積水ハウス 「住宅技能工」を「クラフター」に変更 人事・処遇も大幅改善
積水ハウスは5月29日、グループ会社・積水ハウス建設の2025年4月入社までの高校卒業予定者を中心とした「住宅技能工」採用計画を新たに取りまとめたと発表。2024年4月入社では、今期の2.4倍にあたる年間95名、2025年4月入社では3.4倍にあたる年間133名の採用を予定している。
新たに採用する人事制度では、「住宅技能工」の名称を改め、「ホープ」、「クラフター」、「チーフクラフター」、「マスタークラフター」の4つの職務等級に変更し、新評価制度による客観的評価を導入する。
処遇改善では、高卒新入社員の初任給を月収・年収ベースで11%引き上げを 2023年4月に実施。2024年4月の新人事制度導入により、チーフクラフター(※) の待遇を大幅に改善し、30代で現在年収500~600万円から、最大約1.8倍の約 900万円まで引き上げる。
働き方改革では、「4週8休」、「年間休日120日」、「完全週休2日」、「男性育休取得率100%」を引き続き実施する。
今回の採用計画に合わせ、現場でのイメージアップと社員の満足度向上を図るため、ビームスのユニフォームブランドに依頼し、ユニフォームの制作を行い、夏冬用、防寒服、空調服などの一式を2024年春から全国の「住宅技能工」が着用する予定。
新施策の導入について同社は「建設現場での職方の高齢化や若年就業者の減少の加速に加え、年間時間外労働の上限の制限が2024年4月1日から適用される『2024年問題』がある一方で、良質住宅のストック形成に向けた担い手の創出が強く求められている」ためとしている。
※令和4年賃金構造基本統計調査によると、建設躯体工事従事者で30~34歳の平均年収は420万円、35~39歳の平均年収は470万円
◇ ◆ ◇
結構な改革だと思う。「クラフト」は「玄人」を連想させるではないか。参考までに厚生労働省編の職業分類表小分類の職業を以下に紹介する。
裁判官、検察官、弁護士、弁理士、司法書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、宅建士、編集者、記者、著述家、グラフィックデザイナー、音楽家、俳優、医師、看護師、栄養士、保育士、小・中学校教員、企画・調査事務員、秘書、コールセンターオペレーター、集金人、レジ係、不動産仲介・売買人、介護支援専門員(ケアマネジャー)、家政婦(夫)、理容師、美容師、調理人、旅館・ホテルフロント係、接客社交係、芸者、ビル管理人、チラシ配布員、葬儀師、火葬係、トリマー、ブライダルコーディネーター、自衛官、警察官、海上保安官、稲作・畑作作業員、植木職、造園師、漁労作業員、金属プレス工、自動車整備・修理工、タクシー・ハイヤー運転手、型枠大工、とび工、解体工、鉄筋工、大工、左官、港湾荷役作業員、ビル・建物清掃員…
呼称は「官」「士」「工」「手」「員」「人」「係」「者」「家」のほか「コーディネーター」「オペレーター」など外来語もある。職業に貴賎なしと言われるが…なんやら侮蔑的な呼称もある。みんな「クラフター」にしたらどうか。
小生は、何の公的資格も必要ない(免許証もないので国家資格はひとつも持っていない)「記者(ライター)」を名乗っている。〝クラフトライター〟にしたら認知されるか。
コロナで減った住宅選好の幅 オーダー志向層を蚕食する〝建売り御三家〟
住宅・不動産企業の2023年3月期決算では過去最高の売上高、利益を計上する企業が続出し、株価は実に33年ぶりに最高値を更新した。新型コロナ感染症は、5月8日からインフルエンザ、淋病、梅毒と同じ「5類感染症」に移行し、マスクを外す人が増えているなど、街は明るさを取り戻しつつある(淋病、梅毒は死語かと思っていたら爆発的に増加しているという)。そんな中で、のどに魚の小骨が刺さったように気になるのは、住宅着工の持家が15か月連続して前年同月比で減少していることだ。復活するのか減り続けるのか、考えてみた。
◇ ◆ ◇
2022年の住宅着工総数は859,529戸で、構造別では木造が477,883戸(55.6%)、鉄骨鉄筋・鉄筋・鉄骨造が380,453戸(44.3%)。利用関係別では持家が253,287戸(29.5%)、貸家が345,080戸(40.1%)、分譲住宅が255,487戸(29.7%)。前年比では貸家が7.4%、分譲住宅が4.7%増加した一方で、持家は11.3%の2ケタ減少となり、16年ぶりに分譲住宅に抜かれた。ツーバイフォー工法による着工戸数は89,562戸(前年比5.1%減)、坪当たりの工事予定額は59.4万円(同増減なし)。プレハブ工法は106,680戸(同0.8%減)で、工事予定額は89.1万円(同3.8%増)となっている。
それぞれの木造戸数(比率)をみると、持家は221,324戸(87.4%)、貸家は112,260戸(32.5%)、分譲住宅が142,294戸(55.7%)となっている。
これを工事予定額(坪単価)でみると、全体では69.3万円で、前年の66.0万円から5.0%増加している。利用関係別の単価は、持家が69.3万円(前年比5.0%増)、貸家が75.9万円(同4.5%増)、分譲住宅が62.7万円(同増減なし)となっている。
分譲住宅を構造別・建て方別でみると、一戸建は52.8万円(同6.7%増)で、うち木造は49.5万円(同増減なし)、鉄骨造は92.4万円(同7.7%増)となっており、鉄筋コンクリート造共同住宅は89.1万円(同増減なし)だ。
分譲一戸建の単価を都道府県に見ると、もっとも高いのは島根県の59.4万円で、長野県、鳥取県、長崎県の56.1万円が続く。もっとも安いのは福島県の42.9万円で、他は46.2万円から52.8万円に収まっている。
◇ ◆ ◇
これらの数値を眺めるといろいろなことが分かってくる。
持家は前年比2ケタ減で、今年に入っても減少に歯止めがきかず3月まで15か月連続で減少となると、コロナ禍と関連づけざるを得ない。
分譲戸建て市場はコロナ禍で意想外に沸き立ち、いまはその反動で勢いは減速気味だが、新築マンションや中古住宅市場動向からも、持家志向に大きな変化が起きているとは考えづらい。
持家志向に変化はないものの、いまの経済社会状況を反映して住宅選好が多様化しているということは間違いない。持家か賃貸か、新築か中古か、マンションか一戸建てか、その選択の幅は広がっている-というよりは、富める者と貧しき者の格差が拡大し、二極化がどんどん進行しているとも読める。貧しき者はむしろ選択の余地が狭まっているのではないかと思わざるを得ない。
