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堀内会長(如水会館で)

 プレハブ建築協会は5月31日、定時総会後の記者会見を行い、堀内容介会長(積水ハウス副会長)がこの1年間を振り返るとともに、今年度の活動について説明、記者団の質問に答えた。

 堀内会長はこの1年間について、昨年6月に改正された省エネ法によりカーボンニュートラル実現の道筋が示され、長期優良住宅の普及のための環境整備が進んだ一方で、昨年(2022年)の住宅着工戸数は、前年に引き続き持ち直し傾向がみられるものの、依然として回復途上にあり、厳しい環境が続いているとし、今年度は住宅市場の回復に向けたZEH化などの取り組みを強化すると語った。

 また、今年1月には協会設立60周年を迎え、新たに設けた協会行動憲章に基づくカーボンニュートラル・循環型社会・自然との共生を目指す取り組みを積極的に推進すると話した。

 さらに、今年は関東大震災の発生から100年目を迎え、頻発化・激甚化する自然災害に対応する体制の強化を図ると語った。

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 質疑応答では、記者団から注文住宅(持家)の減少や、その回復策などについて質問が飛んだ。

 これらの質問に対し堀内氏は、注文住宅市場は厳しいが、積水ハウスは分譲や賃貸でカバーしているとし、改正省エネ法が今年6月に交付され、省エネ基準の適合義務を住宅にも拡大し、100万円/戸の補助が受けられるZEH+などの政府の支援策により、協会会員の建売住宅事業への参入・拡大も可能になると語った。(国土交通省のデータでは2021年の注文戸建住宅のZEH普及率は26.7%、建売戸建住宅は2.6%)

 小生は再質問をしようとも思った。堀内氏が属する積水ハウスなど大手のハウスメーカーは、ZEH化コストを価格に転嫁するのは比較的容易で、政府の支援策の恩恵を受けられるだろうが、持家、分譲戸建て市場の圧倒的シェアを占める、第一次取得層をターゲットにする建売住宅専業、地場工務店はZEH化に対応するのは容易ではない。年間4万戸を販売する飯田グループの戸建ての平均価格は土地代を含め3,000万円を切る。大手ハウスメーカーの半分以下ではないか。

 さらにまた、消費者もZEH化することで住宅取得希望価格(3,000万円)の3~6%の100万~200万円も負担が増えるのにためらうのは当然だ。初期費用がゼロになる仕組みもあるが、いま一つ、これら圧倒的多数派の層への具体的なZEH普及策・支援策が見えてこない。

 しかし、質疑応答時間(15分くらいか)は限られており、プレ協としては答えづらいだろうと判断し、質問することを止めた。この種の会見では、参加するメディア全てが質問できるくらいの時間を取るべきだと思うが…。

 この日(31日)発表された令和5年4月の新設新規住宅着工戸数は、総数も持家も分譲住宅も2ケタの減少で、持家は実に17か月連続して減少している。プレ協がいう「回復途上」ではなく、中長期にわたって減少が加速するそのとば口に差し掛かっているような気がしてならない。誰か小生のこの悲観論を一蹴してくれないか。

コロナで減った住宅選好の幅 オーダー志向層を蚕食する〝建売り御三家〟(2023/5/28)

 

 国土交通省は5月31日、令和5年4月の新設住宅着工動向をまとめ発表。総戸数は67,250戸(前年同月比11.9%減)で3か月連続の減少。利用関係別の内訳は持家が18,597戸(同11.6%減)で17か月連続の減少、貸家が28,685戸(同2.8%減)で26か月ぶりの減少、分譲住宅が19,701戸(同21.8%減)で3か月連続の減少。分譲住宅の内訳はマンションが7,233戸(同43.0%減)で5か月ぶりの減少、一戸建住宅が12,362戸(同0.8%減)で6か月連続の減少となった。

 首都圏マンションは3,759戸(同32.7%減)で、都県別では東京都が2,196戸(同26.6%減)、神奈川県が1,230戸(同24.4%減)、埼玉県が263戸(同60.6%減)、千葉県が70戸(同76.4%減)となった。

 このほか、近畿圏、中部圏、地方のマンションも大幅に減少した。

 大幅減少について国交省住宅局は、関係者へのヒアリングを行った結果、持家は物価高・資材高から消費マインドが低下しており、受注も減少していることの反映とみている。分譲マンションは前年4月は約1.2万戸の着工があり、今年1~3月も多くの着工があったことの反動減であり、絶対数がそれほど大きくないことから大規模マンションの着工によって波が大きくなる傾向にあるとし、分譲戸建ても減少幅は小幅にとどまっており、市場が劇的に変わったとは見ていないようだ。

 小生も同感だ。各社とも前期の業績が好調で、この先の市場を見極めるための小休止ではないかとみている。

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「The Parkhabio SOHO 祐天寺」

 三菱地所レジデンスは5月30日、共用部にコワーキングスペースを併設した新たな職住一体型賃貸マンションシリーズ「The Parkhabio(ザ・パークハビオ) SOHO」の第3弾「The Parkhabio SOHO 祐天寺」が竣工したのに伴うメディア向け完成内覧会を行った。得も言われぬ美しい外観に記者は惚れ込んだ。「ザ・パークハビオ」のコンセプト「その瞬間に、心が弾む」が見事に表現されている。賃料設定は「中目黒」より高くても人気なのにも納得した。

 物件は、東急東横線祐天寺駅から徒歩2分、目黒区祐天寺二丁目の近隣商業地域に位置する敷地面積約650㎡、7階建て全53戸。専用面積は25.53~67.89㎡(1R~4LDK)。現在募集中の住戸の月額賃料は14.1万(25.53㎡)~44.0万円(67.89㎡)。竣工は2023年5月下旬。設計はアーキフォルム一級建築士事務所。施工は大豊建設。

 1階に設けた約80㎡のStyle Loungeは、オープンスペースのほか50インチの大型ディスプレイを備えた会議室(8人部屋)、個室ブース6室、オープンデスクやソファースペースなどを用意。

