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 首都圏の分譲マンション単価がどんどん上昇している。不動産経済研究所の調査によると、2014年11月の1戸当り価格は5,224万円、1㎡当り単価は73.7万円(坪243万円)となり、2011年比で1戸当り価格は34.0%、1㎡当たり単価は35.7%それぞれ上昇している。

 同研究所の調査は、供給時点での調査であるから遅行指標だ。では、この先々単価はどうなるのか。業界内ではまだまだ単価は上昇するとみられているが、先行指標でもある国土交通省の住宅着工統計の工事予定額の推移を見た。

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 建築基準法15条第1項は、建築主が建築物を建築しようとする場合、建築場所、工事の予定期間、建築物の用途、建築物の使途、構造、床面積の合計、工事費予定額などを都道府県知事に届け出なければならないと定めており、数字は毎月、国土交通省の住宅着工統計で発表されている。別表は、統計数字のうち、鉄筋コンクリート造(RC)の分譲住宅(マンション)の工事予定額の推移を全国と東京都でみたものだ。マンションには鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC)もあるが、今回は除外した。

 工事予定額とは、建物の建築に要する金額のことで、既存建物の除却費、造成費などは含まれず、あくまでも建築主が届け出た金額である。

 したがって、この工事予定額はおおよその目安を示すもので、実際の建築費とは乖離がある。しかし、どれくらいの乖離があるかはゼネコンもデベロッパーも建築原価を公表しないので分からない。当然のことながら、分譲価格には建築費と土地代、デベロッパーの販管費、利益などが上乗せされる。それが分譲坪単価だ。

 とはいえ、件数が多い大都市圏などの工事予定額の推移を見れば先々分譲単価がどうなるかが読める。マンションの分譲が許可されるのは、建基法の建築確認の許可が下りてからだが、一般的には工事着手してから数か月以降と考えてよい。ここ数カ月の工事予定額は間違いなく今後分譲されるマンションの分譲単価に反映される。先行指標として参考になるはずだ。(分譲価格は市場が決めるものであるため、必ずしも原価がそのままオンされるわけでもないが)

 前置きが長くなった。さて、その工事予定額の推移。それほどマンション単価の上昇が顕著でなかった2011年、2012年あたりの1㎡当たり単価は全国平均で18万円(坪59.4万円)、東京都は21万円(坪69.3万円)だった。

 2013年になると全国で19万円(坪62.7万円)、東京都で23万円(坪75.9万円)に上昇。はっきりと上昇傾向が見て取れる。業界内で「工事費が高くなってきた」という声が聞かれたころだ。

 そして翌年の2014年になると、デベロッパーが「工事を発注しようにも高くて発注できない」と悲鳴を上げた。いつもデベロッパーに叩かれてきたゼネコンはうっ憤を晴らすかのように、利益率の高い震災復興や公共事業、ビッグプロジェクトにシフトしたからだ。

 2014年4月以降の表をみれば、デベロッパーの悲鳴が裏付けられる。毎月のように金額が上昇しており、東京都は4月に27万円(89.1万円)を記録。その後は若干下がってはいるが、2011年、2012年比で2~3割上昇している。冒頭に紹介した不動産経済研究所の上昇率のほうが高いのは、売れ行き好調を背景にしたデベロッパーの強気な値付け設定にあると見た。

 注目したいのが、11月の東京都の1戸当たり工事予定額だ。1,377万円÷25万円­­­=55.1㎡、つまり1戸当たり平均の広さは1LDKか2LDKくらいの広さしかないということだ。これはたまたまコンパクトマンションが多かったための要因なのか、それとも〝いつか来た道〟だ。昭和50年代の〝60㎡の3LDK〟に逆戻りするのか。注視する必要がある。

 問題はまだある。この先どうなるかだ。10年間で200兆円とも言われる国土強靱化基本計画、リニアにオリンピックetc.…、ゼネコンが仕事に困ることはまず考えられない。分譲マンションにも単価上げ圧力がかかるのは間違いない。

 しかし、消費者の取得能力にも限界がある。富裕層やアッパーミドル向けはまだ余力があるかもしれないが、第一次取得層はもはや限界を超えている。専有面積圧縮も打開策にならない。都内の分譲単価は軒並み坪200万円以上になる。20坪で4,000万円以上だ。神奈川県、埼玉県、千葉県の遠隔地でも坪150万円以下はあり得ないのではないか。

 20坪で3,000万円以下のマンションが姿を消すのは何とも情けない。もう国にすがるしかない。とはいえ国も病んでいる。国家予算95.9兆円のうち歳出は社会保障費が31.5兆円、国債費が23.5兆円だ。双方で5割を突破する。

 この矛盾を一挙に解決するにはハイパーインフレしかないように思えるのだが、みなさんはどう考えるか。バブルに浮かれた経験がある記者は、二度とあの狂乱とその後の悪夢を見たくない。せめてもの救いはただ同然のローン金利くらいか。

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マンション管理協の新年賀詞交歓会(帝国ホテルで)

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山根理事長

 マンション管理業協会(管理協)は1月14日、恒例の2015年新年賀詞交歓会を開き、マンション居住者の防災意識を高め、公共性が高いマンション共用部に対する抜本的な税制の見直しを要求し、マンション管理のプレゼンスを劇的にあげるために活動することを誓いあった。関係者ら約500人が集まった。

