阪急不動産「ジオ多摩センター」 同駅圏 最後の大規模マンションになるか

「ジオ多摩センター」完成予想図
阪急不動産が10月に分譲する「ジオ多摩センター」を見学した。京王・小田急多摩センター駅から徒歩12分の全300戸の規模で、多摩センター駅圏では最後の大規模マンションになるかもしれない。
物件は、京王・小田急小田急多摩センター駅から徒歩12分、多摩市鶴牧3丁目に位置する15階建て全300戸。専有面積は76.33~101.23㎡、価格は未定だが、5階あたりの坪単価は190万円くらいになる模様だ。竣工予定は2017年2月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
物件の最大の特徴は、駅から現地まで完全に歩車分離のアクセス・アプローチであることだ。歩いて12分もしてなおかつ歩車分離の街はそうないはずだ。
もう一つは、このマンションが多摩センター駅圏の南口では最後の大規模マンションになるかもしれないということだ。後述するようにUR都市機構は近くに広大な土地を所有しているが、多摩市の意向もあり住宅用地として売却される可能性は小さい。
住戸プランは、南西向き中心に南東向き、西向きで、居住面積は70㎡台の後半が中心。
コミュニティを重視しているのも特徴の一つで、「みんなのマルシェ」をほぼ2カ月に1回開催する予定のほか、「みんなの花壇」「七夕デコレーション「みんなの本棚」「コンサート」「コミュ・ブック」なども継続して行っていくという。
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このマンションのことより記者が気になるのは、その敷地北側にUR都市機構が所有する約3.8haの土地と、その東側に隣接する元わんにゃんワールドの跡地約1.8haの土地がどうなるかだ。双方を合わせると5.6haにもなる。東京ミッドタウンに近い広さだ。
この点についてUR都市機構と多摩市に聞いた。わんにゃんワールドの跡地についてURは「業務・商業施設として引き合いがあれば売却したい。住宅は想定していない」とのことだった。市も「多摩エリアの拠点として賑わいを創出する施設を希望している。住宅建設については考えていない。ここ数年マンションがかなり建設されており、計画数値に近づいているので、要望があれば協議となるが、学校用地などの問題もあるので難しい」と話している。
一方、今回のマンション敷地の北側についても同様で、URは「今年いっぱいでいま貸しているところの定借期間が切れるので、これから売却をどうするか検討している」としている。
なので、今後これらの土地がどのようになるか不明だ。多摩センターは他の街と比べても極めてポテンシャルが高いエリアだと記者は考えているのだが、民官学が連携して知恵を絞り、広域的な利用がされる施設を造ってほしいと願っている。
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多摩センター駅圏のマンションについてはその都度記事にしているのでもう書くこともなくなったが、多摩市の住民でもあるので、多摩センターのポテンシャルが極めて高いことについて触れたい。
記者は街のポテンシャルを3つの要素でいつも計る。一つは宴会ができるホテルがあること、2つ目はデパートがあること(つまりそこに行けば何でも買えるということ)、そして3つ目は食を中心とする文化が充実しているとことだ。
読者の方も、自分が住む街をこの3つのモノサシで計っていただきたい。3つ揃う街は、都心部はともかく郊外ではそうないはずだ。
ところが、わが多摩センターはこの3つが揃っている。これは自慢できる点だ。一言で言えば都心の利便性と緑が共存する街だ。新宿まで30分だ。これほど街のポテンシャルが高く交通の便もいいのに、マンションの分譲単価はずっと低く抑えられている。同じクラスの街と比較して2割は割負けしていると思う。
例えば、新宿などの都心ターミナルから30分圏といえば町田、清瀬、所沢、志木、武蔵浦和、新越谷、津田沼、あざみ野あたりか。
これらの街で3つの要素が揃っている街は一つもないのがお分かりのはずだ。こんなことを言ってもみんな取り合ってくれないだろうが、3つの要件が揃っており、多摩センターと比べられる街は新浦安、浦和、大宮、千葉、柏、新百合ヶ丘くらいしかないと思っているが、どうだろう。いま人気の豊洲にも武蔵小杉にもホテル機能はないので、記者の評価もそれほど高くないのだが、単価がべらぼうに高いのはよくご存じのはずだ。
多摩センターが割負けしているのは、デベロッパーにも責任の一端はあると考えている。街の価値を最大限に引き出す努力(企画力)が足りない。
努力不足もあって、なかなか高値追求ができないのだ。今回のマンションも坪単価は200万円以下になるのは間違いなさそうだ。仮に新百合ヶ丘駅10分でマンションが分譲されれば、坪単価は250万円はするはずだ。次に書く東急東横線大倉山駅圏は坪200万円台の後半だ。
にもかかわらず、今回も低く抑えられているのは戸数が多く、面積が広いこと、単価が一次取得層の取得限界に近いことが指摘できる。共用施設にはたとえばゲストルームはないし、設備仕様は取り立てて強調できるものはないのもそのためだろう。(このマンションのほかに、あるデベロッパーがサンリオピューロランドに近いところで分譲するが、坪単価は最低でも230万円はするはずだが…)
しかし、多摩センターの街の魅力を加味すればものすごく割安だと思う。最近は自分も反省しているのだが、単体としての坪単価よりも共用部・住環境を含めたトータルな価値を計ることが重要だ。記者がマンションの販売担当だったら、共用部分の面積(レンタブル比、有効率)を広告に表示し、その価値を堂々とアピールする。

