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 プレハブ建築協会住宅部会(加盟20社)は3月23日、メディア向け2020年度の活動状況をオンラインで報告した。

 「住生活向上推進プラン2020」の実績(9社)については、①住宅性能表示取得率は戸建て83.5%(目標85%)・共同住宅5.2%(同10%)②入居者アンケート総合満足度76.4%(同85%)③長期優良住宅認定取得率84.0%(同85%)④点検・修理等 履歴管理実施率92.0%(同100%)⑤ZEH供給率61.8%(同70%)⑥居住段階CO2排出量削減率45.9%(同70%)-などと目標を下回ったものの高い数値となった。

 CS品質委員会の「信頼されるすまいづくりアンケート」調査結果では、「とても満足」33%(前回37%)と「満足」44%(同41%)を合わせ77%(同78%)となった。

 環境分科会の環境行動計画「エコアクション2020(2011~2020年)」では、新築戸建てのZEH供給率を国の目標50%を大幅に上回る70%にしているが、7社全社が個社目標を達成すれば70%に達する見込みとしている(19年は7社のうち6社で個社目標を達成)。

 ZEHの普及に伴い強化外皮基準を満たす戸建住宅の供給率が大幅に増加、高効率給湯器はほぼ標準化したほか、燃料電池の普及は前年同程度となり、やや頭打ちで、太陽光発電システムの設置率は2年連続で増加し、過去最高に迫る水準になり、HEMSは約6割、蓄電池も2割強の住宅で導入され、次世代スマートハウスへの進化が着実に進展したとしている。

 工場生産に伴うCO2排出量は、2010年比▲8.5%(総量)となり、省エネ性能の向上に伴うCO2削減貢献量(累積)は排出量の約11倍となった。

 このほか、住宅ストック分科会では、新しい生活様式へのリフォーム各社の対応について昨年8月と12月の2回ヒアリングを行い、新型コロナを経験したことで、潜在的なニーズを顕在化させる提案型リフォームに転換できるチャンスと捉えていることが報告された。

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 へそ曲がりの記者は、以前から思っていることだが、嫌みな質問をした。CS満足度が77%に達しているのは結構なことではあるが、顧客は依頼に応えてくれると期待して発注するのだから満足度がそれなりの数値に達するのは当然だ。気になるのは回答率の低さだ。プレ協担当者は毎年50~60%と話したように、残りの顧客はどう考えているのか、むしろこの人たちから回答を引き出す工夫が必要だと思う。敢えて「不満」を引き出すようなアンケートに切り替え、その不満を解消する取り組みを行えば顧客満足度は飛躍的に増大するはずだ。

 この質問に、ブレ協は新たな質問を検討していると答えた。期待したい。

 もう一つ、「都内を中心に敷地規模が20坪以下の狭小住宅がものすごい勢いで増えている印象を受ける(住宅着工統計などでは戸建ての敷地面積については非公開)のだが、良好な住環境は担保されるのか危惧している。プレ協の会員は狭小敷地にも対応できるのか、データはあるか」の質問をした。

 担当者は、「技術的には対応は可能だが、各社ともそれを売りにするような営業は行っていない」とのことだった。

 この問題については、行政がデータを公表し、考えることができるようにすべきだと思っている。

カテゴリ: 2020年度

 小田急不動産は3月19日、小田急線相模大野駅エリアの分譲戸建て計画「相模大野プレミアムプロジェクト」第1弾「リーフィア相模大野マスタープレイス」(14戸)と第2弾「リーフィア相模大野リンクプレイス」(12戸)が2021年2月28日(日)に完売したと発表した。

 「リーフィア相模大野マスタープレイス」2020年11月14日(土)、「リーフィア相模大野リンクプレイス」は同年11月21日(土)から販売を開始。両物件ともに約3か月での完売となった。

 好調の主な要因は、①神奈川県央に位置する相模大野エリアでは約3年ぶりとなる10戸以上のまとまった区画数②ニューノーマルな暮らしに合う多彩なアイデアを盛り込んだプランニングとしている。両物件合わせ173件の来場があった。

 「リーフィア相模大野マスタープレイス」は、相模原市南区相模大野九丁目、敷地面積100.27~123.57㎡、建物面積90.05~105.16㎡、価格は5,968万~7,388万円。2×4工法2階建て14戸。施工は三菱地所ホーム。