 冒頭、挨拶に立った山根弘美理事長(ダイワサービス会長)は、①節目の年②消費税対応③「マンションのWa」の三点について話した。

 節目の年については、今年は戦後70年、第一次マンションブームからは50年、阪神・淡路大震災からは20年の節目の年であるとし、「マンションは耐震性に優れ、災害時に多くの国民の命を守る、都市のシェルターでもある。そのマンションに暮らす住民の防災意識を高め、防災計画の策定、訓練の活性化、そしてハートの継承」が必要とし、「それを後押しする仕組み、制度、人材育成が必要」と語った。

 消費税対応については、消費税が10%に引き上げられたら、修繕積立金会計など管理組合収支が深刻な事態になるとし、「マンション共用部は歳運営の効率、インフラ効率の切り札であり、公共性の高いマンション共用部の維持管理に対する抜本的な税制見直しが必要」と、税率の軽減措置を求めた。

 「マンションのWa」では、「マンションストック600万戸、その9割以上の方々とわれわれは繋がっている。われわれは主人公の管理組合の方々と防災、防犯、建物の長寿命化、入居者の高齢化、環境エネルギー対策などの課題に果敢に取り組んでいるが、その輪を一層広げるために取り組んでいこう」と呼びかけた。

 来賓として招かれた太田昭宏国交相は、「地方創生の核心はコンパクト+ネットワークの構築であり、これに果たすマンションの役割は極めて大きい。建物の老朽化と入居者の高齢化という二つの課題に対処し、資産価値を高め、安全性を高めていくことが求められている。昨年はマンション円滑化法が改正されたが、今年は法改正による取り組みが本格始動する年になる」と挨拶した。

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太田国交相

◇      ◆     ◇

 山根理事長のあいさつはご自身がマンションの管理員を務めていただけに具体的で面白いが、今日はとくに力が入っていた。

 記者が注目したのは、マンションの共用部に対する税の軽減措置を訴えたことだ。

 山根氏は、一戸建ての開発道路(街路)などはほとんどが自治体管理となっており、当然ながら固定資産税や都市計画税の住民負担はなく、街路灯や樹木管理なども自治体負担であるのに対し、近隣住民が利用するマンションなどの舗道、公園は組合負担となっていることに疑問を投げかけた。

 これは説得力がある。例えば街路樹。自治体が管理する高木の街路樹は年間1本で約1万円の経費が掛かっているはずだ。マンション敷地内にある一般の人が通れる舗道にある樹木は補助があって当然だ。来賓としてあいさつした区分所有法・マンション管理のプロ、井上義久・公明党幹事長も「考え直す時」と、税の軽減について触れた。

 「マンションのWa」の「Wa」は、「輪」でもあり「和」でもあるのだろうが、これも今後の大きなテーマになるはずだ。山根氏は「事実は小説よりも奇なり! 泣き笑いのドラマが満載。これを世の中に紹介し、表彰し、できればドラマ化していきたい。今年はマンション管理のプレゼンスを劇的に上げる」と力を込めた。以下、会場内で拾った声を紹介する。( )内は記者。(順不同)

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黒住氏

 黒住昌昭・前マンション管理協理事長(現URコミュニティ社長) (手? どうされたんですか)現場主義ですよ。年末に名古屋の営業所を訪問したとき、転んじゃった。受身の技は心得ているつもりだったが、骨折しちゃった(黒住氏は寝業師。立ち技に弱いということか)

 関敏昭・副理事長(野村不動産パートナーズ社長) (マンションコミュニティの見える化を図り、中古市場で正当に評価されるシステムの構築はどうですか)先生方はいろいろ言われるが簡単ではない。オハナ(野村不動産のブランド)のような郊外型ではいいかもしれないが、都心の物件では無理(オハナは建築費の上昇で供給できなくなるのでは)僕に聞かれても答えられないよ

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川崎氏(左)と中村氏

 中村元宣・副理事長(東急コミュニティー会長) 情報発信を積極的に行なっていく(乾杯の音頭で)コミュニティの見える化? 具体的にはなっていないが、身内では議論が出ている(マンションコミュニティの見える化は今後も取材していきたい)

 川崎達之氏(平成3年5月から19年6月までマンション管理協理事長) 理事長を辞めてから7年になるが、様変わりしたねぇ。今? なにもやってないよ。歳? 今年4月で84歳だよ。俳句? 時々やるよ。ここで一句? 即興ではできなくなっちゃった(俳句の達人)

 小佐野台・副理事長(日本ハウズイング社長) コミュニティの見える化? 関さん(野村不動産パートナーズ)がよく仰ることで、われわれはその取り組みに積極的でなかったかもしれない。反省も必要

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山根氏らと談笑する菅義偉・自民党幹事長 

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「パークタワー晴海」完成予想図

 三井不動産レジデンシャルは1月9日、今秋に分譲開始する「パークタワー晴海」(1,084戸)の情報発信について、LINEが提供するマーケティングサービス「LINE ビジネスコネクト」を採用すると発表した。

 分譲マンションを対象とした「LINE ビジネスコネクト」を活用するのは今回が初めて。多くの企業が活用している情報発信がメインの「LINE 公式アカウント」ではなく、対話型コミュニケーションを主軸にしたもので、ユーザーは、LINE およびWEBサイト上で情報検索・閲覧から各種質問・お問い合わせまで、即座に完結できるようになるのが特徴。

