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日テレの計画地にある「番町の森」から(右は、確かに空の青には染まず屹立する「日テレスタジオ」)

 前回の続き。建築物の高さ規制より、足元の公開空地・緑地の確保のほうが大事という持論を展開しようと考えていたのだが、取りやめることにした。持論は正しいと思ってはいるが、大澤氏の主張は完璧で、番町エリアは「中層・中高層の住居系の複合市街地」と定めた都市マスタープランと、建築物の高さ規制を60m以下とすることで美しいスカイラインを形成し、歴史と文化を感じさせる街を未来につなげようと住民自らが決めた地区計画は尊重すべきという結論に達したからだ。エリア内のマンションをたくさん取材してきて、お金持ちだけの街になっていいのかという疑問はあるが、地域住民の考えを最優先すべきだと考える。

 なので、以下は記者の持論というよりは、論点を整理し、都市マスタープラン(都市マス)や地区計画、住民合意、区の公平性、日テレの企業市民としての倫理性などについて書くことにする。

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 日テレの提案は、都市計画提案制度(都市計画法第21条の2)の提案要件(土地所有者等の三分の二以上の同意と区域面積0.5ha以上)を満たしていることから区は提案を受理した。そして、区は「計画提案が行われたときは、遅滞なく、計画提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要があるかどうかを判断し」(同法第21条の3の前段)「当該都市計画の決定又は変更をする必要があると認めるときは、その案を作成しなければならない」(同後段)法の定めによって、地区計画の変更を決断したということだ。

 問題はこの後段にある。大澤氏が指摘した「都市計画マスタープラン(都市マス)は2021年5月に改定されましたが、『中層・中高層の住居系の複合市街地』の文言は維持されました。つまり、番町では『超高層』を容認しない姿勢が改めて確認された」-この肝心要の部分について区はスルーしており、令和4年12月8日に行われた千代田区都市計画審議会議でも都市マスとの整合性や、地区計画についてほとんど論議されていない。「我々が去年の3月まで皆で苦労してつくった都市計画マスタープランの精神に合致しているのかどうか、私はもう一度審議会の皆様に問いたいと思っています」という委員の発言があるのみだ。都計審とは激論などを交わす場ではないということなのか。

 あろうことか、「90mという提案が出たのは、かなり事業性の部分は抑えて、地域貢献や公共性に考え方を振ってきたのではないかと思います」と言い放った委員もある。

 日テレ担当者の発言も気になった。計画では敷地面積約12,500㎡(建ぺい率50%、容積率700%)、建築面積約6,400㎡、容積対象面積約87,500㎡となっていることについて、「1,000坪近い土地を区の公共の場所に供する。かつ、その運営も含めて日本テレビが未来永劫これを引き受けていくというのが今回の提案にございますので、単純にビルの収益が幾ら、それからそれに対する容積をどれぐらいアップということで計算したものではないことだけは、まずご理解を頂きたいと。再三、今日冒頭からお話ししましたように、一つの指針として、社内として、我々は700%の容積であれば、今後何とかその運営を含めて事業としても成り立つ」と語っている。

 先の公聴会でも公述人は、この日テレの姿勢は「言語道断」「傲慢さに呆れました」と述べたが、記者もそう思う。議事録を読んで、これでは札束で頬を張るのと一緒ではないかと。なんともやるせない気持ちになった。アンチ巨人だからいうのではない。念のため。

 日テレも企業市民として平成20年に策定された地区計画に同意したのではないのか。それから15年が経過するが、エリア一帯が劇的に変化したとは思えない。地区計画は開発を促進したり、あるいは抑制したりする諸刃の剣の側面を持つ。私権を制限することもある。しかし、その基本は住民合意、つまりみんなで民主的に決めるのが建前だ。区も地域の人たちも建物の高さを60m以下に揃えることで美しいスカイラインが描け、住環境が担保されていると考えている。それを覆すにはそれなりの説明が必要だ。

 開発にあたって駅とのバリアフリー化を図るとか、公共広場を整備する、エリアマネジメントを導入することなどは当たり前だ。どこのデベロッパーも行っている。憲法ともいうべき都市マスで将来的に中高層の街並みを形成しようと決めた矢先に、再開発等促進区に指定する必要性はどこにあるのか、記者はさっぱりわからない。区の公平性、日テレの企業倫理が問われている。

 日テレにはさらに言いたい。平成29年8月、「日本テレビ通りまちづくり方針(案)」をとりまとめ区に提出した「日テレ通りまちづくり委員会」なる組織についてだ。日テレの別動隊ではないのか。構成員は二番町町会、四番町町会、五番町町会、六番町町会、麹町三丁目町会、麹町四丁目町会、日本テレビ通り振興会とあるが、曖昧模糊、杳として知れない存在だ。この組織はその後発足した「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」の主要メンバーとして主導権を握り、150mプランを提示して二項対立を演出した。

 まだある。「日本テレビ番町スタジオ」だ。建物は2021年度のCFT構造賞と第23回日本免震構造協会賞作品賞を受賞した。高さ60m、窓などほとんどない、牧水の「白鳥」でもない、白亜の塔などとも呼べない、治外法権のただの箱、例えていえば福島原発の建屋そのものだ。どこが美しいのか。建物の前には警備員らしき人が、ねずみ一匹たりとも通さないぞという視線で小生を監視する。足がすくんだ。隣接する女子学院と真逆だ。「異形の建物」と書いたが失礼か。

 都計審での発言を少し紹介する。

 ・私、このままでは一気に多数決で日テレ案のイエスかノーかということだけに終わってしまうという気がしてならないのです。一体この日テレ案の今言っている5mの階高で700%(容積率)で90m(高さ)というこの三つの数字が、それとの対案で出ているもの(「番町の町並みを守る会」は階高4.6m、容積率633%、高さ60m対案を示している)の比較において、どのようにその合理性を妥協できるのかという議論がなぜなされないのかと私は不思議でなりません
 ・(地権者への)説明会をやった意見書を頂いて、賛成が47、反対が49だったということですけれども、地権者の総数がそもそも何人いらっしゃるのか、それを教えてもらいたいと思います。それと、もう一つが、区分所有で僅かな不動産しか持っていない人と、二番町にかなりの面積の不動産を持っている人とを同じ土俵で評価するのは少しおかしいと思いますので、この賛成の方と反対の方のそれぞれの面積。合計したもの、それが何㎡ずつか。それと、その比率を教えていただきたいと思います
 ・(これに対して)麹町地域まちづくり担当課長 地権者の数で、今回、登記簿ベースで二番町の全ての地権者様に説明会のご案内をしております。で、数といたしましては1,112名となっております。続きまして、意見書でございますが、数につきましては、先ほどご説明したとおりでございます。参考に、面積についても、合算を出してはいます。賛成が1万2,509㎡、反対のご意見が1,844㎡と、見取りとしてはそういった形になってございます
 ・(この答えに対して)先の委員 地権者が1,112名…今、計算しますと、賛成の方の面積が1万2,509㎡、反対が1,844㎡だとすると、賛成の方の面積の比率は87%、つまり、85%以上の人が賛成と考えてよろしいでしょうか
  ・(これに対して)担当課長 区といたしましては、この結果をもって、そういった形でという判断はしておりません(当然だ。賛成する人と反対する人のそれぞれ面積比率でもって賛否は測れない。みんな平等だ)
 ・未来永劫これからこのまちでお互いに、推進もちょっと待ってという方たちも住んでいくわけでありますから、そこのところの一番肝腎なところは、まちを二分にしない。遺恨を残さない(禍根を残さないの誤り。遺恨試合に発展しないことを祈るのみ)。これが、僕は一番大事だと思うのです
  ・二番町の地権者が1,112名だと区役所の方がおっしゃっていましたけれども、私はそれを前から知っていました。実際には二番町の地権者は大体1,000人ぐらいです。残り110名というのが多分抵当権者、銀行とかを含めてだと思うのです。それで、1,000名の地権者の中で、不動産を所有していて住んでいる人、これが何人いるかですが、僅か180軒です。だから、残り約800軒は不在地主です。持っている人は不在地主、住んでいる人は賃借人です。ですから、先生方が住民の意見とかとよく言われますけれども、賃借人は地権者ではないのです。今回のことで反対している人は二番町でもいます。どういう人が反対しているかというと、高い建物の上のほうに住んでいる人、これは反対しています。低層階に住んでいる人は、もう、千代田区の場合、日照権とかがありませんので、天空率なのです。要するに空が見えればいいと。そういう条件の中で住んでいる人が大多数なわけです。そういう人は、高い建物が出来ても、自分たちの窓から見えないから賛成なのです。駅から直結のエレベーターやエスカレータができて、便利になる。スーパーマーケットができて、便利になる。広場ができて、子どもを遊ばせることができるということで賛成します。そういう状況です。ですから、公聴会をやっても意味がないと思います。同じことの繰り返しです。反対する人は高層階に住んでいる人たちです。また、その人たちを応援する人もいます。信じられない話ですが

