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松本氏

既報の通り、千葉大学名誉教授・小林秀樹氏(享年68歳)が昨年(令和4年)1011日、癌のため亡くなったが、小林氏の後輩で旭化成ホームズくらしノベーション研究所・二世帯住宅研究所所長・松本吉彦氏(64)に小林氏のエピソードをお願いし、快諾していただいた。以下に全文を紹介します。

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 小林先生とは私が卒論を書いている際に東京大学工学部建築学科の建築計画研究室(鈴木成文・高橋鷹志研)博士課程でご一緒したのが出会いとなります。当時は集合住宅の住まい方調査を基にした居住者の行動や心理の考察など、建築学に心理学や社会学、動物の生態学などの本を参照しながら研究室内では研究を進めていたと思います。今回の追悼する会のコメントで小林先生の研究の特徴としてこうした分野を導入した研究が高く評価されていたのですが、これは当時の研究室内全体のトレンドでした。私が未だに仕事で居住者調査を基に研究しているのはこの時の原体験が効いていると思います。

 その頃の小林先生の研究の多くは1992年刊行の名著「集住のなわばり学」に記されています。集合住宅の共有領域に住人の「日常的支配」が及び、それが防犯の観点からオスカー・ニューマンの「まもりやすい住空間」などで指摘された「自然監視性」を生んでいること(P81-83)、LDKの窓は共有領域に面しているほうが日常的な関わりを生じやすいこと(P82)、コミュニティ形成には10戸前後のクラスターに分割することが有効であること(P153)など、実際の設計に役立つノウハウにまとめられています。

 「集住のなわばり学」は、中古価格が1万円前後の高値となっていることについて、生前小林先生ご本人が、もっとたくさん持っておけばもうかったのに、みたいなことをおっしゃっていました。

 ナワバリ学を家族関係に発展させたものが2013年刊行の「居場所としての住まい」です。住戸内の室配置の構成原理を家族関係から読み解き、二世帯住宅のような親子同居、シェアハウスのような他人同士の集住にも応用した点がユニークで、nLDK型など実際の間取りと家族関係を対照しながら考察しています。この著作を題材として、2014/1/21に第12回のくらしノベーションフォーラム「ナワバリ学で家族と住まいを読み解く」を開催し講演していただきました。

 小林先生の業績では、資産や投資としての建築、といった経済的、実務的な取り組みを扱うことに特徴があるかと思います。学術研究に留まらず、実際に社会で使われるノウハウの開発では、共同研究で大変お世話になりました。二世帯住宅の居住者インタビューや空き世帯の活用を模索した二世帯住宅シェアハウスプロジェクトhttps://www.kobayashi-lab.net/project/2010/nisetai.pdf (最終講義記念冊子プロジェクトNo17)や子育て共感賃貸住宅「BORIKI」の居住者調査(同No19)など、いくつかの共同研究をさせていただきました。

 学生時代より長きにわたってお世話になってきた先輩を失うことが残念でならないのと、近年登山にご夫婦ではまっておられたので百名山全山登頂達成者である私としては、一緒に登山する機会がなかったことが悔やまれるところです。

千葉大学名誉教授「小林秀樹先生を追悼する会」に約210名(2023/8/5

 

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神宮外苑イチョウ並木(左がロイヤルガーデンカフェ青山)

 「神宮外苑地区まちづくり」の事業者・三井不動産ら4者は8月7日、プロジェクトサイトに設けた質問受付ページに寄せられた質問に対する回答を掲載したと発表した。

 質問は7月17日から7月26日までに受け付けた174件で、質問部分を抜粋し、質問ごとにまとめ全て回答したという。多かった質問は「スポーツ施設における建替えの必然性」「風・日照・騒音など周辺環境への影響」「各施設の施設計画」「高層ビルを建てる目的」「樹木本数やみどりの割合の算定方法」など。

 今後も、「質問受付ページや住民説明会で頂いた意見をしっかりと受け止め、より良い計画となるよう検討を進めていく」としている。

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 全てではないが、主だった質問と回答を読んだ。再開発は都の公園街づくり制度を適用して行うものだが、適用要件である「未供用区域面積が2.0ha以上」にどうして秩父宮ラグビー場が該当するのか、その理由が分かった。この点について、日本イコモスは疑義を呈しているが、制度の手続き上の瑕疵はないのではないか。その根拠は以下の通り。

