平屋注文住宅「IKI(イキ)」に新たな太陽光発電プラン ケイアイスター不動産
ケイアイスター不動産は7月7日、規格型平屋注文住宅「IKI(イキ)」に新たな太陽光発電プラン「IKIのいきいきソーラー」を搭載したプランを同日から開始したと発表した。
グループ会社IKIがシャープのグループ会社シャープエネルギーソリューションの設備を導入することで、平屋のメリットを生かし、電気代の高騰、自然災害リスクに対応するもの。
プランは、太陽光パネルのみを利用する初期費用・メンテナンス費用が0円、サービス料金(月額)ガス併用住宅:3,960円(税込)/オール電化住宅:4,950円(税込)のベーシックプラン「COCORO POWER ソーラープラン」(契約期間13年、期間終了後は太陽光発電システムを顧客に無償で譲渡)のほか、太陽光パネルと蓄電池がセットになったサブスクプラン「COCORO POWER ソーラー蓄電池プラン」、設備を購入し太陽光パネルのオーナーとして自家発電をスタートできるオーナープランを用意。
電気代はこの2年間で5割近く上昇しており、2023年6月からさらに値上げされている。政府の激変緩和措置が終了する秋以降は電気代が家計を圧迫するのは必至とみられている。平屋は広い屋根が確保でき、大容量の太陽光パネルの搭載が可能なメリットがある。
問題山積 要配慮者の居住支援 大家の安心、安否確認、支援法人などテーマ
厚生労働省、国土交通省、法務省による第1回「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(座長:大月敏雄・東京大学大学院工学系研究科教授)が7月3日行われた。
検討会は、①住宅確保要配慮者のニーズに対応した住宅を確保しやすくする方策②住宅確保要配慮者が円滑に入居でき、かつ適切な支援につなげるための方策③入居後の生活支援まで含めた、住宅確保要配慮者に対する居住支援機能のあり方④大家等が安心して貸せる環境整備のあり方-を検討するのが目的で、今後4度の会合を開き、今年秋ごろを目途に中間とりまとめ(案)として発表する予定だ。会合で各委員がそれぞれ4分間意見を述べた。以下、発言順に紹介する。
井上由起子氏(日本社会事業大学専門職大学院教授)大家が安心して貸せる市場、入居者の連絡先、安否確認、入居後の居住支援など福祉サービス、セーフティネット制度の仕切り直しが必要
常森裕介氏(東京経済大学現代法学部准教授)要配慮のニーズは多様化している。生活と住まいを一体として支援していくため、法が求めている目的に照らし合せ、居住支援法人や利用者の状況などの情報を開示する必要がある
中川雅之氏(日本大学経済学部教授)欠席
三浦研氏(京都大学大学院工学研究科教授)協議会、居住支援団体・法人の半分が赤字、ボランティアを強いられている。きちんと財源を確保し、緊急時には公営住宅を活用できるようにすべき
矢田尚子氏(日本大学法学部准教授)大家が安心して貸せる市場は確立されているのか。死後の残置処理など新たな制度も必要
奥田知志氏(全国居住支援法人協議会共同代表副会長)住宅のハコとソフトを一体化するため、各省庁が連携して横櫛を入れ、プレーヤーが赤字を出さなくても済むようなビジネスモデルの構築に期待したい
早野木の美氏(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会主任研究員)消費者センターでは2,200名のスタッフが対応しているが、消費者の相談ごとをどこに紹介していいか分からない。600か所ある相談窓口とうまく連携できないか
荻野政男氏(日本賃貸住宅管理協会常務理事)外国人の居住支援を中心に研究してきたが、最近は高齢者の居住支援にも力を入れている。エリアマネジメント手法の導入、家賃債務保証制度の確立も必要
岡田日出則氏(全国宅地建物取引業協会連合会理事)当協会は会員10万超を擁するが、要配慮者の情報が不足しており、共同生活になじめるかも不明。居住支援法人の赤字は限界
三好修氏(全国居住支援法人協議会共同代表副会長、全国賃貸住宅経営者協会連合会前会長)オーナーは高齢化しており、お金を掛けなくて貸したいという意向が強い。そのため、高齢者や外国人に貸すことに躊躇する。生活保護費プラスアルファ―の支援の仕組みが必要
出口賢道氏(全日本不動産協会常務理事)川崎市で死後1か月以上経過した高齢者の死亡事例があった。処理するのに50万円。どうしたらいいか、頭を抱えている
金井正人氏(全国社会福祉協議会常務理事)コロナ禍の特例貸付額1兆5,000億円のお金を配るのに精いっぱい。要配慮制度は大きな絵を描いて進めるべき。国の予算(国土交通省のセーフティネット住宅支援など約135億円、厚労省の生活困窮者自立支援など744億円)は適切か
稲葉保氏(全国更生保護法人連盟事務局長)刑務所出所者は大家に拒否されがちで、居住場所を確保するのに苦慮している
林星一氏(座間市福祉部参事兼福祉事務所長兼地域福祉課長)様々な給付金事業と生活支援事業の連携を図ることが必要
加藤高弘氏(名古屋市住宅都市局住宅部長)セーフティネット住宅制度の〝見える化〟が欠かせない。環境整備が必要
各氏の意見を受け、大月氏は「皆さんのご意見は広範囲にわたり、どれもが極めて重要で、ゆるがせにできない問題ばかり。しっかり精査したい」と述べた。
◇ ◆ ◇
2017年10月に住宅セーフティネット制度がスタートして約5年。記者は5年間を総括して制度設計は適切であったか、問題点、課題はどこにあるかなどが論じられものと期待していた。前段で各委員の意見を紹介したように、また、大月座長も「どれもが極めて重要」と語ったように問題は山積していることが分かった。
しかし、率直な感想を述べれば期待外れ。セーフティネット登録住宅は確実に増加しているものの、公表されているのはマクロデータのみで、詳細なデータは示されておらず、居住者の属性は杳としてしれない。
