スムストック住宅の一層の普及を 和田会長/「既存」の発音はなぜ「きそん」
優良ストック住宅推進協議会(会長:和田勇積水ハウス会長兼CEO)は8月29日、記者会見を開き、活動状況を報告した。
冒頭、和田会長は「会が発足して9年目を迎えるが、最近ようやく活動が浸透してきた。しかし、まだまだ啓蒙が不足していると考え、この1年間はスムストック販売士を増やそうと試験を年2回から3回に増やし、年間で約1,200人、今年6月末で4,230人に増やした。スムストックをより有効に活用していただくよう専用のローンも三井住友信託銀行さんに作ってもらった。2~3年後には何とか成約件数を1万戸に引き上げたい。現在の既存住宅は20年で資産価値がゼロになり、投資累計では約500兆円が消滅している。一方で、スムストックはきちんと定期点検しており、50年後でも約500万円の建物価値がある。きちんと再生して若者に買ってもらえる環境を整えたい」などと語った。
また、「中古住宅」の呼称変更については、「横文字でなく何とか日本語で適切な表現がないか国土交通省にも働きかけ、『既存住宅』にしてもらった」と話した。
◇ ◆ ◇
和田会長が力説されるのはよくわかる。値段が高くても将来にわたって安心して住める住宅が評価されるようになってほしい。
しかし、悪貨は良貨を駆逐するとはよく言ったものだ。現実はどんどん逆方向に進んでいる。
これは建売住宅市場のことだが、世間を席巻しているのは圧倒的な価格の安さを売りにしているメーカーだ。どこのエリアでも出隅入隅はない積み木のような外観で、間取りはほとんど同じ、外構もなし。価格は3,000万円くらいだから大手などより1,000万円も安い。こうした住宅の市場占有率は30%を超える-これが現実だ。
〝売れるものがいい商品だ〟-これに反論できる人はどれだけいるだろうか。
◇ ◆ ◇
「中古住宅」「既存住宅」「既築住宅」…呼称は様々でどれがいいのか記者もよくわからない。昔から使われてきた、今も主流になっている「中古住宅」を変更するのはかなり難しいような気がする。
「既存住宅」についてだが、記者は「きぞん」と発音してきたが、世間的にはそうなっていないようで「きそん」と発音するようだ。NHKでも昭和16年に定めてから「きそん」となっている。NHK「放送研究と調査MARCH 2014」では「『既存』については,これまで『〜ゾン』を認めたことがない。国語辞典では『キゾン』の読みを参考として入れる場合もあるようだが,今回は調査も実施しておらず,現行どおり(『キソン』)とする」となっている。和田会長も「きそん」と発音されたように聞こえた。
「きそん」か「きぞん」かは、国立国語研究所などにも問い合わせたが、結局はよくわからなかった。用例として「既存」は明治時代にも使われていたようだが、「きそん」なのか「きぞん」なのかはわからない。「名誉毀損」の「毀損」は「きそん」とふり仮名がつけられていたようだ。「既存」は「きそん」と読んでも「きぞん」と読んでもコンフリクト(衝突)が起こらないのでどちらでもいいと解釈できそうだ。「存」は「そん」も「ぞん」も読み方がある。
しかし、「きそん」は「毀損」を連想させる。ここは「きぞん」と発音しようではないか。国土交通省でも「きぞん」だし、「既存不適格」も「きぞん…」と読んでいる。
「既築」は経産省の「既築住宅・ 建築物における高性能建材導入促進事業」などの制度があるが、記者などはすぐ「鬼畜米英」を連想する。これも改めてほしいが、国の機関でもそれぞれ異なるのだから難しい問題だ。
いっそ、一般に公募して決めたらどうか。いい呼び名が浮かぶかもしれない。
キッズデザイン賞 「東京ゆりかご幼稚園+里山教育」など優秀作品34点発表
「キッズデザイン賞」表彰式(アカデミーヒルズ49で)
キッズデザイン協議会(会長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は8月29日、「第10回キッズデザイン賞」全受賞作品297点の中から34点の優秀作品を選び発表した。
