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 東京株式市場の日経平均株価が2月22日、3万9,098円の終値を付け、1989年12月29日の史上最高値3万8,915円を34年2か月ぶりに更新した。その後も4万円台をマークするなど上昇基調にある。一方、令和6年の地価公示は全用途で前年比2.3%上昇し、圏域別・用途別でも変動率はいずれも前年度を上回り、上昇率は拡大傾向にある。

 ただ、バブル期の平成元年と比較すると、住宅地は札幌・仙台・広島・福岡の地方四市が25.6%上昇しているのみで、全国平均では48.2%マイナス、大阪圏は51.4%と半値以下となっている。地価公示は〝半値戻し〟と言えなくもないのが現状だ。

 別表1は、バブルの絶頂期にあった平成元年と令和6年の全国住宅地の圏域別平均価格を比較したものだ。これによると、平成元年は250,800円/㎡、令和6年は130,000円/㎡となっており、48.2%マイナスとなっている。東京圏は47.3%下落している。

 唯一上昇しているのは札幌・仙台・広島・福岡の地方四市のみで、平均25.6%の上昇。札幌は34.5%、仙台は41.0%、福岡は58.7%それぞれ上昇し、広島市は17.5%下落している。

 人口10万人以上の244市のうち、平成元年比で住宅地価格が上昇しているのは別表2に示した20市のみ。上昇率トップは福岡県春日市の87.9%、2位は同県大野城市の72.0%、3位は同県福岡市の58.7%で、ベスト3を福岡県が独占。同県筑紫野市も41.1%上昇し6番目に入るなど福岡県の4市が上昇率上位10市に入っている。

 このほか、愛知県、沖縄県の上昇が目立つ。愛知県は刈谷市、安城市、豊田市、岡崎市、春日井市、東海市の6市が、沖縄県は宜野湾市、沖縄市、那覇市、浦添市の4市がそれぞれ上昇20市に入っている。

 一方、平成元年比で下落しているのは224市で、75市が下落率50%以上となっている。下落幅がもっとも大きいのは鹿児島県鹿屋市の73.2%で、2番目は千葉県木更津市の68.5%、3番目は栃木市の68.4%。

 県庁所在地では、58.4%下落の千葉市をはじめ下落幅が大きい順に甲府市、鳥取市、奈良市、福井市、和歌山市、大阪市、高松市、水戸市、岐阜市、青森市、神戸市、前橋市、京都市、富山市、秋田市が40%以上の下落となっている。横浜市は39.7%、名古屋市は6.8%の下落。(別表3

 別表4には過去10年比で上昇率が大きい50市、別表5には過去10年間で下落幅が大きい50市をそれぞれ紹介した。

 10年比で上昇しているのは168市で、上昇率が大きいベスト3は福岡市、大野城市、札幌市の順。いずれも上昇率は80%を超えている。沖縄県の3市がベスト10入り。

 10年比で下落しているのは90市で、下落幅ワースト3は群馬県桐生市、三重県伊勢市、同県松阪市の順。

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※表は国交省のデータをもとにRBAタイムズが作成したもの

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 地価公示は遅行指標で、実勢地価と大きく乖離することもあるので廃止すべきというのが記者の持論だが、それなりに参考にもなる。地方四市がバブル期と比較して上昇しているのは、バブルの〝恩恵〟を受けていなかったからで、現在のマンション価格は札幌、仙台、福岡は坪400万円を突破し、福岡市の一等地は500万円以上となっている(広島市は不明)。沖縄県も首都圏富裕層に人気で、坪400万円を超えてきている。 県庁所在地で最大の下落率となっている千葉市は坪400万円に届くがどうかが現状だ。

 情けないのは、わが多摩市と故郷の伊勢市と隣接の松阪市。多摩市が平成元年比下落率でワースト6番目に入っているのには驚いた。多摩そごう⇒三越が撤退し、京王プラザホテル多摩が閉店、恵泉女学園大学も閉校が決まった。ニュータウン再生の取り組みの遅れが致命傷だと思う。マンション坪単価は東武野田線と同じ250万円とはどういうことだ。

 伊勢市については昨年も書いた。ワーストワンから脱出したのはうれしいが、1つランクを上げたに過ぎない。三重県最大の売り場面積を誇っていた「ジャスコ伊勢店」が入居していた駅前ビルは平成8年に閉館。平成13年には三交百貨店も閉店。隣接地では現在、長谷工コーポレーションが再開発マンションを建設中だが、記者は売れる値段として坪150万円とみているのだが…。全国区の伊勢神宮、赤福、伊勢うどんがあるのに、観光客は〝素通り〟。みんな鳥羽・志摩に向かう。先日、帰省しようとホテルを探したら禁煙でシングルの〝素泊まり〟でも2万円だ。帰るのを断念した。宿泊料金だけは2倍、3倍に上昇している。

 松阪市も同様。やはり三交百貨店が平成14年に閉店になってからは下り坂の一途のようだ。わが国を代表する国学者・本居宣長、三井グループの家祖・三井高利の生誕地として知られるが、今は昔。駅前には松阪牛の元祖「和田金」があるが、記者も含めて地元の人はほとんど利用しないはずだ。

 起死回生の打開策は見いだせないのか。

またショック全国10万人以上259市の地価公示下落率最大はわが故郷・伊勢市(2023/3/25)

 

カテゴリ: 2024年度

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KABUTO ONE(カブトワン)での2次審査会および表彰式

大東建託は41日、「震災復興のラストランナー 福島県双葉町」をテーマとする第11回「大東建託 賃貸住宅コンペ」の「アイデア提案部門」で最優秀賞(1作品)、優秀賞(1作品)、入選(3作品)の計5作品、「新たな賃貸スタイル部門」で審査委員特別賞(2作品)を決定したと発表した。

「アイデア提案部門」では、応募総数101作品の中から5作品が1次審査を通過し、メンター建築家によるアドバイスを受けることでブラッシュアップされ、2次審査でのプレゼンテーション、質疑応答を経て、各賞が決定された。

