「time flies like an arrow 光陰〝矢野〟如し」 木住協・矢野会長(住林会長)が退任
矢野氏
日本木造住宅産業協会(木住協)の会長を15年間にわたって務めた矢野龍氏(住友林業会長)が退任したことを書いたが、矢野氏は総会後の懇親会で、15年間の会長職を「time flies like an arrow 光陰矢野如し」と絶妙な言い回しで振り返った。
記者は、この矢野氏(76)と大和ハウス工業会長兼CEO・樋口武男氏(78)、積水ハウス会長兼CEO・和田勇氏(75)をハウスメーカーの〝雄弁御三家〟と呼んでいる。三社とも関西が発祥で、三氏とも年齢が近く、〝毒〟を含んだ関西弁を平気で使い、自らの土俵に引き込む話術が巧みというのが共通している。
矢野氏は登壇するといきなり「今まで皆さん大切な話をされていた。やっとわたしの番が回ってきた。自由になった喜びを話せるときがきた」とジャブを放った。(それまで国交省、林野庁など5名の挨拶があった)
そして、すかさず「在任期間を振り返ると『time flies like an arrow 光陰矢野如し』」と、流暢な英語を交えカウンターパンチを繰り出した。会場は一瞬あっけに取られたようだったが、やや間を置いて笑いが漏れた。矢野氏は北九州大学外国語学部卒で、住林では10年間アメリカ勤務経験があり、「僕は通訳の資格も持っている」英語のプロだ。
この飛び切りの「arrow」と「矢野」を掛けた〝親父ギャグ〟に意想外にもたいした反応を示さない参加者に愛想をつかしたのか目を覚まさせようと思ったのか、矢野氏はG7サミット各国の代表者の年齢を紹介した。
「ドイツのメルケル首相とフランス・オランド大統領は61歳、安倍さんも61歳、オバマ氏は54歳、イギリス・キャメロン首相は49歳、カナダ・トルドー首相は44歳、イタリア・レンツィ首相はわたしの娘と一緒の41歳…みんな若い。わたしは76歳。立派な後期高齢者になりました。安田善次郎は『50、60は洟垂れ小僧、70は働き盛り、80、90は男盛り』と言った。その伝で言えばわたしは青春を謳歌する年齢。80、90で男盛りになれるかどうかは嫁さんとよく話し合う」と爆笑を誘った。(故・安藤太郎氏は90歳を超えてもゴルフをされていた。家庭での主導権は奥さんが握っていた)
ここから15年間を振り返って会長職として印象に残る活動を紹介。「住宅税制についてはちゃんとすべき。これは和田さん(住団連)、市川さん(木住協)に何とかしていただきたい」と注文をつけた。
最後は「政治家とは仲良くできなかったが、国交省とは天敵の那珂さんをはじめ亡くなられた山本さん(元山口県知事)などと仲良くさせていただいた。井上さん(前住宅局長)とは戦わない」などとジョークを飛ばす一方で、「(わたしの後任の)市川さんはIQが相当高いし、品格がある。わたしとの比較においてだが。座右の銘は『至誠一貫』です。必ず皆さんのご期待に応えるはず。これからも木住協を支援していただきたい」と締めくくった。
後で聞いたら〝天敵〟の那珂(正)氏(元住宅局長)はゴルフのライバルで、「勝ったり負けたり、百獣(スコア110)の争い」だそうだ。歯が立たない井上俊之氏とは戦わないという。
山林取得については「疲弊している森林・林業の振興のため引き続いて増やしていく。国のためだ」と話した。住友林業は数年前に三井物産を抜き森林保有面積で第三位に上昇している。
〝マネシタ電気〟〝三流電気〟〝早いだけ電気〟など関西企業の地盤沈下が目立つが、「住林」「ダイワ」「積水」がわが国の住宅業界をこれからもリードするのは間違いない。「上方」経済を象徴する〝能弁雄弁御三家〟もまた永遠に不滅だ。
住団連・和田勇会長 「消費増税が延期になりそうなのに拍手喝采」