内閣総理大臣賞を受賞したのは東京内野学園 東京ゆりかご幼稚園・渡辺治建築都市設計事務所・リズムデザイン=モヴ・三高設計による「東京ゆりかご幼稚園+里山教育」。東京・八王子市のJR八王子みなみ野駅からバス10分の敷地面積約2.5haの高台に約100mの長さの2階建て木造教育棟と子育て支援施設、延長保育室などがある棟がハの字に配置され、背後の森約40haを里山教育につなげていく活動が評価された。
新設の東京都知事賞はアボードの硬質フェルトのキッズチェア「RK-Chair」が受賞した。
住宅・不動産業界からは、積水ハウスの「安全配慮引手」が審査委員長特別賞を、富士住建の「たかが洗濯・されど洗濯~新家事空間『スマートランドリー』~」がキッズデザイン協議会会長賞奨励賞をそれぞれ受賞した。
冒頭、挨拶した和田会長は、「発表させていただく作品は、キッズデザインの理念、考え方をあらわす指標ともいえるすばらしい作品であります。これらの受賞作品を広く社会に浸透させてゆくことで協議会の目指す『子どもたちの安全・安心の向上と、健やかな成長発達に役立つ、ものづくり・ことづくり』、即ち『キッズデザイン』に満ち溢れた社会の実現に少しでもつながることを期待しております」と語った。
また、審査委員長のインダストリアルデザイナー・益田文和氏(オープンハウス代表取締役)は、「10年目を迎え、やっと賞の意義が伝わるようになってきた。この国は子どもを地域、社会、国が責任をもって育てるようにできているはずだが、子どもを大切にしていると思えないこともある。もっと世間に発信していきたい」と述べた。
安倍晋三内閣総理大臣も「安倍政権は、未来を担う子どもたちへの投資を拡大し、すべての子どもが夢に向かって頑張ることができる社会を目指します」とのメッセージを寄せた。
◇ ◆ ◇
「東京ゆりかご幼稚園」はすごい施設だ。敷地約2.5haに子どもの定員は約160人。長さ約100mの2階建て教育棟は木造だが、庇の跳ねだしが3.6mもある。
設計を担当した渡辺治氏は設計事務所の紹介冊子で次のように指摘しているので紹介する。
「(待機児は)社会の犠牲になるこどもを生じさせるシステムが変わらない限り歯止めがない」
「待機児がいるから増設するというのは根本的な解決にならない」「時として、国や自治体は『公共の福祉』を『経済の活性化』に置き換えて政策をつくる。
私たちの事務所の地元で、廃校になったら福祉施設にするはずだった学校跡地に学校や病院、福祉施設などのあらゆる公共施設と、住宅も禁止するという都市計画が市によって描かれた。建てられるのは、商業・業務と一部の風俗だけだった。
こんなことをしていたら、日本は本当にだめになってしまうと思い、私たちは地元の商店会、自治会とともに…解体しようとする行政に対して、校門前にまる2年間座り込んで抗議を行うしかなかった。事務所の所員一同、早朝から夕方まで、休日も、雪の日も雨の日も、台風の日も…」
積水ハウスが受賞した「安全配慮引手」
三井不動産 ホテル事業 4年後に倍増の1万室へ/「京橋」は9/1開業
「三井ガーデンホテル京橋」
三井不動産グループが4年後の2020年度までに現在の19ホテル約5,000室を倍増の10,000室に拡大する。8月25日行われた「三井ガーデンホテル京橋」の記者発表会で明らかにした。同ホテルは2016年9月1日(木)に開業する。
同ホテルは、JR東京駅から徒歩5分、中央区京橋1丁目に位置する敷地面積733.35㎡、15階建て233室。客室面積は18.0~58.8㎡(最多客室は18.0㎡コンフォートで103室)、全て2人以上の宿泊が可能で、ルームチャージは32,000円~100,000円。敷地・建物所有者は柏原ビルで、三井不動産が一括賃借し、三井不動産ホテルマネジメントに転貸、三井不動産ホテルマネジメントが運営する。