◇       ◆     ◇

 そもそも「LINE」が何なのかさっぱり分からないのでコメントのしようもないが、意図はよく理解できる。1人ひとりの顧客対応を徹底しようということだろう。

 いよいよ同社が「晴海」を分譲する。いったいいくらになるのか。坪300万円を突破するのは間違いないが、記者は高値追求しないと見る。320万円でどうだろう。

 対岸の「ららぽーと豊洲」まで水上バスを運行すれば豊洲駅まで10分くらいでないか。いっそのこと日本橋まで遡上すれば30分で着くのではないか。かつて水上バスは公共の用以外は許可されなかったが、最近は随分緩和されたという。晴海から船に乗って都心へ通勤というのも優雅でいい。時化のとき以外は遅延もないはずだ。

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ラインアカウントに友だち登録するとクジラのスタンプがもらえるという(記者は今日、広告に絵文字を使ったらどうかという提案を行った。これも同じようなものではないのか。マンションもイメージで売る時代だ。この漫画を利用すれば、価格発表、登録開始、完売、キャンセル発生、モデルルーム販売、竣工など様々な場面で的確なメッセージが伝えられる)

 

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「ザ・プレミアスカイ品川中延」完成予想図

 三菱地所レジデンス(事業比率90%)と総合地所(同10%)の「ザ・プレミアスカイ品川中延」を見学した。ガスや電力を効率的に利用することでCO2の排出量を大幅に削減でき、環境にも優しいマンション用の「エネファーム」を搭載した物件で、リビング天井高を約3m(一部)確保するなど見どころの多いマンションだ。

 物件は、都営浅草線中延駅から徒歩5分、または東急大井町線中延駅から徒歩7分、品川区西大井6丁目に位置する15階建て全100戸の規模。専有面積は54.01~76.61㎡、価格は未定。竣工予定は2015年9月上旬。施工は長谷工コーポレーション。3月から分譲する予定。

 特徴の一つはマンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」が搭載されていることだ。一昨年、東京ガスとパナソニックが〝世界初〟として発表した際、東急不動産と総合地所が採用するとされていた。

 その後、相次いで他のデベロッパーが採用したことから採用物件は9件に上り、世界初でも日本初でもなくなったが、エネルギーロスが少なく環境に優しい最新のシステムであるということに変わりはない。1600(幅)×959(奥行き)×高2200(高さ)とややスペースをとるが、メーターボックスに収まっているのであまり目立たないし、玄関周りをタイル仕上げにしており、違和感もない。

 それよりほかにこのマンションの見どころはある。12階以上ではあるが、リビング天井高が約3m確保されているのが特徴の一つだ。キッチン部分も約2400ミリある。他のフロアのリビング天井高は約2500~2800ミリ。

 敷地はチサンホテルの跡地。敷地内にケヤキの既存樹を残し、エントランス周りは天然石を配し、ラウンジにはフローリングを使用。住戸は東向き。インテリアデザインは「The SAZABY LEAGUE」が担当。直床でディスポーザも食洗機もついていないが、バックカウンターは標準で、水栓などはジーマテック。敷地西側に第2京浜が走っていることから、窓は2重サッシを採用。

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 肝心の価格は未定だが、三菱地所レジデンスが昨年末に発売し即日完売した「ザ・パークハウス品川荏原町」(47戸)は坪326万円だった。これよりは安くなるはずだ。都内城南のマンションはこれから軒並み坪300万円を突破する。

 事業比率が三菱地所レジデンスが90%で、総合地所が10%なのには驚いたが、双方の利害が一致したということだろう。商品企画は総合地所だが、モデルルームのインテリアなどは三菱地所レジデンスだ。

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エントランス(完成予想図)

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「シティテラス草加松原」完成予想図

 住友不動産は1月10日、総開発面積54ha、約6,000世帯の埼玉県草加市の「草加松原団地」再生事業の一環として開発を進めている分譲マンション「シティテラス草加松原」(538戸)のマンションギャラリーをオープンした。

 物件は、東武伊勢崎線松原団地駅から徒歩6 分、草加市松原二丁目に位置する11階建て「シーズン」259戸と「ガーデンズ」279戸の合計538戸。専有面積は70.17~87.79㎡、価格は未定だが、坪単価は170万円台の後半から180万円になる模様。竣工予定は「シーズンズ」が平成27年10月、「ガーデンズ」が平成28年4月。設計・施工は三井住友建設。

 「草加松原団地」は、高度成長期に東京のベッドタウンとして日本都市公団(現在、UR 都市機構)が開発し、昭和39 年に完成した当時は総戸数5,926 戸、324 棟が建ち並び“東洋一”と謳われたマンモス団地。建物の老朽化などにより、平成15年、UR都市機構が団地の建て替えに着手。

 全体がA、B、C、Dの4街区にゾーン区分され、駅に近いA街区から順次整備が進められている。全体で従前と同じ約6,000戸が賃貸と民間による分譲マンションになる予定。A街区は約1,500戸の賃貸と分譲が整備済み。今後、B街区約1,500戸(住友不動産のマンション以外は賃貸の予定)、C・D街区はそれぞれ約1,500戸が建設避ける模様だが、詳細は未定。一部戸建ても検討されている。あわせて草加市による道路や公園、公益施設の整備なども進められている。

