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 国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)は、総会などの議決権割合を変更してはどうかという提案も行っている。

 区分所有法第14条(共用部分の持分の割合)には「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による」とし、この規定は「規約で別段の定めをすることを妨げない」ともしている。また、同法第38条(議決権)では「各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による」としており、専有面積割合ではなく平等にしているところも少なくない。

 そしてまた、建て替えの場合などは、同法第62条(建替え決議)で「集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数…」としている。つまり議決権だけではなく、区分所有者が分母になるケースもあり、個人や法人が複数住戸を所有していても区分所有者としては一人としてカウントすることが決められている。

 検討会は、これを見直すことを提案している。「近年は、大規模で店舗と分譲住戸のある複合用途型のマンション、超高層マンション等の出現により、高層階と低層階、あるいは住戸と店舗とでは、床面積割合によっては住戸の財産価値(眺望、景観、日照等の付加価値)が適正に反映されないケースがみられるようになってきたため、現行のように議決権を床面積割合によって与えるのは、公平性等の点で問題がある…」というのだ。

 そこで、①各住戸の床面積割合に加え②価値割合を加味し③住戸1戸につき1個の議決権を与えてはどうかとしている。

 この提案は様々な問題もはらんでいる。難しい問題だ。一般的に、デベロッパーは、日照や眺望、間取り、設備仕様、向き、市場性などを総合的に判断して値付けを行っており、超高層マンションの場合などは低層階と上層階とでは10倍くらいの価格差のあるものが少なくない。

 具体的にはどれぐらい異なるのか。分かりやすい例で示そう。最近書いた東京建物「Brillia Towers目黒」の場合、平均単価は600万円だが、30㎡台の最低価格の住戸の坪単価は550万円くらいになりそうだ。一方、最高価格の150㎡台は880万円くらいになる模様だ。単価差で1.6倍、価格差で8倍だ。

 検討会が示した議決権割合をこれに適用すると、4億円台の住戸を取得する人はワンルームの購入者の8倍の議決権を持つことになる。これが公平かどうか記者は分からない。

 そもそも、先にも書いたようにマンションの値付けは不公平が生じないよう、付加価値の高いものは価格を高くし、その分だけ購入者に負担を求めている。価値の高い住戸ほど購入者の金銭的な負担が大きいのだから、ある意味ではこれもまた公平だ。共用施設の利用でも、高い値段の住戸を買った人と低い住戸を購入した人とで差別をつける例は皆無ではないがほとんどない。お金持ちもそうでない人も公平に扱っている。

 住戸1戸につき各1個の議決権を与えるべきというのも危うい。これが認められれば多数派工作は容易になる。買い占めればいいわけだ。

 検討会は、価値割合を採用した場合の課題として、「床面積割合という基準が客観的かつ普遍的であるのに対し、階層別や位置別の効用は主観的かつ流動的であり、また、それが販売価格に適正に反映されているとは限らない」ことを上げている。そして、「分譲後の環境変化に伴う効用の変化(例えば分譲時の眺望が隣接のマンション建設で大きくその価値が低下したなど)の問題が可能性として生じ得ることは否定できない」としながら、「床面積割合と価格割合に相当の乖離がある場合の不公平の問題の方が大きい」と結論付けている。

 これも難しい問題がある。確かに値付けは主観的判断で行なわれるので、価格が適正であるかどうかだれも分からない。しかし、あらゆる商品はそのようなものではないか。ダイコンだってキャベツだって、価格は主観的に付けられるのではないのか。適正であるかどうか結局は市場(消費者)が判断するものではないのか。

 購入後の環境変化も無視できない。検討会は「床面積割合と価格割合に相当の乖離がある場合の不公平の問題の方が大きい」としているが、マンション購入後に、その敷地の前面、隣接地にマンションなどが建設され、日照・眺望が奪われるのは日常茶飯だ。複合日影といって、複数のマンションからの日影の影響を受けても、個々の建築物は違法にならないのが現行法だ。

 だから、記者はユーザーには用途地域だとか立地条件には十分注意を払うようにと忠告してきた。購入時の価値判断が将来にわたって正しいかどうか、なんともいえない。

 もう一つ、固定資産税や都市計画税、不動産取得税は、価値割合ではなく、いずれも土地や建物の持分比率が基準で算定される。これとの整合性はどうなるのかという問題もある。

 以上、議決権割合に価値割合を反映させよという提案は説得力があるようで極めて危険な問題もはらんでいると思う。お金(力)のある富裕層が益々富み、そうでない人は益々貧しくなる、発言力も弱まる21世紀の資本主義社会がマンションでも完成するのか。

 

カテゴリ: 2015年度

 平成24年1月から27年2月まで途中2年半の中断を挟み合計11回の会合を経て国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)が終了した。最終とりまとめとして近く発表される。標準管理規約に盛り込まれている「コミュニティ条項」が削除されるのは確実で、その是非をめぐって内外野から議論が巻き起こりそうだ。

 この「検討会」について記者は、都合3度だけ傍聴できなかったが、ずっと取材してきた。初回の会合でいきなりビンボールまがいの発言が飛び出し、第三者管理方式、コミュニティ活動、議決権の要件などについて激論が交わされた。意見がまとまらず、第9回以降2年半も会合が開かれなかったので、空中分解、雲散霧消したものとばかり考えていた。しかし、この空白期間に何かがあったのか、最終的には現場サイドの声は全く反映されず、「コミュニティ条項」を削除するという方向が打ち出された。

 いま、「コミュニティ」はマンション業界の大きなテーマの一つだ。デベロッパーも管理会社も管理組合も自治体などと連携してこの取り組みを強化している。どうしてこのような時代に逆行する、流れを遮断しようという動きになったのか。振り返ってみた。 

◇       ◆     ◇

 検討会は、機能不全に陥った管理組合をどう救済するかがメインテーマと思われたが、第1回会合から各委員と現場サイドの専門委員・オブサーバーとの間で意見の相違が表面化した。

 中でも激しいやり取りが交されたのはコミュニティ形成についてだった。区分所有法にはコミュニティや自治について規定はまったくなく、国交省が作成したマンション標準管理規約の「コミュニティ条項」だけが管理組合の自治・コミュニティ活動に対してお墨付きを与えていた。これが問題視された。

 問題を整理しよう。管理組合と自治会の関係については、前者は区分所有法による明確な法的根拠があり、目的、構成員、禁止事項なども定められている。同法は、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」(第3条)「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(第6条)と規定している。

 一方、地方自治法では「(地縁による団体)は、その規約の定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」(第260条の2第1項)とあり、目的は「地域住民の親睦、福祉、防犯、文化等にかかわる諸活動を行う」と自治会などを規定し、構成員は「区域に住所を有する者で加入を希望する者」となっている。

