樹齢30年以上 戸建てより低く〝伐採〟された「白岡ニュータウン」のケヤキの街路樹
白岡ニュータウン 中央通りの街路樹(戸建てより低いことが分かる)
まず写真を見ていただきたい。総合地所の「白岡ニュータウン リフレの杜〝コミュニティガーデン街区〟」を取材して、その帰りに中心街を見ようと立ち寄ったときの街路樹の様子だ。街路樹はケヤキであることがすぐわかった。記者は「ひどい、こんな強剪定はない」とほとんど叫ぶように声を上げた。隣にいた同社執行役員 分譲第一事業部副事業部長・井上理晴氏は「これは剪定じゃない。伐採だ」と吐き捨てた。
「白岡ニュータウン」は同社が昭和60年代に開発した総区画1,261区画の大規模戸建て住宅地だ。美しい街並みが特徴で、記者は埼玉県を代表する昭和~平成の団地だと思っている。
〝コミュニティガーデン街区〟を取材するのが目的だったのだが、熟成した街を歩くのも楽しみにして出掛けたのだが、無残な姿に伐採されたケヤキを見て愕然とした。怒りもこみ上げた。
道路は、地元の人が「中央通り」と呼ぶメイン道路で、樹齢は30年以上経過している。樹齢からして樹高は20メートルくらいに達するはずだが、ここの通りのケヤキは戸建てとほぼ同じ6~7メートルくらいで〝伐採〟されていた。
1本や2本ではない。道路の両側数百メートルにわたっていた。樹形はマダガスカルの奇樹・バオバブの変種ではないかと思ったほどだ。剪定は昨年、幹回り60~120センチの99本を対象に約85万円で市から発注された。
同上
駅前のケヤキの街路樹
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記者はこれまでも10数回にわたって「街路樹が泣いている」という見出しで記事を書いてきた。私憤をぶちまけるような記事も多いのだが、昨日見た「白岡」のケヤキは異様奇怪さの点で最右翼かもしれない。
かつて元国立市長は「大学通りのサクラやイチョウの高さと同じくらいにせよ」と言ってマンションの高さを20mに制限した。そのやり方が常軌を逸したために事業主に訴えられ敗訴した。
今回はどうもその逆のようだ。〝戸建ての高さまで街路樹を切れ〟という地元住民の声に押されたのか忖度したのかわからないが、とにかく近接する戸建てに落ち葉が落ちないよう、枝木がかからないよう、日照が奪われないようにした結果、まるで垣根のような高さになったのが容易に想像できる。
〝街路樹にマンションを合わせろ〟〝戸建ての高さまで街路樹を切れ〟と、いうことは正反対で、どちらが〝正論〟かさっぱりわからないのだが、しょせん景観などという文言は行政や一部の住民の我欲のためにいかようにも解釈できるような捉え方しかされていないのではないかという結論に達せざるを得ない。
◇ ◆ ◇
高さが10m以上はある電柱より低い高さでぶった切られたケヤキの怒りの矛先はどこに向ければいいか。
真っ先に浮かぶのは道路を管理する白岡市だが、行政にその責任を問うのは難しい。〝地元の方々の声を聴いて適正に剪定している〟という答えがまるで羊羹切りのように返ってくるだけだ。
樹形がどうなろうと、景観がどうなろうと管轄する道路課などは関係ない。街路樹によって車の運行が妨げられたり、近隣住民から苦情をもらったりしないよう心掛けるのが仕事だからだ。職を賭してでも〝伐採〟に反対する職員などいない。「切れ」一本やりの住民と闘う価値が毫ほどもないことを賢明な彼らは知っているはずだ。
ならば剪定作業を行う造園業者はどうか。これもまた責めるのは困難だ。〝行政の発注通り行う〟のが役割であって、間違ってもプロとして〝ケヤキはあるがままが美しい〟などと進言し、本音を漏らすことはない。そんなことを言ったら、明日から仕事が来なくなる。
だとすると、やはり自治の主役である住民に怒りをぶつけるべきなのだろう。住民の中には「切れ」という者もいれば「切るな」という者もいる。そのはざまで行政は右へ左へ揺れ動くのだが、結局は〝大きな声〟をあげた人が勝つ。それが民主主義だ。そんな人に景観論争など挑んでも〝それじゃ、雨樋の修繕費や落ち葉の処理代を払ってくれるか〟と一喝されるのが落ちだ。
かくて衆愚政治は街の隅々まで浸透し、よってなにが美しいやら醜いやら誰も判別つかない、なによりも我欲が最優先する自滅するほかない社会が構築される。
それでも記者は「白岡ニュータウン」は埼玉県を代表する美しい街といいたい。この「中央通り」から中に入った住宅街は、道路が東西軸を基本に設計されているので「南道路」「北道路」による評価差が少なく、各住戸は2段植栽によって緑や草花が植えられ、全体として美しい街並みが形成されている。ただしかし、あの醜いケヤキ(とわたしが考えるだけかもしれないが)が街の価値を引き下げないか気掛かりだ。
付け加えるが、ケヤキは街路樹の中でも単価が高いほうで、最近はめっきり減っているという印象を受ける。植樹したのはもちろん白岡市ではなく、街を開発した総合地所だ。立派な街にしようと当時の担当者は企画したはずだが、企画意図とは真逆の哀れなケヤキの姿を見せられたら滂沱の涙を流すのではないか。
それにしても昨年剪定されたケヤキの本数はどうして99本なのか。枝葉を全て奪い取られ、息も絶え絶えな姿はなにやら〝白寿〟を連想させる。悲しくてしょうがない。生きることを全否定されたようだ。
言い忘れたことがまだある。ケヤキの生命力はこんな暴挙にもびくともしないということだ。剪定を担当した業者によると、「切られた小指ほどの枝は3年もすれば手首ほどに成長する」そうだ。
ケヤキよ、泣くな。3年後には民家が埋まるくらいの葉っぱを降り注いでやれ。葉っぱは大地を肥やし、ミミズを育て、紊乱した人の心を癒す。愚かしいことをやめさせるまで成長しろ!