 屋上テラスの「Sky Lounge(スカイラウンジ)」は、電源・Wi-Fiを完備し、仕事をすることも可能な「ルーフテラス」、100インチのシアターウォールを備えた「ルーフカウンター」、ボルダリングのホールドをあしらった「プレイヒルズ」の3つのゾーンからなり、東京タワーや富士山も望むことができる。床を踏むと天井と床からミストが噴き出す「ウォーターエリア」も設置している。

 外観は、祐天寺の持つ優しさを表現するためラウンド形状にこだわり、シルバーとゴールドの2色のアルミルーバーを採用し、1本1本のアルミルーバーの高さを変化させている。アールの曲線で白い外壁を包み込む「繭」のイメージを表現したという。

 エントランスホール内には「かまくら」を設置し、暖かみと落ち着きのある空間を演出。各住戸の部屋番号サインは、スポットライトで映し出されるようにしている。

 専用部は、ファミリーの利用も可能にするため53.64㎡の3LDKや67.89㎡の4LDKを用意。4階以上の住戸は、アクタスとのコラボレーションし、一部専用部分のカラーコーディネートをアクタスが監修している。

 リーシングは2月から開始。賃料は平均2.2万円/坪で、「中目黒」より高い設定にもかかわらず、エリアには新築の賃貸がなく、共用施設が充実していることから人気になっており、25戸に申し込み(女性は6件)が入っているという。

 内覧会で同社賃貸住宅開発部長・菅野裕治氏は、「今回の『SOHO祐天寺』は第一弾の『大手町』、第二弾の『代々木公園』に続く第三弾。オフィスより快適なコワーキングスペースを備えており、法人登記も可能にし、居住とオフィス賃料の家賃の二重払いを解消している。今後も3年間で5棟の供給を目指す」と語った。

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スタイルラウンジ

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スカイラウンジ

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ソファースペース

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個室ブース(ハーマンミラー社の椅子は1脚10万円とか)

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ルーバー

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「ウォーターエリア」

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部屋番号

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 記者は、「The Parkhabio SOHO」シリーズ第一弾の「大手町」、第2弾の「代々木公園」も見学し感動を覚えた。とくに「代々木公園」では、物件案内を務めた同社賃貸住宅計画部第四グループ主任・福井一哉氏の巧みな話術に嵌まり、いっぺんにファンになったのだが、今回は建物外観に見惚れ、舞い上がった。

 アール形状の建物は最近流行りのようで、あちらこちらで見かけるようになった。今回の物件説明役の同社賃貸住宅開発部開発第一グループ・花輪俊大氏は「敷地は元三菱UFJ銀行の店舗跡地。周囲に高い建物がなく視認性の高い立地なので、ランドマークになるとラウンド形状にこだわった」と話したが、その企画意図は見事に表現されている。記者は、分譲にしたら坪単価650万~700万円でも売れると瞬時にはじき出した。

 「その瞬間に、心が弾む」仕掛けはこれだけではない。「かまくら」だけは理解できなかったが、ミストが噴き出す「ウォーターエリア」は分譲に採用したら大ヒットするはずで、光と陰で部屋番号を映し出す部屋番号サイン、全面をマグネット付きとした廊下壁、モザイクタイルを張り詰めた共用部の壁、67㎡の4LDK、タンクレストイレ…。同社賃貸住宅開発部は何名のスタッフで構成されているか分からないが、多士済々、人材の宝庫ではないか。発想力がケタ違いだ。分譲グループとの連携を深めれば、とんでもないことをやってのけるのではないか。

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現地

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 新しい発見もあった。わずか1㎡だけで、プランによっては広く感じたり狭く感じたりすることだ。

 内覧会で約25㎡の1Rを見た後だった。同業の記者の方が約26㎡の1DKのプランを見て「こっちは広いね」と感嘆の声を上げた。

 言われてみると確かに広く感じる。物件案内役の同社賃貸住宅開発部開発第一グループ副主任・柳澤美友紀氏は「図面だけ見ただけでは代わり映えしないかもしれませんが、部屋を区切り、キッチンを廊下に収めるか、居室と一体型にするかで感じ方が異なり、1DKタイプは人気になっています」と話した。

 双方の間取り図を添付する。皆さんも見比べていただきたい。

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わずか1㎡でもこんなに異なる(左は約25㎡の1R、右は約26㎡の1DK)

その瞬間、福井氏に惚れた 三菱地所レジSOHOタイプの賃貸第2弾「代々木公園」(2022/10/13)

感動的な天井高2730ミリの「MIデッキ」 職住一体型SOHO 三菱地所レジ「大手町」(2022/5/15)

 

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南棟「d_ll(ディール)つくば」完成予想図

 大和ハウス工業は5月30日、つくばエクスプレス「つくば駅」直結の複合施設「(仮称)つくば市吾妻20街区プロジェクト」の地鎮祭を行い、五十嵐立青・つくば市長も出席して施設概要に関する記者会見を行った。

 施設は、つくばエクスプレス「つくば駅」直結、つくば市吾妻2丁目に位置する敷地面積約7,639㎡(2,310坪)で、建物は5階建て鉄骨造延床面積約10,188㎡(3,081㎡)のオフィス・商業からなる南棟「d_ll(ディール)つくば」、4階建て鉄骨造延べ床面積約3,337㎡(1,009坪)の北棟、5階建て鉄骨造延床面積約7,403㎡(2,23坪)の立体駐車場(353台)による3棟構成。設計・施工は村本建設。着工は2023年4月3日~2023年6月1日、竣工は2023年11月30日~2024年9月30日、オープンは2024年10月の予定。

 南棟の「d_llつくば」は、1階と2階は飲食店、クリニック、フィットネスクラブなど16店舗が入居。3~5階はオフィスフロアで、3階にはスタートアップ企業の交流拠点となるようシェアオフィススペースとして提供する予定。「d_ll」は同社の中規模オフィスビルブランドで、「d_ll四日市」に続く2棟目。

 北棟は同社茨城支店とグループ5社(大和リビング、大和ハウスリアルティマネジメント、大和ハウスリフォーム、大和ハウス賃貸リフォーム、大和ランテック)が入居予定で、2024年10月から約240名のグループ従業員が勤務する拠点となる。