最優秀賞(賞金200万円)は、横浜国立大学大学院の葛谷寧鵬、姶良壮志、朝妻貴徳3氏による「マチはカワに自生する」が選ばれた。

受賞作品の模型やパネルは、4月15日から5月13日の期間、「東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)」に展示され、予約不要で誰でも見学できる。

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最優秀賞

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 同社のリリースを読んで驚愕した。同社が12年前から「大東建託 賃貸住宅コンペ」を行っていることなど知らなかったことはともかく、11回目以降の5年間は、さらなるリアルを追求するため、テーマを「賃貸住宅コンペ まちへ出る」へリニューアルし、日本各地の街へ赴き開催していくとのことで、その初弾に東日本大震災によって甚大な被害を受けた福島県双葉町を選んだとあるではないか。

双葉町は昨年1011月、世帯の代表者(3,244世帯)を対象に住民アンケートを実施している。回答者数は1,244世帯(回収率38.3%)。

これによると、60歳以上の人は69.5%(うち70歳以上が48.0%)、無職は54.0%、居住自治体は町内が1.8%、県外が35.5%、居住形態は持ち家が70.7%、民間賃貸が7.6%、帰還意向は「戻っている」が1.4%、「戻りたいが」が14.9%、「判断がつかないが」24.8%、「戻らないが」が55.2%となっている。

帰還を希望する人の町への希望は「医療・介護福祉施設の再開や新設」「商業施設の再開や新設」「住宅の再建に関する支援」などとなっている。

町民のほとんどが町外に住むことを余儀なくされ、帰還意向者は5割に満たない-〝住みたくても住めない〟〝戻りたくても戻れない-これがリアルだ。

最優秀賞を受賞した3氏は「双葉町の環境に身を置いて『賃貸』を考えた時に思われたのは、都市そのものが自然に対して人間の場所を借り入れた存在ではないかということ。津波を経験して中間貯蔵庫に汚染土がまだ残っている状況で『賃貸』は数百年規模の都市の概念として捉えなければならないと感じた。賃貸住宅とそれらが建っていく環境と状況を設計した。どんなタイプの賃貸住宅が建ってもマチが生態系豊かで関係性が分厚く構築されていく為に、地形に沿って流れるカワからマチは始まる。カワを関係性の軸に据えて重ねられる復興は人と自然の為の都市像を示し、環境に自生する生きられたマチが実現できると信じている。(応募作品原文のママ)」と語っている。

「地形に沿って流れるカワからマチは始まる」-その通りだと思う。古今東西、街・都市は河川上に生まれた。敢えて「カワ」「マチ」とカタカナにしているのは別の概念を盛り込んでいるからだろう。リリースの図表からは字が小さすぎてそれが読み取れないのは残念。

もう、ここまで来たら最優秀賞をそのまま建てるしかない。企業ふるさと納税として町に寄付するか、全国に寄付を求めたらいくつも建設できるはずだ。これが厳しいリアルに対する回答になるのではないか。

この種のコンペ優秀作品をポラスは建売住宅に、三井不動産はマンションにそれぞれ採用して人気を呼んだことがある。

ポラス 学生コンペ 実物件化モデルハウスを公開 ミニ開発の難点を解消(2017/8/12

ポラス中央住宅 「坪庭」と「玄関」を一体化 学生コンペ作品を実物件化(2015/12/3

次代へ道を開くか「広がる通りみち」 第8回 「三井住空間デザイン賞」(2014/10/23

 

 

カテゴリ: 2024年度

 細田工務店は4月1日、本社内(杉並区阿佐谷南3-35-21)に「杉並区空家等利活用相談窓口」を開設したと発表した。「杉並区空家等利活用相談窓口業務公募型プロポーザル」で同社が選定されたもの。協定期間は2024年4月1日から2029年3月31日までの5年間。

 「相談窓口」では、専門家(建築士、弁護士、司法書士、税理士等)と連携・協力して、区内の空き家の相続、賃貸、改修、売却などの相談に対し、ワンストップで利活用に関する助言・提案を行う。

 問合せは下記の通り。

・電話:03-5397-7717

 ▪メール:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

 ▪ WEB:https://www.hosoda.co.jp/contact/vacant-suginami/

・受付時間:午前9時~午後6時(定休日:水・日曜日※夏期休業、年末年始除く)


 

 

カテゴリ: 2024年度

 国土交通省は3月29日、令和6年2月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は59,162戸となり、前年同月比8.2%減、9か月連続の減少となった。内訳は持家16,307戸(前年同月比11.2%減、27か月連続の減少)、貸家24,934戸(同1.0%増、2か月連続の増加)、分譲住宅17,327戸(同17.7%減、2か月連続の減少)となった。分譲の内訳は、マンション7,483戸(同23.3%減、2か月連続の減少)、一戸建住宅9,710戸(同13.3%減、16か月連続の減少)。

 首都圏は貸家(同1.3%増)が増加したものの、持家(同8.5%減)、分譲住宅(同16.7%減)が減少したため総戸数は同8.1%減少した。

 首都圏マンションは4,169戸(前年同月比23.8%減)で、内訳は東京都2,224戸(同21.0%減)、神奈川県885戸(同27.3%減)、埼玉県868戸(同161.4%)、千葉県192戸(同82.6%減)。

 

カテゴリ: 2023年度

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xLINK(クロスリンク)丸の内永楽ビル」共用ラウンジ

三菱地所は327日、「丸の内永楽ビル」に41日に開設するフレキシブルオフィス「xLINK(クロスリンク)丸の内永楽ビル」の報道陣向け内覧・体験会を開催。同社執行役常務・荒木治彦氏は、現在同社が所有・転貸する丸の内エリアのオフィス貸付面積約52.4万坪の約2%、1万坪のフレキシブルオフィスを2030年には貸付面積約60万坪のうち約5%、約3万坪に増床し、多様な就業者100万人に最適な空間を提供し、自由でフレキシブルな働き方を実現すると語った。

また、同社フレキシブル・ワークスペース事業部部長・河野安紀氏は、フレキシブル・ワークスペースの事業戦略について「丸の内エリア120haの広域であらゆる形態のオフィスを提供できる強みを発揮し、選択肢の拡大によりワーカーマーケットを育て、サステナブル社会の実現、SDGsにも貢献する」と話した。