 建物はコの字型に配置。住宅専有部は南向き75㎡(3LDK)が中心で、キッチンには生ゴミディスポーザー、浴室ミストサウナ、リビング床暖房など。

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 このマンションについては、先に書いた記事を参照していただきたい。分譲単価170万円台の後半から180万円は建築費がどんどん上昇していることを考慮すると予想通りではあるが、これまで松原団地駅圏で分譲されたマンションより単価は3~4割上昇。東武伊勢崎線沿線の埼玉県前駅圏と比べても最高値圏にある。専有面積は最低でも70㎡であることから多様なニーズに応えられそうになく、「高い」という印象はぬぐえない。これほどの戸数でプランが5つくらいしかないのも最近では珍しい。ユーザーがどのような反応を見せるか。

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「シーズンパークアベニュー」完成予想図

約6000戸の松原団地 建て替え本格化 戸数(面積)制限はなぜ(2015/1/12)

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「シティテラス草加松原」完成予想図

 住友不動産が東武スカイライン松原団地駅で約6,000戸の「松原団地」建て替え事業の一環として538戸のマンション「シティテラス草加松原」を分譲する。この記事を書く前に、分譲に際してURと草加市が協議してつけた要件について触れたい。建築費の上昇と厳しい面積要件によってサラリーマンのマンション取得は絶望的になってきた。

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 昭和30年代に建設された約40,000戸のUR賃貸の建て替えが決定されたのは昭和60年代の初めだった。松原団地も昭和39年に完成した総開発面積約54ha、全5,926戸の建て替え対象団地で、計画の概要がまとまったのは平成15年。この間、URと地元の草加市はなにをやってきたのだろう。

 「松原団地」という誰も知らないようなマイナーなイメージが、信じられないような時間的ロスを生んだのか。記者はマンションの取材などで「松原団地駅」には数回訪れているが、業界関係者も含めどこにあるかを知っている人は圧倒的少数だろう。獨協大学があることで知られている駅だが、駅名を「獨協大学」に変えて欲しいという地元住民の要求はあるようだが、具体的にはなっていないはずだ。スカイツリーラインの愛称をつけた時点で駅名を変えていたらまた違った展開になっていたのではないか。

 この問題はともかく本題に入る。すでにA街区の約1,500戸の分譲・賃貸はほぼ事業完了しており、これからB・C・D街区の開発が始まる。住友不動産が分譲するマンションはB街区に該当し、B街区のほかは全てURの賃貸になる模様だ。残りのC・D街区は未定で、戸建ても含め約3.000が建設される。

 建て替え事業が始まって10年間で約1,500戸だ。全て建て替えられるまで何年かかるか分からないが、これまでの事業スピードからして30年かかるのだろうか。これから少子高齢化が加速度的に進むことを考えれば、様々な問題を抱えているといえる。

 第一に指摘したいのが、今回、住友不動産にマンション用地を売却する際の条件だ。敷地面積約2haに対して、草加市とURが課した条件は1戸につき38㎡の土地を確保することだった。2ha÷38=526。同社はほぼ条件通りに建設することが分かる。

 敷地の容積率は200%だから、容積いっぱいに住宅を建設すると、4ha÷538=74.3㎡。同社のマンションの専有面積は約70~87㎡で、平均は約75㎡というから、これもほぼ売却条件通りだ。

 さて、業界関係者の皆さんはこの条件をどう思われるか。同業の記者は「一定の条件は必要。いやなら住まなければいい」と話した。

 なるほど、確かに住宅の質は「広さ」だ。広いほうがいいに決まっている。しかし、先立つのはお金だ。いったいどれくらいのサラリーマンがお金の心配なしに自由にエリアを選ぶことができるだろうか。低中所得層が東京23区内で購入できるマンションはほとんどない。「広さ」は当然入居する人の家族構成によって変わる。単身者なら40㎡でも十分な広さではないか。一律に網をかぶせるなんて暴挙だ。

 よって、記者はURと草加市が付した条件は納得ができない。駅から徒歩6分だ。「松原団地」がマイナーなイメージしかないとはいえ、市民やその他沿線の多様なニーズが期待できる。子育てファミリーだけでなく単身者、DINKS、高齢者の需要もあるはずだ。戸数条件を設けたことは、こうした多様な需要に背を向け、商品企画の自由度を奪うものでしかない。URはこれまでも住宅用地の売却には同様の条件を付してきたが、記者はまったく理解できない。行政もURの意向にどうして沿うのかこれもまた理解できない。

 問題はこれだけにとどまらない。戸数制限(面積要件)は分譲価格に大きな影響を与える。同社は価格は現段階で未定としているが、記者は最低で175万円、アッパーで180万円と読んだ。マンションの建築費がどんどん上昇しているので、他と比べ割高ではないとおもう。

 しかし、「松原団地」駅圏のこれまでのマンションと比べればとんでみない単価になりそうだ。草加駅圏ではリーマン・ショック前に駅近で同社の物件(93戸)と東京建物の物件(63戸)が坪185万円で分譲された。東建のほうは立地条件がよく戸数も少なかったことから早期完売したが、同社は完売まで3年くらいかかったのではないか。

