15%増加し58%、食事では調理頻度が毎日2回以上と答えた割合が15%増加65%となっている。

 新サービス「安心・安全・健康長寿応援メソッド」は、東京都健康長寿医療センター研究所の介護予防研究テーマ・高齢者健康増進事業支援室研究部長・大渕修一氏と連携し、2022年4月から導入を開始。設計(安全な暮らしと活動・交流を促す住環境)×相談員(定期的に入居者を見守りイキイキとした暮らしを後押しする人)×しかけ(設備による見守りと交流のきっかけ)の3つで入居者の暮らしを後押しし、入居者自らが健康長寿の3条件(活動量・食事・交流)の行動を増やし、健康長寿を実現することを目指している。

 大渕氏は、「このプロジェクトでヘーベルVillage は新しい行動を育む場所になったと考えています。今回の私たちのプロジェクトでは、支援ツールを使いながら生活相談員がプロチャツカとデクレメンテにより開発された行動変容理論に敏感になることを業務としました」とコメントした。

 「へーベルVillage」は、「へーベルハウス」(自立期)⇒「へーベルVillage」(自立~フレイル期)へとシームレスなサービスを提供するのを目的に2005年から提供を開始。介護スタッフなどが常駐せず食堂を不要とした事業形態。入居者の平均年齢は79歳で、75歳以上の後期高齢者が8割弱を占め、介護保険認定を受けていない人の割合は82%。2023年2月末時点で東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で136棟1,746戸を運営。2030年度までに5,000戸に拡大する。

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 このような結果をもたらしたのは、ある程度は想定できた。2018年に「ヘーベルVillage杉並井草」を見学したとき、介護を必要としない自立派が約8割と圧倒的に多く、入居前の「持家戸建て・マンション」が約7割に達し、約4割の人が自宅を売却して入居を決めていることなどを聞いていたからだ。

 それにしても、平均年齢が83.8歳でも健康行動を維持・向上した入居者割合が97%に達し、フレイル該当者数が約5%減少したというのは凄い。2030年度までに5,000戸という目標にはずみがつくのではないか。

ニッチからコアへ 旭化成ホームズ シニア向け賃貸「ヘーベルVillage」受注加速(2018/8/24)

 


 

 

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「THE GRAND CROSS多摩センター(ザ・グランクロス多摩センター)」

 三菱地所レジデンスなど6社JVの「THE GRAND CROSS多摩センター(ザ・グランクロス多摩センター)」を見学した。多摩センター駅から徒歩9分の全289戸で、坪単価252万円という安さに多摩市民歴35年の記者は衝撃を受けた。安いのは結構なことだと思う半面、多摩センターの〝価値〟は所詮その程度かという落胆のほうが上回った。

 物件は、京王相模原線京王多摩センター駅・小田急多摩線小田急多摩センター駅から徒歩9分、多摩市鶴牧三丁目の商業地域に位置する敷地面積約4,021㎡、21階建て全289戸。4月中旬分譲予定の第2期1次(戸数未定)の専有面積は55.57~72.04㎡、予定価格は3,900万円台〜6,000万円台(最多価格帯5,100万円台)、坪単価は252万円。竣工予定は2024年11月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。売主は三菱地所レジデンス(事業比率20%)・長谷工不動産(同10%)・積水ハウス(同20%)・TC神鋼不動産(同20%)・大林新星和不動産(同20%)・京阪電鉄不動産(同10%)。販売代理は長谷工アーベスト。

 現地は、歩車分離の舗道を抜けた四叉路の角地。対面には東京海上日動ビルがあり、KDDIビル、JUKI本社、ミツミ本社ビルなどにも近接。ココリア多摩センター、丘の上プラザ、丘の上パティオ、パルテノン多摩、多摩中央公園(公園内には7月開業予定の中央図書館が建設中)、クロスガーデン多摩などが徒歩圏。従前敷地は駐車場。

 建物はV字型で、敷地南側と東側にビルが建っていることから、日照を確保するために敷地南側に駐車場を設け、住戸は南西向きと西向きが中心(一部東向き)。住戸プランはほとんどが70㎡前後の3LDKで、1スパン19戸が55.57㎡の2LDK。

 主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機、ディスポーザー、床暖房など。浴室タオル掛けはなし。