国土交通省の資料によれば、セーフティネット登録住宅の住戸の床面積は30㎡未満が7%あり、50㎡未満は58.2%、60㎡未満は実に92.2%に達している。居住人数は不明だが、国が定める最低居住水準、誘導居住水準を確保しているのかどうかを知りたい。
家賃については、5万円未満住宅が全国では19%、東京都では1%とあるのみだ。家賃と広さは切り離せない。せめて坪賃料くらい示してほしい。
建て方についても、戸建ては0.1%しかなく、ほとんどが共同住宅なのはなぜかもその理由を知りたい。
約86万戸の登録住宅の空室率は2.3%というのは信じられない数字だ。登録住宅の詳細なデータはないので想像するほかないのだが、市場競争力のない遠隔物件、老朽化した質の劣る木造アパートの比率は高いはずで、にもかかわらず空室率が低いのは、要配慮者のニーズがそれほど高いのか、それとも〝近傍同種家賃〟のお陰、家賃補助(生活保護世帯などは支給額から天引きされているはずだから、結局は大家保護)があるためか。憲法が保障する「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」とどう整合するのか。
このような本質に迫る論議を期待したいのだが、流れからしたら今後の会合でもこれらについて丁々発止の論戦が展開されそうもない。「大家の安心」「安否確認」「残置処理」などか中心になるのではないか。
最後に、摂南大学現代社会学部教授・平山洋介氏の著「『仮住まい』と戦後日本」(青土社、2020年刊)の一文を紹介する。
「生活困窮者の住む場所の確保に関し、政府および自治体は、民間セクターに依存し、公的資金の使用を抑えようとする。このため、住宅・施設の建物の状態を改善・維持するために、行政が用いる手法は、もっぱら規制になる。ここから生じるのは、規制を緩めると、住宅・施設が劣化し、規制を強めると、住宅・施設の維持に必要なコストが増え、困窮者の住む場所を保全できないという矛盾である。そして、行政それ自体が、生活困窮者の受け入れ先として、制度上の定義が明確とはいえない、民間セクターのローコストかつ劣悪な住宅・施設を利用してきた点に注意する必要がある」(330ページ)
セーフティネット住宅 登録件数が激増 制度の前進と受け止めていいのか(2023/6/29)
賃料は歩合制 全国から想定の2倍の応募 三菱地所 人形町に飲食横丁「ハシゴ楼」
「M’s CROSS(エムズクロス)人形町」
三菱地所は7月6日、「ハシゴ酒×楼閣」がコンセプトの飲食横丁「ハシゴ楼」を都市型商業施設「M’s CROSS(エムズクロス)人形町」(10階建て)内の1~5階にオープンする。3日、施設が報道陣に公開された。市場規模も4~5倍だろうから当然なのだろうが、内覧会にはマンション見学会の数倍の報道陣が駆けつけていた。
「M’s CROSS人形町」は、東京メトロ日比谷線「人形町」駅徒歩1分、中央区日本橋人形町1丁目の人形町交差点に面する10階建て敷地面積約281㎡、延床面積約1980㎡。設計はIAO竹田設計。施工は村中建設。
「ハシゴ楼」は「ハシゴ酒×楼閣」を掛け合わせたもので、「花鳥風月」をテーマにした内装で、1階は「序」(明けの空)、2階は「花」(華やか)、3階は「鳥」(賑やかさ)、4階は「風」(風流)、5階は「月」(月夜の心地よさ)。1フロア3~4店舗。1店舗当たり7坪が中心。総店舗数は18店舗。完全キャッシュレス、オープンカウンター。
コロナ禍を受けて従来の計画を変更、内装・内装造作のほとんどを同社が負担して飲食店の出店コスト低減、賃料は固定費を抑え、歩合制を採用しているのが特徴。
内覧会で人形町商店街協同組合理事長・柴川賢氏は「土地はシャッターが閉まっていたところ。街はオフィス、マンションが増えており、コロナを経て観光地としても賑わいを取り戻しつつある。益々の発展を期待している」と挨拶。
同社河賢男氏は「狭小敷地を対象にした都市型商業施設は2017年の第1号から3物件目。当初は1フロア1店舗、内装はテナント負担を計画していたが、コロナの影響を受けて見直し、当社が内装を負担、賃料も固定費を抑え、売り上げによって変動する歩合制に切り替えた。リーシングも公募にしたところ、テナントの初期費用、リスクが軽減できることから全国から反響があり、想定の2倍の応募があった。当社とテナントが一心同体の新しいスタイルの運営を行っていく。年間約15万人が集客目標」と語った。
柴川氏(左)と河氏
内観
「ハシゴ楼」外観
◇ ◆ ◇
この種の商業施設は、野村不動産の「GEMS」を見学・取材したことがあるが、1フロアに3~4店舗、1店舗7坪平均というタイプは初めてで、オープンカウンター、キャッシュレスというのも記者はやや抵抗感がある。タバコを吸えないのは難点だと思ったが、1~5階利用客でも6階の喫煙所が利用可能のようだ。
値段が高いのか安いのか、これは利用者の懐具合。5階のすし屋「すし其一」で記者の好きな「こはだ」を一貫(380円だったか)握ってもらって食べた。回転寿司のそれとは全然異なり、とてもおいしかった。人形町には目が飛び出るような高額のすし屋が多いが、ここは一人1万円以下で十分楽しめそうだ。
4階の「オイスタースタンド人形町」の生ガキは690円。生ガキは大好きで、以前は10個くらい食べていたが、もう食べられない。生ガキの値段は最近べらぼうに高くなっているようだ。
1階の「スタンドクレイジークラフトビア」では、コロナ禍で覚えた「せんべろ」メニュー(1,500円)を注文した。お金を払おうとしたら、ただで飲ませてくれた。ハーフのビールは500円。記者などはこれでは物足りず、パイント(800円)で2~3杯は飲むだろうから、3,000円くらいになりそうだ。この前、越谷のバルでビール2杯と生ガキ1個を食べたら2,500円(頼みもしないお通しが500円)だった。
4階の「風」(風流)
5階のすし屋「すし其一」