三井不レジ「パークホームズ立川」 「半ソト空間」だけでない魅力あり

「パークホームズ立川」完成予想図
当欄でも紹介したが、三井不動産レジデンシャルがすまい(日常)の中にアウトドアライフ(非日常)を取りこむマンションの住戸プラン「半ソト空間」をスノーピークと共同開発し、「パークホームズ立川」に採用すると発表したので、早速見学した。採用するのは1階部分の住戸と共用部分で、なかなかいい提案だ。その他の住戸プランも工夫されており、坪単価も割安感がある。
物件は、多摩都市モノレール線高松駅から徒歩12分(JR中央線立川駅バス5分、バス停徒歩1分)、立川市高松町1丁目に位置する12階建て全352戸。専有面積は67.87~94.96㎡、第1期(戸数未定)の予定価格は3,400万円台~6,300万円台(最多価格帯4,000万円台)、坪単価は180万円前後。竣工予定は平成29年3月下旬。施工は長谷工コーポレーション。分譲は10月下旬。
現地は、準工だが周辺に高い建物はない。また、市は建築物の高さ規制を検討しており、このエリアは24mになる模様だ。最寄駅は高松だが、立川からバス便のほうが便利のようだ。今秋オープンする「ららぽーと立川立飛」へは徒歩10分。
建物は東向き・南東向き・南南西向きで、1階部分の25戸に「半ソト空間」があり、3タイプ選べるようになっている。また、ほとんどの住戸が横入り玄関タイプで窓付き。ゲストルームのほか、学童保育施設も併設される。

「半ソト空間」(モデルルームで))
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「半ソト空間」の提案がいい。記者はオプションかと思っていたが、そうではなく、専用庭にセットできるシェード付きで、「くつろぐ」「食べる」「寝る」の3つのタイプから自由に選べるようになっている。購入すれば数十万円はするものだった。専用庭の広さは約24㎡(7坪強)。
販売事務所の設営・モデルルームがまたいい。共用部分の「インドアパーク」がイメージできるように設営されており、モデルルームは「つなぐ」がテーマで、「半ソト空間」-リビング-キッチン-居室がつながるように工夫されている。廊下スペースを少なくすることで、約75㎡の面積を有効に使っている。バックカウンター、食洗機も標準装備。

「つなぐ」がテーマのモデルルーム(田の字プランだとこのようにはできない)

75㎡のプラン
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ここ数年、同社の〝パークホームズ〟は劇的に進化を遂げているが、このマンションもユーザーの心をくすぐる仕掛け・工夫が随所に施されていた。バス便ではあるが、「ららぽーと」にも近接していることから人気を呼ぶのではないか。設備仕様などから判断して坪単価も割安だと思う。来場者も「安い」という評価をしているという(これは野村不動産のお蔭かもしれない)。
三井不動産レジデンシャルが「半ソト空間」 「パークホームズ立川」に採用(2015/9/24)
三井不動産レジデンシャル「半ソト空間」 「立川」のマンションに採用

オープンパークイメージ
三井不動産レジデンシャルは、すまい(日常)の中にアウトドアライフ(非日常)を取りこむ「半ソト空間」というマンションの住戸プランをスノーピークと共同開発し、10月分譲予定の「パークホームズ立川」に採用する。
「半ソト空間」とは、マンションの1 階住戸の居室内部と専用庭部分に連続性を持たせた新発想の住戸プランで、テラスから専用庭にかけてオリジナルのトライアングルシェードを設置し、居室内からシェード下のスペースを「半ソト空間」として創出する。この空間と利用目的に合わせたスノーピーク製アイテムを組み合わせることで、“くつろぐ・食べる・寝る”という3 つの生活シーンを提案する。
「パークホームズ立川」は、JR中央線「立川」駅バス5分、バス停徒歩1分、立川市高松町1丁目に位置する12階建て全352戸。専有面積は67.87~94.96㎡、施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2017年3月下旬。

インドアパークイメージ

オリジナルトライアングルシェード
「富久クロス」完成祝賀会に250名 笹野理事長ほか地権者に聞く

「富久クロス」竣工祝賀会(ホテル椿山荘で)
タウン名が「富久クロス」の西富久地区市街地再開発組合(理事長・笹野亨氏)は9月18日、都内のホテルに約250名を集め竣工祝賀会を行った。
冒頭あいさつに立った笹野理事長は、「バブルに翻弄され、街が崩壊の危機にさらされたが、再開発の勉強会を立ち上げたが、当初は行政も銀行も取り合ってくれなかった。それでもみんなコミュニティを大事にしようと頑張ってきたおかげでこの日を迎えることができた。1,000戸を超える世帯が住むことになるが、街のシンボルに誇りを持って新しい街づくりを行っていきたい」と述べた。
続いて登壇した野村不動産・宮嶋誠一社長は、「新しい街には3,000人の方が住まわれるが、先進の安心・安全の素晴らしい街づくりに参加できたことが嬉しい。企画に際しては、10万人に上る方々の声を1,000に集約して、そのアイデアをすべて反映させた。1,000戸近い販売戸数ではあったがわずか6カ月というに短い期間に完売できたのも街の価値を評価していただいた結果。建物の管理は私どもの管理会社で行わせていただくが、全国の再開発の見本となるよう今後も継続して街づくりにお手伝いさせていただく」と力を込めた。
さらに、設計・監理を担当した久米設計・山田幸夫社長は、「東京の宝となる新旧住民が一体となった街が完成した。その立役者はまちづくり研究所(代表)の増田(由子氏)さんであり、共用部分などには野村(不動産)さんの知見が完璧に近い形で反映されている。建物の強度も極めて高い」と語った。