同社フレキシブル・ワークスペース事業部 ユニットリーダー・岩本祐介氏は、新設する「xLINK丸の内永楽ビル」の施設概要について説明し、「100坪で賃料は800万円(坪賃料8万円)」などと具体的な賃料も公表した。ラウンジでの酒類の提供は行わない(帰りに寄った丸の内北口ビルでは就業者向けラウンジで酒類の販売を行っていた)。

フレキシブルオフィス「xLINK丸の内永楽ビル」は、「丸の内永楽ビル」の最上階26階約834坪と25階約178坪、合計1,012坪の規模。2名~36名までの什器付サービスオフィス(40個室、約242坪)、20名〜40名程度で利用可能な専用エントランス・会議室付オフィス(8区画、約4284坪)、30名〜70名程度で利用可能な専用エントランス、会議室、コミュニティキッチン、基本什器付ハーフセットアップオフィス(2区画、101坪・143坪)を整備。カフェ、ソロワークブース、フォーカスブース、ミーティングブース、ボックスシート、イベントスペースなど多彩な用途を持つビル共用ラウンジを併設する。

フレキシブルな契約形態、什器・造作付きのハーフセットアップオフィスとすることで、退去時の原状回復工事範囲を限定。成長企業のステージに応じたステップアップオフィスとして利用可能なのが特徴。

 同社は20224月、フレキシブル・ワークスペース事業部を発足し、それまで新規事業として取り組んできたフレキシブルオフィス事業を統合する形で、本格的にフレキシブルオフィス事業に参入。20232月には、国内48都市・185拠点でフレキシブルオフィス事業を展開する日本リージャスホールディングスをグループ会社化。丸の内では、プロジェクトオフィスとして供給していた「xLINK」を3種類のフレキシブルオフィスにリブランド、ビルテナントが利用できる共用ラウンジの新設に合わせて、「xLINK」の併設も進めている。20234月に開業した「xLINK丸の内パークビル」「xLINK丸の内パレスフロント」が開業1年未満で稼働率80%以上の安定稼働に移行している。

今後、2024年秋には、「新大手町ビル」3階にビル共用ラウンジを開設すると共に、「xLINK大手町」3期増床を行うほか、2025年春には「丸ビル」に、2028年春には「Torch Tower」への開設を検討している。2030年までに丸の内エリアの貸付有効面積の約5%、3万坪まで拡大する。

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セットアップオフィス(コミュニティキッチン)

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xLINKスカイラウンジ

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 この日配布された資料には、丸の内に本社を構える上場企業は135社で、連結売上高は約155兆円(わが国のGDP9.12%。ちなみに三井グループ25社の連結売上高は約88兆円)、就業者は約35万人とあった。

 坪賃料8万円には驚いたが、共用ラウンジやワーケーション施設、街全体をワークプレイスとして利用できる環境などを考えたら納得もできる。坪賃料で測れない価値がある。

 荒木氏はあいさつの中で「コリアーズのアンケート調査でも、丸の内エリアは働きたい場所として圧倒的に高い支持を受けている」と語った。コリアーズは同社の「丸の内二重橋ビル」に入居しており、先日行われたアンケート調査発表会&記者懇親会を取材した。アンケートはZ世代に聞いたもので、「働きたい場所(駅)」は「丸の内」ではなく「東京」だが、ベスト3は「東京」25.0%、「大手町」19.3%、「有楽町」11.6%なので、「大・丸・有」地区が圧倒的支持を得ているのは間違いない。

 これほど人気が高いのだから、皇居が一望できる一角にマンションを分譲したら「うめきた」の倍、坪5,000万円でも売れると思うのだが…。

オフィスワーカーの欲しい設備「食堂」/Z世代の働きたい場所「東京」 コリアーズ(2024/3/18

「彩」「祭」「才」と「愛」をつなぐ 三菱地所「SAAI(サイ)」新東京ビルに移転(2023/11/17

メタボ増えたが、あらゆるデータが向上三菱地所「本社オフィス体験・懇親会」(2023/11/12

「多様な100万人」の街へ 「Torch」へのブリッジ役「TOKIWA BRIDGE三菱地所(2022/3/26

カテゴリ: 2023年度

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「那須 無垢の音」(「水庭」)

 タカラレーベンは3月27日、「那須 無垢の音」のオープニングセレモニー&メディア向け内覧会を開催した。従前の「アートビオトープ那須」をリニューアルしたもので、同社代表取締役・島田和一氏が開発の経緯、ブランドコンセプト、今後の展開などについて語り、ホテル事業の責任者である同社取締役兼執行役員・岩本大志氏が施設の特徴について説明し、施設の〝売り〟の一つである「水庭(みずにわ)」について、設計を担当した建築家・石上純也氏か設計手法などについて語った。ホテルは4月1日にオープンする。

 島田氏は「MIRARTHグループ初となる自社ホテルブランド『HOTEL THE LEBEN』を立ち上げ、2022年に第一弾を大阪・心斎橋でオープンした。今では〝予約が取れないホテル〟として好評をいただいている。2026年12月にはかごしま空港ホテルを開業する。『那須 無垢の音』は、地産の美食と優雅な寛ぎを愉しめる『オーベルジュ』として開業する。ホテル事業は2030年までに2,000室にする目標を掲げている」などと語った。

 岩本氏はホテルの特徴について、「石上純也先生が手掛けた『水庭』、フレンチレストラン、『スイートヴィラ』から構成されており、7月には『B&B(ベッド&ブレークファスト)」も開業する。那須の天然水を地下水脈よりくみ上げ客室に提供し、客室の半露天風呂(一部桧風呂)、那須の旬の食材を楽しんでいただける』と説明した。

 石上氏は、「約50年前は水田だった土地の歴史と、この場所にある自然の素材を生かせないかと、自然と人とが共存するアート『水庭』を構想した。現在の宿泊施設エリアにあった約三百数十本の樹林を采配しなおし、160の池の水は小川から水をひき、昔の水田を表現した。夏には池の水、陸の草、光と影が交わる環境が作られ、秋には色づいた葉が池の中にたまる景色、冬には雪の白、影の黒のモノトーン景色に変化する。それぞれの景色を愉しんでいただきたい」と述べた。