 東京都は令和3年7月、公園街づくり制度を適用する旨を事業者に通知した。平成25年12月に東京都が創設した同制度は、センター・コア・エリア(首都高速道路中央環状線内側の地域)内にある長期未供用区域を含む都市計画公園・緑地エリアを対象に、民間の力により街づくりと公園緑地の整備を両立させるのが狙いだ。

 適用要件としては、都市計画決定からおおむね50年以上経過し、未供用区域面積が2.0ha以上ある区域で、「再開発等促進区を定める地区計画」を定め、都市計画公園を削除する面積の60%以上、かつ1.0ha以上を緑地として確保することを求めている。 

 どうして現在も様々な大会が行われている、ラグビーの聖地と言われる秩父宮ラグビー場が「未供用」なのか不思議だが、都によると、明治神宮外苑が完成した大正15年10月当時ラグビー場はなく(完成は昭和22年)、昭和32年に都市計画明治公園として指定されたときの記録は辿れないが、記録が残っている昭和50年当時は「未供用」扱いにされており、昨年4月に削除されるまで「未供用」のままだったという。再開発計画を同制度に適合させるために「未供用」としたものではないと話した。

 つまり、実態として広く一般に開放されていても「開園の告示」がされなかった秩父宮ラグビー場が再開発を可能にした施設であるともいえる。この点について、ラグビー場の所有者で事業者でもある日本スポーツ振興センターに問い合わせたら、「『未供用』の告示を行ったのは東京都だから、この問題については答えられない。『広く一般に開放していた』かという点については、敷地内は公開空地ではない。管理上、日常的に不特定多数の方に開放しているわけではない。開催日に敷地内の立ち入りを可能にしている」(広報)との回答があった。

 都市計画公園とは都市計画決定された都市施設である公園・緑地のことで、「供用」とは、都市公園の開園が都市公園法に基づいて告示され、広く一般に開放されていることをいい、「未供用」は供用以外の状態をいう。 

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以下、軟式野球場(5月撮影)

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 今回のQ&Aには本質的な問題に触れる応答がある。

 質問には、「絵画館前の軟式野球場、バッティングセンター、フットサルコートがなくなりますが、何か代替策はお考えでしょうか」「秩父宮ラグビー場脇のテニスコート、軟式野球場、第2野球場などリーズナブルに都民が利用できる施設が減る設計ですが、その代替施設はあるのですか。公園は多くの人が利用できるようにするのが本来の目的だと思います」「建設予定の芝生地域で野球をしたり、テニスをしたりゴルフをしたりできるのですか」などがある。

 これに対して、事業者は「軟式野球場のある絵画館前エリアは、現状、野球をする人しか利用できない施設ですが、創建時の『開かれた外苑』という考え方を継承していくため、誰でも入ることができる広場の整備を計画しております。ゴルフ練習場、軟式球場、打撃練習場の3施設は事業を終了いたしますが、新ラグビー場、絵画館前の広場、中央広場、複合棟Bの低層部に計画している室内球技場を合わせた四つの新たな空間では、スポーツの種類を限定することなく、その時々に応じ、一般の方々の様々なご利用が可能になる計画です。…なお、神宮外苑の街づくりは、民間事業者が所有する土地において、多くの方が利用できる広場などを整備するものであり、国や自治体等が管理する公園を整備するものではありません」と答えている。

 回答は、「広場」「オープンスペース」などは事業者が所有・管理するものであることをはっきり示している。プロジェクトのホームページには、整備する区域内に「公園」設けるとは一言も触れていない。「絵画館前広場」「オープンスペース」「中央広場」などは「都市公園」ではないということだ。

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樹木を避けて整備 都の日比谷公園整備PJ/「生き物を殺していいの」 二の句継げず(2023/8/7)

歴史・文化の破壊に疑義を唱える声に耳を傾けるべき 神宮外苑再開発 地元説明会(2023/7/21)