富める者はどうか。分譲事業が絶好調の三井不動産の2023年3月期のマンション計上戸数3,196戸の平均価格は7,373万円(前期比931万円増)で、分譲戸建て420戸の平均価格は8,308万円(同717万円増)だ。完成在庫は戸建てはゼロで、マンションの55戸のみ。積水ハウスの2023年1月期の戸建(請負)の売上棟数は7,842戸(前期比6.1%減)となったが、1棟単価は4,619万円(前期比8.3%増)、坪単価は111万円(同6.4%増)で、戸建事業売上高は前期とほぼ同じ3,524億円を維持した。
一方、全国491か所に営業拠点を置く〝分譲戸建ての雄〟飯田グループホールディングスはどうか。2023年3月期の売上高は1兆4,397億円(前期比3.8%増)で、主力の戸建分譲住宅の計上戸数は40,826戸(同1.7%減)、1戸当たり単価は土地価格を含めて2,967万円(同2.7%増)だ。計上戸数は住宅着工戸数に換算するとシェアは27.9%を占め、沖縄県の55.4%を筆頭に東北は44.8%、北関東は34.9%、東海は32.2%、首都圏は30.5%に達するなど独走している。
飯田グループの全国展開と関係があるかどうかは不明だが、分譲戸建ての単価がもっとも高い島根県には同社の営業所はなく、単価が次位の鳥取県と長崎県にはそれぞれ1か所、長野県は4か所だ。
このほか、売上高1兆円超を目指すオープンハウスの2022年9月期の建売住宅計上戸数は5,907戸で、ケイアイスター不動産の2023年3月期の戸建ての計上戸数は6,226棟(土地販売含む)だ。この3社だけで戸数は約5.3万戸、市場の約4割を占める。
前段で紹介したように、このところの用地の上昇、建築費・資材高で坪単価は全体で5.0%上昇しているにもかかわらず、分譲戸建てのみは前年と変わらない。圧倒的な市場占有率と価格競争力を持つ3社に対抗するには、アッパーミドル・富裕層にターゲットを絞るか、さらに価格を下げるほかなく、価格下げ圧力が強まっているからだと読める。記者は持家志向の相当数は価格が安い分譲戸建てに流れているのではないかと考えている。木造と鉄骨の単価差は倍近い。オーダーメイドかレディメイドか、選択できる人はどれだけいるのか。
◇ ◆ ◇
上記のように、あれやこれや消費者の価値観・住宅取得意向について考えていたら、カーディフ生命が昨年12月に実施した「第4回 生活価値観・住まいに関する意識調査」がネットでヒットした。全国2,000人を対象に経済・社会活動の回復と、円安や物価上昇による将来不安の高まりが混在する中での人々の意識、行動、価値観の変化に焦点を当てたものだ。
これによると、「老後資金が不安」は8割超で、主な理由として「年金額の減少」、「将来の物価上昇」、「医療費負担の増大」などを挙げている。
住みたい家は「戸建て(持ち家)」が6割で、希望購入価格は平均2,846万円となった。「都心派」は49%、「郊外派」は51%と拮抗している。30代と40代では「郊外派」がそれぞれ55%、57%と優勢で、30代は「安価で広い住宅を購入できるから」(37%)、40代は「時間に縛られず、のんびりした生活を送りたいから」(31%)が郊外を選ぶ最大の理由としている。
購入希望価格は飯田グループの分譲価格とほぼ一致する。これは偶然か。マンションなら土地代がただでも坪150万円以下はありえず、20坪で3,000万円だ。価格競争力のある〝建売り御三家〟はまだまだ伸びるということか。蚕食という言葉がぴったりだ。
「木の特性を分かりやすく伝える必要あり」市川会長 木住協が総会・懇親会
木住協の懇親パーティー(明治記念館で)
日本木造住宅産業協会(木住協)は5月25日、令和5年度定時総会を行い、令和4年度の事業報告・収支決算、役員の選任、令和5年度の事業計画などを審議し決議・承認した。
総会後、記者会見した市川晃会長(住友林業会長)は、「令和4年度の住宅市場は、新設住宅着工戸数は860,828戸(対前年比0.6%減)となり、特に持家においては248,132戸(同11.8%減)となり、厳しい環境が続いている。今年度予算で、住宅分野では『子どもエコすまい支援事業』『先進的窓リノベ事業』『給湯省エネ事業』により構成される『住宅省エネ2023キャンペーン』が順調に開始され、これが住宅業界への追い風となるよう期待している」と述べ、「今年度『こども家庭庁』が発足した。家族に見守られて子どもたちが健やかに育つ場が住宅であり、木育の観点も加味すれば、安心安全の質の高い住宅や住環境を木造で実現していくニーズがますます高まる。子どもの目線からも、住宅産業の果たすべき役割を再認識して臨みたいと考えている」と語った。
令和5年度事業では、各支部、地方自治体との連携を強化し、木材利用促進協定・災害協定など地域貢献活動を強化し、脱炭素・循環型社会の実現に向けた環境に優しい木材利用や木造建築の普及を図り、重点事項として①良質な住宅ストックの形成とリフォームの推進②木造住宅・建築物の普及促進③広報活動の推進④人材育成の推進⑤良質な資材の普及と木造化・木質化の推進などを推進する。
記者発表会後には、コロナ禍で中止していた懇親パーティーを開催、参加者は通常の約7割に絞ったが、会場は満席の約400名が参加した。
市川氏
◇ ◆ ◇
うっかりしてテープを取ることを忘れたので正確ではないが、市川会長は懇親会の冒頭、2023年1~3月の第一四半期の実質GDPが前期比年率+0.5%(前期比+0.1%)となり、インバウンドも増加していることなど直近の経済の動きに触れたあと、エンボディード・カーボン(建設時から運搬、維持管理など総体としてのCO2排出量)の取り組みが不十分とし、「昨日は、当社が施工した木造とRCのハイブリッド施設を見学したが、木造の部分は明らかに暖かく、子どもは床を飛び跳ねたり寝転んだりして遊んでいる。このような木の持つ特性と、ライフスタイル面でのCO2削減の取り組みを合わせ技として表すことはできないか」などと話した。
木造ファンの記者は〝表す〟を〝現し〟に置き換えて理解した。国土交通省は「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」のとりまとめを踏まえ、消費者が建築物の省エネ性能の知識を持っていなくとも、省エネ性能を★印で表示するガイドラインを近く示す予定だが、市川会長は木材・木造の人への効果も分かりやすく伝えるべきと話したのではないか。