 施設は、JR那須塩原駅から車で30分、栃木県那須郡那須町高久乙道上に位置する敷地面積約35,418㎡、客室数はスイートヴィラ15室(1室82㎡)、カジュアルツイン20室(1室20㎡)、その他施設はレストラン、ワインバー、ショップ、カフェテラスなど。スイートヴィラの宿泊料金は年間平均112,000円~(2名様1室、1泊2日2食付き)。2024年7月にはカジュアルに愉しめるツインタイプの「B&B」をオープンする予定。運営は那須横沢ホテルマネジメント(タカラレーベン100%子会社)。

 従前施設は1986年、栄光ゼミナールの文化事業「二期倶楽部」として創業。その後、様々な経緯を経て2007年、MIRARTHと共同事業を開始し、同年、二期倶楽部としては営業終了。2018年に 「水庭」完成。2020年、建築家・坂茂氏設計のスイートヴィラとレストランμ(ミュー)が完成。

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「那須 無垢の音」

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オープニングセレモニー(左から千葉拓海総料理長、石上氏、島田氏、岩本氏、永山総支配人)

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島田氏(左)と石上氏

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ヴィラ客室

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ヴィラ客室

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 この日は他社の取材を優先することに決めていたのだが、前日(26日)夜、「那須 無垢の音」を取材させていただくことに変更した。キャンセル・取材申し込みを受けていただいた両社に感謝申し上げる。

 「那須」を取材することを決めたのは、同社のホテル事業がどのようなものかこの目で確かめたかったのと、島田社長が何を話すか、石上氏が設計した「水庭」とはどんなものか、とても興味があったからだ。

 結果は大正解。同社が目指すホテル事業はワクワクするほど魅力的で、石上氏の「水庭」は人工ではあるが那須の自然木を見事に調和させている。さらにまた、ヴィラ、レストランμ(ミュー)の設計を建築家の坂茂氏が手掛けたことを初めて知らされたが、全てが本物でそのレベルの高さを確認することができた。

 まず、島田氏の挨拶。リリースでは触れられていないが、島田氏は真っ先にこのリゾートに出会ったのは10年昔であることを明らかにした。10年前と言えば、島田氏が社長に就任した年だ。その数年前から同社のマンションが劇的に変わったのを記者は確認している。一言でいえば〝非日常の演出〟だ。その舵取りを行ったのが島田氏だ。

 今回、島田氏直々に「水庭」を案内してもらった。島田氏は「現在ある『水庭』の場所は砂利敷の駐車場だった。こんなになるとは夢にも思わなかった」とも語ったが、ひょっとしたら、今日の姿を夢想していたのではないか。10年構想と考えれば腑に落ちる。

 〝非日常の演出〟と書いたが、記者はマンションの究極はホテルだと思っている。自腹を切って名だたるラグジュアリーホテルに宿泊したのも、究極のマンションとはどのようなものかイメージするためだった。これ以上は書かないが、皆さん、どこでもいいから同社のマンションを見学していただきたい。「福岡天神」と「上尾」の記事を添付した。

 「水庭」とはどんなものか。上段の石上氏のコメント通りだが、驚いたのはその設計手法だ。記者は造園のことはわからないが、樹木の移植はとても難しく、下手をすると多くは枯死するという。枯死させないためには事前の根回し・根巻がとても大事だと聞いている。

 ところが、石上氏は根回し・根巻を行わず、自然らしさを演出するために普通の造園では考えられないミリ単位で設計し、日本に3台しかない機械を使って1日1~2本ずつ、2年間(冬場は作業できない)かけて三百数十本の高木(クヌギが中心)を移植したという。そうすることで、生物多様性の宝庫でもある地中のいきものたちへのダメージも軽減できるのだという。移植から6年経過しているが、枯死の事例は十数本にとどまっているという。そしてまた驚いたのは、倒木を防ぐため地中1~2mに支柱を埋め込み、池の水は川から引いたもので、水そのものはただで、循環させているという。写真を見ていただきたい。見事の一語に尽きる。

 ヴィラも素晴らしい。何が素晴らしいかと言えば、全てが本物であることだ。樹林-テラス-室内のプランニングが素敵で、2階建てではなくスキップフロアを巧みに利用した平屋建てなのもいい。さすがプリッツカー賞の坂氏だ。(山形の「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」も見たいと思っているのだが…お金がない。今年、同賞を日本人として9人目の山本理顕氏が受賞したのもとても嬉しい)

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水庭

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水庭

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 島田社長は、2030年までホテル事業を2,000室にすると語った。那須塩原も競争は激化するはずで、「楽観はしていない」ようだが、「水庭」と「坂茂のヴィラ」の素晴らしさを伝えきれれば、「大阪」のように〝予約の取れないリゾート〟に生まれ変わるかもしれない。

富裕層の心揺さぶるタカラレーベン創業50周年記念「福岡天神」約1年で完売(2023/2/4)

地所レジから専有卸受け分譲タカラレーベン「上尾」1年で全183戸完売の勢い(2019/7/30)

まさに紙わざ ヒントは「6」坂茂氏が設計した芝浦工大のレストラン&カフェ(2022/10/25)

 

カテゴリ: 2023年度

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ROOFLAG

記者はずっと分譲マンションや分譲戸建てを取材してきたからでもあるのだが、賃貸住宅にはいいイメージを持っていない。入居者がもっとも大切な顧客であるはずなのに、敷金、礼金、原状回復など時代遅れの商習慣を墨守し、大家・投資家の利回りを優先し、コストを下げるために居住面積を圧縮し、遮音・断熱などあらゆる基本性能・設備仕様レベルを落とす(だからこそマンションが売れるのだが)。あろうことか、高齢者を理由に入居を断る。レオパレス21の不祥事で賃貸業界への疑念は頂点に達した(この会社は好きになれず、一度も取材したことがないのは幸いだった)。

 その賃貸事業分野で断トツの大東建託も取材したことはこれまでほとんどなかった。発祥は名古屋なので、わが故郷・三重県の三交不動産などと共に応援したい気持ちはあったが、取材の間口を広げようとは思わなかった。