 このように両者は明らかに異なる団体だ。双方に関する裁判例でも、「町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する事項ではなく、区分所有法第3条の目的外の事項」であり、「この町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規約等で定めてもその拘束力はない」(平成19年8月7日、東京簡易裁判所判決)と、代理徴収は無効とされている。

 今回の「検討会」でもこの問題が蒸し返された。当然と言えば当然だ。記者も現行の「コミュニティ条項」は法的な担保力が希薄で、やや無理があると思う。しかし、財産管理の組合活動とコミュニティ活動は車の両輪だ。どちらかが機能しなければ、マンションは極めて住みづらい〝ハコ〟に成り下がる。コミュニティはマンションの財産・生命・文化を守り発展させるエンジンでもある。

 記者は、堂々巡りの白熱した論議を聞きながら、最終的には両論併記で丸く収められるのではないかと思ったが、そうではなかった。福井座長は第9回目の会合で次のように述べている。

 「町内会費の徴集は無効だとまで言われているわけですから、仮に違法な活動に管理費を使っていた場合に、法的紛争が起きて同様の判断が裁判所で相次ぐことにでもなったら、標準管理規約以前のみっともない事態に陥る。そういう意味での安全運転をするという前提で議論いただきたいと思います」

 「安全運転をする」-この言葉に福井氏の強い意志が込められている。これを聞き逃したのはミスだった。具体的にはどのようなやり取りがあったか。少し長くなるが、議事録から引用する。

 自らマンション居住者だという村辻義信委員(弁護士)は、財産管理団体としての管理組合の本質的な目的を理解していない人が多いとし、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成、これに管理費を充当するんだという、この条項が明記されたことによって、さらに混迷を深めているという状況にある」と、福井座長の考えに概ね賛成であると述べた。

 コミュニティ条項を削除すべきという意見の急先鋒、安藤至大委員(日大大学院総合科学研究科准教授)は、「私は村辻委員のご意見よりもさらに厳格にとらえるべきだと考えております。先ほど、防災の取り組みにバーベキューを組み合わせるという話ですが、これに全員が喜んで参加しているのかということが知りたいですし、また全員が喜んで参加するようなイベントであれば、参加費を本人たちから徴集すれば良いと思います。仮に、防災訓練には参加したいがバーベキューには興味がない人、かつ区分所有者の方からしたら、自分たちのお金が目的外に使われている状況なわけですから、これは明確にすべきです。勝手に流用されては困るという考え方もあるのです。

 また、防災がそれほどまでに大事なのであれば、防災訓練の参加を現時点で、ちゃんと強制して行っているのかについても気になります。全員参加しているのでしょうか。それをせずに、参加できる、そして参加したい人だけで防災訓練を行い、気の合った人たちだけでバーベキューをやるというようなことにもし管理組合のお金を使っているのであれば、それこそまさに目的外使用であり、この最高裁の判例とかの考え方からすれば、もう完全に逸脱していると考えております」と、バーベキューなどの飲食に管理費を充当するのは目的外使用と主張した。

 これらの意見に対して、村裕太専門委員(三井不動産レジデンシャル開発事業本部都市開発二部部長)は、「コミュニティの形成が良好なマンションというものが、よく清掃が行き届いていたりとか、設備の保守、維持がちゃんとできていたりと同等になるぐらい、やっぱり資産価値を高める、もしくは維持するのに必要なソフトだという認識がご購入者の方に強いからだというふうに私ども分譲主としては思っておりまして、逆に、売り主としてはコミュニティの形成に必要ないろいろなイベントなどを企画したりサポートしたりというようなことをむしろ積極的にお勧めしたり、お手伝いをしたりというようなことをやっております」と反論した。

 すかさず、安藤氏は、「今、村専門委員がおっしゃったことが仮に正しいのであれば、別に管理組合がお金を出さなくても、住人全員が自分たちで進んで町内会に参加し、町内会の経費でそのような取り組みをするはずですので、まさに管理組合と町内会とを混同する必要がないということを、ご説明されたのではないでしょうか」と再反論した。

 こうしたやり取りが続き、結局、議論は平行線のまま散会となった。

◇    ◆   ◇

 さて、皆さんはこのやり取りと結論をどう理解されるか。ひと言で言えば、コミュニティ削除派が法律を楯に存続派を押し切った形だろう。

 いずれにしろ、今回の決定は、これまで国交省が示していた標準管理規約(コメント)の「コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。管理費からの支出が認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動である」とする見解から180度の転換だ。

 しかし、その一方で、検討会は専門委員やオブザーバーの主張を考慮したのか、自治会活動は合意形成や地域の防犯面、資産価値向上につながる効果は否定できないとし、「政策論からコミュニティ活動は展開すべき」という意味がいまひとつ分からない悩ましい文言が盛り込まれた。

 この相反する結論を600万人の区分所有者はどう受け取るのだろうか。一方で否定され、他方で奨励されれば、また裂き状態に陥るのではないか。

 そもそも、どうしてこんなに議論が紛糾するのかという根本問題について考えないといけない。記者は区分所有法に問題があると思っている。多くの法律には「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)のように第1条に目的規定がある。ところが、区分所有法の第1条(建物の区分所有)は「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所…は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる」としか規定されていない。この種の規定は趣旨規定というのだそうだが、やはり哲学がない。 ここに根本原因があるのではないか。

 一つだけ、聞き捨てならないことがあるので言わせていただく。安藤氏が防災活動とバーベキュー活動を攻撃したことについてだ。ここまで言われると、もう完全な自主的な住民の自治活動、コミュニティ活動に対する敵視だ。悪意すら感じられる。

 失礼ながら安藤氏の発言・言葉には険がある。どこか人を小ばかにするもの言いで、喧嘩を売るメディアのディベート番組を観るようで気分が悪くなる。

 どこの管理組合も予算の半分以上は恒常的な建物の維持管理費に消える。少ない予算をやりくりしイベントなどの費用を捻出しているのが実情だ。役員はほとんどボランティアだ。企業の交際費や政治家の政務活動費とは訳が違う。コミュニティ活動が違法な活動であるかのように言われるのには腹が立つ。

 話は横道にそれるが、安藤氏は第三者管理に御執心のようだが、富裕層向けや投資用マンションはいざ知らず、一般的なマンションや機能不全に陥ったマンションの管理組合は専門家などに支払う報酬をどう捻出するのだろうか。飲食費をそのままフィーに充てても足りないのではないか。

 書きだすととまらなくなる。記者の悪い癖だ。もう最後だ。つたない記事に付きあっていただきたい。

 記者も町内会が戦前、住民同士が監視し合い、大政翼賛の一翼を担わされていたことを学んだ。今でも行政の下請け的なことをやっているのかもしれない。自治会が毛嫌いされるのはそんな理由からだろう。