 1月20日に第1期1次65戸を販売開始し、これまで90戸を供給し約60戸が成約済み。来場者は300件強。

 販売代理の長谷工アーベスト担当者は「まずまずの出足。反響は地元が約4割、八王子が約10%、日野市、川崎市麻生区がそれぞれ5%。成約率は地元の人が高く、60歳以上のコンパクトへの買い換えが目立ち、2LDKタイプは残り僅かの状況」と語っている。

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エントランス

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多摩中央公園

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 坪単価予想は外れた。東京建物などの「聖蹟桜ヶ丘」が坪270万円なので、これが上値圧力となっており、これを上回ることはないとみており、とはいえ多摩センターの魅力を考えれば坪260万円を下回ることはないと予想していた。坪252万円と言えば、東京都では八王子、立川以遠、神奈川県は平塚、本厚木、金沢八景以遠、埼玉県は川越、朝霞台、久喜、越谷以遠、千葉県は柏の葉、我孫子、千葉以遠だろう。新宿まで35~36分のわが多摩センターの〝価値〟はそんなものなのか。多摩市民歴35年の小生の〝子育てなら多摩センター〟の思い込みが強すぎるのか。近く分譲される日本エスコンの「レ・ジェイドシティ橋本」に坪100万円近く引き離されそうなのにショックも受けた。

 愚痴など書きたくないのだが、書かざるを得ない。まず、これほど安い価格設定をせざるを得ない多摩市・多摩センターのポテンシャルについて。

 京王電鉄を俎上に上げる。電鉄会社の不動産開発が沿線の価値向上に大きな役割を果たしていると考えるからだ。同社の2022年3月期の売上高は2,998億円で、不動産事業の売上高は472億円(全体に占める割合は15.8%)、営業利益は104億円(売上高営業利益率は22.0%)だ。首都圏の同業他社と比較してみよう。連結売上高、不動産事業売上高(全体に占める割合)、営業利益(売上高営業利益率)の順。

 東急は8,791億円、2,232億円(同25.4%)、452億円(同20.3%)、小田急電鉄は3,587億円、809億円(同22.5%)、185億円(同22.9%)、京急電鉄は2,652億円、794億円(29.9%)、109億円(同13.7%)、相鉄ホールディングスは2,166億円、638億円(同29.5%)、142億円(同6.6%)、東武鉄道は5,060億円、622億円(同12.3%)、155億円(24.9%)、西武ホールディングスは3,968億円、591億円(同14.9%)、198億円(同33.5%)、京成電鉄は2,141億円、274億円(同12.8%)、87億円(同31.8%)だ。

 京王電鉄の不動産事業の売上高、営業利益とも京成に次いで下から2番目だ。この数値だけで割り負けしている理由にはならないかもしれないが、京王線の地価水準・街のポテンシャルを100とすれば、京成線はせいぜい半分だ。西武線と比べても互角以上のはずなのに、どうして負けるのか。東急と相鉄がタッグを組んだ「THE YOKOHAMA FRONT」(ザ ヨコハマ フロント)が坪単価700万円を突破したにもかかわらず、圧倒的な人気を呼んだのと対照的だ。街のポテンシャルを左右する「京王プラザホテル多摩」も今年1月で営業中止になり、その後どうするかも現段階で公表されていない。唯一目立つのは、きれいな女性のCM「高尾山」くらいだ。同社はサンウッドを傘下に収めたが、これに期待しよう。

 ここまで書いたが、責任は京王電鉄だけにあるのではない。沿線の自治体の発信力の弱さとも関連がありそうだが、これについては触れない。参考になりそうな記事を添付したので、そちらを参照していただきたい。

 肝心要の多摩市・多摩センターの魅力について触れよう。これについては何度も書いてきたが、歩車分離の街づくりもそうだが、魅力は何といっても緑環境のよさだ。平成30年の東京都のみどり率は、都全域では52.5%(区部:24.2%、多摩部:67.8%)、多摩市は53.9%となっている。

