「高尾」の再現なるか 湘南の流れ呼ぶか 大和ハウス「(仮称)プレミスト湘南辻堂」
「(仮称)プレミスト湘南辻堂」完成予想図
大和ハウス工業は1月25日、IoT技術とAI(人工頭脳)を活用したスマートウェルネスをテーマにした湘南エリア最大級の大規模マンション「(仮称)プレミスト湘南辻堂」(914戸)を着工し、今夏にモデルルームをオープンすると発表した。これまでにない商品企画で挑むことで、同社は「湘南に流れを作り、『高尾』の再現を目指す。3年間で売り切る」と自信を見せた。
物件は、JR東海道本線辻堂駅から徒歩9分、藤沢市羽鳥一丁目に位置するA敷地の14階建て404戸と、B敷地の13階建て510戸の全914戸。先行して着工するA敷地の専有面積は68.91~93.18㎡、価格は未定だが、最多価格帯は5,000万円台。坪単価は220万円台に収まる模様。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2018年12月。売主は同社と長谷工コーポ。管理は長谷工コミュニティ。
現地は、A敷地とB敷地を合わせ約3.5haのNTT社宅跡地。再開発によって街並みが一変した「湘南C-X(シークロス)」内の「テラスモール湘南」へ徒歩6分。
詳細なプランは未定だが、「湘南の自然と文化に包まれて、大人が自由に、豊かに、健康に暮らせる街づくり」をコンセプトに敷地南側を「湘南の海ゾーン」、敷地北側を「湘南の森ゾーン」とし、「湘南の海ソーン」には「フィットネスジム」のほか、「カフェラウンジ」「ライブラリー」「アトリエ」を設置する。「湘南の森ゾーン」には「アリーナ」や「BBQテラス」を配置、「茶室」、「山小屋」、「隠れ家」をモチーフとしたゲストルームを3戸用意する。
大きな特徴であるスマートウェルネスでは、ウェアラブルデバイス(衣服状リストバンド型で、身に着けて持ち歩くことができる)などを用いたIoT技術やAIと、同社グループのスポーツクラブNASが監修する運動メニュー提案などのソフトサービスを融合したヘルスプロモーションサービスを採用。同社グループが昨年8月オープンした「スポーツクラブNAS藤沢店」とも連携する。
このほか、余暇活動やコミュニティ形成などの支援サービスとして、入居者専用の会員組織を設立し、辻堂駅とマンション間でシャトルバスを運行する予定。
記者発表会に臨んだ同社東京本店マンション事業部事業部長・松岡康成氏や同事業第四課係長・二改隆広氏らは「「『プレミスト高尾』のように後背地の戸建て居住者の買い替え、買い増しが期待できるし、そのためにシャトルバスの運行も決めた。湘南に流れを引き込み、『高尾』のような連続即日完売を狙い、3年間で売り切りたい」と語った。
スマートウェルネス概念図
アリーナ
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最初に戸数を聞いたとき、正気の沙汰ではないと思った。いま関電不動産開発が分譲している全352戸の「シエリア湘南辻堂」は半年で約200戸を成約するなど極めて好調な売れ行きを見せてはいるが、その3倍近い。
しかし、ニュースリリースを読み、松岡氏らの話を聞くうちに〝ひょっとしたらいけるかもしれない〟と思うように変わった。それだけインパクトの大きいマンションになりそうだ。
その条件が揃った。立地条件が申し分ないことはいうまでもない。ここ数年、辻堂駅圏で分譲されたマンションも戸建ても極めてよく売れた。「テラスモール湘南」の効果は計り知れない。
ヘルスプロモーションサービスも大きな関心を呼ぶはずだ。詳細は未定だが、同社のロボット事業「ヒューマン・ケア事業」は業界でも最先端をいく。このマンションと連動するかどうかは分からないが、その知見は生かされるはずだ。