 しかし、冠婚葬祭に代表されるようにわが国の伝統的な文化を継承し、地域ぐるみで様々な問題を主体的に解決し、行政などに街づくりを提案するなど、自治(町内会)活動は、地域社会の活性化に大きな役割を果している。今後もその役割は増大するはずだ。緊急時には公助は当てにできず、自助・共助こそが生死の鍵となることを3.11でわれわれは学んだのではなかったか。

 「自治(self-governance)」とは「自分たちが決めたことは自分たちで守る」という意味ではないのか。安藤氏の主張は、マンション居住者の自治権を奪い、その権限を一部の専門家や富裕層に集中させようという企みではないかと勘繰りたくなる。細かく規制をかけるより、管理組合の創意工夫に任せたほうがマンションの価値はあがる。コミュニティがマンションの価値を計る指標の一つになる時代は必ずやって来る。

「福井先生を連れてきたかった。残念」 管理協理事長、「検討会」を批判(2015?3/13)

 

 

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 東京建物の「Brillia Towers目黒」がヴェールを脱いだ。記者の坪単価予想550万円はものの見事に外れ、600万円になることが分かった。高いか安いか、これは最終的には市場(ユーザー)が決めることだ。

 しかし、「目黒」で坪600万円の値が付いたことで、今後の都心のマンションは高値を続々更新してくるのは間違いない。先に住友不動産が竣工見学会を行った「高田馬場」も「池袋」も坪400万円だ。分譲時には「安くない」と思ったが、今となったらこれは安いか。立地、その他総合的な評価ではもちろん「目黒」だが、坪200万円も差があるのか。

 さらに、駅力からいったら山手線29駅で「目黒」を上回るのは、東京を筆頭に、品川、新宿、原宿、渋谷、恵比寿、有楽町などがあり、比較感から他の駅も軒並み400万円以上になる。山手線内の高級住宅街は最低でも700万円、800万円以上つけないとバランスが取れない。

 他のデベロッパーはこれ、つまり他社物件が高値をつけるのを待っていたのだ。今回の「目黒」がメルクマールとなって、数字が独り歩きし、さらにヒートアップするのではないか。

◇      ◆     ◇

 もうずいぶん昔のことなので記憶はさだかではないが、「目黒」を見学しながら、バブル発生当時の狂乱人気を思い出した。昭和61年のころだ。東洋製糖の子会社ヨートー開発(平成11年12月に解散)が「ヴェラハイツ目黒ガーデン」(79戸)を分譲開始した。記者は売れ行きを確認するために同社に聞いたら、何とほとんどを一般のユーザーではなくて不動産会社が買い占めたというのだ。販売する前に〝即日完売〟したのだ。

 その後、割安感のあるマンションには数日前から現地に申し込み希望者が並び、ホームレスを雇って抽選券を手に入れる人も現れた。デベロッパーは対抗策として、申し込み時に印鑑証明を提出することを求めた。

 住宅金融公庫融資付きなどの新築は、抽選分譲しなければならないという縛りがあったため、不動産業者は投資用マンションや中古をターゲットにした。買い取り専門業者は月に数百億円の仕入れを行っていた。戸数にして数百戸だ。転売するごとに価格は跳ね上がり、1回転すると価格は倍になっていたというのはざらだった。

 億ションの代名詞「広尾ガーデンヒルズ」は、昭和60年ころの坪550万円くらいだったのが、バブルがはじける平成2年には坪3,000万円を突破した。マンションは株と同じ投機の対象となった。

 新築は国土法の規制がありなかなか高値追求はできなかったが、当時、億ションをたくさん手掛けていたドムスは、あとで当局から摘発されることとなったのだが、1戸44億円の億ションを麻布で分譲した。これは今でもマンションの最高価格記録になっているはずだ。

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 とりとめのないことを書いてきたが、「バブル」とはいったい何だったのか簡単に振り返ってみたい。

 バブルの発生については諸説があり、ミルトン・フリードマンは「日本の『バブル経済』は1987年のルーブル合意がもたらしたものである」と指摘し、野口悠紀雄は1987年11月に「バブルで膨らんだ地価」という論文で「私の知る限り、この時期の地価高騰を『バブル』という言葉で規定したのは、これが最初である」と語っている。

 しかし、記者はもっと早い段階で「バブル」は発生していたと思う。「バブル」という言葉は言いえて妙で当時〝なるほど〟と感心したものだが、われわれ業界人は「狂乱地価」という言葉で不動産市場を表現した。

 その狂乱地価、バブル経済が顕在化したのは昭和60~61年だ。昭和60年の天皇在位60年記念硬貨と61年秋に分譲された民活マンション第一号の「西戸山タワーホウムズ」、そして62年2月に売り出されたNTT株を称して「3大財テク商品」としてマスコミは報じた。

 「西戸山タワーホウムズ」は、モデルルームオープンが真夏でパンフレットも有料だったが、連日、隣の西戸山公園を見学希望者がとぐろを巻いた。来場者、申込者もケタ違いだった。最近のマンションの来場者数は数千人もあれば話題を呼ぶが、「西戸山」は約6万人が押し寄せた。購入希望者は、北は北海道から南は鹿児島までに及び、分譲戸数576戸に対して購入申し込み倍率は実に44.2倍に達した。

 NTT株は売り出し初日には値が付かず、売り出し価格1,197,000円に対して初値が付いたのは翌日で1,600,000円だった。1日で約40万円の値上がりだった。まさに濡れ手に泡の狂乱ぶりだった。

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 先に書いたヨートー開発のマンションは、「西戸山」や「NTT株」の時期と重なるはずだし、もう一つ、今回の「目黒」が呼び水となって市場を過熱させる機能を果たすのではないかと予測する〝根拠〟がある。

 根拠と言っても理論的に証明できないのだが、どういうわけかマンション市場の好不調のターニングポイントが春とか夏休み明けとかに集中しているのだ。

 古い話だが、〝不況期の大量供給〟と言われた昭和57年の夏休み明けの9月初めの日曜日、首都圏を台風が襲った。記者はマンションの抽選会を取材するため家を出た。1、2分も経たないうちに、濡れ鼠になり取材を断念した。多くのマンション販売現場が水浸しになり、販売を中止するところが続出した。その後、不況に突入していった。

 バブルの発生は五月雨式にやってきたが、決定的な後押しになったのは3月末の春休みに発表される地価公示だった。地価上昇が報じられ〝買い安心〟を誘った。

 バブル崩壊も平成2年の夏休み明けの9月上旬だった。株価が暴落し、ほとんどすべての株は売り気配で値が付かなかった。バブル崩壊の予兆とも言うべき1987年10月19日ブラックマンデーも文字通り休み明けだった。