 この数値だけなら、多摩市は都の平均値で、高さ3m以上の高木街路樹16,485本(街路:78,373本、遊歩道8,612本)の本数は江戸川区と八王子市より少なく、町田市と同じくらいだが、人口1,000人当たりでは100本を超え、これらの区市より多い。1本当たり維持管理費も高いという課題はあるが、クスノキやシラカシも多いことから、真冬でも緑にあふれていることは街を歩けば誰でも分かる。

 緑環境が優れているとどうなるか。「多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会」の委員でもある東京大学大学院農学生命科学研究科准教授・曽我昌史氏が同改定版に寄せたコラムを紹介する。

 「都市のみどりは、私たちが健やかな生活を送るうえで重要な役割を持っています。実際にこれまでの研究から、緑地や舗道を訪れたり眺めたりすることは、運動機能の維持・向上、ストレスの減少、地域社会の連帯感の形成、認知機能(記憶、思考、計算などの知的な能力)の維持・向上など様々な面で人の健康に貢献することが分かっています。驚くべきことに、最近海外で行われた研究によれば、家の周りの緑の豊富さ(緑地の面積や街路樹の本数など)は、肥満や高血圧、糖尿病、うつ病、循環器系疾患などの発症を抑える効果を持つことが示されています。

 これらの病気の治療には毎年多額の税金が使われている(かつ近年増加傾向にある)ことを考えると、都市のみどりは良好な都市景観の形成の他に、医療費削減という経済面でも大きく貢献する可能性があります」

 皆さんいかがか。小生は街路樹についてもしつこいほど書いてきたが、都市のみどりが地球温暖化防止だけでなく、運動機能・認知機能の維持・向上、ストレスの軽減、地域社会との連帯感、肥満や高血圧、糖尿病、うつ病、循環器系疾患などの発症を抑える効果があることが科学的に実証されているというではないか。

 マンション選好要因は人それぞれだが、国土交通省の令和3年度住宅市場動 向調査では、「住宅の立地環境が良かったから」が分譲マンション取得世帯は69.6%、中古マンション取得世帯は66.2%とそれぞれトップになっている。平成30年度調査では、分譲マンションは72.3%で、中古マンションは60.5%だったので、マンションの率が下がり、中古マンションは逆に上昇したのは謎だが、今も昔も住宅の立地環境がもっとも重要というのに変わりはない。

 最近は〝駅近〟やら〝通勤・通学の利便性〟が重視されているようだが、デベロッパーも住宅購入検討者ももう一度原点に立ち返って考え直すべきだ。〝時は金なり〟-これは「時間」=「金」ではない。時間を有効に使いなさいということだ。

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建築現場

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クロスガーデン多摩から現地を望む(クレーンの見えるのが現地) 

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多摩中央公園と建築中の中央図書館

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カルガモの夫婦か(多摩中央公園で)

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パルテノン大通り

日本エスコン「橋本」は坪330~350万円 販売代理リストの顧客対応はフル回転(2023/3/3)

多様な価値観生かせる多摩ニュータウン 多摩市市制50周年 コンセプトムービー(2022/7/24)

1人当たり街路樹 最多は江戸川区の8.9本1本当たり維持管理費は1.5万円(2022/8/17)

相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1期129戸完売 坪717万円(2022/1/26)

「志茂」「多摩センター」は〝割安〟か 東京カンテイ「2020年 マンションPER」(2021/5/8)

〝生きた実験場〟〝やるしかない〟 多摩NT再生 第6回シンポ 藤村氏もエール(2019/2/8)

長谷工コーポ 創業80周年記念「テクニカルセンター・マンションミュージアム」完成(2018/10/23)

あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ(2018/2/5)

「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会(2016/6/13)

眼の前に多摩中央公園 立地に恵まれたサンウッド「ガーデンコート多摩センター」(2016/1/6)

阪急不動産「ジオ多摩センター」 同駅圏 最後の大規模マンションになるか(2015?9/29)

人・街・未来を語り合う 多摩市 第2回「多摩NT再生シンポジウム」(2015/2/5)

住宅地としては一等地 坪200万円は妥当 清水総合開発「多摩センター」(2014/11/25)

駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 多摩センター」(2014/6/6)

多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか(2014/2/13)

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)
 

 