 (暴論だと思うので長々と紹介した。二番町の地権者1,112人の権利関係をこの委員の方はどうしで事前に把握していたか。とてつもない時間と費用がかかるはずだ。まあ、この問題はさておくとして、許せないのは、賃借人は〝日照はどうでもいい、空が見えればいい〟と蔑み、「公聴会をやっても意味がない」と語ったことであり、そのような不規則発言に対し異議を唱え、取り消しを求める人がいない都計審とは何かということだ。政治家や首長だったら即首が飛ぶはずだ。しかし、都計審では発言者の名前は公表されない。SNSのフェイクニュースとどこが違うのか)

 区は今回、区としては都市計画法第16条第1項に基づく初めての公聴会を開催した。公述申し込みは73件あり、賛成、反対それぞれ5名、合計10名が公述人として意見を述べた。WEB傍聴は163名だった。このほか賛成、反対それぞれ50名、合計100名の意見と区の見解が示されているように、とても盛況だったようだ。 

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 計画されている日テレのビルそのものは最高レベルになりそうだ。現時点でわが国最高峰の60階建て三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス西新宿タワー60」は高さ200m(単純計算で1フロア約3.3m)だ。もっとも高い階高のマンションは三井不動産レジデンシャルの27階建て「パークコート六本木ヒルトップ」だと記者は思っているのだが、1フロアの平均階高は3.5mくらいのはずだ。

 都心のオフィスでは、皇居に面した三菱地所「大手町パークビル」は29階建て150m(1フロア約5.2m)、三井不動産「Otemachi One タワー」は40階建て200m(同約5.0m)、森ビル「虎ノ門ヒルズ森タワー」は52階建て247m(同約4.8m)、千代田区内では東急不動産・鹿島建設「九段会館テラス」は17階建て75m(同約4.4m)。2027年度竣工予定の三菱地所「TOKYO TORCH」は63階建て390m(同6.2m)だ。

 「九段会館」は見学したとき、天井高は高くないと思ったが、これは歴史的建造物の建て替えで、外観、その他のデザインは最高に素晴らしかった。是非はともかく、日テレの再開発タワービルの階高は約5mとされているので、これらのビルと引けを取らないレベルとなりそうだ。

 この計画が都市計画決定されれば、高さ規制緩和に道を開くことになる。とするならば、せめて都市マスの文言を「中層・中高超高層…」か「中層・中高層など」に改めるべきだ。区は上位計画である「神田警察通り沿道賑わいガイドライン」に盛り込まれていた「豊かに育った既存の街路樹を活用する(白山通りのプラタナス・共立女子前のイチョウなど)」の文言から「など」を軽微な変更事項として課長権限で削除し、神田警察通りの街路樹伐採を容易にした前例もある。「超」「など」を潜り込ませ異議を唱えられたら「軽微な変更事項」として居直ったほうがまだ分かりやすい。

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 二番町地区地区計画(面積:12.1ha)の目標である「中層・中高層の市街地を形成」することと関連するので、総合設計制度について触れてみたい。

 東京都のデータによると、総合設計制度の適用を受けた建築物はこれまで771件あり、もっとも多いのが港区の185件、以下、千代田区の107件、中央区の97件、品川区の51件、渋谷区の45件、江東区の33件、豊島区の24件、台東区の21件。区域面積を考えれば千代田区は極めて総合設計建築物が多いことが分かる。23区で少ないのは葛飾区の7件、足立区、中野区、荒川区の各6件、杉並区の5件など。

 これだけで街の良否は測れないが、都市マスと地区計画によって住環境が担保されていることも、番町エリアのマンションの価格が高い要因の一つであるのは間違いない。番町エリアのマンションの坪単価は1,000万円を超えつつある。記者の目視した限りでは、日テレの計画地周辺には高さが60m以上の建物は見当たらず、大澤氏も番町エリアには高さが60m以上の建物はないとどこかで書いておられた。

 ※千代田区番町のマンションに興味をお持ちの方はWEB「牧田記者のこだわり記事」https://www.rbayakyu.jp/rbay-menu-kodawari「千代田区 番町」で検索していただくと2013年以降22件の記事がヒットするはずです。

「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)

隈研吾氏デザイン〝番町に負けない〟東急不 フラッグシップ「千代田富士見」(2023/1/11)

旧九段会館を保存・復原 最新鋭のオフィスとの融合 東急不・鹿島「九段会館テラス」(2022/9/9)

 



 

 

 

 

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左から中村氏、齋藤氏、増山氏

 サンフロンティア不動産は2月24日、同社グループのSFビルサポートの新しいオフィス・店舗賃貸保証サービス「TRI-WINS(トライ ウインズ)」を同日立ち上げ、サービスを開始したと発表した。

 コロナ禍による東京都の人口流出、企業倒産の増加、オフィス空室率の上昇、賃料の下落傾向に対応すると同時に「新しい資本主義の成長戦略」を見据えた戦略として、ビル経営者・入居者・社会課題に対応する〝三方良し〟の「Win-Win-Win(TRIPLE WINS)」の実現を目指すもの。

 ビル経営者が抱える収益悪化、滞納トラブルのリスク、ビル価値の下落の不安を解消し、入居者へは初期費用の負担軽減、入居審査の壁の低減を図り、同時に社会課題の解決へ貢献する。トラブルが絶えない代理店方式を採用せず、これまで5万件を超える信用調査を行ってきたノウハウを武器にする。

 記者発表会に臨んだサンフロンティア不動産代表取締役社長・齋藤清一氏は、近年の東京都の人口動態、企業倒産、オフィス賃料・空室率などの動向を紹介しながら、同社が強みとする既存オフィスの「バリューアップ」を武器に、環境保護、人材育成、地域創生に取り組み、持続可能で豊かな社会の実現を目指すと語った。

 また、SFビルサポート代表取締役社長・中村泉氏は「昨年、政府はイノベーションの鍵となるスタートアップ創出元年を宣言しました。新ブランド『TRI-WINS』を活用していただくことで、ビル経営者様には稼働率アップなど安定的なビル経営を、入居者様には有効な資金活用を実現し、合わせて社会課題解決に取り組む」とコメントした。

 当面、取り扱う対象物件は首都圏で、保証内容は賃料・共益費・その他固定費の滞納分で、保証委託料は賃料換算で2年間分。

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 中小企業庁の2022年版「中小企業白書・小規模企業白書」によると、2021年は新型コロナウイルスの流行や原油・原材料価格の高騰、部材調達難、人材不足といった問題が中小企業を直撃し、引き続き厳しい環境下にあるとしている。

 2021年の倒産件数は資金繰り支援策などの効果もあり、6,030件と57年ぶりの低水準となった。しかし、休廃業・解散件数は、前年の49,698件から46,724件へ減少したものの、民間調査が開始された2000年以降で過去3番目の高水準となっている。中小企業向け持続化給付金は終了し、金融機関の貸出残高が増加し、各業種において借入金の返済余力が低下しているとしている。