威風堂々〝聖地〟神宮外苑野球場の巨木 事業者VS.イコモス 鳥や虫の視点で考えて(2023/5/23)

 

 

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「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替事業」

積水ハウス、小田急不動産、長谷工コーポレーションの3社は87日、参加組合員として事業参画している「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替組合」の認可を狛江市から受けたと発表した。2024年度に工事着工し、全体竣工は2028年度に全体竣工する予定。

事業は、マンション建替え等の円滑化に関する法律に基づき、1968年竣工の築55年、522戸の住宅団地を1,217戸(分譲戸数未定)の大規模マンションに建て替えるもの。2007年に「多摩川住宅街づくり協議会」の発足以降2014年に「建替え推進決議」を、202212月には区分所有法に基づく「団地一括建替え決議」を可決した。事業コンサルタントはユーディ都市建築研究所。

計画では、約5ha敷地のうち約1haを公園や遊歩道とし、多摩川沿いの自然豊かな立地に調和する緑豊かなまちづくりに取り組む。東~西・南~北と貫通する歩行者空間に沿ってカフェラウンジやキッズルーム、テレワークスペースなどの多様な共用施設を配置する。長期優良周宅の認定を取得する予定。

多摩川住宅は敷地約334,000㎡、賃貸住宅1,826戸、分譲住宅2,048戸、計3,874 戸の大規模団地。団地内の建て替えとしては、昨年8月、今回の事業地に隣接する住友不動産と長谷工コーポレーションが事業参画している「多摩川住宅ホ号棟マンション建替事業」が着工され、「シティテラス多摩川」905(非分譲住戸245戸含む)として今年10月に第1期が分譲される予定。このほか、調布市内に位置する「イ」・「ロ」・「ハ」号棟が地区計画によりそれぞれ住宅再生地区に指定されているが、全体で約820戸の「イ」号棟は組合員以外には情報を公開しておらず、全体で約1,400戸の東京都供給公社の賃貸住宅「ロ」・「ハ」号棟は具体的な建て替え案は上がっていない。

長期優良、ZEHCASBEEレベル高いはず 住友不&長谷工「多摩川住宅」着工(2022/9/2

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第二花壇

 東京都が8月4日(金)~6日(日)開催した「バリアフリー日比谷公園プロジェクト」に関するオープンハウス会場を見学した。目的は、同プロジェクトで謳っている「整備工事は樹木を避けて実施する」ことが事実かどうかを確認するためだった。都の建設局公園緑地部職員は「このような文言を盛り込んだのは今回が初めて。緑に関する関心が高まっていることを考慮した」と話した。

 同プロジェクトは、令和3年(2021年)7月に策定した「都立日比谷公園再生整備計画」に基づく実施計画としてまとめたもので、「日比谷公園を年齢、性別、国籍、障害の有無などに関わらず、誰もが利用しやすく、楽しめる公園に進化させ、将来の都民へ引き継いでいく必要がある」とし、基本的な考えとして①歴史的文化的な価値を継承しつつ、誰もがより楽しめるWell-beingとなる公園に進化させる②公園の緑を守っていく③アクセシビリティを向上させ、より多くの方が公園を訪れることを目指す-としている。

 樹木の取り扱いについては、①樹木を避けて整備を実施する②移植が必要となる場合には樹木診断を行い、公園内で移植する-としている。

 オープンハウスは、同プロジェクトを都民に告知するとともに、アンケートなどで意見を聞くために実施したもの。3日間で約120名が訪れた模様。

 整備工事は、令和5年9月の「第二花壇周辺」を皮切りに、開園130周年を迎える令和15年(2033年)までに公園を9つのエリアにわけ段階的に行われる。

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オープンハウス会場

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第二花壇周辺で行われていたイベント

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 以下は、添付した記事とあわせて読んでいただきたい。都が「樹木を避けて整備を実施する」と謳っているのに満足したのだが、会場の近くで整備計画に反対する人たちに話を聞いて、頭をどやされたような気がした。