左から笹野氏、宮嶋氏、山田氏
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このマンションについては、先の竣工見学会でも記事にしているのでそちらを読んでいただきたいが、なによりも再開発組合が竣工祝賀会への参加を呼び掛けてくれたのが嬉しい。このような祝賀会へのマスコミの取材はほとんどないはずだ。
何人かの地権者の方に話を聞いたので、話されたほとんどそのままを紹介する。
まず、笹野理事長(72)。「昭和45年、そば屋を開業した。5坪ですよ。いい大家さんでね、その6年後土地を分けてくれた。昭和60年に3階建てのコンクリに建て替えてね、その2年後に地上げか始まった。坪400万円でも売れたんですがね、街が好きだから売る気はなかった。地権者には(土地が)3坪足らずの人もいるし5坪以下は10軒以上ある。大変苦労しました。そば屋? 怪我をしましてね、先月で店じまいしましたよ」
次に80歳代の女性。「夫はね、シベリア抑留帰還者でね、頑固者でしゃべりたくないタイプでね、私は都会育ち、どこかって? 深川ですよ。夫? 夫はね、田舎育ち。東北の仙台かそこら。良かれと思って結婚しましたがね、育ちも考え方、価値観も全然違うから、わたしね、一度、子ども連れて逃げ出したんですよ。わたし? 幼稚園の先生をしていたので、アパートを借りて…自分の家が持ちたくて10坪の家を買ったんです。50年くらい前ですかね。新宿は安いものも高いものもたくさんある。住めば都ですよ。夫もね、カラオケなんかに行くようになってずいぶん変わりましたよ。いまはちょっと具合が悪いですけどね」
60歳代の女性。「生まれたときは10坪の長屋でした。当時はたくさん長屋があったんです。(その後、土地を取得されたのか)地上げ? 大変でしたよ。わたしの職場まで押しかけてきた。コリンズ。30歳代の後半でした。街が好きだから売る気はなかったですね。新居? 今日初めて内覧会がありまして、わたしたちが住むベントテラスを3回も見ましたが、畳が小さかったですね(畳は団地サイズだからやむを得ない)。タワー棟の共用施設が使えないのが残念(管理組合はタワー棟、地権者のベントハウス、賃貸棟などで別々)」
もう一人、47歳の航空会社に勤務する男性。「親が事業をやっておりまして、土地は60坪くらいでしたかね。バブルの時は学生でしたから、経験がないですね。所有しているのはタワー棟ですが、わたしはマンションに住んだことがないので、中野の一戸建てに引っ越しました。マンションは賃貸にします」
聞けば地権者それぞれのドラマになると思うが、記者は土地を売却し移転された方々がどのような生活をしているかも気になった。バブルは人も街もある意味では破壊した。「富久」の皆さんはよくぞ再建されたものだ。

「富久クロス」完成 四半世紀の波乱乗り切り街再生(2015/9/14)
小田急×コスモスイニシア 「東林間」で素晴らしいリノベーションマンション

「リノグラン東林間アリーナ」エントランス
小田急不動産とコスモスイニシアの初の共同リノベーションマンション「リノグラン東林間アリーナ/ブライト」が報道陣向けに公開された。小田急不動産がバブル期に企画して所有してきた築24年の賃貸マンション2棟をそれぞれリノベーションして分譲するもので、バブル仕様にコスモスイニシアのノウハウが融合した素晴らしいマンションに再生された。
物件は、小田急江ノ島線東林間駅から徒歩2分、相模原市南区上鶴間六丁目に位置する4階建てアリーナ棟20戸(販売14戸)とブライト棟19戸(完売)の39戸。アリーナ棟の専有面積は62.02~84.18㎡。9月18日に分譲する2期1次(1戸)の価格は3,398万円(84.18㎡)、全体の坪単価は150万円台の前半。既存建物は1991年3月に竣工。改修工事は2015年1月。施工は大和小田急建設。売主は小田急不動産・コスモスイニシア。
建物の診断・大規模修繕・共用部の改修・設備の一新・30年の長期修繕計画など一棟まるごとリノベーションを施し、設計変更にも対応する「オーナーズチョイス」を提案。クロス貼り、漆喰塗が体験できる「セルフリノベーション講座」が受けられ、スケルトンの段階で契約し、専門家のアドバイスのもと設計変更にともなう費用負担はローンに組み込めるようにしているのが特徴。
アリーナ棟の現在の販売対象14戸のうちすでに7戸は販売済み。分譲対象外の4戸は賃借人が住んでおり、賃貸借契約が解除になった段階で分譲に切り替えることになっている。