 記者会見で五十嵐市長は「駅直結の一等地の中の一等地。長い間、駐車場として活用されてきたが、この一等地が高層マンションになったら駅前としては厳しいものになるので、長期的な街の発展に資するものにしていただきたいと、土地所有者の筑波都市整備さんに要望してきた。今回、それが了承され、大和ハウスさんの計画によって実現した。利益は少し下がってでも長期的な街の発展に資する判断をしてくださったことは大変ありがたい。これからの新しい街づくりの形が示された。大きな意義を持つ駅のリスタートになる。このほかの駅周辺の様々なプロジェクトとあわせ、大きく花開き、つくばの顔として発展していくプロジェクトになることを期待している」と語った。

 大和ハウス工業執行役員東関東支社長・髙吉忠弘氏は、「当社グループは2055年に創業100周年を迎えるにあたって、その羅針盤となる“将来の夢”(パーパス)を作成、公表した。『生きる歓びを分かち合える世界の実現に向けて、再生と循環の社会インフラと生活文化を創造する』という趣旨で、これはその趣旨に副うもの。〝賑わいと緑が溢れだすエキウエ施設が、マチの様々な交流の拠点となる〟をコンセプトに、魅力ある都市拠点となることを目指す」と話した。

 用地は2017年、土地所有者の筑波都市整備からプロポーザル方式により同社が取得している。

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配置イメージ

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北棟

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左から五十嵐氏、高吉氏、八友氏

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 記者会見場で配布された資料をみて驚いた。容積率を単純にはじいたら274%しかなかった。容積不算入もあるはずだから、実質的には200~250%にしかならないはずだ。「駅直結の一等地の中の一等地」(五十嵐市長)ではありえない数値だ。

 どうしてこんなに低いのか質問したら、同社茨城支店長・八友明彦氏は「法定容積率は400%だが、北側敷地に隣接する吾妻小学校への日影に配慮するよう市から求められていた条件に沿ったもの」と語った。

 このような街づくりもあるのか。駅の南側は商業施設など高層建築物だが、北側は公園、中層のオフィス・商業、小学校だ。日テレの番町再開発と真逆だ。「これからの新しい街づくり」(五十嵐市長)のモデルケースになるのか。

 後で知ったのだが、用地はプロポーザル方式によって取得したのでこのような結果になったということだ。

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 今回のプロジェクトとは直接関係ないが、五十嵐市長にどうしても聞きたいことがあったので質問した。街路樹と街づくりについてだ。質問はおおよそ次の通り。

 「わたしは街路樹や都市公園、緑についてかなり取材しています。最近、神宮外苑や日比谷公園などで樹木がどんどん伐採されようとしています。市長さんは街路樹を伐採しないと宣言された。公園利用では、維持・管理に関与することを条件に隣接するマンションとの垣根を取り払い、マンション内のカフェの利用を可能にするなど全国的にみて珍しい決断もされた。街路樹を含め、街づくりはどうあるべきかお聞きしたい」

 五十嵐市長は、「わたしが市長に就任したとき(7年前か)、このあたりの街路樹は伐採されることに決まっていたが中止した。街路樹は街の成熟度の象徴であり、単に緑を提供している以上の価値がある。車椅子利用者に日陰を与えたり、生物多様性にも貢献している。やむを得ず強剪定をしないといけないものもあるが、しつかり維持・管理していくのが基本。今回のプロジェクトでも大和ハウスさんはきちんと緑化も図られている」と語った。

 本当は、市内の県道沿いの街路樹が大量に伐採されていることも聞きたかったのだが、さすがに今回の記者会見にはふさわしくないと思いとどまったのだが、「街路樹は街の成熟度の象徴」は「街路樹は人間の成熟度の象徴」と同義と受け取った。街路樹の見方が変わるかもしれない。

 参考までに。同市の緑被率は63.2%、わが多摩市のみどり率は53.9%だ。圧倒的に緑が多いことはよく似ている。東京駅へ1時間剣で、マンションの坪単価250万円も同じくらいか。(今回の事業地を競争入札に掛けたら坪300万円もあるかもしれないが…)

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現地(左後方は駅南側の同社のホテル)

坪235万円でも7割近い144戸成約100㎡超58戸も人気 日本エスコン「つくば」(2021/4/24)

「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/23)

 

積水ハウスは529日、グループ会社・積水ハウス建設の20254月入社までの高校卒業予定者を中心とした「住宅技能工」採用計画を新たに取りまとめたと発表。20244月入社では、今期の2.4倍にあたる年間95名、20254月入社では3.4倍にあたる年間133名の採用を予定している。

新たに採用する人事制度では、「住宅技能工」の名称を改め、「ホープ」、「クラフター」、「チーフクラフター」、「マスタークラフター」の4つの職務等級に変更し、新評価制度による客観的評価を導入する。

処遇改善では、高卒新入社員の初任給を月収・年収ベースで11%引き上げを 20234月に実施。20244月の新人事制度導入により、チーフクラフター() の待遇を大幅に改善し、30代で現在年収500600万円から、最大約1.8倍の約 900万円まで引き上げる。

働き方改革では、「48休」、「年間休日120日」、「完全週休2日」、「男性育休取得率100%」を引き続き実施する。

今回の採用計画に合わせ、現場でのイメージアップと社員の満足度向上を図るため、ビームスのユニフォームブランドに依頼し、ユニフォームの制作を行い、夏冬用、防寒服、空調服などの一式を2024年春から全国の「住宅技能工」が着用する予定。

新施策の導入について同社は「建設現場での職方の高齢化や若年就業者の減少の加速に加え、年間時間外労働の上限の制限が202441日から適用される『2024年問題』がある一方で、良質住宅のストック形成に向けた担い手の創出が強く求められている」ためとしている。

令和4年賃金構造基本統計調査によると、建設躯体工事従事者で3034歳の平均年収は420万円、3539歳の平均年収は470万円

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結構な改革だと思う。「クラフト」は「玄人」を連想させるではないか。参考までに厚生労働省編の職業分類表小分類の職業を以下に紹介する。

