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「住宅事業スモールミーティング」(新宿野村ビルで)

 野村不動産ホールディングスは11月30日、メディア向け「住宅事業スモールミーティング」を実施し、野村不動産取締役兼専務執行役員 住宅事業本部長・中村治彦氏と同社常務執行役員 住宅事業副本部長・吉村哲己氏が最近の住宅市場や同社の事業などについて約1時間半にわたり説明した。

 全般的なマンション市場については、民間調査機関のデータを示しながら好調に推移していると話した。野村不動産HDの2023年3月期第2四半期決算でも、分譲住宅の契約戸数は2,446戸(前年同期比+400戸)となり、計上予定売上高2,800億円程度(前期は2,840億円)に対する契約進捗率は93.8%と好調に推移していることを裏付けた。

 同社の顧客動向では、首都圏マンション購入者の平均年齢が38.8歳に対し、同社は41.7歳で、世帯年収1,200万円超の世帯が増加傾向にあるとし、とくに「1億円超などの高予算顧客」が増えているとした。1~1.5億円の購入者は、会社員で5割、30・40代で6割、共働きは4割となっており、高額住戸が多い同社2物件でみると7割が駐車場を希望しない「堅実層」が目立つという。

 顧客ニーズの傾向では、テレワークの二極化により、「エリア」「駅距離」「広さ」などの趣向性が多様化しているという。

 住宅購入マインドは、首都圏の7割が取得に前向きであるとしながら、エリアによっては支払い余力に差が出始めており、注視が必要とした。環境配慮型住宅への意識は8割が持っているが、予算オーバーでも購入する層は約6%にとどまっていると説明した。

 今後の展開については、全国で年間4,000~5,000戸供給を継続し、住まいの総合サイトの開設、販売センターの拠点化を進める。来年1月には新宿に販売センターを開設する。

 今後の住宅市場動向では、価格動向、建築費動向、金利動向、住宅ローン控除の改正、コロナによるニーズの変化、ライフスタイルの多様化に注目しており、富裕層が増加していることから高額物件専門の部署を設けたことを明らかにした。

 脱炭素の取り組みでは、ZEH仕様の「プラウド向ヶ丘遊園」、低炭素住宅認定の「浦安市日の出四丁目Ⅱ計画」などを来年に分譲する。

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 歳をとったせいか、コロナの影響か、どうも最近の小生の記事はキレがなく、冗長・冗漫に流れると自覚しているのだが、その舌の根も乾かぬうちにその愚痴から。

 同社のマンションや分譲戸建ては「コープ野村」の時代を含めて40年以上、年間少なくとも10物件は見学してきたのだが、今年は5物件くらいしか見ていない。旧聞のマクロデータを示されたって〝そうなの〟と頷くほかなかった。

 やはり〝プラウド〟は他社とどこがどう違うのかをもっと話してほしかった。全館空調「床快Full」と樹脂サッシを採用した「亀戸」は市場を激変させたように、同社のマンションは絶えず市場をリードしてきた。同社もまたメディア向け見学会を頻繁に行ってきたではないか。

 まあ、愚痴はこれくらいにして、記者は高額物件専門の部署を新設したことに注目している。野村総研のデータによると、2019年の純金融資産保有額1億円以上5億円未満の世帯は124万世帯で、全体の2.30%を占め、純金融資産保有額5億円の世帯は8.7万世帯で、全体の0.16%となっている。数字は年々上昇している。

 2020年以降のデータは示されなかったが、記者は毎年、東京都港区の課税標準額が1億円以上の納税者の推移を調べており、今年度は前年度比241人、23.9%増の1,250人となり、この層の所得割額総額も前年度比65.8%増の約280億円となり、高額納税者数、所得割額とも過去最多だった2020年水準を大幅に更新した。アッパーミドル層も漸増している。

 同社は具体的にどの程度の層をターゲットにしているか明らかにしなかったが、記者は坪単価にして1,000万円以上、30坪として3億円以上を視野に入れているのではないかと想像する。高額マンション市場では、同社は三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスの後塵を拝している。沓掛英二社長は地団太を踏んでいるのではないか。

 もう一つ注目しているのは地方展開だ。同社はこれまで東京圏、関西圏、中部圏を中心に展開してきたが、最近は首都圏に近い政令指定都市や中核都市での供給を増やしており、今期計上予定戸数4,300戸のうち地方は800戸を予定している。同業他社も地方での攻勢を強めているが、同社としては〝プラウド〟のプライドが許さないはずだ。地方でもトップブランドを目指すとみた。

 ミーティングで質問することを一つ忘れた。マンションだけでなくオフィス事業などでJR各社とのJVを増やしていることだ。JR各社も鉄道事業が伸び悩むのは間違いなく、今後は社有地の活用や駅ビル再開発など加速させるためにはデベロッパーとの連携は欠かせないはずだ。同社とJR各社の動向に注目したい。

億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区(2022/11/26)

天井高2700ミリ 全戸ワイドスパンに高い評価 野村不・JR東日本都市開発「目黒」(2022/7/24)

単価の安さに驚愕 立地よく設備仕様レベル高い 駅圏最大級の野村不他「金沢」287戸(2022/7/30)

街のポテンシャル 劇的に変えた 野村不の商業施設「KAMEIDO CLOCK」4月28日開業(2022/4/26)

 

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「(仮称)まちなかMARE世田谷代沢」

 大和ハウス工業は12月2日、木造&RC混構造の最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」の実棟モデルハウス「(仮称)まちなかMARE世田谷代沢」を2022年12月3日にオープンすると発表。同日、メディア向け現地見学会を行った。

 物件は、京王井の頭線池ノ上駅から徒歩5分、世田谷区代沢2丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率150%)に位置する敷地面積約165㎡(50坪)、地下1階・地上2階建て延べ床面積約238㎡(72坪)。

 「MARE」のコンセプトである「木のぬくもり」を感じられる外観・デザイン・設備仕様にしているのが特徴。最大3500ミリの敷地の高低差を利用し、地下1階をRC造、地上1~2階を木造の混構造とし、和モダンを演出するため小間返し、坊主貼、格子戸、荒組障子、吊収納などわが国の伝統的工法を採用し、素材も尾鷲ヒノキ、天竜スギ、大谷石、トチの原木などをふんだんに用いている。2階~3階の階段・廊下幅は1150ミリ。システムキッチンはkitchenhouse。