2階にロビーとレストランが一体となったラウンジを設置。ビジネスユースから観光、レジャー需要にも対応する。デザインコンセプトは、“江戸の粋”を現代に昇華させる「京橋モダン」。“判じ絵”など、遊び心を効かせた江戸庶民の文化を取り入れているのが特徴。ホテルの外観・エントランスのアートウォールなどを歌川広重の浮世絵「京橋竹がし」からイメージし、現代的に表現している。
記者発表会で三井不動産ホテル・リゾート本部ホテル事業部長・鴉田隆司氏は、「現在のホテルマーケットは大変好調。稼働率、客室単価も上昇しており、当社はホテル事業を重要な成長分野として、大手町の再開発『OH-1計画』ではフォーシーズンズの誘致を決定するなど新ブランド、ラグジュアリーブランドを立ち上げ、一気に事業拡大を図る。現在の約5,000室を2020年度までに約10,000室に増やす」と話した。
三井不動産ホテルマネジメントによると、東京エリアの拠点ホテルの観光・レジャー目的客は2010年度が14.2%だったのが2015年度は48.2%に、外国人宿泊客は2010年度が13.8%だったのが2015年度には48.8%に増加しており、稼働率は90%を超えている。
ラウンジ
◇ ◆ ◇
ホテル業界のことはよくわからないが、最近の外国人観光客増と2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、需要を満たすにはまだ10,000室くらい不足しているという。同社はその需要を吸収すべく一挙に倍増計画を打ち出した。
素人ながら、そんなに増やして大丈夫か、反動はないのか心配になってくるが、鴉田氏は「過去のオリンピック開催地のデータを見る限り、稼働率は落ちていない。需給バランスは崩れないのではないか」と語った。
18㎡で32,000円のルームチャージは〝高い〟という印象を受けたが、関係者によると18,000円くらいになるそうだ。一人当たりだと9,000円だから、東京のど真ん中という立地を考えればこんなものかと思う。
コンフォート客室
“判じ絵”デザイン 左から「四亀(良き)」⇒「足袋(旅)」⇒「尾(を)」と読ませる
旭化成ホームズ 「共働き夫婦二人」向け賃貸「ヘーベルメゾンfufu(フフ)」発売
旭化成ホームズは8月6日、同社の賃貸住宅「ヘーベルメゾン」の入居者に多い「共働き夫婦二人」の賃貸ニーズを反映した新商品「ヘーベルメゾンfufu(フフ)」を全国で発売する。
今回強化するのは、「ヘーベルメゾン」の約7割を占める1LDK・2LDKの住空間。同社の「共働き家族研究所」による調査結果を踏まえ、「同じ空間にいながらも夫婦それぞれの居場所をつくるデスクとソファの位置関係」や、妻だけではなくそれぞれが衣類を個別管理できる「夫婦別々のクローゼット」などを提案している。
同社の「へーベルメゾン」は6年連続して10%超の伸びを見せており、2015年度は売上高1,024億円で、竣工戸数は9,000戸を突破した。2005年は1R~1DKの比率が80%を占めていたのが、2016年は30%を割り込み、その逆に10%強だった1LDK~2DKは50%近くに伸びている。
「fufu」の投入により、賃貸市場での差別化を図る。年間販売目標は100棟。
◇ ◆ ◇
同社が示したプロトタイプは約46㎡(14.1坪)。大きなソファが置けるリビングにし、デスクコーナー、夫婦それぞれのウォークインクローゼットの設置、キッチンファニチャー、室内物干し、シューズクロークなどを提案しており、限られたスペースを有効に使えるようにしているのがいい。
納得はしたのだが、記者は関係者の説明を聞きながらまったく別のことも考えていた。貧しい賃貸マーケットに暗澹たる気持ちになると同時に、健気に生きる賃貸居住者に声援を送りたくなったのだ。
夫婦二人が居住する面積として46㎡が適当かどうかの判断基準は持ち合わせていないが、決して十分でないはずだ。