小上がり和室があるカリンのフローリングが施されたモデルルーム

「リトルテーマパーク、が楽しい家」モデルルーム

「リトルテーマパーク、が楽しい家」モデルルーム
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バブル仕様の社宅がリノベーションにより分譲されたのは結構見ているが、賃貸マンションは初めてだ。〝さすが小田急〟というか、信じられないプランと設備仕様だ。いかにバブル期とはいえ、よくぞ平均で75㎡(アリーナ棟)、81㎡(ブライト棟)の賃貸を企画したものだ。
外壁はもちろんバルコニー、階段はタイル張り。一部にはライトコート(吹き抜け)もある。住戸の天井高は2400ミリだが、2重床・2重天井で浴室の段差はほとんどない。当時分譲されていたら、坪単価は300万円台になっていたかもしれない。
そんなレベルの高い賃貸をコスモスイニシアが最高のものに仕上げた。従前は外部とオープンになっていた地階の駐車場に電動シャッターを設置し、洗車スペースも設けた。設置はされていたが使用されていなかった地階のエレベータを利用できるようにし、駐車場から直接住戸へのアプローチも可能にした。アリーナ棟の駐車場の屋上はテラスに改修した。エントランス部分には高さ5メートルのイロハモミジなどの高木を配した。
さらに、一部のモデルルームの床は無垢のカリン材のフローリングとし、キッチン天板はシーザーストーン、和室は小上がり仕上げ。食洗機も標準装備。
販売を担当しているコスモスイニシア マンション分譲二部一課チーフ・田中一如氏は、「二月以降の来場者は131組だが、コンスタントに集客できている。周辺に新築物件が全くなく、やや離れているところでも2,000万円台、3,000万円台がほとんど。当社の物件がプライスリーダーになっている」と話した。
記者は、いま新たに用地を取得して分譲マンションを建設するとしたら、坪単価は200万円を突破すると考えた。150万円という単価は極めて安い。ただ、こういったリノベーションマンションはそう供給されないはずだ。小田急とコスモスイニシアがコラボしたから実現した。

セルフリノベーション体験イベント

共有部のオープンスペース

駐車場
野村不動産他「富久クロス」完成 四半世紀の波乱乗り切り街再生

完成した、「富久クロス」
野村不動産は9月9日、「富久クロス」(全1,222戸)の竣工記者見学会を行った。このマンションについては既報の記事を読んでいただきたいが、坪単価328万円という分譲当時としては高かったにもかかわらず、1期1~3次、2期まで即日完売し、分譲992戸がわずか6カ月で完売して話題となった。
完成した建物を見て、人気になるのも頷けるのだが、バブル崩壊-リーマンショック-東日本大震災-建築費高騰などの〝失われた25年間〟の荒波を乗り越えてよくぞ見事な再開発を成し遂げたと感服するほかなかった。
見学会で挨拶した同社開発企画本部プロジェクト推進部長・渡辺弘道氏は、「バブルによる地上げで虫食い状態になっていたところをバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などの度重なる(再開発計画の)存続の危機を地権者、地元、行政、大学などが連携して乗り越え、平成2年の勉強会から25年目にして竣工にいたった。当社は平成22年に特定業務代行として事業に参画してきた。商品企画にあたっては、実に10万人の意見を募り、その中から1000件に絞り込み、その声をすべて建物に反映した。わずか6カ月で完売できたのもそのような企画が評価されたからだと考えている。当社はいま約30地区で再開発計画を進めているが、これはデベロッパーのなかでもっとも多いのではないか」と胸を張った。
渡辺氏は、リーマンショック前の分譲単価は坪400万円くらいが想定されていたことも明らかにした。
また、総合プロデューサーとして19年にわたってこの計画に携わってきたまちづくり研究所代表取締役・増田由子氏は、「激しい地上げで247世帯が120世帯に半減した。何度もくじけそうになったが、2002年に都市再生緊急整備地区に指定されて流れが変わった。経済状況の悪いときに大変苦労したと」と、計画を振り返った。

地上げからの〝守り神〟になったお稲荷さんも再生された

ベントテラス
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記者は前職のとき、勤務先が近くだったこともあり、当時のすさまじい地上げの実態を取材している。いまの方は理解できないだろうが、この富久も地上げが始まった昭和60年代の初めの地価は坪500万円くらいだったのが、最終的には3,000万円に吊り上った。西新宿も同様に坪300万円がゼネコンに売却されたときは平均3,000万円だった。接道部分などは坪1億円で売買された。
富久も西新宿もそれこそ街が死んでいた。地上げ屋が怖くて歩くのも怖いくらいだった。
あれから25年。富久も西新宿も見事な街に生まれ変わった。関係者の努力には頭が下がるばかりだが、どれだけの犠牲を払ったかを考えると言葉が詰まる。
地上げが結局成功しなかったのは、当地にあったお稲荷さんの権利者が80人くらいおり、その所在が分からない人もかなりいたのがその理由だと聞いた。そのお稲荷さんに賽銭泥棒が入ったことは記者もよく知っている。
お稲荷さんは〝地域の守り神〟として敷地内に祀られている。

左側の壁は庵治石が張られ、正面は壁面緑化が施されたエントランスホール
◇ ◆ ◇
完成した建物をみて驚いたのは、まず共用施設の充実ぶりだった。エントランスホールの高さ5mくらいの壁には大きな庵治石が50枚は張られていたはずだ。ホール正面にやはり高さ5m、幅約5mの観葉植物の壁面緑化が施されていた。
3室あるゲストルームのうちの和室タイプの床は無垢のナグリ仕上げとなっており、フィットネスルーム、パーティラウンジ、キッズラウンジ、スカイラウンジ、図書コーナーなどの10のラウンジも充実している。各フロアの廊下には版画などのオブジェが200点くらい展示されている。
接地型の住宅に住みたいという地権者向けにペントテラス住戸17戸や地権者が所有する7階建て賃貸住棟(121戸)が併設されている。スーパーや認可保育所も設けられている。