 当面はモデルハウスとして公開し、土地価格を含め5億円超で販売する予定。

 見学会で同社東京本店木造住宅事業部長・長谷聡志氏は「わが国の住宅着工件数は11が月連続して前年同月比マイナスとなるなど厳しい状況にあるが、当社の住宅事業は2023年3月期第2四半期決算では前年同期比23.8%増と堅調。木造は400棟販売し、1棟単価が上昇。高額の伸び率は平均を大きく上回っている。『MARE』のモデルハウスがある『駒沢』の住宅展示場の来場者は40組/月」と述べた。

 同社住宅事業本部設計推進部ZIZAIデザイン室長・櫻井恵三氏は「本当にいい家とは何かがコンセプト。第一種低層住居専用地域の南下がりの敷地で、道路制限、斜線制限など厳しい条件の中で、地階は車2台駐車を確保し、1~2階は道路側からの視線を遮り、かつ光と風を取り込む工夫を凝らした。『MARE』はこれまで11棟40億円を受注したが、うち1棟は15億円なので1棟平均単価は約3億円。今後も新千里、軽井沢、箕面、川崎などで積極的に展開していく」と語った。

 また、同デザイン室デザイナー主任技術者・笹井賢次氏は「素材にこだわり、三重県の尾鷲ヒノキのほか、天竜スギ、トチの原木、大谷石、漆喰壁などをふんだんに用い、わが国の伝統的な工法を採用した。今後もわが国の優れた材料を積極的に取り入れていく」と話した。

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エントランス

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リビング

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左から笹井氏、長谷氏、櫻井氏

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 玄関に入った途端、トチの原木のベンチや美しいヒノキと思われる格子戸、白那智の石、収納下の大谷石などが目に飛び込んできた。照明計画も見事で、「駒沢」とは比較にはならないが、「まちなか」のリアルなモデルハウスとしては最高に素晴らしいと瞬時に判断した。

 感動を覚えたのは、笹井氏がわが三重県の速水林業を介して尾鷲ヒノキを採用したことを強調したことだった。尾鷲ヒノキは生育環境が厳しい分、肌理細やかな材質が特徴と言われている。

 読者の方々はご存じないかもしれないが、三重県桑名市は「日本の山林王」と称された諸戸財閥の発祥地で、現在も約2.800haの森林を保有する諸戸林業、約1,070haを所有する速水林業は日本有数の山持ち企業だ(トヨタ自動車も約1,630ha保有するが、主に諸戸林業から取得したもの)。

 価格についてメディアから質問がたくさん飛んだが、予定価格は妥当な値段だと思う。いま井の頭線沿線でマンションが分譲されたら最低で坪500万円、良好な住宅地なら坪700万円超になるはずだ。敷地が50坪で、建物が72坪なら5億円超になるはずだ。

 記者は、富裕層向けは伸びる余地がまだまだあるとみている。記事を添付したように、港区の今年度の課税標準額が1億円超の層は前年度から241人増の1,250人で、この層の所得割額総額も前年度比65.8%増の約280億円となり、人数、所得割額とも過去最多を記録した。都心の各区でも同じような傾向があるのは間違いない。所得の5倍が〝無理なく取得できる〟(庶民にとってだが)住宅価格とするならば、富裕層は10億円だ。かつてバブル期は10億円超のマンションが飛ぶように売れた。そんな時代が再び訪れるのはそう遠くないはずだ。

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リビング

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 難点は、全体的に天井高が低い(地階2220ミリ、1階2400ミリ、2階2340ミリ)ことだ。この日(12月2日)午前中に見学した三井ホームの「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」と同様、建築規制が厳しいエリア・立地条件であるためだ。

 見学会が始まってすぐ、担当者らに「天井高は高くない」と話したら、「天井高には触れないほうがいいよ」と近くにいた記者が〝忠告〟してくれた。何のことだかとっさには分からなかったのだが、先日行われた野村不動産のスモールミーティングの質疑応答で、小生が「最近のマンションの質の劣化が甚だしい。天井高も低くなっている」と発言したことへの反駁だろうと思い、「住宅の質にとって天井高はとても重要な要素」とやり返した。

 馬鹿馬鹿しくて書くのもためらわれるのだが、「天井高」と「高さ規制」について少し触れる。

 居住空間を豊かにするのが最大のテーマであるはずで、デベロッパーもハウスメーカーも、そしてわれわれ記者も天井高に関心を払わなくなったらおしまいだ。

 大和ハウスの「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」だって、これまでの約2.7mを約2.8mに引き上げたではないか。同社グループのコスモスイニシアの分譲戸建てのリビングはほとんど3m以上だ。2億円前後の「グランフォーラム成城学園前」(4戸)は瞬く間に売れたが、2階リビングの最大天井高は3.7mだった。掃き出し窓をフラット化し、奥行き最大2.7mのバルコニーと一体利用できるのがヒットした。ポラスグループがどうして年間3,000戸以上の分譲戸建てを販売できるのかといえば、1階のリビング天井高は2700ミリを標準とし、差別化を図っているからだ。他社も追随するようになってきた。

 小生は一方で、建築物の絶対高さ規制は問題があり、公開空地を設けたり緑被率を高めたりした住宅は規制を緩和し、容積も割り増しすべきという主張を繰り返し行っている。「天井高」と「高さ規制」は表裏一体の問題でもある。

 2013年以降のRBAホームページから検索すると、「天井高」は561件、「高さ規制」は94件ヒットする。これをやめたら記者としての死を意味する。

 この記者の方へ一言。「ペンを捨てて現場へ出ろ」と。ユーザー目線に目をつぶり、業界に手すり足すりなどしていたらそのうち捨てられる。

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 以下は付録。取材を終え、食事をしようと池ノ上駅近くの間口2間くらいの小さな店に入った。先客が一人。

 何と店内の正面の壁にスペインの大きな地図が貼ってあり、棚や壁にはびっしりとアンティークな置物などが飾られているではないか。これはきっとスペイン好きのオーナーが経営している店で、〝ブラボー〟と発するのは危ないと判断し、恐る恐る「ご主人はスペインファン? 」と声を掛けたら、「いや、日本を応援しましたよ。サッカーはよく分からないが、スペインは昔、ギターを弾いていたので…置物はほとんどもらったもの」と話した。世田谷区には「沢」がつく地名が7つあることから「七沢」と呼ばれ、「池ノ上」はもっとも高台に位置し、かつての繁華街だったことも聞いた。

