「3億円のマンション」村上選手の誕生日に鍵の贈呈式 オープンハウス
「3億円のマンション」鍵の贈呈式
東京ヤクルトスワローズのトップスポンサーであるオープンハウスグループは2月2日、ヤクルト村上宗隆選手にプレゼントする「3億円の家」は「3億円のマンション」に決定し、鍵の授与式を行ったと発表した。「3億円のマンション」の詳細は公費要されていない。
この企画は、村上選手が2022年シーズン最終戦で本塁打日本記録を塗り替える56号を放ち、史上最年少での三冠王を獲得した偉業を称えるもの。当初は1億円としていたが、荒井正昭社長の一声で一挙に3億円に引き上げられた。
2月2日は村上選手の23歳の誕生日であることから、同社からスペシャルケーキも贈呈された。
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記者は昨年10月の記事で、「3億円の家」は同社の分譲マンションには該当する物件がなく、戸建ての可能性大と買いたが予想は外れた。
戸建てならこの価格帯の物件は都内ならたくさんあるだろうが、庭があれば草取りが大変だし、ファンに押しかけられたりしたら隣近所に迷惑もかかる。同社が土地を購入して注文もあるだろうが、これとて管理、防犯面の課題は残る。村上選手が難色を記したのか。
マンションだって防犯面の課題はあるが、戸建てほどではない。しかし、都心部にたくさん供給されている高額マンションを同社が買い取るなり仲介して村上選手にプレゼントするとは考えられない。となると、同社の自社分譲ということになるが、現段階ではそれが見当たらない。
ホームページで探したら、目黒駅から徒歩8分の「オープンレジデンシア目黒コート」28戸がヒットした。しかし、最大の専有面積は63.42㎡なので、一人で住むには十分だが、価格は坪750万円としても価格は1億4,000万円だ。設計変更して2戸を1戸にする手はありそうだ。
さらにまた、小田急小田原線・京王井の頭線下北沢駅から徒歩5分の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率150%)に位置する「オープンレジデンシア下北沢」18戸もある。こちらも最大専有面積は74.91㎡。坪単価750万円としても価格は約1億7,000万円。2戸を1戸にしたら予算はオーバーする。
このほか、現段階では村上選手がほしがるような物件は見当たらない。今後供給する物件になるのだろうか。その噂が流れたら購入希望者が殺到…そうなれば予定価格を引き上げて3億円を回収できることになりそうだが…。
いずれにしろ、村上選手は多額の所得税を支払うことになりそうだが、今期年俸は6億円とか。痛くもかゆくもないか。人に貸す手も考えられるが、それではオープンハウスに失礼だ。お金持ちにはお金持ちの悩みはあるものだ。まだ23歳ですぞ。
オープンハウスも広告宣伝費と考えたら安いものだ。
スペシャルケーキ贈呈式
村上選手「3億円の家」プレゼント 現段階で未定 戸建ての可能性大 オープンハウス(2022/10/10)
初台駅に近接の約4.6ha 住宅は約3,200戸 野村不など4社 再開発組合設立
再開発エリア(左側が「新国立劇場」)
野村不動産、住友商事、東京建物、首都圏不燃建築公社の4社は2月2日、参加組合員として事業参画している「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」の市街地再開発組合を2月1日に設立したと発表した。
プロジェクトは、JR新宿駅と京王新線初台駅の間に位置する事業面積約4.6ha。「新国立劇場」に近接。総戸数約3,200戸の大規模集合住宅を整備するほか、駅方面の歩行者デッキ、4,500㎡の広場などを整備する。2031年の竣工を目指す。
「社員が明るくなった」川畑社長 旭化成ホームズ オフィスを全面リニューアル
グループ会社を含め社員の連携を生む共用エリア
旭化成ホームズは2月1日、神保町本社オフィスを全面リニューアルしたのに伴うメディア向け見学会を行った。2022年に策定した中期経営計画「2030年のあるべき姿Vision for 2030」の柱の一つである「働く人が輝くHappiness Company」を実現する施策の一つで、今年から在宅勤務、フレックスを織り交ぜ、オフィスはペーパーレス、フリーアドレスとするなどデジタル社会に対応した働き方にシフトチェンジした。
新オフィスは、業務内容に応じて最適な場所を選択するワークスタイルを想定し、ワークスペースはA集中作業スペース、B Phoneブース、C ベースワークスペース、D コラボレーションスペース、Eプロジェクトスペース、F会議室の6つに設定。
同社代表取締役社長・川畑文俊氏は「2030年のあるべき姿からバックキャスティングしたもので、ビジョンが掲げる①お客様から、社会から必要とされるEssential Company②住まいを創る会社から人生を創るLife Design Company③働く人が輝くHappiness Companyの3つの柱のうちの一つを具体化するもの。生産性の向上、グループ会社間の連携強化、社員エンゲージメントの向上につなげていく。席は2割から8割、平均5割を想定している。リニューアルして社員みんなが明るくなったように思う」「各社の役員が同じフロアにいるので、様々な事案を即決できる効果が生まれている」などと語った。
設計・監理・施工を担当したイトーキの営業本部執行役員法人営業統括部長・国領隆氏は「当社は空間設計の提案に力を入れており、今回のオフィスは川畑社長の2030年を想定した熱い思いによって実現した。社員のみなさんには魂を込めていただきたい」と挨拶した。
オフィスは、東京メトロ・都営新宿線神保町駅徒歩1分の千代田区神田神保町1丁目に位置する神保町三井ビルディング4~7階、延べ床面積は約9,547㎡。勤務人員は約1,200名。
川畑氏
概念図(青がA、濃い青がB、紫がC、黄色がD、ピンクがE、赤がF)
Library(ライブラリー)
Phoneブース
ベースワークスペース(小生のようなタバコの臭いがし、キーボードを叩かないと記事が書けず、声が大きい嫌われ者の居場所はあるのか。タバコを吸いなから記事の校閲と思索にふけるために1時間に1度は離籍したらAIに追尾されるのか)
Multi Sofa
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見学会では、無垢のテーブルと本革の椅子を備えた定員38名の同時通訳室付き大会議室や、「当社らしく華美ではありませんが」(担当者)という足がすくみそうな立派な応接室から、150円から200円のスナック菓子やチョコレートも備えられているCaféスペースまで公開された。
社員が執務中なので写真撮影はできず、声を掛けることはできなかったが、一つひとつのブースはフムフムと納得できるものばかりだった。社長室を見たかったのだが、役員室も含め不可だった。
何が嬉しかったかといえば、RBA野球史最強のチームの象徴である川畑社長が元気だったことだ。コロナの影響か、心なしかお尻の肉が落ちたように思ったが、体形はきりりと締まりスリムになっていた。
読者の皆さんはご存じないかもしれないが、45年間業界を取材してきて、川畑氏ほど立派(主に体格)な方はいない。頼もしい限りだ。相撲を取ったら、短躯頑健そのものの野村不動産の沓掛英二会長に投げ飛ばされるかもしれないが、柔道なら寝技に持ち込み失神させるはずで、ラグビーなら神戸製鋼ラグビー部出身の大和ハウス工業の芳井敬一社長のタックルなどものともせず、引きずったまま牛歩の歩みでトライするはずだ。
そして、控えめに語った「みんな明るくなったように思う」-このフレーズに、リニューアルが半ば成功したことを記者は悟った。
しかし、課題も見つかった。取材の会場にあてられていた6階のStadiumオフィスに入った途端、フェイクの観葉植物が目に飛び込んできた。ここだけかと思ったら、案内された役員フロアの7階を始め4階、6階もすべて緑はケミカル製品だった。
「パーク」(駐車場ではないはず)「パーゴラ」「オリーブ」「ミモザ」などと名つけられたスペースもカラーリングは「調」だった。
