神宮内外苑問題・石川幹子氏 外神田再開発・大城聡氏 東京1区市民連合フォーラム
石川氏(左)と大城氏
東京1区市民連合は3月24日、第8回憲法フォーラムを開催し、石川幹子・中央大学研究開発機構教授が「都市の再開発と身近な緑Quality of Life(生活の質)」と題する、大城聡・弁護士が「千代田区・外神田の再開発を考える3つの視点」と題する講演をそれぞれ行った。リアル81人、オンライン36人の合計117人が参加した。
石川氏は、「詰め込み」と断ったうえで、神宮外苑再開発について「わたしたちプロもよく分からない『公園まちづくり制度』『再開発等促進区』『市街地再開発事業』によって巨額の利益を生み出す構図ができあがった」とし、「この問題は神宮内苑と一緒にして考えないといけない」と強調した。また、「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」に対する3月14日付の日弁連会長声明について、「適切な指摘に感動した」と称賛。さらに、神宮内外苑や新宿御苑エリアは世界遺産となる可能性を有しているとし、市民が申請に手を挙げることに期待を寄せた。
大城氏は、外神田一丁目南部地区第一種市街地再開発事業(約7.800㎡)は、エリアの3分の1を区、都、国が所有しており、行政主導によるまちづくりは市民の声が反映されていないと批判。「話し合いが不十分なのは、持続可能な街づくりのチャンスでもある。若い世代が参加できるプラットフォームを構築し、世界のアキバとして誇れるようなモデルにすべき」と語った。
市民連合は、憲法違反の安保法制の廃止と立憲主義の回復を求め、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法に反対する学者の会」「安保関連法に反対するママの会」「立憲デモクラシーの会」「SEALDs」の5つの団体の有志の呼びかけによって2015年12月に発足。東京1区市民連合は、東京1区で立憲野党と市民連合の希望を託す統一候補として海江田万里氏を候補に決めている。
フォーラム会場(千代田区・エデュカス東京)
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記者は、この種の政治的な団体・会合は好きではない。敬愛する百瀬恵夫・明治大学名誉教授は「政治家は大馬鹿野郎か詐欺師のどちらか」と語った。記者は馬鹿を自認するが、「大」が付くほどではないし、多少の嘘はつくが詐欺事件に発展するような悪事を働いたことはない。大馬鹿野郎か詐欺師を応援する気にはなれないので、もう何十年も選挙に行ったことはない。選挙権を放棄しているので、政治について語る資格もない。何年か前、投票ハガキを持って投票会場に行き、「投票しません」と言ったら投票用紙は没収された。これは投票者にカウントされないのか、無効票なのか聞くべきだった。
しかし、政治には関与したくないが、住民自治はとても大事なことだし、フォーラムには石川氏と大城氏が講演するというので、参加費500円を払ってリアルで参加した。会場となった千代田区・エデュカス東京は、記者のような高齢者を中心に立ち見もでるほどの大盛況で、事務局からは会場参加81人、オンライン参加36人と報告された。過去最多クラスのようだ。
ここでは石川氏と大城氏の講演内容について詳しくは触れないが、石川氏が資料として配布したコピー「危機に瀕する外苑いちょう並木」(岩波書店「世界」2024年3月号)はとても参考になる。神宮外苑だけでなく、神宮内苑の400年昔の史料を渉猟し、自らのフィールドワークによる科学的データを提示する。ぐうの音も出ない。反証できる人は一人もいないのではないか。
惜しむらくはページ数が少ないことだ。石川氏も「詰め込み」と話したように、ページ数は10ページ、図版などを含めても400字原稿用紙にして25枚くらいではないか。素人に読ませるにはこの数倍は必要だし、〝持って歩く〟のがわれわれ世代のステータスだった「世界」はどれほどの若者に読まれているのか。どこの出版社・メディアでもいい、「悠久のときを共有できるこころ豊かな日々の暮らし」を願う石川先生の思いのたけを書籍化すべきだ。
もう一つの秋葉原の再開発は、手続き的な瑕疵はないはずで、大城氏もそのように話した。驚いたのは、大城氏が区の都市計画審議会関係者の利益相反に言及したことだ。「混迷する行政を象徴している。行政マンの矜持が問われる。行政システムは機能していない」と語った。区では今年1月、元区議会議員と元職員が官製談合防止法違反の容疑で逮捕された。
神宮外苑再開発 全エリア全樹木データ 保存・移植・伐採と移植難易度の関係は不明(2024/1/19)
最多はカイヅカイブキ 外来種のヒマラヤシダー、フウなど目立つ神宮外苑の既存樹木(2024/1/9)
氷の微笑、根回し、考え方更新、都市公園とは…神宮外苑を考えるシンポ千葉商大(2023/12/19)
実勢は公示地価の3~5倍が日常化 建築費も上昇 物流は調整局面 大和ハウス説明会
角田氏(同社東京本社で)
大和ハウス工業は3月19日、記者レクチャー会<2024年公示地価>を開催。分譲マンション、分譲戸建て、ホテル・オフィス、物流施設市場の現状と同社の取り組みなどについて説明した。レクチャー会は、近く発表される公示地価の記事を書く際に参考になるよう同社がセットしているもの。