〝東京の軽井沢〟レベル高い 「来年6月までに完売」あるか 大和ハウス「昭島」
「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」
大和ハウス工業は5月25日、JR昭島駅北口の大型複合タウン「東京・昭島 モリパーク」内で計画している3棟約850戸超のプロジェクト第一弾となる「プレミスト昭島 モリパークレジデンス」(481戸)マンションパビリオンをメディアに公開し、6月3日にモデルルームをオープンし、9月中旬から販売開始すると発表した。「モリパーク」内で初の住宅開発となる。
物件は、JR青梅線昭島駅から徒歩5分、 昭島市田中町字後小欠の第二種住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約18,215㎡、13階建て全481戸。専有面積は56.57~89.08 ㎡、価格は未定だか、3LDKで5,000万円台の予定。売主は同社(事業比率70%)と住友商事(同30%)。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2024年8月。
現地は、昭和飛行機都市開発が管理・運営する昭島駅北口エリア一体の約130haの総称「東京・昭島 モリパーク」内に立地。エリア内には大型スーパーマーケットや映画館、飲食店など120を超えるテナントが出店する大型複合商業施設「MORITOWN(モリタウン)」のほか、ボルダリングなどアウトドアを体験できる「アウトドアヴィレッジ」、リゾートホテル「フォレスト・イン 昭和館」、テニスセンター、ゴルフコース・練習場などの施設が揃う。
敷地は2020年、昭和飛行機都市開発から同社が取得したA・B・C敷地約32,000㎡のうちのA敷地。敷地南側はサクラ並木、東側は歩行者専用通路として国内最長の全長400m超のいちょう並木と接している。北側はテニス場。建物は3棟構成。
住戸内の一次エネルギー消費量を20%削減することで「ZEH-M Oriented」認証と、「いきもの共生事業所認証(ABINC 認証)」を取得する予定で、主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2450ミリ、ディスポーザー、食洗機、スロップシンク、浴室タオル掛け2か所など。トイレドアノブは壁面までセットバックさせる。共用施設には敷地内に防災拠点「ギャザリング パーク」を整備し、「人生を楽しむ共用施設」をコンセプトに、脱衣スペースやルーフバルコニーを含め約70㎡の広さの水風呂や外気浴もできる「プライベートサウナ」を最上階に設けるほか、「ランドリールーム」「プレイスタジオ」「パーティーパティオ」「ベジタブルガーデン」「ワークスペース」「ゲストルー ム」(3戸)「トランクルーム」(56区画)などを整える。
専有部は1LDK(56.57㎡)~5LDK(89.08 ㎡)の全66タイプを用意、約68㎡と約72㎡の3LDKが全体の約7割。68㎡の1スパン12戸には多様な利用が可能な「土間スペース」付きも販売する。
内覧会で同社東京本店統括マンション事業部東京マンション事業部販売事務所長・東本剛氏は「現段階で価格は3LDKで5,000万円台としか言えないが、衣と食が揃っている『モリパーク』に住機能を備えることで、街の発展に寄与したい。次期以降の販売もあるので、来年の6月までに完売したい」と話した。問い合わせ件数は約1,500件で、来場予約は約300件という。
同社はこのほかエリア内のB敷地で9階建て約100戸、C敷地で14階建て約270戸をそれぞれ分譲する予定で、トータルでは3棟約850戸超を建設・分譲する。工期は2023年1月~2028 年度の予定。総事業費は約400億円。
エントランス
いちょう並木
◇ ◆ ◇
記者は、相撲に例えれば東西の横綱クラスのこの「昭島」とNTT都市開発など5社JV「ウエリス八千代村上」(967戸)に注目している。規模(戸数)の多さ、東京駅まで約1時間、施工は長谷工コーポというのも同じだ。どちらが勝つか負けるか、それとも双方が早期完売するのか、共倒れになるのか。価格(単価)は他と比べれば安いものの、一次取得層にとってグロス価格は決して安くはない。
今回の「昭島」が建つ「モリパーク」は、2021年初に三井不動産レジデンシャル他「パークホームズ昭島中神」(313戸)のモデルルームを見学したとき見ており、素晴らしい住環境であるのは確認しているのだが、基本性能・設備仕様レベルなどが低かったらどうしようと思っていた。〝価格の安さが売り〟の記事など書きたくないからだ。
モデルルームを見学して、その懸念は雲散霧消した。基本性能・設備仕様については前段で書いた通りだ。価格は未定だが(記者は坪240万円と予想しているが、もっと高くなるか)、この単価水準でこれほどレベルが高いマンションはまずほかにないはずだ。細かいことだがトイレはタンクレス。最近はコスト圧縮のためタンク付きが復活、幅を利かしている。床暖房はLDKに隣り合う居室も標準装備だ。販売代理に長谷工アーベストが入っていないのは、土地は大和ハウス工業が取得し、長谷工コーポレーションの持ち込みではないということのようだ。設備仕様も長谷工仕様ではない。
ただ、東本氏の「来年6月までに完売したい」という言葉はにわかには信じがたい。最近の市場からすれば年間100~150戸販売がやっとではないか。これを上回るには中広域から集客することが必須要件で、街の魅力を伝えきれるか、物件の特徴を説明しきれるかどうかにかかっている。
街の魅力でいえば、昭和飛行機都市開発にも確認したが、エリア全体面積約130ha(皇居は115ha)というのは関東圏にはまず他にないはずで、近い機能を有するのは「軽井沢」ではないかということだった。いちょう並木は昭和55年に整備・オープンされたが、そのイチョウは昭和飛行機工業が創業した昭和12年に植えられた可能性が高く、樹齢にしたら100年近いのではないかと思われる。ホテルも立派だ。
これらの魅力を、やはり東京まで約1時間のわが街・多摩センター(坪単価250万円)と比較すると、「昭島」に軍配を上げざるを得ない。癪だが、東本さん、頑張れ!