裁判官、検察官、弁護士、弁理士、司法書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、宅建士、編集者、記者、著述家、グラフィックデザイナー、音楽家、俳優、医師、看護師、栄養士、保育士、小・中学校教員、企画・調査事務員、秘書、コールセンターオペレーター、集金人、レジ係、不動産仲介・売買人、介護支援専門員(ケアマネジャー)、家政婦(夫)、理容師、美容師、調理人、旅館・ホテルフロント係、接客社交係、芸者、ビル管理人、チラシ配布員、葬儀師、火葬係、トリマー、ブライダルコーディネーター、自衛官、警察官、海上保安官、稲作・畑作作業員、植木職、造園師、漁労作業員、金属プレス工、自動車整備・修理工、タクシー・ハイヤー運転手、型枠大工、とび工、解体工、鉄筋工、大工、左官、港湾荷役作業員、ビル・建物清掃員

呼称は「官」「士」「工」「手」「員」「人」「係」「者」「家」のほか「コーディネーター」「オペレーター」など外来語もある。職業に貴賎なしと言われるが…なんやら侮蔑的な呼称もある。みんな「クラフター」にしたらどうか。

小生は、何の公的資格も必要ない(免許証もないので国家資格はひとつも持っていない)「記者(ライター)」を名乗っている。〝クラフトライター〟にしたら認知されるか。

住宅・不動産企業の20233月期決算では過去最高の売上高、利益を計上する企業が続出し、株価は実に33年ぶりに最高値を更新した。新型コロナ感染症は、58日からインフルエンザ、淋病、梅毒と同じ「5類感染症」に移行し、マスクを外す人が増えているなど、街は明るさを取り戻しつつある(淋病、梅毒は死語かと思っていたら爆発的に増加しているという)。そんな中で、のどに魚の小骨が刺さったように気になるのは、住宅着工の持家が15か月連続して前年同月比で減少していることだ。復活するのか減り続けるのか、考えてみた。

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2022年の住宅着工総数は859,529戸で、構造別では木造が477,883戸(55.6%)、鉄骨鉄筋・鉄筋・鉄骨造が380,453戸(44.3%)。利用関係別では持家が253,287戸(29.5%)、貸家が345,080戸(40.1%)、分譲住宅が255,487戸(29.7%)。前年比では貸家が7.4%、分譲住宅が4.7%増加した一方で、持家は11.3%の2ケタ減少となり、16年ぶりに分譲住宅に抜かれた。ツーバイフォー工法による着工戸数は89,562戸(前年比5.1%減)、坪当たりの工事予定額は59.4万円(同増減なし)。プレハブ工法は106,680戸(同0.8%減)で、工事予定額は89.1万円(同3.8%増)となっている。

それぞれの木造戸数(比率)をみると、持家は221,324戸(87.4%)、貸家は112,260戸(32.5%)、分譲住宅が142,294戸(55.7%)となっている。

これを工事予定額(坪単価)でみると、全体では69.3万円で、前年の66.0万円から5.0%増加している。利用関係別の単価は、持家が69.3万円(前年比5.0%増)、貸家が75.9万円(同4.5%増)、分譲住宅が62.7万円(同増減なし)となっている。

分譲住宅を構造別・建て方別でみると、一戸建は52.8万円(同6.7%増)で、うち木造は49.5万円(同増減なし)、鉄骨造は92.4万円(同7.7%増)となっており、鉄筋コンクリート造共同住宅は89.1万円(同増減なし)だ。

分譲一戸建の単価を都道府県に見ると、もっとも高いのは島根県の59.4万円で、長野県、鳥取県、長崎県の56.1万円が続く。もっとも安いのは福島県の42.9万円で、他は46.2万円から52.8万円に収まっている。

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 これらの数値を眺めるといろいろなことが分かってくる。

 持家は前年比2ケタ減で、今年に入っても減少に歯止めがきかず3月まで15か月連続で減少となると、コロナ禍と関連づけざるを得ない。

 分譲戸建て市場はコロナ禍で意想外に沸き立ち、いまはその反動で勢いは減速気味だが、新築マンションや中古住宅市場動向からも、持家志向に大きな変化が起きているとは考えづらい。

 持家志向に変化はないものの、いまの経済社会状況を反映して住宅選好が多様化しているということは間違いない。持家か賃貸か、新築か中古か、マンションか一戸建てか、その選択の幅は広がっている-というよりは、富める者と貧しき者の格差が拡大し、二極化がどんどん進行しているとも読める。貧しき者はむしろ選択の余地が狭まっているのではないかと思わざるを得ない。

 富める者はどうか。分譲事業が絶好調の三井不動産の20233月期のマンション計上戸数3,196戸の平均価格は7,373万円(前期比931万円増)で、分譲戸建て420戸の平均価格は8,308万円(同717万円増)だ。完成在庫は戸建てはゼロで、マンションの55戸のみ。積水ハウスの20231月期の戸建(請負)の売上棟数は7,842戸(前期比6.1%減)となったが、1棟単価は4,619万円(前期比8.3%増)、坪単価は111万円(同6.4%増)で、戸建事業売上高は前期とほぼ同じ3,524億円を維持した。

 一方、全国491か所に営業拠点を置く〝分譲戸建ての雄〟飯田グループホールディングスはどうか。20233月期の売上高は14,397億円(前期比3.8%増)で、主力の戸建分譲住宅の計上戸数は40,826戸(同1.7%減)、1戸当たり単価は土地価格を含めて2,967万円(同2.7%増)だ。計上戸数は住宅着工戸数に換算するとシェアは27.9%を占め、沖縄県の55.4%を筆頭に東北は44.8%、北関東は34.9%、東海は32.2%、首都圏は30.5%に達するなど独走している。

 飯田グループの全国展開と関係があるかどうかは不明だが、分譲戸建ての単価がもっとも高い島根県には同社の営業所はなく、単価が次位の鳥取県と長崎県にはそれぞれ1か所、長野県は4か所だ。