住宅生産団体連合会(住団連)・和田勇会長(積水ハウス会長兼CEO)が消費増税について「いつも駆け込みやその反動で苦い思いをさせられる。今回はどうやら延期になりそうな雲行きで、拍手喝さいしている」と述べた。5月26日に行われた木住協の懇親会で、来賓として挨拶した中で語った。
CO2の削減問題については、「動きを加速させないといけない。そのためにはストック、中古住宅の省エネが重要だ。わたしは『中古住宅』という呼称を改めるべきだと思っているが、いい言葉が見当たらない。『既築』(〝鬼畜〟と記者は理解したが)では具合が悪い」と話した。
安倍総理大臣はG7伊勢志摩サミットで、世界経済の現状について「リーマンショックの前と似た状況にある」という考えを表明したが、宣言には「リーマンショック」の文言は盛り込まれなかったようだ。安倍総理は、消費増税について再三「リーマンショック級の出来事があれば、消費税率の引き上げを延期する可能性がある」考えを示している。
木住協 6代目会長に市川晃氏(住友林業社長) 矢野前会長は退任
市川氏(写真提供:週刊住宅)
日本木造住宅産業協会(木住協)の新しい会長に市川晃氏(住友林業社長)が就任した。5月26日行われた定時総会後に発表した。平成13年度から27年度まで会長を務めた矢野龍氏(住友林業会長)は退任した。
市川氏は、「木住協は今年4月で30周年の節目の年を迎えた。わたしで6代目の会長になるが、わが国の住宅市場で木造住宅の割合は増加しており、期待も大きい。需要の柱としてしっかり社会を支えていきたい。責任の重大さも感じている」と述べた。
28年度の重点項目として、木造耐火建築物、省令準耐火構造の普及に向け2時間耐火を含めた新たな大臣認定や追加承認に努めることや、技術者不足を考慮した生産性向上に向けた調査・研究の実施、国産材の利用促進などを盛り込んだ。
三井ホーム わが国初の5階建て2×4工法による特養が完成
「花畑あすか苑」
三井ホームは5月25日、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では延床面積で国内最大となる5階建て(1階RC造)特別養護老人ホーム「花畑あすか苑」(事業主:社会福祉法人聖風会)が完成したのに伴い、報道陣に公開した。
4層以上の中層木造建築物の地震時の横揺れに有効な新技術としてカナダで開発されたミッドプライウォールシステムを採用した国内初の建物でもあり、建築にあたっては強度を確保するための独自金物を用いたタイダウンシステムを全面的に採用し、個室ユニット組み立てによる施工方法を採用するなどの合理化も図っている。平成26年度の国土交通省木造建築技術先導事業として採択されている。
入居者の募集は4月から始まっており、多床室40床は120件、個室ユニット100床は150~160件の申し込みがあったという。
物件は、足立区花畑4丁目に位置する5階建て(1階:鉄筋コンクリート造 /2~5階:2×4 造)延べ床面積9,773.24 ㎡(2,956.40 坪)。建物用途は特別養護老人ホーム140 室、短期入所生活介護施設20 室、認知症対応型デイサービスセンター、居宅介護支援事業所、地域交流スペース(防災拠点型)。設計はメドックス。施工は三井ホーム。設備などを含む建築費は約30億円。
エントランス
地域交流スペース(床はシート貼り)
1階部分
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楽しみにしていた見学会だが、予想していた通り外観・内装は放火基準を満たすためにほとんどがケミカル製品で覆われていた。
前回の記事を添付するのでビフォー、アフターを見ていただきたい。
建物の裏側(表情がなかなかよかった)
三井ホーム わが国初のツーバイフォー5階建て(1階はRC)特養が上棟(2015/12/9)
「消費増税すべき」木村、岩沙氏/「増税は最悪」ライフ清水会長 不動協が懇親会
木村氏(左)と岩沙氏(ホテルオークラで)