サウナ
トイレ
タオル掛け
「土間スペース」
駅側から見たいちょう並木(左)とマンションギャラリー側からみたいちよう並木
リゾートホテル「フォレスト・イン 昭和館」
昭島駅北口(このケヤキの強剪定はありえない。通りがかったお年寄りの女性も「頭を伐ればいいってもんじゃない」と批判した)
全3棟850戸超の「(仮称)昭島プロジェクト」始動 大和ハウス(2023/5/10)
イメージキャラに「ちびまる子ちゃん」NTT都市など5社JV「八千代村上」(2023/1/14)
平均75㎡ レベル高いマリモ「昭和記念公園」4カ月で半分以上の90戸超成約済み(2021/1/13)
〝安さ〟売り「ザ・ビッグ」に近接 三井不レジ他「昭島中神」 収穫大の今年初の見学(2021/1/13)
23区内初の木造マンション「MOCXION四谷三丁目」完成 三井ホーム
「MOCXION四谷三丁目」
三井ホームは5月24日、23区内初の木造マンションブランド「MOCXION」の賃貸マンション「MOCXION四谷三丁目」が完成したのに伴うメディア向け見学会を行った。道路条件、法令上の制限など厳しい建設条件にありながら、木造枠組工法を採用することで敷地の可能性を最大限に引き出し、「ZEH-M Oriented」の認証を受けて環境問題に対応するとともに居住性、経済性にも寄与しているのが特徴。
物件は、地下鉄丸の内線四谷三丁目駅から徒歩7分、JR信濃町駅から徒歩8分、新宿区須賀町の第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率300%=道路・斜線・日影規制で実質183%)に位置する敷地面積約262㎡(80坪)、4階建て延べ床面積約593㎡(180坪)の全16戸。専用面積21.66~31.52㎡、賃料は10.4万~14.6万円。工期は2022年6月20日~2023年5月22日。賃貸管理会社は三井ホームエステート。設計・施工は三井ホーム。
敷地は南側と西側に接道。南側道路幅員は約4mしかないが、天空率を利用することで道路、斜線、日影規制などの規制緩和を受け、敷地の可能性を最大限に引き出した。木材の総利用量は154㎥。炭素貯蔵量にして108t‐CO2、スギの木(35年生)約433本に相当。
「ZEH-M Oriented」認定を取得、一次エネルギー消費量を26%削減、居住性と経済性に寄与。当社独自開発の太陽光発電パネル(9.8kWh)と蓄電池を(3.5kWh)設置している。
屋根材には、優れた断熱性能と高い構造体力を有する独自の屋根断熱構造材「ダブルシールドパネル(DSP)」を採用することで、最上階の居室天井高2600ミリ(標準階は2400ミリ)を確保し、床は鉄筋コンクリートと同等クラスの遮音性能を有する「高性能遮音床システムMute」を採用。施工にあたっては同社が開発したミニクレーンを使用することで、道路条件により大型クレーンでの施工が難しい問題を解決した。
4月13日から募集を開始しており、2戸に申し込みが入っているほか、1戸はモデルルームとして1~2年間利用する。賃料は平均16,500円/坪。ZEH-Mの認定を受け、木造のよさをアピールできているとして相場の1~2割高に設定している。向こう6か月までの100%入居を目指す。オーナーは木造の償却期間22年間と鉄筋の47年のどちらかの選択が可能。
「MOCXION四谷三丁目」(南側から写す)
玄関
◇ ◆ ◇
この物件については、構造見学会も取材しているので参照していただきたい。賃料は相場の1~2割高に設定しているのも理解できる。同社によると、建築コストは鉄筋と比較してそれほど競争力は高くないようだが、ZEHの認証を受け付加価値を高めていることなどから評価されるのではないか。
居室の仕上げはほとんど木調パネル。こんなことを言うと同社の小松さんから〝まだお前は現しの呪縛から解けていないのか〟と言われそうだが、やはり現しがいい。小松さん、木にはストレスを軽減し、免疫力を向上させ、知的生産力を高める効果などが確認されています。木をケミカル製品などて覆ったら、これらの効果はどれくらい減殺されるのか。今度お会いしたら聞いてみよう。
竣工時室内
威風堂々〝聖地〟神宮外苑野球場の巨木 事業者VS.イコモス 鳥や虫の視点で考えて
神宮外苑のいちょう並木
三井不動産など事業者4者は5月18日、「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」の環境影響評価書について日本イコモス国内委員会(ICOMOS/ International Council on Monuments and Sites)」(イコモス)から誤り・虚偽と指摘されていた全58項目に対する回答を、同日開催された令和5年第2回審議会総会で行ったと発表した。
全58項目のうち「指摘自体に事実と異なる内容が含まれるもの」が約半数、「考え方や解釈の違いに基づく指摘」が約半数であり、評価・予測内容としては正当なものであり、評価書には誤り・虚偽はないとし、今後も審議会総会および各関係機関への報告・協議をしながら、適切に本計画を進めていくとしている。
一方、イコモスは5月16日、「緊急要請」として、事業者の説明は「自然環境アセスメント技術マニュアル」に記載された科学的方法論を遵守しておられず、数多くの誤りと虚偽の内容を、事業者自らが立証されたものとし、東京都環境影響評価書としては著しくレベルの低いものであり、世界に誇る「環境都市・東京」の実現に向けて、再審を要請すると発表した。
「(事業者の)粗悪なデータの集積は誤った群落分類を招き、調査対象範囲植生の本質を大きく見誤る可能性をもたらすため十分注意を要する」「生態系のネットワークは、既存樹木の53%、1018本が伐採・移植されるため、破壊される。特に、建国記念文庫の森、及び絵画館前広場の樹林地における樹齢100年を超える多数の樹木の伐採・移植は、取り返しのつかない行為である」と指摘している。