 バブル崩壊の痛手からようやく回復しかけた市場に冷水を浴びせかけたのも2007(平成19)年夏のサブプライムローン問題だった。その翌年9月、リーマン・ショックが全世界を襲った。どちらも夏休み中とその直後だった。

 そして今日は春爛漫の春休みではないか。これまでのマンション市場と異なるのは、主役が若干異なることだ。かつてのバブルの主役は金融機関と不動産業者だった。

 今回は、主役とまではいかないまでも先導役を果たすのはアジアの投資マネーだ。いま、都心マンションの契約者の3割、4割がアジア系企業(個人)というマンションも少なくないはずだ。バブル期もそうだったように、都心部のいわゆるビンテージマンションと呼ばれる中古がターゲットになる。

 いったいいくらのお金が不動産投資用に注がれているのか記者はよく分からないが、1兆円くらいではないかと思っていた。

 この予想を日経新聞が裏付けてくれた。3月26日付のコラム記事「反転うかがう地価」は、「都市未来総合研究所によると、14年の国内の不動産取引額は約5兆600億円と前年比16%伸びた。とりわけ外資系ファンドなど海外企業の投資は1兆円弱と前年の2.7倍だ」と書いている。

 バブルで痛い目に遭い、リーマン・ショックで打ちのめされ、さらに3.11で追い打ちをかけられた記者は、もう2度とつらい目には遭いたくないと思っているのだが、少なくとも2020年の東京オリンピックまでは市場を冷やす材料は見つからない。「国土強靭化」に突き進むのだろうか。普通のサラリーマンはその心構えも基礎体力も回復していないと思うのだが…。

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「Brillia Towers 目黒」完成予想図

 目標の3倍、18,000件の資料請求がある今年上期の最大の注目マンション、東京建物他「Brillia Towers 目黒」の坪単価は600万円-同社は4月2日、4月4日のモデルルームオープンに先駆け報道陣向けの内覧会を行った。記者が予想した坪単価550万円は大幅に外れ、63㎡で1億1,500万円(坪単価602万円)になることが同社から明らかにされた。分譲開始は6月上旬。

 物件は、JR山手線・東京メトロ南北線・都営三田線・東急目黒線目黒駅から徒歩1分、品川区上大崎三丁目に位置する40階建てノースレジデンス524戸(分譲320戸)38階建てサウスレジデンス416戸(分譲341戸)の2棟で合計940戸(分譲661戸)。容積率はノースレジデンスが896.51%、サウスレジデンスが550.00%。

 専有面積は30.05~150.11㎡、間取りはSTUDIO~3LDK(うち約3割がSTUDIO・1LDK)、価格は5,000万円台~4億円台、坪単価は約600万円。竣工予定は平成29年12月上旬。設計・施工・監理は大成建設・竹中工務店設計共同企業体。売主は同社のほか首都圏不燃建築公社。販売代理は東京建物不動産販売。

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森の広場

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100㎡モデルルーム

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 この物件についてはこれまで2度記事にしているのでそちらを参照していただきたい。

 物件の最大の特徴は、内覧会の冒頭で同社執行役員住宅プロジェクト開発部長・田代雅実氏や同部グループリーダー・櫻井晋氏が強調したように、目黒駅から1分の4線が利用できる交通アクセス・利便性のよいこと、総開発面積約2.3haに900本の樹木を植え、約5,300㎡を緑化するなど「駅前に緑を創る」こと、タワーマンションならではの共用施設を整備し、一部自己日影はあるものの東・南側には遮るものがない眺望に恵まれているということに尽きる。

 同社が当初目標としていた資料請求件数6,000件の3倍に当たる18,000件を突破したのも、これらの特徴が浸透したものと思われる。資料請求者の年齢は30歳代後半から40代が約5割、50歳代も4割弱。職業は会社経営者、会社役員、医師などが約3割。居住地は品川、目黒区、港区で約3割。

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田代氏

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 さて、単価予想を外したことについて。記事にも書いたが、ある業界紙の方と「550万円か600万円か」で飲み代の賭けをした。記者の完敗だ。言い訳はしない。30数年間、年間にして100~200件くらいマンションを見学してきたが、坪単価で50万円も予想を外したのはあまり記憶にない。2014年8月の時点でも書いたが、「品川区上大崎」で坪600万円は考えられなかった。富裕層は港区や渋谷の高級住宅街を選択すると考えたし、30㎡台や40㎡台もかなりある商品構成からして億ションのイメージは描きづらかった。

 言い訳めくが、資料請求が同社の目標の3倍に達したことでも分かるように、同社も読みを誤ったのではないか。

 63㎡で億ションとは複雑な思いだが、この単価にユーザーがどのような反応を示すか注目したい。〝ひょっとしたら手が届くかも〟と考えた人はあきらめることになるのではないか。ただ、一言。これほど緑に恵まれた都心のタワーマンションは今後出るのか出ないのか。記者は出ないほうに賭ける。街もマンションも緑環境が価値を左右する。

 設備仕様について。100㎡超は33戸で、天井高が2.8m、建具・家具が突板仕様のプレミアム住戸は44戸しかないことからも分かるように、他の標準的なプランの仕様は億ション仕様ではない。

 いずれにしろ、この物件が今後のマンション市場のメルクマール、指標になるのは間違いない。一番喜んでいるのはユーザーではなく、同業のデベロッパーではないか。

 賭けに完敗したのは悔しいが、高値挑戦した東建に乾杯!

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サウスレジデンス

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高さ4mの模型。背後のサントリーパフカル(4m×4mが素晴らしい)

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ゲストサロン外観(本物の石積みに水盤を設けるなどこれは立派)

東京建物 目黒駅前の再開発マンション坪単価は500万円超か(2014/8/22)

目黒駅前の再開発タワーは坪単価600万円になるか(2015/12/4)

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「イニシア大井町」エントランス(完成予想図)

 コスモスイニシアが4月上旬に分譲する「イニシア大井町」を見学した。JRの大井町駅と大森駅、京急立会川駅の3駅が利用可能で、AsMamaとコラボした「子育てシェア」、新しいデザイン提案「next40」、「ホームデコレーションサービス」など商品企画が秀逸だ。

 物件は、JR京浜東北線大井町駅から徒歩14分、同線大森駅から徒歩12分、京急本線立会川駅から徒歩8分、品川区南大井五丁目に位置する7階建て全47戸、専有面積は54.29~82.43㎡、価格は未定だが、坪単価は290万円になる模様。竣工予定は平成27年8月下旬。施工は淺沼組。

 まず、アクセス。大井町駅を利用するとやや距離はあるが、立会道路(緑道)を通っていけるので、車と出会うことは少ない。大森駅からでも線路沿いの舗道を通っていける。現地は準工エリアだが、嫌悪施設はほとんどない。