 同社が得意とする中小型の既存オフィスビルを高付加価値化させるバリューアップ事業も決して楽観視できる環境下ではないはずだ。リリースにもあるように、同社の個人事業主と新規設立3年未満の入居者の合計は全体の約30%を占めるという。一方で、スタートアップ企業の3年生存率(倒産率)は50%という厳しいデータもある。

 どうして、このような厳しい環境下で新ブランドを立ち上げたのか。代位弁済・債権回収リスクを敢えて冒してまで競争が激しいと言われるオフィス・店舗の賃貸保証サービス業に参入するのか。いま一つ分からない。

 だが、しかし〝ピンチはチャンス〟。だからこその参入なのだろう。SFビルサポート保証事業課次長・増山暁泰氏は「信用調査は2005年から5万件の実績があり、草分け的な存在」と語り、中村社長も「17年間の累計の取り扱い件数は8,000件、うち保証件数は4,000件弱。毎年1、2割ずつ積みあがっている。十分グループの事業に貢献できる」と自信を見せた。

 さらにまた、スタートアップへの年間投資額を現在の約8,000億円から2027年度に10兆円規模に引き上げる目標を掲げた政府の「スタートアップ育成5か年計画」も視野に入れているのだろう。

 齋藤社長は創業の理念である「利他」も強調した。「三方良し」&「利他」-考えてみればあらゆるビジネスに通じることだ。これなくして企業は存続できない時代であるのは確かだ。深謀遠慮の計算があっての決断だろうと理解した。

 中村社長は、わが故郷・三重県の英虞湾の突端志摩町出身だと聞いた。「近江泥棒、伊勢乞食」、つまり三方良しを編み出した近江(滋賀県)とその対極の商法で対決した伊勢商人(三重県)については明言を避けたが、ともに共通する「利他」の精神は小さいころから身についているのだろうと思った。

 

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日テレ通りと番町学園通りの交差点から二番町D地区地区計画地を望む 

 もっとも民主的な制度であるはずの地区計画の信頼性が揺らいでいる。東京都千代田区が日本テレビの提案を受け、都市計画で定めた日本テレビ本社跡地を含む二番町地区地区計画を変更し、日テレ跡地の建物の高さ制限を現行の60mから90mとする都市計画案に対する公聴会で、公述人の意見が真っ二つに分かれるなど、先行きが全く読めない展開を見せている。

 二番町地区地区計画は平成20年(2008年)、区域面積約12.1haを対象に都市計画決定された。全体として住宅、商業・業務施設が共存した複合市街地の形成を図るとし、地区特性に応じA地区(約2.4ha)、B地区(約7.3ha)、C地区(約2.4ha)の建築物の用途規制、壁面後退、高さ制限、緑化率などを定めている。

 区は、令和4年10月12日に日本テレビから二番町D地区地区計画の提案を受け、都市計画法第十五条―第二十八条の規定に基づき都市計画案を策定した。

 計画案では、従来のB地区の0.8haとC地区の0.7haを切り離し、D地区(約1.5ha)とし、さらにD地区をD-1地区(1.0ha)とD-2地区(約0.5ha)に分け、建築物の高さ制限をD-1地区は90m、D-2地区は60mとしている。除外したD地区以外の変更はないとしている。

 そして区は2023年1月26日、区としては初めての都市計画法第16条第1項に基づく公聴会を実施。公聴会では、区の案にもろ手を挙げて賛成する公述人が相次いだ。以下、主な意見を紹介する。
 ・60m以下のどこにでもあるような普通のオフィスビルよりも30m高くなりますけど、日本テレビさんの協力のもと、地下鉄のバリアフリー化や…エリアマネジメント、歩道の拡幅、バリアフリーの確保、これは非常に…重要な要素を含んでいると思います。これらを担保・実現するのであれば、建設物の高さ制限は全く問題ないと考えます
 ・(日本)テレビさんが作った「番町の庭」や「番町の森」が、子育てする地元住民にとっても大変ありがたい場所だと思います。保育園の子供たちや地元の小学生が毎日のように元気に走り回る姿はビルの立ち並ぶ都心ではなかなか見られない光景ですし、良いまちになったなと思います
 ・(日本)テレビさんを儲けさせるために高い建物をたてさせると批判される方もいらっしゃいますが、テレビさんはいままでも私たちと一緒に考えてくれていました。これからもずっと管理してくれるわけですので、本当は千代田区さんからも補助金を出してあげてもいいと思います
 ・私は、本当に100mでも120mでも150mでも、結果的にそれが地域に貢献できるんであれば、別に高さなんて気にすることはなかったと思います。でも、何が何でも60mという、その地区計画に則る形でやられて、お話がずっと頓挫していたことを考えると本当に残念です

 一方、反対意見を述べた公述人は、建築物の高さをA地区は30m(総合設計の適用を受けた建築物は40m)、B地区は50m(同60m)、C地区は60mと定めた現行の地区計画を改め、日テレの計画地を切り離し、その計画地のD -1地区の建築物の高さを90mにしていることに強い拒否の姿勢を見せた。以下、主な意見。
 ・日本テレビさんが高さ90mの具体的なプランを初めて公開されたのは昨年の7月ですから、まだ7か月ほどしかたっていません。既存のルールを変更するという大きな決断をするには、まだコンセンサスが形成されていないように思われます
 ・確かにまちづくり協議会は12回開催されておりますが、この90m案が示されたのは、昨年9月26日の、最終の第12回会議で提案されたものです。このときの審議が最初で最後であって、その具体的中身については一切議論がなされないまま、二番町の日テレ敷地の不整形の土地に地区計画を変更しようとしているわけです
 ・昨年2月4日に、3,328名の署名が、千代田区長に提出されました。これは地区計画の現行高さ制限60mを遵守して欲しいという番町住民・通勤者・通学者による、署名でございます。この公聴会の後にいきなり都市計画法17条の手続きに移るのではなく…日テレと住民が忌憚のない話し合いをして、そのギャップを縮めていただくことを提案します
 ・突然、二番町12.1haのうち日テレが1社で支配する1.5haだけを切り出し、周囲を睥睨する地域唯一の超高層ビル建設を認めるという乱暴な地区計画変更案が区から出され、驚愕しています

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日テレが整備した暫定利用の「番町の庭」(左)と「番町の森」

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番町文人通り(右は総合設計制度によって整備された歩道空間と高さ60mの「日テレ番町スタジオ」。記者は異形の建物としか思えない)

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 先日、2時間かけて件の番町エリアを歩いた。公述人が仰った地区計画の対象外エリアにある90mのオリコ本社ビルと都市センターホテル、60mの日本工営ビルを除けば、地区計画エリア内の建築物でもっとも高い建物は15階建てくらいで(1層を3~4mとすると60m)、日テレの「番町スタジオ」もまた約60mだ(それより高い既存不適格はないはずだ)。

 記者は、建築物の絶対高さ規制より足元の公開空地・緑地を確保するほうが大事だと考えているのだが、私見を述べる前に、都市計画に詳しい専門家の声を聞こうと東洋大学理工学部建築学科准教授・大澤昭彦氏にお願いした。小生は14年前、当時東京工業大学大学院社会理工学研究科・財団法人土地総合研究所研究員だった大澤氏に「100尺規制」「建築物の高さ規制」について話を聞いており、いっぺんにファンになった。見識の深さもさることながら、その男前に惚れ込んだ。

 今回も大澤氏は快く応じてくれた。大澤氏は「研究者として公平な立場でいるべきと考えていますし、その立場から見ても、二番町地区地区計画の変更については多くの問題をはらんでいます」と次のように問題点を指摘した。