白岡ニュータウンの街並み
続々「街路樹が泣いている~街と街路樹を考える」 支離滅裂の「新三郷」(2014/10/24)
あのような倒れ方をしたのはなぜ 熊本県南阿蘇町の倒壊学生アパート
昨日(4月20日)、同業の記者から「熊本県南阿蘇町で倒壊した学生アパートの築年数は42年だった」とするある会社のブログ記事が添付されてメールで送られてきた。
記者もこの倒壊アパートについては相当のショックを受けた。テレビ画像では木造か非木造かは判別できなかったが、かなり古い建物かあるいは構造に問題があるのではと思っていた。建物の構造や築年数などについて言及するマスコミはなかったはずだ。
どうしてあのような無残な倒れ方をしたのかずっと頭から離れなかった。「なぜ」を繰り返した。理由を知りたく記事にもしたくて、木造の構造に詳しい人にも相談したが、「情報が少ない段階で書くべきではない」と言われそのままにしていた。
そして昨日だ。同じように不思議に思っていた人が多いようだ。そのブログ記事には、件のアパートは登記簿では木造の昭和49年築で、"改築◯年"となっていたようだ。
ここで問題となりそうなのは、築42年という築年数ではなく「改築」だ。建基法では「改築」とは、「建築物の全部又は一部を除却した場合、又は災害等により失った場合に、これらの建築物又は建築物の部分を、従前と同様の用途・構造・規模のものに建て替えること」とあり、従前のものと同じ、つまり現行の建基法の規定に従わなくてもいいようにも受け取れるが、それは軽微な改築であり、一定規模以上のものは建物全体が建基法の規定に適合するよう是正しなければならない。
だとするならば、今回の倒壊アパートはどうなっていたのか。記者は現行の建基法に適合していればあのような倒れ方はしないと思う。
このアパートに住んでいた学生が死亡した東海大学の災害対策本部・広報は、「学生が死亡したアパートは当大学が管理・運営している学生寮ではない。現段階では事実関係が明確ではないが、比較的(築年数が)新しいと聞いている」と話している。
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国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」には、構造が木造か非木造か、工事完了年がいつであるか、大規模修繕を行っている場合はいつであるかを記載するよう求めているだけだ。
賃貸だろうと分譲だろうと、一番肝心なのは耐震性・遮音性・断熱性・居住性などの基本性能だ。分譲マンションでは、デベロッパーは杭打ち状況、壁・床厚、遮音等級、断熱性能、天井高、セキュリティなどをほとんど例外なしにパンフレットに盛り込んでいる。重要事項説明書にも法令上の制限や建物の維持・管理などを記載することが義務付けられている。
それに対して、どうして賃貸はもっとも肝心な耐震性についてはほとんど何も求めていないのか。これが信じられない。
ユーザーは真っ先に建物が旧耐震なのか新耐震なのかを確認することが必要だ。大きな地震(震度6~7)が起きたとき、「建物が倒壊して死ぬかもしれない」旧耐震の物件を購入し、あるいは賃借すべきでないと記者は個人的には思っている。
賃貸物件の貸主もまた旧耐震の物件については耐震診断を行い、必要なものは耐震補修を行うべきだ。これは最低限の義務だろう。
仲介会社も同様だ。賃借人の安心・安全を提供するのが宅建業者の使命であるはずだ。
宅建業法の目的は「購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ること」(同法第1条)であり、宅地建物取引士の任務は「宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行う」(同法第15条)だ。
この文言からすれば、少なくとも旧耐震の木造アパートが〝危険〟であることを告知する義務があると思うがどうだろう。そのような危険な共同住宅が市場に流通しなくなるような社会にしなければならない。
激増する千代田区人口 16年間で61%増 当分続くマンション供給ラッシュ
先日は千代田区や港区などで〝お金持ち〟が増えていることを書き、昨日は千代田区のマンションがよく売れていることを紹介した。なぜ、そんなに同区のマンションが人気になるのか、その理由・背景をデータから探ってみた。
まず、人口。昨年3月、国立社会保障・人口問題研究所から平成22年(2010年)に約1億2806万人だった総人口は平成52年(2040年)には1億728万人へと2000万人以上も減り、65歳以上人口が40%以上を占める自治体が半数近くになるというショッキングな予測が発表されたが、千代田区には全く無縁な話だ。
