「指名買い増えた」ブランド力じわり浸透 売上、経常は過去最高 ポラス 2018年3月期
中内氏
ポラスグループは6月28日、2018年3月期の決算説明会・記者懇親会を行った。売上高は1,995億円(前期比103.2%)、営業利益122億円(同92.4%)、経常利益148億円(同107.3%)、純利益42億円(同116.8%)となり、2期連続で増収経常増益を達成し、売上高、経常利益、純利益は過去最高となった。
契約棟数は分譲住宅が2,300棟(同103.7%)、注文住宅が683棟(同84.6%)、マンションが256戸(同100.8%)で、その他賃貸などを含めた合計は3,313棟・戸(同96.8%)。分譲住宅は6年連続で2,000棟を超え、マンション売上高が100億円を突破した。
このほか、プレカット事業は、佐賀工場の稼働で国内5工場体制となり、ロボット導入など生産性向上や非木造住宅の市場も開拓した効果もあり、構造材生産坪数が過去最高を更新した。
説明会に臨んだポラスグループ代表・中内晃次郎氏は、「『西大宮』『浦和美園』など大型かつ特徴的な街づくり提案が市場の支持を得たほか、独自の耐震技術やデザイン提案で大型木造施設建築の受注を拡大し、プレカット佐賀工場の稼働や生産性向上を進めた結果」と、好調な業績の要因について話した。
2019年度は売上高2,050億円、経常利益170億円を目指す。京葉地区での注文住宅の単独展示場を船橋に、柏に新規出展する。浦和美園、西大宮地区では戸建てとマンションの複合開発を拡大する。
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いつも感心するのだが、同社グループは商圏とする都内の練馬、板橋、北、足立、葛飾、江戸川、墨田、江東各区や、さいたま・越谷・松戸エリアの36行政区のマーケットを把握している。自社で詳細な市場を把握し分析しているところは戸建て事業会社では同社だけかもしれない。
2017年度の分譲市場着工戸数は22,025棟で、同社グループは2,439棟で、実に11.1%を占める。本拠地の越谷エリアでは18%くらいに達している。
この市場調査能力の高さが、分譲住宅の価格が市場価格より500万円前後高いにも関わらず確実に伸ばし、シェアを拡大させている要因の一つだろうと思う。
記者が注目したのは、中央住宅社長・品川典久氏やポラス コミュニケーション部マーケテイング部長・伊藤賀一氏が「指名買いの増加が特徴」と、全体として反響はそれほど伸びていないが、来場者に占める成約率の高さを強調したことだ。
配布された決算単短信には「『ルピアコート川口戸塚』(全200戸)が、来場からの契約歩留まり28.9%と販売好調を維持し完売」とある。驚異的な数字だ。
両氏はなぜそうなったかについて具体的に語ったわけではないが、戸建てでいえばリビング天井高を2.7m確保し、外構をしっかり造りこみ、挽き板など木のぬくもりをふんだんに盛り込む商品企画が突出しており、マンションでは「ピアキッチン」その他の設備仕様レベルが総じて高いからだ。
さらに言えば、経営理念がしっかりしており、地域密着、農耕型経営、コミュニティ重視の街づくりなどが本拠地エリアだけでなくその周辺部にじわじわと浸透しているからだといえる。(浦和レッズのスポンサー契約は本業にどれほどの効果があるかは今度聞いてみよう)
そのことを証明するかの発言を品川氏自身が行った。「『宮前平』のマンションだけは売れ行きが悪い」と話したのだ。戸数は33戸で、価格的には相場並みということのようだ。
ひねくれ者の記者はこの発言に刺激された。「川口戸塚」では歩留まりが30%近くに達し、好調裡に完売したのになぜピアキッチンを盛り込んだ人気沿線のマンションが売れないのか-神奈川県で同社がマンションを分譲するのは初めてでブランド力がないと言ってしまえばそれまでだが、果たしてそれだけか。その要因を探れば同社の課題も見えてくるはずだ。近く見学してレポートしたい。