 店の名前は「ペキーノ イ アミーゴ(pequeño y amigos)」。御主人は80歳とか。ワイン3杯とチョリソーでお勘定は2,000円。1時間半も歓談させてもらったのでものすごく安い。何かにつけ意見は一致した。改めて行ったら、アランフェス協奏曲などを弾いてもらえるかもしれない。了解を得られたので店舗内の写真を紹介する。

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スペインが優勝したときのメンバーとか

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店内

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パピルスで描かれた絵画

「希」に見る設計依頼1か月で来場100組超 大和ハウス 富裕層向け「MARE」(2021/6/2)

億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区(2022/11/26)

一頭地を抜く コスモスイニシアの都市型戸建て「田園調布 桜坂」「成城」(2018/4/20)

大日本山林会 「これからの『林業政策』を問う」シンポジウム(2014/3/14)

今年は「国際森林年」主要32社の社有林 所有・利用状況(2011/1/24)

林経協が総会 森林・林業再生へ流通・需要拡大部会設置(2011/5/12)

 

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「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」

 三井ホームは12月2日、木造賃貸マンション「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」のメディア向け構造現場見学会を実施した。昨年11月に竣工した「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」に続く、同社設計・施工の東京23区内で上棟した初の物件。

 物件は、東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅から徒歩7分、新宿区須賀町7に位置する第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率300%=道路・斜線・日影規制で実質183%)に位置する敷地面積約262㎡(80坪)、4階建て延べ床面積約593㎡(180坪)の全16戸。専用面積は21.66~31.52㎡。構造は木造枠組壁工法。設計・施工は三井ホーム。工期は2022年6月着工~2023年5月竣工(予定)。

 現地は、幅員約4mの南道路と西道路に接道。道路、斜線、日影規制などから実質容積率は183%しか確保できなかったが、様々な工夫を凝らしレンタブル比率を高め、また、大型クレーンの設置が厳しい施工条件に対しては小型のクレーン車を利用することで、工期も予定より約1か月短縮できたという。

 基本性能ではZEH-M(Oriented)を取得する予定で、一次エネルギー消費量を20%以上低減する。また、住宅性能表示制度の「劣化対策等級」で最高等級の3を取得することで、建物の75~90年の耐久性を実現するほか、同社独自の「高性能床遮音システムMuteミュート」を採用することで鉄筋コンクリート造と同等クラスの遮音性能を確保する。

 見学会で同社施設事業本部コンサルティング第一営業部・井上氏と依田氏は、建築主の個人オーナー企業は、同社の既存顧客で、収益物件として賃貸マンションを建設する目的で土地を取得。「稲城」も見学し、木造マンションのコンセプトに共感したことから事業化が決まったと話した。

 また、RC造と同等の減価償却期間(47年)の選択も可能になったことから、減価償却期間が22年の木造より家賃設定を高くし、償却後の利回り想定も高くなることなどから節税/収益、保有/売却の柔軟な運用提案ができるのも決め手になったと強調した。

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〝あなたはまだ現しでないといけないという呪縛、木造コンプレックスから抜け出せないのか〟と言われそうだが、美しいものは美しい

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現場

木造賃貸&ZEH-M 満足度は98% 三井ホーム「稲城」入居者アンケート(2022/12/3)

 

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「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」 

 三井ホームは12月2日、わが国最大級の5階建て(1階:RC造、2~5階:木造)耐火ハイブリッド構造の木造賃貸マンションで、ZEH-M(Oriented)を取得した「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」の入居者アンケート結果をメディア向けに公表した。同日行った賃貸マンション「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」 の構造見学会の参考資料として添付したもので、総合的満足度で98%に達するなど極めて高い数値を示している。

 首都圏のZEH-Mは30棟くらいが竣工しているはずだが、この種の入居者アンケートを公表するのは同社が初めてと思われる。今後のZEH-Mの展開に示唆する点が多いので紹介する。( )内は記者の感想。

 調査は「冬季」(2022年4月11日~5月2日)と「夏季」(2022年9月26日~10月7日)の2度に分けて実施され、回答率は冬季が87.2%(N47世帯、n41世帯)、夏季が85.1%(N47世帯、n40世帯)。回答率も極めて高い。

 まず、「総合的満足度」について。入居後4か月経過した時点の冬季の総合的な満足度は、「満足」53%と「やや満足」45%をあわせて実に98%に達している。

 主なコメントでは、「あたたかみ、ぬくもりがある」「エントランスなどで木の香りや色合いに癒される」「床に少しクッション性が感じられる」「天井も高く、断熱・遮音とも良いと思う」「結露が少なく、あたたかくて住み心地が良い」「環境負荷の低い暮らしがしたいので、満足です」などとある。

 一方で、「特に鉄筋コンクリートのマンションと変わりありません」「住んでいて特別『木造』と感じることはありません」「未だに木造とは思えません」の声もある。

 (小生は、何と比較するかだが、天井高は高いとは感じなかったが、断熱性が高く、結露が起きないという回答は期待通りだ。鉄筋と変わらないとか木造とは思えないという声はとても興味深い。これが木造の利点でもあり課題だと思う。「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し」と話した小松弘昭氏や、「現しで(木材を)使うより実を取る」と語った十文字将敏氏はしてやったり、ほくそ笑んでいるかもしれないが、記者は「やはり木のほうがいい」と評価されるべきだと思う。すっぴんでも十分美しい女性がどうして歌舞伎役者のように厚化粧しなければならないのか。

 「やや満足」の「やや」にはどのような意味が込められているのか。「十全」のマンションなどありえないが、「大満足」にはなっていないのはなぜか。立地条件にしては家賃が高いという意識が働いているためか…)

 「夏季」アンケートからは、入居者の74%がRC造、または鉄骨造からの住み替えで、82%が「住まいの脱炭素・省エネ」を意識していることも分かった。

 断熱性能に関する満足度では、「冬季」「夏季」とも「不満」は5%以下となり、南西、北東の方位による満足度でもそれほど差が出なかった。

 主なコメントでは、「1~2月でも暖かく過ごすことができた」「冬はエアコンいらす」「木造とは思えないほど快適」「コンクリの壁に囲まれた室内のような冷たさは感じない」(以上、冬季)「今年は酷暑日が続いたが、快適に過ごせた」「ペットを飼っているので常に冷房を使用していたが、3台中1台だけの稼働でも十分だった」「夜エアコンをタイマーにしておくと、冷気が持続して省エネだと感じた」「玄関を開けたとき、空気の淀みがないと感じた」(以上、夏季)など。