 神宮外苑の再開発に反対するビラ配りの活動をしているという「ただひとりの母親としてこの国が心配」の女性に「神宮外苑の四列イチョウ並木を残す? これは本質から目をそらす罠。地下40mまで杭を打つんですよ。イチョウの根が傷つけられないわけがない。伊藤忠のビルは190mですよ。その隣は180m。日陰になっちゃう。神宮球場は古い? 同じくらい古い甲子園球場は改修工事でリニューアルに成功しました。ビル風の影響も受けます。軟式野球聖地もなくなっちゃう。日比谷公園の樹木の移植? 移植すれば樹木に負担がかかるんです。土中にはセミが生息しているんです。ミミズもいる。ものとしか見ていないからそんなことができるのです。生きものを殺していいんですか。そもそも移植にどれだけの費用がかかるか。知らないでしょ。樹種にもよるでしょうが、巨木となると1本1億円もすると専門家から聞きました。都民の税金で賄うんですよ」とやり込められた。

 この言葉に記者は二の句が継げなかった。仰る通りだ。自分で「鳥や虫の視点で考えて」と記事にしたばかりだ。数年から10年、土中にひっそりと暮らすセミを殺してもいいとは思わない。イチョウは劣悪な環境でも育つと思うが…。神宮球場はZOZOマリンの比でない風の影響を受けるかもしれない。

 さらに、別の方から追い打ちをかけられた。「神宮外苑も日比谷公園も主導しているのは三井不動産。あなた、魂まで売っていいんですか」と。

 記者は、基本的には是々非々で取材しているつもりだが、立場・見解が異なるとそのような見方もできるかもしれない。なさけない爺と映るのだろう。「樹木を伐採せず、避けて整備する」に膨らんだ胸は〝ハチの一刺し、二刺し〟でいっぺんに萎んだ。

 すごすごとその場を離れ、目的の一つだった松本楼でクラフトビールを飲み、ビーフカレーを食べ、第二花壇周辺を観察して歩いた。花壇周辺では屋台のイベントも行われており、また一杯。それにしてもキッチンカーのビールは高い。1杯700円とは。多摩センターは500円くらいだ。

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松本楼

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心字池

威風堂々〝聖地〟神宮外苑野球場の巨木 事業者VS.イコモス 鳥や虫の視点で考えて(2023/5/23)

日比谷公園の樹木1,000本伐採は本当か 「日比谷公園整備計画」勉強会に参加して(2023/5/22)

 

 

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「小林秀樹先生を追悼する会」(建築会館ホールで)

 昨年(令和4年)10月11日、癌のため亡くなった千葉大学名誉教授・小林秀樹氏(享年68歳)の「小林秀樹先生を追悼する会」が8月5日、港区芝の建築会館ホールで行われた。会場に用意された約210席は満席となり、関係者らが最後のお別れを行った。

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 記者は小林先生が亡くなったのを昨日(8月4日)知った。千葉大学のある先生を検索しようとしたとき、小林先生のことが頭によぎり、「小林秀樹」で検索したら、千葉大学工学部小林秀樹研究室のホームページトップに「小林秀樹先生を追悼する会」が表示された。

 〝万に一つ〟の奇跡が起きることを望んでいたが、そうはならなかった。神も仏もない。

 早速、実行委員会に連絡を取り、追悼の会への出席は許可されたが、遺族の方や関係者への取材は「不可」だった。やむを得ない。

 先生、わたしは、先生の若々しくて格好のよさに、先生とほぼ同学年の西城秀樹さんとダブらせ嫉妬しながらファンになり、陰ながら応援し、これから本領を発揮するのではないかと期待もしておりました。

 それがかなわなくなった。残念至極。さようなら、先生。先生の後継者が現れることに期待しようじゃありませんか。

献杯!