不動産協会は5月12日、第56回定時総会後の恒例の懇親会を開催した。冒頭、挨拶した同協会・木村惠司理事長は現況の社会・経済状況について触れ、「経済は調子がいいような悪いような、格差や需要の問題など大きな課題を抱えており、曲がり角にあるという印象を受けている」と話し、同協会としては今年3月に発表した「大都市および住生活のあり方に関する提言」を具体的に進めていくことが重要とし、大都市の国際的な競争力の強化と地方の活性化などの街づくり、良好な住宅ストックの形成、不動産を所有・取得することの優位性が保たれる税制などについて取り組んでいくと語った。
消費増税については、「どうなるかわからない。早めに決めていただき、軽減措置など対応もきちんとしていただきたい」と、消費増税を実施すべきとの考えを示した。
懇親会
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取材の目的はただ一つ、消費増税を断行すべきなのか、それとも見送るべきなのかをデベロッパー各社のトップに聞くことだった。アンケート用紙をつくり、片っ端から聞くことも考えたが、同僚の記者から「止めたほうがいい」と言われ、それは断念したのだが、同協会・木村理事長と岩沙弘道会長からは必ずコメントを取ろうと出かけた。
木村理事長は挨拶では「早めに決めていただいて」と話すにとどめ、明言は避けたが、記者には「実施すべき。ここでやらないと。先送りしても5年、10年にはまた問題が浮上する」と、実施すべきと話した。
岩沙弘道会長も、「景気対策を立てたうえで実行すべき。財政が厳しいのは論を待たない。政府が国際公約として掲げているプライマリーバランスの黒字化は喫緊の課題」などと語った。
また、岩沙会長が今年の同協会賀詞交歓会で「今年はデフレ脱却を宣言する年にしなければならない」と述べたことについて質問したが、「宣言できる可能性はある。好循環に向かう方向性が明確になりつつある。雇用は絶好調だし、投資もICTや人材に対する研究開発が活発化しており、マイナス面が強調されている消費に関する家計データは実態を反映していない」などと話した。
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木村理事長と岩沙会長からコメントを取った段階で目的は達成できたと判断したのだが、会場に入るや否や、下にも置かない歓待を受け、ホテルが用意した椅子に座られた方を無視できなくなった。
記者はさび付いた記憶を手繰り寄せようとしたのだが、三井でも三菱でも住友でもどこのデベロッパー関係者でないことが察せられ、かといって派閥の領袖でもなさそうで、周りの人に聞いてもどなたもご存じなかった。
年齢は木村理事長や岩沙会長より一回りも上ではないかと想像したが、その血色たるや、ストレスなどまったくない環境で美食のみを与えられた松坂牛というよりは、むしろ粗食に徹し、まっとうな人生を過ごしてきたからこその賜物でありそうな、まるで乳飲み子のようなふっくらとしたほっぺがピンク色に染まっていた。
そこで〝ここで聞かなければ一生後悔するぞ〟という第六感が働き、〝この機会を逃してなるものか〟と意を決した記者はおずおずと名刺を差し出した。一瞬、その方は胡乱な目を差し向けたが、内ポケットから名刺を取り出した。
名刺には「日本チェーンストア協会 日本小売業協会 國(国ではない)民生活産業・消費者団体連合会 会長 清水信次(株式会社ライフコーポレーション代表取締役会長兼CEO)」とあった。
肩書を見たとたん、消費増税に対する考えは聞かなくても理解したのだが、「会長、消費増税について考えをお聞きしたい」と声をかけた。清水氏はよどみなく持論を展開した。