 草加でも坪185万円というのは限界価格だと思う。南越谷の駅近マンションもアッパーは180万円だ。

 松原団地でいえば、これまでは坪130~140万円が相場だ。今回はこれらから3~4割のアップだ。単価が上昇する分だけ専有面積を圧縮すればまた展望が開けるが、今回はそれがない。同社はこの厚い壁を打ち破れるのか。

 住宅ローン金利はただ同然まで下がったが、容易に超えられる壁ではない。街はお金持ちも低所得者も年よりも若者も住んで生き生きしたものとなる。都市計画のイロハだ。URはそれをやってこなかったから解体されようとしている。十分学習したはずだと思っていたが、まだ固陋にしがみつこうとしているのか。

 批判的なことばかり書いてきたが、一つだけ突破口になりそうな「切り口」もある。草加市は財政的に健全だが、市民の施策に対する満足度は水環境、緑環境、景観、防犯など20~30%台で決して高くない。しかし、「松原団地駅西口」の都市計画に対する満足度は57.9%で、「草加駅東口」の55.1%より高く市内でもっとも評価が高い。今後、住宅、公園などが整備されれば、「草加」を上回る住みよい街になる可能性はあるとみた。

住友不動産 全6,000戸の「松原団地」建て替えエリアで538戸のマンション(2015/1/13)

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「(仮称)品川ベイサイド大規模プロジェクト」完成予想図

 住友不動産は1月8日、東京ガスのマンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」と「停電時発電機能」を「(仮称)品川ベイサイド大規模プロジェクト」に搭載すると発表した。

 「停電時発電機能」を導入することで停電時に「エネファーム」が発電停止中でも、自立起動して発電し、停電時使用可能コンセントを通じて電力を家庭内に供給することができる。同社は51戸に採用する。

 物件は、JR 山手線品川駅からバス4 分・「天王洲アイル」バス停徒歩5分の全254戸。竣工予定は平成28 年2 月下旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。

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 マンション向け「エネファーム」は、東急不動産が昨年分譲開始した「ブランズ品川勝島」に採用されたのが第一号で、これまで三菱地所レジデンス・総合地所「ザ・プレミアスカイ品川中延」、サンケイビル「ルフォン石神井公園」、東京建物「Brillia東小金井」、同「Brillia山手動坂」、積水ハウス「グランドメゾン上原コート」、伊藤忠都市開発「クレヴィア小竹向原」の7件に採用されている。「停電時発電機能」を搭載しているのは今回が初めて。開放廊下側に設置するためかなりのスペースが必要で、コンパクト化が課題。

 

 

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「グランスイート神楽坂ピアース」完成予想図

 丸紅(事業比率60%)とモリモト(同40%)の初のJVマンション「グランスイート神楽坂ピアース」を見学した。昨年10月からモデルルーム見学を受け連れているが、平日も含めほぼ予約でいっぱい。人気必至だ。

 物件は、東京メトロ東西線神楽坂駅から徒歩3分、新宿区矢来町に位置する10階建て北棟61戸と南棟57戸の2棟全118戸。専有面積は42.56~107.07㎡、価格は未定。施工は大和小田急建設。竣工予定は平成28年1月下旬。管理は三菱地所丸紅住宅サービス。販売代理はモリモト。販売開始は1月中旬予定。

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 これまで、モリモトは丸紅の物件の販売代理をいくつか行っており記者も見学してきたが、JVは今回が初めてだ。5日からマンションが見学できてラッキーだった。

 建物のデザイン監修はアーキサイトメビウス(今井敦氏)が、インテリアコーディネートは鈴木ふじゑ氏がそれぞれ担当しているように、モリモトが全体的な商品企画を担当していることが分かる。同社のこれまでの物件と同様、デザインが秀逸で設備仕様レベルが高いのが特徴だ。

 建物の外観は端正なライムストーンの白が基調。インテリアは玄関床、キッチン・洗面・トイレ天板に天然石、建具面材に高級材のマホガニーを、床に突き板を採用(一部除く)。一方で、リビングドアには丸紅が分譲して好評だった「グランスイート広尾」と同じものが採用されているように、双方の〝いいとこ取り〟のデザインでもある。

 問題の価格。立地条件からして坪単価は400万円を突破するのは間違いない。かといってすべてが億ションになるような敷地形状ではない。敷地西側は道路を挟んである銀行の中層の社宅が建ち並んでおり、住環境もまずまずだが、北棟は自己日影を受けそうな住戸や北向き住戸もある。

 したがって、高層住戸やワイドスパンの南向き住戸の10戸くらいは坪500万円以上の億ションになりそうだが、40~50㎡台は坪300万円台の後半でグロス価格も抑えられるはずだ。その意味で、シングル層向けでもあり富裕層向けでもある。建具ドアにマホガニーを採用するマンションなど最近はほとんどない。

 昨年10月にモデルルームをオープンしたが、平日も含め予約はほぼ満室で、10人くらいのスタッフでも対応するのがやっとだという。両社が組むことによる相乗効果も期待できると見た。

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「勝どきザ・タワー」の借景

 記者が選んだ今年(2014年)の「話題のマンション」は30物件。いつものようにモデルルーム・現地見学した95物件の中から選んだもので、必ずしも物件の良否を判断して選定したわけではないことを断っておく。「ベスト3マンション」はこちら