リニューアル工事を担当したイトーキの方に聞いたら「われわれが設えたのは全てフェイク。コストもあるが、管理が大変なので…」と話した。「これは書かざるをえません」と川畑社長に直訴もした。川畑社長は「貴重なご意見ありがとうございます。バージョンアップしていきます」と話した。いつかきっと改善されるだろう。
フレーム間仕切り(pergola)
大和ハウス工業のマンションモデルルームの天井に飾られていた本物のポトス
オフィスの観葉植物を定期的に点検する業者から枝葉をタダでもらってペットボトルに入れて育てたポトス。5年以上たつが育ち続けている
〝毒をもって毒を制す〟(季節にはドクダミなどを活ける。小生の記事は時には毒を放つが、ドクダミは周囲に香しい毒をまき散らし、加齢臭も消してくれる)
自然と共生するワークスペース「コモレビズ」実装した「ザ・パークレックス天王洲」(2022/7/27)
間伐材・端材を積極活用 三菱地所ホーム 新オフィス/七夕に愛と死と街路樹を考える(2022/7/7)
素晴らしいの一語 市民に開放を ナイス 本社ビル木質化リノベ/対照的な歩道の雑草(2022/6/27)
積水ハウス「スムフム テラス錦糸町」/往年のRBA野球スター選手が勤務(2022/4/18)
アースカラーの空間演出が見事 積水ハウス「SUMUFUMU TERRACE 池袋」(2022/4/7)
三菱地所の本丸を見た 機能一新 士気高揚 トマト最高 地所が新本社公開(2018/2/12)
総数は前年比0.4%増 分譲住宅が16年ぶりに持家を上回る 令和4年住宅着工
国土交通省は1月31日、令和 4 年の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は859,529戸となり、前年比0.4%増、2年連続の増加となった。床面積は69,010千㎡で、前年比2.3%減、昨年の増加から再び減少に転じた。
利用関係別では、持家は253,287戸(前年比11.3%減、昨年の増加から再び減少)、貸家は345,080戸(同7.4%増、2年連続の増加)、分譲住宅は255,487戸(同4.7%増、2年連続の増加)。分譲住宅の内訳はマンション108,198戸(同6.8%増, 3年ぶりの増加)、一戸建住宅145,992戸(同 3.5%増、2年連続の増加)となった。
首都圏マンションは52,379 戸(同4.8%増)で、都県別では埼玉県5,551戸(同39.6%増)、千葉県6,310戸(同76.0%増)、東京都29,579戸(同5.3%減)、神奈川県10,939戸(同2.2%減)となった。このほか近畿圏は22,999戸(同10.0%増)、中部圏9,145戸(同5.3%増)、その他23,675戸(同9.0%増)。
この結果、分譲住宅は2006年(平成18年)以来16年ぶりに持家を上回った。マンション着工戸数では、その他地方が近畿圏を上回るのは平成20年以降で同20年、同29年、令和3年に続き4度目となった。
齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 「タワーマンションは大丈夫か?!」
タイトルに目を奪われた。「齊藤ひろ子+浅見泰司 編著 タワーマンションは大丈夫か?!」(2020年、プログレス)だ。いかにも売らんかなの、策略が透けて見えるこの種の書籍を記者はほとんど読まないのだが、業界関係者なら知らない人はいない横浜市立大学国際総合科学部教授・齊藤ひろ子氏と、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授・浅見泰司氏の最強の二人が手を組み、定義・概念はあいではあるが、学者風に言えば人口に膾炙する「タワーマンション」を俎上に載せ、「大丈夫か」と疑問を投げかけ、おまけに学術論文ではまずありえない「?!」の疑問符感嘆符が付いている。全296ページで値段3,500円(税別)が高いか安いか分からないが、お金もないので図書館で借りて読んだ。タイトル通り、残ったのは「?!」だった。誰に読ませたいのか。
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年のせいなのか、馬鹿だからか、多分両方だからだろう。のっけから躓いた。肩透かしを食らった。書籍のまえがきの冒頭は「区分所有型のタワーマンションが増加している。タワーマンションとは、建築基準法に従い概ね高さ60m以上、そして階数にして20階上のマンションをさしている」とあった。
これはないと思った。建基法第20条は「高さが60mを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること」と定めているが、これがタワーマンションであるとか超高層建築物であるとかは規定していない。
記者は昭和60年代の初め、「超高層マンション」の記事を書いた。東京都やUR都市機構、三井不動産などの「大川端リバーシティ21」の開発が開始され、従来の物差しでは計れないマンションが続々供給される気配を感じたからだ。定義を調べるために日本建築センターに取材したのだが、定義はなく18階以上だとか20階以上だとか聞いた覚えがある。
その後、20階建て超の「超高層マンション」は主流になったが、デベロッパーが固有名詞の物件名に「タワー」と名付けない限り、記事に「タワーマンション」と書いたことはない。記事は正確でなければならない。定義のないものをそう呼ぶには抵抗がある。〝駅近〟もそうだが、業界関係者が〝タワマン〟と呼ぶのも何だか下品に聞こえ、ほとんど使わない。
広辞苑には、「超高層建築物」とは「1963年、31m以上の高度制限が撤廃された後に出現。15階建て以上の建物を指したり、100m以上の建物を指したりすることが多い」とある。記者も100m以上(概ね30階建て以上)とするのが適当ではないかと考えている。
そもそも「タワー(塔)」とは何かという基本的な問題もある。建築史だけでなく幅広い文筆活動をされている河村英和氏は、その著書「タワーの文化史」(2013年、丸善出版)で「『タワーらしさ』とは、それ自身の高さという物差しのみで測れるものではない。高層ビルが密集せず、周りのビルも高くなくてせいぜい四~五階建て、そんな1970年以前のような昔さながらの高さの建物が主流の土地に、唐突にニョキッと一本、さらに際立って高い建物が君臨すれば、瞬時に周りと差別化され、ある種の異質感が出てくる。たとえその塔らしきものが世界のタワーランキングを競うどころか、全く高層建築の部類に入らないものだとしても、その地域ではタワーらしさを演出することは充分可能だ。よって高さが30メートルにすら及ばなくても、周りの建物が低層階のものばかりの場所なら、それは立派にタワーとなりうるのである。…つまり、周りの環境次第で、ある一定の高さを持った塔上の物体は、タワーになりやすくなったり、なり難くなったりする」(まえがき)と述べている。
至極もっとも。建基法でも「低層」「中層」「高層」「超高層」とは何かについて定義していない。高さだけでなく、規模との関係で「中小・大規模」と判断する指標が示されていることと関連する。高いとか低いとか、大きいとか小さいとか、これは文化によっても違い、歴史とともに変化もする。法律はそのような変化を見越して100年、200年耐えられるものにしているのだろう。
なので、齊藤氏や浅見氏ともあろうものが20階建て以上を「タワーマンション」と呼ぶのに違和感を覚えるし、どうして「超高層マンション」にしなかったのか、さらにまた、マンションが抱える問題は基本的には高さに関係はないので「マンションの将来は大丈夫か」ともすれば、インパクトはもっと強かったのではないかと思う。
まあ、これはさておき本題。かく言う小生も、この10年間で「タワー」のワードが付く記事を616本書いてきた。全てがマンションではなく、同じタワーマンションを何度も取り上げている記事もあるので、どれくらいの「タワーマンション」を見学取材したか分からないのだが、いかに多く供給されているかの証左にはなる。
記事の中から20階建て未満の「タワーマンション」を年代の古い順に列挙する。
「ライオンズタワー片瀬江ノ島」(15階建て、1998年)
「レーベンリヴァーレ中板橋ヴィーナスタワー」(13階建て、2010年)
「プラウドタワー本郷東大前」(19階建て、2010年)
「横濱MIDベース タワーレジデンス」(18階建て、2017年)
「リビオつつじヶ丘 タワーレジデンス」(17階建て、2021年)