同区の人口は昭和30年の約12万人を境に減少を続け、平成7年には約3.5万人までに落ち込んだ。その後は減少傾向に歯止めがかかり、平成12年の国勢調査では実に45年ぶりに増加に転じた。
国勢調査によると、平成12年の人口は約3.6万人だったのが22年には約4.7万人に30%も増加し、住民基本台帳による直近のデータでは約5.8万人へ、この16年間で61%も増えている。区の予測によると増加傾向は今後も続き、ピークの平成67年(2055年)には約8.1万人になるという。
ただ一つ気ななる材料もある。人口とは夜間人口のことで、昼間人口は漸減傾向にあることだ。平成12年の昼間人口は約86万人だったのが、22年には約82万人へと4万人も減少している。平成27年度の国勢調査の結果がどうなるか気になるところだ。区でも昼間人口減の要因をつかみかねている。
昼間人口減はともかく、人口増の最大の要因はいうまでもなくマンションの建設増だ。この7年間でも「プラウドタワー千代田富士見」(414戸)、「ワテラス」(333戸)、「パークコート千代田富士見」(505戸)の大規模再開発マンションが竣工している。
マンション建設増を裏付けるデータとして住宅着工増がある。平成5年はゼロだったのが、平成16年には約1,800戸に増加。その後は減少していたが、ここ数年は再び増加に転じ、平成27年(暦年)では1,696戸と平成16年水準に近づいている。〝億ション〟のメッカでもある麹町エリアでのマンション供給ラッシュもこれから本格化する。業界関係者によると20棟近くあるそうだ。
特徴的なのは、区内に建設されているマンションは小規模なものが比較的少ないということだ。区のデータによると、マンションは25年までに432棟、約2.1万戸供給されており、1棟平均は50戸だ。20戸未満が半数を占める都平均と比べるとその差は歴然とする。
マンションの規模は資産性とも密接な関係がある。区内の旧耐震の建築物は確実に減少しており、平成15年から25年までに約3,000戸以上減少し、26年の耐震化率は89.7%に達している。
空き家率の改善も進んでいる。平成20年には25.8%だったのが、25年には13.3%へと都の平均値(11.1%)に近づきつつある。
高額マンションの供給増はアッパーミドル・富裕層の増加につながっている。所得割の課税標準額が1,000万円以上の「高所得者」は、平成24年度は約3.6千人で、全納税者に占める比率は12.6%だったのが、平成27年度は約4.4千人と3年間で約800人増加し、比率も13.4%へ0.8ポイント増加している。比率は港区の14.5%には及ばないが、23区平均の4.1%を大きく上回っている。
他のデータもなかなか興味深い。保育園・学童クラブの待機児童はゼロだし、生活保護率も特別区の平均より5~10ポイント低い。
喫煙者と非喫煙者の共生を図る取り組みにも力を入れている。区は平成26年度から民間ビルの空き店舗などを活用した屋内喫煙所の設置に対する助成事業を開始し、28年度も引き続き「喫煙所の設置を積極的に推進していく」としている。
このような人口増、マンション建設増を受けて区では、平成27年度から平成36年度までの10年間を期間とした「新たなちよだみらいプロジェクト」を作成。既存施設の更新や住環境の整備、子育て、高齢者支援施設の充実、コミュニティ支援などへ施策の重点を移していくとしている。「付置住宅」や「区営住宅」「区民住宅」の見直しも行われる。
全国90万人の「高所得層」のうち21%、19万人が東京23区に集中
平成27年度の市町村税課税標準額が1,000万円以上の「高所得者」は約90万人で、全納税者に占める割合は1.7%であることは先に紹介したが、この〝お金持ち〟が全国にまんべんなく存在しているわけではなく、東京23区、とりわけ港区や千代田区、渋谷区、世田谷区などに集中していることが分かる。
東京都23区の平成27年度納税者の課税標準額を段階別にみると、平均では200万円以下が54.6%、200万円超~700万円以下が37.8%、700万円超~1,000万円以下が3.5%、1,000万円超が4.1%となっている。「高所得者」は前年度と比べ9千人、4.5%増の約19.2万人となり、高い伸びを示した。全国約90万人の「高所得者」のうち21%が23区に集中している。
これを区ごとに見ると、「高所得者」がもっとも多いのは世田谷区の約3.0万人(構成比6.5%)で、以下、港区約1.9万人(同14.5%)、杉並区約1.3万人(4.5%)、渋谷区約1.2万人(同9.5%)の順。もっとも少ないのは荒川区の約1.9千人(1.9%)。
「高所得者」の比率がもっとも高いのは港区の14.5%(約1.9万人)で、以下、千代田区13.4%(約4.4千人)、渋谷区9.5%(1.2万人)、文京区8.0%(9千人)の順。もっとも比率が低いのは足立、葛飾区で1.5%。足立区は課税標準額が200万円以下の比率は63.6%に達している。