同社には注文もある。報道陣から「郊外マンションは売れないのか」という質問に対して品川氏は「駅に近いのはそうでもないが、遠いのは売れない」と話した。
その通りかもしれない。しかし、それでは同社の戸建ては駅に近いか。徒歩10分圏内の戸数比率は30%もないのではないか。それなのに年間2,000棟を成約している。
〝駅近〟一色の市場をこのまま放置すれば、間違いなく大手にほとんどすべてを握られる。資金力があり、ブランド力がある大手に対抗するには商品企画以外ありえない。同社だったらできると記者は思っている。
そもそも〝駅近〟はデマゴーグとまでは言わないが、一部の腕力のあるデベロッパーの極めて巧妙な世論誘導ではないか。それに乗っかったマスコミも悪いし、便乗しようとする中堅デベロッパーは自分の首を絞めるようなものだといったら失礼か。
マンションは〝駅近〟しか売れず、マンションと同等の市場規模がある戸建ては〝駅遠〟でも売れるのか-これにまともに答えられる人などいないはずだ。
駅から多少遠くても売れるマンションをつくるのがプロではないか。日照が確保されず、交通事故の心配が高く、空気も悪く、嫌悪施設だらけの犯罪の温床にもなりかねない、緑もない、しかも価格が高いそんな子育てに最悪の〝駅近〟マンションに、お金持ちならいざ知らず、生きるのに精いっぱいの庶民までが雪崩れ込もうとしている悲しい現象に歯止めをかけなければならない。国の責任も重い。
品川氏からはいいことも聞いた。自前のマンション販売部隊を立ち上げる計画があるという。今後年間300~400戸を供給するのであれば、直接お客さんから声を聞くことが大事だと思う。これは絶対必要だ。
木崎さん
決算説明会のあとで、同社グループの新入社員で2016年度から浦和レッドダイヤモンズレディース の選手として活躍している木﨑あおいさん(20)が紹介された。埼玉県出身で、ポジションはMF。背番号13。同社広報に勤務する長嶋洸さんの後輩。(羨ましい。どうして同社の野球選手は紹介されないのか。この前、アラフィフの3人トリオが大活躍した)
待つわ〟ピアキッチン4割に設置 レベル高いが一層の差別化を ポラス「浦和美園」(2018/6/2)
野村不パートナーズと野村不リフォームが合併 マンション専有部リフォーム強化
野村不動産ホールディングスは5月29日、同社グループのビル・マンションなどの運営管理事業を展開する野村不動産パートナーズとマンションや戸建てのリフォーム事業が中心の野村不動産リフォームを8月1日付で合併すると発表した。存続会社は野村不動産パートナーズで、社長には福田明弘氏が就任する。
合併により野村不動産リフォームが提供してきた専有部のリフォーム事業を備えることとなる。
2017年3月期の売上高は野村不動産パートナーズが786億円、野村不動産リフォームが34億円。
三井不動産 横浜DeNAベイスターズとスポンサー契約
三井不動産が展開するポスター
三井不動産は5月17日、横浜DeNA ベイスターズと2018年度のスポンサー契約を締結したと発表した。
スポンサー契約を通じ、ベイスターズの地元、神奈川県で運営する大型商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと横浜、ららぽーと湘南平塚、ららぽーと海老名、ラゾーナ川崎、三井アウトレットパーク横浜ベイサイド」で様々なプレゼントキャンペーン・イベントを実施し、ららぽーと・ラゾーナの公式通販サイト「三井ショッピングパーク&mall (アンドモール)」 でも販売キャンペーンなどを企画していく。
その先駆けとして、6 月7日(木)に行われるベイスターズ対埼玉西武ライオンズ戦を冠試合「三井ショッピングパーク ららぽーと&mall ナイター」として開催し、三井ショッピングパーク会員を対象に総計50組100名を招待する抽選・プレゼントキャンペーンを実施する。