「増税はやるべきではない。軽減税率は世界一複雑怪奇。日用品、生鮮食料品などは毎日相場が変わる。日本のスーパーは2割、3割引きがザラ。2%どころの軽減税率で何の効果もない。消費増税は実態を知らない政治家が考えることで、カネもかかる。最悪だ。軽減税率を入れるなら(飲食料品ではなく)電気・ガス・水道を対象とするぺき。簡単にできること。
いま一番困っているのは、30~40年前は年収が400万円以上800万円以下の中間層が85%くらいだったのが40%に減り、8%だった低所得者が40%に増加していること。この問題を何とかすべきで、消費増税は危険すぎる」
取材を終え、傍らにいた同社関係者に取材のお礼をし、そのついでに清水氏の年齢を聞いて仰天した。何と年齢は90歳だという。
社に戻ってさらに驚いた。出身地がわが故郷・三重県の津市だった。ウィキペディアには「食品スーパーマーケット『ライフ』を興し、売上高4,700億円という日本最大の食品スーパーマーケットチェーンを一代で築いた。中内功・鈴木敏文・岡田卓也らとともに戦後の流通業界を牽引した人物」と紹介されている。そういえば、清水氏はさかんに「伊勢のな言葉」を発していた。
清水氏
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普段の行いがいいと幸運が舞い込むという見本だ。取材に大満足して帰ろうとし、一服でもと立ち寄った喫煙所で、幸運にも近鉄不動産とグループ会社で、わが故郷・三重県の三交不動産の関係者とばったり出あった。早速、伊勢志摩サミットの波及効果や不動産市況などを聞いた。
近鉄不動産首都圏事業本部 常務取締役本部長・田中孝昭氏には、昨年、同社が分譲した「BLUE HARBOR TOWER みなとみらい」記者発表会でも質問したのだが、サミットのメイン会場となる志摩観光ホテルや駅舎の改装などに数十億円かけたそうで、その効果は「これから」ということだった。
三交不動産のマンション事業と賃貸事業本部担当の常務取締役・森本浩史氏は、「サミットは不動産事業には効果を及ぼしていないが、太陽光事業がドル箱になりつつある」と話し、同社マンション事業本部東京支店本部長・盛田哉氏は、「『北習志野』で駅から7分で96戸を分譲するし、『三郷中央』でも確認は取れていないが徒歩2分で分譲する。『北習志野』は『オハナ』(野村不動産)に負けない」と胸を張った。
「『オハナ』に負けない」とは頼もしいではないか。双方とも取材してレポートする。
左から盛田氏、森本氏、田中氏
野村アーバン ネット 第4回「ありがとう、わたしの家」受賞作品決定
野村不動産アーバンネットは5月11日、第4回「ありがとう、わたしの家」キャンペーンの入賞エピソードを決定・発表した。
キャンペーンは、不動産情報サイト「ノムコム」で「家と家族に関する思い出」のエピソードと関連する写真を募集し、応募の中からグランプリ賞などを決定し紹介するもの。4回目の今回は、全国から215点の応募があり、グランプリには武居ぱんださん(埼玉県)の「父の夢をつないで」が選ばれた。
詳細はキャンペーンサイトhttp://www.nomu.com/arigato/ へ。
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グランプリ賞の「父の夢をつないで」を読んだ。三人姉妹の長女が、家を新築することが長年の夢だった父の苦労を回顧する物語だ。亡くなられたお父さんの年齢は不詳だか、昭和50年代の後半から平成の前半にかけて、当時のサラリーマンがいかに家を取得するのが大変だったかが正直につづられている。
建てようと思った宅地が「調整区域」だったという記述にはドキッとさせられた。武居さんのお宅の住所は分からないが、「埼玉県」であればさもありなんといま思った。