 (これこそZEH-Mの特長だ。これが浸透すれば、価格差をそれけほど付けなくても済むようになるはずだ)

 「冬季」の「界壁遮音」では、「左右からの音は全く聞こえない」など「満足」「やや満足」が73%に達し、「不満」は2%となり、「床遮音」では、「満足」「やや満足」が52%で、「やや不満」「不満」は24%となっている。

 (これはマンション全体の課題でもある。音の感じ方は人それぞれ。連れ合いのいびきを心地よく感じる人もいれば、息の根を止めたくなる人もいる。コミュニケーション、愛の問題だ)

 2022年3月17日には東京都で震度4の地震が発生したが、そのときの不満足度は7%(3件)とわずかだった。

 特に満足度が高かった設備仕様では、共用部は「外観デザイン」が100%、「24時間ゴミ出し」97.6%、「メールBOX」87.8%が、専用部では「セミオートバス」92.7%、「間取り」87.8%、「浴室乾燥機」82.9%がそれぞれベスト3。

 (外観デザインが100%の評価を得たのに注目したい。記者もマンションを見学する際もっとも重視するのがデザイン-単なる意匠ではないが-なのでとても嬉しい。同じプラン・スパンが連続する板状マンションではせめて分節デザインを採用するべき)

ショック! 木質空間なし 現し論議に決着RCと木造混構造の特養完成 三井ホーム(2022/8/31)

賃料は「調布並み」でも申し込み殺到 三井ホーム「稲城」の木造5階建て賃貸(2021/12/9)

外貌の呪縛を解き放つか 「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/9)

美人を美人と褒めてどこが悪いのか/居直り記者が男女差別を考える(2021/11/15)

 

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イメージ図(提供:積水ハウス)

 東京大学大学院農学生命科学研究科と積水ハウスは11月30日、生物多様性と健康に関する共同研究を2022年12月1日から開始すると発表した。身近な庭の自然とのふれあいが、居住者の自然に対する態度・行動や健康に及ぼす影響を総合的に検証するもので、この種の試みは世界初となる。

 同研究科は、都市の生物多様性の保全や生態系サービスの活用に関する研究を行っており、2020年に緑地の利用頻度と家の窓からの緑の景色という2つの自然経験の尺度が、都市住民のメンタルヘルス(自尊心、人生の満足度、幸福度、鬱・不安症状、孤独感)とどのように関連しているのかを検証。その結果、緑地の利用頻度が高い人だけでなく、窓から緑が良く見える家に住む人もこれら5つのメンタルヘルス尺度が良好な状態にあるという結果が得られたとしている。

 今回の共同研究では、同科保全生態学研究室が構築した分析手法と同社の「5本の樹」計画を組み合わせて研究することで、「生物多様性の豊かな庭の緑」が「人の健康・幸せ」にどのような影響を与えるかを科学的に検証する。

 同科准教授・曽我昌史氏は共同研究について「積水ハウスの保有する全国の植栽データによって、これまで検証が難しかった『庭の生物多様性と健康および自然に対する考え・行動の関係性』が世界で初めて総合的に検証されることになります」とコメントしている。

 積水ハウスは2001年から「5本の樹」計画として〝3本は鳥のため、2本は蝶のため〟に、地域の在来樹種を植える取り組みを行っており、2019年から行っている琉球大学久保田研究室・シンクネイチャーとの共同検証では、生物多様性の劣化が著しい都市部で植樹を行ってきた効果が確認されている。

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 「5本の樹」計画で樹木を植える際、顧客が望む樹種を積水ハウスに聞いた。別表がそれだ。同社によると、地域によっては樹種が異なるとのことだ。以下に特徴を紹介する。

 ソヨゴは常緑の中木で、赤い実がなることから庭木として人気も高い。シラカシは常緑樹で、地質にもよるが樹高は20mくらいになる。強剪定すると枝葉が繁茂するので注意が必要とされる。

 イロハモミジはよく知られた落葉樹。基本的には剪定は行わないとされている。アオダモはバットの材利用としてよく知られた落葉広葉樹。樹高も10mくらいにしか成長しないので、庭木としてよく植えられる。

 エゴノキは落葉小高木。白い小さな花が咲き、庭木や公園などによく植えられる。ヤマボウシも庭木や街路樹によく用いられる落葉樹。初夏に白い花を咲かせる。クロガネモチは常緑広葉樹。冬季に真っ赤な実を付ける。美しい樹形を描く。街路樹としても用いられる。

 

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左から加藤氏、秋葉氏、佐藤氏、坂村氏、浦川氏(羽田イノベーションシティで)

  大和ハウス工業、日立物流、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の3者は12月1日、ロジスティクスデータ活用コンテスト「大和ハウス工業 スマートロジスティクス オープンデータチャレンジ」を2022年12月9日から開催すると発表した。同日、メディア向け説明会を実施した。大和ハウスグループはこれまでこの種のコンテストを3回行っており、今回が4回目の開催。

 コンテストは、日立物流の安全運行管理ソリューション「SSCV-Safety」(Smart & Safety Connected Vehicle)から得られる実際の物流(ロジスティクス)システムのデータを公開(オープンデータ化)し、その有効利用方法を競うもの。AIをはじめとしたデジタル技術を用いた新たなサービスやアプリケーションの提案を、国内外問わず一般の方から募集する。

 また、コンテストの趣旨への理解を深めてもらうためのTRON(トロン)シンポジウム「2022 TRON Symposium -TRONSHOW-」(開催日:2022年12月7日~12月9日、場所:東京ミッドタウン)の中で、「『大和ハウス工業 スマートロジスティクス オープンデータチャレンジ』シンポジウム」(12月9日(金)15時00分~16時30分)を開催する。

 物流業界では人手不足や長時間労働といった課題を抱えており、コンテストを通じて大和ハウス工業と日立物流が目指す「スマートで安全な物流」を、デジタル技術と開発者の知恵を借りして実現するのが目的。

 説明会の冒頭、大和ハウス工業取締役常務執行役員 建築事業本部長・浦川竜哉氏は、「労働時間の上限規制が適用される2024年問題をはじめ、人手不足、労働環境など物流業界は大きな課題を抱えており、今回のコンテストが持続可能な物流業につながることを期待している」と語った。

 羽田みらい開発SPC統括責任者、鹿島建設開発事業本部事業部長・加藤篤史氏は「『HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)』は、当社や大和ハウス工業さんら9社連合の先端技術と日本文化の融合をキーワードに、新産業創造・発信拠点として開発を進めているもので、デジタル基盤整備、クリーンエネルギー、無人自動車運転、警備ロボットの実装を進めている」と街づくりについて説明した。