ラウンジ

アール状になっている共用部分の配置
大成有楽不動産他「ユトリシア」完成 坪単価は115万円

「ユトリシア」
大成有楽不動産が同社など6社JVの習志野市郊外の大規模分譲マンション「ユトリシア」の最終街区が竣工いたのに伴い、報道関係者向けに完成お披露目会を行った。
「ユトリシア」は壱番街から五番街で構成される全1,453戸、総開発面積約66,000㎡の大規模分譲マンション。2009年2月に壱番街が竣工して以降、既に1,100世帯が居住。ガーデンや本格的体育館をはじめとする30もの共用施設が集まる「センタープロムナード」、様々な菜園がある中庭など広大な敷地を利用したランドスケープデザインが特徴。共用施設を活用したコミュニティ活動は2014年度の「グッドデザイン賞」を受賞している。
物件は、京成本線実籾駅から徒歩11分、習志野市東習志野2丁目に位置する14階建て全1,453戸。専有面積は71.34~123.26㎡。施工は長谷工・大成建設共同企業体。売主は同社のほか名鉄不動産、三交不動産、東レ建設、新日本建設、長谷工コーポレーション。
分譲開始は7年前。当初は坪単価130万円で分譲されていたが、市況の変化を受けて現在は115万円。最終街区の「五番街」272戸のうち約130戸が分譲済み。住戸プランはディスポーザー、食洗機が標準装備、バルコニー奥行きは約2m。

中庭

中庭に設けられている菜園(手前はオクラ、その奥にはダイコン、サツマイモ、シソなどが植えられていた。オクラの実はどうして下ではなく上を向いているのか。そう言えば、どうして朝顔のツルや記者の頭は左巻きで、巻貝はほとんどが右巻きなのか)
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現地を見学してランドスケープデザインが優れているのに目を奪われた。とくに敷地を南北に貫く「センタープロムナード」と、横軸に配した中庭がいい。提供公園には生け垣の迷路もあった。休日になると子どもたちで大賑わいになるそうだ。
坪単価115万円というのは、新築の単価では考えられない安さだ。都心へのアクセスはいいとは言えないが、30坪で3,000万円台という価格は魅力だ。竣工を受けて販売スピードは加速するのではないか。
ゲストルームなどを併設した体育館にも驚いた。2階建てで建坪は約100坪くらいではないか。公式のバスケットボールのコート(縦28m、横15m)も可能だという。同じようなものはこれまで「ガーデンアソシエ」(大船)と「コロンブスシティ」(千葉市)にも建設されたという。
われわれはマンションの価値を坪単価でしか評価しない測れない習性がある。中小規模マンションにはこれが当てはまるのだが、大規模物件では共用施設とか緑の量と質を適正に評価する指標を持たないといけないことをつくづく感じた見学会だった。

体育館

東急不動産 「品川勝島」完成 「シェア・デザイン」の価値をどう伝えるか

「ブランズ品川勝島」のエントランス付近のケヤキの植栽
東急不動産は9月8日、国土交通省の平成25年度(第2回) 住宅・建築物省CO2先導事業に採択され、同社の新しい暮らし方提案「シェア・デザイン」の第一号事例「ブランズ品川勝島」が竣工したのに伴い、記者見学会を行った。
物件は、京浜急行鮫洲駅から徒歩11分(東京モノレール大井競馬場前駅から徒歩8分)、品川区勝島1丁目に位置する18階建て全356戸。引き渡しは2015年9月29日の予定。分譲開始は昨年の7月。これまで総戸数の約75%が供給ずみだ。
この物件については、同社が分譲前に記者発表したときの記事を参照していただきたいが、当時〝世界初〟と言われた東京ガスのマンション向け「エネファーム」を全戸に搭載しているのが大きな特徴だ。
マンション向け「エネファーム」はその後、10数物件で採用されており、今後の普及が期待される。縦約400ミリ×横約400~560ミリ×高さ約1800ミリとややかさばるのが課題だ。
「シェア・デザイン」は、エネルギー、環境、コミュニティの3つのテーマをそれぞれシェアすることで、省エネ・省CO2の暮らしを進めようというもので、同社と東急コミュニティー、東急住生活研究所が共同して提案した「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」が国交省の先導事業に採択された。プロジェクトには石勝エクステリア、東急ホームズ、東京都市大学、東急ストアなどの東急グループも参画している。

エントランス付近のケヤキの植栽

エネファーム
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販売開始から1年ちょっとで全戸数の75%が供給できたということは、後発の大成有楽不動産 「オーベルグランディオ品川勝島」(452戸)との競合を考えればよく売れていると評価できる。都心部のマンション価格相場は強含みで推移しているので、完成してからコンスタントに売れていくのではないか。
ただ、率直に言えば、同社が力を入れている割には販売スピードはそれほどでもないという印象を受けた。
それはなぜか。分譲前の記者発表時にも感じたことだが、省エネ、環境、コミュニティはそれぞれ喫緊の課題で、当然デベロッパーもこれらを重要なテーマに掲げている。ユーザーの意識も高まっており、これらが購買動機の上位を占める物件もある。
しかし、記者はまた別の見方をしている。省エネ、環境、コミュニティは欠かせないものではあるが、デベロッパーが期待するほどユーザーは反応を示していないのではないかということだ。
その理由として、エネファームは一次エネルギー利用率が85.8%で、火力発電の37%よりはるかに高く、年間の光熱費が約4.8万円節約できるとか地球環境にやさしいなど〝見える化〟が理解されやすいのだが、環境をシェアしたりコミュニティをシェアしたりすれば具体的にどのようなメリットがあるのかが分かりづらいので、購買動機につながらないのではと思っている。
いい例が植栽だ。完成した建物の公開空地には鹿児島から取り寄せたケヤキの大木が16本も植わっていた。最近のマンションの外構に多く植えられるのは値段の安いシラカシだが、ケヤキとどれくらい差があるか、記者が販売担当者なら来場者にきちんと伝えるが、デベロッパーの販売担当者は知らない人のほうが多いのではないか。
また、都の「マンション環境性能表示」でも満点の星15個に一つ欠けるだけの14個を獲得しているのだが、この価値をユーザーにきちんと伝えられているのか。記者はこれもまた高く評価している。
これは同社だけの問題ではない。とくに電鉄(系)会社は、良くも悪くも鷹揚なところがある。各社が知恵を絞って〝見せる化〟をより一層進める必要がある。「コミュニティの価値」を価格に換算したら250万円というデベロッパーのアンケート調査結果もあるが、これはそのまま鵜呑みにできない。実際の消費行動はまた別ではないか。
それと、やはり基本的には住戸プランの差別化というか魅力づけをしないと、立地条件に難のある物件は消費者の需要を喚起・創造することはできないと思っている。その点で、同社のプランはどうだったのか。
例えば食洗機。記者は共働き世帯で食洗機は必需品だと思っているが、同社の物件はオプションだが、大成有楽の物件は標準装備されている。
〝世界初〟が強調された割には、〝世界初〟に見合うメリットを具体的にユーザーにアピールできていないのではと感じた。
かなり批判的なことを書いたが、東急不動産はユーザーから見たら東急電鉄グループだ。電鉄(系)会社の総合力は普通のデベロッパーより高いと思う。東急電鉄も毎日数百万人の足になっている。大学まで持っているデベロッパーなどない。それだけに歯がゆさを感じるのだ。