1階の「スタンドクレイジークラフトビア」
「スタンドクレイジークラフトビア」の「せんべろ」メニュー(つまみは2種選べる)
ポラスグループ 2023年3月期決算 増収減益/営業力の低下=取材力の退行を考える
ポラスグループは6月30日、2023年3月期の決算を発表。売上高310,322百万円(前期比10.8%増)、営業利益31,345百万円(同4.8%減)、経常利益31,984百万円(同4.3%減)、純利益8,357百万円(同2.8%減)の増収減益となった。売上高は7期連続過去最高を更新した。主力の中央住宅の売上高は95,521百万円(同0.5%増)、営業利益は9,170百万円(同9.2%減)、ポラテックの売上高は116,447百万円(同15.6%増)、営業利益は6,567百万円(同22.9%減)。
セグメント別では、戸建分譲住宅の売上戸数は過去2番目の2,792戸(同0.7%増)となったほか、分譲マンションは362戸(同27.6%減)、注文住宅は685戸(同7.5%増)、プレカット事業の外販売上棟数39,096棟となり過去最高を更新。不動産売買仲介事業の売上高3,517百万円(同5.0%増)、リフォーム事業の売上高10,502百万円(同12.0%増)、賃貸事業の手数料収入453百万円(同7.3%増)とも過去最高を更新した。
2024年3月期決算は売上高310,000百万円(前期比0.1%減)、経常利益27,000百万円(同15.6%減)、純利益7,000百万円(同16.2%減)を見込む。売上棟・戸数は戸建て分譲住宅が3,430戸(同22.9%増)、マンションが410戸(同13.3%増)、注文住宅が824戸(同20.3%増)、賃貸・集合住宅が179戸(同58.4%増)、合計戸数4,843戸(同225.%増)の計画。
決算発表会でグループ代表取締役・中内晃次郎氏は「先が読めない時代が続くが、エリア価値の向上を目指し、お客さまから満足していただける地域に根差した魅力的な街づくりと安全・安心・環境に配慮した暮らし方の提案を行っていく」と述べた。
また、中央住宅代表取締役社長・品川典久氏は「好調だったコロナ禍の市場から一変しており、営業力も低下している。今期の目標数字は楽ではないが達成する」と語った。
今後の市場について問われた中内代表は「これまでの好不調の波からすると、今回は2年半の好調の波があった。向こう1年くらいは不調の波が来るのではないか」と語り、品川社長は「インフレが進んでいるが、所得は伸びていない。粗利を下げて対応しているのが現状だ。見通しは何とも言えない」と話した。
◇ ◆ ◇
上場企業の2023年3月期決算からして、前述のような業績になるのはある程度予測していた。戸建て分譲市場は活況を呈した1~2年前と様変わりしており、完全に勢いは止まった。注文住宅も着工減が続いており、もっと落ち込むかと予想していた。同社は健闘しているのではないか。不動産売買仲介、リフォーム、賃貸事業が伸びているのは市場の反映か。
品川社長が語った「営業力の低下」について考えた。中内代表は「当社社員は技術系が多い。そこまでやるかと声が上がるほどこだわりを持って商品をつくっている」と話したように、商品企画力は優れている。例えば2700ミリの天井高、15段の階段ステップ、ソフトクローズ機能付き引き戸・開き戸、挽板仕上げの床などだ。同社商圏の他社物件と比較して、価格が500~1,000万円高くても売れており、顧客の紹介による契約が増えているということがそれを証明している。
にもかかわらず「営業力の低下」と品川社長が語ったのは、その商品企画意図が営業担当⇒消費者にきちんと伝えられていないという率直な思いの表明なのだろう。
記者も同感だ。コロナ禍でも予想外に売れたことから、各社はオンライン・バーチャルに切り替え、リアルでの紹介は激減している。それをよしとする消費者にも責任の一端があるし、さらにいえば、モノを観ないで、市場動向を伝えるメディアの取材力の退行にも問題がある。
メディアの取材力の退行を象徴する質問が決算発表会でもあった。ある記者が「(飯田グループなどのことか)大量生産・販売を志向しているところがあるが、御社はどうか」と質問した。中内氏は「当社は都市・街づくりを大切にしている。大量生産・販売をやるつもりはない。デザイン、品質を大事にしていく」と応えたのは当然だが、同社の物件を一つでも見ていたらこんな質問は絶対出ないはずだ。
変幻自在に住みこなす実験住宅「Make Full」完成 住協×大月敏雄氏×齋藤隆太郎氏
「Make Full」
住協ホールディングスは7月1日、「住みこなせる家/住みこなせる町」をテーマに、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏、東北工業大学講師・東京大学客員研究員でDOG一級建築士事務所代表取締役・齋藤隆太郎氏とコラボレーションして開発した実験住宅「Make Full」のメディア向け完成お披露目会を開催した。
「Make Full」は、家族構成、年齢、働き方に応じて柔軟に対応できる変幻実在の家を実現したもので、〝make full use of…(つかいこなす)〟の意が込められている。子育てを終えて居室が空いた場合などには自宅兼事務所、家庭文庫、レンタルスタジオ、音楽教室、アトリエ、ネイルサロン、レンタルスペース、自宅兼美容室、ホームシアターへの転用も可能だという。(1低層ではあるが50㎡以下であればこれらの用途利用も可能)
お披露目会で同社取締役・宇野健一氏は「大月先生とは10年前かご縁があり、コロナ禍などの環境変化にも対応でき、住みこなし、使いこなせる住宅をテーマに昨年1月から共同研究を行ってきた。その成果として今回の建物を完成させた」と述べた。
大月氏は「20年前から戸建て団地の研究を行ってきた。子育て世代が10年後、20年後、30年後も長期にわたって住みこなせ、街とつながっていける新しい戸建てが開発できないかと住協さんと共同研究してきた」と話した。