もう一つ、辻堂は、全416戸をわずか16カ月で完売した「プレミスト高尾サクラシティ」とよく似た特性を持つことだ。「高尾」の購入者の約4割がシニア層だったが、これは後背地の戸建て居住者の買い替え・買い増し需要を取り込んだためだ。「辻堂」も同じことがいえる。戸建て居住者の属性は「高尾」とほぼ同じと見た。収入・資産などに恵まれた人たちだろう。シャトルバスの運行も大正解。
価格が心配だったが、松岡氏は「関電さんと同じくらい」と話した。つまり坪単価は220万円台、高くても230万円台に抑制するようだ。これほどの商品企画なら子育て層の需要ももちろん期待できる。
記者団からは「郊外マンションが不振」などの質問が飛んだが、確かにこの1年間のマンション市場は変調をきたし、先行き不安もぬぐい切れない。
しかし、記者はしっかり造り込みをすれば郊外だって売れると見ている。販売力・ブランド力のあるデベロッパーはみんな腰が引けており、郊外を回避しているが、同社がその悪い流れを断ち切り、本来の流れに引き戻す可能性はあると見た。
ただ、いくら何でも3年間で完売までもっていくのは難しいような気がする。もし3年間で完売したら逆立ちはできないし頭も剃らないが、同社こそがマンションの雄と称賛したい。一つ提案だ。温泉はどうだろうか。売上げ4兆円を目指す企業だ。それくらいの負担はなんてことないはずだ。「辻堂ダイワロイヤル温泉」とでもすれば大ヒット間違いなしだ。
アトリエ
ゲストルーム(茶室)
三菱地所 「白金二丁目」のマンションに鮮魚サービス CSN社と資本提携
「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」完成予想図
三菱地所は1月23日、〝羽田市場「超速鮮魚®」〟を運営するCSN地方創生ネットワークへ出資し、第三者割当増資を引受けるとともに同社と包括協定を締結致したと発表。その第一弾プロジェクトとして、3月下旬から販売開始する三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」で鮮魚宅配サービスを導入する。
CSN社は、羽田空港内に「羽田鮮魚センター」を有するベンチャー企業。全国で水揚げされた鮮魚を漁師から直接仕入れ、空輸で集約して加工仕分けを行い、最速のルートで国内外の飲食店、小売店、個人宅へ配送する新たな流通サービス〝羽田市場「超速鮮魚®」〟を運営している。また、漁港や漁師の情報が見えるトレーサビリティを業界に先駆けて実践している。
三菱地所グループは、同社グループで分譲するマンションへの宅配サービスや、当社グループで運営管理を行っている商業施設の飲食店舗・ロイヤルパークホテルズへの卸しなど、既存事業領域での連携や新事業領域での連携も視野に入れ、順次CSN社との協業を進めていく。
「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」は、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩5分、免震の27階建て全172 戸。
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高級マンションではホテル、飲食店、本屋、クリニックなどと提携して様々なサービスを行う物件は少なくないが、鮮魚の宅配サービスを行うというのは初めて聞いた。
販促につながるかどうか分からないが、ニーズはあると思う。先日、田舎からカキを送ってもらったが、おいしくて安かった。
これぞ正統派の億ション 話題の東急不動産「ブランズ ザ・ハウス一番町」竣工
「ブランズ ザ・ハウス一番町」
〝すごい〟と業界でも話題になっていた東急不動産の最高峰マンション「ブランズ ザ・ハウス一番町」が完成し、1月23日、報道陣に公開された。噂にたがわず、徹底して本物志向にこだわった正統派億ションだ。坪単価は770万円、平均3億円という価格は同社の〝ブランズ〟として過去最高。