総所得などは約21兆円で、前年度比0.2%減となった。総所得、退職金所得などは前年度比3.4%増の約19.7兆円になったものの、株式譲渡に伴う軽減税率廃止による駆け込み需要がみられた平成26年度に対して、27年度はその反動による分離課税所得が前年度比34.5%減の約1.3兆円だったのが影響したため。
23区全体の一人当たり特別区民税額は9.9万円で、対前年度比1,000円増となった。10区で区平均を上回り、13区で下回った。
「高所得層」23年度と比べ9.8%増の90万人27年度 市町村税課税状況(2016/3/31)
〝オールポラス〟の木造建築物先導モデル「ポラス建築技術訓練校」が竣工
事務所棟(左)と実習棟
ポラスグループは4月12日、企画-設計-施工まで〝オールポラス〟で取り組んだ「ポラス建築技術訓練校」が竣工したのに伴う記者見学会を行った。建物は、国交省の再生可能な資源である木材を大量に使用する木造建築物の技術向上に資するとともに普及啓発を図ることを目的とした補助事業「平成27年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されている。
建物は、一般に流通する安価な集成材を複数本集束させることで「合せ柱・合せ梁・重ね梁」として強度を高める技術を開発したのが特徴。
発表会に臨んだ同社経営企画室室長・江本昌央氏は、「2年前から取り組んできたプロジェクトで、ポラスグループの総合力を結集した。木造非住宅のモデルハウスとして今後の受注拡大に結びつけたい」と語った。
また、ポラスハウジング協同組合施工推進課マネージャー・成田超洋氏は、「訓練校の卒業生は697名。この中からたくさんの技能オリンピック受賞者を輩出してきた。今年の新入生は44名。立派な大工などに育てたい」と話した。
実習棟内部(天井高は6m)
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この建物については、1月に行われた「構造見学会」に参加して、記事も書いているのでそちらも参照していただきたい。
木造住宅の美しさについては何度も書いてきたが、完成した建物、特に事務所棟の内部は柱や梁が現しとなっており木造の建物であることが判るようになっている。
一方、実習棟の天井高は約6m。一般の木造住宅に使われている柱や梁の材料を使用しながらもこれだけの大きな建物を作り上げたポラスグループの総合力には関心をしたのだが、構造見学会で見惚れた天井部分などはパネルで覆われていたのは少し残念だった。
せっかくの木造建築物なのだから、その特徴が通りすがりの人にも気付くようなデザインをもっと取り入れてよかったのではないか。
「ポラス建築技術訓練校」は、建築大工、内装工などの若い技能者の育成を30年間にもわたって継続してきたことに価値がある。卒業生は697人もいるというではないか。
建築業界では技能者不足が叫ばれて久しいが、具体的な解決策は描けていないのが現状である。日本の未来を考えるならば今回のように技能者育成の学校を自ら設計、施工するような企業がもっと出てくるべきだろう。
実習棟 木造パネル
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見学会では、設計や施工を担当した同社グループのスタッフと懇親会を兼ねた食事会が催されたのだが、隣り合わせた鍋野友哉アトリエ/TMYA主宰・鍋野友哉氏が興味深いことを話した。「木は耐震性、耐久性、断熱性などそれぞれ個別の性能ではナンバーワンではないが、いずれの性能もそこそこよくバランスがとれている。そこを最大限に活かす設計ができれば良い木造建築が生まれるいずれもバランスがとてもいい」と。
森林・木材の価値は、地球環境保全、生物多様性保全、土壌保全・水資源涵養機能、快適空間形成機能、文化機能などそれこそ数え切れないほどある。
にもかかわらず、わが国の森林・林業は危機的状況にあることが指摘されている。地域コミュニティ、文化の崩壊も懸念されている。
どうして木材が鉄やコンクリに取って代わられたのかここでは書かないが、結局は、こうした森林・木材の価値に目をつぶり、「安いものがいいものだ」という経済合理性を最優先してきたことに尽きるのではないか。
鍋野氏が話したように、これからはバランスがいい木を基本として、足りないものを他の製品で補っていく-これは生き方にも通じるのではないか。
鍋野氏は1979年生まれの「東京大学大学院農学生命科学研究科木質材料学研究室」卒だ。農学から建築を設計・研究するというのがいい。いまどこの大学も「グローバリズム」を金科玉条のように掲げ、文科省からの補助金欲しさに理系を重視し、英語を共通語にしようとしている。入学式で式辞を英語で話した学長もいるくらいだ。「農本主義」は死語になったのか。鍋野氏のような農学者の反撃に期待したい。