設計など実務を担当した齋藤氏は「建築家の独り歩きではなく、デザインなど意匠も含めて住協さんのルールに基づいて設計した。大月先生、住協さんとは階段のカラーリングや屋上、断熱性、シャッターは必要か不必要化など細部まで徹底して論議した」と語った。
物件は、西武池袋線「大泉学園」駅からバス11分バス停徒歩4分、都営大江戸線「光が丘」駅からバス10分バス停徒歩4分、練馬区大泉町1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全4戸。分譲対象は3戸(残り1戸は同社がモデルハウスとして当分利用する予定)で、土地面積は110.48~111.42㎡、建物面積は88.05~89.43㎡、価格は6,380万~6,580万円。建物は完成済み。
全4棟のうちB号棟(土地面積110.48㎡、建物面積92.2㎡)がモデルハウスに充てられており、1階がLDK、トイレ、洗面、浴室など、2階が主寝室(7帖)、居室(5.25帖)、トイレ、スタディルーム、収納など。このほか主な特徴は①屋内エレベーター(他の住戸は内階段方式)②外階段③2階にキッチンなど水回りを設置できる下地処理-など。
左から齋藤氏、大月氏、宇野氏
大月氏(左)と齋藤氏
〝構造梁で懸垂ができるのではないか〟と話したら齋藤氏はやってのけた(2階の主寝室、天蓋もいいかも)
◇ ◆ ◇
同社の分譲戸建てを見学するのは「グランシア三芳」(364区画)以来約20年ぶりだ。現地に着いたとき、その外観を見て面食らった。分譲戸建てだろうということはすぐわかったが、4棟ともエントランスに外階段がついていた。そして、4棟とも2階建てでああるのに搭屋のようなものが突き出ていた。二世帯住宅か賃貸併用住宅かと思った。
実際は上段に紹介したとおりだ。コンセプトが見事に具現化されている。建具・家具はドアノブを含めて白で統一、床のフローリングは挽板、外階段は金属音が響かないように下地にモルタルを使用し、色落ちしない仕上げにしているとか、搭屋は〝行燈〟をイメージして窓の形状を変えるなど細部にわたってこだわりがみられる。設備仕様面では、窓には敢えてシャッターを設けないなどコストの抑制も図っている。難点といえば、建ぺい率が50%であるからか、建物面積がやや狭く、窮屈な感じがすることだ。
この種の戸建て住宅は他にあるか考えた。小田急バスとブルースタジオの賃貸コラボ施設「hocco(ホッコ)」を思い出した。
さて、ここで同社と大月先生に提案だ。100年後も住み続けられる、住みこなせる「実験住宅」がコンセプトなのだから、これはもう大月先生が有償か無償かはともかく、1~3年はB号棟に住み、賃借人は社会人だろうが学生だろうが、何の制約も設けず応能家賃制にして賃借人と同居していただきたい。「セーフティネット住宅」の要件を満たすかどうかは分からないが、賃料を安くする代わりに執事、あるいは弟子(齋藤氏は教え子)、書生、家政婦として酷使し、たまには酒席を設け「住みこなし」について蘊蓄を垂れるというのはどうか。希望者が殺到するのではないか。そして、その顛末を論文として発表していただきたい。〝一石三鳥〟ではないか。
大月先生は7月3日に行われる国土交通省などの「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(第1回)の座長を務める。「Make Full」については触れないと思うが…。
現地の西側は神社に隣接
一次取得層に訴求「ちびまる子ちゃん」ZEH・商業施設隣接・大型 NTT都市開発他
「ウエリス八千代村上」
エヌ・ティ・ティ都市開発など5社が7月中旬に分譲開始するZEHマンション「ウエリス八千代村上」を見学した。大手町に直通約1時間、大型商業施設に隣接した、八千代市最大級の規模。イメージキャラに「ちびまる子ちゃん」を起用した注目物件だ。坪単価は190万円台に落ち着く模様で、販売動向が注目される。
物件は、東葉高速鉄道村上駅から徒歩3分、八千代市村上南1丁目の近隣商業地域に位置する敷地面積約23,292㎡、15階建て全967戸((Ⅰ工区:593戸、Ⅱ工区:374戸)。第1期(戸数未定)の専有面積は54.90~91.85㎡、予定価格は2,700万円台~6,400万円台(最多価格帯3,900万円台)、坪単価は190万円台になる模様。売主は同社(事業比率50%)のほか名鉄都市開発(同20%)、西日本鉄道(15%)、関電不動産開発(同10%)、東方地所(同5%)。建物竣工予定はⅠ工区が2025年2月上旬、Ⅱ工区が2027年3月下旬。駐車場は787台(市の付置義務)。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、駅前のイトーヨーカ堂、ユニクロなどが出店している45店舗からなる大型商業施設「Fululu GARDEN八千代」(5階建て延床面積 15,415坪)に隣接。敷地西側は国道16号線に面しているが、南側、東側はほとんどが道路を挟んで1低層のエリア。その幅は約29m。今回分譲対象の建物の1工区の建物はコの字型で、南向きが中心。住戸プランは67㎡、73㎡、70㎡の3プランで75%を占め、他は65㎡台の2LDKと84㎡~の4LDK。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented認定、直床、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、床暖房、Low-E複層ガラスなど(食洗機、浴室タオル掛けはなし)。共用施設はロビーラウンジ、カフェラウンジ、プライベートガーデン、ワークルーム、フィットネスルーム、キッズルーム、パーティルーム、ゲストルームなど。