物件は、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅から徒歩3分、千代田区一番町に位置する免震構造の12階建て全56戸(事業協力者住戸8戸含む)。価格は1億8,000万円台から5億7,000万円。設計は日建ハウジングシステム。共用・外観デザイン監修はエイ・ディ・エイ。施工は清水建設。昨春から分譲開始され、9月までに完売した。
現地は、番町のなかでももっとも地位が高いとされる一番町に立地。英国大使館、千鳥ヶ淵までも徒歩数分。
共用・外観デザイン監修に同社の「東急ハーヴェストクラブ」などを多く手掛けるエイ・ディ・エイを起用。シンメトリーやフレームワークによる構成美を演出。このほか、照明デザインは近田玲子氏が手掛け、1階ロビーの花台には池坊専好氏による生け花を配置。サロンには三代秀石・堀口徹氏監修の江戸切子を壁面に飾り、庭園には造園植治次期十二代・小川勝章氏のアドバイスを受けて既存のケヤキ、モミジ、石などを活用している。
池坊による生け花
サロン
モデルルーム
モデルルーム
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ずっと見たいと思っていたマンションだ。分譲を開始した当初から業界でも話題になっていた。その後、番町界隈でいくつかのマンションが分譲されているが、この物件がメルクマークになっているはずだ。
とにかく基本性能、設備仕様レベルが高い。階高は4m確保し、リビング天井高は最高3.1m、そのほかは廊下、キッチンなども含め2.8mで統一。建具・面材はサペリ、カリマンタンエボニーなどの突板銘木や自然石がふんだんに用いられている。共用部分の壁、天井などは全てマホガニー。壁はカナディアンポリクロームなどの御影石を仕上げによって異なる表情にしている。
サロンに置いてある小さなテーブルに触ろうとしたら、関係者から「触らないで」と注意された。「オペラ」というイタリア家具メーカー製だそうで、値段を聞いたら数十万円でも買えないという。ソファーは本皮にエイの型押し文様が付いていた。庭にある蹲は京都にあった建築物の土台に使われていたものだそうだ。
ことほど左様にすべてが富裕層(どんな人かはしらないが、買い増し層が圧倒的に多いとか)の心をくすぐるものばかりだった。その豪華さを誇らない、むしろ控えめな演出に舌を巻くしかなかった。たぶん本物のお金持ちはこのようなデザインを好むのだろう。それだけは記者もわかる。
バブル期の同社のブランド〝プレステージュ〟にはこのレベルの物件は供給されたことがあるだろうか。
蹲
庭
人気は全国区 坪600万円でも圧倒的人気 三井レジ「パークコート浜離宮ザ・タワー」
「パークコート浜離宮ザ・タワー」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが分譲中の37階建て再開発免震タワーマンション「パークコート浜離宮ザ・タワー」を見学した。昨秋から分譲されており、わずか4カ月で販売戸数331戸のうち第1期199戸が分譲済みとなるなど圧倒的な人気を呼んでいる。浜離宮が眼下に見下ろせる立地条件のよさと、再開発ビッグプロジェクトが目白押しの周辺地区の将来性・資産性が評価されている。パンフレットは印刷物でなくタブレットというのは業界初の試み。
物件は、JR山手線浜松町駅から徒歩5分(このほか大門駅、御成門駅、汐留駅、新橋駅が徒歩圏)、港区浜松町1丁目に位置する37階建て563戸(販売戸数331戸、事業協力者戸数232戸含む、他に店舗3戸、事務所6戸)。2月分譲予定の第2期(戸数未定)の専有面積は42.36~119.16㎡、予定価格は6,350万~32,000万円(最多価格帯15,300万円台)。坪単価600万円で、浜離宮に面した東側住戸は坪700万円以上。竣工予定は平成31年7月下旬。施工は清水建設。
現地は、浜松町が最寄り駅だが、大門、御成門、汐留駅も徒歩10分圏内で、新橋駅も徒歩12分。5駅が利用できるうえ、東側の道路と山手線の線路を挟んで広大な浜離宮恩賜公園が広がる立地が最大の特徴。