1.都市計画マスタープランとの整合
 ・1998年に策定された都市計画マスタープランで当該地区を含む「番町地域」は、「中層・中高層の住居系の複合市街地」と位置付けられました。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/toshi/kekaku/masterplan/bancho.html
 ・ これを受けて、番町地域の大半のエリアで地区計画が策定され、最大でも60mに制限されています。
 ・ 建築基準法ではかつて60m超の建築物を「超高層建築物」と定義していましたので、番町地域では「超高層」は認められないことを意味します。
 ・ 都市計画マスタープランは2021年5月に改定されましたが、「中層・中高層の住居系の複合市街地」の文言は維持されました。つまり、番町では「超高層」を容認しない姿勢が改めて確認されたわけです。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/17862/toshimasu-4_2.pdf
 ・ それにもかかわらず、マスタープランと整合しない地区計画の改定が行われようとしていることに違和感があります。
 ・ 再開発等促進区を定める地区計画の策定にあたって、マスタープランと整合しない内容になることはあり得ます。ただし、それはマスタープランが古く、地域の実態や社会経済環境の変化に対応できていないケースに限られます。番町の場合は、マスタープランは改定されたばかりであって、状況は全く異なります。
2.地区計画の目標・建築物等の整備の方針との整合
 ・2008年に策定された二番町地区地区計画では、都市計画マスタープランの内容を受けて、中層・中高層の街並みの形成が謳われています。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4355/32nibanchou.pdf
 ・ さらに「建築物等の整備の方針」の中には、次のように明記されました。「建築物の高さの制限に加えて建築基準法第59条の2第1項の適用に際しても、建築物の高さの最高限度を適用することにより、建築物の高さが整った良好な街並みの形成を目指す。」
 ・ すなわち、総合設計制度等の規制緩和手法を用いても60m超を認めない姿勢を明示したわけです。この意図はとりもなおさず、番町の「中層・中高層の街並み」を守るためです。
 ・ 今回の見直しは、こうした二番町地区地区計画の考え方に反するものです。
 ・ 根本的な方針転換を図るのであれば、その合理的な根拠を示すととともに、合意形成を図るべきと思われますが、そのどちらも十分なものといえません。
3.地区計画改定の根拠の問題
 ・ 千代田区は、規制緩和の根拠として、地域の課題であった地下鉄のバリアフリーや公園の不足をあげています。規制緩和の見返りに日テレが地下鉄駅へのエレベーターや広場を整備することになっているため、これを以って緩和が認められると判断したようです。
 ・ ここで問題になるのが、バリアフリーや広場の整備の代わりに、超高層ビルが建つことで住環境が変化する可能性についての説明がなされていない点です。
 ・ つまり、規制緩和のメリットの説明だけで、負の影響について明確に示されないために、住民が適切な判断ができない(不安が解消されない)状態にあります。
 ・ また、そもそも住民が広場を求めているのかについての疑問もあります。現在、敷地内に番町の森という仮設の広場が設けられており、賑わいをみせています。ただ、南側に超高層ビルが建てば日陰になり、夏場以外、快適な広場になるとは思えません。ビル風の問題も発生することが懸念されます。
4.合意形成の問題
 ・ 地区計画改定の前に「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」で開催されていましたが、ここでの議論が煮詰まらない状態で、地区計画改定の手続きに移行しました。
 ・ 都市計画法第16条第2項に基づいて地権者等の意見書の提出で、賛否が拮抗したことを見ても、合意形成が不十分であると思います。
【まとめ】
  ①都市計画マスタープラン(しかも改定されたばかり)に反する計画を区自らが認めることがそもそも問題。
  ②規制緩和手法を用いても60mを超えられないと規定している現行地区計画の考え方の抜本的な方向転換となるため、その合理的な根拠の明示と合意形成が必要だが、そのどちらも欠けている。強引に再開発を進めれば、都市計画に対する信頼が大きく損なわれることになる。何のための都市計画なのか? 誰のための都市計画なのか? と住民は疑問に思っても不思議ではない。
 ③今回の変更を認めれば、他の地区でも同様の規制緩和が進む(日テレは認めたのに、なぜうちでは認められないのかといった意見が出てくる)。結果的に、マスタープランで掲げる「中層・中高層の住居系の複合市街地」が、なし崩し的に損なわれるのではないか。

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 みなさん、いかがか。記者はぐうの音も出ない。一つだけ疑問を呈せば「超高層建築物」とは何ぞやという問題だ。

 記者は、2023年1月30日付記事「齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 『タワーマンションは大丈夫か?!』」で次のように書いた。

 「建基法第20条は『高さが60mを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること』と定めているが、これがタワーマンションであるとか超高層建築物であるとかは規定していない。

 記者は昭和60年代の初め、『超高層マンション』の記事を書いた。東京都やUR都市機構、三井不動産などの『大川端リバーシティ21』の開発が開始され、従来の物差しでは計れないマンションが続々供給される気配を感じたからだ。定義を調べるために日本建築センターに取材したのだが、定義はなく18階以上だとか20階以上だとか聞いた覚えがある」

 つまり、大澤氏も「かつて60m超の建築物を『超高層建築物』と定義していました」と「かつて」を付しているように、「超高層」の定義ははっきりしないということだ。

 とはいえ、60mを一挙に90mに緩和する根拠はやはり希薄と言わざるを得ない。国土交通省の地区計画を策定するための「ルールづくりの進め方とポイント」でも「行政発意で始まった検討の場合でも、会議の進行は組織のリーダー等に委ねたり、住民主導の取り組みの重要性を繰り返し説明する等して、少しずつ住民主導による検討がなされるよう誘導していくことが重要である」「住民等が主体的にルールを策定するためには、意見対立が生じた場合にも、住民等で議論して自ら解決方法を見出すようにすることが望ましい」としている。

齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 「タワーマンションは大丈夫か?!」(2023/1/30)

絶対高さ制限の背景にある100尺規制とは(2008/6/10)

全国に広がる建築物の「絶対高さ規制」「住民は知るべき 行政は伝えるべき」大澤昭彦研究員(2008/6/3)

あれから17年 国立マンション訴訟終結 支援者の「会」が上原氏への寄付募る(2017/1/8)

 

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「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」

 大和地所レジデンスは2月21日、坪単価が約280万円と決して安くないにも関わらず、全111戸をわずか9か月で完売した「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」が竣工したのに伴うメディア向け竣工見学会を行った。文句なし!最高に素晴らしいマンションだ。

物件は、JR東海道本線・湘南新宿ライン・相模線茅ケ崎駅から徒歩15分、茅ヶ崎市東海岸南四丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約8,236㎡、地上4階・地下1階建で111戸。専有面積は53.89~100.38㎡、価格は4,298万~12,088万円。坪単価は約280万円。販売期間は2021年10月~2022年7月。竣工は2023年2月1日。設計・監理は有限会社恒企画。施工は馬淵建設。

 昨年10月7日に発表したリリースによると、評価ポイントは①茅ヶ崎海岸まで徒歩8分、第一種低層住居専用地域内の歴史ある約8,000㎡の敷地に建設される4棟構成の低層マンション。2層吹抜のエントランスやラウンジ、富士山を望める屋上庭園などの共用部が好評を得た②50㎡台~100㎡台の広さ、そしてスカイビューバルコニーやコンサバトリースペース、オープンエアリビングなど111戸に対して63タイプの多彩なプランは、テレワークの普及や様々なライフスタイルのニーズを捉えた③天然御影石を使用したキッチン天板やコンロ前のディバイダ―、全タイプのバルコニーに設置したスロップシンクなどハイグレードな設備仕様とある。

 購入者の居住地は、茅ヶ崎市14%、品川区7%、藤沢市7%(東京都48%)、年齢は30代24%、40代22%、50代23%、60代~21%、入居人数は1人9%、2人56%、3人18%、4人8%。

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中庭(3階から写す)

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中庭のアクアパティオ(右は池にかかる枝垂桜)

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パーティルーム

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天井高約2900ミリのコンサバトリースペース(額縁付きの風景を演出するデザインが特徴)