分譲マンションについては、同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏は、全国的に地価、建築費、仕入れ価格が上昇しているとし、首都圏では坪単価1,000万円超の物件でも富裕層の投資、セカンド、相続対策や円安によるインバウンド需要が引き続き旺盛と語った。しかし、入札物件は高値落札が目立ち、応札者は少なくなっているとした。郊外部も堅調な市場が続いているものの、ファミリー層が簡単に取得できる価格を越えてきており、今後は23区の状況に左右されるため注視が必要としている。
近畿圏は、東京建物「堂島」をきっかけに坪単価400万円の壁が取り払われ、坪500~600万円が供給されるようになり、都心部は首都圏と同様に販売進捗は安定。建築費上昇を吸収できる可能性があり、用地取得環境はさらに厳しくなるとみている。京都は供給過多で、立地のいいものとそうでない物件との格差が拡大すると推測している。
地方圏は、一部エリア(札幌、仙台、福岡、沖縄)は、本州からの富裕層やシニア層のセカンド、投資・移住ニーズの高まりから用地価格の上昇が続いているとした。名古屋、金沢は価格の高騰、在庫物件が増加していると説明した。
投資需要は、金利の先高観、リート指数の低下などを受け、投資家の買収意欲は中立的とし、エリアや築年数による案件の選別化が進んでいるとした。
同社の物件では、東武鉄道とのJV「ソライエ新柏プレミスト」(114戸)は坪250万円で、第1期1次60戸は完売のめどが立ち、昨年7月から販売開始した同社初の沖縄で400万円超の「プレミスト那覇新都心」(16戸)も残り3戸と好調。
「販売のネックになるものがない」全241戸竣工完売へ大和ハウス他「大倉山」(2024/3/16)
〝どう見ても美しい〟大阪の市場を変える東京建物「堂島」は坪単価650万円(2021/11/25)
中岡氏
分譲戸建てについては、同社住宅事業本部事業統括分譲住宅グループ次長・中岡敬典氏は、注文住宅の着工戸数は26か月、分譲戸建ては15カ月(2024年1月現在)連続でそれぞれ減少しており、建築費の高騰、消費者の実質賃金の低下などにより、市場を取り巻く環境は厳しいと語った。
一方で、同社の事業は堅調で、2023年10月~2024年2月累計では金額比で前年比25%増で、東京、埼玉などで大幅に増加しているとしている。
戸建て7,000戸体制については、注文住宅と分譲住宅の「ちょうといいとこどり」を全国に展開し、「ReadyMade Housing」を掲げ、「設計力+基本性能+アフター&長期保証により〝価格以上の価値〟を提供していくと語った。用地取得については、10戸以上の入札案件よりも数戸~10戸未満の用地取得に力を入れ、大型案件ではグループ内での複合開発も検討していく。来期販売目標2,650戸のうち木造は3割で、差来期の木造化を50%に引き上げたいとした。「ZZEHは100%、既存の戸建てビルダーとは一線を画す」と明言した。
和田氏
ホテル・オフィス事業については、同社流通店舗事業本部事業統括部開発事業部グループ長・和田康紀市は、商業分野は、コロナ禍に伴う自粛モードが解除され、パンデミック以前の社会に戻りつつあるとしながらも、既存の商業施設の建て替えや再生がポイントとなり、もの消費からコト消費に変わり、新しいアイデアが求められていると話した。オフィス分野は、引き続き潜在的なニーズが高い地方に注力していく。
ホテル分野は、インバウンド需要が回復しているとはいえ、観光需要の高いエリアでは競争が激化、宿泊単価の上昇は見られるものの稼働率の上昇につながっているとはいいがたく、従業員の雇用問題が深刻化していると話した。
地価公示については、取引価格との乖離が目立っており、都心部(東京、大阪、名古屋)では公示地価の3倍から5倍の取引価格が日常化しており、地方でも人気の高いエリアは同じ傾向がみられるとしている。
廣渡氏
物流施設については、同社建築事業本部 営業統括部Dプロジェクト推進室担当次長・廣渡政和氏は、テナント入居地域の傾向として都心好立地案件と地方メーカー向け立地に大きく二分化され、リーシングに時間がかかる状況から調整局面に突入しつつあると指摘した。
首都圏の需給バランスでは、2024年4Qの新規供給は前年同期比半減し、空室率は2023年4Qの9.3%からやや改善はされているもの8%台の半ばに達しており、2%台で推移していると思われる築1年以上の施設との差が目立っている。廣瀬氏は「物流施設は建築費のウエイトが高く、ゼネコンが見つからない例や賃料に転嫁できない環境が続いている」と語った。
「昭島」1期は262戸/建築費5割アップへ2024年問題からみ深刻化 大和ハウス(2023/9/15)
三井グループ25社売上88兆円「三井みらいチャレンジャーズオーディション」発表
「三井みらいチャレンジャーズオーディション」(日本橋三井ホールで)
三井グループ350周年記念事業実行委員会(委員長:菰田正信・三井不動産会長)は3月19日、三井グループ350周年記念事業の最大イベントである「三井みらいチャレンジャーズオーディション」最終通過者30人を発表した。イベントには130人が参加した。
プロジェクトは、三井グループの元祖「三井高利」が日本橋に越後屋を出店した1673年から350年の節目の年に当たり、様々な社会課題を解決し、未来を切り開く若者を発掘・支援するもの。「事業・社会活動」「研究・留学」「カルチャー創造」の 3分野722人の応募者の中から各分野10人が選ばれた。
応募条件は2024年3月31日時点で16歳以上31歳未満の個人で、昨年8月から10月まで募集された。募集部門は①研究・留学部門(応募:241人)②事業・社会活動部門(応募:319人)③カルチャー創造部門(応募:162人)。総勢10名の審査員による「みらい履歴書・計画書の審査」「動画審査」「対面審査」の3段階の審査を経て決定された。最終通過者30人は 2027年度まで三井グループ25社が継続的に支援していく。支援金として一律500万円のほか、追加の支援金(2年目からの最長3 年間)が提供される。