●湾岸マンション

鹿島建設他「勝どきザ・タワー」

住友不動産「ドゥ・トゥール」

東京建物他「東京ワンダフルプロジェクトBAYZ

 今年も湾岸マンションが話題を集めた。主な新規供給鹿島建設他「勝どきザ・タワー」、住友不動産「ドゥ・トゥール」、東京建物他「東京ワンダフルプロジェクトBAYZ」の3物件。

 「勝どき」の売主は鹿島のほか三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友商事、野村不動産の4社。総戸数1,420戸のうち販売戸数は1,318戸。6月に販売開始され、これまで約800戸が供給された。この物件については「ベスト3マンション」でも触れたので、そちらの記事も参照していただきたい。戸数が多く、後続の競合物件が控えているため、価格設定を低く抑えたのだろう。意思決定するのはユーザーだ。極めて品質が高く、割安感があるということにとどめる。

 「ドゥ・トゥール」は1,450戸のツインタワー。他にSOHO216区画がある。坪単価は現状では最高値の350万円。同社によると販売は順調に進んでいるようだ。近くには前田建設工業が33階建て350戸の建設を進めているが、自社で売るのか、デベロッパーに卸すのか不明。各社が出揃った段階で決めるのか。

 「BAYZ」は、「東京ワンダフルプロジェクト」第一弾の「SKYZ」(1,110戸)に続く第2弾で、戸数は550戸。建物売主は第1弾と同じ東京建物、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東急不動産、住友不動産、野村不動産の大手6社に、土地売主が東京電力。残りは200戸くらいか。3月末までに完売するはずだ。ここは中央区ではなく江東区なので単価は低いが、今後は信じられない値段になるはずだ。

 このほか湾岸では、三菱地所レジデンス・鹿島の「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」(883戸)に続き「ティアロレジデンス」(861戸)が供給された。これらを合わせると戸数は約4,300戸。

 東京オリンピック村は22棟約6,000戸が建設され、大会終了後に民間に分譲・賃貸として売却される。そのほか50階建てタワーも2棟建設するという。

 中央区の12月の世帯数は前年比3.9%、人口は前年比4.1%それぞれ増加している。人口は最少だった平成9年の約72,000人から91.1%増の約138,000とほぼ倍増している。これからも爆発的に増える。空恐ろしい。「地方創生」は大丈夫か。

「驚きの次元が異なる」鹿島建設他「勝どきザ・タワー」(2014/4/18)

住友不動産、晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」分譲へ(2013/11/22)

東建など6社共同「東京ワンダフルプロジェクト」第2弾「BAYZ」分譲へ(2014/5/28)

●高額・億ション

森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」

安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」

 高額・億ションでは三井不動産レジデンシャルの「三田綱町」をベスト3マンションにしたが、他では森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」、安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」が好物件。

 「赤坂檜坂」は上層階が非分譲になっているが、分譲される可能性もあると見た。坪単価1,000万円でも驚かない。その価値はある。

 「参宮橋」は、参宮橋の一等地で、坪単価415万円。極めて割安感がある。12月分譲ですでに35戸が完売。当然だろう。どこかの掲示板に記者の「こだわり記事」が貼り付けられており「提灯記事」だの「広告」だのと書かれていたが、記者はこれまで1銭ももらったことがないし、「広告記事」も一度も書いたことがない。今後もこれは貫く。記事でミスをするかもしれないが、金をもらってユーザーをミスリードするようなことは絶対しない。

本物の億ション 森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」(2014/10/22)

安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」 立地よく割安の単価415万円(2014/12/11)

●御三家の低層マンション

三菱地所レジデンス  ザ・パークハウス「上鷺宮」「二子玉川」

住友不動産「インペリアルガーデン」

三井不動産レジデンシャル他「パークコート渋谷大山町」

 低層マンションでは三井・三菱・住友の御三家がなかなかいい物件を供給した。タワーもいいが、やはり住むなら低層だ。みんな価格が高くて普通のサラリーマンには手が届かないが、価格の安い郊外型も供給すれば売れるはずだ。

23区最大の第一種低層 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上鷺宮」(2014/4/4)

国分寺崖線に重なるランドスケープ秀逸 三菱地所レジデンス「二子玉川」(2014/11/25)

用地取得から10年 小石川植物園に隣接 住友不「インペリアルガーデン」(2014/1/16)

三井レジ他「パークコート渋谷大山町」 低層住宅街の大規模単価は470万円(2014/12/3)

●みんなで渡る〝新価格〟

代表格の日本綜合地所「ヴェレーナ木場公園」

 記者の好きな魯迅の言葉を紹介する。「思うに希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」(竹内好訳「故郷」より)。

 この「希望」「道」をそっくり「相場(坪単価)」に置き換えていただきたい。〝新価格、みんなで渡れば怖くない〟-他社の高値待ちで供給を先送りする物件が続出したのも今年の大きな特徴だった。

 記者が驚いた新価格は「ベスト3マンション」のトップに取り上げた野村不動産の「立川」だったが、この「木場公園」にも仰天した。「木場」「東陽町」では過去、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスなどが供給しているが、最高値は坪260万円だった。この物件は280万円。それでも売れているからなお驚いた。10年前に分譲された木場駅の駅近マンションは確か坪210万円だった。

日綜「ヴェレーナ木場公園」 木場・東陽町駅圏&同社物件の高値更新(2014/11/26)