 「リーフィア相模大野リンクプレイス」は、相模原市南区上鶴間本町二丁目、敷地面積107.57~137.69㎡、建物面積85.40~107.66㎡、価格は5,188万~6,588万円。2×4工法2階建て12戸。施工は細田工務店。

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「イニシアフォーラムたまプラーザ」

 コスモスイニシアは3月22日、分譲戸建て「イニシアフォーラムたまプラーザ」(7区画)を2021年2月20日に契約開始し、2021年3月7日に全戸完売したと発表した。

 物件は、田園都市線たまプラーザ駅から徒歩5分、横浜市青葉区美しが丘5丁目に位置する全7区画。敷地面積は126.01~145.14㎡、建物面積は101.97~106.32㎡、価格は10,980万~12,980万円。竣工は2020年12月中旬。施工は東急建設。構造は木造枠組工法2階建て。

 2021年1月上旬のモデルハウスオープンから100件を超える来場を集めた。敷地の中心を南北に延びる道路を囲むように7区画を配置。道路はインターロッキング舗装とし、建物を道路からセットバックさせ、季節ごとの花や実などを楽しめるさまざまな樹木を植栽。光や風をたっぷり取り込む最高天井高約3.6mの2階リビング「ソラリビング」を採用した。

 駅徒歩5分の立地と、美しい街区設計のつくりこみが評価されたという。

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モデルハウス

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 プレス・リリースだけではよくわからないが、おおよその見当はつく。低層マンションや戸建てなどが建ち並ぶ住宅地ではないか。

 同社の田園都市線の物件では、一昨年の2月、「青葉台」を見学している。立地も商品企画も似ているのではないか。売れるのは当然のような気がする。マンションより全然安い。よくぞそんな土地を仕入れられたものだ。

商品企画の勝利 即完の可能性も コスモスイニシア戸建て「グランフォーラム青葉台」(2019/2/15)

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「体感すまいパーク東浦和」

 ポラスグループは3月18日、埼玉県初となるグループ単独の住宅展示場「体感すまいパーク東浦和」のモデルハウスを報道陣に公開した。同社単独の〝体感型〟住宅展示場は2018年に開設した「体感すまいパーク船橋」「体感すまいパーク柏」に次ぐ3か所目で、全4棟から構成。1月3日のオープン以来2か月で550組の来場者を集め、13棟の契約を結ぶなど好調なスタートを切った。宅建免許(従たる営業所)を取得しており、分譲や仲介部門などとスピーディに連携できるのも特徴の一つ。

 公開したのは、フラッグシップブランドの「PO HOUS(ポウハウス)」、リーズナブルな価格の「北辰工務店」、2×6工法の「HaS CASA(ハスカーサ)」、鉄骨造の賃貸併用の「GRANSSET(グランセット)」の4棟。他に事務所1棟。

 ポラテック取締役木造建築事業部事業部長・橋本裕一氏は、「『船橋』『柏』と比較すると、開設1か月目の来場者数は約1.5倍増。2月末現在の注文住宅部門全体の受注状況は前年同期の17%増で、新型コロナの影響は、過去の消費増税時と比較して〝中・小規模の波〟程度に収まっている印象を受ける。単独展示場は、他社の情報に惑わされず、総合展示場のように設置期限がなく、今回は宅建免許を取得しているので、ワンストップでスピーディに分譲や仲介部門との連携も図れるメリットがある。同様の体験型は越谷エリアに出店することが決まっており、2022年には県西部にも開設する」と語った。年間成約目標は100棟。

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「PO HOUS(ポウハウス)」

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「PO HOUS(ポウハウス)」内観

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左から「HaS CASA(ハスカーサ)」「GRANSSET(グランセット)」「北辰工務店」

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 見学会には20人以上の報道陣が参加した。密を避けるため会場はテント張りの屋外で、モデルハウス見学も4組に分かれた。小生が振り分けられた4組の1番最初の見学は「PO HOUS」だった。

 「PO HOUS」はこれまで数か所は見学しているが、外壁にアルミ材ではなく本物のアカマツの縦格子が採用されているのを見て、ほとんど瞬時に〝これが一番〟と評価した。記者の見立ては間違っていないはずだ。