かなりヒットした。首都圏不動産公正取引協議会の不動産広告に関する自主規約「不動産の表示に関する公正競争規約」にも抵触しない。定義がないのだから当然だ。いずれの物件とも周辺に高い建物がないからそう付けたのだろう。
記者は、「タワー」が付くマンションの嚆矢は黒川紀章の今はない13階建て「中銀カプセルタワー」(1972年)ではないかと思うがどうか。業界では住友不動産の21階建て「与野ハウス」(1976年)が第一号と言われている。記者が強烈な印象として残っているのはオリックス不動産他の58階建て「ザ・東京タワーズ(THE TOKYO TOWERS)」(2008年)だ。
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各章・各論に移る。それぞれ丹念なフィールドワークに基づいた指摘もある。摂南大学理工学部建築学科教授・大谷由紀子氏の「タワーマンションは子育ち・子育ては心配ないのか? 」には胸を衝かれた。
私事だが、小生と妻はバブルが発生する前、UR都市機構の昭和30年代築の賃貸マンションでは2人の子どもを育てるのは難しいと判断し、新築マンションを購入した。入居前のチェックを済ませ、いざ引っ越そうとしたときだ。家族が寝静まり、一人で酒を飲んでいたら、小1~2年の長男が夢でも見たのか突然起き出し「お父さん、引っ越し嫌だ。友だちと別れたくない」と号泣した。
これには負けた。手付金を放棄してキャンセルした。その直後、バブルは発生した。マンション価格は暴騰した。
それから5~6年後だ。轍は踏まないと上の子が中学に、下の子が小学校に上がるのを待って、多摩ニュータウンの中古マンションを買った。バブル絶頂期の平成2年だ。駅から徒歩16分だが、多摩ニュータウンは完全に歩車分離の街づくりが行われており、東南角の専用庭付き1階が決め手だった。現地は見なかった。見なくともURの性能は分かっていた。
価格は、手付放棄したマンションより2倍以上に跳ね上がっていたが、ローンは株や原稿料などアルバイト代で返せるのではないかと過信した。みんな狂っていた。
元に戻る。大谷氏は、大阪市内のタワーマンション居住者調査で、購入した理由の第一は「駅に近い」ことで、子どもがいることで配慮したことは「保育所、学校、病院などが近い」と報告し、「子育て世帯のなかには通勤・通学・通園の便利がよく、治安がよければ、必ずしもタワーマンションでなくてもよい人が一定割合いるのではないかと推測できる」と喚起している。一定割合の層の一人が小生だ。
大谷氏は、「子どもが育つ環境は物理的環境のみならず、教育、福祉、保健、医療、情報、経済、人的リソースなど、本来は子どもを取り巻くすべての環境を含む」としながら、タワーマンションが抱える課題として①生理的・心理的問題②行動、母子、発達の問題③犯罪、事故の問題④災害、緊急時の課題を指摘。そして、「願わくは、子どもの有無にかかわらず、社会全体が子どもの視点に立って住環境を考えてほしい。子どもは生まれてくる家庭を選ぶことができないだけでなく、『自分で住まいを選ぶことができない』のである。都市の未来をつくるのは子どもだからこそ、安全で、健やかな生育環境を整えるのは『大人の責任』であり『社会的責務』である」と喚起している。
おっしゃる通りだ。国もデベロッパーも子育ち・子育ての視点から都市計画を考えてほしい。
一つだけ、言わせていただくと、先生、大阪は分かりませんが、分譲価格が高騰している都内では子どもだけでなく、普通の世帯も住宅を自由に選択できる余裕はありません。23区では20坪で7,000~8,000万円もします。
齊藤氏の「タワーマンションは管理不全になりやすい? 」は、タイトルに「? 」が付いているように、必要な対応策を講じれば管理不全に陥らないと言外に匂わせている。行政の関与、代執行、第三者管理などを含め「地域として適正に維持することが社会的に必要であるという考え方を広めていく必要がある」と述べている。
AGデザイン代表取締役・関栄二氏の「タワーマンションでは修繕費が割高? 」の章で、関氏は「タワーマンションという理由で、外壁を中心とした修繕計画の費用が高くなることはない」としているのも注目できる。他の著者とはやや異なった見解を示している。
大谷氏、齊藤氏、関氏と打って変わって、激論を展開しているのがstudio harappa代表取締役・村島正彦氏だ。「タワーマンションは廃墟化するか? 」の章で、「私のたどりついた結論から述べると、『タワーマンションは廃墟化する』となる」と断定し、「超高層マンションが築年数を重ねていくうちに、価値や魅力を減じて住まうことが忌避されるだろう」「筆者は、築後45~50年を超えたマンションで、幸せな将来を見通せているものを残念ながらほとんど知らない」「タワーマンションという形態は、100年を視野に入れて総合的な見地に立てば、サスティナブルな住宅ストックとしては、リスクの高いものと結論づけられる」と主張する。
一寸先は闇の世の中だ。この先、何が起きるか誰も分からない。どのように未来を描こうと村島氏の勝手だ。一つひとつ反論はしないが、東京都の「特定街区」制度でマンションとしては唯一の認定を受けた、第一種低層住居専用地域に位置する1981年竣工の12階建て住友商事「成城ハイム」(200戸)の中古価格は、今でも分譲時価格を上回っているはずだ。1982年分譲開始の「広尾ガーデンヒルズ」(1,181戸)は、バブルの波に翻弄(最高値は坪3,000万円、最安値は坪300万円)されたが、こちらも現在の中古価格は分譲時価格を上回っている。探せばこのような事例は他にもあるはずで、村島氏が知らないだけだ(知らないのは罪ではないが)。
村島氏は重大なミスも犯している。「乱暴な仮定」としながら、「同じ広さの住戸が超高層・通常のものについて、既往のデータから管理費・修繕積立金の平均的な単価」から計算したとして、同じ築年数30年、広さ75㎡、中古価格3,000万円の超高層マンションと14階のマンションの管理費・修繕積立金を比較、月々に支払う「管理費・修繕積立金」は超高層のほうが約1.7倍(年額261,000円)高いとしている。
築年数、広さ、価格(坪単価132万円)とも同じで、超高層と普通の高層マンションの「管理費・修繕積立金」の額がこれほど異なる事例など、村島氏の言を借りれば、小生は残念(幸か)ながら知らない。(個別案件で、最高と最低レベルを比較したらあるかもしれないが)。村島氏はこの数値をはじきだした元データを示すべきだ。
専門外だから許せるのだが、浅見氏も〝無知〟ぶりをさらけ出している。前出の齊藤氏、弁護士の戎正春氏、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授・大月敏雄氏との座談会で、浅見氏は「(タワーマンションは)窓を開けられなくて密閉性が強いことが多いと思います」「洗濯物は外に干せませんよね」と話し、大月氏にやんわりと否定されると「でも、しょせん部屋干しになってしまいますよね」と反論する。大月氏は、これに対しても「外で洗濯物を干すことを嫌がる人も増えています」と答えている。
浅見先生、タワーマンションだけでなく普通のマンションでも、最近は24時間換気です。洗濯は部屋干しが当たり前です。ご家族の方に聞いてみてください。超高層から靴下やハンカチ、下着が落下しても下にいる人に怪我をさせることはないでしょうが、ものによっては凶器になります。忙しい主婦(主夫)は浴室乾燥機か、部屋干しにしてエアコンで乾かすのです。先生も家事労働をされたほうがいいですよ。
その点、さすが大月氏。「2005年ぐらいに、東京では再び超高層がどんどん増えてきたので、私はその時点で建設されていた都内のタワーマンションのほぼすべてを見に行き、いくつかインタビューをしました」と語っている。齊藤氏もそうだが、座学だけではないフィールドワークを通じて習得した知見・知識による言葉・文章には重みがある。
この他の章はしっかり読み込んでいないが、総勢15名の先生方の共著であるため、全体としてマクロデータの紹介、論文の引用が多く、296ページのうち少なくとも2割は論旨が同じなのが気になる。タワーマンションをわが国の都市計画、住宅政策、居住性能、基本性能・設備仕様など多面的な視点で論じてほしかった。