◇        ◆     ◇

 この物件については、一昨年4月に見学取材し、記事にもしている。かなりの方に読んでいただいたようだ。こちらも参照していただきたい。

 今回、商品企画など付け加えることはほとんどない。改めて感心したのは驚異的な売れ行きだ。どこを起点にするかだが、都内居住者が48%を占める。わが街・多摩センター駅から最速で茅ヶ崎駅まで1時間14分。新宿駅や東京駅からだと約1時間、横浜駅からでも約40分だ。駅から徒歩15分だから、歩くのは容易ではない。記者などは30分近くかかる。

 海に近い1低層の良好な住宅地とはいえ、ターミナル駅からこれほどかかる立地条件のマンションで、坪単価約280万円などありえない。新宿から30分のわが多摩センターでも坪270万円もしない。常識的に考えたらせいぜい坪220万円だろう。それでも竣工まで完売できる物件はあるかないか。自信のあるデベロッパーなどいないのではないか。

 なぜ売れたか。くどくどと書かない。前回の記事を読んでいただきたい。この単価でこれほど優れた商品企画と設備仕様レベルの高いマンションなど絶対に造れない。購入者は海好きで、資金的に余裕のある方だろう。賢明な選択をされたというほかない。

 さて、竣工見学会で小生が惚れ込んだのは、アクアパティオ・ウッドデッキ付きの「シーズンガーデン」と名付けられた中庭と、この中庭の借景を取り込んだ約130㎡のパーティルーム・ラウンジだ。

 アクアパティオには水道水を循環させたせせらぎが設けられ、池には枝垂桜の枝が掛かるように植えられ、このほかイロハモミジ、サルスベリ、ハクショウ(白松=3本)、カツラ、ロドレイアなどの中高木が配され、低木もふんだんに植えられていた。常緑樹のハクショウは冬季でも緑が必要ということから選定されたという。四季の移ろいによって目を楽しませてくる演出が見事だと思った。

 パーティルーム・ラウンジは貸し切りで1時間300円とか。一人で長時間利用するのは高いかもしれないが、プロの料理人を招いて、グループで飲食パーティをするのに最適だ。せせらぎの音を聞き、サクラ、モミジ、サルスベリ、ロドレイアなどの花を眺めながら酒を飲めるなんて最高だ。(タバコは不可のようだが、管理組合が認めればOKになるのではないか)

 同社によると、中庭の設計は高崎設計室の高崎康隆氏が担当されている。ネットで調べたら、「中学生で庭の道を志す。東京農工大学林学科で植物生態学を専攻(奥富清先生)。京都大学林学科造園学教室研修員として2年間、伝統庭園の調査・研究をする。…10年間設計と職人仕事を実践。…西洋環境開発に5年勤務。1989年高崎設計室有限会社設立。教育歴:京都造形芸術大学大学院教授…代表作品:2013年二子玉川『帰真園』、受賞歴:2010年度日本造園学会賞・設計作品部門『田園都市の四季の庭』、2012年度日本造園学会賞・技術部門『名勝楽山園環境整備事業』(※学会初の2部門受賞)」とある。

 懐かしい。西洋環境開発に5年間勤務されたとか。同社は「七ヶ浜ニュータウン汐見台」や「桂坂ニュータウン」など素晴らしい住宅地を開発した。高崎氏は関わっていないのだろうか。

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提供公園

希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」(2021/4/12)

 

 

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「ブランシエスタ浦安」

 長谷工コーポレーションは2月20日、同社が事業主で設計・施工した賃貸マンション「ブランシエスタ浦安」のメディア向け竣工現地見学会を行った。地上7階建ての最上階の7階部分を木造とする同社初のハイブリッド工法とし、かつ環境配慮型「H-BAコンクリート」を採用することで約120トンのCO2排出量を削減。CO2削減とデザイン性・快適性を高めた。

 物件は、東京メトロ東西線浦安駅から徒歩7分、千葉県浦安市当代島一丁目に位置するRC造・一部木造7階建て全208戸。間取り/専用面積(戸数)は1K/21.45~22.16㎡(184戸)、1DK/29.09㎡(10戸)、2LDK/47.51~59.83㎡(14戸)。2LDKの賃料は約21万~25万円。竣工は2023年2月15日。事業主は同社と長谷工アネシス、設計・施工は同社(7階部分はグループ会社の細田工務店)。貸主は長谷工ライブネット。

 現地は低層・中高層建築物が建ち並ぶ一角で、敷地は南・西・北側に接道。西側は道路を挟んで旧江戸川に面している。建物外観は江戸川の川波を表現した乳白色のガラス手摺りを採用。1階部分には共用施設としてコワーキングスペース、フィットネスルームを備えている。

 7階の木造住戸14戸は、共用廊下を挟んで東向きと西向きのシンメトリー形状とし、全住戸に天窓・勾配屋根、ロフトを採用。リビングの最大天井高を3.2m確保。主な設備仕様は、Low-Eガラス、御影石玄関、二重床、2.3mフラットサッシなど。床はシート張りだが、構造材は欧州アカマツ、天井・ロフト格子にはスギ材のほか、木材チップを練り込んだサイディングを採用。

 1月末から募集を開始しており、これまでに6戸が申し込み済み。他の1K~1DKは法人向けとして約9割が契約済み。

 見学会に出席した同社設計部門エンジニアリング部副事業部長・小島俊司氏は「これまで共同住宅の共用部などの木質化を進めてきたが、住戸部分を木造化したのは今回が初めて。グループ入りした細田工務店との連携の成果が生まれている。双方でタッグを組み、木質化を加速させていく」と語った。

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手前は旧江戸川

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エントランス

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コワーキングスペース

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フィットネスルーム

◇        ◆     ◇

 同社の説明によると、建築確認は当初RC造として申請、その後、一部木造とするため再確認申請を行ったため、工期は約1か月、内装仕上げに約1か月、合計2か月延びたというが、賃料は周辺相場の坪1.1~1.2万円なのに対し、リビングは二重床、最大天井高3.2m(6階以下は直床、天井高2.5m)、天窓付きロフト、フラットサッシなどを採用して快適性を高めたことで、坪1.4万円に設定することが可能となった。リーシングも順調であることから、木質化の成果ははっきり表れている。

 オフィス・住宅の木質化は時代の流れだ。住宅は賃貸だけでなく、分譲への展開も加速するはずだ。

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7階共用廊下(天窓付き)

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7階住戸内

木造賃貸&ZEH-M 三井ホーム「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」構造見学会(2022/12/3)

 

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「プラウドギャラリー新宿」エントランス

野村不動産は220日、新宿野村ビル35階に新たに設けたマンションの販売拠点「プラウドギャラリー新宿」のメディア向け見学会を行った。ギャラリーは218日(土)にオープンしたもので、随所に本物の木を使い、観葉植物を配置するなどまるで植物園にいるかのような錯覚を覚えた。同社のギャラリー「武蔵小杉」もよかったが、環境に配慮した施設としては他社を含めて今回のギャラリーが突出している。

ギャラリーは、JR・小田急線・京王線新宿駅西口から徒歩7分の新宿野村ビル35階。広さは約400坪。予約制で、[平日は11001800、土・日・祝日は 10001800(定休日は毎週火曜・水曜・木曜)。

今後、東京都内で分譲するマンションシリーズ「プラウド」を比較検討できる拠点とする。オープン時に「王子神谷」と「南阿佐ヶ谷」2物件を紹介し、将来的には10物件以上を取り扱う予定。

首都圏の既存のプラウドギャラリーにはない取組みとして、さまざまなデジタルデバイスを活用した「LABO ZONE」を設置。ヴァーチャル音声案内システムによる情報収集、VR模型、3面スクリーンへのプロジェクター投影を活用した、間取りの可変性体験コーナーなどを設けているのが特徴。