住戸プランは、ワイドスパン、天井高2500ミリ、バックカウンター・吊戸棚、天井カセットエアコン付き。浴槽カウンターは御影石。
昨年9月から事前案内会が開始され、昨年末まで第1期199戸がほとんど契約・申し込み済み。来場者は約1,800件。港区居住者が中心だが、地方も10%以上ある。
物件の北側がすぐ汐留シオサイトで、周辺に浜松町二丁目(2.8ha、世界貿易センタービル、JR東日本、東京モノレール、国際興業)、竹橋地区(1.5ha、東急不動産、鹿島建設)、芝浦一丁目(4.3ha、野村不動産ホールディングス)、新橋駅西口(2.8ha、野村不動産、NTT都市開発)などのビッグプロジェクトが目白押しであることも評価されている。
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昨年から取材を申し込んでいたのだが、お客さん対応が大変という理由などから今回になった。人気にはなると想像していたが、まさかここまで売れているとは思わなかった。販売事務所副所長・大門正哉氏も同様で、「予想外の売れ行き」だと話す。
山手線とはいえポテンシャルがいま一つの「浜松町」で坪単価が600万円もし、6割以上が億ションになるのにどうしてこんなに人気が高いのか。大門氏は面白いことを言った。
「一昨年、坪600万円の『目黒』が人気になりました。『目黒』は品川区です。ここは港区。しかも再開発計画が目白押し。このあたりをお客さんが評価されているようです」
港区には総所得から様々な控除額を除いた課税標準額1,000万円以上の層が平成28年の段階で約2万人、全納税者に占める割合は14.7%もある。桁違いのお金持ちが自ら居住はもちろん、資産・セカンドハウスとして取得しようと考えるのはよくわかる。浜離宮が眼下に見下ろせるマンションはそうない。対面にある2002年竣工の「東京ツインパークス」も圧倒的な人気となった。坪単価は当時から倍になった。
34階相当の東側の眺望
浜離宮テラス
三井ホーム 分譲マンション並みの高遮音床開発 賃貸に標準仕様
イメージ図
三井ホームは1月19日、木造住宅高遮音床仕様「Mute50」を開発し、同日から賃貸住宅標準仕様としたと発表した。
「Mute50」は、重量衝撃音(LH)、軽量衝撃音(LL)を一般的な鉄骨住宅の床遮音仕様(ALC厚100㎜相当)と比べ約3 分の1に軽減する「L-50」の床遮音性能を実現。入居者の上下階の騒音ストレスを大幅に軽減。木造でありながら一般的に遮音性能に優れるとされるスラブ厚270mm相当のRC造マンションに匹敵する遮音性能を実現した。
住宅入居者の不満の中で、上下階などからの騒音に対する不満の声がもっとも高く、民間調査機関の調べでも46.1%の入居者が不満を抱いており、住宅の遮音性向上は居住者の満足度を高める重要なポイントとなっていることに対応したもの。
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結構なことだ。賃貸マンションはあまり取材したことがないが、分譲マンションと比べあらゆる点で基本性能は劣っている。その割に賃料が高く、これが賃貸脱出⇒分譲マンションの流れを加速させている。
「L-50」だが、これでもLL値は「上階の生活音が意識される」性能だ。分譲マンションではまれにだが「L-40」(数値が低いほど遮音性能が高い。L-40はLL値でほとんど聞こえない)も供給されている。同社にはさらに高い性能を目指していただきたい。
昨日は、人が歩くとけたたましく鶯が鳴く「鴬張り」の床を取材した。音の問題は難しい。
総合地所 初のコンパクト「ルネモア北千住」 〝売れる要件〟揃い好調
「ルネモア北千住」