菰田氏はイベントの冒頭、「オーディションは、三井高利のイノベーション精神を継承し、夢や目標を持ちチャレンジをする次の時代を担う若者を発掘・応援しようというプロジェクトです。昨年8月に応募受付を開始しましたが、締め切りまでの3か月間に722名のチャレンジャーが名乗りを上げてくださいました。『熱い想い』と『高い志』で『これからの世の中に大きな影響を与えたい』という強い決意を感じる方ばかりでした。自らの意思で一歩を踏み出し、このオーディションに参加をしてくれた若いチャレンジャ―たちは、みな未来を担う有望な人材です。応募をしてくださった全てのチャレンジャ―に敬意を表します。そして最終通過者を含めたチャレンジャ―達全員のこれからの飛躍・活躍を、心より祈念いたします」と述べ、閉会の挨拶では「1昨年やろうと考えたときは不安でいっぱいだったが、本当に素晴らしい結果となった。大激戦の末30人が選ばれたのもよく分かる。委員長としてもほっとしている。ただ、このプロジェクトの成功は、選ばれた皆さんの夢が実現し、日本を世界を変えること。そのために三井グループはしっかり支えていきます」と締めくくった。
菰田氏
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記者は昨年10月、スタートアップ企業と大企業をマッチングさせるイベント「住友不動産ベンチャーサミット」を見学・取材した。「新宿住友ビル」三角広場に約2,100人が集まったのにびっくりした。
今回、「日本橋三井ホール」に集まったのは約130人だが、内容は全然負けていないと思った。グランプリやら大賞やら○○賞を設けていないのもとてもいい。菰田氏をはじめ審査員の方々も〝素晴らしい〟を連発した。プレゼンターを務めた三井物産社長CEO・堀健一氏は「全員をわが社に迎えたいくらい」とまで述べた。
記者も、最初の受賞者・王方成さんの「宇宙に住む」に圧倒され、最後の方まで必死にメモを取った。約1時間30分。くたくたに疲れたが、これほど楽しい取材を行ったのは久々だ。
一つひとつ紹介したいのだが、そんな余裕はない。事業・社会活動部門で選ばれた小樽商科大3年生の大砂百恵さん一人だけ紹介する。事業タイトルは「e-kombu」-廃棄される昆布を牛に食べさせ、げっぷを減らしてCO2削減に貢献するというものだ。
大砂さんは「2年前、大学1年生のときです。ひいおじいちゃんがコンブ漁をやっていて、大量に捨てられる昆布がめっちゃくちゃもったいない、何とかできないかと。牛に食べさせることを思いつきました。賞金? 牛の購入費に充てたいです」と語った。(小生は牛肉をほとんど食べない。牛の体重は人間の10倍近くあり、大量のCO2を吐き出すし、輸入飼料によって大量の水(バーチャルウォーター)を消費する。そもそも牛は昆布を食べるのか。ネットで調べたら、昆布を飼料にしたブランド牛もあるそうだ。本当にげっぷは減るのか)
審査委員の講評も一人紹介する。カルチャー創造部門審査員で、プロダクトデザイナー・グラフィックデザイナー・建築家の肩書を持つ太刀川英輔氏だ。太刀川氏は次のように話した。
「おめでとうございます。何か…なんていうかなあ、すごくね…胸がいっぱいで、不思議な気分なんですよね…今。こういう皆さんを応援できる時間をいただいた委員会の皆さんにお礼を言いたい。みなさんになにを伝えようかと考えたとき、真っ先に出てきたのは、まず、すぐにヒーローになろうとするなって思ったんです。馬鹿に発見されると大変なんで、まずは没頭したほうがいいと。徹底的にいま目の前にある道を、皆さんはその先に何かの光が見えているはずですが、だけどその道はジャングルだけだと思う。進んでいると痛いこともあるし、出る杭を打つ人もいる。(そんなことを気にしないで)没頭することが大事。僕はね没頭することは幸せだと思う。それ以外にない。僕もデザインしているが、没頭することを心掛けている。結果出そうと考えないこと。結果はね、うしろについてくるもの。
そう思うと、今日貰った500万円、凄いね。だけど、お金だと思うと大した額じゃないんですよ。僕らおじさんにとってはね。ただ、こう考えてほしいんです。皆さん、3,000時間あったら何ができますか。3,000時間、これは皆さんが時給2,000円の高収入バイトをし、積み上げてできる…それが500万円なんです。大事なのは額じゃない。時間とつながりなんです。これは得難い。4年後、この3,000時間のあとに、皆さんが成し遂げてくれる景色を、ちょっと痛かったなどといいながら一緒に振り返られたらいいなと思います」
実をいうと、記者は最初から最後まで金の計算をしていた。30人のうち4年後に花を咲かせる人は何人いるか、三井グループはいくら投資するのかと。初年度500万円はともかく、成否のかぎを握るのは徹底して支援できるかどうかだと考えた。額は一人(1プロジェクト)1億円いや10億円はどうかと。10×30=300億円だ。
そして、三井グループ25社の総売上高を計算した。トヨタ自動車も入っているから100兆円くらいではないかと見当をつけた。300億円は巨額だが、比率にしたら0.03%だ。うちに帰って三井グループの直近の総売上高を調べた。売上高は87兆8,615億円、連結従業員数は817,123人だった。売上高はわが国のGDP591兆円の14.9%を占める。一人当たり売上高は約1億円。国民1人当たりDGPの約2倍だ。