 東洋大学情報連携学部INIAD学部長、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長・坂村健氏は「データの公開はここ10年間で世界的に広がっており、本流・潮流になっている。私も関わった東京都の新型コロナのオープンデータもその一つ。大和さんはこの種の取り組みでもっとも積極的」と称えた。

 日立物流執行役専務 営業統括本部長・佐藤清輝氏は、「2015年の半年間に同じ事務所で3件の漫然運転による事故が起きたのがSSCVを開発するきっかけ。ドライバーを被害者にも加害者にもさせない、事故を未然に防止するのが目的。2016年以降、社内の1,300台に導入したが、事故はゼロ、コストはCO2排出量を7.4%削減し、車両コストは9,000円/月/1台削減した。最初は〝どうして監視されなきゃいかんのだ〟といった声もあったが、家族も安心なことからみんな喜んでもらっている。システムのリース料は1事務所当たり月額1,000円。物流業界は99%がアナログの世界。みんながシステムを共有することでドライバーのなり手が増え、収入も増えるようにしたい」と語った。

 フレームワークス代表取締役社長CEO・秋葉淳一氏は「以前から佐藤さんに話をうかがっており、オープンデータはとても大きな価値があると思っている。ドライバーだけでなく、いろいろなケースで活用ができるのではないか」と話した。

 コンテストの応募期間は2022年12月9日(金)~2023年6月30日(金)。表彰式は2023年8月の予定。募集内容は、日立物流の安全運行管理ソリューション「SSCV-Safety」から得られデータ・映像を活用した作品(アプリケーション、Webサービスなど)と研究論文。賞金総額: 500万円(最優秀賞200万円、優秀賞50万円×4本)、その他特別賞。

 詳細は専用サイトhttps://daiwa-open-challenge.jp

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 大和ハウス工業から説明会の案内が届いたときは、物流はよく分からないし、車の免許を持たず、スマホすら満足に扱えず、ユビキタスやトロンの意味もさっぱり分からないので、スルーしようかと考えたが、説明会会場の未来都市「天空橋」で何か新しい発見もあるかもと取材を申し込んだ。

 結果は大正解。知らないことばかりに衝撃を受け、必死になって説明者の言葉をメモした。

 とりわけ、日立物流の佐藤氏の話は〝目からうろこ〟だった。佐藤氏の強い意志、熱意が技術者を動かしたのだろう。同社の経営理念には「日立物流グループは 広く未来をみつめ 人と自然を大切にし 良質なサービスを通じて 豊かな社会づくりに 貢献します」とある。

 「SSCV-Safety」には、①車両の位置情報②加速度情報③ドライバーのバイタルデータ(測定日時、体温、血中酸素濃度、血圧(最高血圧・最低血圧)、自律神経機能値、運転中の疲労度と注意レベル)④ヒヤリハット発生イベントデータ(イベントの種別、日時、位置情報など)⑤ヒヤリハット発生時の映像-が搭載されているが、ヒヤリハット発生時の映像を瞬時に「伐り出し」できるものは他にないということだった。

 記者はドライバーだけでなく他の用途にも活用できないかと質問した。佐藤氏は「バスでのトライアルは始まっており、消防車、生協、弁当配達などから引き合いがある。個人? 可能性としてはあるが…」と話した。

 佐藤氏の話を聞きながら、記者は4年前の大和ハウス工業のTVCM「物流×AI」を思い出した。役所広司さんは「物流×AI」の「AI」を日本語の「愛」に置き換え〝物流の未来を変えるんだ 「愛」をローマ字にすると「AI」になるんだ 「AI」は、そうなんだ、「愛」なんだ〟と躍った-〝ドライバーを被害者にも加害者にもさせない〟-これも「愛」だ。

 書き忘れた。隣接の「羽田エアポートガーデン」もいいが、「羽田イノベーションシティ」もまたいい。喫煙所は各所にある。マンションを建設したら申し込みが殺到すると思うが、地区計画はどうなっているのか。

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羽田イノベーションシティ

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何かのイベントのようで数百人の女性が詰めかけていた

大和ハウスの新TVCM 「物流×AI」が最高に面白い(2018/1/5)

スイート、温浴施設が素晴らしい 住友不「ヴィラフォンテーヌ羽田空港」12/21開業(20222/10/7)

 

1129日付「住宅新報」WEB版は、「中古マンション値上がり率、日鉄興和不が7年連続関東1位 スタイルアクト調べ」と題する記事をトップで報じた。

調査は、宅建業者のスタイルアクトが運営する分譲マンションサイト「住まいサーフィン」が行ったもので、2008年以降に竣工した首都圏マンションを対象に、各住戸の新築時分譲価格と202110月から20226月までの間に中古マンションとして売り出された価格の値上がり率を算出し、新築を分譲したデベロッパーごとにランキングとして発表したものだ。

これによると、値上がり率トップは日鉄興和不動産の4.37%で、以下、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東京建物などと続く。2008年以降で最多供給と思われる住友不動産はベスト10位で、供給量ではベスト10社入りするはずの〝中堅〟は1社もランクインしていない。

        ◆     ◇

小生は、このスタイルアクト=住まいサーフィンの調査は知ってはいたが、どこがどのような調査をしようと勝手だし、それを記事にするかしないかを決めるのはメディアの判断に委ねられるので、無視を決め込んできた。

だが、しかし、28万人(同社発表)もいる「住まいサーフィン」の会員(消費者)は不利益を被らないかと心配になったので、以下に書くことを決めた。

まず、中古マンションの値上がり率について。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータによると、今年10月の首都圏中古マンションの成約価格は4,395万円(前年同月比13.1%増)、坪単価は229万円(同14.7%増)、築年数は23.73年となっている。

2008年の首都圏新築マンションはどうかというと、東京カンテイのデータでは平均価格は4,662万円、坪単価は233.7万円だ。

これを、スタイルアクトの値上がり率ランキングの計算式「中古値上がり率=中古売出価格/新築時価格/経過年数」に倣い計算すると、4,395万円/4,662万円/14年=6.7%となった。スタイルアクトが公表した値上がり率上位10社の数値よりかなり高いtが、最近の新築マンションの価格上昇率が高いことから、築浅の物件ほど上昇率は下がるはずなので、各社の物件の上昇率もこのようなものだともいえる。