エントランス部分

シェアラウンジ

「リサイクルシェアスペース」(コンシェルジュの了解を得て不用品を交換したり売買できるのだという)
三井不レジ キッチンを動かせる画期的商品「Imagie(イマジエ)」開発

キッチン
三井不動産レジデンシャルは9月8日、ライフスタイルやライフステージに応じて住戸内のレイアウトを変えられる間取りフリープラン「Imagie(イマジエ)」を開発し、10月末に分譲するマンション「パークホームズ赤羽西」に採用すると発表した。キッチンをキャスター付きとして可動させるというもので、前代未聞の企画にユーザーがどのような反応を示すか興味津々の物件だ。
物件は、都営地下鉄三田線本蓮沼駅から徒歩7分、北区赤羽西六丁目に位置する10階建て全160戸。専有面積は68.63~87.64㎡、価格は未定。竣工予定は2016年9月中旬。施工は長谷工コーポレーション。
「Imagie」とは、「imagination(想像力)」と「ie(家)」を合わせた造語で、住む人が想像をふくらませることができる意を込めたという。
特徴は以下の6つ。①整形かつ天井・床面を完全フラットにした独自の空間設計②キャスターで可動するオリジナルキッチンユニット(Imagie kitchen)を新開発③専有部内の3カ所のキッチン接続ポートによって、キッチン移動工事の工程を大幅に削減④玄関前にゆとりあるウェルカムポーチを設けることで、バルコニーのような使い勝手を実現⑤プランに合わせて自由にグルーピングできる照明計画⑥主要な設備スイッチの集約で、空間レイアウトがさらに自由に-。
記者発表会の冒頭挨拶した同社開発事業本部都市開発二部部長・各務徹氏は、「マンションのマーケットは都心部を中心に順調だが、外部環境は建築費が高止まりし、お客様の選別も厳しくなってきている。企業努力をしないといけない時代だ。今回の新商品も多様化しているニーズに応えたものの一つ。新商品は専有部分の8割を自由にプランニングでき、しかも安価でできるのが特徴。これからもどんどん付加価値をつけて進化させていきたい」と語った。

キッチン下部キャスター(左)とキッチン接続ポート
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「Imagie」を商品化できたのは、排煙ダクトがいらない循環式レンジフードを設置し、IHを利用することで排煙の問題(ガスでは具合が悪い)をクリアしたことがまず挙げられる。
重さが400キロ近いキッチンをどう動かすかだが、これもキャスターを付けることで問題を解決した。キャスターを浮かせて床に固定する際の問題点も、京大防災研究所の実験で震度7相当でも強度は十分であることが確認できているという。
さらに、接続ポート(電気・給排水・給湯設備)を3カ所に設置したことで、間取りの可変性をさらに高めた。しかも、工事は10万円以内で収まるという。階高(約3m)はそれほど変えずに、玄関に入る前からスロープ式にして住居内をフルフラットにし、給排水管の勾配もクリア。二重床・二重天井にし、妻側住戸6戸に限定したことで、音の問題も解消できたという。ただ、ディスポーザーには現段階では対応できないそうだ。