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このニュースは、ベイスターズファンの業界紙記者からもたらされた。西武ファンの記者は一瞬、西武ライオンズの間違いではないかと思ったが、まさかそんなすぐばれる嘘をその記者が言うはずないと納得せざるを得なかった。
実は昨日、三井不動産の菰田正信社長に「菰田さんはプロ野球のどこのファンですか」と聞いたが、「公表は差し控えさせていただきます」と返された。なるほど、これが伏線だったのか、まさか…。個人的な趣向とビジネスを混同する菰田氏ではないはずだし、ベイスターズファンの三菱地所・吉田社長と手を握る策略でもないと考える…。
ニュース・リリースを読んで再度なるほどと理解した。強かな計算に基づくスポンサー契約だ。ベイスターズは商売上手でフォン拡大に力を入れているし、地元の有力企業にもかなり食い込んでいるとも聞く。肝心の成績も〝万年Bクラス〟から脱しつつある。昨年はどこでどう間違ったのか、土壇場で読売巨人軍を蹴飛ばし、アンチ巨人を歓喜させる2位に浮上したではないか。
まあ、セ・リーグはどうでもいいのだが、やっぱり三井が西武でなくベイスターズを選択したのは悔しい。その記者は「三菱地所の吉田社長はベイスターズファンであることを公言している。〇〇氏や△△氏…もファン」などと業界では知られた記者とは真逆のひねくれ者を何人かメールに書き連ね、追い打ちをかけてきた。
わが69歳は、熱烈な60年来の西武ファンであることをあちこちでしゃべってはいるが、同じ西武ファンの業界人はごく少数しか知らない。
言い返せないので、「みんな小物。わが西武は吉永小百合さん。ベイスターズにはそんな大物はいるのか」とメールで言い返してやった。するとその記者は「吉永さんに比肩する人はいないですね。桂歌丸さんが限界です」と降参した。ガハハハハ。歌丸さんには失礼だが、わが西武とベイスターズは格が違う。戦歴がまるで大人と子どもだ。一緒にしないでほしい。頭が高い。
しかし、三井も三井だ。どうして西武相手の交流戦を冠試合にするのか。不動産事業が弱い西武鉄道に対する挑戦状か。あれだけお世話になった吉永さんと縁を切るつもりか。ならば受けてやろうじゃないか。西武が3連勝か、最悪でも2勝1敗だろうから、もう勝ったつもりで憐みの目で冷ややかに観戦してやろう。
ベイスターズの皆さん、これで有頂天になってはいけない。契約が「2018年度」になっていることに注目すべきだ。つまり1年契約。未来永劫、ベイスターズを応援するとは三井は言っていない。今年ベイスターズが低迷したら、来年は三井は西武に乗り替えるのではないか。変わり身が速いのが三井だ。埼玉にだって新三郷、富士見、入間、川口、春日部、さいたまに商業施設がある。数では神奈川に負けない。西武とベイスターズが日本シリーズで対決したらどうするのか。西武が優勝したらバーゲンセールをやるのではないのか。こそっと「三井は状況によって他のチームを応援することもありうる」などといった特約を潜り込ませているのではないか。
それにしても契約が巨人でないのが驚きだ。巨人ファンから嫌われ、マンションや戸建てが売れなくなることはないのか。人気とは裏腹に醜聞が絶えず、成績もパッとしない〝読売巨人軍〟も企業広告としては賞味期限が切れ、〝巨人・大鵬・卵焼き〟は死滅し、博物館入りしたということか。
祝〟西武開幕3連勝 三重高ベスト4 住友不動産販売が全面広告に菊池雄星投手起用(2018/4/2)
「三菱地所を、見にいこう。」ナイター 女優の桜庭さんが見事な始球式(2015/9/3)
アパートメントホテル 順調スタート コスモスイニシア
コスモスイニシアのアパートメントホテルが順調なスタートを切った。高木嘉幸社長が5月16日行った2018年3月期決算説明会で「想定通りのスタート」であることを明らかにした。