モクコンの家_ノキテラス外観.jpg    モクコンの家_ハコテラス外観.jpg
「ノキテラス−2階建て−」(左)と「ハコテラス−3階建て」

 大成建設ハウジングは3月16日、建築家・隈研吾氏とのコラボレーションによる壁式鉄筋コンクリート住宅「パルコン」の新たな戸建住宅「モクコンの家」を同日から発売すると発表した。「パルコン」の強さと、木のやさしさとぬくもりのある外観とテラスを併設するのが特徴。発売地域は関東、東海、関西、九州(一部地域を除く)。

 以下、同社のプレス・リリースで紹介されているインタビュー記事全文を紹介する。

◇        ◆     ◇

-パルコンについて、どういった印象をお持ちでしょうか。

 隈氏「パルコンには、コンクリート住宅の総合的な強さを感じます。」

 住まいは人間の生活を守る、そして人間自身を守る非常に大事な器だと思います。そこでは何よりも安心感が求められます。
 大成建設ハウジングが手掛けるパルコンは、コンクリート住宅ならではの耐震性が安心感につながり、安らぎという家の基本的な条件を満たしていると考えます。また、よく知られているように耐火性、防音・遮音、断熱・気密など、他にも優れたポイントがたくさんあり、さらに劣化に強く耐久性がある点はまさにサステナビリティという時代の要請にも応えていると思います。
 いま、コロナ禍を経て住宅の役割が増えたと感じています。これまで家は社会とは切り離された場、という位置づけでしたが、社会と個人の接点として住宅が意識されるようになりました。仕事をする場所、人と集う場所、クリエイティブな場としての機能が求められます。そうした社会的な役割を果たすためにも、コンクリートという災害に強い素材こそ大切なのではないかと考えています。

 -デザインのこだわりについてお聞かせください。

 隈氏「木のぬくもりと、半屋外スペースです。」 

 私が携わる建築では、木のぬくもりが大きなテーマです。人類にとっていちばん古くからの友人として「木」がそばにありました。手触りのあたたかさ、やわらかさをいつも感じられることが大切なのです。
 今回のパルコンでも木材をふんだんに使い、見た目にも手触りとしても、自然のやさしさが感じられることを重視しました。「ノキテラス」の大屋根とファザード、「ハコテラス」の木製テラスなど、ぬくもりある木の質感が特色です。
 また、屋上の庭園スペースや、室内と屋外をつなぐテラスなど、これまでの一般的なテラスやバルコニーを超えた、空間の豊かさを持った半屋外スペースを設けました。どちらもコンクリートならではの堅牢性によって、半屋外を生活の場として使用することが可能になっています。屋外でも人がゆったりと過ごせることを前提で考え、いろいろなシーンの演出を想定してみました。外気の心地よさを、広がりのあるスペースで感じることができます。特に「ハコテラス」はバルコニー上部の開放感に注目していただきたいと思います。

 -玄関から続くミュージアムは、何を目的に作られましたか。

 隈氏「住宅と社会をつなげたい、と考えました。」

 今回のプランは、アプローチから玄関を入り、そのままミュージアムスペースが連なっているのが大きな特徴です。アフターコロナを見据えてそこにいろいろな人々が集うシーンを思い描きました。仕事をする場、クリエイティブな発想が生まれる場として機能することはもちろん、住宅と社会がつながる際のひとつの形を体験していただけるでしょう。
 ミュージアムは住む人の創造性の拠点となると同時に人を招き入れて打ち合わせや交流するスペースにもなる。またその場にいる人がリラックスできることも大切。多目的でフレキシブルに活用できるスペースです。

 -ZEHへの対応についてはいかがでしょうか。

 隈氏「サステナブルなデザインと技術があります。」

 これからの住宅を考える上で、持続可能性は大きなテーマです。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応しているかどうか、住む人もそこに集う人も、省エネルギーに関心が集まる部分だと思います。
 今回の家はZEH対応設備だけでなく、木材を多用した住み心地の向上、充分な植栽スペースの想定などトータルにサステナブルであることが特徴です。
 素材や構造といったエンジニアリングだけでなく、デザインとエンジニアリングが一致している部分をぜひ体験していただきたい。そうした点で、サステナブル住宅のひとつのモデルになるだろうと考えています。