大企業のこの種の支援事業が増えるのに期待したい。
太刀川氏
オフィスワーカーの欲しい設備「食堂」/Z世代の働きたい場所「東京」 コリアーズ
左から横山氏、毛利氏、小笠原氏、川井氏(同社本社:丸の内二重橋ビル18階で)
コリアーズ・インターナショナル・ジャパンは3月14日、「コロナ禍前後のオフィス・職場環境の変化」のアンケート調査発表会&記者懇親会を実施。テレワーク(リモートワーク)は確実に定着している一方で、企業側はオフィス回帰に舵を切っており、テレワークを全くしないオフィスワーカーが過半を占めたと発表した。
調査は、首都圏、関西圏に勤務する事務系・技術系のデスクワーク中心のオフィスワーカー448人に焦点をあて実施した。
調査の結果、首都圏では40代以下の年代のフル出社割合は50%を切っているが、年齢の高い層ほどフル出社の割合が高く、関西圏はすべての年代でフル出社が過半を占めている。
現在のテレワーク日数と理想では、首都圏では現状維持派が大多数を占め、現状フル出社の継続を望む層と、現状フルリモートでフルリモートの継続を望む層が目立ち、二極化傾向がうかがえるとしている。
コロナ禍前後で職場環境はどんなところが変わったかの問いでは、テレワークが導入された、出社頻度が下がった、最小限のコミュニケーションになった、ペーパーレスになった、フレキシブルな働き方になったなどの回答が寄せられた。
変わらない点では、オフィスに出社することを求められる、ペーパーレスが進まない、テレワークができていないなどの回答が目立っている。
これからのオフィスのあり方については、オフィスに欲しい設備として首都圏ではほとんどの年代で「食堂」「コンビニ」「仮眠室」「WEB会議のための個室」「リフレッシュルーム/カフェスペース」などを望んでいることが分かった。
発表会では、住友不動産に約25年間勤務していたマネージングディレクター兼会長・小笠原行洋氏が挨拶したあと、ディレクター&ヘッド・川井康平氏がプレゼンを行い、川井氏とシニアディレクター&ヘッド・毛利郁氏、シニアディレクター・横山貴明氏によるパネルディスカッションが行われた。
コリアーズは、ナスダックおよびトロント証券取引所に上場する大手総合不動産プロフェッショナルサービス・投資運用会社。世界66か国で事業を展開し、従業員は約19,000人。年間売上高は45億ドル、運用資産は980億ドル。
左から小笠原氏、川井氏、毛利氏、横山氏
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調査結果はある程度予想された内容だった。テレワークが浸透するかどうかは、職種にもよるだろうが、会社の方針が左右することをうかがわせた。ペーパーレスが遅れているのは問題だ。
興味深かったのは希望するオフィス設備で、多くの人が「食堂」「コンビニ」「リフレッシュルーム/カフェスペース」を求めていることだ。「食堂」とはどのような食堂かよく分からないが、一般的な社員食堂・職員食堂や施設食堂とは異なるような気もする。これらは基本的には食事が目的のはずだが、コンビニやカフェを希望する人も多いことから、単なる食堂ではなく多目的でいつでも利用できる自宅のリビングのような空間を望んでいるのではないか。
そのような機能を備えていた施設では、三菱地所本社を2度見学したが、酒も飲めた。TSUTAYAのSHARE LOUNGEはいい。もちろん仕事ができるのがいいのだが、本も読めるし酒も飲め、喫煙室もある。多目的に利用できるコンビニは増えているようだが、独立店舗は平屋建てが多いのはなぜか。借地が多いのだろうが、容積率の半分も消化していないはずだ。
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同社は2023年10月、「東京23区内に正社員として勤務するZ世代(18歳〜27歳)」の男女825名を対象に、働き方に関する意識調査を実施している。この結果が面白い。
テレワークをしている人は49.8%、していない人は50.2%で、テレワークをしている人にその理由を聞いたところ「通勤時間がもったいないから」が56.0%、「会社の方針」が28.5%となった。テレワークをしない理由の1位は「会社の方針」で66.9%、2位は「コミュニケーションが取りやすいから」が10.6%となった。
現在勤務するオフィスの立地に「満足している」人は25.0%、「どちらかというと満足している」人は43.6%と双方で約7割。満足している人、していない人にそれぞれその理由を聞いたところ、交通利便性、街の雰囲気、静か(満足)、騒がしい(不満)、飲食店、ブランド力などが上位にあがっている。
理想的な通勤時間を聞いたところ、「16分以上30分以下」が37.2%でもっともも多く、次いで「31分以上45分以下」が24.7%、「15分以下」が18.7%となっている。
理想通勤時間の選択理由を自由回答で聞いたところ、「時間がもったいない」「通勤でストレスを感じたくない」という声が多く寄せられた一方で、「家から近すぎるとプライバシーが怖い」「30分以内だと家賃が高い」「近すぎると仕事とのスイッチが切り替えにくい」などの声もあった。
働きたいと思うオフィス街の駅を聞いたところ、「東京」25.0%、「大手町」19.3%、「有楽町」11.6%、「新宿」8.8%、「日比谷」7.0%、「池袋」5.0%、「銀座」4.8%、「品川」4.6%、「日本橋」4.2%、「表参道」3.9%、「渋谷」3.4%の順でベスト11。
これらの結果からでは、どこに住んでおり、どこに勤務先があり、どのような職種かなどは不明だが、テレワークは会社の方針が左右していると考えられる。