これはさておき、上位10社についてみてみる。値上がり率トップの日鉄興和不動産を始めベスト10入りしている各社はどこも販売棟数、竣工戸数などを公表していない。このため、民間調査会社のデータに頼らざるを得ないのだが、日鉄興和不の2008年以降の販売戸数は年間800戸として10,000戸くらいのはずだ。1棟当たり戸数を5060戸とすると、販売棟数は10,000÷5060167200棟になる。ところが、スタイルアクトが対象としているのは41棟にしか過ぎない。販売棟数の20.524.5%しかカバーしていないことになる。(他社もほぼ同様)。

なぜそうなるのか。最大の理由は、スタイルアクトの計算式では「少数事例による誤差を抑制するため、総戸数10戸未満のマンションならびに事例数が5件未満のマンションは除外」しているからだと思われる。(販売戸数だけならベスト10入りするはずのデベロッパーは23社あるが、この適用除外に該当するためか)

この適用除外に問題はないのか。記者は中古市場のことはよく分からないのだが、年間5戸以上の売買事例がある中古マンションの1棟当たりの規模はどれくらいなのか。50戸で年間5戸以上というのは考えづらいのではないか。10年で所有者が入れ替わる計算だ。100戸でどうか。投資用や単身者・DINKS向けはあるかもしれないが、ファミリーマンションではあり得ないような気がするが…。(日鉄興和不は単身者・DINKS向けの供給比率が他社と比べて高い)

次に、資産性の問題。スタイルアクトは値上がり率の高いマンションは資産性が高いというが、果たしてそうか。短絡的に過ぎるのではないか。新築もそうだが、中古マンション価格はそのときどきの市場に左右される。上りもすれば下がりもする。資産価値が高いマンションは、「広尾ガーデンヒルズ」に代表されるように、市場動向に左右されず、居住環境や居住性能が高いことなどから賃貸市場でも適正に評価される物件だと思う。

これに関連することだが、釈然としない問題もある。ベスト10の住友不動産だ。他社の事例数を棟数で割ると、もっとも少ないのは阪急阪神不動産の9.7件で、あとは1214件だが、住友不はほぼ倍の23.7件だ。値上がり率は低いが、市場流通性(換金性)が2倍というのをどう評価するか。

もう一つ、スタイルアクトはどのようにして膨大な中古マンションデータを収集したのかという問題だ。東日本レインズによると、2021年の首都圏の中古マンション成約戸数は約4万戸だ。同社が調査した10社合計の事例は11,596戸だ。レインズデータの29.0%だ。これは2008年以降の竣工物件に絞ったからでもあるが、いずれにしろ全物件のデータを収集・分析しないと割り出せないはずだ。

同社は宅建業者なので(調査主体は「住まいサーフィン」だが)、レインズデータは得られるはずだが、レインズは「不動産取引を促進するために物件情報や成約情報を集計・加工・分析し、物件や個人が特定されない範囲で外部に提供する場合、利潤を得ることはできない」とし、「会員は上記以外で、成約情報を広告・宣伝等で利用してはいけない」と規制を設けている。

であるとすれば、スタイルアクトはレインズのデータをもとに算出したと言えないはずで、ならはどのような調査を行っているかを明らかにすべきだ。根拠が希薄な「広告・宣伝」は不動産公正取引協議会連合会の「公正競争規約」で「実証されていない、又は実証することができない事項を挙げて比較する表示」「実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」などを禁止している。

以上、縷々述べてきたが、新築・中古マンション市場について多少の知識があれば〝これはおかしい〟と感じるのが普通だ。無批判にリリースをコピペして発信する業界紙のメディア・リテラシーも問われている。

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右から大畑氏、関藤氏、中尾氏、パーク七里御浜代表取締役社長・辻利文氏、ツーリズムみはま代表理事・湊賢一郎氏

三重県御浜町、積水ハウス、クラダシ、パーク七里御浜、一般社団法人ツーリズムみはまの5者は1128日、「御浜町における食品ロス削減及び特産品のPRに向けた連携協定」を締結したと発表した。

積水ハウスとマリオット・インターナショナルが推進する地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」の地域活動の取り組みとして積水ハウスが主導したもので、「Kuradashi」での商品の販売をはじめ、各者が協力して担い手不足による未収穫産品の解消や不揃い、規格外果実の加工によるフードロスの削減、一次産業における消費行動への変容を促すとともに、御浜町のPRと地域活性化を目指すのが目的。

具体的には、全国の大学生・大学院生を対象に1212()1218()、社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」を実施する。定員は6名で、道の駅パーク七里御浜に隣接する「フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜」を学生の宿泊場所として利用し、学生は担い手不足により未収穫となってしまう可能性のあるみかんの収穫を支援するほか、学生が収穫したみかんを、道の駅パーク七里御浜内のジュース工場でみかんジュースに加工する。期間中に学生と役場職員の意見交換会も実施する予定。

クラダシは、フードロスや地方創生に興味のある学生が日本全国の人手不足で悩む地域・農家を訪れ、収穫支援や現地での交流を行う社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」を2019年から実施しており、参加学生の旅費や滞在費、食費などすべて同社が設立したクラダシ基金から拠出している。

積水ハウスは、「未知なるニッポンをクエストしよう」をコンセプトに、道の駅と隣接するホテルを拠点として、「地域の知られざる魅力を渡り歩く旅」を提案し、地域や自治体、パートナー企業とともに、観光を起点に地域経済の活性化を目指す地方創生事業「Trip Base道の駅プロジェクト」を展開している。

202010月から開業したホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」は現在、9道府県20か所(約1,600室)を展開。2025年には26道府県、約3,000室規模への拡大を目指している。

協定式に臨んだ御浜町町長・大畑覚氏は、「町は長年にわたって年中みかんがとれる町として産業支援を行っているが、近年は高齢化や人口減少により収穫が困難になってきており、雇用も伸びていないのが現状。今回の協定が食品ロスの解消と街のPRにつながると期待している」と話した。

クラダシ代表取締役社長・関藤竜也氏は「当社は〝ソーシャル・グッド・カンパニーであり続ける〟をミッションに、〝日本で最もフードロスを削減する会社〟をビジョンにそれぞれ掲げている。会社設立以来、1万トンの食品ロスの削減を実現したことから様々な賞も受賞している。今回の協定で、町の未来が明るくなるよう事業を推進していく」と語った。