高木社長は、今年2月にオープンした「MIMARU東京上野NORTH」の状況について、稼働率は初月(2月)が72%、3月が83%、4月が89%で、平均客室単価(ADR)は2.9~3.1万円、1室あたりの宿泊客は4.2名、宿泊日数は2.5~2.6日、宿泊客の国籍は台湾が4割弱、香港が十数パーセントで、その他はタイ、日本、アメリカ、オーストラリアなどで、当初想定していた通りと語った。
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この数字がどのような意味をなすのか、記者は判断する材料を持ち合わせていないし、この種のホテルはこれまでなかったので、ホテル関係者もよくわからないのではないか。ただ稼働率、ADRは一般的なホテルと比べ極めて高いような気がする。
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この日、決算説明会に集まった記者・アナリストは50人くらいか。高木社長の一連の説明が終わり、質疑応答となったが、誰も質問しなかった。
中長期計画が順調に進捗し、高木社長の説明が完璧、非の打ちどころがなかったのかもしれないが、これは失礼だと思い、記者は次のような質問をした。
この前、「田園調布」と「成城学園前」の分譲戸建てを見学させてもらったが、商品企画が素晴らしかった。他のデベロッパーをはるかに超える。1戸2億円前後の高額だったが、販売も順調と聞く。ただ、その良さを浸透させるためには何かが欠ける、大和ハウスの分譲戸建てを含めた新たなブランド構築が必要ではないか。
これに対して、高木社長は「双方とも業界のベンチマークとなるようなデザイン、商品企画に仕上げた。お陰で早期完売できた。大和ハウスと協議はしているが、統一的なブランドについては考えていない。リノベなどについては協力していく」などと語った。
同業の記者やアナリストの方へ。決算の数字は遅行指標だ。この数字とにらめっこし、あれやこれやのマクロデータをひねくり回しても、所詮は誰もが考えるようなありきたりの結論しか導き出せない。
大事なのはその会社がいま提供している商品、サービスを消費者の立場に立ってよく見ることだ。
コスモスイニシアでいえば、同社の企業理念は「Next Value For The Customer」だ。「田園調布」「成城学園前」は間違いなく顧客のニーズ・期待以上の「Value」を提供している。同社のマンションも同様だ。外に出ろ、現場を見ろ!
ついでに記者発表会での質問について。①質問して、どのような回答が返ってくるか分からない質問はするな②回答者が話したいことを引き出せ③(他のメディアを出し抜く)本当に聞きたいことはその場で聞くな(後で聞け)-これがイロハだ。自戒も込めて。「北風と太陽」の教訓を学ばないといけない。
〝家族に愛されるホテル目指す〟 コスモスイニシア「MIMARU京都 堀川六角」開業(2018/4/13)
一頭地を抜くコスモスイニシアの都市型戸建て「田園調布桜坂」「成城」(2018/4/20)
三井リアルティ 「三井のリハウス」新TVCF「夫は語る(リハウス前)」放映開始
三井不動産リアルティは5月7日(月)から不動産仲介サービスブランド「三井のリハウス」の新TVCF「夫は語る(リハウス前)」篇の放映を開始した。
TVCFは親子の〝近居〟がテーマ。近年増加している親と子などとの同居・隣居・近居のニーズ・トレンドをとらえた。
「娘」役に蓮佛美沙子さん、「 夫に先立たれた妻」役に酒井和歌子さん、「先立った夫」役に笹野高史さんを起用し、妻と娘を見守りながら自由に飛び回る笹野さんが 「全然OK!」と残された妻と娘の〝近居〟を後押しするコミカルなストーリー展開に仕上げた。
野村不HD社長・沓掛氏も副社長・宮嶋氏 郵政不動産との〝復縁〟に否定的
沓掛氏