望ましいオフィス立地、通勤時間、働きたい勤務地(駅)から読み取れるのは、一言でいえば理想と現実の大きな隔たりだ。勤務地を東京駅とし、静かで、通勤時間が30分以下の駅は山手線・山手線内、北は川口、北千住、東は船橋、南は川崎あたりか。徒歩時間を含んだドア・ツー・ドアで30分だと、マンションなら坪単価500万円以下は皆無、10坪でも5,000万円以上だ。買える人はほんの一握りだろう。前段でも書いた三菱地所の社員もどれだけいるか。
東建&東建リゾート 都市型スパ「TOTOPA都立明治公園店」3月22日開業
「TOTOPA都立明治公園店」(提供:東京建物、以下、上段は全て同社提供)
東京建物と東京建物リゾートは3月15日、都市型スパブランド「TOTOPA(トトパ)」の第一号店「TOTOPA都立明治公園店」を3月22日(金)に開業すると発表した。開業を前にした15日、施設を報道陣に公開した。素晴らしい施設だ。
「TOTOPA」は、同社グループが1999年以降展開してきたスーパー銭湯「おふろの王様」の運営ノウハウを生かした新ブランド。男性フロア(3階)では、3つのサウナ空間と水深約160cmの水風呂を含む2つの水風呂、3つの休憩スペースなど、18(=3×2×3)通りの「ととのい」体験を提供する。
女性フロア(2階)では、館内着を着用して楽しむ薬草スチームの蒸し湯と、脱衣で楽しむ本格的な「ととのい」体験のためのサウナをそれぞれ用意。また、パウダースペースには女優のMEGUMIさん選定のコスメを用意する。
施設は、都営大江戸線国立競技場駅から徒歩9分 、JR千駄ヶ谷駅から徒歩10分、新宿区霞ヶ丘町5丁目のPark-PFI(公募設置管理制度)を活用した東京都初の「都立明治公園」(約61,342㎡)に位置するA棟2階、3階2階。女性フロア約461㎡と、3階男性フロア約434㎡(男女入れ替えの可能籟もあり)。営業時間は11時~23時(22時最終受付)。利用時間は1時間まで:1,980円/人(税抜)、1時間~3時間まで:3,980円/人(税抜)、3時間~:5,980円/人(税抜)。年中無休。施設内は酒類はNGだが、禁酒ではない(持ち込み可能)。
また、同社を代表企業とする4社のコンソーシアムは昨年8月、Park-PFIを活用した福岡市の「明治公園整備・管理運営事業」(公園面積:約3,572㎡)にも選定されている。藤本壮介氏が総合デザイン監修を行い、2025年春から順次供用開始する予定。
男性浴室(女性用は少し狭い)
深水風呂(深さ163cm)
浴室ラウンジ
左室(左脳を刺激するそうだ)
ナ室(みんなで楽しむなごみのサウナ)
呼吸ルーム(サウナや虫部目に入る前にストレッチプログラムなどを行う空間)
すちこ
ロッカールーム&パウダースペース
◇ ◆ ◇
小生は風呂が大嫌いで、いつもカラスの行水で済ませる。真冬でも湯船に浸かることはほとんどない。旅館などの浴場では、貧相な裸身を晒すのは恥ずかしいし、小生の体重の2倍も3倍もある赤銅色のトドのような醜い中年男など見たくもないのだが、一度だけ混浴を経験したことがある。
誰もいないのを幸いに、大きな浴場で泳いでいたら、どかどかと土偶のような中年のおばさん数人が前も隠さず闖入してきたときは、心臓がひっくり返るような衝撃を受けた。体を洗わず慌てて逃げだした。背後からキャキャキャの罵声やら嘲笑の声を浴びせられたのを思い出す。
東建のスタッフの方に聞いたら、このわが国独自の文化は公衆浴場法によって原則禁止されているとのことだった。同法第三条には「営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める」とある。つまり混浴は「風紀」に抵触するのだろう。
都の条例では「善良の風俗を害するおそれのある文書、絵画、写真、物品、広告又は装飾設備を置き、掲げ、又は設けないこと」「七歳以上の男女を混浴させないこと」「従業員に、風紀を乱すおそれのある服装をさせないこと。従業員に、風紀を乱すおそれのある行為を行わせないこと」などと細かに規制されている。
一方では、「個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)三 専ら性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は許可されている。
この問題には深入りしないが、小生が子どもの頃は小学6年生まで男女一緒になって上半身裸で身体検査を受けた。胸が膨らみ始めた女の子は何人かいた。いま、帚木蓬生の「インターセックス」を読んでいるのだが、内性器や外性器が未分化の人はかなりいるようだ。戦前の「男女七歳にして席を同じゅうせず」が復活したのか。
脱線はこのくらいにして、元に戻る。小生は上述したように風呂嫌いだが、風呂好きにはたまらない施設であろうことは理解できる。
洗い場は完全個室ブース・シャワー式で、隣の人の(逆もそうだが)シャワーシャンプーの飛沫が気になり、誰が使ったか分からない風呂桶(椅子)と洗面器の座るタイプではないのがいい。手首にロッカーのカギをつけなければならないのは何とかならないのか。見つかったからよかったものの、小生はなくして大慌てしたことがある。
女性用の「すちこ(蒸し湯)」は、大分県・別府温泉にヒントを得た岩盤浴の一種で、室温を60度に設定しているのは一般的なサウナと変わらないが、湿度は通常の40%から60%にしているので、女性は5分も入っていられないほど汗だくになるという。また、寝転ぶこともできる床の下には大分県の草(何の草だったか、グリーングラスのようなものか)が敷き詰められており、美肌・薬草の効果があるそうだ。どれだけ減量効果があるかは分からないそうだが、これは人気を呼びそうだ。