「実践派」の千葉大名誉教授・小林秀樹氏 マンション長寿化フォーラムで講演へ(2022/6/18)

課題山積のマンション・戸建て 再生・活性化の道示す 国交省 住宅団地の再生検討会(2019/4/1)

〝羽ばたけないかごの鳥〟国交省 団地再生検討会 エアコンなし 議論白熱30度超に(2018/6/8)

平成の田園調布になるか1区画200坪の街づくり つくば市の「春風台」(2015/5/26)

厚くて高い法の壁 合意形成の難問も立ちはだかる 国交省「団地再生あり方検討会」(2015/3/18)

国交省 住宅団地の再生検討会 「無反応者」を母数に含めない是非(2014/12/17)

「理想の間取りは普通の間取り」 小林秀樹・千葉大大学院教授(2014/1/22)

〝複合〟でつなぐ地域の暮らしと福祉「もう一つの住まい方推進協議会(AHLA)」フォーラム(2010/11/29)

 

Screenshot 2023-08-02 at 14-05-39 【公式】Brillia 南浦和|JR京浜東北線・武蔵野線「南浦和」駅徒歩2分|東京建物の新築分譲マンション.jpg
Brillia(ブリリア)南浦和」

東京建物が分譲中の「Brillia(ブリリア)南浦和」を見学した。駅西口ローターリーに面した期間72年の定期借地権付きの全59戸で、第128戸に22戸の申し込みが入るなど、好調なスタートを切った。

物件は、JR京浜東北線・武蔵野線南浦和駅西口から徒歩2分、さいたま市南区南本町1丁目の商業地域に位置する期間72年の定期借地権付き15階建て前年同月比70戸(一般分譲59戸、地権者住戸11戸)、他店舗1区画)。専有面積は58.6674.52㎡、価格は5,299万円~6,899万円。坪単価は310万円。地代は10,257円~13,030円(月額)。竣工予定は202411月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修はParks Architects

現地は、従前は駐車場に利用されていたところで、丸広百貨店に隣接。敷地北側は道路を挟んで武蔵野線の高架。建物は南東向きで、1フロア5戸。2LDK1スパン、3LDK4スパンの構成。

主な基本性能はZEHM、二重サッシ、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機、浴室タオル掛け2本など。

4月にホームページを開設し、モデルルームオープンは6月から。これまで約900件のエントリーがあり、モデルルーム来場者は約200組。第128戸に22件の申し込みが入っている。大半は市内南区居住者で、この他は市内や川口、蕨市居住者など。都民は少ないという。

販売担当のゲストサロン副所長・川本大喜氏は、「高砂小学校も徒歩圏で、〝塾銀座〟と呼ばれるほど塾も多く、学区とモデルルーム(74㎡)の提案に高い評価を受けています。定借ではありますが、坪300万円台の前半で、始発駅でもる駅に近接、専有圧縮が進む中、70㎡以上を確保している特徴をきちんとお客さまに伝えていく」と話した。

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 南浦和駅圏のマンション見学は3年ぶりだが、坪単価は想定内だった。東北沿線居住者の都民の方は荒川越えで、定借の坪単価310万円は高いと感じるかもしれないが、今回の物件が竣工する2024年末の赤羽の再開発マンションは坪500万円を、浦和駅直ぐの再開発物件は坪400万円をはるかに超えるはずだ。相対的に値段が安かった総武線沿線の再開発マンションも軒並み坪400万円を突破することになりそうだ。

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モデルルーム 

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現地

ポラス中央住宅 コンパクトマンション「南浦和」 順調な売れ行き(2020/10/16

 

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「ステーションプラザ代田橋」

昭和レトロをテーマにしたコスモスイニシアの1戸リノベーションマンション「ステーションプラザ代田橋」を見学した。建物再生に取り組んでいるヤマムラとコラボしたもので、古民家の建具・家具が随所に採用されている。好きな人にとってはたまらないマンションだ。

住戸に採用されている広縁の5枚障子戸・洋室ドア・洗面室ドア、組子などは、古民家を残す活動をしている後藤大輝氏から譲り受けたもので、シューズクロゼットはタンスをリメイクしたもの。

物件は、京王線代田橋駅から徒歩1分(笹塚駅から徒歩13分)、世田谷区大原2丁目に位置する1991年竣工の7階建て全71戸の1室。専有面積50.87㎡、価格5,480万円(税込)。坪単価356万円。住戸は西向きで、直床・直天、リビング天井高2500ミリなど。バルコニー側に奥行き120cmの「広縁」を設けているのが特徴。

キッチンはスマートフォンと連動させることで火加減を自動的に調整するガスコンロを、食洗機は液体洗剤をタンクに入れておくと自動で必要な量の洗剤を投入する製品を採用。浴室は浴室乾燥・暖房機能付きで、タオル掛けは2本。