〝嫁入り〟なのか〝婿養子〟なのかよくわからないが、日本郵政による野村不動産ホールディングスの買収劇から約1年。日本郵政は今年4月1日付で子会社・郵政不動産を立ち上げ、社長に同社代表執行役副社長・岩崎芳史氏が就任したことで完全に一件落着となった格好だ。
だが、しかし、同社は不動産事業に関してはノウハウを持たない。三井不動産出身で三井不動産リアルティ社長、会長などを務め、業界に顔の広い岩崎氏が社長に就任したのは、M&Aを睨んでのことだと思う。
〝仮にラブコールがあったら復縁するか〟と野村不HD社長・沓掛英二氏(野村不動産会長)と同副社長・宮嶋誠一氏(同社長)に4月24日に行われた記者懇親会で鎌をかけた。
沓掛氏も宮嶋氏も曲者だ。「もう壊れたこと」などと言質を与えなかった。それでも「相手から誘いがあれば、手ぐらい握るのではないか」と共同開発の可能性について聞いたら、「共同開発は従来からどことでもやっていること」とこれまたはぐらかされた。
懇親会に出席していた同社グループ関係者は「岩崎さんは三井出身。うちを好きなはずはない」と話し、また別の関係者は「なんの打診もなく、あちらから一方的に話を公表した」と不快感をにじませた。
近く岩崎氏にインタビューするので、野村不HDとの〝復縁〟があるのかどうか、ダメならどこに触手を伸ばすのか、探り出す予定だ。
好例の記者懇親会(日本橋室町野村ビル ホールで)
日本郵政の野村不HD買収〝破談〟 〝縁談話〟公表した郵政の責任は大きい(2017/6/20)
野村不動産HD沓掛社長、宮嶋副社長 不祥事についてお詫び 役員報酬自主返上
沓掛氏(左)と宮嶋氏
野村不動産ホールディングス代表取締役社長グループCEO・沓掛英二氏(野村不動産会長)と同副社長グループCOO・宮嶋誠一氏(同社長)は4月24日、労働基準監督署から企画業務型裁量労働制に関わる是正勧告・指導を受け、社員が過労死したことについてお詫びするとともに、再発防止に全力で取り組むことを明らかにした。役員報酬も一部自主返上すると語った。
同社グループの野村不動産は昨年12月25日、一部社員に適用していた企画業務型裁量労働制が、同制度に基づく「みなし労働時間」が適用されないにも関わらず、時間外労働にかかる賃金が未払いであることから本社と地方4事業部を管轄する労働基準監督署から是正勧告・指導を受けた。また、同社社員が過労自殺していたことも明らかになった。
24日は同社グループの恒例の記者懇親会だったが、冒頭、沓掛氏と宮嶋氏はそれぞれ約5分間、「責任」「深く」「お詫び」「反省」を繰り返し詫びた。
沓掛氏は、「社員の過労死が労災認定を受けたことを大変重く受け止めている。ご本人にはご冥福をお祈りし、ご遺族には心からお悔やみ申し上げます。過労死を未然に防げなかった責任は極めて重い。深くお詫び申し上げる」と語り、「その責任を示すためにも、わたしと宮嶋は月額20%、3カ月、他のホールディングスの役員は月額10%、3カ月の役員報酬を自主返上する」と述べた。
宮嶋氏は、「社員、関係者、社会に深くお詫び申し上げる。申し訳ございませんでした」と改めてお詫びし、「二度とこのようなことが起きないようトップ、役員が先頭に立って信頼回復に取り組む。今回の(不祥事)の原因となった企業風土を改め、労務管理を見直し、法令順守を徹底させ、社会の信頼回復に取り組む」と話した。
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この問題について軽々に語るべきではないと思うが、沓掛氏も宮嶋氏もそれぞれ口にした同社の「企業風土」は、記者も思い当たる節がある。マンションブランド〝プラウド〟を立ち上げる前後は、まさに同社は飛ぶ鳥を落とす勢いにあった。言葉は悪いが〝いけいけどんどん〟そのもので、高揚感に満ちていた。