小生にはまったく意味不明だが、女性用のコスメが利用できるパウダールームは美しかった。3種の調光が可能で、化粧品(水)は何種類も用意されており、最高級の「ReFa(リファ)」が備え付けられていた。何人もの女性が横並びになって隣の人など気にせず、矯めつ眇めつする光景は圧巻だろう。ただ、いろんな化粧品の香りが交じり合ったらどうなるのだろう。「すちこ」状態にはならないのか。
もう一つ、とてもいいと思ったのは、神宮外苑を走る人が多いのに着目したのか、ランナーズロッカーやシャワーブースなども設けられていたことだ。同社によると、スパのブラスαのサービス提供が目的のようだが、独自に1,000円くらいで利用できるようにすることも検討しているという。反響も多いようだ。
注文もある。この施設に限ったことではないが、浴槽から、ラウンジから外の景色が眺められるようにしたらもっと素晴らしい。「風紀」を乱すからできないのだろうが、坂茂氏はシースルーのトイレを造って話題になったではないか。同じ技術をつかえばできるのではないか。
スパとは関係ないのだが、同社は「羽鳥湖高原レジーナの森」を平成28年、楽天グループのエンゼルに売却したことを聞いた。芝桜が見事な春に一泊したこともある。大浴場が素晴らしく、コテージもよかった。もったいない。
洗い場
パウダースペース(左)と「ReFa(リファ)」
過去の記憶蘇る 東京都初のPark-PFI活用した「都立明治公園」完成(2023/11/4)
3.11から13年 前年比で仙台市も人口減少 増加は名取市のみ 太平洋湾岸の39市町村
2011年3月11日の東日本大震災から明日で13年が経過する。警察庁の発表によると、令和6年2月末現在、死者は19,500人、行方不明者は2,520人となっており、復興庁によると、関連死は令和5年12月31日現在、3,802人となっている。令和5年11月現在、避難者は当初の47万人から3.0万人に、応急仮設住宅などの入居は最大12.4万戸(31.6万人)から602戸 (958人)にそれぞれ減少している。平成23年度から令和7年度までの15年間で32.9兆円程度の国費が投じられる予定。
別表の通り、震災被害を受けた太平洋岸に位置する岩手、宮城、福島、茨城県の39市町村の令和6年2月1日現在の人口をまとめた。
前年同月比で人口が増加したのは宮城県名取市のみで、仙台市も0.1%ながら減少に転じたほか、被災29市町村全体では0.8%減少した。4県平均の減少率0.9%を1ポイント下回ったのは4県全体の人口約800万人のうち13.7%を占める仙台市が微減にとどまったため。被災地全体の減少率は県全体の減少率を上回っている。
被災前人口との比較では、人口が増加しているのは仙台市、名取市、利府町の3市町のみ。女川町が39.8%減となっているほか岩手県の岩泉町、山田町、宮城県の南三陸町、山元町が30%以上減少している。仙台市を除く38市町村の減少率は13.8%に達しており、4県全体の減少率7.7%より6.1ポイント上回っている。
嘘が嘘でなくなる狂った世界赤裸々に表現 下板橋「カフェ百日紅」3月末で閉店へ
「カフェ百日紅」
午後3時過ぎ、阪急阪神不動産「ジオ板橋大山」のモデルルーム見学取材の帰りだった。場所は東武東上線下板橋駅近く。一服しようと飲食店などを探したが見つからず、地元の人に聞いてやっと「カフェ百日紅」にたどり着いた。「タバコを吸いたいのですが…」と声を掛けたら、店主と思しき和服姿の女性が「どうぞ。ワンドリンクの注文をお願いしますが」と承諾してくれた。小さなテーブルが4脚、満席でも6人くらいしか入れない5坪くらいの店だ。
勧められた椅子に座ろうとしたら、だしぬけに壁全面に貼られた毛筆書きの「失禁」「終夜」「昏睡」「降臨」「白夜の天使」「異食」「吐き気」「夢幻」「騎虎」…おどろおどろしいカードが目に飛び込んできた。1枚660円の値も付いていた。
小生は最近、難しい漢字を覚えようと「魑魅魍魎」「憂鬱」「跳梁跋扈」「顰蹙」「躊躇」「慇懃」「饒舌」「暗澹」「韜晦」「畢竟」「朦朧」「麤」「甕」「龜」「竈」「麒麟」「鼠」「孑孑」「檸檬」「躑躅」「玉蜀黍」「蒟蒻」などをノートに書き出しているのだが、さすがに「失禁」「吐き気」「異食」にはどきりとした。〝また来ますと〟一瞬考えたが、たばこの誘惑が勝った。
ビールを頼もうとしたら、ビールはなし。メニュー表にあったウイスキーのロックを一杯注文した。「モンキーショルダーMonkey Shoulder」だった。700円。記者は以前、「バランタイン BALLANTINE」を4日に1本空けていたが、このスコッチも苦みが強くとても美味しい。
一服吸い、店内を眺めた。壁、棚、床の至る所にカードや装飾品、小物、写真などが展示されており、本棚には聞いたことがない作家の小説、漫画、R指定のエロ本(失礼)が並べられており、自由に読めるようになっていた。いま20年ぶりに読んでいる小説「存在に耐えられない軽さ」(集英社文庫)と同じ、訳の分からない世界が広がっていた。
物は試しだ。「白夜の天使」のような読みたい本はないか探したら、帚木蓬生「アフリカの瞳」(講談社、2004年刊)と「インターセックス」(集英社、2008年刊)が床の箱に無造作に置かれていた。値段は発刊当時のまま、それぞれ1,900円。