総合地所は1月17日、同社初のコンパクトマンション「ルネモア北千住」(57戸)の記者見学会を行った。用地を取得した当初はファミリーマンションを企画していたが、建築費の高騰、恵まれた立地条件などを考えコンパクトに変更したもの。これまで供給した第1期48戸のうち38戸を成約するなど好調な売れ行きを見せている。
物件は、東京メトロ千代田線・日比谷線北千住駅から徒歩5分、足立区千住仲町に位置する14階建て全57戸(事業協力者住戸3戸含む)。専有面積は33.12~58.35㎡、価格は2,600万円台~5,100万円台(最多価格帯2,900万円台)、坪単価286万円。建物は平成28年10月に完成済み。施工は合田工務店。販売代理は住友不動産販売。
昨年11月下旬に第1期48戸を供給、これまで38戸が成約済み。来場者は約150件で、年齢は40歳代が32%、30歳代が31%、現居住地は足立区が約半数、家族構成は1人が6割、年収は500万円台が約3割、400万円台が約2割。購入者は男性が3割、女性が7割。女性の自己資金は900万円~1,000万円が約2割。
「モア(MOI)」は、フランス語で「私(ワタシ)」の意味。「ルネモア」は、時間の価値に配慮して、通勤時間の短縮と私的時間の創出の願いを込めた造語。
現地はインターロッキング舗装の商店街にあり、建物は全戸南向き。用途地域は商業・近隣商業だが、敷地の南側は戸建てが建ち並び、かなり細分化されているため高い建物が建つ可能性が低いエリア。
商品企画では、ワイドスパン、トリプルセキュリティ、二重床・二重天井、食洗機、物干しリールなど-「機能的な空間が欲しい」「安心のセキュリティが欲しい」「個性的なくつろぎ空間が欲しい」などのニーズに応えているのが特徴。
モデルルーム1LDK
◇ ◆ ◇
弊社の入社2年目の郊外の昭和を代表する素晴らしい戸建てに親と一緒に住んでいる女性が、一人で住む必須要件を次のようにあげた。
「家賃(価格)は高そうだけど、なるだけ駅に近いこと。自然があること。スーパーやコンビニがあること。治安がいいこと」
記者はコンパクトマンションを20年くらい取材してきたが、この女性はその必須要件をすべて即座に言い当てた。
このマンションもこれらの要件をほとんど満たしている。取材の行きに通った裏道はひどかったが、帰りに通った商店街はインターロッキング舗装で、まずほとんどの生活用品が買える。駅前には大規模商業施設がある。足りないのは自然だけだ。
住戸プランも申し分ない。33㎡の1LDKは間口が約4.6メートルあり、天井高は約2.5m。床暖房、二重床、食洗機が標準装備、約3.3畳大の寝室には物干しリールが付いている。トイレは広めで独立。1階にはペットの足洗い場や管理・来客用トイレ、防災備蓄倉庫もある。
これに続く第2弾、第3弾は未定とのことだが、引き続きレベルの高いものを供給してほしい。
一つ付け加えると、なかなかのスグレモノは物干しリールだ。初めて見たのだが、物干しポールより安価で値段は数千円もしないはずだ。
寝室の壁際に設置されており、巻き尺のようにスルスルと伸び、等間隔にハンガーがかけられる穴が開いており、もう一方の壁にくっつけると物干し竿になる代物だ。ここに赤やらピンクやらの洗濯物を万国旗のようにぶら下げて寝るのはどんな気持ちだろう。想像するだけで楽しくなってくる。荷重は5キロまで、懸垂はできないのが難点だ。
モデルルーム2LDK
コスモスイニシア リノベ新シリーズ「INITIA ID」もなかなかいいデザイン
「INITIA ID」キッチン
コスモスイニシアのリノベーションブランド「&Renovation」シリーズの一つ「INITIA ID」を冠したマンション「元麻布」を見学した。ホテルやカフェなどの空間設計を手掛けるトランジットジェネラルオフィスとコラボし、デザイナーズホテルのような空間を提案しているのが特徴だ。
物件は、東京メトロ南北線麻布十番駅から徒歩7分、日比谷線六本木駅から徒歩10分、港区元麻布1-1-18に位置する「秀和元麻布レジデンス」の4階部分。建物は昭和62年竣工。専有面積は94.43㎡、価格は10,400万円(坪単価364万円)。2016年11月にリフォーム済み。