また、イコモスは同日、中央大学研究開発機構グリーンインフラ研究室・石川幹子氏が作成した2023年調査の明治神宮外苑現存植生図を公表。植生図には、凡例として樹林帯の22項目のほか、例えば軟式野球場にはスダジイ、シラカシ、エノキ、ケヤキ、トチノキ、ヒマラヤスギ、トウカエデ、ウバメガシ、イチョウ、サクラなどの巨樹がどこに植わっているか詳細に記載されている。
軟式野球場
野球場のユリノキ
屋内練習場(手前のグラウンド内野は人工芝)
ヒマラヤスギ
建国記念文庫エリア
◇ ◆ ◇
記者は平成の時代に入ってから約30年間、RBA野球大会の取材のため〝草野球の聖地〟神宮外苑軟式野球場に通った。トータルすれば300~400日、試合数にしたら数千試合になるだろうか。
再開発計画では、野球場は広場とテニス場、駐車場に変更されることになっている。工事はずっと先だろうが、野球場の最期を見届けようと、イチョウ並木なども含めて約2時間かけて見て回った。
グランドに入ろうとしたら「ご利用者以外立入禁止」のスタンド看板が目に入った。以前にはなかったものだし、グラウンドを見て回るくらい何のお咎めもないだろうと、全6面のグラウンド(日の丸・ヒマラヤ・桜・ケヤキ・大銀杏・コブシ)の外周部の樹木を見て回った。(あとで野球場事務所に確認したら「一般の方が入り込み、キャッチボールなどをするケースが目につくようになったので10年くらい前から看板を設置するようになった」とのことだった)。
グラウンドの外周に植えられている巨木は、双方の論争などどこ吹く風、小生のように加齢による醜い外貌を晒しながらも、しっかりと根を張り若葉を茂らせ、イコモスが形容したように「威風堂々」と屹立していた。写真で示した通りだ。主だった高木だけでも100本以上あるはずだ。
4列配置の神宮外苑のシンボルでもあるいちょう並木も確認しようと向かう途中、小生と同年配と思われる杖を突いた男性と、男性を支えるように歩いていた女性に出会い、外苑の緑が伐採されることについてしばし話しあった。
男性の方は、小生より1歳年上(75)の同じ多摩市民で「わたしは青山高校の出身。外苑の緑がどうなるか心配で見に来た。イチョウはかなり弱っているものもある」と話した。女性の方は奥さんで「ひどいわね。小池さん(都知事)は何を考えているのかしら」と首を傾げた。
建国記念文庫エリアには工事用の囲いが設けられており、中に入ることはできなかった。計画ではエリア内の3,028本が伐採対象になっており、うち約9割は群生低木で、高木は23本とされている。
野球場の「ご利用者以外立入禁止」スタンド看板
御観兵榎(明治天皇がこのエノキの傍に居室を設けたとされる。現在は2代目とか)
御観兵榎近くのドクダミの群生
◇ ◆ ◇
イコモスの指摘と事業者の回答は膨大な量に及び、かなり専門的な文言もあるので、小生などの素人が読みこなすのは困難だが、以下、気掛かりなことを紹介する。
事業者の説明資料18ページには、審議会委員の「一部のみ樹木を残した神宮外苑広場北側の保全エリアで『再生・復元』することは不可能です。本数としての残置量ではなく、質としての劣化を予測する必要があります。質を高める措置がない限り、一方向的な劣化であり、『保全エリア』とは言えません。そのための措置はどのように考えており、どの程度の効果を予測されているのでしょうか。」という問いに対して、回答では「改変する神宮外苑広場(建国記念文庫)の樹林地については、ラグビー場棟の建設によって樹林面積が縮小するため質の劣化は免れませんが、現況と同様に階層構造を有する樹林や(この「や」は明らかに誤字)を保全するとともに、改変によって開けた部分には林縁植物を移植し、林内の湿潤環境を保全して生態系を維持する計画としており、影響は限定的と考えます」となっている。(赤字は小生)
委員は質の劣化を質しているのに対して、回答は「樹林面積が縮小するため質の劣化は免れません」と「質の劣化」を認めている。ここは「量の減少」ではないのか。また、「改変によって開けた部分には林縁植物を移植し、林内の湿潤環境を保全して生態系を維持する計画としており、影響は限定的」としているが、これは説明不足。「量は減少するが、質の劣化は限定的」とどうして言えないのか。
また、41ページにはイコモスの「事業者がサイトで発表している緑の割合は、現状が約25%、開発後が約30%となっており、開発後、緑が増えるような錯覚をもたらす図面となっている。しかし、航空写真を判読し、精査を行い、草野球のエリアも追加すると、現況は32%、開発後は27%となる」「事業者がサイトで発表しているオープンスペースの割合は、現状が約21%、開発後が約44%となっており、開発後、オープンスペースが増えるような錯覚をもたらす図面となっている。しかし、軟式野球場は、災害時に極めて重要な役割を果たすオープンスペースであり、また、現在の秩父宮ラグビー場前の広場も貴重なオープンスペースである。このことから見直しを行った結果、現況は41%、開発後は43%となり、ほぼ変わらないことが明らかとなった」との指摘について、事業者は次のように回答している。
「草野球のエリアも追加すると緑の割合が変化するとの指摘について、絵画館前は環境影響評価の範囲対象外ですが、現況の緑地における絵画館前の軟式野球場の緑については2018年の航空写真(google earth)を参照し、野球場の内野エリア等が土系舗装等であることを確認しております。『日本イコモス国内委員会』による算定では、土系舗装等の緑で被覆されていない部分も含んでいるため、現況の緑の割合に違いが生じておりますが、土系舗装等を含まない算定が正しいものと考えます」「オープンスペースの割合に絵画館前の軟式野球場や秩父宮ラグビー場前の広場を計上すべきとの指摘については、絵画館前は環境影響評価の範囲対象外ですが、公開空地とは東京都総合設計許可要綱においては、『計画建築物の敷地内の空地又は開放空間のうち、日常一般に公開される部分』とされており、当該記載を参考といたしております。オープンスペースの割合の算定では、道路を除く部分をその対象としているところですが、絵画館前の軟式野球場は、スポーツ施設として利用がされており、日常的に一般の人が広場等のオープンスペースとして利用する事ができないため、計上しておりません」