それというのも、同社が2日前に行った別の記者発表会で示された「二世帯」タイプは181.39㎡(54.8坪)、「近居」タイプは119.99㎡(36.2坪)、「遠居」タイプは121.24㎡(36.6坪)だった。
戸建てと賃貸住宅、子どもがいるかいないか、コンセプトもターゲットも違いがあるとはいえ、「共働き夫婦」というのは同じだ。なのにどうしてこんなにも居住面積に差があるのか。「賃貸」は仮の住まいで、いずれは分譲マンションや一戸建ての取得が可能になるのならそれはそれでいい。
しかし、このところの地価やマンションの価格上昇で、一般的な第一次取得層の取得環境は極めて厳しい。都心部や準都心部では絶望的になっている。
同社が発表会で例示した「fufu」第一弾の賃貸マンションと、最近同駅圏で分譲されたマンションを比較してみよう。
「fufu」第一弾は、根岸線石川町駅から徒歩12分家賃は10.7万円だ。一方、あるデベロッパーが同駅から徒歩7分の元町の一等地で分譲し、ほぼ即日完売したマンションの坪単価は330万円だ。46㎡だと価格は4,600万円だ。
同じように都内23区などでは軒並み分譲マンションの坪単価は300万円を超えてきており、これを利回り5%で賃料設定すれば46㎡で家賃は約17万円にもなる。世帯年収が500万円くらいではとても住めない。
例えは適当でないかもしれないが、仮設住宅並みの30㎡でも家賃は10万円になる。暗澹たる気持ちになったのはこのためだ。
少子化が加速化するいま、そろそろ利回り最優先の賃貸経営の考えを改めるべきだろうし、〝持ち家偏重政策〟も根本的に問い直す時期に来ているように思う。
このように賃貸マーケットは極めて貧しいが、同社が行った調査結果は、実に健気な夫婦像を浮き彫りにした。
同社が1都3県、大阪市、名古屋市の賃貸住宅に暮らす20~49歳の男女1,293名を対象にインターネット調査したところ、二人の休日が合わないのは、実に54%に上った。二人の平日の朝食時間が別々であるのは52%にも達している。就寝時間は「同じくらい」が52%だ(専業主婦は32%だが、これは惰眠をむさぼるのではなく子どもと一緒に寝るということだと理解したい)。
しかし、それでも夫の帰りを待って一緒に食事をする妻は64%(専業主婦は37%)もあり、二人の意識は「夫婦だけで過ごす時間を大切にしている」のは91%、「配偶者は自分にとって心の支えと思っている」のは91%、「友達のような対等な夫婦がいいと思っている」のは87%に達している。実に健気な夫婦像が浮かび上がってくる(とはいえ、「お互い収入(財布)は各自で管理している」というのが54%もあるのは全く解せない。普通の家庭は妻が財布を握っているのではないか)。
ともあれ、前回と今回の発表会は、ワークライフバランスや親子、夫婦関係を考える機会を与えてくれた。「共働き家族研究所」と「二世帯住宅研究所」にはこれからも居住者、生活者の視点で情報を発信することを期待したい。
旭化成ホームズ 二世帯ノウハウ生かし新たな「近居」「遠居」プラン提案(2016/8/2)
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟
特定建築予定者が提示したイメージ図
当欄でも紹介したように、東京都は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の選手村の整備と大会後のレガシーとなるまちづくり「晴海五丁目西地区第一種市街 地再開発事業」の特定建築予定者に三井不動産レジデンシャルを代表とする11社を選定したと発表した。総敷地面積は約13.4ヘクタールで、敷地処分価格は12,960百万円だ。
発表まで気が付かなかったのだが、いつもの癖でこの処分価格約130億円を総敷地面積約13.4haで割って坪単価を算出した。約32万円となった。あまりにもの安さにあ然とした。