また、ギャラリーは国産木材・再生材の積極活用による環境対応を行うとともに、世界的な基準で健康・安全性を評価する国際認証「WELL Health-Safety Rating(以下、WHSR)」を国内のマンションギャラリーとしては初めて取得。

このほか、受付スタッフは、植物由来の素材「バイオ PET」でつくられた制服を着用。コクヨ監修のもと、お客様のウェイティングスペースからは、オフィス内執務スペースの様子が見えるガラス貼りのオープン空間を設置している。

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エレベータホール(左)とエントランス

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ギャラリー内

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接客ブース

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モデルルーム

        ◆     ◇

悲しい性か、それとも喜ばしい性向なのか、小生はマンションモデルルームだけでなくあらゆるものを見るとき、美しいかそうでないか、本物か偽物かをかぎ分ける習性が身についている。

今回もそうだ。35階のエレベータを降りたらすぐ、エレベーターホールの壁、ギャラリーエントランスのカウンターなどに格子デザインの〝木〟らしきものに目が留まった。〝まさか〟と思い叩いてみた。カンカンではなく、コツコツという音がした。

そして、全400坪の半分を占めるプレゼンテーションルームや接客ブース、オープンスペースに案内されて、目を見張った。植物園に入ったかのように感じた。また〝まさか〟と思い観葉植物に触れてみた。本物だった(一部フェイクもある)。どこかから甘いアロマの香りが鼻腔をくすぐり、小鳥のさえずりも聞こえてきた。

ギャラリーを案内した同社住宅事業部住宅営業二課営業二課長・頼富龍介氏は、「ギャラリーはわたしたち営業担当と商品企画担当が議論を戦わせて設けたもの。お客さまには五感を通じて体感していただけるようにしました。使用している木は全て国産材、床もクロスも環境に配慮した再生材。飲料容器も同様」と話した。

この時点で同社の力の入れよう、ギャラリーの質の高さ、取材の目的は達せられと思った。疑惑は確信に変わった。〝さすがプラウド〟だと。

小生がこれまで見学したマンション総合ギャラリーは20か所あるだろうか。広さでは710坪の住友不動産「総合マンションギャラリー新橋館」にかなわないが、これほど本物の自然素材をふんだんに用いたものは他にない。(マンションモデルルームでは、積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」と双璧。観葉植物の量と質では「ザ・パークレックス天王洲[the DOCK]」には負けるかもしれない)

もう一つ、強調したいのは「MiLiful(みらいふる)」だ。これは、2015年に同社と長谷工コーポレーション、ブリヂストンの3社が共同開発した「サイホン排水システム」の商品名で、その後、同社も長谷工コーポ施工物件に採用されてきた。

今回のギャラリーでも、かなりのスペースを割いて「MiLiful」を紹介しているのだが、同社が直床を除く物件に標準装備していることまでは知らなかった。

これは、大きな武器だ。ライフサイクルの変化によって間取りを変更することが容易だからだ。同業もやろうと思えばやれないことはないが、床下のふところ厚を確保しないといけないので容易ではない。

そしてまた、直床が多い長谷工コーポ施工物件ではほとんど採用されていないことにも気が付いた。これは長谷工コーポがそうしないのではなく、施主が望まないということだ。「床快full」も同じ。全館空調を開発したのは三菱地所ホーム「エアロテック」だが、マンションへの実装戸数では、後発の野村不動産「床快full」に瞬く間に追いつかれ抜き去られた。

野村不動産に独走を許していいのか、沓掛社長(次期会長)の高笑いを容認するのか、鼻柱をへし折ろうとするデベロッパーはいないのかと問いたい。

断っておくが、小生はLosing to Nomura、あるいはDefeated to Nomura(この英語表記は正しいのか分からないが)-野村不動産が勝つか負けるかではなく、隈研吾氏の名著「負ける建築」(岩波書店、英語表記「Architecture of Defeat」)と同じように、避けて通れない環境問題にどう対処するかを問いたいのだ。冒頭にも書いた美しいものは本物か、本物が美しいのはなぜか、偽物は美しくないのか、偽物は美しくなれないのかという問いだ。

 70㎡と100㎡のコンセプトルームは、リビング天井高を2450ミリにしているように極めてオーソドックスなものだった。これはお客さんに誤解を与えないとように最低限の基本性能・設備仕様を紹介しているからだと解釈した。

5社ブランドとの連携がいい 野村不の常設「プラウドギャラリー武蔵小杉」(2022/6/25

自然と共生するワークスペース「コモレビズ」実装した「ザ・パークレックス天王洲」(2022/7/27

目を見張る 710坪のマンションギャラリー 住友不「汐留」開設/第一弾は「虎ノ門」(2022/1/14

呉越同舟効果 「5本の樹計画」の本領発揮 積水「品川シーサイド」1207戸!(2017/3/24

野村不・長谷工・ブリヂストン 画期的な排水システム開発、実用化(2015/5/22

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「カーメスト興野町(おきのちょう)」

 東京都住宅供給公社(JKK東京)の新築賃貸マンション「カーメスト興野町(おきのちょう)」を見学した。2月2日に抽選した結果。募集98戸に対し申し込みが844件に達し、最高35倍、平均8.6倍の応募倍率を集めた理由を解明するためだった。住環境、買い物などの利便性、設備仕様レベルの高さは確認できたが、新たな謎も浮上した。

 前回の記事でも書いたが、家賃は安いような気がするが、23区では相対的に安い足立区の賃料と比較してそれほど安いとも思えない。住宅供給公社の賃貸住宅の家賃は「地方住宅供給公社法施行規則」第16条によって「賃貸住宅に新たに入居する者の家賃は、近傍同種の住宅の家賃と均衡を失しないよう、地方公社が定める」と規定されているからだ。

 にもかかわらず、どうして冒頭のような信じられない人気を呼んだのか。その秘密を探ろうとJKK東京に取材を申し込み、現地取材は実現した。

 行きは、東武スカイライン西新井駅からタクシーを利用したので、アクセスはよく分からなかった。現地に着いたとたん、樹齢70~80年と思われるイチョウ並木の巨木が目に飛び込んできて、広々とした公園に隣接して「カーメスト興野町」はあった。昭和34年(1959年)に建設された全27棟760戸の「興野町住宅」のA号棟エリア7棟200戸を建て替えた住棟だ。公園はJKK東京が整備したもので、人気の要因の一つであることはすぐわかった。

 JKK東京公社住宅事業部公社募集課営業推進係係長・山崎一徳氏から詳細な説明を受けた。844件の申し込み者の約3分の1が足立区居住者で、葛飾区、北区、荒川区、墨田区の隣接4区居住者が約15%、そのほかは都内や埼玉県の八潮、草加、神奈川などからも申し込みがあったとか。

 主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング・居室天井高2400~2500ミリ、エアコン、床暖房、3口ガスコンロ、給湯(追焚き機能付)、浴室暖房乾燥機、温水洗浄機能付き暖房便座トイレ、洗面化粧台自動水栓、ダブルロック、ディンプルキー、カラーモニター付インターホン、インターネット一括加入(Wi-Fi)、オートロック、防犯カメラ、宅配ボックス、エレベーター(タッチレス対応)、屋上太陽光パネル、蓄電池など。施工は長谷工コーポレーション。

 このほか、ハザードマップでは荒川が氾濫した場合は3mの浸水の可能性があることから電気設備は2階に設置し、〝防災3点セット〟としてマンホールトイレ、防災井戸ポンプ、かまどベンチが整備されていた。外廊下のアルコーブは分譲でも見かけないような広々としたものだった。

 共用部の「マルチサロン和み」はコワーキングブース3席付きで、トイレは引き戸、多目的トイレ付。中庭は、外から絵画のように見えるよう、ガラスの窓は額縁付きという凝りようだった。

 住戸内の仕上げレベルは、食洗機などは付いておらず分譲より劣るとは思ったが、浴室にタオル掛けが付いており、壁、巾木、家具などの隅は面取りがされており、引き戸はソフトクローズ機能付きだった。