 -この新しい邸宅は、一言で表すならどんな家でしょうか。

 隈氏「住む人が、自分の創造性を発見する場所です。」

 この家は住む人の「自由」を信頼している部分があります。空間はなるべくシンプルに作り、住む人がどんな風にその空間を使いこなしていくのか。住む人の自由、住む人の創造性を活かす場所がたくさんあります。
 ぜひクリエイティブに住んでいただければと思います。
 半屋外の空間にいろいろな家具を持ち込んで、いかに日常的な場として使いこなすか。屋外を生活空間に組み入れるのは新しいトレンドでもあり、そのトレンドをご自分のセンスで実現できるのです。
 そしてミュージアム。自分のコレクション、蔵書などで満たしたクリエイティブなスペースとして、ぜひ自由に使いこなして欲しいと思います。この家がキャンパスだとすると、皆さんがいままで見たことのない絵を描くだろうと期待します。家が、自分自身の新しい創造性を発見する場所になるのです。
 新しい創造力がコンクリート住宅という安心感の土台の上で開花し、サステナブルに社会と繋がるでしょう。

◇        ◆     ◇

 隈氏が「プレファブ」とコラボするのに驚いた。しかし、隈氏は20年も昔から、「木」と「コンクリ」の〝融合〟を考えていたと思われるふしがある。著書「負ける建築」(岩波書店、2004年)の「Ⅲ-3 コンクリートの時間」の中に次のような記述がある。

 「建築という『形』を持つものを用いて、移り行く不確かな状態を固定化し、確実なものにしようという欲求がこの時代(20世紀)を支配した。その意味でこの時代は『形』の時代でもあり、『建築』の時代でもあったのである」
 「その欲求に対して、コンクリートほど見事に応えてくれる材料はほかに移り行く流動的なものが、コンクリートにおいては、一瞬にして形を持ち、固定化されるのである」
 「しかし、今や、そのような固定化こそ、人々の嫌悪の対象になりつつある。自由を自由のままに楽しみ、移りゆくものを移りゆくままに享受する生活態度を、人々は獲得しつつある。そのような時代には、永遠に固定化されることのない材料、工法が求められるようになるであろう。例えば木造の時間」
 「木造はコンクリートのように液体状態の自由を持つこともなければ突然に強くなることもない。いつもそこそこに不自由で、そこそこ弱いのである」
 「時間とは永遠にだらだらと続くものだということが木造の本質である。…それは二〇世紀の『工業化』『プレファブ』の時間とも全く異質のものである」
 「いかなる形にも固定化されようのないもの。中心も境界もなく、だらしなく、曖昧なもの…あえてそれを建築と呼ぶ必要は、もはやないだろう。形からアプローチするのではなく具体的な工法や材料からアプローチして、その『だらしない』境地に到達できないものかと、今、だらだらと夢想している」

 今回の「モクコンの家」は、この夢想を具現化しようという試みのように記者は感じるのだが、みなさんはいかがか。

 

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レクチャー会場となった大和ライフネクスト本社1階のスタジオ

 大和ハウス工業は3月16日、「記者レクチャー会<2023年公示地価>」を開催。マンション事業について同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏が、分譲戸建ては同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ次長・中岡敬典氏が、物流事業は同社建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室上席主任・藤田渉氏がそれぞれ説明し、質疑応答にも丁寧に答えるなど、とても分かりやすい勉強会だった。

 マンション事業について角田氏は、首都圏はウィズコロナでの価値観や、変化した生活スタイルの定着が見受けられ、都心部及び郊外ともに実需層の安定した購入動向となっているとし、特に、都市部での将来資産性が期待できる物件に対し、DINKSやDEWKSなどのアッパーミドル・富裕層の安定的な購入動向が続いていると語った。

 近畿圏でも首都圏と同様の市況が続いているが、郊外部では首都圏のような需要は生まれていないと説明。地方圏では、駅直結や商業、病院などを併設した再開発・複合開発による「コンパクトシティ」への期待や関心が高まっていると説明。

 首都圏の仕入れについては、用地価格は上昇しており、適地は高値圏での争奪戦となっているとし、新価格の案件の販売が比較的好調であるため、新規買収案件の販売価格設定に強気であることも一因と指摘した。近畿圏でも用地価格は上昇しているが、建築費の上昇に伴い、入札案件では応札者が減少。施工を自社で行う会社が、競争力のある価格を提示しているという。地方圏においては、デベロッパーが計画通りに用地買収できていないことから、地方進出が進んでおり、中核都市の価格が継続上昇。特に、福岡、沖縄は新価格の新規案件も好調であり、各社の積極的な買収が散見されると説明した。(同社の坪単価520万円の「大濠」も好調)