何かの間違いだと思った。それほど立地条件がいいとは言えないが、中央区晴海5丁目の土地が坪32万円などあり得ない。晴海3丁目(商業地)の今年の地価公示は約436万円だ。当該エリアはこの地価公示の10分の1以下だ。坪32万円の土地はもちろん23区にはあるはずもなく、八王子当たりの都下までいかないとない。
しかも、ここのエリアの容積率は300%、400%、500%に分かれており、平均を400%とすると、容積率100%当たりの1種の坪単価は32万円÷4=8万円だ。マンションの坪単価にすると、20坪で土地代はわずか160万円にしかならない。
何かの間違いではないかと思い、都の都市整備局に聞いたが「不動産鑑定法に基づき適正に鑑定評価した額」ということだった。
こうなるともう一歩も先に進めない。自分で調べるしかない。なので、以下は記者が不動産鑑定に関する国土交通省の「不動産鑑定評価基準」や実務書を四苦八苦して読んで導き出した解だ。当否は自分でもわからないことを断っておく。
国交省「不動産鑑定評価基準」には次のような原則が示されている。
「不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
なお、ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意すべきである」とある。
つまり、投機、売り急ぎ、買い進みなど特殊な動機によらない「正常価格」をはじき出すことに心がけた。そして、価格形成に影響を及ぼす自然・社会・経済的な一般要因、地域要因、個別要因などを考えた。
もっとも重視したのは、地価公示の10分の1しか評価されないのだから、とにかく減価要因を徹底して洗い出すことだった。
真っ先に考えたのは有効宅地率だ。売却する土地は13haもあるが、道路・公園、その他の公共・公益施設用地の比率は面積が大きくなればなるほど高くなる。当該地は最低でも30%はあると見た。これは明らかに大きな減価要因だ。
次は市場性と様々な制約、投下資本に対する収益リスクなどだ。分譲、賃借されるのはオリンピックが終了してからだから、今から5年も先だ。5年先の需要と供給の市場性はまったくわからない。不動産鑑定士にもわからないはずだ。このリスクは明らかに減価要因になる。
立地やオリンピック選手村に利用されることもマイナス要因だ。アクセシリビティについてはいろいろ考えられているが、現況は勝どき駅から徒歩で15分から20分もある。陸の孤島だ。そんな土地に賃貸を合わせ5,650戸の住宅を建設することなど普通のデベロッパーはまず考えない。年間1,000戸を売るとしても6年近くかかる。
このところの用地・建築費高で晴海エリアのマンションの分譲坪単価は300万円を超えてきている。20坪でも6,000万円だ。完全に第一次取得層の取得限界を超えている。これも大きな減価要因になる。需要と供給の市場原理を考えれば、競争入札になったら手を挙げるデベロッパーは相当の安値でしか入札しない。
しかも、選手村として機能するように造らなければならない制約も多い。ワンルームなどコンパクトも設けなければならないし、アスリートが利用するのだから天井高は高くしなければならないし、1.8mのサッシ高はまず不可だ。土足で入ることも想定しなければならない。日本人向けに分譲するなら和室の提案が考えられるが、選手村でははたしてどうか。キッチンも選手村なら最低限でいいはずだが、分譲を考慮したらそれなりのスペースは確保しなければならないし、1418の浴室は大きな選手には不評を買うかもしれない…などを考えると、改修費用は相当額にのぼるはずで、これも減価要因になる。
嫌悪施設も近接している。ばい煙を垂れ流してはいないが、清掃工場がある。津波・液状化の懸念もある。これは防岸工事・液状化対策などで防げるかもしれないが、そのコストは減価要因になる。
そんなこんなの減価要因は10以上ある。それぞれをマイナス5ポイントとして足し算すると鑑定価格は「正常価格」の半値以下になるし、それぞれマイナスポイントを大きくし掛け算で減点していくと、バブル後の株価のよう「半値8掛け2割引き」のように10分の1以下も妥当な価格に思えてくる。