年明けにホームページを開設し、これまでのエントリー数は約1,400件。5月13日にモデルルームを開設して以降の来場者は約300組。
同社住宅事業部事業推進部営業推進担当部長・松木拓史氏は「ZHEマンションは関西圏で実績がありますが、首都圏では当社初。資料請求に対するモデルルーム来場者の歩留まり率が高く、関心をもっていただけている。価格は近く正式に決めますが、坪200万円を切り、190万円台になんとか抑えたい」と語り、ちびまる子ちゃんの起用については「これだけの規模ですので、集客力をたかめるため、結婚したての女優さん数人も検討しましたが、メインターゲットのファミリー層への訴求力を考えて起用しました」と語った。
販売事務所エントランス(左からたまちゃん、まるちゃん、花輪くん)
販売事務所外観
◇ ◆ ◇
これまでも記事にしたように、記者はこの「ちびまる子ちゃん」マンションと、大和ハウス工業「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸、この他全体で約850戸)、ポラス「ルピアグランデみずほ台(トレジャータウンプロジェクト)」(304戸)・東京建物他「Brillia City ふじみ野」(708戸)の郊外大型3物件に注目している。施工は長谷工コーポレーションで、東京までの距離(時間)は約1時間と言うのが同じだからだ。3物件合わせると戸数は2,829戸にも達する。常識的に考えたら、全物件が完売するまで最低5年はかかりそうだが…。
単価は、大和ハウスは強気で坪単価は250万円くらいを予定しており、「みずほ台」は180万円台の半ばになるようだ。「ちびまる子ちゃん」は当初210万円くらいかと読んでいたが、それより安くなるのに納得した。ここで比較するのは控える(「昭島」と「みずほ台」の記事を読んでいただきたい)。
この物件もZEH-Mだが、パンフレットもホームページもそれほど大きく扱っていない。東葉高速で初のZEH-Mのはずだ。もっとアピールすべきだ。
◇ ◆ ◇
記者の関心事はもう一つあって、人気アニメの効果だ。最近はなくなったが、以前は人気タレントを起用したマンションがたくさん供給された。
記者が今でも鮮明に覚えているのはオードリー・ヘップバーンを起用した有楽土地「ティアラシティ」で、そのことを話したら、松木氏は関西の物件でわたせせいぞう氏のイラストを起用して成功した実績があると話した。そして、ジャン・レノを起用した東京建物「Brilliaタワー東京」が印象に残っているとも話した。
ただ、人気アニメとなると、記者は「アルプスの少女ハイジ」がリゾートマンションで起用されたのしか知らない。
実存の著名人は広告料も高く、不祥事を起こすリスクもあるから、人気アニメは効果が大きいのではないか。ちびまる子ちゃんの契約は1年間だそうだから、継続するのかそれとも変更するのか。
「Fululu GARDEN八千代」
建設現場(「Fululu GARDEN八千代」2階から写す)
イメージキャラに「ちびまる子ちゃん」 NTT都市など5社JV「八千代村上」(2023/1/14)
セーフティネット住宅 登録件数が激増 制度の前進と受け止めていいのか
国土交通省などは7月3日、「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(第1回)を開催する。視聴を申し込んだのだが、その前に「セーフティネット住宅」の登録件数を調べたら、この1年間で10万件くらい増加し、2023年3月末で全国の登録住宅戸数は848,846戸となっている。都道府県別では愛知県がトップで66,524戸。2位は東京都の5,1039戸、3位は埼玉県の50,748戸。
「セーフティネット住宅」については、摂南大学現代社会学部教授・平山洋介氏(当時、神戸大学 人間発達環境学研究科教授)は「世界」(岩波書店、2021年5月号)の「これが本当に住まいのセーフティネットなのか」と題する論文の中で「『住宅セーフティネットとは大東建託物件のこと』といっても、それほど過言ではない」とし、住宅確保要配慮者のみを対象とする専用住宅は登録住宅全体のわずか1.3%しかないと指摘。「住宅セーフティネットは-少なくとも現在の制度では-住宅困窮への対応に関し、ほとんど役に立ちそうにない」と述べている。
この指摘は「検討会」でも話題になるのか、登録件数の激増はセーフティネット住宅制度の前進と受け止めていいのか、近傍同種家賃は質を担保できるのか、愛知県が都道府県別でトップなのは大東建託の発祥の地であることと関連はあるのか、しっかり視聴したい。
週刊全国賃貸住宅新聞の「2022年 管理戸数ランキング1083社」(2022年8月15日発行号)では、大東建託グループの2022年3月末の居住用管理戸数は120万2,245戸となり、26年連続トップという。
首都圏 単身者タイプ(25㎡)の賃貸坪賃料は1万円以上 長谷工ライブネット調査(2019/10/26)
激増セーフティネット住宅 1年で政府目標の2.8倍 大東建託がけん引/必読の平山論文(2021/7/21)
要諦は「名前」を覚えること 「推しの木図鑑」と「5本の樹」計画に期待
野村不動産と埼玉大学の共同研究・開発の成果でもある「推しの木図鑑」に関連することだが、記者は積水ハウスの「5本の樹」計画を以前から注目している。2001年に始まったもので、〝3本は鳥のため、2本は蝶のために、地域の在来樹種を〟という思いを込め、地域の気候風土・鳥や蝶などと相性の良い在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりの提案だ。