帚木氏は、昨年亡くなられた作家・加賀乙彦氏と同じ精神科医で好きな作家の一人だが、最近作は読んでおらず、安かったら購入しようと聞いたら、「いいえ、この箱に入っている本はお好きな方に差し上げています」とのことだった。これ幸いと頂くことにした。ただでは申し訳ないので、もう1杯ウイスキーを頼み、タイトルと帯に惹かれて「作家逃亡飯」(星海社、2020年刊)も頂くことにしたので、さらにもう1杯。〆て3杯2,100円(お勘定したら割り引いてもらった)。Amazonと比べればはるかに安い。
記事化することを申し入れたら、「結構ですが、店は3月いっぱいで閉めます。母の看病がありまして…」とのことで、3月7日(木)~3月25日(日)まで「百日紅夜市」と題するフィナーレ―イベントを行っている。多くの作家の作品が展示されるようだ。
◇ ◆ ◇
「作家逃亡飯」は、フライさんによるイラスト漫画が表紙で、歌番組に登場するような若い女性が描かれており、赤と黒の帯には白抜き文字で「星海社激怒。『こんな同人誌許さん!商業化してやる!』と挑発的な文字が踊り、前書きのあとのカルロ・ゼン著「作家軽飯」冒頭には「お願いごと 端的に結論から参りましょう。編集者並びに出版社の皆様、お読みになるのは此処までにしましょう。皆様がこの拙い同人誌から得られる情報に有益なものなど何一つありません」「煮詰まったルサンチマン、どうしようもない退廃、怠惰の極みである本著なぞ賢明にして聡明なる方々へどうしてご覧いただく必要があるでしょうか」「一般の皆様、このように拙い代物であることをご承知おきくださいませ。万が一にも編集者の方々に内容を問われた場合は、『読むだけ時間の無駄だと思います』と強く仰ってください」(15~16ページ)とある。そして、津田彷徨氏のあとがきには「太田が悪い。」と締めくくっている。太田とは、出版した星海社の太田克史氏のことのようだ。
強烈なブラックユーモア、アイロニーではあるが、最近の出版界の凋落ぶりを見ると、嘘を書くのが商売のお二人の作家は〝本当〟のことを言っているのではないかと思えてくる。
現実社会が狂っているからだ。〝ナチからの解放〟のために他国を侵略し、庶民が払う税金の10倍以上の金を受け取りながら、基本中の基本である「CAT=Compliance(コンプライアンス)・Accountability(アカウンタビリティ)・Traceability(トレーサビリティ)」を果たさない政治家がおり、その政治家に投票する愚民(投票行動を起こさない小生はクズ同然か)が多数派を占めているではないか。「存在に耐えられない軽さ」を読んでいるのは、1968年のソ連軍によるチェコスロヴァキア侵攻が舞台になっているからだ。
嘘が嘘でなくなり、虚と実があいまいになり、白と黒の垣根も取り払われ、生と死の意味も分からなくなる-生きづらい世の中になってきた。
軽井沢駅北口直結の商業施設 2026年春開業 三菱地所
「(仮称)軽井沢駅北口東側遊休地活用事業計画」
三菱地所は3月6日、軽井沢駅北口直結の「(仮称)軽井沢駅北口東側遊休地活用事業計画」の新築工事を3月1日に着手したと発表した。
しなの鉄道が所有し、1997年の北陸新幹線開業により廃線となった旧信越本線の線路跡地を活用するもので、敷地を同社が賃借して軽井沢駅自由通路直結の商業施設を開発、アクアイグニス、カルチュア・コンビニエンス・クラブが温浴施設や宿泊施設、飲食・物販店舗等を運営する。開業は2026年春の予定。
物件は、JR北陸新幹線・しなの鉄道軽井沢駅から徒歩1分、長野県北佐久郡軽井沢町に位置する敷地面積約13,000㎡、鉄骨造・平屋建て・2階建て6棟の延床面積約5,400㎡。用途は温浴施設・宿泊施設、飲食・物販店舗など。
天晴れ 大和ハウス・芳井社長&大東建託・竹内社長の即断即決 賃貸に関する災害協定
竹内氏(左)と芳井氏
大和ハウス工業と大東建託は3月5日、両社グループが管理する賃貸住宅約189万戸の平時・有事の協業・情報共有を推進し、地域の防災力向上と入居者の安心・安全の暮らしを提供する「災害における連携及び支援協定」を締結したと発表した。
協定の対象となるのは、大和リビングか管理する約65万戸、大東建託パートナーズが管理する約124万戸、合計189万戸で、平時では全国の賃貸住宅入居者のほか、オーナー、地域住民を対象としてAEDの講習や水災・火災のVR体験、消火訓練などの防災イベントを共同開催するなど、有事を想定した情報連携により、地域防災力の強化を図る。
震度6弱以上の地震の発生もしくは警戒レベル5「特別警報」が発令される有事の際には、両社グループで協議のうえ、共同対策本部を設置。被災地域の状況調査結果や空室情報、被災者支援策を共有することで、被害状況を把握し早期の災害復興に役立てるとともに、被災地域の賃貸住宅入居者の仮住まいを融通し合あう。
あわせて、大和ハウスグループのロイヤルホームセンターとも連携を図り、災害用備蓄品や復旧用資機材を必要に応じて供給し、大和ハウス工業の全国9か所の工場に移動式貯水タンクを設置し、有事の際、被災地域の賃貸住宅入居者に生活用水を配給する。
会見に臨んだ大和ハウス工業代表取締役社長・芳井敬一氏は協定締結の経緯について、「2018年の岡山水害の現場を見て、当社が施行した建物は何ともないのに隣は大きな被害を受けていたりその逆もあったりした。同じ被害であるのに、このような差が出るのか、1日も速く賃貸住宅の平和をとりもどせないかずっと考えてきた。そんな折、昨年、三井住友海上さんから大東建託さんの取り組みを紹介された。大東建託さんとはお会いしたいと考えていたので、竹内(社長)さんにお会いし、非常に素晴らしい、ぜひ進めましょうと即決していただいたのがスタート。(管理戸数)業界トップの大東建託さんと組むことは世の中に大きなインパクトを与える。いかに被災者の方々の笑顔を取り戻すかが協定締結の主旨。このような輪を広めていただきたい。トップ同士の決断が大事だということも分かった」などと話した。