ポラス サステナブル建築物等先導事業の構造見学会(2016/1/14)
環境先進企業が市場で評価される社会へ エコ・ファースト推進協が総会
丸川氏(左)と和田氏
環境先進企業として環境省から認定されている「エコ・ファースト企業」38社で構成される「エコ・ファースト推進協議会」(議長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は4月11日、2016年度通常総会を開き、2015年度事業報告、同収支決算、2016年度事業計画などを承認し、和田氏を議長に再任するとともに新たに副議長として大成建設・村田誉之氏を選任。また、今年度から西松建設が加盟して38社になった。
総会後は、環境省環境事務次官・関荘一郎氏が「パリ協定から始めるアクション50-80」と題する講演を行った。
冒頭、和田議長は、「昨年開かれたCOP21の歴史的な『パリ協定』で、わが国は2030年度に(2013年度比)26%の温室効果ガス削減を公約した。今年は、G7の富山環境大臣会合や伊勢志摩サミットなど重要な会合が開催され、世界から注目が集まる。このような時期だからこそ環境問題解決と企業経営を両立できる、環境保全のトップランナーとしてのエコ・ファースト企業の役割が増大する。政府が昨年から展開している国民運動の『COOL CHOICE』にもエコ・ファースト企業が率先して活動し、低炭素社会の実現に向け貢献している。今後もわれわれが連携して環境保全の活動に取り組んでいきたい」とあいさつした。
来賓として出席した丸川珠代・環境大臣は「歴史的な『パリ協定』の締結は、先進国、途上国の差なく地球温暖化に対する危機感が暮らしの中で実感できる状況になってきており、この危機感こそが画期的な合意を実現させた。今年はこのパリ協定を踏まえて行動する元年。環境先進企業としての皆さんは社会を引っ張っていくリーダーであり、かけがえのない存在。皆さんの取り組みがマーケットで評価される社会、経済の仕組みを環境省として取り組んでいきたい」と語った。
◇ ◆ ◇
記者は、丸川大臣の「皆さんの取り組みがマーケットで評価される社会、経済の仕組みを環境省として取り組んでいきたい」という言葉に注目した。
この「エコ・ファースト企業」が(株式)市場で適正に評価されているとはいいがたい。
記者はかつて「なでしこ銘柄」として選定された企業の株価の推移を調べたことがある。他の複合的な要素もあるので判断は難しいのだが、ほとんど株価には反映されていないという結論に達した。「エコ・ファースト企業」も同様ではないか。だからこそ丸川大臣も話したのだと思う。
海外では環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資が急拡大しているというではないか。
わが国も企業価値を測る物差しとして環境や社会貢献活動、企業統治を重視する「ESG」手法を導入すべきだ。「CASBEE」と同じような評価をし、有価証券報告書などに記載することを義務付けるなど、一般投資家にも〝見える化〟を進めてほしい。環境への取り組みで成果を上げている企業・個人は固定資産税や住民税の減免措置があっていい。そうすればみんな一生懸命取り組むし、社会、株式市場でも評価されるのではないか。
総会会場(東京国際フォーラム)
住友不動産2.4haの「新宿ガーデン」が竣工 オフィスは満室稼働
「新宿ガーデン」
住友不動産が開発を進めてきた、JR山手線高田馬場駅の南側、戸山公園に隣接する約2.4haの職住近接の街「新宿ガーデン」の街区全体が3月31日に竣工し、先日(5日)、報道陣に公開された。
敷地面積の約66%、約1.5haを大規模な空地や緑地として整備。既存公園である都立戸山公園、区立西戸山公園と連携した緑地空間のネットワークの形成を図っている。敷地内に認可保育園を設置する。
事業の中核となる超高層免震タワー「住友不動産新宿ガーデンタワー」(地上37階建て、高さ150m)の周辺には教育機関や木造密集市街地など住宅エリアが広がっていたため、地域の防災拠点としてイベントホールを帰宅困難者の一時滞在施設として地域に開放するなど、災害時において安心安全な街づくりを行った。BCP対策(免震構造、停電時の3重のバックアップ)、最先端のオフィススペックが評価され、オフィスは満室稼働する。
24~37階の賃貸「ラ・トゥール新宿ガーデン」は全363戸で、専用面積は37.12~143.51㎡、平均面積は100㎡超。1カ月から使える家具付きマンションの「サービスアパートメント」を複数フロア、住みながら働くSOHOも1フロア用意した。賃料は約19万~78万円。15%の入居が決まっている。