 商品企画の特徴は、第一に「子育てシェア」を利用できること。これは送迎・託児を顔見知り同士で頼り合うネット「子育てシェア」を運営するAsMamaの協力で、急な残業や電車の遅延など子どもの迎えができない場合、近所の顔見知りに1時間500~700円で代行してもらうサービス。登録料などは不要で、ママサポーターによるバックアップ、入居交流イベントによるサポート、専用コミュニティサイトによる情報交換もできる。

 第二の特徴は、アンティークとモダンを調和させた新しいデザインへの意欲的な試みがみられること。モデルルームではリビング床に無垢材を使用しているほか、建具・家具・壁材などは本物と見まがうような質感・手触りがあるものを採用。デザイン意匠も白を基調にしながら黒やその他の色をアクセントカラーとして巧みに処理している。

 もう一つは、玄関壁面・クロス、キッチンカウンター、リビングダイニング壁面、洋室壁面など5つのデザインサービスを無償(有償もあり)で選べることだ。

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モデルルーム(リビング・キッチン)

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リビングと一体利用できる洋室

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 このマンションを見学することになったのは、同社の投資用賃貸「向島5丁目」を見学した際、デザインを担当したアクシスの皆川雄一氏らと歓談し「大井町でも新しい試みをしているので見ていただきたい」と勧められたからだ。

 その収穫はあった。床材や壁面に本物の無垢材やタイル、レンガが用いられているのだが、クロスなども見た目には本物と見まがうものが使用されていた。ニューヨークのホテルACEのデザインを参考にしたというが、その本物志向のデザイン空間にほれ込んだ。

 「子育てシェア」も面白い試みだと思う。マンションでは初めて採用されるということだが、子どもの送迎を頼む人の素性がはっきりしており、保険にも入っているというから安心だ。今後、他社も採用すればもっと広がりを見せるのではないか。

 アクセスと価格について。記者は大井町駅から現地に向かった。立会緑道はこれまでもマンション見学で通ったことがある。写真はその際、道端に咲いていた草花をつまんで撮ったものだ。白い花はハナニラとユキヤナギ、黄色はタンポポとノゲシ、紫色はムスカリと写真には写っていないがオオイヌノフグリも採った。このマンションに住むと、春先には数十種の草花をめでることができる。

 価格はこのようなものだろう。大井町駅圏なら軽く坪300万円を突破すると思ったが、駅からの距離を考えると坪300万円は厳しいと読んだ。

 立て続けにコスモスイニシアのマンションを見たが、今回は47戸の小さな規模だが、しっかり造り込みを行っているのが嬉しかった。いま同社がもっとも輝いているデベロッパーではないか。

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記者が緑道で摘んだ草花。同社のプロジェクトマネージャー稲留めぐみさんがモデルルームで撮影(赤い花は名前を知らない)

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選手村 完成予想図

 東京都は3月27日、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会選手村及びレガシー検討に係る事業協力者」として三井不動産レジデンシャルを代表とする13社からなる「2020 晴海Smart City グループ」に決定したと発表した。今年1月に募集開始されたが、応募があったのはこのグループのみだった。

 構成会社は、三井不動産レジデンシャル、エヌ・ティ・ティ都市開発、新日鉄興和不動産、住友商事、住友不動産、大和ハウス工業、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井物産、三井不動産、三菱地所、三菱地所レジデンス。

 今後は、知事をトップとする「東京オリンピック・パラリンピックレガシー委員会」や地元などの意見を踏まえ、検討を進め、平成27年度に事業計画を策定する。計画では約13.4haの敷地に5,950戸の特定建築者によるマンションが建設される予定。今回選ばれたグループは、特定建築者の選考において評価の対象となる。

◇     ◆   ◇

 記者は、都が事業票力者を募集した段階で、どこが応募し、選ばれるかを予想した。予想は◎三井不動産(積水ハウス)○三菱地所▲三井・三菱・住友(2社も含む)△住友不動産△その他-とした。

 結果は、大手デベロッパー6社と大和ハウス工業、エヌ・ティ・ティ都市開発、新日鉄興和不動産のマンション供給上位社、それと住友商事、三井物産の商社2社が加わっている。予想では「各社が単独で応募する可能性は小さく、コンソーシアムを組む」とし、「『SKYZ』『BAYZ』の再現もある」と書いたが、ほぼその通りとなった。意外なのは積水ハウスが漏れていることだ。

オリンピック選手村都が事業協力者募集どこが選ばれるか(2015/1/26)

 

 

 

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完成した豊島区庁舎と「Brilliaタワー池袋」

 建築家の隈研吾氏がデザイン監修した「Brilliaタワー池袋」と「豊島区庁舎」の一体開発「としまエコミューゼタウン」が完成し、公開されたので見学した。

 約810㎡もある里山というべき庁舎屋上の「豊島の森」や総延長約130mのせせらぎを設けた4・6・8階のグリーンテラス、見る角度によって表情が変わるルーバー、国際会議も可能な格子が美しい議場、日本最大規模のふくろうコレクション、回廊美術館など見どころ満載。豊島区が誇れる新名所になりそうだ。

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◇       ◆     ◇

 「Brilliaタワー池袋」を2013年の「ベスト3マンション」に選んだのは正解だった。坪単価が350万円の高値だったにもかかわらず圧倒的な人気を呼んだが、ユーザーの見る目は正しかった。今となっては坪450万円どころか500万円の価値はある。

 庁舎の壁面にランダムに貼り付けられているブラウンのルーバーはやや濃すぎるし、太陽光パネルが乱反射し雑多なものを映し出す外観は美しいとは思えないが、外周に植えられているケヤキ、シラカシ、サクラなどが成長すれば隈氏が企図した「樹木のような庁舎」になるのではないか。

 圧巻は「ランドスケープ・プラス」社がランドスケープデザインを担当した「豊島の森」と外周を流れるせせらぎだ。立派な屋上庭園はたくさんあるが、せせらぎを建物の外周に巡らすというものは記者の知っている限りでは今回が2例目だ。滝の音の演出もある。建物全体の管理維持費は5億円、このうち植栽関係だけで6,000万円を想定しているようだが、それだけ経費をかける価値は十分ある。

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「豊島の森」

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「グリーンテラス」(ベンチもあるので足水が可能なのか)

 アトリウム、吹き抜け、議場などあらゆるところに用いられている格子ルーバーもまた心憎いほどの工夫が凝らされている。吹き抜け空間「エコヴォイド」に用いられているルーバーは長さが異なる3種類のものを等間隔に張り付けてあり、正面から見ると縦のラインが規則正しく並ぶのだが、移動するごとに表情が変化していく。アトリウムの壁面はL型ルーバーの貼り付け方を変えることで陰影に変化をつけている。隈氏がよく好む工夫だ。