現地は、暗闇坂のヒルトップで、オーストリア大使館と大法寺に隣接。「ドムス元麻布」に近接し、道路を挟んだ対面では大手デベロッパーのマンションが建設中。
分譲住戸は、旧耐震で壁工法のため躯体をいじれない難点はあるが、ホテルライクなデザインを採用し、オリジナルのバスローブ、タオル、プロのアート写真がプレゼントされるほか、インテリアコーディネーターが選んだ家具なども選択できるようにしているのが特徴。
物件は耐震診断を実施済みで、耐震診断基準であるis値は倒壊、または崩壊する危険性が低いとされる0.6以上となっている。
ホームページに公開する前段階ですでに数件の反響があるという。
同じ「INITIA ID」は、「パーク・ノヴァ目黒不動」(68㎡、6,800万円)も分譲する。
リビングルーム
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「INITIA ID」は、昨秋見学した50~60歳代の夫婦二人暮し向けの「INITIA WiZ(イニシア ウィズ)」に次ぐ第2弾だが、記者はデザインにほれ込んだ。
正直に言えば、見学する前は大した期待はしていなかった。「秀和」のマンションであることがわかっていたからだ。「秀和」は一部の人には人気はあるようだが、記者はあの南欧風の塗り壁の外壁、青の瓦屋根、ロートアイアンのデザインが好きではない。
実際の建物は「秀和」らしくないタイル張りだったので肩透かしを食ったのだが、共用部分と団地サイズの玄関ドアまでは昭和50年代の仕様だった。〝やっぱり〟と思ったのだが、玄関を開けてびっくり〝玉手箱〟。
いきなり大きなアイランドキッチンとその背後の天然石の壁、得も言われぬ青の収納扉が目に飛び込んできた。
キッチンはみんな隠したがるが、ここは逆だ。この意表を突く発想がとても面白い。V型の張り出し窓に合わせるようにキッチンも「く」形にし、家具の一つのように見せる演出を行い、続くダイニングは来客などと語り合うスペースとして提案している。
担当者によると、壁は「琉球岩石」で、収納扉は「スモークブルー」だそうだ。その他の設えもプチホテルのようで記者は気に入った。
価格はどうか。対面に建つマンションについて「坪1,000万円ですかね」「いえ、そんなに高くないのでは」などと同社の広報担当Mさんと話し合ったあとで、物件担当者から「坪単価1,000万円を超えるそうですよ」と聞かされた。
坪1,000万円超には驚いたが、ならば旧耐震とはいえ「元麻布」の「秀和」のリノベーションマンションが坪364万円というのは安いか。「ドムス元麻布」は中古価格で坪400万円だそうだ。
「秀和」についても一言。この会社のことを覚えている人は業界でも少なくなったはずだが、記者はよく覚えている。
同社は昭和50年代の後半からほとんどマンションを供給しなくなり、ビルや株投資に傾注した。昭和57年竣工の「芝パークビル」はその威容から「軍艦ビル」と呼ばれ、同社の力を見せつけた。港区新川などでは大手デベロッパーやゼネコンと土地の争奪戦を演じた。創業社長の小林茂氏は大京の横山修二氏とともに〝独立系〟の旗頭として業界に君臨した。
ところが、平成2年のバブル崩壊で雲行きが怪しくなり、経営が行き詰まった。その後、再建策を模索したが平成17年、外資に買収された。小林氏とはバブル崩壊後会う機会はなく、平成23年に亡くなったのも知らなかった。
バスローブとタオルがプレゼントされる(左)とリビング
ベッドルーム
コスモスイニシア、子育てを終えた夫婦向けリノベ「INITIA WiZ(イニシア ウィズ)」(2016/11/18)
三菱地所レジ 1棟リノベ「ザ・パークリモア 白金台三丁目」は全14戸が200㎡超
「ザ・パークリモア 白金台三丁目」外観