かつて埼玉県は「調整区域に家が建つ」というなんとも不可思議なことが当たり前のように行われていた。建築基準法第34条第1号を〝悪用〟した開発が後を絶たなかった。年間数十件はあったはずだ。花屋、文具屋、八百屋、本屋などが連なって建てられ、分譲された。行政は見て見ぬふりをした。取材して記事にもしたが、開発業者からは「首を洗って待っていろ」と脅されたことがある。生きた心地がしなかった。
平成27年の外国資本・外資系による森林買収 408ha
農林水産省は4月27日、平成27年の外国資本による森林買収の事例調査結果をまとめ発表した。
居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収は12件67ha。もっとも規模が大きいのは岡山県鏡野町・津山市の48haで、シンガポールの法人が「樹木の育成」目的で取得した。
このほか、国内の外資系企業と思われる者による森林取得は11件で341haだった。双方では23件、408haだった。
平成18年から27年末までの外国人と思われる者の森林取得は合計108件、1,232haとなった。
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森林買収の面積が408haと言われて大きいのか小さいのか、記者は判断材料を持ち合わせていないが、もっとも大きかった岡山県の鏡野町と津山市のそれぞれ役所の担当者に聞いた。常識的に考えたら「樹木の育成」目的で山林を買う人はまずいないはずだし、仮に伐採したら赤字は間違いない。よほど金の成る木が植わっているのではないかと思ったからだ。
鏡野町の担当者は、「津山市さんがどう答えるか。わたしどもとしては個人情報もありますので、林野庁さんが発表されたこと以上は答えられない。『樹木の育成』が目的と言われても、よくわからない。普通のスギやヒノキの類だろうと思います」と語った。
津山市の担当者も「4月に赴任したばかりで、初めて聞いた。そのようなことがあったとの報告も聞いていない」とのことだった。これ以上深入りしないが、外資(系)のだれがどこでどれだけの森林を買ったか、森林担当課に伝わらないのが問題だ。届け出制度に問題がある。
樹齢30年以上 戸建てより低く〝伐採〟された「白岡ニュータウン」のケヤキの街路樹
白岡ニュータウン 中央通りの街路樹(戸建てより低いことが分かる)
まず写真を見ていただきたい。総合地所の「白岡ニュータウン リフレの杜〝コミュニティガーデン街区〟」を取材して、その帰りに中心街を見ようと立ち寄ったときの街路樹の様子だ。街路樹はケヤキであることがすぐわかった。記者は「ひどい、こんな強剪定はない」とほとんど叫ぶように声を上げた。隣にいた同社執行役員 分譲第一事業部副事業部長・井上理晴氏は「これは剪定じゃない。伐採だ」と吐き捨てた。
「白岡ニュータウン」は同社が昭和60年代に開発した総区画1,261区画の大規模戸建て住宅地だ。美しい街並みが特徴で、記者は埼玉県を代表する昭和~平成の団地だと思っている。
〝コミュニティガーデン街区〟を取材するのが目的だったのだが、熟成した街を歩くのも楽しみにして出掛けたのだが、無残な姿に伐採されたケヤキを見て愕然とした。怒りもこみ上げた。
道路は、地元の人が「中央通り」と呼ぶメイン道路で、樹齢は30年以上経過している。樹齢からして樹高は20メートルくらいに達するはずだが、ここの通りのケヤキは戸建てとほぼ同じ6~7メートルくらいで〝伐採〟されていた。
1本や2本ではない。道路の両側数百メートルにわたっていた。樹形はマダガスカルの奇樹・バオバブの変種ではないかと思ったほどだ。剪定は昨年、幹回り60~120センチの99本を対象に約85万円で市から発注された。
同上
駅前のケヤキの街路樹
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記者はこれまでも10数回にわたって「街路樹が泣いている」という見出しで記事を書いてきた。私憤をぶちまけるような記事も多いのだが、昨日見た「白岡」のケヤキは異様奇怪さの点で最右翼かもしれない。