 アルミ手すりや壁面・ドアなどのカラーリングにも気を使っており、えも言われぬ色が用いられている。侘び寂びの世界だ。議場の壁面と区長執務室は布クロスが採用されていた。

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エコヴォイドのルーバー(左)とアトリウムのルーバー(長さが異なり貼り付け方が異なる)

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正面から見たルーバー(左)と斜めから見たルーバー

 故松浦千誉氏が所蔵し、区が平成22年に寄贈を受けた6,680点と区が所有する13,253点を展示する「ふくろうコレクション」も区民に親しまれそうだし、アトリエ村で知られる豊島区美術家協会会員100名の絵画なども廊下などに展示されている。

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ふくろうコレクション

 唯一と言っていいくらい見劣りしたのが男子用のトイレ。民間は最新のものを採用するところが増えているが、ここは極めてシンプルというか並み以下だった。女性用のトイレは見なかったが、女性用だけ豪華ということはありえない。

 しかし、新庁舎は「歌舞伎座と一緒、クマさんがデザインしたんでしょ。区民の誇りになる」と見学した区民が話したように、区の新名所になるのは間違いない。区のイメージを変えるかもしれない。

 新庁舎の専有面積は約26,000㎡。このうち約11,000㎡を市街地再開発建物の床として区が取得。不足分は再開発組合から購入。この購入資金を確保するため旧庁舎敷地と公会堂・分庁舎敷地を定期借地権で民間に貸し付ける。

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議場

記者が選んだ2013年ベスト3マンション(2013/12/26)

 

 

 

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外観

 全国マンション供給№1になったためかどうかはしらないが、このところ新規・竣工物件の見学会回数でも他社を圧倒している住友不動産が3月24日、年度末では「高田馬場」「インペリアルガーデン」に次ぐ3物件目、池袋の「グランドミレーニア」の記者見学会を行った。

 物件概要などは分譲開始前の記事を参照していただきたい。分譲開始したのは、先に竣工した豊島区新庁舎と一体開発の「Brilliaタワー池袋」の分譲開始からやや遅れてからだった。

 繁華街の立地であることから記者は売れ行きに注目していたが、これまたすごい。これまでに311戸を供給して300戸を契約済みだ。発売済みで未契約住戸の専有面積は43.43~71.01㎡、価格は6,000万円台前半から9,000万円台後半。坪単価は400万円台。

 契約者の居住エリアは豊島区が約26%、周辺区が約19%、その他東京が約24%、年齢は20歳代から40歳代の一次取得層で約63%、投資用は約1割。

◇       ◆     ◇

 記者は、西武不動産が池袋に本社を構えていたころはしょっちゅう取材で出かけていたが、最近はほとんど行かない。たまに東京芸術劇場で行われるコンサートに行くくらいだ。池袋はあまり好きではない。

 しかし、最近はどういうわけか「住みたい街」にランクインしているという。同社の物件の売れ行きのいいのにも驚いた。

 建物は、エントランス・ホールのワインレッドと黒の壁のコントラストが気にいった。歌謡曲にはうといのだが、井上陽水作詞、玉置浩二作曲の「あの消えそうに燃えそうなワインレッドの…」を思い出した。

 パンフレットには〝駅近くのレジデンシャルゾーンという都心居住の好立地にふさわしいアヴァンギャルドなタワーライフを表現〟とある。新宿や渋谷に押され気味の池袋の反撃の狼煙をあげるのか。

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エントランスホール

◇       ◆     ◇

 「池袋」のマンション単価が400万円とすると、山手線のマンション単価ランキングはどうなるか、記者の勝っ手で値付けしてみた。値付けは居住環境をもっとも重視したが、そもそも山手線駅圏で住宅地としてふさわしい地域は多くないので、食や文化などの要素を含めた街のイメージから総合的に判断した。

1位・東京…1,200万円 池袋が坪400万円ならその4倍の価値はある

2位・品川…750万円 リニア始発駅、アジアヘッドクオーター特区の将来性

3位・新宿…700万円 歌舞伎町はこわいが、やはり魅惑的な街だ

4位・原宿…680万円 純然たる居住を考えたら評価はもっと高いか

5位・渋谷…650万円 ヒカリエに駅前再開発で新宿に迫るか

6位・恵比寿…620万円 やはり恵比寿ガーデンプレイスの力は大きい

7位・有楽町…580万円 東京・銀座駅圏と考えればもっと高い評価も可能

8位・目黒…550万円 東建のマンションは坪600万円の声あるが…

9位・目白…530万円 住宅地ならもっと高い評価が妥当か

10位・代々木…500万円 代々木ゼミナールで全国区になったが…

11位・神田…490万円 由緒ある街。駅に広場なく魅力はなし

12位・浜松町…480万円 駅前の再開発、浜離宮の価値は大きい

13位・新橋…460万円 駅前の再開発も決まった。更に前進可能

14位・大崎…450万円 再開発タワーマンションはまだまだ増えそう

14位・田町…450万円 浜松町、品川と連続する街。もっと評価されていい

16位・高田馬場…420万円 何を重視するかだが、住むなら池袋より上

17位・池袋…400万円 他の駅との比較からしたらこれは割安か。歓楽街のイメージ

18位・上野…390万円 駅間競争で守勢一方。地盤沈下しているが底力あり

19位・秋葉原…380万円 いかがわしい街のイメージが強すぎるのが難点

20位・五反田…380万円 いまひとつアピールできるものがないのが弱点

21位・西日暮里…370万円 交通の要所ではあるが、これ以上の評価は

21位・巣鴨…370万円 住むにはいいところだが…強調材料なし

21位・駒込…370万円 良好な住宅地を形成しているが…

24位・大塚…360万円 巣鴨、駒込と同様、商業施設が乏しい

25位・日暮里…350万円 西日暮里と同じ評価。乗換駅のイメージ

26位・御徒町…330万円 アメ横のイメージと松坂屋のブランドが一致せず

27位・新大久保…320万円 無国籍タウン。評価が難しい。グローバルなのはいい 

28位・田端…220万円 駅前がプア。高台と下町が分断されている工場街

29位・鶯谷…200万円 駅西側の高台はともかく、風俗街のイメージは致命的

 ここまで書いたが、田端や鴬谷の人からはおしかりを受けるかもしれないし、池袋が17位というのも低すぎるのかもしれない。住友不動産が値付けを間違ったか、記者の他の駅の評価が高すぎるのか。いずれにしろ、これから都心部のマンションの単価は大幅にアップするはずだ。