積水ハウス開発事業部トリップベース事業推進室長・中尾茂樹氏は「地方創生、持続可能な社会の実現を目指す非常に意義深い協定。地域を元気にするため全力で応援していく。同様の取り組みをこれからも展開していく」と述べた。

御浜町は三重県のほぼ南端に位置する人口約8,100人の町。「年中みかんのとれるまち」をキャッチコピーに様々な品種のみかんが栽培されているが、近年は高齢化や後継者の減少による担い手不足、それに伴う遊休農地や耕作放棄地の増加、農地の集積の停滞、獣害の増加などの課題を抱えている。町は「第6次御浜町総合計画」の重点プロジェクトの一つに「みかん産地の再生」を掲げている。

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5者連携模式図

        ◆     ◇

 三重県出身の記者は、御浜町は町名だけは知っていたが、和歌山県境に近い最南端なので行ったことはなく、「年中みかんがとれる町」であることも知らなかった。とてもおいしいさんまの丸干しの産地ではなかったか。今回の協定で〝全国区〟になりそうなので、とても嬉しい。

 そしてまた、このような社会貢献型インターンシップがあることも全然知らなかった。三菱地所の学生が経営する「アナザー・ジャパン」も最高に素晴らしいと思ったが、「クラダシチャレンジ」は労働力を提供するだけで旅費、滞在費、食費が掛からず、役場の人たちと意見交換できる。大学にもよるだろうが、単位も取れるはずで、申し込みが殺到するのではないか。近ければ、飛んで行って取材したいのだが…。

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ミカンの収穫作業

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「フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜」

最高に素晴らしい! 学生が経営する「アナザー・ジャパン」TOKYO TORCHIに開業(2022/7/27

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「つなぐ森」全景

 野村不動産ホールディングスは11月28日、東京都奥多摩町が保有する約130haの森林について30年間の地上権設定契約を2022年9月に締結し、地産地消を目指す「森を、つなぐ」東京プロジェクトの取り組みを進めると発表した。

 森林の川上(林業)⇒川中(加工)⇒川下(消費)をつなぎ、森林サイクルを再構築し、地球環境保全、土砂災害防止機能、水源涵養などの森林の有する多面的機能の回復に貢献するのが目的。

 「つなぐ森」は約130haで、樹種はスギ、ヒノキの人工林が74.2%、広葉樹の自然林が25.8%。主伐、間伐、植林などを適切に行うことで、30年間で森林のCO2吸収量は約16,600t (森林放置時の約1.4 倍)を見込んでいる。管理は東京都森林組合に委託する。

 伐採を予定しているのは約500㎥で、2025年に本社機能を移転する「芝浦プロジェクト」のトライアルオフィス床に「つなぐ森」の木材を活用するほか、同社グループの事務所、店舗などの内装材や住宅・オフィスにも活用していく予定。

 奥多摩町は東京都の面積の約1割で、面積の94%を森林が占め、都民の水源地として知られているが、伐採適齢期を迎えているにも関わらず伐採されない森林も多く、人口はかつての約15,000人から3分の1の約5,000人に減少。空き家の発生などの社会課題も抱えている。

 同社と同町が2021年8月に締結した「持続可能な社会の実現に関する包括連携協定」では、地元の産業・雇用の創出などにも貢献していくことが盛り込まれている。

 オンラインの記者説明会で同社執行役員サステナビリティ推進担当 コーポレートコミュニケーションサステナビリティ推進部担当・中村篤司氏は「伐採を予定している500㎥は多くはなく、現段階で住宅の構造材として利用することはコスト、耐火基準などの壁があり難しい。まずは身の丈から始め、脱炭素社会の実現に貢献するよう取り組んでいく」と話した。

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「森を、つなぐ」伐採シーン

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師岡伸公・奥多摩町長(左)と沓掛英二・同社代表取締役社長

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21回都市計画基本問題小委員会(国土交通省 合同庁舎3号館)

国土交通省は1125日、第21回都市計画基本問題小委員会を開催し、まちづくりのグリーン化について議論した。

政府は今年6月、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」を発表し、新しい資本主義に向けた計画的な重点投資として①人への投資と分配②科学技術・イノベーションへの重点的投資スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進GXGreen Transformation=グリーン・トランスフォーメーション)及びDXDigital Transformation=デジタル・トランスフォーメーション)への投資-の4つを掲げ、では今後10年間に官民協調で150兆円規模のGX投資を実現すると謳っている。政府は7月、首相を議長とする「GX推進会議」を設置し、国土交通省も9月、斉藤鉄夫国交相を本部長とする「国土交通省グリーン社会実現推進本部」を設立している。

今回の小委員会はこのような経緯を経て開催されたもの。会合を振り返って同省都市局都市計画課課長・鈴木章一郎氏は「これまで緑に関する取り組みは制度設計も含めて弱かったのではないかという反省があり、世の中の価値観が変わってきたのを受け、なるべく多くのプレーヤーの方に参加していただこうというのが今回のテーマの底にあった。委員の方々から多くの示唆を頂いた。携帯の話も頂いたように、緑が多機能であるがゆえに、緑の定義を含めてわれわれの頭も整理しないといけないと痛感した」と総括した。

GXは、脱炭素社会を目指す文脈からすれば、Green (グリーン)=緑ではなく、多義的な意味を持つ。都市計画の観点から具体的にどのようなGXの取り組みを行うかが大きなテーマになっている。

        ◆     ◇

オンラインも可能だったが、リアルで傍聴した。同省から配布された資料は55頁もあり、日本政策投資銀行の「ESG投資・インパクト投資の潮流と評価について」(10頁)と参考資料「13頁」合わせると78頁にもわたる膨大なものだった。資料冒頭に都市緑地のグリーンインフラとして23の機能(効果)が記載されていた。「緑の価値」が余すところなくフォローされていると思った。GXのテキストになるはずだ。

これらの機能(効果)については誰もが認めるところだが、現実はどうかというと、緑被率(みどり率)は年々下がり、生物多様性は喪失されつつあり、都市農業は生活の糧として成り立たなくなり、森林・林業は危機に瀕している。

これを劇的に転換するにはどうしたらいいのかが今回の「まちづくりGX」のテーマだ。論点は①都市の緑地の確保や向上を図るための民間資金導入の可能性について②森林への都市の貢献のあり方について③市街地整備と一体となったエネルギーの面的利用について④自治体における「まちづくりGX」の位置づけについて-の4項目。