三菱地所レジデンスは1月16日、一棟リノベーション事業のブランド名を「ザ・パークリモア」に決定し、その第一弾「ザ・パークリモア 白金台三丁目」のモデルルームを1月21日公開すると発表した。
第一弾「ザ・パークリモア 白金台三丁目」は、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩4分、港区白金台3丁目に位置する4階建て全14戸。専有面積は214.57~267.05㎡、第1期(5戸)の価格は28,800万~42,400万円。既存建物竣工は1987年(昭和62年)8月。施工は長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)。リノベーション設計は南條設計室 一級建築士事務所。リノベーション施工はケーアンドイー(共用部)、パナソニックES建設エンジニアリング株式会社(専有部)。引き渡しは2017年3月中旬。
従前は主に外国人向け賃貸として利用されてきたもので、全戸200㎡超。同社は2015年3月に取得、2016年3月までに全戸退去したのち工事を進めてきた。
外観・中庭などの大規模改修を行い、Wオートロック、ゲート、宅配ロッカーなどを新たに設置し、セントラル空調システムを個別空調に更新したほか、ペアガラスの設置、ノンフロン断熱、二重床、エネファームなどを採用して省エネ性能の向上を図った。
同社リノベーション事業部開発第一グループ長・田中正祥氏は、「バブル期の典型的な高級マンションで、同じような物件の更新期に入る。この物件はその嚆矢となるもの。バブル仕様のいいところを残しながら、当社の新築マンションのノウハウを注ぎ、基本性能を上げた」と話した。
同社は2014年4月、「リノベーション事業部」を新設。一戸単位での事業とともに、今回一棟リノベーションマンションについても本格展開することにした。ブランド名には「renovation+more=もっと確かに、もっと価値があるリノベーション」という意味が込められている。
今後、年間約100億の売上高を目標とし、将来的には年間約500~600戸(一棟含む)、売上高200億円を目標としていく。
モデルルーム リビング
◇ ◆ ◇
建物が竣工した昭和62年はバブルが発生して間もないころで、その後、バブルが崩壊する平成2年まで価格が暴騰した。所有権分譲なら坪単価は2,000万円をはるかに突破していたはずだ。施工を担当した長谷川工務店は外国人向けマンションにも注力していた。この物件も極めてレベルの高い物件だったのは間違いない。
リノベーション後のモデルルームは約216㎡(約65坪)。大理石、御影石、オバンコール、クォーツストーンなどがふんだんに用いられ、パウダールームが2カ所、ゲスト用のトイレ、浴室には今は珍しいタオルウォーマーもついていた。
当時の階高は3150ミリ、スラブ厚は200ミリで、新たにふところ厚130ミリの二重床にしてもリビング天井高は262ミリ確保できている。
坪単価は500万円台から600万円台で、いまの新築の相場と比較すれば割安感があるが、グロスが張るのでどのような富裕層が買うか記者は分からない。このほか管理費が約14万円から16万円、一括修繕積立金が300万円前後、駐車場使用料が29,000円から48,000円。
洗面室
断熱吹き増し後リビング
東急不動産 埼玉初の総合病院との一体開発「ブランズ川口元郷」 好調スタート
「ブランズ川口元郷」完成予想図
東急不動産が分譲中の「ブランズ川口元郷」を見学した。同社が川口駅圏で分譲する16棟目のマンションで、「川口工業総合病院」の建て替えに伴うプロジェクト。総合病院との一体開発は埼玉県初で、高齢者等配慮対策等級の最高等級5を取得したプランも選べる。
物件は、埼玉高速鉄道川口元郷駅から徒歩5分、埼玉県川口市青木1丁目に位置する19階建て全119戸。専有面積は72.75~94.21㎡、第2期(7戸)の予定価格は4,200万円台~6,500万円台。坪単価は205万円。設計はGA建築設計社。施工は埼玉建興。竣工予定は2018年2月上旬。