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LDK(床はサイザル麻のカーペット)

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玄関(左)とトイレ

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キッチンパネルに採用されている組子デザインは欄間に用いられていたもの

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 同社が720日に発表したプレス・リリースだけではよく分からないので、お願いし見学が実現した。

記者は、洋室のクロゼット引き戸に採用されている「簀戸(すど)」にほれ込んだ。昔の小説、書物によく登場する、すだれを障子の枠にはめ込んだ建具だ。すだれは天然の籐を編み込んでいるので、色や太さ、曲がり、間隔が微妙に異なり、開け閉めしたときの2枚の簀戸が描く文様は「紗」のようで美しい。

リビング床全面にはサイザル麻のカーペットが敷かれているのもいい。物件説明をしていただいた同社流通事業部商品企画部建築一課課長・高橋晴彦氏は「天然素材なので汚れるとしみになり、好まれない方もいる」と正直に話したが、素足で歩いたときの足裏の感触は、籐やバンブー(竹)とも異なる。少し荒い砂浜や河原を歩くときに近いか。

安いか高いかは購入検討者が考えることだが、小生のような年寄りのかつての「日常」が再現されている。この価値をどう考えるかだ。共用部分などは見学していないが、分譲竣工が1991年であることから推測して、分譲されたのはバブル期であるのは間違いなく、坪単価は500万円くらいしたはずだ。

駅からエントランスまでは50mくらいだったので、広告表示では「徒歩1分」となっているが、エントランスとは別の出入り口があり、1階のコンビニから駅までは約20m(80mを1分とすると15秒)。ほとんど駅直結というのも特徴だ。

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クローゼット引き戸

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「簀戸(すど)」

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カウンター下収納のデザイン

 大和ハウス工業は7月31日、「マンション事業計画説明会」を開催し、同社執行役員マンション事業本部長・富樫紀夫氏が今後の展開などについて説明した。戸数競争に巻き込まれる入札案件よりも、同社の総合力を生かし収益重視の付加価値の高い建て替え、再開発、複合案件などに絞り込み、年間4,000億円、2,000戸前後を安定的に供給していくと語った。

 同社本体のほかコスモスイニシア、大和ライフネクスト、海外事業を含めたマンション事業の前期売上高は4,843億円で、営業利益は408億円、営業利益率は8.4%で、今期は売上高4,300億円、営業利益は210億円、営業利益率は4.9%を予定しており、地価や建設費の高騰を考慮し、高付加価値物件の供給に絞ることで、量的な拡大から収益・資金効率重視の事業計画へと転換する。

 定量的な動向について、首都圏マーケットは23区を中心に高値で推移し、近畿圏は価格上昇基調にあるものの、完成在庫の増加など二極化も進むとしている。

 この10年間のマンション市場については、平均価格は首都圏で27.6%、近畿圏で32.6%それぞれ上昇、専有面積は首都圏で6.6%、近畿圏で14.2%狭くなっており、坪単価は首都圏で36.5%、近畿圏で54.2%の上昇となっていると説明した。

 今後の展開では、供給戸数を追うのではなく、付加価値の高いマンションに絞り込むことにより、収益力を拡大していくとし、代表的な再開発物件として「ONE札幌ステーションタワープレミスト」(624戸)、「徳山ザ・レジデンス」(100戸)を挙げ、現在、全国で21件の再開発案件に取り組んでいるとした。

 マンション建て替えでは「高輪一丁目共同開発事業」(280戸)、「プレミスト北浦和ブライトフォート」(87戸)の事例を、複合開発では「新さっぽろ」(総事業費500億円、マンション220戸)、「プレミスト高尾サクラシティ」(416戸)、環境配慮型としては「プレミスト大濠二丁目」(35戸)、「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸)、「船橋グランオアシス・プレミスト船橋塚田」(総事業費260億円、戸建て26区画、マンション571戸、賃貸223戸など)を紹介した。ZEH-Mは2024年度以降の物件に100%採用すると話した。