かつて元国立市長は「大学通りのサクラやイチョウの高さと同じくらいにせよ」と言ってマンションの高さを20mに制限した。そのやり方が常軌を逸したために事業主に訴えられ敗訴した。
今回はどうもその逆のようだ。〝戸建ての高さまで街路樹を切れ〟という地元住民の声に押されたのか忖度したのかわからないが、とにかく近接する戸建てに落ち葉が落ちないよう、枝木がかからないよう、日照が奪われないようにした結果、まるで垣根のような高さになったのが容易に想像できる。
〝街路樹にマンションを合わせろ〟〝戸建ての高さまで街路樹を切れ〟と、いうことは正反対で、どちらが〝正論〟かさっぱりわからないのだが、しょせん景観などという文言は行政や一部の住民の我欲のためにいかようにも解釈できるような捉え方しかされていないのではないかという結論に達せざるを得ない。
◇ ◆ ◇
高さが10m以上はある電柱より低い高さでぶった切られたケヤキの怒りの矛先はどこに向ければいいか。
真っ先に浮かぶのは道路を管理する白岡市だが、行政にその責任を問うのは難しい。〝地元の方々の声を聴いて適正に剪定している〟という答えがまるで羊羹切りのように返ってくるだけだ。
樹形がどうなろうと、景観がどうなろうと管轄する道路課などは関係ない。街路樹によって車の運行が妨げられたり、近隣住民から苦情をもらったりしないよう心掛けるのが仕事だからだ。職を賭してでも〝伐採〟に反対する職員などいない。「切れ」一本やりの住民と闘う価値が毫ほどもないことを賢明な彼らは知っているはずだ。
ならば剪定作業を行う造園業者はどうか。これもまた責めるのは困難だ。〝行政の発注通り行う〟のが役割であって、間違ってもプロとして〝ケヤキはあるがままが美しい〟などと進言し、本音を漏らすことはない。そんなことを言ったら、明日から仕事が来なくなる。
だとすると、やはり自治の主役である住民に怒りをぶつけるべきなのだろう。住民の中には「切れ」という者もいれば「切るな」という者もいる。そのはざまで行政は右へ左へ揺れ動くのだが、結局は〝大きな声〟をあげた人が勝つ。それが民主主義だ。そんな人に景観論争など挑んでも〝それじゃ、雨樋の修繕費や落ち葉の処理代を払ってくれるか〟と一喝されるのが落ちだ。
かくて衆愚政治は街の隅々まで浸透し、よってなにが美しいやら醜いやら誰も判別つかない、なによりも我欲が最優先する自滅するほかない社会が構築される。
それでも記者は「白岡ニュータウン」は埼玉県を代表する美しい街といいたい。この「中央通り」から中に入った住宅街は、道路が東西軸を基本に設計されているので「南道路」「北道路」による評価差が少なく、各住戸は2段植栽によって緑や草花が植えられ、全体として美しい街並みが形成されている。ただしかし、あの醜いケヤキ(とわたしが考えるだけかもしれないが)が街の価値を引き下げないか気掛かりだ。
付け加えるが、ケヤキは街路樹の中でも単価が高いほうで、最近はめっきり減っているという印象を受ける。植樹したのはもちろん白岡市ではなく、街を開発した総合地所だ。立派な街にしようと当時の担当者は企画したはずだが、企画意図とは真逆の哀れなケヤキの姿を見せられたら滂沱の涙を流すのではないか。
それにしても昨年剪定されたケヤキの本数はどうして99本なのか。枝葉を全て奪い取られ、息も絶え絶えな姿はなにやら〝白寿〟を連想させる。悲しくてしょうがない。生きることを全否定されたようだ。
言い忘れたことがまだある。ケヤキの生命力はこんな暴挙にもびくともしないということだ。剪定を担当した業者によると、「切られた小指ほどの枝は3年もすれば手首ほどに成長する」そうだ。
ケヤキよ、泣くな。3年後には民家が埋まるくらいの葉っぱを降り注いでやれ。葉っぱは大地を肥やし、ミミズを育て、紊乱した人の心を癒す。愚かしいことをやめさせるまで成長しろ!