 このほか、売上高1兆円超を目指すオープンハウスの20229月期の建売住宅計上戸数は5,907戸で、ケイアイスター不動産の20233月期の戸建ての計上戸数は6,226棟(土地販売含む)だ。この3社だけで戸数は約5.3万戸、市場の約4割を占める。

 前段で紹介したように、このところの用地の上昇、建築費・資材高で坪単価は全体で5.0%上昇しているにもかかわらず、分譲戸建てのみは前年と変わらない。圧倒的な市場占有率と価格競争力を持つ3社に対抗するには、アッパーミドル・富裕層にターゲットを絞るか、さらに価格を下げるほかなく、価格下げ圧力が強まっているからだと読める。記者は持家志向の相当数は価格が安い分譲戸建てに流れているのではないかと考えている。木造と鉄骨の単価差は倍近い。オーダーメイドかレディメイドか、選択できる人はどれだけいるのか。

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 上記のように、あれやこれや消費者の価値観・住宅取得意向について考えていたら、カーディフ生命が昨年12月に実施した「第4回 生活価値観・住まいに関する意識調査」がネットでヒットした。全国2,000人を対象に経済・社会活動の回復と、円安や物価上昇による将来不安の高まりが混在する中での人々の意識、行動、価値観の変化に焦点を当てたものだ。

 これによると、「老後資金が不安」は8割超で、主な理由として「年金額の減少」、「将来の物価上昇」、「医療費負担の増大」などを挙げている。

 住みたい家は「戸建て(持ち家)」が6割で、希望購入価格は平均2,846万円となった。「都心派」は49%、「郊外派」は51%と拮抗している。30代と40代では「郊外派」がそれぞれ55%、57%と優勢で、30代は「安価で広い住宅を購入できるから」(37%)、40代は「時間に縛られず、のんびりした生活を送りたいから」(31%)が郊外を選ぶ最大の理由としている。

 購入希望価格は飯田グループの分譲価格とほぼ一致する。これは偶然か。マンションなら土地代がただでも坪150万円以下はありえず、20坪で3,000万円だ。価格競争力のある〝建売り御三家〟はまだまだ伸びるということか。蚕食という言葉がぴったりだ。

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木住協の懇親パーティー(明治記念館で)

日本木造住宅産業協会(木住協)は525日、令和5年度定時総会を行い、令和4年度の事業報告・収支決算、役員の選任、令和5年度の事業計画などを審議し決議・承認した。

総会後、記者会見した市川晃会長(住友林業会長)は、「令和4年度の住宅市場は、新設住宅着工戸数は860,828戸(対前年比0.6%減)となり、特に持家においては248,132戸(同11.8%減)となり、厳しい環境が続いている。今年度予算で、住宅分野では『子どもエコすまい支援事業』『先進的窓リノベ事業』『給湯省エネ事業』により構成される『住宅省エネ2023キャンペーン』が順調に開始され、これが住宅業界への追い風となるよう期待している」と述べ、「今年度『こども家庭庁』が発足した。家族に見守られて子どもたちが健やかに育つ場が住宅であり、木育の観点も加味すれば、安心安全の質の高い住宅や住環境を木造で実現していくニーズがますます高まる。子どもの目線からも、住宅産業の果たすべき役割を再認識して臨みたいと考えている」と語った。

令和5年度事業では、各支部、地方自治体との連携を強化し、木材利用促進協定・災害協定など地域貢献活動を強化し、脱炭素・循環型社会の実現に向けた環境に優しい木材利用や木造建築の普及を図り、重点事項として①良質な住宅ストックの形成とリフォームの推進②木造住宅・建築物の普及促進③広報活動の推進④人材育成の推進⑤良質な資材の普及と木造化・木質化の推進などを推進する。

記者発表会後には、コロナ禍で中止していた懇親パーティーを開催、参加者は通常の約7割に絞ったが、会場は満席の約400名が参加した。

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市川氏

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 うっかりしてテープを取ることを忘れたので正確ではないが、市川会長は懇親会の冒頭、202313月の第一四半期の実質GDPが前期比年率+0.5%(前期比+0.1%)となり、インバウンドも増加していることなど直近の経済の動きに触れたあと、エンボディード・カーボン(建設時から運搬、維持管理など総体としてのCO2排出量)の取り組みが不十分とし、「昨日は、当社が施工した木造とRCのハイブリッド施設を見学したが、木造の部分は明らかに暖かく、子どもは床を飛び跳ねたり寝転んだりして遊んでいる。このような木の持つ特性と、ライフスタイル面でのCO2削減の取り組みを合わせ技として表すことはできないか」などと話した。

 木造ファンの記者は〝表す〟を〝現し〟に置き換えて理解した。国土交通省は「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」のとりまとめを踏まえ、消費者が建築物の省エネ性能の知識を持っていなくとも、省エネ性能を★印で表示するガイドラインを近く示す予定だが、市川会長は木材・木造の人への効果も分かりやすく伝えるべきと話したのではないか。

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「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」

 大和ハウス工業は5月25日、JR昭島駅北口の大型複合タウン「東京・昭島 モリパーク」内で計画している3棟約850戸超のプロジェクト第一弾となる「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸)マンションパビリオンをメディアに公開し、6月3日にモデルルームをオープンし、9月中旬から販売開始すると発表した。「モリパーク」内で初の住宅開発となる。

 物件は、JR青梅線昭島駅から徒歩5分、 昭島市田中町字後小欠の第二種住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約18,215㎡、13階建て全481戸。専有面積は56.57~89.08 ㎡、価格は未定だか、3LDKで5,000万円台の予定。売主は同社(事業比率70%)と住友商事(同30%)。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2024年8月。

 現地は、昭和飛行機都市開発が管理・運営する昭島駅北口エリア一体の約130haの総称「東京・昭島 モリパーク」内に立地。エリア内には大型スーパーマーケットや映画館、飲食店など120を超えるテナントが出店する大型複合商業施設「MORITOWN(モリタウン)」のほか、ボルダリングなどアウトドアを体験できる「アウトドアヴィレッジ」、リゾートホテル「フォレスト・イン 昭和館」、テニスセンター、ゴルフコース・練習場などの施設が揃う。