 このほか、既築建物再生事業「D's VARIE(ディーズバリエ)」や海外事業、マンション管理方式などについて説明。マンション管理では第三者管理方式を「プレミスト大倉山」(241戸)などで実施すると語った。また、ニセコ、沖縄などでは分譲ホテル事業を視野に入れていると述べた。

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 富樫氏の説明でいささか驚いたことが二つあった。

 ひとつは、「昭島」の坪単価と第1期の救急戸数だ。

 9月中旬に分譲開始する「昭島」の坪単価は250万円で、第1期販売戸数は全戸数481戸の4割超の200戸を予定しており、「9割がたはいけるのではないか」と富樫氏は語った。

 物件見学会が行われた5月の段階で、記者はわが多摩センターでいま分譲されているマンションの坪単価250万円と比べると「『昭島』に軍配を上げざるを得ない」と書いたのだが、マンション購入検討者もまたそのように評価しているのだろう。それにしても「昭島」で一挙に200戸とは凄い。モデルルーム見学会で販売責任者の東京マンション事業部販売事務所長・東本剛氏が「来年の6月までに完売したい」と話したのも現実味を帯びてきた。

 もう一つは、同社ばかりでな入りのだろうが、地方物件が総じて好調なことだ。

 富樫氏が代表物件として紹介した「徳山」。記者は「徳山」といえば徳山曹達しか思い浮かばないのだが、2003年の市町村合併により「徳山市」は消滅し、いまは人口約10万人の周南市となっている。

 そんな市の坪単価200万円の再開発物件が2023年12月の竣工前に売れ、富樫氏が「富裕層の方からは100㎡超を期待していたという声が多かったのは想定外」と話したのに驚くとともに納得もした。

 地域経済が疲弊する地方都市でも富裕層は一定数存在するはずで、そのような層をターゲットとしたマンション分譲事業はあり得るのだろう。同様の例としてタカラレーベン「レーベン宇和島THE MID TOWER」(42戸)も好調だと聞いた。

 考えてみれば、夏はより暑く冬はより寒い、やぶ蚊に刺されながら草むしりをしなければならない旧耐震の戸建てに住むより、マンションのほうがはるかに安心・安全に暮らせる。地方も販売競争が激化しているようだが、まだまだ伸びる余地はあるような気がする。「プレミスト」はともかく「ダイワハウス」のブランドは全国区だ。その強みを今後も一層発揮していくということだろう。

 富樫氏は専有面積圧縮についても触れた。この種の発表会で専有圧縮に触れるのはまれなことで、記者は基本性能・設備仕様の退行についても聞きたかったのだが、そんな質問をすればまた嫌われると、思いとどまった。分譲ホテルは伸びるはずだ。

〝東京の軽井沢〟レベル高い 「来年6月までに完売」あるか 大和ハウス「昭島」(2023/5/26)

坪単価520万円でも人気 最終分譲へ 大和ハウス「プレミスト大濠2丁目」(2022/11/1)

実質10か月で300戸超の驚異的売れ行き 大和ハウス「プレミスト船橋塚田」(2020/10/20)

大規模商・住のスマートシティ 大和ハウス他「高尾」はこんな街(2015/6/8)

 

 日本銀行・植田和男総裁は7月28日、会見を行い、金融緩和策の柱である「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の運用を柔軟化し、これまで定めてきた長期金利の上限幅「0.5%程度」の基本を維持しつつ、「1.0%」まで容認すると発表した。

 会見で、記者団の「一般物価もそうだが、都内23区のマンション価格が1億円を突破したように資産価格の上昇はバブルの様相を呈しているのではないか」という質問に対して、植田氏は「都心部のマンション価格はものすごく上昇しているが、かなりの部分は個別要因によるものだ。それにしても不動産投資、不動産業向け融資などのデータはかなり高い水準で推移しており、今後気を付けて見ていきたい」と述べた。

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 YCCの柔軟な運用がわが国の経済、物価にどのような影響を及ぼすのか記者は分からないが、欧米などが利上げに踏み切ったことと無関係ではないはずだ。ここでは、植田氏が「今後気を付けて見ていきたい」と述べた不動産価格について考えた。