白岡ニュータウンの街並み
続々「街路樹が泣いている~街と街路樹を考える」 支離滅裂の「新三郷」(2014/10/24)
あのような倒れ方をしたのはなぜ 熊本県南阿蘇町の倒壊学生アパート
昨日(4月20日)、同業の記者から「熊本県南阿蘇町で倒壊した学生アパートの築年数は42年だった」とするある会社のブログ記事が添付されてメールで送られてきた。
記者もこの倒壊アパートについては相当のショックを受けた。テレビ画像では木造か非木造かは判別できなかったが、かなり古い建物かあるいは構造に問題があるのではと思っていた。建物の構造や築年数などについて言及するマスコミはなかったはずだ。
どうしてあのような無残な倒れ方をしたのかずっと頭から離れなかった。「なぜ」を繰り返した。理由を知りたく記事にもしたくて、木造の構造に詳しい人にも相談したが、「情報が少ない段階で書くべきではない」と言われそのままにしていた。
そして昨日だ。同じように不思議に思っていた人が多いようだ。そのブログ記事には、件のアパートは登記簿では木造の昭和49年築で、"改築◯年"となっていたようだ。
ここで問題となりそうなのは、築42年という築年数ではなく「改築」だ。建基法では「改築」とは、「建築物の全部又は一部を除却した場合、又は災害等により失った場合に、これらの建築物又は建築物の部分を、従前と同様の用途・構造・規模のものに建て替えること」とあり、従前のものと同じ、つまり現行の建基法の規定に従わなくてもいいようにも受け取れるが、それは軽微な改築であり、一定規模以上のものは建物全体が建基法の規定に適合するよう是正しなければならない。
だとするならば、今回の倒壊アパートはどうなっていたのか。記者は現行の建基法に適合していればあのような倒れ方はしないと思う。
このアパートに住んでいた学生が死亡した東海大学の災害対策本部・広報は、「学生が死亡したアパートは当大学が管理・運営している学生寮ではない。現段階では事実関係が明確ではないが、比較的(築年数が)新しいと聞いている」と話している。
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国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」には、構造が木造か非木造か、工事完了年がいつであるか、大規模修繕を行っている場合はいつであるかを記載するよう求めているだけだ。
賃貸だろうと分譲だろうと、一番肝心なのは耐震性・遮音性・断熱性・居住性などの基本性能だ。分譲マンションでは、デベロッパーは杭打ち状況、壁・床厚、遮音等級、断熱性能、天井高、セキュリティなどをほとんど例外なしにパンフレットに盛り込んでいる。重要事項説明書にも法令上の制限や建物の維持・管理などを記載することが義務付けられている。
それに対して、どうして賃貸はもっとも肝心な耐震性についてはほとんど何も求めていないのか。これが信じられない。
ユーザーは真っ先に建物が旧耐震なのか新耐震なのかを確認することが必要だ。大きな地震(震度6~7)が起きたとき、「建物が倒壊して死ぬかもしれない」旧耐震の物件を購入し、あるいは賃借すべきでないと記者は個人的には思っている。
賃貸物件の貸主もまた旧耐震の物件については耐震診断を行い、必要なものは耐震補修を行うべきだ。これは最低限の義務だろう。
仲介会社も同様だ。賃借人の安心・安全を提供するのが宅建業者の使命であるはずだ。
宅建業法の目的は「購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ること」(同法第1条)であり、宅地建物取引士の任務は「宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行う」(同法第15条)だ。
この文言からすれば、少なくとも旧耐震の木造アパートが〝危険〟であることを告知する義務があると思うがどうだろう。そのような危険な共同住宅が市場に流通しなくなるような社会にしなければならない。
激増する千代田区人口 16年間で61%増 当分続くマンション供給ラッシュ