最後に、日大大学経済学部教授・安藤至大氏が担当された巻頭の章「タワーマンションはコンパクトシティの実現に寄与するのか? 」について一言。
安藤氏といえば、2012年に行われた国交省の第2回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」で、マンション管理業をプリンターのリース料を安くして、トナーなどの維持管理費で儲けるのと似ていると〝不適発言〟を行い、発言を取り消したことがあり、また、マンション管理業協会などの第三管理の導入には慎重を期すべきという趣旨の「意見書」に対して、「私の授業なら『不可』にする」などと語り。マンションの合意形成に欠かせない理事会・自治会のコミュニティ活動を徹底して批判した方だ。
その方が、どのような持論を披瀝するのだろうと期待したのだが、全16ページの大半は国土交通省などのオープンデータの紹介や、学者先生の論文の引用だ。コンパクトシティの実現に向けた取り組みとしては、マンションの総会の議決にボルダールなどを活用すべきとか、第三者管理の活用を検討すべきなどとしているが、その処方箋は示されていない。小生も第三者管理に反対ではないが、その費用をどうしてねん出するか。現状を考えると絶望的にならざるを得ない。
その一方で、安藤氏は「タワーマンションを扱った経済学研究は非常に少ないと認識している」と述べているが、ならば、安藤氏こそがあいまいなタワーマンションの定義をきちんと整理され、その研究の旗振り役になるべきではないかと思う。
また、論文全体の文末は「効果があるだろう」「推進されるだろう」「必要だろう」「期待される」「考えられる」「あるだろう」「ためらう向きも多い」「いえるだろう」「したい」「面もある」「思われる」「報告されている」などのオンパレードで、歯切れが悪い。小生はいささか拍子抜けした。
マンションコミュニティを否定するのか 国交省マンション管理検討会(2015/4/4)
「HARUMI FLAG」で美しい花を咲かせたい 光井純氏 建築美を語る
「HARUMI FLAG」全景★
光井氏(「HARUMI FLAG」タワー棟デビューメディア発表会)★
~かつて「パークシティ浜田山」で美しい花を咲かせたように~
「HARUMI FLAG」のマスターアーキテクトとして街全体のデザインを統括する光井純氏(光井純&アソシエーツ建築設計事務所 代表取締役)に2023年1月19日、オンラインによる取材の僥倖に恵まれた。テーマは光井氏がデザインするマンションはなぜ美しいか。光井氏は出張先の故郷・岩国から、1時間にわたって建築物と人、街、自然、美とは何かについて語った。( )は記者 写真提供は★が電通PRコンサルティング、☆が光井純&アソシエーツ建築設計事務所(JMA)
光井氏は1978年、東京大学工学部建築学科を卒業後、岡田新一設計事務所で4年間勤務したのち渡米し、イェール大学大学院で建築学を学び、シーザー・ペリ&アソシエーツ(現ペリ クラーク&パートナーズ)勤務を経て1992年に帰国。シーザー・ペリ&アソシエーツ ジャパン(同)と光井純&アソシエーツ建築設計事務所を設立。国内外の様々なプロジェクトに関わっている。
NTT新宿本社ビル、シーホークホテル&リゾート、九州大学新キャンパス、日本橋三井タワー、あべのハルカスなどの施設のほか、パークコート恵比寿ヒルトップレジデンス、青山パークタワー、幕張パークタワー、オーバルコート大崎、芝浦アイランド、パークシティ浜田山、Brillia L-Sio 萩山など数多くの首都圏を代表するマンションを手掛けている。BCS賞、グッドデザイン賞などの受賞も多数。
メインストリート★
晴海ふ頭公園から(完成予想図)★
九州大学 ウエスト1号館(理学系総合研究棟)☆
NHK大阪放送会館・大阪歴史博物館☆
東京国際空港(羽田)第3旅客ターミナルビル☆
あべのハルカス☆
日本橋三井タワー、日本橋室町三井タワー☆
◇ ◆ ◇
-先生、わたしが2013年以降に書いた記事から「光井純」のワードで検索すると35本ヒットします。これまでマンションは何棟手掛けられたのでしょうか。
光井 進行中のプロジェクトもあるので概算にはなりますが、70棟以上だと思います。そのうち中国、台湾、シンガポールなどの東南アジアを除けば、国内では60棟以上だと思います。
日本に戻って最初に行った仕事はシーホークホテル&リゾートとNTT新宿本社ビルです。そして、縁あって三井不動産の「パークハイム氷川台西」(1997年)のマンションを手伝ったのが、集合住宅としては最初の仕事です。
それから「オーバルコート五反田」(2001年、「オーバルコート大崎」との複合)のデザインコンペがあるというので、応募して競り勝ったのがきっかけで、三井不動産さんとの関係が深まりました。当時、五反田開発を担当されていた現会長の岩沙さん(弘道氏)にデザインを気に入っていただき、意気投合しました。
時代を経るごとに深みを増す建築デザインの在り方と、低層部を張り出すことによってつくられるヒューマンスケールのデザインは、これからの街づくりにとても大事だとする岩沙さんの考え方は、わたしがアメリカで学んだ考え方と一致しました。
それは現在の三井不動産グループの住宅とオフィスなどの複合開発、ミクストユースの街づくりにも基本理念として継承されています。
その意味で「五反田」開発は、その出発点をつくった大事なプロジェクトでした。
-先ほども話しましたが、この10年間のわたしの「こだわり記事」をワードで検索すると、100件ある「隈研吾」は特別として、「光井純」は「安藤忠雄」「青木茂」とほぼ同じの35件です。
そのうち三井不動産関連ですと「SKYZ」に始まり「大崎」「武蔵小杉」「BAYZ」「渋谷大山町」「中央港」「晴海」「幕張」「武蔵小山」「柏の葉」「HARUMI」「白金」「六本木(ホテル)」「豊洲(複合施設)」などです。2013年以前だと「芝浦」「恵比寿」「青山」「浜田山」などが印象に残っています。(このほか、東京建物の「萩山」「聖蹟桜ヶ丘」、フージャースコーポレーションの「府中」「つくば」、オープンハウスの「青山」、伊藤忠都市開発の「松陰神社前」、大和ハウス工業の「有明」、東急不動産の「あざみ野」、総合地所の「名古屋」、相鉄・東急の「横浜」などがあり、モリモトの物件もいくつかあるのに注目)
これが肝心なのですが、「光井純」の次は「吉永小百合」の32件です。わたしもこれには驚いたのですが、つまり先生と吉永小百合さんは美しいということで一致すると。先生のデザインはなぜ美しいのか、人に優しいのか。これが今回の大きなテーマです。
ブランズシティあざみ野(写真提供:東急不動産)
デュオ府中駅前(写真提供:フージャースコーポレーション)
光井 (しばし破顔されたあと)吉永さんと一緒? 大変恐縮でございます。わたしの建築は、アメリカで学んだヨーロッパの古典的建築の考え方に大きな影響を受けています。三層構成、シンメトリー、パラディアンコンポジション、ヒューマンスケール、黄金率などです。クラック音楽を学ぶのと同じ側面があるかもしれません。古典をまず学び、それからモダンにつなげていくことが大事です。
ゴーギャンやピカソなどの絵画も学びました。人の肌を描くとき、光が当たっているところは肌色などを使いますが、陰の部分は緑などを使います。色彩の基礎はとても大事だと思います。(光井氏はかなり専門的なことを話されたのだが、これは省略する。何事も基礎が大事だということだ)
-先生、わたしも油絵を描きますのでよく分かります。(ルノワールは肌を描くとき青を使ったと読んだことがある。記者は陰に黒を使って汚い絵をたくさん描いてきた)
光井 主題の絵に暖色を使う場合、陰に黒を使のではなく、補色を使うときりっと締まる。建築も同じで絵画や古典建築のルールを活用しているところはあるかもしれません。
-わたしは建築物を見るときまず注目するのはデザイン(狭義の意匠ではない)で、そのデザインは美しいか、美しくないかです。それと同時に考えるのが機能美です。丹下健三先生は「機能的なものが美しいのではない。美しきもののみ機能的である」と語りました。先生、この考え方はどうでしょう。(これは永遠のテーマ。数十年考えているが、解は見いだせていない)