 玄関を入ってすぐにおしゃれな手洗い場があり、壁は塗り壁、床はカバサクラの突板、巾木は集成材、リビングのテーブルは木目が美しい杉の一枚板、通り土間から差し込む自然光を取り込んだ畳リビング、リモートワーク用の書斎、高低差を演出したスキップフロア、自然木のウッドデッキを敷いた天井付きのインナーバルコニー、檜風呂…。

 70万円からという坪単価は、新大久保や渋谷の大手ハウスメーカーの坪100万円どころか坪200万円以上もある富裕層向けの豪華なモデルハウスにはかなわないが、同社のターゲット層はアッパーミドルのはずで、少し背伸びすれば手に届く価格設定になっている。デザイン性、設備仕様などから判断してコストパフォーマンスが最高に素晴らしい。建物は木造3階建て延べ床面積約133㎡(約34坪)。

 他では、建物を右と左に鋭角的に切り離し、小さいほうの三角形のスペースを〝離れ〟とし、双方の玄関先の「通り庭」の壁面にせせらぎの音を演出した「HaS CASA」が目を引いた。好みはあるだろうが、アーチやアールを多用し、鮮やかなオレンジ、グリーン、唐草模様の壁面カラーリングなどは女性に好まれるのではないか。ベッドルームには天幕が掛かっていた。

 4番目に見学した同社野球部の通算打率4割くらいありそうな4番バッター・藤田俊介氏が担当する「北辰工務店」は坪単価45万円からで、「PO HOUS」とのすみ分けを図っている。

 「GRANSSET」は、初のモデルハウスで、賃貸住宅オーナー向けの提案になっている。

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高さ10mくらいに強剪定された東浦和の街路樹

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いま満開のハナニラ(黄色い花はカタバミ)

〝総合展示場からの脱却〟に拍手喝さい ポラスが宿泊可能な単独展示場 開設(2018/10/5)

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「セキュレア武蔵府中なごみプレイス」

 大和ハウス工業が分譲中の戸建て「セキュレア武蔵府中なごみプレイス」を見学した。いずれもバス便ではあるが、武蔵小金井駅、国分寺駅、府中駅の3駅の中間に位置する全33区画で、未分譲4区画を除く29区画のうち17区画(申し込み含む)が販売済み。好調に推移している。

 物件は、JR中央本線武蔵小金井駅からバス約12分徒歩4分(他に国分寺駅、府中駅からのバス便あり)、府中市新町2丁目の第一種低層住居専用地域(建ペイ率40%、容積率80%)に位置する全33区画。現在分譲中の住戸(6戸)の土地面積は111.31~121.15㎡、建物面積87.82~95.37㎡、価格5,670万~6,690万円。建物は軽量鉄骨造2階建て。

 現地はスバルの社宅跡地。1年半前に入札により土地を取得。昨年9月から建築条件付宅地分譲を開始、これまで8区画を契約済み。建売りは昨年11月からこれまで15棟が完成しており、うち9区画(申し込み含む)が販売済み。合計、未分譲4区画を除く29区画のうち17区画(申し込み含む)が販売済みとなるなど好調に推移している。

 街区全体の道路幅を5~6.5m確保、北側接道の敷地面の高さを南側接道敷地より10~20センチ高くし、さらに駐車スペースの位置を工夫することで日照と風通し配慮しているのが特徴。また、市と景観協定を結び、外壁、外構なども統一し、街区7か所に自然石のコーナーウォールとシンボルツリーを配するなど街づくりにも力を入れている。

 主な基本性能・設備仕様は、エネファーム、食洗器、防犯合わせガラス、樹脂サッシ(室内側)、フラットバルコニー、宅配ボックスなど。

 同社多摩支店多摩住宅営業所 立川店店長・築田浩幹氏は、「3月に入って街並みが整ってきてから動きがよくなっている。小中学校、スーパーなど利便施設が近くに揃っており、道路幅も広い住環境のよさが評価されている。北道路と南道路で約1,000万円の価格差を設け、予算に応じた価格設定にしているのも奏功している」などと語った。

 同社はまた、国分寺駅と府中駅のほぼ中間にある同じ府中市の東京農工大社宅跡地で全27区画の建売住宅「セキュレア武蔵府中ひかりテラス」を6月末から分譲する。家事シェアアイテムを装備する。こちらのほうが「なごみプレイス」より国分寺駅、府中駅へのアクセスがいいことから価格は若干高くなりそうだ。