先日は千代田区や港区などで〝お金持ち〟が増えていることを書き、昨日は千代田区のマンションがよく売れていることを紹介した。なぜ、そんなに同区のマンションが人気になるのか、その理由・背景をデータから探ってみた。
まず、人口。昨年3月、国立社会保障・人口問題研究所から平成22年(2010年)に約1億2806万人だった総人口は平成52年(2040年)には1億728万人へと2000万人以上も減り、65歳以上人口が40%以上を占める自治体が半数近くになるというショッキングな予測が発表されたが、千代田区には全く無縁な話だ。
同区の人口は昭和30年の約12万人を境に減少を続け、平成7年には約3.5万人までに落ち込んだ。その後は減少傾向に歯止めがかかり、平成12年の国勢調査では実に45年ぶりに増加に転じた。
国勢調査によると、平成12年の人口は約3.6万人だったのが22年には約4.7万人に30%も増加し、住民基本台帳による直近のデータでは約5.8万人へ、この16年間で61%も増えている。区の予測によると増加傾向は今後も続き、ピークの平成67年(2055年)には約8.1万人になるという。
ただ一つ気ななる材料もある。人口とは夜間人口のことで、昼間人口は漸減傾向にあることだ。平成12年の昼間人口は約86万人だったのが、22年には約82万人へと4万人も減少している。平成27年度の国勢調査の結果がどうなるか気になるところだ。区でも昼間人口減の要因をつかみかねている。
昼間人口減はともかく、人口増の最大の要因はいうまでもなくマンションの建設増だ。この7年間でも「プラウドタワー千代田富士見」(414戸)、「ワテラス」(333戸)、「パークコート千代田富士見」(505戸)の大規模再開発マンションが竣工している。
マンション建設増を裏付けるデータとして住宅着工増がある。平成5年はゼロだったのが、平成16年には約1,800戸に増加。その後は減少していたが、ここ数年は再び増加に転じ、平成27年(暦年)では1,696戸と平成16年水準に近づいている。〝億ション〟のメッカでもある麹町エリアでのマンション供給ラッシュもこれから本格化する。業界関係者によると20棟近くあるそうだ。
特徴的なのは、区内に建設されているマンションは小規模なものが比較的少ないということだ。区のデータによると、マンションは25年までに432棟、約2.1万戸供給されており、1棟平均は50戸だ。20戸未満が半数を占める都平均と比べるとその差は歴然とする。
マンションの規模は資産性とも密接な関係がある。区内の旧耐震の建築物は確実に減少しており、平成15年から25年までに約3,000戸以上減少し、26年の耐震化率は89.7%に達している。
空き家率の改善も進んでいる。平成20年には25.8%だったのが、25年には13.3%へと都の平均値(11.1%)に近づきつつある。
高額マンションの供給増はアッパーミドル・富裕層の増加につながっている。所得割の課税標準額が1,000万円以上の「高所得者」は、平成24年度は約3.6千人で、全納税者に占める比率は12.6%だったのが、平成27年度は約4.4千人と3年間で約800人増加し、比率も13.4%へ0.8ポイント増加している。比率は港区の14.5%には及ばないが、23区平均の4.1%を大きく上回っている。
他のデータもなかなか興味深い。保育園・学童クラブの待機児童はゼロだし、生活保護率も特別区の平均より5~10ポイント低い。
喫煙者と非喫煙者の共生を図る取り組みにも力を入れている。区は平成26年度から民間ビルの空き店舗などを活用した屋内喫煙所の設置に対する助成事業を開始し、28年度も引き続き「喫煙所の設置を積極的に推進していく」としている。
このような人口増、マンション建設増を受けて区では、平成27年度から平成36年度までの10年間を期間とした「新たなちよだみらいプロジェクト」を作成。既存施設の更新や住環境の整備、子育て、高齢者支援施設の充実、コミュニティ支援などへ施策の重点を移していくとしている。「付置住宅」や「区営住宅」「区民住宅」の見直しも行われる。