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メインエントランス

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「グランコスモ武蔵浦和」完成予想図

 またまたコスモスイニシアだ。同社が4月下旬に分譲するアクティブシニア向けの「グランコスモ武蔵浦和」を見学した。昨年は同社の「イニシア武蔵新城ハウス」をベスト3マンションの一つに選んだが、今回の物件は、これから増えそうなシニア向けのモデルになるのではないか。コンセプトが明確で、ユニバーサルデザイン(UD)の商品企画が素晴らしい。坪単価260万円もどんぴしゃり。今年も「ベスト3」候補に浮上した。

 物件は、JR埼京線・武蔵野線武蔵浦和駅から徒歩4分、さいたま市南区沼影一丁目に位置する13階建て全160戸。他に他事業者分譲住戸601戸、非分譲住戸15戸)、非住宅13区画など。専有面積は44.00~73.54㎡、価格は未定だが坪単価は260万円くらいになる模様。竣工予定は平成28年1月下旬。管理・サービス運営はコスモスライフサポート。施工は清水建設。

 現在分譲中のマンション「武蔵浦和SKY&GARDEN」などとともに一体開発されている再開発プロジェクトの一つで、購入者の年齢制限は設けてはいないが、60歳代以上のアクティブシニア層をターゲットにしたマンション。

 レストラン、大浴場のほか各種生活サポート施設・プログラムを備えており、1階には医療クリニックが併設され、万が一の場合には提携する介護施設が紹介される。

 マンション内は全て内廊下方式。玄関-ホール-廊下-リビング-バルコニーまでバリアフリーで、廊下幅はメーターモジュール。居室ドアなどは全て引き戸で、洗面カウンターは椅子を置いて足を入れることもできるニースペースがついている。各洋室、トイレ、バスルームには緊急コールボタンが設置される。キッチンはオール電化で、食洗機はついていないがファミリーマンションとほぼ同クラスかそれ以上。夫婦別室で、居室とリビングが一体として利用できるようにしているのも特徴の一つ。

 2月27日にモデルルームをオープン。スタッフ9人が対応しているが、これまで予約は平日も含めすべて満室。3週間で約200名の来場がある。これとは別に3月8日から14日にかけてはシニア向けイベントを行っており、こちらには270~280名の参加があったという。

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大浴場

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スカイビューラウンジ(左)とレストラン

◇       ◆     ◇

 〝アクティブシニア向け〟が適当かどうかは分からないが、この種のマンションは「デュオセーヌつくばみらい」と「スマートコミュニティ稲毛」を見学しているが、立地条件が異なり、ターゲット層も微妙に異なっているように感じた。

 この2物件は郊外型であり、どう人生を終えるかといった雰囲気のあるものだが、今回の物件は都市居住者向けで、まだまだ人生をエンジョイしようという層がターゲットではないか。一人住まいというより夫婦二人、あるいは親子住まいを想定しているのではないか。キッチンも豪華で、ファミリーマンションに引けを取らない。ユニバーサルデザインも徹底しており、多くの支持を受けるのは間違いない。

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リビングとバルコニー

◇       ◆     ◇

 どうしてこのような企画ができたか。その謎は一挙に解けた。業界関係者ならご存知だろうが、同社は10年くらい前に「COCOLABO」を立ち上げ、大学の研究者などと「住まい」について研究を行ってきた(実際はずっと前から同社は研究熱心だった)。このアクティブシニア向けも10年前からずっと研究してきたのだという。苦節10年とはよく言ったものだ。その成果が今回の商品企画となった。

 価格が高いという向きもあるかもしれないが、このマンションには単価で測れない価値がある。

 同社の研究熱心に関連することだが、この物件の説明した同社市場・事業戦略部シニア事業課担当課長・山本一馬氏から「インディペンデンスヴィレッジ成城西」の話が出たのに驚いた。10数年前に分譲されたもので、高齢者向け分譲マンションの走りではないか。当時、売主の都市綜研インベストメントの栁瀨公孝社長からじっくり話を聞いたのを思い出した。分譲マンションに本格的なコンシェルジュサービスを導入したのも同社だったはずだ。

 そのコンセプトが今回の物件にも生かされていると思うととても嬉しい。そしてまた「武蔵新城」といい今回の「武蔵浦和」といい、コスモスイニシアはいい仕事をする。同社の頭脳と大和ハウスのカネが組み合わさったらものすごいことができるのではないか。

 一つだけ注文がある。「アクティブシニア」という言葉について。「アクティブ」は反対語の「パッシブ」も意識させる。何だか元気がない高齢者に劣等感を与えているようで気分がよくない。

 本来的にはアクティブもパッシブも青年も壮年も高齢者も同じサークルの中で生きるのが理想的な姿ではないか。気の利いた言葉を編み出してほしい。

 浴槽メーカーに参考になりそうなヒントも一つ。山本氏によると、イベント参加者には現在の浴槽の「またぎ」部分約45~50センチでも高すぎるという声があるそうだ。なるほど。半身浴ならまたぎの部分はもっと低くてもいいかもしれないし、子どもも入りやすい。これがユニバーサルデザインだ。

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玄関-廊下

今年のベスト3マンション野村・立川三井不・三田綱町イニシア・武蔵新城(2014/12/25)

「武蔵浦和SKY&GARDEN」 販社に長谷工アーベストが選ばれた理由(2014/4/15)

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「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」

 三菱地所レジデンスは3月23日、2013年12月の分譲開始以来10カ月で全497戸を完売した「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」の竣工見学会を行なった。マンションは地域住民にも公開され、町内会関係者など約30人が見学に訪れた。

 物件は、JR京浜東北線新子安駅から徒歩4分、横浜市神奈川区新子安1丁目の日産グラウンド跡地に位置する10階建て全497戸。専有面積は61.66~101.12㎡、価格は3,278万~7,698万円(最多価格帯4,400万円台)、坪単価は210万円。施工は熊谷組。

 問い合わせ件数は約5,800件、来場者数は約2,500件、契約歩留まりは約20%。購入者は横浜市内居住者が約60%で、30歳代の一次取得層が47%。

 見学会では共用施設のほか保育所、学童施設も公開され、熊谷組の施工技術や地域との関わりなども映像で紹介された。地域住民へのインタビューも許され、アンケートによる購入者の声をまとめた冊子が報道陣に配布された。

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歩行空間

◇     ◆   ◇

 これほど盛り沢山で新しい発見をさせてもらった見学会はない。

 まず、建物。ランドスケープデザインが秀逸だ。2010年に地域住民を含めた「新子安まちづくり推進委員会」を立ち上げ、良好な住環境を形成するため協議を重ねた成果だろう。横浜市の市街地環境設計制度により高さ規制の緩和を受け、保育所・学童保育施設・地域交流施設を併設し、敷地外周を歩道空間とした「CASBEE横浜」の「Aランク」を取得している。