みなさん、いかがか。これは、イコモスと事業者との「考え方や解釈の違い」ということになるのだろう。例えば軟式野球場。イコモスは「緑」「オーブスペース」として算出しており、前出の現存植生図でもグラウンドは土の部分以外は「芝生・草地」とされている(コブシ球場の内野は人工芝)。事業者はグラウンドは公開空地でもオープンスペースでもないとしてカウントしていない。
これ以上立ち入らないが、地球温暖化防止や鳥や虫の視点からすれば算出手法やエリアを区切ることなどはどうでもいいことだ。緑の量と質が変わることで生態系にどのような影響を及ぼすのか、さらにまた開発後どうなるか注視する必要がありそうだ。
いちょう並木
「母」の枕詞のイチョウの「垂乳根」(通りがかりの若い女性グループに「皆さんはまだ若いから大丈夫でしょうし、わたしのかみさんは小さいので垂れていませんが、イチョウは成長するとこのようにおっぱいが垂れてくるんです」と声を掛けた。双方ギャハハハハ。垂乳根は雄株にもできるそうだ)
日比谷公園の樹木1,000本伐採は本当か 「日比谷公園整備計画」勉強会に参加して(2023/5/22)
「神宮外苑街づくりに都民の共感と参画を」都が再要請 事業者「真摯に受け止める」(2023/4/15)
神宮外苑に総力を注いだ「つば九郎ハウ巣」公開 オープンハウス(2022/10/10)
日比谷公園の樹木1,000本伐採は本当か 「日比谷公園整備計画」勉強会に参加して
「日比谷公園再生整備計画」(都のホームページから)
都議会議員会派「グリーンな東京」(代表:漢人あきこ氏)は5月17日、「日比谷公園再生整備計画」勉強会を開催し、日比谷公園の管理所長を務めた髙橋裕一氏、日本庭園協会会長の高橋康夫氏、街路樹を守る会代表・愛みち子氏、神田警察通りのイチョウの伐採をめぐる住民訴訟で住民側の代理人を務める弁護士の山下幸夫氏がそれぞれの立場から、今秋に開始される公園整備工事で大量の樹木が伐採されることに異議を唱え、広く都民に訴えることを参加者に呼びかけた。勉強会場には定員いっぱいの30名が対面参加したほか、ZOOM参加者も多数いた。
勉強会で髙橋裕一氏は、「『日比谷公園再生整備計画』によると、少なくとも450本以上~1000本の樹木が伐採される可能性が高い。2021年2~3月には『にれのき広場』のケヤキなど23本が伐採された。都は再生整備計画の実施は手順を踏んだとしているが、多くの一般市民には知らされていない。一般市民からは現在の日比谷公園の景観に不満だという声を聴かない。逆にこのままにしてほしいという声が強い」と訴えた。
愛みち子氏は「街路樹・公園木・私有地の樹木、全て伐採の危機にある。公園審議会の審議委員は樹木を守れるのか。公開空地の樹木も設置時はチェックが入るが、その後多くはノーチェックで管理が悪く、不健全な樹木が多い」とみる。都市公園法11条では、①都市公園を損傷し、又は汚損すること②竹木を伐採し、または植物を採取することなどを禁止しているのに、「管理者(都)による伐採や破壊は許されるのか」と問題提起した。
高橋康夫氏は、日比谷公園を設計し、日本庭園協会初代会長である本多静六の「首賭けイチョウ」のエピソードを交えながら、「山手公園、平和記念公園、哲学堂公園などのように日比谷公園を国指定の名勝にすべき。明治神宮外苑、京都府立大学敷地&植物園アリーナ計画など、最近の開発はまるで同時多発テロのようだ、目に余るものがある」と訴えた。
弁護士の山下幸夫氏は、3つの樹木の保護に関わる裁判に、住民の立場で係わっている。千代田区・神田警察通りの案件では、イチョウの街路樹を伐採するのは、街づくりに参加する住民の権利・利益を損なうものだとし、一般論として認定されている「景観利益」を個別案件で立証するのは困難が伴うものの、行政側と対等の立場で争うことや、問題提起することに意義があると話した。他に、相模原の相原高校にあったクスノキの大木を守る裁判、神宮外苑の多数の樹木を守る裁判に取り組んでいる。現状、樹木を守る法律がなく、環境上の権利を主張しても決して強力ではないが、こうして繰り返し訴えることで変わっていくことを期待すると話した。
左から髙橋裕一氏、愛氏、山下氏、漢人氏、高橋康夫氏
日比谷公園(有楽門付近を望む)
このあたりの樹木は保存されるのか(雲形池周辺)
このあたりの樹木は保存されるのか(つつじ山周辺)
◇ ◆ ◇
日比谷公園の再生整備計画の経緯について少し振り返ってみよう。
東京都は2017年10月、学識経験者などで構成する「日比谷公園グランドデザイン検討会(委員長:進士五十八福井県立大学長)を設置し、翌年の2018年12月、「日比谷公園グランドデザイン〜5つの提言〜」をまとめ公表した。
5つの提言とは①誰もが迎え入れられ、心地よく過ごせる上質な公園②まちと連携し、相乗的に新たな魅力を生み出す公園③歴史的、文化的価値を顕在化させた特別な公園④緑とオープンスペースのネットワーク形成の核となる公園⑤多様な主体と連携し、利用者の視点で運営する公園-というものだ。
この提言を受け都は令和元年10月8日、東京都公園審議会(会長:髙梨雅明公園財団副理事長、日本公園緑地協会副会長)に諮問。令和3年3月25日の答申を経て、同年7月、都は「都立日比谷公園再生整備計画」を策定し、開園130周年を迎える令和15年(2033年)を目標に公園全体の再生に取り組んでいくとしている。
整備計画では、日比谷公園の主な課題として①利便性が高い立地条件にあるが、広幅員道路や地下道からの階段等のバリアが存在し、まちと公園のアクセシビリティが良くない②皇居外苑等との回遊性や景観のつながりが弱い。樹木や施設が視線を遮って園内外の視認性が低い③日比谷公会堂から小音楽堂までのビスタ景観などを活かした空間利用(イベント利用等)ができていない④日比谷にまつわる文化・歴史資源の分類や整理がなされてこなかったことなどを上げ、再生整備では「のこす」「かえる」「つくる」3つの取り組みを進めていくとしている。