 このほか、投資家の取得意欲は依然高く、ホテル投資は回復しつつあり、海外のファンド・機関投資家の積極的な買収姿勢が継続していると話した。

 中岡氏は、2022年10月から2023年2月までの契約ベースでの売上高は、前年同期比で建売住宅は+8%、土地は+20%になっており、前回発表時(2022年4月~2022年8月)は建売住宅が-3%、土地が+4%だったことと比較して回復しており、82名からなる用地マネージャーを組成したのが奏功し、土地は4,000区画、建売住宅は1,200棟とそれぞれ前年比2割増の手当てができており、年間で土地は4,000区画、建売住宅は2,000棟を販売できる準備が整ったと話した。

 一方で、地価は引き続き上昇傾向にあり、資材・住宅設備も仕入れ価格は再度アップしているが、消費動向などを勘案して価格に転嫁しづらい状況にあることから、内部努力と効率のいい設備を投入して価格を維持する戦略をとると語った。

 商品企画については、2016年から開始した「家事シェアハウス」は累計1,467棟、約412億円にのぼり、満足度調査でも高い数値が得られたことから、今後も積極的に採用し、「家事シェアタウン」を2023年度は36か所300棟計画。ZEHの取り組みは、2022年10月から2023年1月の着工ベースでは分譲住宅の95%がZEH対応であることを明らかにした。

 また、同社とナスタが共同開発した業界初のスマホに宅配専用ボタンを搭載した24時間防犯カメラ機能付き宅配ボックス「Next-DBox+S」を2023年4月から販売開始するなど、①ZEH②家事シェア③オリジナル設備機器の3点セットで他社との差別化を図り、販売を拡大していくと話した。

 藤田氏は、生産の国内回帰に連動する倉庫需要の拡大、建築費の上昇による賃料相場の上昇、過去最大の施設供給による空室率の上昇などの市場変化を紹介した一方で、デベロッパーとゼネコンの二つの顔を持ち多彩なスキームでの対応が可能な同社の強みを強調し、2022年2月竣工までの総開発延床面積約1,243万㎡は業界シェア23.0%、280棟は同33.8%とトップであることを報告した。

◇        ◆     ◇

 角田氏が首都圏の代表的な物件として紹介した「プレミスト昭島森パークレジデンス」に注目している。JR青梅線昭島駅から徒歩5分の全481戸だが、第2工区、第3工区を含めると約1,000戸の大規模開発だ。

 記者は、三井不動産レジデンシャルなどが2021年に販売開始した「パークホームズ昭島中神」313戸の隣接地だと勘違いしており、沿線需要を掘り尽くした後のぺんぺん草も生えそうもないところで1,000戸を売るのは容易ではなく、年間100戸として販売期間は10年かかるのではないかと思っていた。

 同社のマンションの最寄り駅は「中神」ではなく「昭島」だと聞いて納得した。なるほど。ここなら売れるかもしれない。住環境がいい。東京まで約1時間。同じ距離圏の大規模開発では〝ちびまる子ちゃん〟のNTT都市開発他「ウエリス八千代村上」967戸が今春に分譲される。坪単価は220万円台に収まるのではないか。

 「昭島」は〝ちびまる子ちゃん〟に絶対負けない。ただ、戸数が多い。100戸、200戸だったら坪270万円でも売れると思うが、1,000戸となると強気な価格設定はしないと読んだ。角田氏に「坪単価250万円は厳しい。アッパーで坪240万円はどうか」と聞いたら、「鋭いところ突かれている」と返ってきた。モデルルームがオープンしたら取材したい。坪240万円だったら、同社の「高尾」416戸、「塚田」571戸のように圧倒的な人気を呼ぶ可能性があるとみている。

〝安さ〟売り「ザ・ビッグ」に近接 三井不レジ他「昭島中神」 収穫大の今年初の見学(2021/1/13)

 

 


 

 

 

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