 ところが先日行われた、大和ハウス工業と同社との賃貸住宅の「災害における連携及び支援協定」締結発表会を取材して、同社の見方を修正しなければならないと思った。同社代表取締役社長執行役員・竹内啓氏は、有事に備えた防災訓練を日ごろから行っていると語った。その取り組みは半端でなかったからだ。

 竹内氏の話を聞きながら、後述する住宅セーフティネット制度のことが頭をよぎった。その場で取材を申し込んだ。この日(322日)実現した。場所は、同社の賃貸住宅未来展示場「ROOFLAG」だった。約1時間半、施設を見学し、セーフティネット住宅について大東建託パートナーズ事業戦略企画室メディア戦略課次長・宍戸敏之氏に話をきいた。同社に対する疑念は払しょくされたが、セーフティネット制度に対する疑問、謎はより深まった。

 まず、同社に対する見方から。「ROOFLAG」は、東京メトロ豊洲駅から徒歩11分、江東区東雲一丁目に2020年に完成した木造&RCの混構造4階建て本棟と、木造(2×4工法&CLT)モデルハウス2棟から構成されている。

 本棟アトリウムの天井には国内最大級という三角形のCLT屋根が張られていたのには圧倒された。枚数は128枚、体積は500㎥という。展示室にはCLTの模型もあった。このほか同社の理念・顧客主義などを紹介するコーポレートゾーン、歴史を紹介するヒストリーゾーン、ラウンジなどを見て回った。

 CLT2×4のモデルハウスは、木の素材をふんだんに用いたオーナーズモデルルームや16×16サイズの浴室も提案するなど分譲仕様の提案も行っている。断熱、遮音など構造に力を入れていることが一目瞭然の仕掛けも施されている。

 この時点で、同社に対する疑念は取り払われ、全国に617拠点(2024年4月)を張り巡らせ、賃貸住宅完工が41,238戸/年、賃貸仲介件数23,877件/年、賃貸累計管理戸数1,230,339戸、入居率98.0%(2022年)など圧倒的数字を誇る理由が少しは分かった。

 本題のセーフティネット住宅について。宍戸氏は「319日現在、全国の登録戸数は895,982戸に対して、当社の戸数は855,483戸、比率は95.5%。当社管理建物情報は、国土交通省の協力のもと、毎月25日前後にシステム通じて各自治体への申請(登録・変更)を行っています。賃貸住宅の仕様や性能は、国が定めた基準に沿って決定していますが、当社は、35年間サブリースで管理・運営を行っているため、35年間入居者様に選ばれ続ける建物にする必要があります。それが空室リスクの低減にも繋がることから、一定水準以上の建物性能は必要であるということを、オーナー様にご説明しています。また、マーケティングデータに基づき、社内基準に則り物件の立地ごとの事業性をきめ細かく見極めてオーナー様にご提案しているので、立地や地域性によって一概にパターン分けされるということでもありません。入居審査においては、当社の社内審査チェックに通れば高齢者や外国人、障がいを理由に差別することはありません。敷金もなく、ハウスクリーニング代金として46万円をお預かりしますが、高耐久仕様にしているため、退去時の原状回復はこの範囲内でほとんど収まっています。高齢入居者様のご逝去や、残置物の処理なども相続人の協力を得ながら問題なく対応しております。入居者様の属性の公表については、国からの要請があればご協力させていただきます」などと語った。

 同社の登録件数が群を抜くのは、国の依頼があり、国の基準に適合させたのだろうと思ってきたが、事実は違ったようだ。同社が当たり前のように行っていることを同業の他社はやらない-この後進性はいつになったら改められるのかという問題は残った。

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ROOFLAG」内観

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ROOFLAG」モデルハウス(CLT)

           

「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」の一部を改正する法律が施行されたのは平成2910月。住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度の創設登録住宅の改修や入居者への経済的な支援住宅確保要配慮者に対する居住支援-この3つを柱とするもので、大きな期待が寄せられた制度だ。

 ところが、登録住宅は最初から伸び悩み、2度にわたる登録促進策を施したにもかかわらず、令和元年12月末時点の登録戸数は全国で27,056戸にとどまっていた。そこで普及促進策の第3弾として令和23月、業界団体連携による一括申請(データ連携型)が導入されてから増え始め、20212月末には30.2万戸に増加し、2020年度末までに全国で175,000戸登録という政府目標を大幅に上回った。令和6319日現在、登録住宅は895,982戸となっていることは前段で紹介した。

この数値だけ見ると爆発的な増加だが、率直に喜べない事情がある。上段でも紹介したように、この895,982戸の登録住宅のうち大東建託パートナーズを通じた登録住宅の比率は95.5%だ。同社登録を除くと戸数は約4万戸だ。(空き家活用を想定した)住宅確保要配慮者専用住宅は202312月末時点で5,778 戸(登録住宅の0.7%)しかない。登録住宅の空室率2.3%は大東建託パートナーズの数値そのものだ。

この現状をどう見るか。昨年7月、厚生労働省、国土交通省、法務省による第1回「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(座長:大月敏雄・東京大学大学院工学系研究科教授)が行われた。

 記者は、大東建託パートナーズのみに依存、偏重している現状について各委員から声があがると期待していたのだが、誰一人として声をあげなかった。その時点で検討会の視聴をやめた。肝心要の住宅確保要配慮者とは居住支援とは何かの本質的な議論はされず、山積する様々な課題にどう対応するかに論議が終始すると読んだからだ。

検討会はその後、12月まで5回開かれた。その5回目の会合で「居住支援とは何ぞやという話が第2回目の検討会の最後ぐらいで出てきていました。結局、居住支援ってよく分からないという話になって、それぞれの立場でイメージがずれているという話もそうなのですが」と発言された委員がいたが、それ以上の論議はされなかった。平山洋介・神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授(当時)の著書「マイホームのかなたに」(筑摩書房、20203月刊)で平山教授が指摘した「留意すべきは、多彩な『カテゴリー』を『列挙』すればするほど、住宅セーフティネットの対象が『特殊』で、その構築が普遍性を持つ施策ではないことを示唆する効果が生まれる点である。住宅確保要配慮者の長大なリストの作成は、住宅困窮の範囲を拡大するのではなく、むしろ狭め、セーフティネット政策に『ピースミール・アプローチ』を当てはめる意味を持つ」(233ページ)の通りだと思った。