●中堅デベロッパーの星 

モリモト「ディアナコート本郷弓町」

モリモト「ピアース高田馬場」

 記者はモリモトがデザイナーズマンションに転換してからだからもう20年くらい経つか、そのほとんどの供給物件を見学している。歓楽街で分譲されたある物件(これもよく売れたのだが)は評価しなかったが、商品企画は大手と互角かそれ以上だ。「中堅」と呼ぶのが失礼なくらいだ。

 「本郷弓町」も「高田馬場」も素晴らしい。どうして業界紙の記者やジャーナリストは同社のマンションを見ないのか。不思議でならない。

あっぱれ!モリモト階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)

単身者・DINKS向けの最高レベルマンション モリモト「ピアース高田馬場」(2014/2/17)

●大手に負けない商品企画

フージャースコーポレーション「デュオセーヌつくばみらい」

ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」

タカラレーベン「レーベンTSUKUBA」「レーベン横濱汐見台ソラノテ」

 大手の寡占化がどんどん進んでいる。情報収集力や資金力で歯が立たない中堅デベロッパーが生き残るには、大手が供給しないすき間を狙うか地方に転出するかだが、これもまたリスクが伴う。商品企画の差別化以外に方法はない。 

 その点で、シニア層をターゲットに絞り込んだ「つくばみらい」、〝ピアキッチン〟を進化させたポラス中央住宅、「太陽光」を最大の武器にあえて大手が供給する物件にぶつけるタカラレーベンは示唆に富んでいる。

フージャースコーポ シニア向け「つくばみらい」 新しい選択肢として人気(2014/5/31)

進化するピアキッチン ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」(2014/11/17)

つくばの一等地タカラレーベン「レーベンザTSUKUBA」が人気(2014/4/14)

したたかタカラレーベン 日本最大級「太陽光」に全戸100㎡以上「汐見台」(2014/1/16)

●高齢者施設と複合

NTT都市開発「ウェリス津田沼」

 東京都は今年、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に一般住宅及び居住者のふれあいを促進する交流施設を併設した住宅の整備について、民間事業者からの提案を募集し、東急不動産、ナルド・コミュニティネット、NTT都市開発の3事業者を決定した。

 「津田沼」は補助事業ではないが、考え方は同じ。サ高住と一体的に開発整備し、リスクを分散させるとともに付加価値をつけて供給しようという差別化戦略だ。サ高住との複合開発はこれから注目される。

併設のサ高住のサービスも受けられるNTT都市開発「ウェリス津田沼」(2014/11/4)

●駅前再開発・市街地開発

野村不動産「プラウド京急蒲田」

大京「ライオンズタワー柏」

新日鉄興和不動産他「武蔵浦和SKY&GARDEN

三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER

近鉄不・京阪神不他「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」

京浜急行・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」

明和地所「クリオレジダンス新杉田」

相鉄不動産「グレーシア調布」

 駅前の再開発の威力をまざまざと見せつけたのは野村不動産「立川」だったが、同社の「プラウド京急蒲田」、大京「ライオンズタワー柏」、近鉄不動産・京阪神不動産・長谷工コーポレーション「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」、京浜急行・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」、三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER(グローバルフロントタワー)」など再開発マンションが話題を集めた。長期低迷を続けてきた明和地所も新杉田駅前で複合マンションを供給。順調に売れているという。相鉄不動産は京王線調布駅前の一等地で分譲した。

大京「ライオンズタワー柏」 竹中の免震で坪単価は230万円(2014/6/2)

「立川」に続き「京急蒲田」 駅直結の威力まざまざ野村不動産(2014/9/2)

近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)

「武蔵浦和SKY&GARDEN」 販社に長谷工アーベストが選ばれた理由(2014/4/15)

中心市街地の活性化の起爆剤 京急・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」(2014/4/14)

相鉄不動産 調布駅前の一等地で再開発マンション(2014/10/3)

三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER」(2014/6/17)

明和地所 新杉田駅前の商住一体「クリオレジダンス新杉田」(2014/4/9)

●〝元気印〟

大成有楽不動産「オーベル志村城山」など

 今年元気だったデベロッパーをあげるとすれば、大成有楽不動産を間違いなくその一社に入れる。2012年4月に建物・施設管理事業の大成サービスとマンション開発が中心の有楽土地が合併し、大成有楽不動産が誕生したが、その後着実に前進している。マンションの商品企画は一変した。2カ月で完売した「志村坂上」は立地が抜群だったし、「オーベル浦和レジデンス」、「オーベル金町レジデンス」も早期完売した。

大成有楽不動産「オーベル志村城山」 全67戸が2カ月で完売(2014/9/2)

●〝脱LDK〟〝間取り自由〟

三井不動産レジデンシャル パークホームズ「築地」「駒沢」

 将来のマンションライフを見据え、着々と布石を打っているのが三井不動産レジデンシャルだ。〝脱LDK〟の提案を「築地」で行った。「駒沢」では、女性でも簡単に動かせるキャスター付き「カナウシェルフ」を初採用した。単身女性のマンション購入を支援する女性向けサイト「モチイエ女子web」を立ち上げ、将来のマンションコミュニティを考えるイベントも行った。「新三郷」では「三井住空間デザイン賞」の発表会を行った。