 そして、山﨑氏が「想定外の人気」と語ったのが眺望だった。敷地南側は公園を挟んで民間の戸建て住宅街で、東京スカイツリーや東京タワーが眺望できるという。北側も高い建物はなく、徒歩12分の110店舗超の「アリオ西新井」も身近に見えた。保育園、幼稚園、小・中学校も徒歩10分圏内に揃っている。

 そこで考えた。仮に分譲だったらいくらになるかだ。土地代がただでも坪150万円以下はありえない。20坪で3,000万円。これなら売れるかもしれないが、完売まで1年はかかるのではないか。用地を新たに取得し、南側に公園を整備したら坪230万円以上するはずだ。20坪で4,600万円。記者が販売担当だったら売る自信はない。

 取材の帰りは、舎人ライナー江北駅まで歩いた。朝からなにも食べていなかったので、食事ができる店を探したが駅周辺の飲食店は焼き鳥屋さん1軒のみだった。開店時間の4時まで待って入った。この前取材した東武東上線の鶴瀬駅前のラーメン屋さんと同じくらいのメニュー(酒も含めて)だったが、料金は鶴瀬の倍だった。

 結論は、入居者は通勤・通学に江北駅を利用せず、西新井駅まで20分歩くか、あるいは自転車か、それとも徒歩4分のバス停からバス約5分の東武大師線大師前駅を選ぶのではないかということだ。大手町まで1時間圏だ。誰かが〝マンションは徒歩7分以内を買え〟といい、その舌の根も乾かぬうちに〝マンションは足立区を買え〟と言った。小生にはそんな選好基準はないが、検討者はどちらを選べばいいのか。謎は残った。

 賃貸を選ぶ人と分譲を選択する人、そして戸建てとマンション、新築と中古を志向する人の考え方は明らかに異なる。これはこれで結構なことだとは思うが、どこかに自由な選択を阻むバイアスがかかっているような気がしてならない。

 JKK東京が管理する賃貸住宅は200か所約7万戸。23区内の空き住戸は極めて少ないようだが、分譲はどうなったのだろう。かつてJKK東京は分譲住宅も供給しており、バブル期に分譲された分譲戸建て「多摩ニュータウン南大沢四季の丘」(45戸)の平均競争倍率270倍はわが国の史上最高倍率だ。そしてまた、最後の分譲マンションとなった1993年竣工の「ノナ由木坂」(252戸)の売れ残り17戸が〝半値8掛け2割引き〟、つまり当初の価格から7割引きで分譲され話題となった。この値下げ幅も記録として残っている。

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「カーメスト興野町(おきのちょう)」(南側の公園から)

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額縁付き絵画のような中庭

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中庭

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「マルチサロン和み」

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防災井戸

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北側の眺望(8階から)

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南側の眺望(8階から)

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アルコーブ

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面取りされている巾木、キッチンコーナー、カウンター

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昭和30年代に建設された「興野町住宅」

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江北駅近くの公園(樹木は無残にぶった切られていた)

舎人ライナー江北駅13分の賃貸「カーメスト興野町」98戸 申込み倍率8.6倍JKK東京(2023/2/8)

 

 

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「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」イメージパース

 三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事は2月17日、「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」の施行認可の公告が出されたと発表した。

 計画では、①神宮外苑地区のシンボルである4列のいちょう並木を始めとしたみどりの保存・継承と新たな樹林地の創造により、地区を南北に貫く「みどりの散策路」を整備②既存の老朽化したスポーツ施設を段階的に建て替え、次の100年に繋がる国際的な文化とスポーツの拠点として整備③広場や緑地などのオープンスペースを整備することにより地区内の歩行者の回遊性向上やイベントによるにぎわいを醸成する④青山通りやスタジアム通り沿道の複合・高度化を図り、複合市街地を整備⑤将来的なタウンマネジメントの役割を担う準備組織を設置し、市民参加型イベントなどの活動を計画-などが特徴。

 今後は、2023年3月下旬にラグビー場棟の建設予定エリアである明治神宮第二球場の解体工事に着手し、2036年予定の全体完成に向けてエリアごとに順次整備を行っていく。

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◇        ◆     ◇

 神宮外苑の再開発にあたっては、当初、大量の樹木が伐採されることなどから反対の声もおおく寄せられていた。記者は約30年間、神宮絵画館前の軟式野球場で行われてきたRBA野球大会を取材してきたので、思い出がいっぱい詰まっている。

 グラウンドは6面もあり、強打者などは隣り合うマウンドまで飛ばすのでしばし試合は中断された。故・水島新司さんが監督を務めていたチームとRBAの選抜チームが対決した試合も取材した。プロ野球団ヤクルトも練習場として使用しており、小生は平気で声を掛けた。選手会がストライキを行った2004年には、当時ヤクルトの選手だった稲葉篤紀氏にその是非を聞いたこともある。

 グラウンド名にはヒマラヤ、大銀杏、コブシ、ケヤキなどの名が付けられているように樹齢100年くらいの巨木が何十本も植えられていた。再開発によってテニスコート場、広場などに代わるが、敷地内の巨木はほとんど伐採されるようだ。

 計画では、計画地のオープンスペースは現行約21%から再開発後は44%へ、緑の割合は25%から30%へ、樹木は1,904本から1,998本に増えるとしている。その内訳は保存樹木889本、伐採樹木741本、移植樹木256本、移植検討樹木19本、新植樹木837本となっている。

 当初計画では伐採樹木は1,000本とされていたので、減ったのは結構だと思うが、問題はその質だ。いま、千代田区の神田警察通りの街路樹である樹齢約60年のイチョウが約30本伐採され、かわりにサクラが植えられるようになっているが、樹木には失礼だが、イチョウとサクラはまるで格が違う。

 再開発後の神宮外苑の緑と樹木の質はどうなるのかの論議が必要ではないか。

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2018年10月の台風21号で倒木したヒマラヤスギ

歴史ある樹木・緑環境はどうなるのか 神宮外苑のまちづくり始動 三井不動産ら(2022/5/21)

 


 

 

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中島氏(左)と吉田氏(同社会議室で)

 三菱地所は2月16日、社長交代と取締役会長の異動を発表。4月1日付で取締役兼代表執行役執行役社長に取締役兼代表執行役執行役専務・中島篤氏(59)が就任し、取締役兼代表執行役執行役社長・吉田淳一氏は取締役会長に、取締役会長・杉山博孝氏は取締役に就任する。杉山氏は6月下旬に開催予定の総会をもって取締役を退任、特別顧問に就任する予定。

 同日行った記者会見で吉田氏は「2017年4月に社長に就任してから6年が経過しました。この間、2020年4月に開始した『長期経営計画2030』を立案し3年が経過、一区切りがついたタイミングであり、今後は新しい社長のもとで『2030』を推進すべきだと判断し、社長交代を決断しました。

 新社長に中島を選んだのは、経営企画部門での経験、海外留学へのチャレンジ、不動産開発部門での経験、海外事業の中核企業でもあるロックフェラーグループ社のトップとしての役割などを通じ、その経営力、国際力、人間力、胆力を着実に成長させており、グローバルな視点から日本をみて新たな価値創造にチャレンジできること、加えて、私が大事にしているインテグリティを体現したような誠実、かつ実直な人間であるからです。その明瞭な知と心でもって未来をきりひらいてくれると思います」と激賞した。

 また、自らの6年間の社長時代を振り返り、「6年前の記者会見の席で心がけたいこととして3点をあげさせていただいた。一つ目は将来的な視点に立ったデベロッパーマインドによる挑戦、二つ目はグローバル対応力の強化、三つ目はインテグリティを深めることでした」と語り、新本社への移転に伴う新しいワークスタイルの提案と実践、長期営計画の発表、丸の内ネクストステージの推進、ロボット、AI、IOTの実装やDXの推進による新たな社会の基盤づくり、海外事業、投資マネジメント事業などそれぞれ成果を上げてきたことについて説明した。