そして今年2月、中間とりまとめが発表された。とりまとめは「国土交通省、厚生労働省及び法務省においては、本中間とりまとめや関連する制度の諸課題を踏まえ、具体的な見直しに向けて必要な検討を進めるべきである。その際、地域における住宅セーフティネットの機能を強化するため、地方公共団体、不動産事業者、居住支援法人、社会福祉法人、社会福祉協議会、地域生活定着支援センター、NPO、更生保護施設等多様な主体が協働して取り組む仕組みの構築にも資するよう、制度、補助、税等幅広い方策について充実や見直しの検討を進め、可能な限り早期に実施するよう、各省が連携して取り組むべきである」と締めくくっている。-この通りなのだろう。しかし、平山教授が指摘するピースミール・アプローチ=対症療法的な手法では住宅困窮者は救われないような気がする。

◇             

セーフティネット住宅情報提供サイトで東京都の物件を検索したら、ある区の駅近の築35年のマンションの1フロア延べ床面積51.38㎡を対象とした共同居住型住宅(シェアハウス)3室がヒットした。専用面積8.299.95㎡(2.53.0坪)、家賃7.3万~7.6万円(坪賃料2.5万~3.0万円)、敷金3万円、礼金なし。便所、洗面、浴室、台所、収納、洗濯室居室内にはなく、約24㎡のスペースで共有利用する。

 入居対象は女性限定で、低額所得者(生活保護者以外)、被災者、外国人、生活困窮者、犯罪被害者等、DV被害者、児童虐待を受けた者、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)、UIJターンによる転入者などで、ほとんどすべての入居者対象要件を満たしているが、家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないことの要件との整合性は欠いていないのか。この種のシェアハウスは他にも結構ある。

同じ区内には、豪華な2階建て延床面積105㎡で、家賃21.0万円(坪賃料約7,300円)もあった。 

天晴れ 大和ハウス・芳井社長&大東建託・竹内社長の即断即決 賃貸に関する災害協定(2024/3/5

住宅セーフティネットを考える 「住宅確保要配慮者」は400万世帯でも少ない(2023/7/18)

問題山積 要配慮者の居住支援 大家の安心、安否確認、支援法人などテーマ(2023/7/3

セーフティネット住宅 登録件数が激増 制度の前進と受け止めていいのか(2023/6/29)

大東建託 セーフティネット住宅の登録住宅は約45万戸 全国の90%超か(2021/7/14

激増セーフティネット住宅 1年で政府目標の2.8 大東建託がけん引/必読の平山論文(2021/7/12

坪3.5万円!億ション以上 現地見ずに家賃判断 審査は適正か セーフティネット住宅(2018/11/9

課題山積〝玉石混交〟市場に百家争鳴 サ高住に関する国交省・有識者懇談会(2018/2/3

カテゴリ: 2023年度

 プレハブ建築協会は326日、住宅部会・教育委員会のメディア向け活動状況を報告し、懇親会を開催した。

 「住生活向上推進プラン2025」では、22年度実績は戸建てZEH供給率の目標である80%に対して79.3%、長期優良住宅認定取得率(戸建)85%に対して85.0%、工場生産のCO2排出量(総量)40%減(2013年度比)に対して63.2削減を実現するなと成果目標12項目のうち多くの項目で成果を上げた一方、長期優良住宅認定取得率(共同住宅)、ZEHM供給率(低層共同)などは目標、実績とも低い数値にとどまった。

 環境分科会部門では、計画2年目の22年度は、居住段階、向上生産段階とも前年を上回る実績をとなり、新築のZEH供給率79.3%、改修一次消費量削減貢献量27.1%増、工場生産におけるCO2排出量63.2%減、再エネ電気利用率67.8%などを達成したことから、2025年目標をZEH供給率8580%)へ、改修一次消費量削減貢献量30%増(同15%増)へ、CO2排出量を65%減(同40%減)へ、再エネ電気利用率75%(同30%)へそれぞれ上方修正した。

 このほか、住宅ストック分科会では積極的なリフォーム推進、教育委員会の住宅コーディネーター資格制度運営など幅広い活動が報告された。

カテゴリ: 2023年度

地価はさらに上昇基調 いつの時代もマーケットを重視 東京建物・野村均社長

 今回発表された地価公示は、地域や用途により差があるものの、三大都市圏や地方圏でも上昇率が拡大傾向となるなど、地価は全国的に上昇基調を強めている。これは社会経済活動の正常化が一層進むなか、好調な分譲マンション市場に加え、ホテルや店舗需要の回復、オフィス需要の底堅さ、再開発による利便性向上エリアの増加が背景にあると考えられる。

 オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に、オフィス回帰や業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。新規大型ビルの稼働率も高く、特にサステナビリティやウェルビーイングなどに対応した高付加価値のオフィスビルは今後の需要も一層増大すると見ている。当社も八重洲・日本橋・京橋エリアや渋谷エリアで地権者の皆様と進めている再開発事業において、高い環境性能とワーカーのウェルビーイングなどに配慮した快適なオフィスビルづくりを進めている。

 ホテルや商業施設は、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大などにより、国内の人流も増え、観光地や全国主要都市を中心に、ホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、この先も回復基調の継続が期待できると思われる。当社は今年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」をオープンする。同ホテルは京都市中京区の河原町三条に位置し、客室数330を超えるラグジュアリーホテルであり、今後、京都観光の拠点の一つとして重要な役割を担うと同時に京都経済の発展にも貢献するものと考えている。

 物流施設は、施設選別の目が厳しくなりつつあるなか、自動化、冷凍冷蔵、環境性能、ウェルビーイングなどの先進性・機能性・快適性を備え、「2024年問題」などの物流課題解決に資する付加価値の高い施設が一段と求められている。