この「5本の樹」計画は、同社と琉球大学理学部久保田研究室・シンクネイチャーが2021年に発表した「ネイチャー・ポジティブ方法論」に結実した。同社が20年間に植栽した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データを分析し、定量的な実効性評価を可能にしたもので、生物多様性の劣化が著しい三大都市圏の在来種は約10倍に、鳥の種類は約2倍に、蝶の種類は約5倍に増加したことが確認できたというものだ。そして、1977年の三大都市圏の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、今後日本で新築される物件の30%に「5本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇すると予測している。
同社に問い合わせたら「5本の樹」計画による植樹本数は2022年度(2023年1月31日現在)、累計1,900.3万本、植栽プレートは672,700枚(約67万枚)とのことだ。
植樹本数の多さは、わが国の街路樹本数が約670万本(高木)ということと比較してもいかに多いかが分かる。植栽プレートの植樹樹木に対する設置比率3.5%をどう評価するかだが、国内で唯一「植物名称の基準書」に準拠したラベルメーカー・アボック社のホームページには「植物名ラベル納品実績 全国500万枚」とあるように、積水ハウスの実績は少なくないといえるのではないか。
野村不動産・埼玉大学の「推しの木図鑑」も積水ハウスの「5本の樹」計画も〝全国区〟になることを期待したい。その要諦・肝は涌井史郎氏が言った「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩、歩くごとに人生3倍楽しくなる」-つまり名前を覚えることにあるような気がしてならない。
読みだすと止まらない あらゆる関係者にお勧め 野村不&埼大「推しの木図鑑」(2023/6/24)
ネガティブにならざるをえない 無残な街路樹 ネイチャー・ポジティブを考える(2021/11/27)
田舎の原風景を見た 積水ハウス「新・里山」(2010/4/8)
読みだすと止まらない あらゆる関係者にお勧め 野村不&埼大「推しの木図鑑」
授業風景(流山市立北小学校6年生)
野村不動産と埼玉大学が、持続可能な街づくりの取り組みとして共同開発した、小学生向け授業プログラムとそれをもとに行った授業の成果を1冊の本にまとめた「推しの木図鑑」のデータを同社から送ってもらって読んだ。子どもの想像力、発想力の豊かさが溢れており、読みだしたら止まらない。下手な小説よりずっと面白い。お父さんやお母さん、地域の人たちだけでなく、文科省、都市公園や道路などの行政担当者も読んでいただきたい。
授業プログラムは、同大学教育学部生活創造講座技術分野・浅田茂裕教授の指導のもと、同大学の教育学部1年生が開発したもので、流山市立北小学校6年生3クラス122名を対象にプログラムに基づき授業を実施した。同社は2022年7月から約半年間支援してきた。
「推しの木図鑑」は、A4判150ページにわたるもので、それぞれ生徒の「推しの木」を1ページに収め、写真付きの「推しの木Profile」として紹介している。
「推しの木Profile」には「名称」のほか「レア度」、「発見者」、「出現場所」、「年齢(推定)」、「性格(推定)」、「5角形の特徴レーダーチャート(評価項目は自由記載)」、「3つの推しポイント」、「10年後への期待、「推しの木からのひと言」が手書き文字で掲載されている。いくつかを紹介する。( )は記者の感想。
まず、名称「弱そうで強い、ウッディくん」。発見者は「バズ・ライトイヤー」、出現場所は「庭」、年齢は19才、性格は「おだやか」。3つの推しポイントは「①弱そうで強いところ②葉がチクチクする③色がきれい」、10年後への期待は「この木1本で地球を支えられるくらい酸素を出してほしい。身長8m、体重660㎏」、推しの木のひと言は「大きくなっても切らないでね。木登りOK。早くお酒を飲みたい」だ。
(写真を見ても木の名前は分からないが、庭木としてよく植えられる木だ。年齢は19才とあるが、発見者は生まれていないはずなので、築後19年が経過しているのかもしれない。推しの木は「早く酒を飲みたい」と言っているが、ひょっとしたら、酒を飲みたいのは木ではなく発見者自身ではないか。記者は小学生のころから酒を飲んでいた。お父さん、飲ませてやって)
発見者「すぎやなんぼー」の名称「イケメンな、伝説の神樹ザ broly」。出現場所は「公園」、性格は「残虐無慈悲」。推しの木のひと言は「キハハハハハ…。お前たちが戦う意思を見せなければ、オレはこの星を破壊し尽くすだけだ!」と警告を発している。(日和見の記者の胸にぐさりと突き刺さった)
発見者「自身」の名称「木木樹木木」。出現場所は「この広い世界の中」、年齢は60才前後、性格は「コミュカおばけ」。3つのポイントは「①夏にさくきれいな花②子犬のようにもふもふ③あふれる包容力」とある。10年後への期待は「死ぬときも病めるときもずっと、ずーっと、愛し続けてね☆」、推しの木からのひと言は「オレの愛は重いぜ★」だ。
(6年生と言えば恋が芽生えるころだ。「自身」は女の子か、推しの木はお父さんか、それとも未来の夫か。「愛は重いぜ」が肺腑をえぐる)
発見者「ミカン」の名称「家族のように並ぶポン次郎」。年齢は17才、性格は「母性がある」。推しの木のひと言は「来年大学受験(木のみ)なのでがんばります。ちなみに、家族の長男は停太朗。バス停のところに立っています」とある。
(「ポン」は、記者のような愚か者の意味を持つ〝アンポンタン〟を思い出させ、「ミカン」は「未完」を連想させる。木に「母性」を見いだす感受性が鋭い。「停太朗」と「バス停」も何かを暗示させる)
名称「長樹」(長寿にかけているのだろう)の推しポイントは「①いつも葉がある②デカイ③いつでも見れる」とあり、10年後への期待では「記おく回ふく薬が発明されるかも? 」とあり、推しの木からのひと言は「長生きの秘決(訣)? 『それは動かないことじゃ』」。