計画の策定に当たっては令和2年12月8日~令和3年1月7日にかけて都民から意見を募集。テニスコートの存続を求める声62件など175件(うち1通は181名の署名付き、91件はHIROBAsに関するもの)の意見が寄せられている。主なものを以下に紹介する。
「再生整備計画の考え方に大きく賛同。特に『時』『人』『空間』をつなぐ新たな公園の将来像は、周辺のまちと公園がオープンな空間の創出と、ワーカブルなネットワークにより、相乗的な魅力や賑わいの創出、Well-beingなどの新たな価値観をも具現化していくことに強く共感する」
「歴史の風雪に耐えた老木の保護をお願いしたい。明るくして防犯のためにも見通しを良くすることは理解できるが、伐採は急がず、慎重な検討と都民に意見を聞くような進め方を希望する」
「意欲的な整備計画の方針で、賑わいの創出は必要だが、特別な公園として現在の環境を維持、拡大することこそ第一であり、整備は慎重、最低限、漸進的を基本としてもらいたい」
樹木の保存について都は「既存の樹木については、樹勢や樹形などの健全度を把握し、計画内容の実現に向けた植栽計画を策定し、整備や維持管理を行います。その際、樹木の現状や計画内容に応じ、移植や剪定、不健全木などの更新や落葉樹の植栽など適切に対応してまいります」としている。
心字池
心字池付近から「東京ミッドタウン日比谷」を望む
第一花壇(ここも広場になるとか)
日比谷茶廊(左)と旧日比谷公園事所(小生は被害にあっていないが、この辺りは「のぞき魔」の名所だった)
このマーキングは何を意味するのか(小生は都民に知らせるべきだと思う)
◇ ◆ ◇
「日比谷公園の歴史と文化をこよなく愛する会」の髙橋裕一氏が都の公表資料を基に独自に作成したチラシによると、伐採される樹木は、日比谷通りに面している163本(街路樹含む)、にれのき広場の23本(伐採済み)、芝庭広場(第二花壇)に面している園路の72本、大芝生広場の177本など435本にのぼり、このほか大音楽堂の建て替え、第一花壇の広場化などによりトータルで1,000本近くが伐採される可能性を指摘している。
小生はこの伐採本数の多さにびっくりした。日比谷公園内には3,000本を超える中高木が植えられていると言われている。明治36年の公園開設当初から植えられているものも少なくないはずだから樹齢は120年超だ。そのうちの3分の1近くが伐採されるとなると一大事だ。都はまずこの部分を都民に公表すべきだ。
都にも確認した。都は、工期を分けて行うので伐採する本数は分からないとし、今秋に工事を着工する第二花壇については近々伐採する樹木の本数を公表するとしている。
愛氏の「公園審議会の審議委員は樹木を守れるのか」「管理者(都)による伐採や破壊は許されるのか」との問いかけは正鵠を射ていると小生も思う。
都市公園法17条の2には「協議会において協議が調つた事項については、協議会の構成員(都)は、その協議の結果を尊重しなければならない」と明記されている。
「尊重」とは結果として「聞き置く」「聞き流す」こととなっても違法性は問われないのか。そうであるならば、全国にどれほどの協議会が存在するか知らないが(多分数百)、その存在理由が問われるし、審議委員の声はどうなるのだろう。
令和2年度の公園審議会の議事録を読んだ。「ニューヨークのセントラルパークとかにも劣らない公園にしたいと思います」という声があったが、具体的に樹木をどれほど伐採するかという重要な部分については一言も触れられていない。
日比谷公会堂近くから第二花壇方面を望む(右は「東京ミッドタウン日比谷」)
日比谷公会堂もなくなるのか(小生が11歳の1960年(昭和35年)、日比谷公会堂で演説中の当時の社会党委員長・浅沼稲次郎が17歳の少年・山口二矢に刺殺された事件はよく覚えている。60年安保もこの年で、何だか世の中が変わるような気がした)
松本楼
「首賭けイチョウ」(首吊りじゃないですよ)
連絡協が設けられるのはこのあたりか(日比谷通りを挟んだ左側手前は帝国ホテル)
髙橋氏によるとこの日比谷通り沿いの巨木も伐採されるとか
◇ ◆ ◇
前段で紹介した進士氏は、2012年12月、「第59回NSRI都市・環境フォーラム」で「日比谷公園―110 年の公園生活史とパーク・マネジメント」と題する講演を行っており、次のように述べている。いくつか紹介する。
「私は時々思うんです。審議会というのは意外と役に立っているのではないか。原案にない公園ができるんです。審議会メンバーはそれを意識しないとダメなんです。私は事務局のシナリオを読むだけということはしませんよ」
「公園とは何か。『Parks for People』公園は人間のための空間です」
「私は、歴史も研究を基調にしてきましたので、日比谷公園の歴史性の重さを強調しています。だからといって決してすべてにアンタッチャブルという考えではないんです。現代都市の中で生きている重要な経済空間、都民共有の財産としてそれが適切に生かされなければならないとも思っています。重要なことは、一方的に建築や開発に侵されていくのではなくて、むしろ堂々と日比谷公園の歴史的公園都市開発で強さを総合することで新しい環境を創造すべきだと思っています」
「先ほど、(日比谷公園は)幕の内弁当だと申しました。さまざまなニーズに応える空間が要る。オープンな空間、クローズな空間。明るい空間、暗い空間。ハードあり、ソフトあり。水のある場所もあれば、歴史のある場所もある。それが揃っているのが日比谷公園です」
「日比谷公園のオーセンティシティ。日比谷の構造、例えば大園路による地割りや、それぞれの空間の持つ特質、あるいは樹木そのものが110年たって立派に成長している。これは1本でも切らないようにしなければいけません」
進士氏は以上のように、公園の歴史、樹木の重要性、開発優位の否定、をはっきりと発言している。日比谷公園の現計画との整合性はあるのか。
進士氏は7月8日10:00~12:00に日比谷公園で行われる東京都公園協会主催の「緑と水のカレッジ講座」で本多静六について講義されるようだ。公園内の樹木が大量に伐採されることについてどのように話されるのだろうか。