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コーナーウォール

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約2.8帖大のテレワークスペース

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 取材する前は、いわゆるパワービルダーの建売住宅に近づけるために価格を抑制し、基本性能・設備仕様レベルも下げているのではないかと思っていたが、そんなことはなかった。価格はパワービルダーのそれより1,000万円くらい高いはずだが、ユーザーもこの価格に納得しているのではないか。外構・植栽などは一部未完成だが、しっかり造りこみも行っている。

 一つ、強調しておきたいのは、フラットバルコニーについてだ。同社は居室内とバルコニーの跨ぎ部分をフラットにしてから20年くらい経過する。同社商品企画の最大の〝売り〟の一つだと記者は思っているのだが、当たり前と思っているからか、これをパンフレットなどで全然謳っていない。どうしてだろう。マンションも戸建てもこの跨ぎにストレスを感じている人は多いはずだ。

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「セキュレア武蔵府中ひかりテラス」提供公園
 

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「Endure Wall (エンダーウォール)」

 ポラスグループのポラス暮し科学研究所は3月8日、耐震・制震の性能を併せ持つ高性能耐力壁「Endure Wall (エンダーウォール)」を開発し、すでに注文住宅への採用も決まったと発表した。同日、同研究所内の実大実験施設で、従来の耐力壁との性能の違いが分かる記者見学会を行った。

 「Endure Wall」は、複数回の地震にも耐えられる強度を持つ耐力壁と、地震の揺れを吸収する高い剛性を持つ特殊な「性能復元材」KOA制震ダンパーを組み合わせることで、コストパフォーマンスに優れ、設計やデザインの自由度も高めることを可能としたのが特徴。

 同じ耐震性能を持つ30~40坪の一般的な住宅の場合、従来では22枚の耐力壁が必要なのを、「Endure Wall」はバランスよく配置すれば4枚で済ますことを可能とした。価格は1戸当たり約40万円(坪単価1万円)。すでに4件の成約があるという。木造軸組み工法と2×4工法に対応する。

 従来型の耐力壁を用いた建物と「Endure Wall」を組み込んだ建物に阪神淡路大震災の揺れの50と70%の揺れ(中地震)を2回、熊本地震の前震と本震(大地震)の揺れを2回、合計4回それぞれ与えた実験の結果、「Endure Wall」を用いた建物の変形は小さく、構造性能を低下させないことが実証されたという。

 現在の耐力壁は熊本地震のような大きな地震が度重なって起きた場合、耐震性が弱まるとされている。

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同じ力を加えた場合の比較(左が「Endure Wall (エンダーウォール)」、右が従来の耐力壁)

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熱を込めて説明するポラス暮し科学研究所 構造グループ課長・照井清貴氏

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KOAダンパー

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土台にも工夫がある

ポラスグループが準優勝と審査員特別賞 第19回木造耐力壁ジャパンカップ(2016/9/22)

三井新宿ビル 重さ1,800t、マンション52戸分の制振装置一部完成(2014/9/2)

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「ブルックスクエア小竹向原」

 ポラスグループのポラスタウン開発が分譲中の「ブルックスクエア小竹向原」を見学した。東武東上線ときわ台駅から徒歩14分の3階建て全12戸で、1月15日から分譲を開始し、これまでに5戸を成約している。デザイン性が高く、よく工夫されたプランがいい。

 物件は、東武東上本線 中板橋駅・ときわ台駅から徒歩14分、板橋区大谷口北町の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する全12戸。現在分譲中のⅡ期(6戸のうち5戸)の土地面積は65.05~99.37㎡(一部私道負担あり)、建物面積は85.70~101.08㎡、価格は6,680万~7,380万円。構造・規模は木造3階建て2×4工法(全12戸のうち1戸は木造2階建て2×4工法)。入居予定は2021年3月中旬。

 昨年11月から物件ホームページを開設。1月16日にモデルハウスをオープン。これまで87組の来場者を集め、成約は5棟。来場者からは〝デザインは見たことない〟という声が聴かれるという。