光井 丹下先生は巨匠ですので、私も学生時代は「形態は機能に従う」など巨匠の考えを学びました。美しいものは機能的であると。自然界では人間も動植物も何百万年の進化の歴史の中で理想的な形になってきました。しかしながら、人間の作為的なデザインは、自然が積み重ねてきた進化の時間に追いついていないのではないかと思うこともあります。ですから、そう簡単に「美しいものは機能的」とはおこがましくて言えない。
また、わたしは「モノ」として建築を見過ぎてしまうと人が不在となってしまうのではないかという反省がずっとあり、常に人を中心に据えながら建築デザインを考えています。
その場所にいる人の暮らしに思いを馳せて、どんな暮らしをするんだろう、どんな故郷になるんだろうと。そこには川があり山があり、海や森もある。建築デザインはその場所にあったものにならなければならない。
美しく機能的ということで「場所」や「人」から逸脱してしまい、建築だけの普遍的なあるいは自律的な価値を探求し過ぎることによって、近代・現代建築の理論は、建築デザインの中核を成す「人」や「場所性」を置き去りにしてきたのではないかと不安に思っています。
ですから、わたしは街の中で建築物は「人」や「場所」に対してどんな役割を持っているか常に考えデザインすることにしています。人が建物の中にあって美しいと感じるデザインが重要です。どんな人が暮らしていて、どんな子どもが生まれて、どんな生活をするんだろうと思うことが、ご指摘された「優しい」建物に繋がっていると思います。
-ちょっと横道にそれますが、小林秀雄は「美しい『花』がある、『花』の美しさといふ様なものはない」といいました。これは言葉が独り歩きし、いろいろ解釈があるのでしょうが、わたしは「花が美しいのではない、花を美しく感じる心が肝心」と解釈しているのですが、いかがでしょうか。先ほど先生が仰った人が肝心、次代に継承する自然を大事にしないといけないということに繋がるような気がするのですが…。(「花」は世阿弥の世界観を小林秀雄が論じたもの)
光井 私もそう思います。人間も、数十億年の自然との関係の中で進化してきました。その進化の過程で生物としての形や仕組みも変化してきました。しかしながら常に自然の中で育まれ、生物としての感性は遺伝子の中に組み込まれて綿々とつながっています。花や山、森を我々が見たときには、その背後にある自然の均衡を、直感的に美しいと感じている。
だから花の美しさを感じる心は、実はわれわれの体の中にある自然そのものだということです。(なるほど。光井氏のデザインを「美しい」「優しい」と感じるのは、光井氏が人を中心に据え、いつも自然や街との関連性を重視するヒューマンスケールを追求しているからだと得心した)
-先生はこの前(1月10日)も「近景・中景・遠景」から建物がどう見えるかが大事だと仰いました。わたしは先生の作品は遠景からでもすぐ分かります。その象徴的なマンションが「青山パークタワー」(2003年)だと思っています。あの建物は「青山」だからすっきりと街に馴染んでいるのではないかと。(三井不動産のプレスリリースには「ランドスケープデザインは『青山に森を創る』をテーマに、敷地の2/3以上の約5,000㎡を緑地とし、その中に高さ19m・樹齢200余年のケヤキをシンボルツリーとして、また10,000本の樹木・草花を植樹しました」とある)
青山パークタワー☆
光井 そうですね。アメリカの街のシルエット、例えばマンハッタンを見ると、ロックフェラーセンターとかエンパイヤステートビルが核となって大きな山形のシルエットを作っています。マンハッタンという都市全体が、人々の活動や暮らしを包み込みながら、息づく山のような風景を、何百年にもわたる街づくりの試行錯誤の中でつくりあげている。
青山で言えば、渋谷は谷にあり、「青山パークタワー」は丘の上に建っています。丘の上に建つ建物は、周りの建物・風景の中心として象徴となる。建築家は、遠景から風景の中での建物の役割を見つけて、その役割にふさわしいデザインに到達しなくてはなりません。(そんなマンションはどれだけあるか。100のうち10あるかどうかではないか)
-先生のこれまでのマンションで、衝撃を受けたのは「パークコート恵比寿ヒルトップレジデンス」(2000年)でした。「芝浦アイランド」(2007年)にも驚きましたが、もっとも好きなのは「パークシティ大崎」(2015年)です。あの工場街のイメージを一新された。
光井 大崎地区のデザインでは、古典建築が持っている構成要素の基本をベースにしながら、ヒューマンスケール、リズム、分節、コーナー、スカイライン、陰影、ディテールなどの手法に基づいて丁寧に一つひとつデザインを進めました。
-先生、話の腰を折って申し訳ありません。いま、陰翳観を話されました。あのとき(1月10日)、実は午前中に東急不動産さんの「千代田富士見」の記者発表会がありまして、デザイン監修を担当されている隈研吾さんが谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を持ち出して、デザインに陰翳を盛り込んだという趣旨の話をされました。わたしなどは「陰翳礼讃」はやたらとトイレ・厠の話が出てくるので〝なんだ、これは〟と思ってしまうのですが、建築家にとって「陰翳礼讃」はバイブルなのですか。
光井 陰翳は建物の表情をつくる上でとても大事です。建築物は太陽の位置や、大気の状態によって刻々と表情を変えるので、陰翳を考えながらデザインをすることはとても有効です。一方で壁面に張り出しなどをつくると、陰影を生み出すだけでなく、雨が降ったときには水が切れて汚れないという効果があります。庇をうまく作ることで影が生まれる。日陰や木漏れ日があったりすると人間はほっとします。機能的にも省エネに貢献します。
-大変失礼な質問です。これまでデザインされた建物の中で、これはまずかったなどというものはないのでしょうか。
光井 どの花が美しいかと同じ論理で、花はがけ地、水辺、森の中とか、それぞれの場所の制約の中で一生懸命咲いています。それぞれが美しく、どれが一番だと比べることはできません。建物も同様に、敷地の特性、気候、場所の文化や歴史などをしっかりと研究しながら建築家が様々な思考を巡らせ時間をかけて取り組んだら、それぞれの場所でその場所でしか咲かない美しい花になれるのだと思います。(これまた含蓄のある言葉だ。デベロッパーや建築家は考えないといけない)
-住宅都市についてです。わたしはこの前の先生のお話を聞きながら、デザインコードに沿った街づくりとして「幕張ベイタウン パティオス」とUR都市機構が整備した「ベリコリーヌ南大沢」などと比べました。いずれも素晴らしいと思っているのですが、「HARUMI」はちょっと違う、これまでにないものになるのではないかと想像しました。
光井 当初、「HARUMI」のタワー棟は、西の運河に寄って計画されていました。これに対して、私はこの広大な敷地を選手村として一体的に開発・利用するというチャンスは今後ないだろうから、レガシーとして残るようにできないかを考え、タワー棟を街の中心軸に据え、シンメトリーを提案して実現しました。
仮に一般的な都市開発として都があの土地を売却したとすれば、分割され、ばらばらに開発されていたかもしれません。選手村として使われるという運命が「HARUMI FLAG」を実現させた。このような街は今後出てくる可能性は極めて少ないと思います。
-「HARUMI」で注目しているのは、駐車場、電柱が地下化され、先生も強調された「地上は緑で覆われている」という点です。いまそのような街はあるか考えたのですが、「広尾ガーデンヒルズ」は緑に覆われてはいるが、駐車場、電柱は地上です。先生の作品で緑が多いのは「パークシティ浜田山」(2010年)ではないかと思いますが、いかがでしょうか。(質問した時点で「浜田山」が地下駐車場、電柱地下化されていることを失念していた)
パークシティ浜田山☆
パークシティ浜田山☆
パークシティ浜田山☆
パークシティ浜田山☆
パークシティ浜田山☆
光井 「浜田山」は力を尽くしたマンションで、駐車場、電柱は地下化され、地上は緑で覆われています。理想的な街づくりができたと思っています。あのような開発のプロトタイプとして挙げられる例は、バンクーバー、サンフランシスコ、ポートランドなどの街でしょうか。
世界の優れた街の開発では、基本的には駐車場などは地下に潜らせて、地上は人の空間にするということが当たり前になっているのです。「HARUMI」も駐車場と電柱を地下化したのは都やデベロッパーの素晴らしい決断でした。諸外国のどこの街にも負けないものをつくろうとしたということです。そういった点からも「HARUMI」も「浜田山」と同じように素晴らしい街になるでしょう。