大東建託代表取締役社長執行役員・竹内啓氏は、「当社グループはこれまで個社で平時の防災イベント・訓練を実施してきており、有事には被災地の状況調査、そしてオーナー、入居者様の支援策に取り組んできた。(昨年には)『大東建託グループ防災ビジョン2030』を策定した。ビジョンは『地域の“もしも”に寄り添う』という理念のもと、地域防災を平時と有事の両輪で支援し、当社グループ全体で災害時の地域の早期復興に寄与していくことを目指すもの。今回の連携によって、安心・安全により効果的な活動ができると考えている。両者の基盤をいかし、密に連携し迅速な対応を行っていく。地域全体の防災力の向上、地域住民の命と財産を守ることに少しでも貢献できればと考えている」と語った。
◇ ◆ ◇
両社から共同会見の案内を受け取ったときは、双方は敵ではないにしろ、オーナーを奪い合う競合関係にあるはずで、協定締結の意図は何なのかよく分からなかった。
しかし、この日(5日)、芳井氏と竹内氏の話を聞いて、疑問は氷解した。考えてみれば、公助はあてにできないことをみんな知っている。ましてや防災・防犯は個社の力でできるものではない。日ごろから地域全体の防災・防犯の取り組みを行っていくことが大事なことも分かっている。問題はだれがやるかだ。
それを両社は決断した。両社グループが管理する賃貸住宅は、全国の賃貸住宅約1,500万戸の12~13%にしか過ぎないと考えることもできるが、大変な数字だ。いかにこの種の取り組みが困難であるかの例を示す。。
マンションの管理計画が一定の基準を満たしていれば地方公共団体が認定する管理計画認定制度が令和4年度からスタートした。令和5年12月末時点で認定実績は378件(国土交通省が把握しているもの)しかない。全国のマンションストック約694万戸(2022年末時点)に対する戸数割合は示されていないが、0.3%程度と思われる。制度は遅々として進んでいない。
これとは別に、マンション管理状況を★5つで評価するマンション管理業協会のマンション適正管理評価制度がある。2023年12月末現在、登録件数は2,624件となっている。同協会は令和6年度末までに1万件の登録を目指している。
この1万件がどのような数字かについて、同協会副理事長・小佐野台氏(日本ハウズイング代表取締役社長CEO)は2023年6月の総会後の懇親会で「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割で達成できます」と呼び掛けた。これまた容易な数字ではない。
賃貸住宅は両社が管理しているから可能なのだろうが、芳井氏も話したようにトップダウンで即決即断したのが決め手ではないか。仕掛け人の芳井社長は元ラガーマンだが、最前線の押し合いへし合いのFWではなかった。確かBKで司令塔的な役割を果たしていたはずだ。今回の協定も賃貸市場を冷静に俯瞰し決断したはずだ。ラグビーは試合が終わればノーサイド。お互いが健闘を称えあう-そのようなスポーツマンシップが生かされたと記者は理解した。ボトムアップだったら途中で頓挫していた可能性が高い。両社長の決断に天晴れ!座布団5枚!
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会見で、大東建託は全国58拠点で18の自治体と防災協定を締結していることを知った。災害時に飲食料、防寒具などの災害支援物資の提供、帰宅困難者の一時的な受け入れ、災害時にガス・電力・水などのインフラの提供などだ。
マンションを避難ビルに指定したり、施設を帰宅困難者に提供したりする事例は聞いているが、これほど多くの拠点で自治体と協定を結んでいる企業は他にあるのか。
生活用水用の1000リットル入り貯水タンクを前に、左から大東建託取締役常務執行役員・守義浩氏、竹内氏、芳井氏、大和ハウス工業取締役常務執行役員 集合住宅事業本部長・出倉和人氏(大東建託は能登半島地震でも二缶セットで10回現地に運んだという)
大和ハウス ベトナム北部初の物流着工/三井不 米国初の物流2事業に参画
大和ハウス工業は3月4日、タイ王国で物流施設や工場の開発などを展開する最大手のWHA Corporation PCLが共同出資するベトナムの現地法人と、首都ハノイから東へ約40kmのフンイエン省「ミンクアン工業団地」内のマルチテナント型物流施設「DPL Vietnam Minh Quang」(平屋建て敷地面積約70,109㎡、延床面積約42,330㎡)を着工したと発表した。同社のベトナム北部での初の開発物件。
同社は、「第7次中期経営計画(2022年4月~2027年3月)」で、海外事業は2026年度には売上高1兆円、営業利益1,000億円を目指すとしており、ASEAN・東アジアでは売上高500億円を計画している。
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三井不動産は3月4日、米国子会社Mitsui Fudosan America, Inc.を通じ米国を代表する不動産開発・投資会社であるTishman Speyerと共同事業契約を 締結し、2事業へ出資したと発表した。同社初の米国物流施設事業に参画するもので、出資上限額は5億ドル(約680億円)。
2事業は、カリフォルニア州オレンジ郡アーヴァイン市に位置する「(仮称)Great Park Parcel 1」(延床面積約55,300㎡)と、カリフォルニア州サンフランシスコ市の既存物流倉庫を取得し、リニューアルする「(仮称)2225 Jerrold」。