黒澤幸太郎・専門委員(むつ市都市整備部都市計画課長)は「『まちづくりGX』は市民に説明しやすい。国土交通省都市局のメインの事業になる」とエールを送ったが、記者は④の自治体の「まちづくりGX」に対する認識の薄さが大きな壁になると感じた。村木美貴委員(千葉大学大学院工学研究院教授)も「(何かは聞き取れなかったが)日本は欧州と比べ2周くらい(地球規模なのか400mのトラックか)遅れている。〝見える化〟と言われても、見に行かないと見えないではないか」と指摘した。

配布資料もそのことを裏付けている。例えば、都市計画区域設定を行っている自治体(n1,375)に対する国土交通省が行ったアンケート調査。2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みについて自治体に聞いたところ、「目標なし」は66%にのぼっている。

また、市町村マスタープランにおける緑地保全・緑化推進の位置づけの設問でも、立地適正化計画で「位置づけなし」が5770にのぼり、緑の基本計画に立地適正化計画に係る記載がある市町村は5.2%(36692)にしか過ぎない。

記者も、これまで都市公園や街路樹、緑被率(みどり率)などについて取材してきた限りでは、首都圏自治体のこの種の取り組みは全然進んでいないどころか「緑の価値」について全く認識していないと思わざるを得ない。都市公園がどのように利用されているか実態を把握しておらず、どこにどのような樹種の街路樹が植えられているかも答えられず、墓標のように強剪定されることに何の痛痒も感じていない担当者が多すぎる。千代田区は、健全な街路樹を「枯損木」(「枯損木」の言葉すら知らない職員も多い)として処分を決定した。

国土交通省がいくら旗振りしても、自治体が積極的に取り組まないと前に進まない。絵に描いた餅だ。どなたかの委員が「自治体頑張れ」と叱咤激励した。(記者は、同省が令和2年に立ち上げた、個人参加資格も含めた多様な主体の参画による「グリーンインフラ官民連携プラットホーム」に期待している)

中川雅之・臨時委員(日本大学経済学部教授)もこのあたりの現状を踏まえてか、「テーマが多岐にわたり一般的すぎる。都市計画決定部局として具体的にどうすればいいか論点を整理すべき。森林への貢献と言われても都市と森林の関係性を明らかにしないと論議は進まない」と指摘した。

さらに、横張真・臨時委員(東京大学大学院工学系研究科教授)も一口にグリーンと言っても文脈は様々。多様な概念をきちんと整理しないといけない。『まちづくりGX』も、個別の役割や機能の高度化ばかりを追求するのでなく、携帯情報端末のようにオールインワンであることの特性を伸ばすよう、その施策のあり方にかかわる発想の転換が必要」話した。

        ◆     ◇

 記者は、この種の会合で決まって海外との比較が論じられるのに辟易している。外国は中国とモンゴルしか知らないし、日本語しか話せないので劣等意識もあるのだが、わが国のあらゆる社会・経済指標は先進国の中で最低レベルだと指摘されると、それがどうしたと言いたくなる。

だが、しかし、政府のGX・DXに関する資料の中に「米国市場の企業価値評価においては、無形資産(人的資本や知的財産資本の量や質、ビジネスモデル、将来の競争力に対する期待等)に対する評価が大宗を占める。日本市場では、依然として有形資産に対する評価の比率が高く、企業から株式市場に対して、人的資本など非財務情報を見える化する意義が大きい」とあったのには〝ガラパゴス〟と揶揄されても仕方ないと思った。村木委員の手厳しい批判も心地よく響いた。

村木氏のほかにも「GXの見える化」が遅れているという指摘が相次いだ。「ESG投資・インパクト投資の潮流と評価について」話した日本政策投資銀行ストラクチャートファイナンス部・井栄階一氏も「私見」としながら「ESG投資家は定量的かつ客観的な評価を重視する」とし、わが国にはそれが欠けていると指摘した。

このことと関連する例を一つ。欧米では樹木などのグリーンの価値をを定量的に計る「i-Tree」が定着しているようだが、わが国は一部の研究家でしか流通していない。鈴木都市計画課長が「緑が多機能であるがゆえに、われわれの頭も整理しないといけないと痛感した」と話したように、数えきれないほどあるグリーン・みどりの価値を誰もが分かる定量的な指標で示さないといけない。

        ◆     ◇

 斉藤大臣と幹部の方にお願いが一つある。小生は、扇千景氏が国交大臣に就任したとき、希望していた文部大臣などではなかったことから「冷や飯を食わされた」と語ったのに腹を立て、就任記者会見の会場で「冷や飯とはどういう意味か」と詰め寄ったことがある。今でも国交省と職員を冒涜するものであり、即辞任に値する暴言だと思っている。

 その点、国交大臣を務められた齊藤氏の先輩、公明党の冬柴鐵三氏は立派だった。退任するとき国交省の職員を「わが国のシンクタンク」と称えた。

 前書きが長くなった。何を言いたいかといえば、そんな優秀なシンクタンクが働きやすいよう国交省の本館である合同庁舎3号館に喫煙所を復活していただきたいということだ。

 隣接する2号館の駐車場わきに喫煙所はあるのだが、3号館から喫煙所までは往復で68分かかる。喫煙時間を34分とすると10分以上だ。16回利用すると1時間を超える。これは職員にとっても国交省にとっても大きな損失だ(喫煙中に名案が浮かぶこともあるが)。

 いったい、どれくらいの損失か計ってみた。写真を見ていただきたい。左は25日の会合が始まる午後5時前の灰皿だ。目視したところ吸い殻は40本くらいか。水に沈んで見えない層もあるはずで、その数は少なく見積もっても80本はある。ちょうど灰皿の水を入れ替える時だった。作業している方に聞いたらほぼ2時間置きで1日4回だという。

 右の写真は、取材を終え帰るときの午後7時過ぎだ。やはり同じくらいの吸い殻が捨てられていた。

 そこで計算した。灰皿は全部で8つ。2時間ごと4回掃除すると80×8×4=2,560本だ。これを労働時間に置き換えると2,560本×10分÷60分=427時間だ。職員の労働時間を8時間とすると、実に427÷853人分だ。一人年間200日働くとすると53×20010,600人分(来庁者含む)の貴重な時間と莫大な金額が浪費される計算だ。これに、タバコが吸えないことによるストレスをお金に換算したら…これも〝見える化〟していただきたい。

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17時前の吸い殻(左)と19時過ぎの吸い殻(合同庁舎2号館で)

健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟(2022/11/12)

 


 

 

 

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