とここまで書いてきたのだが、不動産鑑定では価値増分も盛り込むことになっている。これもまた書き出したらきりがない。
何しろオリンピック・パラリンピックのレガシーにすると謳っているのだから、デベロッパーもゼネコンも威信をかけて最高のものを造るはずだ。土地代がただ同然となればなおさらだ。世界の模範となるような人と環境にやさしいワールドワイドなユニバーサルデザインの街ができるのは間違いない。デベロッパーが提示した完成予想図には翼を広げたようなトライスター型の超高層があるが、これを施工するゼネコンも見えてくる。
これは記者の提案だが、オリンピック・パラリンピックに出場する選手の手形、足形、サインなどを「〇〇選手が利用した住戸」などと銘板にして玄関に貼れば、爆発的な申し込みが期待できる。世界的な著名な金メダリストのものならオークションにかければ、世界から購入申し込みが殺到する。
このあたりでよすが、都の売却額がこれほど安くなれば、分譲価格は間違いなく〝格安〟になる。5年後の市場価格は分からないが、この「東京2020オリンピック・パラリンピック レガシー」マンションは坪300万円を超えることはないと読んだ。アッパーで坪250万円くらいではないか。あの最高378倍、平均17.65倍で即日完売した都の定期借地権付きマンション住友不動産「シティタワー品川」の再現もありそうだ。「5年転売禁止」の特約もつきそうだ。
2020東京オリンピック・パラリンピックの特定建築予定者に三井不レジなど11社(2016/7/30)
住友不動産「シティタワー品川」最高378倍、平均17.65倍で即日完売(2008/9/8)
「不動産は買い時」6.8ポイント上昇の48.1% 野村アーバン調査
野村不動産アーバンネットは8月3日、「住宅購入に関する意識調査(第11回)」の結果をまとめ発表。マイナス金利導入に伴う住宅ローン金利の低下が購入検討者のマインドに影響したため、「不動産は買い時」との回答は48.1%となり、前回比6.8ポイント上昇した。調査は同社の不動産情報サイト「ノムコム」(http://www.nomu.com/)の会員を対象としたもの。
不動産については、「買い時だと思う」「どちらかと言えば買い時だと思う」を合わせ48.1%(前回比6.8ポイント増)にのぼった。その理由については「住宅ローンの金利が低水準」の回答が84.3%(前回比15.2ポイント増)となった。
不動産価格については、「下がると思う」との回答が30.7%(前回比6.4ポイント増)で、「上がると思う」の回答24.6%を4年ぶりに上回った。
山手線に「リオ2016オリンピック・パラリンピック がんばれ!ニッポン!®号」
「リオ2016オリンピック・パラリンピック がんばれ!ニッポン!®号」
JOC・JPCゴールドパートナー全15社は8月1日から9月15日、日本オリンピック委員会(JOC)、日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPC)とともにJR山手線で「リオ2016オリンピック・パラリンピック がんばれ!ニッポン!®号」を運行し、リオデジャネイロ2016 オリンピック・パラリンピック日本代表選手団を応援する。
電車内のフロア(床)には競技フィールドのイメージが施され、中づり・まど上にはJOC・JPCの協力により選手の写真などを掲出し、オリンピック・パラリンピックの臨場感を提供する。
車両は8 月1 日(月)~8月25日(木)はオリンピック仕様、8月26日(金)~9月15日(木)はパラリンピック仕様となる。
運行されるのは山手線51編成のうち1編成全11車両。整備のため運行しない日もあり、運行時間帯も決まっていない。
◇ ◆ ◇
運行に先立って1日午前中、メディア向けに車両が公開された。