 敷地は2020年、昭和飛行機都市開発から同社が取得したA・B・C敷地約32,000㎡のうちのA敷地。敷地南側はサクラ並木、東側は歩行者専用通路として国内最長の全長400m超のいちょう並木と接している。北側はテニス場。建物は3棟構成。

 住戸内の一次エネルギー消費量を20%削減することで「ZEH-M Oriented」認証と、「いきもの共生事業所認証(ABINC 認証)」を取得する予定で、主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2450ミリ、ディスポーザー、食洗機、スロップシンク、浴室タオル掛け2か所など。トイレドアノブは壁面までセットバックさせる。共用施設には敷地内に防災拠点「ギャザリング パーク」を整備し、「人生を楽しむ共用施設」をコンセプトに、脱衣スペースやルーフバルコニーを含め約70㎡の広さの水風呂や外気浴もできる「プライベートサウナ」を最上階に設けるほか、「ランドリールーム」「プレイスタジオ」「パーティーパティオ」「ベジタブルガーデン」「ワークスペース」「ゲストルー ム」(3戸)「トランクルーム」(56区画)などを整える。

 専有部は1LDK(56.57㎡)~5LDK(89.08 ㎡)の全66タイプを用意、約68㎡と約72㎡の3LDKが全体の約7割。68㎡の1スパン12戸には多様な利用が可能な「土間スペース」付きも販売する。

 内覧会で同社東京本店統括マンション事業部東京マンション事業部販売事務所長・東本剛氏は「現段階で価格は3LDKで5,000万円台としか言えないが、衣と食が揃っている『モリパーク』に住機能を備えることで、街の発展に寄与したい。次期以降の販売もあるので、来年の6月までに完売したい」と話した。問い合わせ件数は約1,500件で、来場予約は約300件という。

 同社はこのほかエリア内のB敷地で9階建て約100戸、C敷地で14階建て約270戸をそれぞれ分譲する予定で、トータルでは3棟約850戸超を建設・分譲する。工期は2023年1月~2028 年度の予定。総事業費は約400億円。

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エントランス

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いちょう並木

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 記者は、相撲に例えれば東西の横綱クラスのこの「昭島」とNTT都市開発など5社JV「ウエリス八千代村上」(967戸)に注目している。規模(戸数)の多さ、東京駅まで約1時間、施工は長谷工コーポというのも同じだ。どちらが勝つか負けるか、それとも双方が早期完売するのか、共倒れになるのか。価格(単価)は他と比べれば安いものの、一次取得層にとってグロス価格は決して安くはない。

 今回の「昭島」が建つ「モリパーク」は、2021年初に三井不動産レジデンシャル他「パークホームズ昭島中神」(313戸)のモデルルームを見学したとき見ており、素晴らしい住環境であるのは確認しているのだが、基本性能・設備仕様レベルなどが低かったらどうしようと思っていた。〝価格の安さが売り〟の記事など書きたくないからだ。

 モデルルームを見学して、その懸念は雲散霧消した。基本性能・設備仕様については前段で書いた通りだ。価格は未定だが(記者は坪240万円と予想しているが、もっと高くなるか)、この単価水準でこれほどレベルが高いマンションはまずほかにないはずだ。細かいことだがトイレはタンクレス。最近はコスト圧縮のためタンク付きが復活、幅を利かしている。床暖房はLDKに隣り合う居室も標準装備だ。販売代理に長谷工アーベストが入っていないのは、土地は大和ハウス工業が取得し、長谷工コーポレーションの持ち込みではないということのようだ。設備仕様も長谷工仕様ではない。

 ただ、東本氏の「来年6月までに完売したい」という言葉はにわかには信じがたい。最近の市場からすれば年間100~150戸販売がやっとではないか。これを上回るには中広域から集客することが必須要件で、街の魅力を伝えきれるか、物件の特徴を説明しきれるかどうかにかかっている。

 街の魅力でいえば、昭和飛行機都市開発にも確認したが、エリア全体面積約130ha(皇居は115ha)というのは関東圏にはまず他にないはずで、近い機能を有するのは「軽井沢」ではないかということだった。いちょう並木は昭和55年に整備・オープンされたが、そのイチョウは昭和飛行機工業が創業した昭和12年に植えられた可能性が高く、樹齢にしたら100年近いのではないかと思われる。ホテルも立派だ。

 これらの魅力を、やはり東京まで約1時間のわが街・多摩センター(坪単価250万円)と比較すると、「昭島」に軍配を上げざるを得ない。癪だが、東本さん、頑張れ!

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サウナ

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トイレ

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タオル掛け

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「土間スペース」

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駅側から見たいちょう並木(左)とマンションギャラリー側からみたいちよう並木

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リゾートホテル「フォレスト・イン 昭和館」

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昭島駅北口(このケヤキの強剪定はありえない。通りがかったお年寄りの女性も「頭を伐ればいいってもんじゃない」と批判した)

全3棟850戸超の「(仮称)昭島プロジェクト」始動 大和ハウス(2023/5/10)

イメージキャラに「ちびまる子ちゃん」NTT都市など5社JV「八千代村上」(2023/1/14)

平均75㎡ レベル高いマリモ「昭和記念公園」4カ月で半分以上の90戸超成約済み(2021/1/13)

〝安さ〟売り「ザ・ビッグ」に近接 三井不レジ他「昭島中神」 収穫大の今年初の見学(2021/1/13)

 

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「MOCXION四谷三丁目」

 三井ホームは5月24日、23区内初の木造マンションブランド「MOCXION」の賃貸マンション「MOCXION四谷三丁目」が完成したのに伴うメディア向け見学会を行った。道路条件、法令上の制限など厳しい建設条件にありながら、木造枠組工法を採用することで敷地の可能性を最大限に引き出し、「ZEH-M Oriented」の認証を受けて環境問題に対応するとともに居住性、経済性にも寄与しているのが特徴。