-最後の質問です。今後、どのような仕事、街づくりをしたいかについてです。
光井 子どもたちの故郷になって、親から子へバトンタッチできるような街、ずっと住み続けたくなるマンションを作りたいですね。
-先生、いまそんなマンションはありません。(もともとが狭いし)世帯分離によって子どもはどんどん去っていく。
光井 これからは変わると思います。「浜田山」「HARUMI」もそうですが、〝他にはない〟〝ずっと住み続けたい〟と思える未来の世代のために良質な住環境を残していきたい。その場所にしかない、美しい花を咲かせたい。
(光井氏はインタビューの冒頭、「わたしはいま故郷・岩国にいます。前日は東京の本社、その前は広島です。どうしたら地方の街おこし、再生によって元気な街を作れるか、毎日のように考えています」と語った…「毎日考える」ぐさりと胸を衝かれた。先生ですら毎日考える、われわれは怠惰な毎日を過ごしていいのか…)
光井氏★
◇ ◆ ◇
以上、約1時間のインタビューの要約だ。本当は全文を紹介したかったのだが、余裕がない。光井氏は同社のホームページで次のように述べている。こちらも参照していただきたい。
建築を「モノ」としてではなく、文化の一部、そして、優れた街並みの一部となって街と共に成長する、あたかも生き物のように捉えてデザインすることである。この考え方を受け継いで、敷地をとりまく自然環境、街並み、文化、歴史、そして建物に関わる人々、その他多くの設計条件に対して、的確なレスポンス[応答]を行いながら設計を進めていくことを大切にしている。
◇ ◆ ◇
「『パークシティ浜田山』と同じような素敵な街になる」と光井氏が話した「浜田山」は2007年11月8日付の記事で次のように書いた。
「建物外観は光井純氏が総合監修を担当。屋上緑化、地下駐車場、免震構法の採用のほか、スラブ厚280~300ミリ、リビング天井高2600ミリ、床、建具・面材は全て天然石、タイル、突き板仕様で、トータルとしてのグレードが極めて高いのが特徴だ。
高級マンションとしては、広尾ガーデンヒルズが連想されるし、同社の億ションなら『麻布霞町パークマンション』があるが、記者は、立地・コンセプトの違いはあるにせよ、ほぼ同等の価値があると思う。ランドスケープデザインが特に優れている。同社の記念碑的なマンションになるのは間違いない」
本当にそうなのか。いまどうなっているか確認しようと、インタビューの翌日1月20日に現地を見学した。
「浜田山」の全体敷地は約25,000坪。従前は三井グループの運動場として利用されていた。記者はRBA野球大会の取材で何度か訪れている。
1998年だった。勝てば東京ドームという三井不動産V.S.三井不動産販売(現三井不動産リアルティ)の準決勝戦が行われた。三井不リードの最終回、一打逆転の場面で三井不・志村亮投手が三井不販の主砲・江川尚志氏を三振に斬って取った場面が忘れられない。江夏の9球ではなく7球くらいだったと思うが、江川氏ファウルを打つなど粘ったが、最後は空振り三振。「志村さんは本気で投げてきた。最後は球が消えた」と話した。勝った三井不は優勝した。
当時も運動場は緑に覆われていたが、この日見た「浜田山」は成長途上だった。既存樹の巨木はたくさん残されていた。低・中層住宅地であり、街路樹や敷地内の樹木は冬季の日照を確保する目的もあるのだろう。常緑樹は少なく、高木はケヤキ、サクラ、コブシなどの落葉樹が主体だったが、春から秋にかけては緑にあふれ、四季折々の花が咲き、紅葉を楽しませてくれることはすぐわかった。
「HARUMI」が完成すれば素晴らしい街になるだろう。「浜田山」で美しい花が咲いたように、「HARUMI FLAG」にもその場所でしか咲かない美しい花が咲くことを期待している。
「浜田山」の外周の既存樹のケヤキ(従前は2段植栽によって内と外は閉ざされていた)
駐車場が地下化されていることが分かる(記者は車に乗らないが、この価値は計り知れないと思う)
エントランスの植栽は3段(こんなマンションはそうない)
もう絶句!(モンドリアンの絵画を見るよう)
シンメトリーのデザイン例(右の写真の下部は水盤。景色が映り込む)
隣接の「三井の森公園」
「HARUMI FLAG」最終章のタワー棟分譲へ 光井純氏「街」について語る(2023/1/12)
街の価値を評価したい 三井不レジ他「パークシティ大崎 ザ タワー」(2013/11/27)
感動的なマンション 三井不動産レジデンシャル「浜田山」(2007/11/8)
都の民設公園第1号「萩山 四季の森公園」開園祭り(2009/10/5)
「推し活・オタ活」は何だ 「タイパ」は異議あり アットホーム Z世代アンケート
アットホームは1月26日、現在賃貸物件で一人暮らしをしているZ世代(17~26歳)400名(男性126名、女性272名)を対象にライフスタイルや価値観、求める住まいに関する調査結果をまとめ発表した。
①価値観について5段階で聞いたところ、「タイムパフォーマンス(タイパ)や効率性は重要だ」「流行のものよりも自分がいいと思ったものを優先したい」「ものを買う時、コスパ(質に対する価格の安さ)を重視する」について約7割が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答。「環境に配慮した取り組みをしている企業やサービス、ブランドに好感を持つ」は49.8%、「口コミを重視する」は60.8%だった。
②情報を収集する際に利用するものについては、「GoogleやYahoo!などの検索サイト」(84.3%)が1位で、「Twitter」(66.5%)、「You Tube」(64.5%)、「Instagram」(63.8%)と続き、最も信頼するものは「GoogleやYahoo!などの検索サイト」(70.9%)が圧倒的多数で、「Instagram」は15.2%だった。
③家電などの機器については、「テレビ持っていない」(20.8%)、「掃除機持っていない」(26.3%)、「トースター持っていない」(54.0%)、「電気ケトル持っている」(68.8%)などと回答。
④休日の家での過ごし方については、「動画配信サービスで動画を見る」(72.3%)「SNSを見る・投稿する」(69.3%)が上位となり、以下、「テレビを観る」(47.3%)「音楽を聴く」(46.3%)「家事」(38.3%)「ゲーム」(34.8%)「寝だめ」(27.3%)「オンラインショッピング」(25.0%)「勉強する」(23.8%)「読書」(21.0%の順。
⑤「推し活・オタ活」については、「推し活・オタ活をしている」は49.8%で、そのうち約4割が部屋の中に「推し」に関するスペースを持っており、そのスペースは半数近くが4㎡以上と回答した。
⑥住まいの価値観については、「隣人とはできるだけ顔を合わせたくない」(81.3%)、「ライフステージに応じて違った場所に住みたい」(64.3%)、「浴槽は必要ない」(22.5%)、「インテリアは多少お金をかけてもこだわりたい」(44.5%)と回答した。
⑦重視する住まいの条件は、「通勤・通学に便利」が51.5%でトップとなり、以下、「間取り・広さ」(48.3%)、「スーパーマーケットが近い」(43.8%)「最寄駅から近い」(37.5%)「治安が良い」(35.8%)「セキュリティ」(33.8%)などと続き、「日当たり」は32.3%、「築年数」は29.3%となっている。
⑧重視する住まいの設備は、「独立洗面台」(37.5%)「モニタ付インターホン」(33.8%)「インターネット無料」(33.0%)「2口以上コンロ」(27.3%)「オートロック」(24.3%)「宅配ボックス」(21.8%)「温水洗浄便座」(19.3%)などと続く。
⑨不動産会社に求めることでは、知らない番号から電話がかかってきた場合、「すぐに出る」と答えた人はわずか1割で、半数以上は「すぐには出ずに番号を調べてからかけなおす」と回答した。
◇ ◆ ◇
以上は同社のプレス・リリースをコピペしたものだ。記者は普段、アンケート調査はみない。回答を誘導する質問項目が潜り込んでいたりするからだ。