マンション事業では、大京、コスモスイニシア、ダイア建設、藤和不動産などが失速し、三井不動産、住友不動産、三菱地所などの財閥系が浮上する一方で、同社は圧倒的な商品企画力でトツプブランドまで上り詰めた。
都市型戸建てもトップの三井不動産レジデンシャルに肩を並べるところまで一時は業績を伸ばした。大手に負ける商業・賃貸事業、不動産投資事業、仲介、管理なども急速に拡大した。
いま考えてみると、それは両刃の剣ということだったようだ。雨降って地固まるという言葉があるではないか。これを機に着実に一歩一歩前進する企業になってほしい。それが、亡くなられた方と遺族の方々に対する謝罪となるのではないか。
分譲一筋に30年 〝ルネ〟の総合地所 執行役員・梅津英司氏が語る
梅津氏
卓越した商品企画で話題を提供してきた〝ルネ〟ブランドの総合地所が、長谷工グループ入りして丸3年目を迎える。昨年は創業40周年の年だった。これまで供給した住宅は約65,000戸。この40年の歴史のうちバブル崩壊後の30年間を分譲一筋に歩んできた同社執行役員事業部長・梅津英司氏(52)にこれまでの仕事と今後について話を聞いた。
◇ ◆ ◇
同社がどのようなデベロッパーであるかを少し紹介する。
創業は昭和52年5月。安宅産業の住宅部門の営業を継承して設立された。同59年9月に現社名に変更。平成11年10月に永昌不動産を、同21年6月にトータルハウジングをそれぞれ合併。同27年5月、長谷工グループ入りした。
これまで分譲マンションは〝ルネ〟シリーズで約43,000戸、戸建ては約2,400戸、合わせて約65,000戸の住宅を供給している。データはないが、これほどの住宅を供給しているデベロッパーは20社あるかないかだ。
同社が業界に存在感を示したのは昭和61年竣工の「ルネ門前仲町」(467戸)「ルネ蕨」(192戸)「ルネ蒲田」(216戸)「ルネ新宿御苑プラザ」(303戸)の4物件だ。
記者はこの4物件を全て取材している。分譲開始はマンション不況から抜け出す昭和60年ころで、同社は商品企画で業界をリードした。
鮮明に覚えているのは、「蒲田」の物件で、施工トップの長谷工コーポレーション(当時、長谷川工務店)と設計に東急設計コンサルタントを起用して、卓越した商品企画に仕上げたことだ。1階住戸を専用駐車場付きとしたのは業界初ではなかったか。「新宿御苑」は基本性能・設備仕様をアップさせたコンパクトマンションの草分け的な物件で、申し込みが殺到した。
前身が商社だけあって〝いいとこ取り〟に長けていると感嘆したものだ。
梅津氏は平成2年の9月入社だ。「わたしが入社したころは、土地を見ないで買い付けしていた物件もありました」と当時の状況を梅津氏は振り返る。
ところが、まさに頂上に上ったとたんに梯子を外されるようにバブルは崩壊する。平成2年9月の首都圏マンション月間契約率は2年8か月ぶりに70%を割った。
「わたしが担当した最初の物件は綾瀬駅からバス便の、所在地は八潮市の『ルネ綾瀬』。全48戸のうち約8割に申し込みが入ったのですが、キャンセルが続出し、結局売れたのは4戸のみでした。坪単価は250万円? いえそこまでいきませんでした。ワイドスパンのいい物件だったんですが…。それから戸別チラシ配布や銀行、業者回りなどに明け暮れました」
「チラシの配布は戸別ですから、公団住宅は大変でした。エレベーターがなく、階段を上り下りしなければなりませんでしたから。頭は使わなくて済んだのですが、さすがに疲れましたね。いまは懐かしいですが…」
そこから塗炭の苦しみが始まるが、同社が破綻しなかったのは、メインバンクの住友銀行とのパイプが太かったからに違いない。
そして平成12年、「ルネアクシアム」(721戸)が業界を唖然とさせた。「半分も売れない」と読んでいた業界関係者をあざ笑うかのように、何と全戸を一挙に販売し、6,510組の来場者を集め平均4.8倍の競争倍率で即日完売した。一挙供給の即日完売戸数の多さでは昨年の「ザ・タワー横浜北仲」第1期の730戸がバブル崩壊後では最多だが、それまで17年間この記録は破られなかった。