 日本銀行のデータによると、金融機関の不動産業向け融資はこのところ増え続けており、2023年3月末の融資残高は98兆2,521億円(前年同期は92兆4,286億円)となっており、全融資残高に占める割合は17.0%に達している。個人による貸家業へも27兆7,242億円(前年同期は27兆7,278億円)と高い水準が続いている。双方を合わせると全融資残高の実に21.8%を占める。

 国土交通省の「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」では、令和3年度の個人向け住宅ローンの新規貸出額は20兆7,948 億円となり、前年度から9,811億円、2.0%増加した。令和3年度末の貸出残高は191兆5,725億円で、令和2年度末より9兆9,224億円増加している。

 不動産経済研究所の調査によると、2022年の首都圏マンション供給戸数は2 万9,569戸(前年比12.1%減)で、1戸当たり平均価格は6,288万円(同0.4%上昇)、坪単価は313.8万円(同1.6%上昇)となった。平均価格は4年連続、坪単価10年連続のアップで、平均価格、坪単価ともに最高値を更新した。

 東日本レインズのデータによると、東京都の2022年度の中古マンション成約件数は15,590件(1992年度比316.6%)、坪単価は335.4万円(同131.1%)、価格は5,827万円(同136.0%)、専有面積は57.34㎡(同107.0%)となっている。

 坪単価は、過去30年間でもっとも低かった2001年の140.2万円から約2.4倍、価格はもっとも低かった2000年の2,409万円の約2.4倍に上昇している。

 これらの数値からすれば、1980年代後半の「土地神話」が生きていたバブル期に近づきつつあるといえなくもないが、当時と現在では大きな違いがある。当時は、金融緩和を背景にだぶつく資金は株と不動産投資に向かった。〝狂乱地価〟〝土地・マンション転がし〟という言葉に象徴されるように、投機が投機を呼ぶ異常な世の中になった。日経平均株価は1989年(平成元年)12月29日の大納会で史上最高値38,957円44銭を付けた。都内の一等地のマンション坪単価は2,000万円、3,000万円に上昇し、価格が10億円以上の〝ネオ億ション〟の造語も生まれた。「広尾ガーデンヒルズ」は瞬間的に坪3,000万円の値を付けた。

 現在はどうかというと、海外からの投資マネーが流入し、国内の富裕層などが所得税や住民税、贈与税、相続税の節税対策として不動産を購入するケースも増えてはいるが、基本的には実需が市場を支えている。バブル期はほとんどなかった共働きが一般化した今では、低金利効果とともに高額物件の取得を可能にしている。さらに、単身者やDINKSなど新たな需要層が現在の市場を支えている。

 さて、今後どうなるかだが、マクロデータだけで判断すると、首都圏マンションは新築も中古も一般的な世帯の取得限界を超えている。しかし、都心部の坪単価1,000万円超の物件の売れ行きは堅調であるように、富裕層向けはまだまだ伸びる余地はあると記者は見ている。近い将来、坪単価は2,000万円超ところが3,000万円を突破するのではないか。

 いまタマゴ1パックの値段は306円で、2021年の217円から4割以上上昇しているそうだが、コンパクトマンションの坪単価はこの1~2年間で400万円は500万円へ、500万円は600へ上昇している。年率で2~3割というすさまじい上昇率だ。投資向けはそれよりさらに高い。

 もう一つ、市場を左右する外資の動向だが、これはよく分からない。わが国への直接投資は増加しており、オフィス、ホテル、レジデンス、物流などは海外から見ても有望市場ではないか。

 となると、植田氏が「今後気を付けて見ていきたい」というのは、不動産市場の何を見るのだろうという疑問もわいてくる。過熱すれば、かつて行った総量規制という蛇口を締めるような挙に出ることはないと信じたい。

 大京穴吹不動産とマンション管理業協会は7月27日、全国11万棟超のマンションを紹介する大京穴吹不動産の不動産情報サイト「マンションデータブック」に、マンション管理業協会が運営する「マンション管理適正評価制度」における管理評価の掲載を同日から開始したと発表した。

 これにり、同制度の紹介サイトは東急リバブル、三井不動産リアルティ、野村不動産​ソリューションズ、アットホームに次いで5社目となる。

 

 

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