しかし、アットホームは思いもよらぬアンケートを実施するので、テーマにもよるがチェックすることにしている。今回のZ世代のライフスタイル、価値観に関する調査は非常に面白い。懇個のマンションの商品企画や接遇、営業活動に参考になる。関係者はしっかり読むことをお勧めしたい。
Z世代の3~4倍も生きているスマホすら満足に扱えない記者にとっては、驚愕の回答だ。
「Twitter」「Instagram」は利用したことがないし、「You Tube」は仕事などで求められるときしか利用しない。「推し活・オタ活」は初めて聞く言葉だ。早速、Z世代が重視する「検索サイト」で調べた。それでもよく分からない。そのスペースが4㎡以上ということは1.2畳大以上だ。23区のマンション坪単価は350万円以上するから420万円以上だ。もう理解不能。
テレビや掃除機を持っていないというのにも驚いた。新聞も読まないのだろうか。小生は独身のころ新聞は数紙購読していた(西鉄の記事が読みたくて「西スポ」を3日遅れで読んでいた)。掃除機はなかったが、雑巾とバケツを持っていた。たまには掃除もした。
「浴槽はいらない」というのは同感だ。小生は風呂が嫌いだからだ。シャワー室があれば十分。これからの単身者向けマンションは浴槽なしでも売れるとみている。
〝時は金なり〟-「タイムパフォーマンス(タイパ)」(タイパも初めて聞く言葉)はとても重要だとは思うが、「Google」「Yahoo!」「Twitter」「You Tube」「Instagram」などに費やす時間は無駄で、害をもたらすこともある-といったら袋叩きにあうのだろう。先日も痛ましい事件があった。Z世代の皆さんには、とにかく本(世界の名作)をたくさん読んでほしい。美しい生き方を教えてくれるのは書籍だと思う。
住まいで重視することで、「日当たり」は32.3%というのは納得できる。小生は北向き3畳間に間借りしたことがあるが、隣の住宅の屋根に鏡を置いて、日照を取り込んだことがある。あと10年もすれば太陽光追尾システムが安価で利用できるようになり、北向き住戸は値付けの際のマイナス要因にならない時代がやってくるはずだ。
〝唯一無二 都内最大〟三井不・日鉄興和不「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」着工
「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」
三井不動産、日鉄興和不動産、ヤマト運輸は1月26日、都内最大級の物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」を着工したのに伴う記者説明会を開催し、三井不動産取締役専務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏、日鉄興和不動産代表取締役副社長・企業不動産開発本部長・吉澤恵一氏、ヤマト運輸常務執行役員(東京地域統括兼EC業統括)・阿部珠樹氏、板橋区長・坂本健氏が出席して、同日、板橋区と「災害時における防災施設整備等に関する4社基本合意書」を締結したと発表した。
施設は、日鉄興和不動産が2021年6月に日本製鉄の工場跡地を取得後、板橋区との行政協議を重ね、その後、三井不動産が参画、街づくり型物流施設として整備するもの。都営三田線西台駅から徒歩約10分、板橋区舟渡4丁目に位置する敷地面積約93,200㎡、地上6階建てS造延べ床面積約256,100㎡。設計は日鉄エンジニアリング、施工は日鉄エンジニアリング・佐藤工業。竣工予定は2024年9月末。
周辺5km圏内には約106万人が居住しており、雇用確保に有利な立地であるうえ、首都高速5号池袋線「中台」出入口までは約2.7㎞とアクセスに優れ、延床面積は都内最大。建物は免震構造、72時間対応の非常用発電機などのBCP対策、オフィスビル同等のセキュリティ対策、ドローンドローン事業者向け賃貸用R&D区画、ZEB認証など、業界トップレベルの施設スペックを整備する。
板橋区との「災害時等における防災施設整備等に関する4者基本合意書」では、河川氾濫時における水害に強い安心・安全な街づくりの実現を目指し、施設に隣接する「板橋区立・舟渡水辺公園」と一体となる約3万㎡の公開空地、水害時の緊急一時退避場所や避難路などを整備し、1,000人の緊急一時退避場所を確保する。テナントとして入居するヤマト運輸は、災害時の支援物資の保管・配送拠点として活用する。
説明会に出席した各氏は次のようにコメントした。
三井不動産・三木孝行氏 弊社は「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)」を旗艦ブランドとして物流施設を展開しており、昨年で10年の節目を迎えました。これまで、街づくり型物流施設として「MFLP 船橋」「MFIP(三井不動産インダストリアルパーク)羽田」などを開発してまいりました。本施設は次世代のフラッグシップとなる大型プロジェクトであり、関係各社とともに、ロジスティクスを通じて街づくりに貢献し、地域社会のより良い未来を切り開いてまいります。
日鉄興和不動産・吉澤恵一氏 弊社は、日本製鉄の工場周辺(東京都板橋区、大阪府堺市)における物流施設の開発を契機に、2018年より「LOGIFRONT」のブランド名で物流事業を展開し、これまで「LOGIFRONT 越谷」、「LOGIFRONT 尼崎」など首都圏、近畿圏を中心にテナント企業のニーズを踏まえた物流施設の開発を進めてきました。本計画では、板橋区さまの地域防災をはじめとしたニーズを踏まえた計画となっており、関係各社と連携のうえ実現に向けて取り組んでまいります。
ヤマト運輸・阿部珠樹氏 現在推進する中期経営計画「One ヤマト2023」では、成長を続けるEC市場や法人領域、保冷配送領域などのニーズに対応し続けるため「ネットワーク・オペレーション構造改革」に取り組んでいます。この構造改革の一環として、今回の「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」と、2022年7月に新設した都内の拠点を活用して、新たな保冷輸送ネットワークの構築を進めてまいります。
板橋区長・坂本健氏 区は「災害に強い首都『東京』形成ビジョン」のモデル地区に「舟渡・新河岸地区」を位置付け、水害に強いまちづくりに取り組んできました。本計画は、官民連携の取り組みにより、水害時に機能する施設をはじめとして、多くの地域貢献を実施する施設計画となっております。区の更なる安心・安全の実現に「板橋区立・舟渡水辺公園」との一体整備イメージ向けて、取り組んでまいります。
左から三木し、坂本氏、阿部氏、吉澤氏
ヘリポートを備えた公開空地
◇ ◆ ◇
三木専務の〝十八番〟がまたまた飛び出した。「一言でいうと唯一無二。都内最大級」「日本初、世界初」だと。
「唯一無二」は三木氏の専売特許ではないが、これまでも「当社は最早や後発ではない」「物流施設は嫌悪施設ではない」(2018年5月)などの名言を発している。
三木氏の発言を補強するかのように、報道陣の質問に答える形で吉澤氏は「街づくり型の施設にするには三井さんはベストパートナー」と、阿部氏は「『船橋』『羽田』を見学し、そのスペックの高さに感動した」とそれぞれ述べた。
記者は物流のことはよく分からないのだが、市場規模は不動産業の半分くらいの約24兆円と言われている。どうして〝後発〟の三井不・三木氏のような発言が飛び出すのか。同社が突出しているためなのか、それとも既存の物流業界が遅れているということなのか。不動産業も物流業も圧倒的に中小企業が多いことと関連はあるのか。
新河岸川から現地を望む(ここに施設と同等の基本性能・スペックを備えた〝パークホームズ〟を分譲したら飛ぶように売れるのではないか。坪270万円でどうか)
◇ ◆ ◇
板橋区の隣接区・北区は、漫画家・清野とおる氏を起用して「住めば、北区東京。」のポスターを発表して話題になったが、街づくりの取り組みでは記者は板橋区に軍配を上げる。2021年に策定した「板橋区住まいの未来ビジョン2025」では、「東京で一番住みたくなるまちとして評価されるまちを目指すため『ずっと住むなら、板橋区』を基本的な考え方」に街づくりを進めていくと宣言した。
坂本区長も出席されていたので、これは絶好のチャンスだと、話を聞いた。