「パークホームズ赤羽西」完成予想図
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この嬉しさは何に例えたらいいのだろう。例えば、難しい方程式が解けたとき、囲碁・将棋、カルタ、チェスで劣勢を一挙に挽回したとき、ジグゾーパズルの最後のピースがはまったとき、知恵の輪を解いたとき、こんがらがった毛糸玉をほぐしたとき、小指のトゲが抜けたとき、生え変わりの歯が抜けたとき、〝そこそこそこ〟おばあちゃんの肩のつぼを探り当てたとき、贔屓チームの起死回生の逆転満塁サヨナラ本塁打のシーンに出会ったときect.…
今回の発表会は、そんな嬉しさがこみ上げてきた。そして、ストンと胸に落ちるものがあった。同社の〝パークホームズ〟はたくさん見てきた。間取りプラン提案などは思い出せないくらい多く同社は熱心に取り組んできたし、可動間仕切りは他のデベロッパーも10年、20年前から取り組んできた。
何が嬉しかったかと言えば、キッチンをキャスター付きで自由に動かせることだった。現場に居合わせた開発協力企業の一つ、タカラスタンダードの担当者によると、可動キッチンは商品としてはあったそうだが、マンションなどの住宅は給排水、換気扇などの問題があり、採用するところは皆無だったという。
記者も可動キッチンなど考えたことがない。しかし、IHの普及と循環式レンジフードの開発によって、考えとしてはキッチンを自由に設置することは不可能ではないと思っていた。野村不動産と長谷工コーポレーション、ブリヂストンが共同開発した「サイホン排水システム」によって、マンションの間取りはそれこそ自由自在にできると考えていた。
今回のシステムは「サイホン排水システム」ではないが、それを先取りしたものだ。よくぞ考え出したものだ。開発に当たっては日建ハウジングシステム、タカラスタンダード、富士工業販売、大塚家具、プロセブン、パナソニック、LIXIL、長谷工コーポが協力会社として関わっている。天晴れ、快哉を叫びたいくらいだ。
嬉しいことはこれだけではない。冒頭挨拶した各務氏には、同社と伊藤忠都市開発が12年前、全701戸の平均専有面積が120㎡という、テーマが〝絆〟の「パークシティ東京ベイ新浦安」を3カ月で完売したときお会いしている。
各務氏は当時、商品企画担当で、常識を超えた企画を「考え出すと夜も寝られず、悶々とする日もあった。『もっと小さくてもよかったのではないか』と考えたこともあった。気持ちがぐらついたとき、『経営陣も『面白い』といってくれた」と語っている。東日本大震災のあと〝絆〟は流行り言葉になったが、同社はそのころから〝絆〟をテーマにしていた。
あの「新浦安」を手掛けた各務氏がまた、キッチンを可動式にするなど信じられないようなプランを開発し、責任者としてOKをよくぞ出したものだと思う。根っからの企画マンなのだろう。
「Imagie」を説明したのは、各務氏の部下でもある同部開発室主任・長戸佐紀子氏だったが、長戸氏もまた嬉々として商品企画について記者団の質問に答えていたのが嬉しかった。
いま記者は「女性活躍」をテーマに取材をしているのだが、同社はここ数年、ビッグプロジェクトも含め女性担当者が説明するケースが増えている。長戸氏は今回の商品開発に当たって、「キッチンを動かしたいという考えはかなり前から脈々と受け継がれてきた。キッチンを動かしたら楽しいじゃないですか。このプロジェクトにはすべて私も関わってきました」と話した。
嬉しかったのはまだある。販売を担当する山際寛生氏とばったり出くわしたのだ。これは取材の趣旨とは離れるのだが、山際氏は第三企画が主催するRBA野球大会に平成12年にデビューした。
愛知の名門・東邦-中大硬式野球部出身で、身長は185センチ。打席こそ4打席と少なかったが、3打数2安打5打点、本塁打も2本放った。投げては王者ケンコーポの小笠原から速球で三振を奪うなど、奪三振率は15.0をマークした。
あの怪力ぶりはいまでも忘れられない。その後、仕事が忙しいのか野球大会にはほとんど出場しなくなったが、こうして現場で活躍されているのが何よりも嬉しい。山際氏のように販売現場ででも頑張っているRBA野球選手は何百人もいるはずだ。
長々と書いてしまったが、連綿と引き継がれてきた同社の商品企画担当者の考え・夢がこうして実現したことに記者は感動を覚える。「Imagie」にユーザーがどのような反応を示すか、楽しみだ。人生に夢がある若年層ファミリーには大うけするかもしれない。その価値は「100万円高くても安い」と若い女性記者が語った。
ウェルカムポーチがまた面白い。これに似たものは同社がもう20年も前にどこだったか忘れたが、提案したことがある。この提案も無限の可能性を秘めている。
最後に坪単価について。同社は「価格は未定」としているので、以下はあくまでも予想だ。外れても責任は取らない。
実は、同業の信頼できるある記者と行く途中で一緒になり、あれやこれや歓談し、二人で坪単価はいくらになるか話しあった。その記者は「坪250万円くらいか」と投げかけたので、わたしは「250万円でも驚かないが、三井さんはそこまで高値追求しないんじゃないか。230万円というのはあり得ないが、坪240万円くらいで分譲してくれたら拍手喝采したい」とかえした。分譲は10月末だが、もう少しすれば価格ははっきりする。坪240万円はいい線だろうと思う。