竣工により、同社の高級賃貸〝ラ・トゥール〟シリーズとしては20棟目、累計2,735戸となる。
分譲マンション棟「スカイフォレストレジデンスタワー&スイート」(361戸)は昨年竣工。現在、14戸が先着順で分譲中。
エントランス部分
公開緑地・歩道
住友不動産、高田馬場のタワーマンション竣工 売れ行きも好調(2015/3/6)
CLTとツーバイフォー6階建て実験棟が完成
「つくばCLT実験棟」
「ツーバイフォー6階建て実大実験棟」
日本CLT協会、日本ツーバイフォー建築協会、建築研究所の3者は4月7日、茨城県つくば市の建築研究所内に完成した「つくばCLT実験棟」と「ツーバイフォー6階建て実大実験棟」の見学・説明会を行った。CLT協会・中島浩一郎会長、ツーバイフォー協会・市川俊英会長、建築研究所・坂本雄三理事長が出席し完成を祝った。建物は双方とも国土交通省の補助を受けている。
「つくばCLT実験棟」は、CLT (Cross Laminated Timber Association)パネル工法による2階建て延床面積1660㎡。構造材には、スギの集成材を直交するように交互に重ねあわせ接着した厚さ90~210ミリの大判パネルを採用。難点とされていた接合部も金物の開発により問題を解消。高さ6mの通し柱を実現し、建物の2階テラスを3m跳ね出すことで1階のピロティ空間を確保しているのが特徴。
「ツーバイフォー6階建て実大実験棟」は、地上6階建て延床面積206㎡。6階建てはわが国初で、6階建てに必要な2時間耐火壁・床を実現した。先導的な技術開発を行うとともに様々な実証実験を行い、高層建築物の木造化につなげる目的で建設された。
今後、双方とも建築研究所と共に性能検証や設計法の開発を行っていく。
説明会で挨拶した日本CLT協会会長・中島浩一郎氏(銘建工業社長 )は、「今年4月1日の建築基準法告示により、CLT構造による建築が可能になった。CLT元年といえる。新しい木造時代を前に進めたい」と語った。
また、日本ツーバイフォー建築協会会長・市川俊英氏(三井ホーム社長)は、「ツーバイフォー工法がオープン化されて40年が経過し、累計の建設戸数は約220万戸に達した。建て方のシェアも13%の伸び、住宅だけでなく福祉など非住宅も実績を伸ばしつつある。6階建ての完成は一層の発展にとって意義のあるもの。1~2年先には6階建てを実現したい」と、6階建ての建築に意欲をみせた。
説明会には、木造建築に理解のある国会議員の金子恭之氏、鈴木義弘氏、前田武志氏、高野光二郎氏が来賓として駆けつけ挨拶した。
CLTの玄関ドア(左)と6m通し柱
CLT 2階(天井高は4m)
CLT構造材と金物
◇ ◆ ◇
木造ファンの記者も完成を喜びたい。ツーバイフォーはこれまでも3階建て、4階建て、5階建て(1階はRC)を見学しているので驚きはさしてなかったが、2時間耐火のために床、壁、開口部に3層のボードを重ねていたのには考えさせられた(ここまでやる必要があるのか)。
いつも言っていることだが、一つだけ注文を付けたい。外壁は屋上の一部に木製パネルを使用していたが、やはり目立つところに木を使ってほしかったということだ。地球にやさしい、人にやさしい木が持つ本来の機能と美しさをサイディング(今回は窯業系だが)でどうして覆い隠さないといけないのか。これは木造を鉄やらコンクリの土俵に立たせる自殺行為だ。
CLTは文句なしにいい。外壁を現し(あらわし)にしており、内部はほとんどすべてが岡山県の国産材スギを使用している。CLTの普及に努力されてきた、今回の建物でもパネルを生産した銘建工業の中島社長の挨拶は、われわれ報道陣の位置が最後列だったためよく聞き取れず表情も読めなかったが、「CLT元年」という言葉に象徴されるように万感の思いが込められていたはずだ。
施工を担当した木村建造のスタッフが、「私たちが建てた。木はわれわれも楽しくさせてくれる」と話したのがとても印象的だった。
ツーバイフォーのサッシ部分(左)と2時間耐火外壁仕上げ
ツーバイフォー 2階のCLT床(厚さは210ミリ)
説明会場(建築研究所本館で)
わが国初のツーバイフォー6階建て実験棟 完成へ(2016/2/4)
新入社員の皆さんへ 各社の珠玉の訓示を読んで 「R.E.port」が網羅
今年は何人の新入社員が住宅・不動産業界に入ってきたのだろう。アベノミクス効果かどうかしらないが、マンション価格の暴騰、株安、消費増税など業界を取り巻く環境は楽観視できないものがあるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け外的環境はフォローの風が吹いている。新人の皆さんにはこの風に乗っていただきたい。
そして、ここに最高の贈り物を届けたい。記者からではない。各社トップの入社式での訓示だ。