車両の外も内もオリンピック・パラリンピック一色に染められており、印象的な競技場面や選手の表情が生き生きと表現されており、コピーが簡単明瞭でなかなかいい。
一部を紹介する。「地球の裏まで想いは届くと信じたい。非科学的でも。」「応援してるほうが、もらってる気がする。」「勝ち負けだけじゃない。人生とたぶん同じだ。」「勇気をもらった。ぼくらにはなにを返せるだろう。」
ゴールドパートナー15社のそれぞれの広告も、オリンピック・パラリンピックを機会に一儲けしようなどといった露骨な広告は皆無とはいいがたいが、ほとんどは控えめな公共的な広告ばかりで好感が持てる。
わが住宅・不動産業界からは三井不動産(LIXILもそうかもしれないが)が15社に名を連ねており、広告も近づいてみないと「三井不動産」の広告かどうかわからないはずだ。
運行されるのは51編成のうち1編成だから、確率的には2%くらいの割合でこの車両に乗れるかもしれない。宣伝費にいくらかかるのかはもちろん非公開。
◇ ◆ ◇
一つだけ腑に落ちないものがある。日本が出場する競技はオリンピックが全28競技のうちハンドボールを除く27競技。パラリンピックは全22競技のうち17競技。
このうち車内で紹介されているのは、1両目が体操で、2両目がレスリング・ウェイトリフティング、3両目がバレーボール、4両目がラグビー、5両目がバスケットボール、6両目がバトミントン・フェンシング、カヌー・射撃、7両目が卓球・アーチェリー・馬術、8両目がトライアスロン・ボート・セーリング、9両目が柔道、10両目が水泳、11両目が陸上の19競技。
サッカー、シンクロナイズドスイミング、ホッケー、水球、重量挙げ、自転車、ボクシング、ゴルフ、テコンドーなどが入っていない。ひょっとすると格闘技のようなタトゥーを礼賛するような、あるいはまた全身が広告塔のような競技が除外されたのかもしれない。
三井不動産の壁面広告
LIXILの壁面広告
東京藝大×スウェーデンハウス 「第3回 東京藝大染織専攻-夏のしつらえ-」展
菅野健一「O-JIZOH=SAN」(絞り、タペストリー)※写真はうまく映っていないが最高の芸術作品
東京藝術大学 美術学部工芸科染織研究室は7月29日(金)~8月30日(火)、スウェーデンハウス市川モデルハウスで「第3回 東京藝術大学染織専攻 -夏のしつらえ-」展を開催する。
第3回目となる今回の展覧会は、カリキュラムの一環として取り組むもので、芸術作品はギャラリー空間だけでなく暮らしの中にあるべきという考えのもと、季節によって空間をしつらえることをテーマに展示するもの。
織り機はスウェーデン・グリモクラ社を使用、展覧会はスウェーデン大使館の後援と、スウェーデンハウスの協力を得ている。
29日に行われたアーティストトークで同研究室・菅野健一教授は「3年生にとって初めての展示で、知恵を絞りだした作品ばかり。実際の住空間で展示することは社会に出て役立つはずで、大きな勉強になる」と語った。
また、スウェーデンハウス取締役千葉支店長・鈴木雅徳氏は「梅雨が明けたばかりこの時期に、当社の高気密・高断熱の住空間に清々しい皆さんの作品を展示できることはいいマッチング」と挨拶した。
菅野氏(左)と鈴木氏
以下に主な作品を紹介します。そもそも繊細な布に染料で染めた造形美を素人の記者がカメラに収めて紹介するのは無理があることをご了承ください。※は記者の感想
木下はるか「jeiiy fish parade」(スクリーン捺染、カーテン)※このまま商品にしたい
松尾萌「shuwashuwa」(スクリーン捺染」(クッション、ベッドライナー)※記者は理解できないが、寝室に強烈な赤をちりばめる感性はすごい。青はラムネだそうだ
金田真咲「初夏の漂い 夏の昼寝」(スクリーン捺染、パネル)※記者のいち押し作品
Alexina Thielemans「don’t be inconspicuous」(スクリーン捺染、カーテン)※ベルギーの留学生で、ステンドグラスをイメージしたそうだ。日本人の感性にはない作品