 物件は、地下鉄丸の内線四谷三丁目駅から徒歩7分、JR信濃町駅から徒歩8分、新宿区須賀町の第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率300%=道路・斜線・日影規制で実質183%)に位置する敷地面積約262㎡(80坪)、4階建て延べ床面積約593㎡(180坪)の全16戸。専用面積21.66~31.52㎡、賃料は10.4万~14.6万円。工期は2022年6月20日~2023年5月22日。賃貸管理会社は三井ホームエステート。設計・施工は三井ホーム。

 敷地は南側と西側に接道。南側道路幅員は約4mしかないが、天空率を利用することで道路、斜線、日影規制などの規制緩和を受け、敷地の可能性を最大限に引き出した。木材の総利用量は154㎥。炭素貯蔵量にして108t‐CO2、スギの木(35年生)約433本に相当。

 「ZEH-M Oriented」認定を取得、一次エネルギー消費量を26%削減、居住性と経済性に寄与。当社独自開発の太陽光発電パネル(9.8kWh)と蓄電池を(3.5kWh)設置している。 

 屋根材には、優れた断熱性能と高い構造体力を有する独自の屋根断熱構造材「ダブルシールドパネル(DSP)」を採用することで、最上階の居室天井高2600ミリ(標準階は2400ミリ)を確保し、床は鉄筋コンクリートと同等クラスの遮音性能を有する「高性能遮音床システムMute」を採用。施工にあたっては同社が開発したミニクレーンを使用することで、道路条件により大型クレーンでの施工が難しい問題を解決した。

 4月13日から募集を開始しており、2戸に申し込みが入っているほか、1戸はモデルルームとして1~2年間利用する。賃料は平均16,500円/坪。ZEH-Mの認定を受け、木造のよさをアピールできているとして相場の1~2割高に設定している。向こう6か月までの100%入居を目指す。オーナーは木造の償却期間22年間と鉄筋の47年のどちらかの選択が可能。

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「MOCXION四谷三丁目」(南側から写す)

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玄関

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 この物件については、構造見学会も取材しているので参照していただきたい。賃料は相場の1~2割高に設定しているのも理解できる。同社によると、建築コストは鉄筋と比較してそれほど競争力は高くないようだが、ZEHの認証を受け付加価値を高めていることなどから評価されるのではないか。

 居室の仕上げはほとんど木調パネル。こんなことを言うと同社の小松さんから〝まだお前は現しの呪縛から解けていないのか〟と言われそうだが、やはり現しがいい。小松さん、木にはストレスを軽減し、免疫力を向上させ、知的生産力を高める効果などが確認されています。木をケミカル製品などて覆ったら、これらの効果はどれくらい減殺されるのか。今度お会いしたら聞いてみよう。

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竣工時室内

木造賃貸&ZEH-M 三井ホーム「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」構造見学会(2022/12/3)

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神宮外苑のいちょう並木

 三井不動産など事業者4者は5月18日、「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」の環境影響評価書について日本イコモス国内委員会(ICOMOS/ International Council on Monuments and Sites)」(イコモス)から誤り・虚偽と指摘されていた全58項目に対する回答を、同日開催された令和5年第2回審議会総会で行ったと発表した。

 全58項目のうち「指摘自体に事実と異なる内容が含まれるもの」が約半数、「考え方や解釈の違いに基づく指摘」が約半数であり、評価・予測内容としては正当なものであり、評価書には誤り・虚偽はないとし、今後も審議会総会および各関係機関への報告・協議をしながら、適切に本計画を進めていくとしている。

 一方、イコモスは5月16日、「緊急要請」として、事業者の説明は「自然環境アセスメント技術マニュアル」に記載された科学的方法論を遵守しておられず、数多くの誤りと虚偽の内容を、事業者自らが立証されたものとし、東京都環境影響評価書としては著しくレベルの低いものであり、世界に誇る「環境都市・東京」の実現に向けて、再審を要請すると発表した。

 「(事業者の)粗悪なデータの集積は誤った群落分類を招き、調査対象範囲植生の本質を大きく見誤る可能性をもたらすため十分注意を要する」「生態系のネットワークは、既存樹木の53%、1018本が伐採・移植されるため、破壊される。特に、建国記念文庫の森、及び絵画館前広場の樹林地における樹齢100年を超える多数の樹木の伐採・移植は、取り返しのつかない行為である」と指摘している。

 また、イコモスは同日、中央大学研究開発機構グリーンインフラ研究室・石川幹子氏が作成した2023年調査の明治神宮外苑現存植生図を公表。植生図には、凡例として樹林帯の22項目のほか、例えば軟式野球場にはスダジイ、シラカシ、エノキ、ケヤキ、トチノキ、ヒマラヤスギ、トウカエデ、ウバメガシ、イチョウ、サクラなどの巨樹がどこに植わっているか詳細に記載されている。

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軟式野球場

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野球場のユリノキ

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屋内練習場(手前のグラウンド内野は人工芝)

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ヒマラヤスギ

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建国記念文庫エリア

◇        ◆     ◇

 記者は平成の時代に入ってから約30年間、RBA野球大会の取材のため〝草野球の聖地〟神宮外苑軟式野球場に通った。トータルすれば300~400日、試合数にしたら数千試合になるだろうか。

 再開発計画では、野球場は広場とテニス場、駐車場に変更されることになっている。工事はずっと先だろうが、野球場の最期を見届けようと、イチョウ並木なども含めて約2時間かけて見て回った。

 グランドに入ろうとしたら「ご利用者以外立入禁止」のスタンド看板が目に入った。以前にはなかったものだし、グラウンドを見て回るくらい何のお咎めもないだろうと、全6面のグラウンド(日の丸・ヒマラヤ・桜・ケヤキ・大銀杏・コブシ)の外周部の樹木を見て回った。(あとで野球場事務所に確認したら「一般の方が入り込み、キャッチボールなどをするケースが目につくようになったので10年くらい前から看板を設置するようになった」とのことだった)。