ポーチ扉

ウェルカムポーチ

長戸氏

山際氏
「類まれな」レベルの高さ 野村不・三井レジ「桜上水ガーデンズ」完成

D棟屋上部分からクラブハウス、B、C棟を望む
野村不動産は8月27日、このほど建物が完成した三井不動産レジデンシャルとの共同建て替えマンション「桜上水ガーデンズ」を報道陣向けに公開した。敷地約4.7haの建て替えは23区内最大級のマンションで、全9棟が免震、既存樹を多数残したランドスケープデザイン、駐車場の地下・屋内化とその屋上緑化、〝3~5戸1〟エレベータ、天井高約2.6mの居住空間など総合的な評価では京王線のナンバー1マンションが完成したといえそうだ。
物件は、京王線桜上水駅から徒歩3分、昭和40年完成の「桜上水団地」(17棟404戸)を9棟878戸に建て替えたもので、敷地規模約4.7haの建て替えプロジェクトとしては23区最大級。6階建て14階建て全9棟を全棟免震構造にしたのも都内では例がないと思われる。事業主は同社(事業比率50%)と三井不動産レジデンシャル(同)で、野村不動産が幹事会社。事業コンサルは日建設計。設計は日建ハウジングシステム、施工は大林組・清水建設。建物の絶対高さ制限は31mだが、地区計画によって45mに緩和されている。
従前の豊かな緑を継承しているのも特徴の一つで、法定容積率200%を160%に抑えることで緑化率・空地率を高め、世田谷区の保存樹に指定されたケヤキの大木など既存高木を180本残したランドスケープデザインとしている。駐車場(476台)を地下・屋内化しその屋上を緑化している。
住戸プランでは、従前の〝2戸1〟階段を継承するため〝3~5戸1〟エレベータを設置して両面バルコニータイプを多くし、天井高約2.6mを確保した。
見学会に臨んだ同社住宅事業本部マンション建替推進部部長・岩田晋氏は、「団地の将来を考える会が発足したのは平成元年。当社と三井さんが事業協力者として参画したのが平成14年。この間、合意形成に向け、組合員の人数だけあった様々な意見を考えられないような長い時間をかけ、苦労してまとめられた地権者の方々の努力がすべて。180本というびっくりするほどの既存樹を残し、免震、地下駐車場、両面バルコニーなど、四半世紀を経て類まれなマンションに生まれ変わった。当社は完成済みも含めて16件の建て替え事業に参画しているが、老朽化マンションの再生は社会的使命」と語った。物件は竣工を待たずに完売している。
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地権者の〝持ち出し〟がない建て替えマンションとしては都心部の条件に恵まれているところはともかく、準都心・郊外ではこれが最後かもしれない。タワーマンション以外では、全棟免震の記録では、ナイスの「ヨコハマオールパークス」12棟1,424戸の例があるが、都内ではこのマンションが初めてかもしれない。
既存樹180本のうち区の保存樹木は14本。2013年に竣工した大成有楽不動産「芦花公園」の保存樹木は10数本。残念ながら正確には何本だったかは当時取材できなかったのだが、「数本」というのは普通は5~6本だろうが、3~4本をいう場合もある。果たして多いのは今回の「桜上水」か「芦花公園」か。規模が小さいので、密度としては「芦花公園」に軍配はあがるがどうだろう。保存樹木に指定されると、剪定など維持管理に補助が出るはずだ。

「桜上水ガーデンズ」エントランス部分

クラブハウス前から

クラブハウス屋上のテラス・ガーデン(手前はヨーロッパから取り寄せたという日本に1台しかない卓球台)
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岩田氏が「類まれな」と形容したが、これは〝誇大広告〟でも大げさな表現ではない。記者も心底からそう思った。と同時に、想像をはるかに超えるレベルの高さに、記者のイマジネーションの貧しさに頭をどやされたような、穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさを覚えた。
このマンションについては、分譲開始前に記者発表会が行われており記事にした。
その記事を読んでいただきたいのだが、記者も当時の記事を読み返した。特徴は過不足なく、つまりニュースリリースに盛り込まれていることは紹介できていると思う。
しかし、当時、記者は坪単価330万円というのはかなり高いと考えた。そこで、「単価設定について『高くないか』と質問した。当時の同社広報部長・北井大介氏は『マンションの価値は単価だけではない。二度と出ない立地で、免震や緑化も図った。最上級のマンションで、価格は妥当と考える。お客さまにも評価されるはず』と答えた」と書いている。北井氏の仰る通りだが、それでもずっと今日の見学会まで「高い」と思っていた。
そして今日、完成した建物をみた。最初にエントランス部分の差し渡し1mくらいありそうな世田谷区の保存樹に指定されているケヤキの大木が目に飛び込んできた。舗道は本物の石が採用されていた。これには度肝を抜かされた。
記者は京王線に長く住んでおり、主だったマンションはそれなりに見てきているから言えるのだが、総合的な評価は、このマンションが間違いなく京王線ナンバー1と確信を持って言える。(井の頭線には三井不動産レジデンシャル「パークシティ浜田山」があるが)
問題は、分譲開始前の記者発表会でどうして「最上級のマンションになる」という確信が持てなかったのかということだ。過ちを犯した最大の原因は、「高い」という先入観が先走り、物件を総合的に評価しなかったことだ。駐車場地下化、3~5戸1エレベータ、日建設計、既存樹180本などの価値を過小評価したことだ。
もう一つ、これは言い訳になるのだが、記者は年間100件くらいのマンションの取材を行っている。その多くは分譲開始前や分譲中で、せいぜいモデルルームを見たりニュースリリースを読んだりして商品企画の良否などを判断する。その判断はそれほど間違っていないと思う。
ところが、完成後のマンションを見学するのは年間で20件あるかどうかだ。デベロッパーが竣工見学会をあまりやらないからだ。売れるか売れないか、高いか安いかの判断はできても、実際にどのような建物になるか分からない-これが記者の決定的な欠点、弱点、泣きどころだ。
さらに言わせていただければ、これはデベロッパーにもその責任の一端がある。販売時に見学会を行っても完成後の見学会はあまりやらない。ここに問題がある。記者を育てる意味でも各社はどんどん竣工見学会をやるべきだ。実際のものをみないとその良否はわからない。最近見学会を行ったコスモスイニシア「武蔵新城」、大京「港北ニュータウン」も素晴らしかった。

駐車場の屋上を緑化した「スクエアガーデン」

既存の大谷石や銘板を配した「ビンテージガーデン」