 施工面では熊谷組は、PC工法を一部採用するとともに工程の工夫を凝らした結果、1層を立ち上げるのに通常は18日くらいかかるのを12日に短縮したこと、マイスターと呼ばれる責任者が音頭をとって地域のイベントに参加し、掃除なども行ったことなどが報告された。

 驚いたのは、購入者アンケートの結果がそのまま配布されたことだ。われわれはたくさんマンションの取材をするが、直接ユーザーの声を聞く機会はほとんどない。その意味でアンケートの声はものすごく新鮮に映った。全て読んだ。

 アンケートの設問は、①購入のきっかけ②決め手になったポイント③妥協点④購入後の暮らしのイメージ-の4項目で、1枚に12~13人、全部で250人分くらいあった。

 読んでまた驚いた。女性と思われる方の字が総じて美しく、びっしりと書かかれていたことだ。最近流行りの絵文字はほとんど皆無。丸文字もない。内容的にも一つ一つ丁寧に答えている。美しい品性がうかがわれた。いい加減な取材はできないと教えられもした。

 その反面、男性によるものははっきりいって字が下手で雑。内容的にもピント外れ、表現力の乏しさ、主体性のなさがうかがえた。なにかにつけ女性がリードする世代なのだろうと納得もした。

 以下、女性によるものと男性によるものと思われるコメントをいくつか紹介する。

 「家族が増えて今の住まい(1LDK)が狭くなり引越しを考えた。マンションならではの眺望、日当たりの良さを条件に高台にあるマンションを中心に見学した。高台にあるマンションは眺望、日当たりは良いが、駅からの道のりが遠かったり、坂道がきつかったりしたため、何件か見学したが、結局次々と断念してしまった。

 本物件を初めて見学した際、駅からの近さに感動…。色々見てきたが、やはり駅近の魅力はすごいと思った。駅近のわりには手の出せる価格帯であること、部屋の仕様が希望を十分に満たしている(ディスポーザーなど)ことなどが決め手の後押しとなった」

 「私達夫婦は、二人とも60歳近いので、休日にはゆっくりとこの街を散策することが楽しみです。特に大口商店街は、歴史あるお店と、新たにオープンしたお店が共存する商店街のようなので、ぜひ行ってみたいと思います。

 また、絵画を鑑賞することが好きなので、みなとみらいにある横浜美術館が近いので楽しみです。釣りが好きな主人は、海まで近いので、大変楽しみにしております」

 「二人の勤務地である新橋と横浜の中間地点、川崎周辺と都内でモデルルームを9件ほど見て回り、ここの物件にたどりつき、契約に至りました」

 「2カ月で10件のモデルルームを見学した中で、ここが一番気に入りました」

 「初めて『新子安』駅に降りた時は、正直、他の駅と比べ、商業施設の貧弱(?)さや人の少なさに吃驚したが、普段の買い物は週末に車でするし、必要であれば『川崎』や『鶴見』で途中下車もできると思い納得した。

 駅から少し遠い物件であれば、もっと広くて安いところもあったが、やはり駅からの距離がこれほど近く、且つ静かな環境は他では得られないと思った」

(以上、女性回答者)

 「最低限のスーパーがあるため妥協。今後の発展に期待」

 「新築でもあり、モデルルームでの細かな点(ドア、キッチンの高さetc.)に感激した妻のひと言が決め手となった。『ここに住めたら良いよね』と」

 「駅からフラットで4分。その割に静か」(フラットではない=記者注)

 「妻の実家との近さ」(同様のコメントは多数あり)

 「テラスで昼寝」(この種の回答も多数。対照的なのが女性と思われる「毎日、ピアノを弾いていたい」という回答)

 「家のテラスでのんびり過ごす。WIC(トイレでなくウォークインクローゼットか)にこもる」

 「眺望はあきらめた。東京への近さは妻に妥協してもらった」

(以上、男性回答者)

 価格について一言。購入者の方には「価格が高い」と思っていらっしゃる方も結構いるが、用地取得の段階から知っている記者はものすごく割安感があると思う。坪230万円が適当とはじいた。駅力が乏しいのは如何ともしがたい。だから安いのだ。

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◇        ◆     ◇

 認可保育所と民設民営は、見学したことがほとんどないので他の施設との比較は難しいが、とてもよくできていると思った。

 保育所は83カ所で保育園などを展開している「グローバルキッズ」が施設を所有・運営するもので、床暖房に床材にはコルク材を使用、腰壁・建具などはヒノキの無垢材、廊下・階段幅は約1.5m。至れり尽くせりの設備だと思った。定員60名で、すでに定員いっぱいだという。

 学童保育は、「ワオキッズ」がグローバルキッズから貸借して運営するもの。英会話教室やサイエンス教室(一部はオプション)などのカリキュラムやイベントのほか送迎、延長対応、ミール、洗濯・着替え貸し出し、買い物代行なども行なう。レギュラー会員(入会金、入会セット料金別)で1年生の場合、週5日の通常月料金は4万円。定員は30名で予約を含め3分の2が申し込み済み。

 学童保育は、公設公営と公設民営がほとんどだろうと思っていたが、最近は民設民営も増加しているとか。基準がないから自治体の援助も受けられないようだが、学童保育がビジネスになる時代になったということか。

 〝子どもは風の子〟は死語になったようだ。最近の親は〝家にこもっていないで、公園で遊んできなさい〟と言わないのだそうだ。

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保育所(0歳児用のオリジナルの椅子とテーブル。床はコルク)

◇        ◆     ◇

 地域交流施設を見学したあと、地域の方たちと話し合う機会が設定されていたのもよかった。

 約2,000世帯で構成する新子安南部町内会会長の森田さん(66)に「最近の若い人はコミュニティなど真っ平。町内会に加入などしたくないむという人が増えているが…」と単刀直入に聞いた。

 森田さんは、「町内会がうまく機能していない例を知っているが、そういうところは災害時には最悪の事態になるはず。挨拶もしないような街は、マンションも高く売れない。このマンションは全世帯が加入すると聞いている。交流施設は無料で利用できる。様々なイベントなどに利用したい」と話した。

 また、別の人は「敷地には立派なサクラが植わっていたが、伐採されることになったので、われわれが要求して緑地スペースを増やし8本の木を植えさせた。完成したのを見ると贅沢すぎて、管理費が大変だろうと心配もしている」と率直な感想を語った。

 町内会の方が「贅沢すぎる」と話した樹木は、シンボルツリー的な10数メートルはありそうクスノキのほかシラカシ、カツラ、アメリカフウ、ヒマラヤスギなどの成木で、確かに見事だ。外周を歩行空間にしているランドスケープもいい。

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町内会の皆さん

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