 グラウンドの外周に植えられている巨木は、双方の論争などどこ吹く風、小生のように加齢による醜い外貌を晒しながらも、しっかりと根を張り若葉を茂らせ、イコモスが形容したように「威風堂々」と屹立していた。写真で示した通りだ。主だった高木だけでも100本以上あるはずだ。

 4列配置の神宮外苑のシンボルでもあるいちょう並木も確認しようと向かう途中、小生と同年配と思われる杖を突いた男性と、男性を支えるように歩いていた女性に出会い、外苑の緑が伐採されることについてしばし話しあった。

 男性の方は、小生より1歳年上(75)の同じ多摩市民で「わたしは青山高校の出身。外苑の緑がどうなるか心配で見に来た。イチョウはかなり弱っているものもある」と話した。女性の方は奥さんで「ひどいわね。小池さん(都知事)は何を考えているのかしら」と首を傾げた。

 建国記念文庫エリアには工事用の囲いが設けられており、中に入ることはできなかった。計画ではエリア内の3,028本が伐採対象になっており、うち約9割は群生低木で、高木は23本とされている。

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野球場の「ご利用者以外立入禁止」スタンド看板

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御観兵榎(明治天皇がこのエノキの傍に居室を設けたとされる。現在は2代目とか)

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御観兵榎近くのドクダミの群生

◇        ◆     ◇

 イコモスの指摘と事業者の回答は膨大な量に及び、かなり専門的な文言もあるので、小生などの素人が読みこなすのは困難だが、以下、気掛かりなことを紹介する。

 事業者の説明資料18ページには、審議会委員の「一部のみ樹木を残した神宮外苑広場北側の保全エリアで『再生・復元』することは不可能です。本数としての残置量ではなく、質としての劣化を予測する必要があります。質を高める措置がない限り、一方向的な劣化であり、『保全エリア』とは言えません。そのための措置はどのように考えており、どの程度の効果を予測されているのでしょうか。」という問いに対して、回答では「改変する神宮外苑広場(建国記念文庫)の樹林地については、ラグビー場棟の建設によって樹林面積が縮小するため質の劣化は免れませんが、現況と同様に階層構造を有する樹林や(この「や」は明らかに誤字)を保全するとともに、改変によって開けた部分には林縁植物を移植し、林内の湿潤環境を保全して生態系を維持する計画としており、影響は限定的と考えます」となっている。(赤字は小生)

 委員は質の劣化を質しているのに対して、回答は「樹林面積が縮小するため質の劣化は免れません」と「質の劣化」を認めている。ここは「量の減少」ではないのか。また、「改変によって開けた部分には林縁植物を移植し、林内の湿潤環境を保全して生態系を維持する計画としており、影響は限定的」としているが、これは説明不足。「量は減少するが、質の劣化は限定的」とどうして言えないのか。

 また、41ページにはイコモスの「事業者がサイトで発表している緑の割合は、現状が約25%、開発後が約30%となっており、開発後、緑が増えるような錯覚をもたらす図面となっている。しかし、航空写真を判読し、精査を行い、草野球のエリアも追加すると、現況は32%、開発後は27%となる」「事業者がサイトで発表しているオープンスペースの割合は、現状が約21%、開発後が約44%となっており、開発後、オープンスペースが増えるような錯覚をもたらす図面となっている。しかし、軟式野球場は、災害時に極めて重要な役割を果たすオープンスペースであり、また、現在の秩父宮ラグビー場前の広場も貴重なオープンスペースである。このことから見直しを行った結果、現況は41%、開発後は43%となり、ほぼ変わらないことが明らかとなった」との指摘について、事業者は次のように回答している。

 「草野球のエリアも追加すると緑の割合が変化するとの指摘について、絵画館前は環境影響評価の範囲対象外ですが、現況の緑地における絵画館前の軟式野球場の緑については2018年の航空写真(google earth)を参照し、野球場の内野エリア等が土系舗装等であることを確認しております。『日本イコモス国内委員会』による算定では、土系舗装等の緑で被覆されていない部分も含んでいるため、現況の緑の割合に違いが生じておりますが、土系舗装等を含まない算定が正しいものと考えます」「オープンスペースの割合に絵画館前の軟式野球場や秩父宮ラグビー場前の広場を計上すべきとの指摘については、絵画館前は環境影響評価の範囲対象外ですが、公開空地とは東京都総合設計許可要綱においては、『計画建築物の敷地内の空地又は開放空間のうち、日常一般に公開される部分』とされており、当該記載を参考といたしております。オープンスペースの割合の算定では、道路を除く部分をその対象としているところですが、絵画館前の軟式野球場は、スポーツ施設として利用がされており、日常的に一般の人が広場等のオープンスペースとして利用する事ができないため、計上しておりません」

 みなさん、いかがか。これは、イコモスと事業者との「考え方や解釈の違い」ということになるのだろう。例えば軟式野球場。イコモスは「緑」「オーブスペース」として算出しており、前出の現存植生図でもグラウンドは土の部分以外は「芝生・草地」とされている(コブシ球場の内野は人工芝)。事業者はグラウンドは公開空地でもオープンスペースでもないとしてカウントしていない。

 これ以上立ち入らないが、地球温暖化防止や鳥や虫の視点からすれば算出手法やエリアを区切ることなどはどうでもいいことだ。緑の量と質が変わることで生態系にどのような影響を及ぼすのか、さらにまた開発後どうなるか注視する必要がありそうだ。

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いちょう並木

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「母」の枕詞のイチョウの「垂乳根」(通りがかりの若い女性グループに「皆さんはまだ若いから大丈夫でしょうし、わたしのかみさんは小さいので垂れていませんが、イチョウは成長するとこのようにおっぱいが垂れてくるんです」と声を掛けた。双方ギャハハハハ。垂乳根は雄株にもできるそうだ)

日比谷公園の樹木1,000本伐採は本当か 「日比谷公園整備計画」勉強会に参加して(2023/5/22)

「神宮外苑街づくりに都民の共感と参画を」都が再要請 事業者「真摯に受け止める」(2023/4/15)

神宮外苑に総力を注いだ「つば九郎ハウ巣」公開 オープンハウス(2022/10/10)

 

 

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