坂本氏は、2022年4月から開始された国土交通省「マンション管理計画認定制度」で全国初の認定を受けた「高島平ハイツ」を早速取り上げ、「きちんと管理されているマンションが中古市場で適正に評価されるのが狙いで、『高島平』はそれまで1,700万円だったのが3,800万円に値上がりしている」と話し、令和3年4月1日に施行した「東京都板橋区都市づくり推進条例」については「従来は網にかからなかった大規模土地開発などを対象にし、緑環境など良好な景観を残すように取り組んでいく」と語った。
実は、記者は坂本区長とメールでやり取りしたことが一度ある。物件名などは明かせないが、あるマンションの敷地南側に区の所有地があり、そこに不法投棄された粗大ごみが集積・保管されていた。デベロッパーは区と話し合いを行っても解決できず、困り果てていた。ゴミ捨て場が目の前では売れないと。
そこで、記者は「調整区域でもあるまいし、街の真ん中にゴミ捨て場をつくるのはいかがなものか」と区長宛てにメールを送った。区長からは「善処します」との回答があった。その後どうなったか知らないが、デベロッパーから「改善されました」との報告を受けた。
このエピソードには続きがあって、ある住宅評論家は「マンションの敷地の前には公園がある」と書いていた。
「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏(2018/5/21)
全19戸にEV充電器付き駐車場 東急不「目黒諏訪山」完成 坪800万円強に納得
「ブランズ上目黒諏訪山」
東急不動産は1月26日、全19戸にEV充電器付き駐車場を設置した「ブランズ上目黒諏訪山」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を行った。アドレスは上目黒三丁目だが、「目黒諏訪山」にふさわしい最高レベルのマンションだと思った。
物件は、東京メトロ日比谷線・東急電鉄東横線中目黒駅から徒歩6分、目黒区上目黒三丁目の第一種低層住居専用地域に位置する地下1階・地上3階建て全19戸。専有面積は約127~188㎡、価格は3億円台~5億円台。坪単価は800万円強。建物は2022年11月に竣工済み。施工は淺沼組。設計・監理は坂倉建築研究所。
現地は、数億円以上しそうな戸建てや低層マンションなどが建ち並ぶ高級住宅街の一角。敷地は、植物家の邸宅などが建っていた敷地跡地。
1年半くらい前から販売しており、現在、残りは1戸で、価格は36,000万円(131.33㎡)。これまで契約済みの住戸の購入者は約4割が目黒区内、約7割が都内という。駐車場賃料は約4万円/月。全て申し込み済み。
地下1階の駐車場
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内覧会では、住戸の案内はなかったので設備仕様レベルは分からないが、ホームページからして、同社がかつて分譲した高額マンションブランド〝プレステージ〟並みだと判断した。
坪単価は高いような気がしないわけでもないが、外観デザインを見たとたん、価格に見合う価値があると判断した。設計・監理に坂倉建築研究所を起用していることからも、相当力を入れた物件であることがわかる。
EVについては、車のことはさっぱりわからないのでコメントのしようがない。数年先には当たり前になるのか…。
樹齢80年はありそうな敷地内のソメイヨシノ
住友不動産「羽田エアポートガーデン」 1月31日に全面開業 開業式典
開業式典会場(グランドホワイエ・ホールで)
住友不動産グループは1月25日、1月31日に全面開業する複合施設「羽田エアポートガーデン」の開業式典と商業エリア特別内覧会イベントを実施。数百名の関係者とともに、報道陣も同社にとって過去最多の約151名が参加した。施設は、昨年12月に先行開業していたホテルと、31日開業する約80店舗からなる商業施設やバスターミナルと合わせ全体が開業する。
式典の冒頭、住友不動産ホテル事業部長兼住友不動産ヴィラフォンテーヌ社長・桝井俊幸氏は「約3年開業を延期しておりましたが、関係者の皆様のご支援により昨年12月、『ヴィラフォンテーヌ羽田空港』のプレミアとガーデンのホテルを先行開業することができました。
そして今般1月31日に商業施設、バスターミナルなど全体開業を迎えます。羽田エアポートガーデンは、日本の玄関口・羽田空港第3ターミナルに直結する住友不動産グループの総力を結集して完成させた大規模複合施設です。日本の玄関口にふさわしい機能と世界に良質な暮らしを提供していきます。
また、街づくり推進計画に基づく羽田イノベーションシティや多摩川対岸のキングススカイフロントなどとの連携により地域社会の持続的な発展に寄与していきます。『ここは、新しい羽だ。』-このメッセージに私どもの決意を込めました。皆様のご期待に応えていきます」と挨拶した。
来賓代表として登壇した国土交通省航空局長・久保田雅晴氏は、「『羽田エアポートガーデン』は、2010年10月の『羽田空港跡地まちづくり推進計画』で示された、24時間国際空港にふさわしい宿泊機能を備えた街づくりを行うという方針に基づき、住友不動産グループによって進められたプロジェクトです。
この3年間、新型コロナの影響で空港事業は壊滅的な影響を受けました。大変ご苦労があったと思います。改めてご苦労に感謝いたすとともに、開業のお祝いを申し上げます。
羽田空港はわが国を代表する国内最大の玄関口として大きな役割を果たしており、『羽田エアポートガーデン』は多様なお客様の宿泊機能、国際交流機能、観光機能も有しています。今後、外国人や地方、地域の方々に満足いただける施設、サービスが提供されること確信しています。おもてなしの精神で高いサービスを提供されることを期待しています」と祝辞を述べた。
式典にはこのほか、国土交通省東京航空局局長・藤田礼子氏、国土交通省東京国際空港長・村田有氏、東京都大田区長・松原忠義氏、川崎市副市長・加藤順一氏なども出席した。
施設は、京急線・東京モノレール「羽田空港第3ターミナル」駅直結の敷地面積約43,000㎡、12階建て延床面積約91,500㎡。事業者は住友不動産100%子会社の羽田エアポート都市開発。敷地所有者は国で、期間50年の定期借地権付き。設計・施工は日建設計・西松建設。竣工は2020年3月。
関係者のフォトセッション
書道パフォーマー・岡西佑奈氏によるパフォーマンス
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この日(25日)、関係者には「一人4食を目安」に14の飲食店舗の試食が無料で提供された。食にはあまり関心がない記者ではあるが、一通り店舗を見て回った。1食数百円のラーメンから数千円もするハンバーグ店もあった。鰻丼は瞬く間に完売となり、4食を平らげた剛の者もいたとか。
小生は酒を飲ませてくれる店を探したのだが、1店もなかったので「五代目 花山うどん」で1,790円の定食「上州麦豚のかけ」を頂いた。うどんはわが故郷の「伊勢うどん」が一番おいしいと思っているのだが、この「花山うどん」は組子をふんだんにあしらった店舗デザインがいいし、出汁が美味しいうえ黒豆茶、黒七味が抜群だった。黒豆茶はお代わりをしたほどだ。
しかし、あとがいけなかった。うどんがタヌキそのものの容器に盛られていたので、文福茶釜だとは思ったが「上州・群馬とタヌキの関連ってあるんですか」と聞いてしまった。
「群馬県の舘林の茂林寺の伝説に文福茶釜がありまして…」
ギョッ。今は昔。記者が20代前半のころだ。永遠の愛を誓ったはずの彼女からある日だしぬけに、殺し文句の三下り半の、そして有無を言わせぬ決然とした「花を愛せる人になって」との一言でもって、鼻をかんだチリ紙のようにポイと捨てられた。彼女が舘林近くの出身であることが一挙に蘇った。店の由来などは聞かないことだ。
それにしても、今回開業する「どうとんぼり神座」「梅蘭」「茂助だんご」「獺祭」…店舗の暖簾や商品名などは外国人に読めるのかしらん。「うどん」「焼き鳥」は英語で何と訳すのか。「Japanese noodles」「Grilled chicken」で通じるのか。
「五代目 花山うどん」
「大江戸 フードホール」
「茂助だんご」(左)と「Bakery MIYABI」
スイート、温浴施設が素晴らしい 住友不「ヴィラフォンテーヌ羽田空港」(2022/12/21開業(2022/10/7)