(写真から判断してクスノキであるのは間違いない。記者の大好きな木で、この木を見ると条件反射のように葉っぱをちぎって臭いをかぐ。鎮静剤だ)
発見者「うしろの人」の名称「教科書」(理科)。出現場所は「家or学校」、年齢は2才、性格は「きらわれ者」。レーダーチャートは「きらわれ度」と「先生による好まれ度」が最大の5点、「厚さ」は4点、「好かれ度」と「使用ひんど」は最低の1~2点。3つのポイントは「①テストのはん囲がわかる②ノートをとらなくても分かる③ふく習ができる」、10年後への期待は「多分もう新しくなっている。捨てる」、推しの木からのひと言は「もっと使って」だ。
(教育関係者が読んだら驚愕するのではないか。痛烈な皮肉が込められている。花の命と同様、教科書は2年で捨てられ、好かれるのは先生だけか…先生もかわいそうではないか)
もっと書きたいのだが、きりがないのでこのあたりでやめる。
巻末で野村不動産は、「街に新しい環境をつくる仕事をしています。私たちがつくる環境が、多くの人から大切に慕われそれぞれの『私の風景』になっていくためにどんなことをすればいいかを考え続けています。
「今回の授業では、街の未来を担う小学生の目に映る、街の風景を切り取って集めてきてもいました。
推しの木を通して、小学生だからみえる街の姿、小学生だから聞こえる街の声、それぞれが大切にしている『私の街の風景』を、教えてもらうことができました」とし、浅田氏は「今度、推しの木の近くを通り過ぎるときは、ちょっと声をかけてみてください。もっと木や森が、そして街が、身近に、そして誇れるものに感じられるかもしれません」と結んでいる。
授業対象が埼玉県でなく千葉県の流山市の小学校というのも興味深い。記者は、井崎義治氏が市長に当選したとき、井崎氏がデベロッパーに興味を示されたので、街づくりに熱心なデベロッパーとして野村不動産を紹介したことがある。
その流山市にある江戸川大学の講師として環境倫理学を教えていた法政大学教授・吉永明弘氏はその著「歳の環境倫理」(勁草書房、2014年刊)で、学生に大学周辺を歩いてもらってアメニティとディスアメニティを地図上に書き込んでもらい、アメニティマップを作製することが、地域の歴史や文化、地形や生態系の情報を得るのに有効であると著している。
右が「推しの木図鑑」1ページ分
◇ ◆ ◇
「推しの木Profile」を読んでいて、気になったことが一つある。全122の「推しの木」には、具体的な木の名前はゆず、夏みかんなど数えるほどしかないことだ。写真も添付されているので、専門家ならすぐ木の名前を当てられるだろうが、記者はほとんど分からなかった。
例えば、発見者「サンタさん」のコピーライターが付けそうな、デベロッパー顔負けの名称「ザ・ツリー・マンションズ」。レア度は★三つのうち1つ、出現場所は「マンションの裏の公園」、年齢は43(?)才、性格は「少し気が荒れている」、3つの推しポイントは「①マンションの人は有名でだれもが知っている②木のぼりで遊べる③なにげなし木がきれい」、10年後への期待は「マンションの公園にもっとふえてくれ!」、推しの木のひと言は「やぁ、こんにちは!ぼくは、ふつうの木」だ。
(写真は夜間に撮ったようで、名称、発見者などからモミノキかと思ったが、樹形からしてそうではなく、ケヤキ類かと思ったが、ケヤキは登れないし、真冬でも葉っぱが茂っていることから常緑樹のカシ類か)
ことほど左様に木の名前は杳としてしれないものばかりだ。
そこで、なぜなのかを考えた。小学生の理科の教科書には動植物はたくさん出てくるが、樹木に関しては光合成の仕組みや年輪、板目・正目などの材の特徴は掲載されていても、木の名前などは習った覚えがない。このことと関連があるのではないかと。
そこで、学習指導要領を読んだ。理科については、「人の生活が環境に及ぼす影響を少なくする工夫や、環境から人の生活へ及ぼす影響を少なくする工夫、よりよい関係をつくりだす工夫など、人と環境との関わり方の工夫について考えるようにする」(この日本語はおかしい。人と環境は双方が影響を及ぼしあうものだ)などとあるが、森林の果たす役割などは一言も触れられていない。
文科省にも問い合わせた。けんもほろろ。教科書に盛り込まなければならない木の名前などはなく、教科書を発行している出版社に聞いてほしいということだった。
仕方がない。小学生向け理科の教科書を発行している大日本図書と一般社団信州教育出版社に問い合わせた。大日本図書は3年生:ウルシ、ツツジ、4年生:サクラ、ハナミズキ、5年生:サザンカ、6年生:掲載なし。信州教育出版社は4年生の教科書にアカマツ、イチョウ、カエデ、クヌギ、クス、サクラ、サンショウ、シラカシ、ツタ、ヌルデなどを掲載しているとのことだった。
これで、「推しの木Profile」に具体的な樹木の名前が出てこない理由がわかった。学校では教えていないのだ。理科などの理数系の教科書を発行しているのは両社を含めて6社で、母語の「国語」や「社会」は3社のみということも分かった。
記者小学生のころ、「松風騒ぐ丘の上…」(1954年、三橋美智也「古城」)、「一本杉の石の地蔵さん…」(1955年、春日八郎「別れの一本杉」)、「柿の木坂は駅まで三里…」(1957年、青木光一「柿の木坂の家」)などを歌って木と親しくなったものだ。
図書館も同じだ。ある区立図書館の本棚に並んでいる子ども向け図書を調べた。文学、伝記、昔話、地球、科学、恐竜、魚、鳥、昆虫、環境、料理、乗り物、スポーツ、哲学、宗教…などは豊富で、SDGsやユニバーサルデザイン、プログラマーに関する書籍もあるのに、森林・林業は一番目立たない、探すのが容易でない最下段に収められていた。冊数も10冊くらいしかなかった。
そのうち記者が名著だと思ったのは、七尾純著「森といのち 生命をはぐくむ森」(あかね書房 2004年刊)だ。字を小さくし、ルビを振らず情報量を増やしたら大人向けにもなる。