「あれはすごかったですね。東武鉄道野田線新船橋駅から徒歩10分、当時は周辺に何もなかったですからね。普段静かな町が、土日は大渋滞になりました」
人気の要因は、坪単価110万円台という価格の安さもあったが、需要を喚起するため、タレントで画家の城戸真亜子氏や映画監督の崔洋一氏など数人の専門家のアイデアを盛り込んだ企画が見事にヒットした。
その後、〝モックン〟こと本木雅弘氏を起用して人気になった三菱地所レジデンス「Wコンフォート」などの〝タレントマンション〟が続々供給されるようになった。歴史をつくったマンションだった。
現在の商品企画の参考にもなりそうなので、もう少し具体的に物件の特性について触れておく。特徴は、①全住戸の35%が100㎡以上、90㎡以上は6割以上②スラブ厚は29センチ③崔監督は〝女人禁制・18歳未満立ち入り禁止〟の〝男のラウンジ〟を提案④外周部は幅5mの歩道と2列の桜並木を整備⑤託児施設を設置⑥100%自走式駐車場⑦販売代理はプラン別に長谷工アーベストと三井不動産リアルティ(当時、三井不動産販売-など。
当時の記事
「どうしてそんなことができたかと言えば、当社の社員は旧安宅を始めいろいろな会社からの個性派集団、寄せ集め集団で、しかも仕入れから企画-販売まで一気通貫でやってきましたので、みんなプロ意識が強く、アイデアマン揃いでした。
永昌不動産が分譲したバス便の全戸100㎡の『津田沼』もそうですし、『ルネ御殿山』も代表作です。大浴場付きは10棟くらい供給しました。1999年竣工の全488戸の『アクアフォレスタルネ稲毛』、2003年竣工の全758戸の『東京サーハウス』、2009年竣工の全191戸の『リージェントハウス大森西』なども印象に残る物件です。『稲毛』はビオトープなどを採用して環境共生に取り組んだ物件ですし、『サーハウス』は大浴場付きで共用部に高級家具のカッシーナを約8セット設置しました。『大森西』には400万円かけて本物の火を使った暖炉を採用するなどこだわりました。カネがかかってもいいものを造ろう、入居者が満足していただけること、それが何よりの広告だという文化がありました」
梅津氏の口からは次々と記憶に残るマンションの名前が飛び出した。
記者も「津田沼」や「東京サーハウス」はよく覚えている。「津田沼」は常識では考えられないプランがヒットした。「サーハウス」は今では当たり前だが、当時は最先端の「健康」をテーマにしたマンションだった。
即日完売を報じた「週刊住宅」721戸はこの月の埼玉県の全供給物件の戸数と同じとある
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戸建てについても触れておきたい。同社は約30年間にわたって全1,261戸の「白岡ニュータウン」を開発・分譲してきたが、そのノウハウを2016年分譲の「ルネテラス船橋」(34棟)に注ぎ込んでヒットした。
詳細は当時の記事を参照していただきたいが、梅津氏は戸建てについても次のように語った。
「戸建ても強化します。狙いは都心の高額ですが、(用地が)買えているのは郊外で、思いと実際は若干異なるのですが、『白岡』や『船橋』のような街をきちっとつくったものを供給していきたい」
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今後の事業展開について、梅津氏は「これまで情報を共有する、継承するという風土がやや欠けていた」と反省し、次のように締めくくった。
「いま当社グループはかなり意識が変わってきました。エンジンがかかったともいえます。商品企画に関する研究会を頻繁に行っています。今後も他社にないもの、総合地所らしいものを提供していきます。ライバル? 仲間もたくさんいますので、名前は伏せていただきたいのですが〇〇には負けませんよ」と。