昨年12月から分譲開始し、これまで第1期50戸のうち44戸が成約済み。好調なスタートを切った。
敷地は、川口工業総合病院が建っていたところで、同病院は隣接する前駐車場に移転し、マンション内に設置する病院関連施設を同病院が保有・運営する。
商品企画では、共用部・専有部では住宅性能表示の高齢者等配慮対策等級3を取得しており、さらに専有部ではセレクトプランを選択すれば、高齢者の安全な移動や介助用車いす使用者のサポートを容易にする最高等級5を備えた仕様にすることができる。
このほか、「埼玉県子育て応援マンション認定制度」を取得している。
販売を担当している同社マンションギャラリーチーフ・菅谷智氏は、「病院が併設されることについては、救急車の音を気にされる方などネガティブな評価もあるが、総じてポジティブに捉えられている。販売状況としては極めて順調。京浜東北線や都内の価格が上昇していることから、集客は地元川口中心ではあるが、都内中広域へと広がりつつある。シニアの需要も取り込めている」と話している。
散策路
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同社はこれまで川口駅圏で15棟、JVを含め2,000戸以上を供給しているが、この物件は代表的な物件の一つになりそうだ。
高齢者等配慮対策等級の最高等級5が選べるプランがいい。一般プランでは5.5畳大となっている洋室の部分に洗面室と浴室を設置。洗面室は介助者のサポートが容易にできるように回転スペース1500 Øを確保し、浴室のドアは引き戸を採用。トイレを含む全てのドアは800ミリ以上にしている。
このように車いす利用を想定したマンションはシニア向けはともかくとしても極めて珍しい。どんどん供給してほしい。
細かな点では、インブルームが監修した収納提案もなかなかいい。
モデルルーム
◇ ◆ ◇
面白いやり取りがあった。物件説明を受けたのは菅谷氏で、同社広報マンのT氏と新人と思われる広報マンM氏が同席した。M氏とは初めてお会いするので名刺交換した。北海道生まれの23歳で、とてもかわいかった。
菅谷氏は、この川口駅圏で約7年間にわたり同社の物件を担当しており、記者が見学した「イーストゲートタワー川口」「サウスゲートタワー川口」「ブランズ川口栄町パークフロント」のほか、「浦和美園」「淵野辺」などのプロジェクトにかかわっている大ベテラン。川口のことは「路地裏まですべて知っている」そうだ。
そこで、「キューポラはもうなくなったでしょうね」と聞いたら「まだ残っていますよ」ということだったので、意地悪な質問であるのを承知の上でMさんに話を振った。
「Mさん、キューポラって知っていますか? 吉永小百合さんは? 」「ええ、キュープラなら。吉永小百合さんも名前だけは存じ上げています」「えっ、キュープラ? キュープラって何ですか」
ここでT広報マンが助け舟。「キュープラは当社のキュープラザ原宿のことです」「なるほど。Mさん、平成生まれだから知らないはずですよね。知っているのはサイロですよね」「…わたし、生まれは北海道でも、育ちは東京ですので…」(サイロも知らないということか)
昭和は遠くなった。
モデルルーム
住宅地、中古マンションとも価格上昇維持 野村不動産アーバンネット調査
野村不動産アーバンネットは1月13日、四半期ごとに定点観測している「住宅地価格動向」「中古マンション価格動向」の結果をまとめ発表した。
2017年1月1日時点の価格は住宅地、中古マンションとも全エリア平均変動率はプラスとなり、2013年7月調査以来連続してプラスを維持した。
住宅地の価格変動率は、首都圏エリア平均で0.3%(前回0.1%)となり、2016年平均の変動率は1.2%となった。
中古マンションの価格変動率は、首都圏エリア平均で0.3%(前回0.1%)となり、2016年平均の変動率は1.1%となった。