 分譲マンションマーケットは、建築費高騰や土地代の上昇などにより価格は上昇したものの、低金利の継続やローン減税等の支援策を受け、共働き世帯の増加等もあいまって、市場は好調を維持している。特に、資産性を重視する富裕層やパワーカップル層を中心に、都心部や駅近物件の販売は好調が続いている。当社等が大阪で開発を推進し、今年竣工を迎える「Brillia Tower 箕面船場TOP OF THE HILL」「BrilliaTower 堂島」は、いずれも将来の資産性を重視した顧客層から高い評価を受け、販売は好調である。具体的には、「Brillia Tower 箕面船場TOP OF THE HILL」は、北大阪急行延伸部の新駅となる「箕面船場阪大前」駅にペデストリアンデッキで直結し、駅前整備進展による将来の利便性向上による資産性に、「BrilliaTower 堂島」は、日本初となるフォーシーズンズホテルと一体となった超高層複合タワーという希少性に高い評価をいただいている。

 先日発表された日銀の政策変更による金利上昇はそれほど大幅なものにはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、アフターコロナとなった現在、社会経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁、賃金上昇などが進むと、商業地、住宅地、工業地を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価はさらに上昇基調を強める可能性がある。

 地価動向には引き続き注視するととともに、当社はいつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様が満足する商品の提供と人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。

経済活動の回復の反映 産業競争力強化に貢献 三井不動産・植田俊社長

 今般発表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3 年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、三大都市圏・地方圏においても、上昇が継続し、上昇基調を強めています。

 都市部においては、コロナ禍以降、インバウンドを含め人の流れが活発化し、経済が回復基調にあることが、今回の地価公示上昇に反映されていると考えています。オフィスにおいては出社回帰の動きがみられるほか、ホテルや商業施設における集客がコロナ禍前以上の水準で推移、さらに、住宅については堅調なマーケットに支えられて引き続き好調です。足元もこの動向は継続しており、今後のわが国の経済回復に一層寄与すると考えております。また、都市部以外においても、大手半導体メーカーの工場が進出する地域や、Eコマース事業伸長により、大型物流施設用地周辺での地価上昇も見られ、新たな需要創造により経済が活性化されていくということも、今回の地価公示で注目すべき点と考えています。

 先月には日経平均株価が過去最高値を更新し、日銀によるゼロ金利政策も解除されましたが、バブル崩壊後の「失われた30年」にピリオドを打ち、デフレから完全脱却ができるかどうか、2024年はその見極めをする勝負の年だと考えています。デフレのもとでは、付加価値創出のための努力が報われず、中々イノベーションを起こすのは困難でした。しかし、賃金上昇も伴った持続的・安定的なインフレに移行することで、投資の拡大、イノベーションや付加価値の創出、そして、その付加価値をお客様に正当に評価いただく、という好循環が生み出されます。この好循環のもと、日本経済が持続的に成長していくことを期待しています。

 当社グループは、これまでも、日本橋におけるライフサイエンスや宇宙領域での「場」と「コミュニティ」の提供などを通じて、集まる人々や企業のイノベーションや付加価値向上のお手伝いを行い、共に成長してきました。また、スポーツ・エンターテイメントの力を活用するなど、コロナ禍が明け再認識された「リアルの価値」を最大限に高めるミクストユースの「行きたくなる街づくり」も推進しております。

 今回の地価上昇については、我が国の経済活動の回復が反映された結果ととらえています。この経済活動の回復に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして、国富増大に結び付いているとも言えます。当社グループとしましても、イノベーションや付加価値を創出することで、日本の産業競争力強化に貢献してまいります。

マイナス金利解除の影響は大きくない 野村不動産・松尾大作社長

 今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については3大都市圏・地方圏のいずれも3 年連続で上昇し、三大都市圏においては上昇率が拡大。地方圏では、地方四市が11 年連続で上昇した。商業地については大阪圏が2年連続で上昇、三大都市圏・地方圏いずれにおいても3年連続で上昇し、上昇率も拡大した。

 住宅市場に関しては、引き続き需要が堅調であることに加えて、マンション供給数が減っていることもあり、需要と供給のバランスが取れていることから売れ行き好調な状況が続いている。日銀が「マイナス金利政策」解除などの政策修正を発表したことを受けて、今後の金利上昇も予想されるが、当社のお客様の多くが変動金利の住宅ローンを利用されており、同ローンの過去の変遷を見る限りでは急激な上昇になるとは考えづらいことから、この影響は大きくないと考えている。但し、建築費高騰は今後も継続すると考えられることなどからも価格下落も想定しにくく、価格に見合った付加価値のある商品を企画していく必要がある。お客様のニーズが益々多様化する中、今後は「サステナビリティ」や「激甚化する災害」に対応した設備も一層求められてくる。

 オフィス市場に関しては、2025年に東京での新規供給が集中するものの、23 区全体のマーケット規模と過去からの供給量を鑑みると、需給バランスが急激に悪化することは考えづらい。当社主力ブランドのPMOを例に話すと、コロナ禍を経て出社や採用を増加している企業が増えてきており、PMO に加えて、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1Tの組み合わせにより、コロナ後の働き方の多様化にも対応出来ていることから、リーシングも順調に推移している。

 2025年にいよいよ竣工予定の「芝浦プロジェクト」S棟では、ワーカーの皆様が多様で新しい働き方を実現できるように、「TOKYO WORKation」をテーマに、都心で空・海・緑を圧倒的に感じられる立地特性を活かした新しい働き方を実現する。ビルの高層階1フロアの約1,500坪全てを「テナント様専用の共用施設」として用意するなど様々な工夫を予定している。

 ホテル市場に関しては、単月ではコロナ前の2019年を上回る訪日外国人数の月も出てきており、ホテル稼働率やADR も高い水準で推移している。商業施設についてはコロナ後の人流回復を受けて店舗需要が回復し、売上高が伸長している。

 物流市場に関しては、4月からの労働規制強化により、長距離ドライバーが不足する2024年問題を眼前に控えている。一方でEC拡大により、業務荷物量は増加傾向にあり、引き続き、物流オペレーションの自動化導入など、物流・荷主企業の抱える課題への解決策を今後も提供していく。