現況図(髙橋氏提供資料より)
美しさを引き出す匠の技に絶句 梶本銘木店「世界の優良銘木展示場」を見た
梶本銘木店「世界の優良銘木展示場」
昼過ぎだった。三井不動産の「三井リンクラボ新木場2」の取材の帰りだ。すぐそばに「世界の優良銘木展示場」と大書きされた建物があった。「展示場」なら、通りがかりの者でも見学させてもらえるかもしれないと思い、声を掛けたら快く応じてくれた。創業が昭和10年(1935年)という梶本銘木店だ。主任・伊部貴行氏に約1時間にわたって1~3階の展示場を見せていただき、説明してもらった。同社と伊部氏に感謝申し上げる。
これまで「銘木」はいくつか見学したことがあるが、これほど大規模なのは初めてだった。その規模に驚き、木の美しさを引き出す人知を超える匠の技に絶句した。展示されているものは無垢材から一枚板テーブル、無垢板、カウンター、犬矢来、名栗、床柱、茶室、端材にいたるまで〝ないものはない〟ほど揃っていた。同社の本業は、料亭、旅館、木材業者、設計事務所など向けの卸し専門だそうだが、一般の人も見学し、購入できるように展示しているとのことだった。
伊部氏がまた凄い。わが国の樹木でもっとも大きく成長するのはクスノキ(小生はスギ、イチョウだと思っていたが)、世界でもっとも硬くて比重が重いのは、水にも沈む南米産のリグナムバイタ、もっとも軽いのは模型などで使われるバルサ。
外国産材のことを「唐木(カラキ)」と呼びますが、これは中国が「唐」と呼ばれていた遣唐使の時代に中国を経由して諸外国から渡ってきたため総称して「唐木」と呼びます。唐木の三大銘木は紫檀、黒檀、鉄刀木(タガヤサン)で世界の三大銘木はマホガニー、チーク、ウォルナットと言われています。花梨はわれわれの知っているのど飴で有名な実の生るカリンはバラ科で、床柱などに用いられるものはマメ科で別の樹種です。「神様の時代の〇〇」というくらいに永い年月(1000年~2000年)土中に埋もれていて掘り出された(ダムの工事など偶発的に発見されることがあります)杉やケヤキなどを総称して「神代○○(神代杉・神代欅)」と呼びます。屋久島産の杉で樹齢が1,000年以上の杉のみが屋久杉と呼ばれますが、土中に埋まっていたものと水中に沈んでいたものとでは表情が異なると言われています。欅の中で特に珍しい杢目を有した「玉杢」、さらにその玉杢が全体に出ている「如鱗杢(ジョリンモク)」が現れた農林水産大臣賞を受賞した欅の盤は必見ですetc-伊部氏はまた、記者が尋ねる銘木の名前、特徴、価格などを瞬時に答えた。
無垢板・床柱などは値段が1,000万円を超えるものもあったが、人工乾燥ではなく5年、10年かけて自然乾燥させて製品にすると聞いて納得もした。賃料は都心と比べて破格の安さだろうが、都心のマンション単価は1,000万円をはるかに超えることを考えると、銘木1本が数百万、数千万円するのもよく分かる。〝キズモノ〟の人間は忌み嫌われた時代もあったが、木材は削れば新品になる。これも大きな価値だ。瘤も好まれる。白檀は値段が付けられない高価なものもある。
写真をかなり撮ったし、同社の了解を得てホームページに掲載されている画像を紹介する。とにかく見ていただきたい。人が住まない「新木場」にこんな素晴らしい施設があるとは夢にも思わなかった。
梶本銘木店は住所:江東区新木場1-17-72、問い合わせは電話:03-3522-0766、またはメール:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。へ。
左からカリン、シタン、シタン、ブビンガ、イチイ、コクタン、カリン、エンジュ…
リグナムバイタ
神代杉
土中にあったもの(左)と水中にあったものと推定される屋久杉
欅
「如鱗杢(ジョリンモク)」(右)
カリン瘤
「杮(こけら)」(左)と「柿(かき)」(記者は同じ字「柿」に見えた)
茶室
三井ホーム 同社初の「ZEB Ready」を取得した木造保育園が竣工・開園
「にじいろ保育園高野台」
三井ホームは5月19日、同社が施工し、同社として初めて「ZEB Ready」を取得した木造保育園「にじいろ保育園高野台」が竣工、4月に開園されたと発表した。
物件は、練馬区高野台三丁目に位置。敷地面積は約529㎡、延床面積は約513㎡。運営事業者はライクキッズ。スケルトン工事(設計・施工)は三井ホーム。内装工事の設計監理は岩本建築デザイン事務所、施工は三井ホーム。構造は2階建て木造枠組壁工法。工期は2022年9月~2023年2月。
「ZEB(Net Zero Energy Building)」は、消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した非住宅の建物で、「ZEB Ready」は基準一次エネルギー消費量を50%削減することでBELS評価により認証されるもの。
スギの木(35年生)に換算すると約600本分に相当する炭素約150t-CO2を貯蔵し、約80帖の大空間や外観の丸い窓・カラフルな階段などで保育環境に配慮し、内装にはふんだんにヒノキを使用し、木質感により保育園児やスタッフへのリラックス効果を演出している。
リスト 辻堂駅前で商業との複合タワーマンション200戸 分譲は2024年前半
「(仮称)辻堂第二計画」
リストグループのリストデベロップメントは5月16日、藤沢市辻堂で商業・住宅の複合再開発タワー「(仮称)辻堂第二計画」事業に着手したと発表した。
物件は、JR辻堂駅から徒歩2分、藤沢市辻堂1丁目に位置する敷地面積約2,312㎡、29階建てタワー棟と3階建て低層棟。用途は分譲マンション約200戸と店舗12区画。マンションの専有面積は34.90~173.91㎡。設計監理は久米設計。設計は久米開発プロデュース、フィールド・デザイン・アーキテクツ。デザイン監修はGLAMOROUS co., ltd.(外観、住宅エントランス・共用廊下等)。施工は鴻池組。販売開始は2024年前半の予定。竣工予定は2025年12月。