記者にも少しは社長訓示が届くのだが、不動産流通研究所のWeb「R.E.port」が他を圧している。全部で25社もある。主だった会社は全て網羅されている。慈愛に満ちた珠玉のメッセージばかりだ。例年になくたくさん集めたのだそうだ。
同社の了解も得たので、リンクを貼りつけた。間違いなく皆さんの生きたバイブルになるはずだ。慈愛に満ちた珠玉のメッセージばかりだ。
本当は全て紹介したいのだが、いくつかを紹介する。
三菱地所レジデンス・小野真路社長は「不動産の基本はフィールドワークだということを忘れてはいけない。足で稼ぎなさい。街をよく見て、人がどう動いているかよく見ることを大切にして欲しい」と呼び掛けている。
「好奇心を人生のパートナーとして片時も忘れることなく過ごしてもらいたい」と、センチュリー21・ジャパン・猪熊茂男社長は、好奇心を忘れるなと説いた。
住友林業・市川晃社長は、「真のグローバル人財とは、自分とは異なる多様な価値観を受け入れ、その上できちんと自分の意見を主張できる、そういう人です」と、「真のグローバル人財」について語った。
積水化学工業・髙下貞二社長は、「知行合一」「一隅を照らす」「修羅場の経験が成長の種」の3つに期待を込めた。
「相手(お客様)の『心』を読み取る力を身につけてください」と、大和ハウス工業・大野直竹社長は核心に触れた。
三井不動産・菰田正信社長は、「持てる力を最大限に発揮でき、多種多様な才能がシナジーや化学変化を起こす会社にならなければなりません」と、〝化学変化〟という魅力的な言葉を使った。
どうか、これらをコピー&ペーストし、自分なりに編集して、いつでも読めるようにしてほしい。大きな武器にもなる。くじけそうになったら読み返すことだ。
業界紙誌について少し触れよう。これは大事な情報源になる。毎日チェックすることを勧めたい。冒頭に紹介した不動産流通研究所のWeb「R.E.port」は欠かせない。主だった住宅・不動産業界のその日のニュースが伝えられている。記者はものすごく重宝している。評論記事は少ないが、何しろ無料で読める。
他にも日刊の「不動産経済通信」、週刊の「住宅新報」「週刊住宅」があるが、これらは紙媒体で有料だから新入社員は購読するのは難しいし、会社が購読していても、じっくり読む機会はないかもしれない。各紙ともWebもあるが、Webに力を入れていないようで、残念ながら参考になる記事は少ない。
この「こだわり記事」は各社のプレス・リリースの10分の1もフォローできていないが、〝記事はラブレター〟のつもりで書いている。マンションなどは現地に足を運び、自らの視点で書いている。暇があったら読んでいただきたい。
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わたしが皆さんに言えることがあるとすれば、言い古された言葉ではあるが「三日三月三年」だ。「三日」はともかく、「3カ月」の研修期間で道を誤った、あるいはその企業の理念・哲学とかけ離れていることをやっていると感じたら辞めたほうがいい。出直しは十分効くどころか、自分から三行半を突きつけるべきだ。
「3カ月」が経過したら、とにかく〝石の上にも3年〟。わき目も振らずにがんばることだ。3年もすれば仕事を覚えられるし、芽が出てくる。自らの方向性も見えてくる。この段階で自らの方向性を見出せないとすれば、生き方も含め考え直したほうがいい。
もう一つは、宅地建物取引士の資格を取ってほしいことだ。この「宅建士」の資格が実際の仕事にどれだけ役立つか、現行の試験制度は適切かどうかなどの問題はともかく、この資格がないと不動産業界では生きていけない。今年10月の試験まではとにかく何よりも資格取得を最優先してほしい。やれば絶対に取得できるはずだ。
※同社は4月5日にも2社追加しており、トータルで27社の社長訓示が「R.E.port」に掲載されている。
「高所得層」 23年度と比べ9.8%増の90万人 27年度 市町村税課税状況
総務省は先に平成27年度の「市町村税課税状況の調」を公表した。これは、平成26年度の納税義務者の所得に対する平成27年度の課税状況をまとめたもので、1年前の遅行指標ではあるが、なかなか興味深い内容を含んでいる。概観するとともに、安倍政権誕生前の平成23年度の課税状況と比較して、アベノミクス効果も探ってみた。
ここでいう「納税義務者」とは、住民税の所得割額の課税対象になっている人のことで、①生活保護を受けている人②障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下(給与所得者の場合は年収204万4千円未満)の人などは含まれない(東京都23区の場合)。
さて、数字を見てみよう。平成27年度の住民税納税義務者数は約5,587万人で、このうち課税標準額が1,000万円以上の人は約90万人(前年度比3.5%増)、全納税義務者に占める割合は1.7%(同0.1ポイント増)となり、所得割額は1兆1,263億円で、全体の16.3%を占めている。