三井不動産レジデンシャル “脱LDK”シニア層のニーズ取り込む「築地」(2014/1/14)

三井不レジデンシャル 可動間仕切りで間取り自由自在 「駒沢」に初採用(2014/5/28)

●最後の同潤会建て替え

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上野」

 全部で16あった同潤会アパートのうち最後まで残っていた「上野下アパート」の建て替え、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上野」が分譲された。ホームページを見たら残りは2戸となっていた。

三菱地所レジデンス 最後の同潤会建て替え「上野」ワイドスパンがいい(2014/4/25)

●わが街

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩センター」

清水総合開発「ヴィークステージ多摩センター」

 最後に、わが街の2物件を選定するのを許していただきたい。多摩センターは断じて〝オールドタウン〟ではない。この数年間で駅周辺に2000数百戸のマンションが分譲され、活気を取り戻しつつある。〝駅近〟で言えば三菱地所レジデンスの物件が最初で最後。多摩センター初の免震で、坪単価は「立川」より100万円以上安い。残りはわずかのはずだ。清水総合開発の物件も立地はいい。URの「わんにゃんワールド」跡地開発が待たれる。

駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジ「ザ・パークハウス多摩センター」(2014/6/6)

住宅地としては一等地 坪200万円は妥当 清水総合開発「多摩センター」(2014/11/25)

カテゴリ: 2014年度

 今年も残りわずか。この1年間で書いた「こだわり記事」は378本。分野別の内訳はマンションが155本(うち95本がモデルルーム・現地取材)、一戸建てが48本(うち30本がモデルハウス・現地取材)。記事の半数以上は分譲マンション・戸建てだった。コピー&ペーストの記事はあまり書かなかったつもりだ。RBAの野球記事も200本くらい書いた。マンション市場を中心にこの1年間を振り返ってみる。

 その前に、誤字脱字だらけの独断と偏見に満ちた記事を読んでいただいた皆さんに紙面ならぬ画面を通じて感謝し、お詫びいたします。

 一つだけ言い訳をさせていただくと、記事は〝ラブレター〟であり、スピードが勝負です。私のモノサシで書くので誤りはつきもので、急げば急ぐほどミスも増えます。近眼・老眼が加速度的に進んでおり、集中力が欠けるのは以前からですが、加齢が追い討ちをかけています。どうかこの事情を汲み取っていただき、お許しいただきたいと思います。

◇      ◆   ◇

 分譲マンションでは、1年間を通じて価格(単価)の上昇が強く印象に残った。〝新価格〟がとくに後半から続出した。単価予想も外れることが多かった。来年はもう一段高くなるのは間違いない。都心部の一等地では坪700~800万円台が一般化するのではないか。23区内ではよほど立地条件の悪いところでないと坪200万円以下はなくなりそうだ。

 サラリーマンの実質賃金は上昇していないので郊外部の価格上昇は懸念材料だ。前半では坪130万円台も供給されたが、後半は最低でも150万円くらいになってきた。第一次取得層の取得限界は坪180万円と見ているが、限界に近づいてきた。設備仕様レベルを落とす物件も増加した。

 単価上昇を表面化させないよう専有面積圧縮でグロス価格を抑制する物件も目についた。いつか来た道だ。3~4人家族で30坪(90㎡)というのが記者のデベロッパーに託す夢だが、当分実現しそうにない。

 売れ行きは総じて好調だった。ベスト3マンションの記事でも書いたが、野村不動産「立川」と三井不動産レジデンシャル「三田綱町」が瞬く間に売れたのには驚いた。いま売れ残っている物件も、来年は新価格が満遍なく浸透するだろうから根雪のように残ることはなさそうだ。

 供給減がマスコミでも報じられたが、年間4~5万戸というのが適正な戸数だとわたしは考えている。レベルの高いリフォーム・リノベーションも増加しており、新築だけでなく中古マンションも取引が活発になるのは間違いない。全体として市場は緩やかに縮小し、大手の寡占が加速する。中小デベロッパーは企画力が勝負になりそうだ。

 分譲戸建ては取材回数が少ないので分からない部分も多いが、記者が見学した物件は総じてレベルの高いものばかりだった。積水ハウスの「5本の樹」は他社も見習うべきだ。年末に見たミサワホームの「熊谷」は最高の物件だった。三井不動産レジデンシャルと野村不動産の首位争いもみものだった。野村は戸数の少ない物件もこれからは供給しそうだ。都内に進出したポラスも意欲的な物件を供給した。フージャースアベニューの商品企画も光った。老舗の細田工務店はもっと自社のPRに力を入れてもいい。

 いわゆるパワービルダーの取材をここ数年行なっていないが、業界紙記者も物件見学はほとんど行なっていないようだ。マンションと同じくらい供給されているのに、なぜ取材しないのか。

 業界団体では、マンション管理業協会の意欲的な活動が目立った。ハウスメーカー・デベロッパーの課題でもあるが、コミュニティの「見える化」をぜひ進めて欲しい。

 国交省の取材はあまり行なわなかった。業界紙は宅建取引主任者の「宅建士」の〝昇格〟をずっと記事にしており、重大ニュースの一つにしているようだが、これが解せない。それより「日本らしく美しい景観」とは何ぞやの答申が待ち遠しい。

カテゴリ: 2014年度
 

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