桂川美帆「in the grove in the rain いつもの-夜-」(ろうけつ染、パネル)※3つのパネル作品の一つ。伝統技法を継承してほしい
鈴木理沙「夏の光」(スクリーン捺染、フロアランプ)※他の灯りを消したらどのような光を発するのか興味深い
長谷川博子「エブリシングイズオーライ キラキラハッピーオーラ」(スクリーン捺染、タペストリー)※出身の三重の夫婦岩と江國香織の小説の一節を取り込んでいる
出居麻美「色とりどり、色とりどりⅠ、色とりどりⅡ」(平織り、型染め、ミシンワーク)※様々な素材を縦と横に織り込んだ美しい作品。出居氏は同研究室講師
島方皓平「なつがくればおもひだす」(スクリーン捺染、カーテン)※同研究室には男性は少ないそうだ。欲を言えば男らしい作品で他を圧倒してほしかった
藝大×スウェーデンハウス クリスマス(ユール)染織専攻作品展12/25まで(2015/12/15)
インテリックス 「第1回ROOM PHOTOコンテスト」入賞作品発表
山田秀和さんの「ナチュラルな生活」
中古マンション再生流通事業を手掛けるインテリックスは7月29日、同社のリノベーションマンション購入者を対象に行った「第1回ROOM PHOTOコンテスト」の入選作品を発表した。
テーマは「我が家のリビング・こだわりインテリア」で、同社は「それぞれの作品には、素敵なセンスのディスプレイや心地よい空間づくりなど、暮らしを楽しんでいる様子が浮かびあがっています。リノベーションマンションが購入者の方々の趣味や個性を彩るキャンバスとなっている」と評している。
最優秀賞に府中市の山田秀和さんの「ナチュラルな生活」が、3作品が優秀作にそれぞれ選ばれた。
2020東京オリンピック・パラリンピックの特定建築予定者に三井不レジなど11社
特定建築予定者から提示されたイメージ
東京都は7月28日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村の整備と大会後のレガシーとなるまちづくり「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業」の特定建築予定者に三井不動産レジデンシャルを代表とする11社を選定したと発表した。9月に正式決定される。
11社は三井不動産レジデンシャル、エヌ・ティ・ティ都市開発、新日鉄興和不動産、住友商事、住友不動産、大和ハウス工業、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産、三菱地所レジデンス。
選考委員会の総合評価は100点満点のうち83.20点。主な評価ポイントは、建築計画では①多世代居住が実現する持続可能なまちづくりを目指し、幅広い住戸バリエーションを設けるとともに、高齢者住宅やシェアハウスの具体的な運営計画が提案されている②水辺や緑地空間の魅力を最大限に生かして、水辺空間への視線の抜けや動線を意識した計画が提案されている③アクセシビリティに配慮した建築計画とするとともに、住戸内の通路幅についても十分な幅員を確保するなど、東京2020大会後のレガシーとなるユニバーサルな住空間が提案されている④エリアマネジメントの運営方法については、より実行性のある取組とすることが望まれる-など。
総敷地面積は約13.4ヘクタール、棟数は50階建てタワー棟2棟を含む24棟で、戸数は約5,650戸の計画(うち賃貸は約1,490戸)。敷地処分価格は12,960百万円。容積率は300~500%。
平成29年1月に着工し、平成32年7月からの大会終了後に改修工事を行い、平成36年度に事業完了を目指す。
◇ ◆ ◇
昨年3月に選定された「事業協力者」には今回の11社のほか三井物産と三菱地所も加わっていたが、両社が降りたようだ。
2020東京オリンピック選手村 24棟5,650戸の民間事業者募集(2016/5/18)