課税標準額とは、所得金額から社会保険などの所得控除・特別控除を差し引いた課税対象額で、「10万円以下」から「1,000万円以上」まで9段階に分けてデータが公表されている。「所得割」とは、所得金額に応じて所得の多い人ほど多くの負担をする市民税のことだ。
課税標準額が1,000万円超の層は、アッパーミドル・富裕層ということがいえるが、ここでは「高所得層」と呼ぶことにする。
この「高所得層」の山林所得、退職所得を含めた総所得額は20兆円だ。全体が178兆円だから、全体の11.4%の所得を得ている。
不動産や骨とう品、ゴルフ会員権などの長期・短期譲渡所得額は4,792億円で、全体の13.5%を占めている。
株式の譲渡所得は1兆193億円(前年度比50.2%減)で全体の55.1%に達している。前年より激減したのは、平成25年末で軽減税率が廃止されたことによるものとみられる。
株式の譲渡所得と比べ不動産などの譲渡所得が意外と低い実態も浮かび上がる。ただ、昨年は億ションが飛ぶように売れており、相当の額が不動産投資に向けられたようだ。日経新聞によれば、2015年の銀行による不動産業向けの新規貸し出し額は約10兆6,730億円となり26年ぶりに過去最高となったように、富裕層マネーが「マイナス金利」導入を支援材料に株から不動産へ向かう可能性もありそうだ。
ケタ違いの数値を示している「高所得層」だが、寄付金税額控除額は全体の49.1%を占めてはいるものの、金額的には58億円にとどまっている。米国と比べ比較にならないほど少ない。
この原因として文化、税制の違い(わが国は総所得の40%が控除限度額)などが指摘されている。お金持ちが寄付をしたくなるような税制改革が必要かもしれない。
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もう一つのテーマである、安倍政権誕生前と比べどうなったか。安倍政権が誕生したのは平成24年12月なので、その前年の平成23年度と比較した。
23年度の「高所得層」は82万人(全体に占める割合は1.5%)だから、27年度は9.8%、8万人増加し、比率も0.2ポイント上昇している。
総所得額はどうか。平成23年度は全体で172兆円であるのに対して、27年度は178兆円と6兆円増加。高所得層のそれは18兆471億円(同10.5%)から20兆2,850億円(同11.4%)と、こちらも額、比率とも増加している。
株式の譲渡所得も23年度全体で8,549億円から27年度全体は1兆8,500億円へ増加。高所得層は4,902億円(同58.0%)から27年度は1兆193億円(同55.1%)と額では倍増している。
所得割額は平成23年度全体の6.4兆円から27年度は6.9兆円へと増加しているが、高所得層のそれは9,904億円(同11.8%)から27年度は1兆1,263億円(同16.3%)へと増加している。
寄付金の税額控除額も全体では23年度の18億円から118億円へと6.5倍も増加。高所得層も11億円から58億円へと増やした。
この数値だけでは単純比較できないが、アッパーミドル・富裕層は3年間で10%近く増加しており、アベノミクス効果が表れているといえるかもしれない。
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それでは、課税標準額が10万円未満の層はどうなったか。ここでは「低所得層」と呼ぶことにする。
この層は、23年度が236万人(全体に占める割合は4.4%)で、27年度は235万人(同4.2%)だ。わずかだが人数、比率とも減少していることが分かる。
「低所得層」の総所得金額は23年度の1兆6,375億円(同1.0%)から27年度は1兆4,939億円(同0.8%)へ、所得割額は23年の316億円(同0.5%)から27年度は459億円(同0.7%)へとそれぞれなっている。
面白いのは株式の譲渡所得だ。23年度の譲渡所得は905億円(同10.6%)もあり、27年度は1,472億円(同8%)へ金額は実に63.4%増加している。この額は、課税標準額が400万~550万人の層(約304万人)の譲渡所得1,178億円より多く、「高所得層」を除く他のどの層も上回っている。つまり所得が低い〝不労所得者〟もたくさんいることをテータは裏付けている。
一方で、厚労省の統計調査を見ると、直近の賃金データは低い数値で推移している。
なので、アベノミクスは確実に「高所得層」を増やしており、所得格差は広がったといえるが、「低所得層」までまんべんなく潤しているかどうかは「市町村税課税状況の調」でははっきりしないということになりそうだ。見方によってはいかようにもとれる。