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梅津氏は「RBA野球は出たり出なかったり。あれはどこと戦ったときか(三井のリハウス戦)。小雨が降る日で、うちの投手が四死球ばかり出すので球が飛んでこなかった。仕方がないのでグラウンドの四葉のクローバーを摘んでいた」と話したので、RBA野球についても触れざるを得ない。
RBA野球大会は今年で30周年を迎えるが、同社チームはこれまで23回出場しており、通算成績は29勝45敗、勝率は.392。参加当初は好投手・長島を擁し、強豪チームにも互角の成績を残していたが、年を重ねるごとに選手の高齢化が進み勝てなくなった。2011年、三菱地所ホーム相手に15-0の5回コールド勝ちを収めるが、これは実に5年ぶりの勝利だった。梅津氏は5番ファーストとして出場、3打数2安打3打点の活躍をしている。
ところがその翌年の2012年、RBA野球大会の中で〝燦然〟と輝く〝不名誉〟な大記録を2つも打ち立てた。
一つは対住友林業の試合。0-21の大敗を喫したのだが、何と制限時間1時間半の大半を守らされ、住林の打者は3~4回打席に立っているのに、同社は6人しか回ってこなかった。つまり7~9番打者は1度も打席に立つことなく敗れた。これは前代未聞の大会記録だ。
もう一つは、三井リハウス東京戦で大会記録の0-36で敗れたのだが、1イニング28打者連続出塁、28打者連続得点(プロ野球記録は14者連続)というこれまた空前絶後の大会記録を樹立した。三井の打者の打席数は49なのに対し同社は13。三井は9番打者も5回打席に立ったが、同社の5番打者以下は1打席しか巡ってこなかった。雨中の中、ずぶぬれになって守らされた。
これに懲りたのか、同社は2015年から出場しなくなった。梅津氏は「長谷工のチームに出てもいいとみんなに言っている」というが、さて…復活はあるか。
敷地延長の難点を解消したプラン光る 総合地所「ルネテラス船橋」(2016/10/1)
総合地所 建築家とコラボ シンプルで端正なデザイン、大胆提案に注目(2016/4/28)
三井不動産リアルティ 「三井のリハウス」直営体制へ完全移行
三井不動産リアルティは4月3日、不動産流通業「三井のリハウス」のフランチャイズ会社を完全子会社化することで4月1日をもって直営体制に完全移行したと発表した。移行により全国直営仲介店舗数は259 店舗から279 店舗となった。
完全移行は、顧客ニーズが高度化、複雑化、多様化しており、質の高いサービスと対応が求められる時代となったためとしている。
子会社化したのはちばリハウス、神奈川南リハウス、西愛知リハウス、西三河リハウスの4社。
〝祝〟西武開幕3連勝 三重高ベスト4 住友不動産販売が全面広告に菊池雄星投手起用
4月2日付日経新聞 住友不動産販売の広告
わが西武ライオンズが3年ぶりに開幕3連勝を飾り、これまたわが故郷・三重県の三重高校が選抜高校野球で49年ぶりのベスト4進出を決めた。記者は朝から晩まで11時間、一滴の酒も飲まずカップラーメン一杯だけで、ハラハラドキドキ、テレビにくぎ付け、野球観戦に酔いしれた。
その翌日、4月2日付日経新聞の住友不動産販売の全面カラー広告に、何と西武の菊池雄星投手がサッカーの中村俊輔選手とバスケットボールの田臥勇太選手と並んでいるではないか。
キャッチコピーは〝プロだから、頼りになる。〟菊池投手も住友販売の広告に載るような世界に通用する投手になったかと思うと感無量だ。
住友販売はヤクルトのスポンサーだったような気がするが、どうやらここ2年低迷するツバクローに嫌気がさし、〝頼りになる〟西武ファンに寝返ったようだ。
非常に結構なことだ。記者も住友販売を応援しよう。〝野球は西武 不動産は住友〟。えっ、西武プロパティーズ? 西武不動産販売が不動産流通事業から撤退して18年になる。いまでもあれは間違っていたと思う。