 当社グループでは、「将来自分たちが、どのような価値を社会やお客様に提供している企業グループになりたいのか」の目指す姿を明確にするため、2030年をターゲットとするグループビジョンとして「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」を掲げている。不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの様々な生活「Life」や、お客様一人ひとりの過ごす時間「Time」に寄り添うことを大切にしてきた。様々な社会課題に直面し、お客様の生活スタイル・価値観も多様化する中で、当社も変化していく必要がある。自らも変革していくことで、新たな価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

不動産業界全体の好機 本質的な価値提供 三菱地所・中島篤社長

 令和6年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続上昇し、上昇率が拡大した。利便性や生活環境に優れた地点の上昇傾向が継続していることや、インバウンド需要を背景とした上昇が目立つ地価動向であったと認識している。

 足元では、日経平均株価の上昇、企業による力強い賃上げ、マイナス金利政策の解除など日本経済が大きく転換しようとしている。この動きを不動産業界全体の好機と捉え、本質的な価値提供を続けていきたい。

 分譲住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、都内では「ザ・パークハウス千代田六番町」の販売が好調に推移している。大阪では、梅田駅前の再開発事業「グラングリーン大阪」至近に計画中の「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」の反響が大きい。賃貸住宅では、フレキシブルな働き方が社会に根付いたことに伴い、居住者が24時間使用出来るコワーキングスペースを併設した「The Parkhabio SOHO」シリーズの引き合いが強い。

 順調なインバウンドの回復を背景に、ホテルやアウトレットも好調に推移している。ホテルでは、インバウンド比率がコロナ前を上回る水準になっており、市況を牽引している。今年2月に開業した「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」や、今年5月に開業予定の「ザ ロイヤルパークホテル 銀座6丁目」などでもこの旺盛な需要を取り込んでいきたい。アウトレットにおいても、インバウンド比率が高まっており、「御殿場プレミアム・アウトレット」などが好調。昨年12月は御殿場を含む複数施設にて過去最高の月商を記録した。

 オフィスは、経済活動の正常化が一段と進んだことで、出社率が上昇傾向にあり、丸の内エリアへの集約移転や業容拡大による増床の動きが活発化している。同エリアの空室率は昨年12月時点で2.88%と低水準を維持しており需要は底堅い。今期は東京駅前の「TorchTower」の他、渋谷や赤坂でも新たに大型複合ビルを着工した。オフィス、商業、ホテル、エンタメなど多様な機能をハード・ソフト両面から整備し、人・企業を呼び込み、巻き込みながら、新しい価値を生み出し続けるまちづくりを実現したい。

 

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左から松澤氏、井野氏、齋藤氏(東宝日比谷プロムナードビル6階 セミナールーム「FRONTIER HALL」で)

 サンフロンティア不動産は3月25日、各界の有識者と環境保護・地域創生・人財育成をともに考えるライブ型セミナー「FRONTIER JOURNEY Live!」第1回目を開催。ゲストに1696年(元禄9年)から300年以上にわたって不動産業を営む銀座丸八代表取締役・松澤芳邦氏と、スイス発のラグジュアリーブランド「Akris(アクリス)」日本代表・井野智恵子氏を招き、同社代表取締役社長・齋藤清一氏の3者による「東京を世界一愛されるグローバル都市へ! 『銀座』流の街づくり」をテーマにトークセッションを行った。セミナーは年に4回程度開催する予定。

 松澤氏は冒頭、銀座の江戸-明治-大正―昭和の時代を紹介。関東大震災、第二次世界大戦によって壊滅的な被害を受けながらその都度再生し、建築物の絶対高さ56m規制を中心とする「銀座ルール」によって〝地価日本一〟を維持し続けていることなどを紹介した。

 トークセッションでは、ほとんどの敷地が1,500坪以下という銀座の弱点を逆手にとった街づくり、駐車場付置義務の緩和、古いものと新しいものの調和、〝ルールのないのがルール〟などの独自の街づくりなどが語られた。

◇        ◆     ◇

 昨日(3月24日)は、再開発の名のもとにいとも簡単に地区計画が変更され、風致地区が緩和されることに反対する千代田区や新宿区住民のセミナーを取材した。民主主義は死滅し、住民間のコミュニティはずたずたに切り裂かれ、疑心暗鬼が跳梁跋扈する現実社会を見た。

 そしてこの日(3月25日)は、何でもありの商業地域しかない中央区銀座の建築物の絶対高さが地区計画によって56mに規制されていることを初めて知った。1998年に決定したという。エリア最大の商業施設「GINZA SIX」の計画段階では特例として高さ200mに緩和する案も浮上したが、地元の反対で従来通りの56m抑えられ、特例は認めない方針が再確認された。エリア内に50棟のビルを所有するヒューリックも異を唱えなかったという。

 56mと言えば、オフィスビルなら12~14階建てしか建てられない。敷地は広くても1,500坪しかなく、細分化されていることが大規模ビルなどの進出を阻んでいる。

 地区計画の見直しは20年ごとに行われるのが慣行となっているが、松澤氏によるとその可能性があるのは50年後くらいという。

 デザイン協議会がまたユニークだ。新築の場合は、奇抜なデザインはまず確認申請が下りないそうで、既存のビルなどはその都度協議して決定するという。つまり、ルールがないのがルールなのだそうだ。ルールを定めないほうが柔軟な対応ができるという強かな計算だ(どこかで聞いたような気がした。前ソニー社長、会長の平井一夫氏の基本姿勢だ)。

 東京駅では高さ日本一の385mの「トーチタワー」、日本橋では高さ283mの「日本橋一丁目中地区」が進行しているというのに、銀座の地権者は自らの手足を縛り、歴史と文化を守ろうとしている。

 他に例をみない「銀座ルール」に、齋藤社長は「みんなで決めたルールは尊重しないといけない。持続可能性な街とは人が幸せになること。地域密着が基本」などと語った。

◇        ◆     ◇

 令和5年の商業地の地価公示価格日本一は、17年連続の東京都中央区銀座4-5-6(山野楽器銀座本店)の5,380万円/㎡(1億7,754万円/坪)だ。容積率は800%なので1種当たり単価は2,219万円。

 もうすぐ発表される令和6年のこの地点はいくらになるのか。銀座の実勢地価が坪1億円を突破したのは確か昭和61年だった。すっぱ抜いたのを思い出す。

 

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