物の序で。小学校で学ぶ漢字を調べた。文科省の学年別漢字配当表の漢字は1,026字あり、うち木篇漢字は34字だ。学年別(木篇)に見ると1年生80字(木、本、林、森、校、村)、2年生160字(ゼロ)、3年生200字(横、植、根、橋、相、柱、板、様)、4年生202字(機、械、極、材、札、松、標、栃)、5年生193字(桜、格、検、構、枝)、6年生191字(株、机、権、樹、棒、枚、模)だ。
この良し悪しはともかく、どうして「栃」(トチノキ)が「松」とおなじ4年生なのか。これには大した理由はない。都道府県名の漢字を小学4年生までに教えることにしたためで、「栃木県」の「栃」が木篇であるからに過ぎない。国樹として親しまれている「桜」はなぜ5年生なのか、学名が「Cryptomeria japonica」=隠された日本の財産を意味する「杉」や「桧」「梅」「桃」「柿」「桐」はどうして対象外なのか、理由は明確ではない。みんなご都合主義によるものだ。ここに人文系と理数系の分断・断絶をみた。
◇ ◆ ◇
以下は、同社を通じてお願いした今回の取り組みについてのコメント。
■同社担当:野村不動産 エリアマネジメント部横川大悟氏 街づくりに携わる事業者として、ただマンションを作って終わりということではなく、シビックプライドの醸成や街の魅力向上が大事だと考え、今回の授業実施に至りました。
今回の授業を通じて、子どもたちには、木への関心や街への関心を持ってもらい、この機会をきっかけに自分の住む町にもっと誇りをもって貰えればと考えています。
子どもたちが、色々な場所で自分の住む街について話す機会が増えることで、住民や来街者を巻き込んで街への愛着を育んでいってもらえるよう願っております。
■授業を実施した先生(大学生) 子どもたちがとても真剣に取り組んでくれて、沢山の時間をかけて準備をしてきて良かったと思いました。
近くの友達と色々話し合って楽しそうにプロフィールを完成させている生徒の皆さんの姿がとても印象的でした。
私たちに積極的に話しかけてくれたり、質問してくれたりする生徒さんもいて嬉しかったです。
今回の授業が、街の木に興味をもつきっかけになればと思います。
実際に授業をするまで、真剣に取り組んでくれるだろうか? と心配だったのですが、全員が一生懸命推しのプロフィールを書いてくれてとても嬉しくなりました。
完成したプロフィールを友達同士で見たり、どこにあるの? と話している姿も見かけたりして、この時間を楽しんでいるのだなと感じ、実施できてよかったです。
それぞれのシートには個性や見どころが詰まっていると思います。
■小学校の先生のコメント 推しの木探し、そして、プロフィール作りを通して、子ども達が楽しそうに取り組んでいる姿を見ることができ、とても嬉しくなりました。
また、それだけでなく推しを選んできただけに、「自分の選んだ木や木材が1番」と、自信満々に言う児童の様子から、身近なものに愛情をもてるというのは、とても素敵なことだと感じました。
この経験を通して、木や木材だけでなく、地域にある様々なものにも「愛」をもち、愛情溢れる地域を作っていってほしいと思いました。
今回の授業をきっかけに改めて木材の良さに気付き木材の良さを生かした卒業制作を行うことができました。
子どもたちが今後も木材に触れ親しむとともに、保護者の方にもこの取組みを直で見ていただけると今後さらに内容が発展していくと思いました。
「推しの木図鑑」巻末
野村不&埼玉大学 持続可能な街づくりへ 小学生向け授業プログラム開発・授業(2023/6/1)
顧客の“感性”を住まいに映し出す新デザイン「life knit design」始動 積水ハウス
「6つの感性フィールド」
積水ハウスは6月20日、顧客の“感性”を住まいに映し出す新デザイン提案システム「life knit design」を「インテリア提案」「エクステリア提案」として6月30日から全国で始動すると発表した。
「インテリア提案」では、従来の流行に合わせたテイスト提案を脱却、空間における色や素材、カタチなどから受ける印象を言語化し導き出した独自の「6つの感性フィールド」(「静」「優」「凛」「暖」「艶」「奏」)へ変革。顧客と“感性”を共有し、的確な提案へと導く「インテリアコミュニケーションツール」を新たに開発、“感性”に響く住まいがデザインされる場として「life knit atelier」を全国84か所でオープンする。
「エクステリア提案」では、従来の「和」「洋」「モダン」の3つのテイスト提案から、「日本カラーデザイン研究所と共同研究で日本及び海外の約150 シーンの美しいまちなみを構成する色や四季の植栽の色を分析。日本の景観や樹木と調和する色を特定し、外壁色に落とし込み、また、美しい景観に共通してみられる色の明るさの法則〝明度グラデーション〟に着目」し、一棟の建物としても、建ち並ぶ街並みとしても上品で優しいグラデーションを実現する提案に変革する。
「life knit design」を体現したモデルハウス「HUE(ヒュー)」を「駒沢シャーウッド展示場 HUE」でオープンする。
◇ ◆ ◇
上段は同社のニュース・リリース(A4判4ページ)のコピペだ。記者もそうだが、読者のみなさんもなんのことやらさっぱり分からないはずだ。
そもそも「感性」なるものは、人間が持って生まれた生得的な五感のほか、それぞれの地域の歴史・文化などによって体得される後天的な側面を持つ。例えば「美しい」。リリースには8回この言葉が出てくる。記者は草花のドクダミが大好きで美しいと思うのだが、これを美しいと感じる人は圧倒的少数派のはずだ。美しいとされるシンメトリーの建築物は、時には「悪の権化」に見える。いったい何が美しくて醜いか。これは永遠の課題・テーマだ。
モデルハウス見学を同社にお願いし、レポートする。同社のグローバルビジョン「『わが家』を世界一幸せな場所にする」はどのような形で具現化されているのか興味津々だ。