 社長就任について中島氏は「身が引き締まる思い。『泉パークタウン』を見学して、その壮大な事業に感銘を受けて三菱地所に入社することに決めました。これまで企画担当として7年間の海外勤務や3度の中期計画を経験しました。藤和不動産との業務提携、リーマンショックの対応、黎明期の不動産証券化などにも携わってきました。そして、2011年からのロックフェラーグループでの経験が大きな財産となっています。これらの経験を通じて、何ごとも真剣、誠実に向き合うことを学びました」と語った。

 社長としての役割については「まず当社の本拠であり、DNAでもある大手町・丸の内・有楽町を圧倒的に魅力的な空間にしていくことです。グループの総力を結集してビジネスだけでなく居住、文化、エンターテイメントなどを取り込んで魅力ある空間にし、国際化にも寄与したと考えています。

 第二は、グローバル化。さらに海外事業、投資事業に力を入れ、成長させたい。価値観・文化もグローバル化にとって重要。多様性の社会の実現にも貢献したい。

 第三は、SDGs。サスティナブルは奥行きが深い分野であり、わたしも学んでいるところですが、会社としても脱炭素社会の実現に向け先駆的な役割を果たしていると自負しています。これからも社会から要請されていることは何かという視点を大切にし、対話、コミュニケーションを大切にしながら、よりよい社会を創造するその一翼を担っていきたい」と述べた。

 中島氏は、昭和38年8月9日生。昭和61年3月、東京大学法学部卒業。同年4月、三菱地所入社。平成3年6月、海外留学(人事部在籍)、同5年6月、経理部、同10年4月、都市開発企画部、同16年4月、経営企画部副長、同23年4月、休職(ロックフェラーグループインターナショナル社)、同28年4月、執行役員 欧米事業部長、令和2年4月、執行役常務、プロジェクト企画部、都市開発部、物流施設事業部、ホテル事業部担当、同4年6月、取締役 代表執行役 執行役専務、経営企画部、サステナビリティ推進部担当、現在に至る。

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中島氏

◇      ◆     ◇

 いつも馬鹿な質問をするからだろう。いくら手をあげても指名されないので、この日は質問をしないと決めていた。(手を挙げたすべての記者の方が指名された)

 実は、小生も1つだけ質問したかった。海外留学2年も含めて都合7年間の海外勤務を経験されている中島氏の苦労、語学力、コミュニケーション能力についてだった。

 ところが、小生は全く英語が話せない。英語が理解できない者に中島氏も説明するのは困難だろうと質問はあきらめた。中島氏はきっと、ボキャブラリーの問題ではなく、コミュニケーション能力の問題だと答えたに違いない。

 このコミュニケーション能力がわが国に決定的に欠けている。母語を大切にし、同時に外国語教育をしっかり行わないとグローバル化についていけなくなるだろう。小生は20年近く前、中国・北京大学付属小学校を訪ねたことがある。3~4年生の生徒は英語がペラペラだった。これは負けると思った。その後、10年も経たないうちにGDPは中国に抜かれた。

 小生の時代はどうだったか。昭和37年だ。中学1年の最初の英語の授業だった。担任の先生が、いきなり級長をしていた小生に向かって、まるで進駐軍みたいな命令口調で〝スタンド アップ〟と声を掛けた。カット頭に血が上り、知らんぷりを決め込んだ。先生は激怒した。政府が「もはや戦後ではない」と宣言したのは昭和31年(1956年)だが、三重の田舎町には当時、戦争の傷跡が色濃く残っていた。あの言葉で英語が嫌いになった(頭が悪いのだが)。

◇       ◆     ◇

 両氏の会見はとても分かりやすかった。分からなかったのはメディアの的外れの質問だった。〝三菱地所は保守的なイメージ〟〝欧米中心なのか〟などと仏壇の奥に眠っているカビが生えた経典を持ち出した。

 もちろん、両氏はこれを否定した。小生が説明するまでもないことだが、同社は丸ビルが竣工した20年前あたりから劇的に変わった。東京駅周辺の街も変わった。2011年に社長に就任した現取締役会長の杉山博孝氏はとても気さくな方で、広島カープファンであることを公言してはばからなかった(コーポレートカラーと一緒だからでもないはず)。同社のイメージチェンジに大きな役割を果たした。

 吉田氏も社長に就任した2017年の翌年、大手町パークビルが完成したとき、〝本丸〟の本社オフィスをメディアに公開した。こんなことをした会社は少なくともデベロッパーにはなかった。吉田氏はデベロッパーのオフィス・住宅の木質化にも先導的な役割を果たした。

 そして今、もっともワンダフル、ビューティフル、ハートフル、アートフル、ウォーカブル、チャレンジング(小生だってこれくらいの英語は分かる。スペルは書けないが)な活動を行っているデベロッパーこそ同社だ。コロナ禍でも見学会をきちんと行ったのは同社だけだ。

 とんちんかんな質問をした記者の方には〝ペン(スマホか)を捨てて街に出よ〟といいたい。大・丸・有を歩けば三菱地所がどのような街を目指しているか、そしてまた日本橋、新宿、渋谷、池袋などとどこが異なるかすぐわかる。丸の内仲通りにはバギー姿があふれ、道路に敷かれた本物の芝生の上に素足を投げ出し、子どもに食事を与える母親がいる光景を見てごらん。

 別の記者の方は中島氏が大・丸・有の開発に関わってこなかったことを質したが、中島氏が大・丸・有を知らないわけがないし、吉田氏がそんな人にバトンを渡すはずがないではないか。むしろ逆だ。中島氏は米国勤務時代、外からしっかりわが国の街づくりをそのよさと弱みを眺めていたに違いない。小生は中島氏の話を聞いていてカチンと響くものがあった。大・丸・有を含めた同社の街づくりは間違いなく変わると。

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「パークシティ中野」

 三井不動産レジデンシャルと三井不動産は2月16日、参加組合員として事業参画している中野区の「囲町東地区第一種市街地再開発事業」の街区名称を「パークシティ中野」と決定したと発表した。住宅は807戸で、2025年12月に竣工する予定。建物ランドスケープは光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所。

 施行面積は約2.0haで、中野駅から事業地までペデストリアンデッキで結び、住宅807戸のほかオフィス、商業施設などを整備。設計・総合監修は佐藤総合計画、建物ランドスケープデザインは「HARUMI FLAG」や「パークシティ大崎 ザ タワー」、「パークシティ武蔵小杉 ザガーデン」などを手掛ける光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所。建築デザインは、中野駅前にふさわしいランドマーク性のある外観デザインとし、低層部には歩行者向けの空地やデッキを設けることで、賑わいと回遊性を創出する。

 このほか、路地空間や約1,000 ㎡のおみこし広場、2,000㎡超の緑地空間を整備する。

 事業は、JR・東京メトロ中野駅から徒歩4分、中野区中野四丁目地内の約10,059㎡のA敷地(住宅棟、オフィス・商業棟)と約3,170㎡のB敷地(住宅棟)。A敷地の住宅棟は25階建て545戸。オフィス・商業棟は12階建て。B敷地の住宅棟は20 階建て262戸。竣工予定は住宅棟が2025年12月。オフィス開業は2026年1月。商業施設開業は2026年春。設計・総合監修は佐藤総合計画。施工は東急建設。建物ランドスケープデザインは光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所。

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 建物ランドスケープデザインを光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所が担当することに注目したい。添付した記事と一緒に読んでいただきたい。

 今回のプロジェクトと中野駅を挟んだ反対側では、2024年2月竣工予定の住友不動産が参画する約2.4haの「中野二丁目地区第一種市街地再開発事業」が進行中で、オフィス棟のほか約400戸の住宅棟が予定されているが、賃貸住宅になる模様だ。

「HARUMI FLAG」で美しい花を咲かせたい 光井純氏 建築美を語る(2023/1/30)

 

 

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