 現地は、戸建てやマンション、小工場などが建ち並ぶエリアの一角で、敷地北側は道路を挟んで石神井川。

 建物の外観は、ブルックリンの街並みをモチーフに、レンガ調のサイディング、陰影が深いキーストーン、ホワイトモール付きのブラックサッシなどを採用。インテリアスタイルは、無機質なマテリアルに本物のブリックレンガを用いた「ヴィンテージ」スタイルと、トラディショナルな雰囲気を演出したニューヨークの地下鉄(サブウェイ)の壁を思わせるアクセント壁を用いた「モダン」スタイルの2種類。

 主な設備仕様は東京ガスの「くらし見守り差サービス」、Rinnaiのガス衣類乾燥機「乾太くん」を標準装備したほか、床暖房、食洗器、Low-Eガラスサッシなど。床材にウイルスや雑菌の除去効果がある「エアー・ウォッシュ・フローリング」(ikuta製)を採用。キッチンスタイルも、無垢材のようなメラミン素材のGRAFTEKTと本物の焼き物の質感が特徴のTOKLAS Bbの2種類。

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 最初に現地を見たときは、外構の植栽はできておらずマンションの相場などと比較して平均7,500万円はちょっと高く、7,000万円くらいではないかと値踏みしたのだが、取材を終えたときは7,500万円でも安いと思った。設備仕様レベルが高く、住戸プランもよく工夫されていたからだ。

 例えばモデルハウスになっているヴィンテージスタイルの1号棟(建物面積107㎡)。1階に夫婦それぞれの個室としても利用できる8.8帖台の主寝室と浴室、トイレ、洗面・ランドリーを配し、2階はブルックリンテイストのバールカウンターとテレワークスペース(2帖大)を設置、3階は5帖大と6帖大の個室だ。とくにテレワークスペースが秀逸だ。

 これは好みの問題でもあるが、唯一理解できなかったのは、テレワークスペースとリビングを区切る構造材をいかにもフェイクと思われるコンクリ打ちっぱなし風のアクセントクロスで覆っていたことだ。全体的に本物仕上げに見えただけに残念。現しでもよかったのではないか。設計を担当したのは同社の〝エース〟M氏だと聞いた。Mさん、こういうのを画竜点睛わ欠くというのではないですか。

 もう一つの2号棟(建物面積103㎡)がまたよくできている。南北に長い敷地を巧みに利用し、2階にサブウェイタイル、GRAFTEKTキッチンを採用し、ライブラリーコーナー-リビング-吹き抜け付き小上がりマルチコーナーとつないでいる。3階に2つの居室と3.1帖大のDENを設置し、インナータイプのテラスバルコニーもいい。設計担当は、物件を案内していただいたポラス埼玉中央事業所設計課係長・内田里絵氏。

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1号棟の主寝室

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2階テレワークスペース

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打ちっぱなしコンクリ風アクセントクロス

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バールカウンター

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2号棟のリビング

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ライブラリーコーナー

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 モデルハウスに用いられていた赤ワインはチリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンだった。値段は不明。記者のお勧めはブルックリンクラフトビール。これは間違いなくおいしい。記者が販売担当だったら、これをお客さんに振舞う。


 

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「デュオアベニュー東伏見」

 フージャースアベニューが分譲中の分譲戸建て「デュオアベニュー東伏見」を見学した。東伏見駅から徒歩4分の全21区画で、昨年6月の分譲開始からこれまでに17区画を成約。残りは未竣工とモデルハウスを合わせた4戸のみ。

 物件は、西武新宿線東伏見駅から徒歩4分、西東京市富士町五丁目に位置する全21区画。現在分譲中の住戸(3戸)の土地面積は86.70~115.11㎡、建物面積は81.56~91.60㎡、価格は5498万~6098万円。竣工予定は2021年4月下旬・9月上旬81棟は竣工済み)。建物構造・規模は木造2階建て・2×4工法。施工はイトーピアホーム。販売代理はフージャースコーポレーション。ランドスケープデザインはノマドクラフト・森山大樹氏、ファサードデザインはアレス建築設計事務所デザイナー・平田川奈氏。

 昨年6月から分譲開始されており、残りはモデルハウスを含めて4戸。好調に推移している。

 現地は、戸建て住宅が建ち並ぶ第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)の住宅街の一角。

 5~6戸で構成するオープンコートを3か所設置し、その周りに住宅を配置することで各住戸の日照・通風・駐車スペースを確保しているプランが特徴。

 主な設備仕様はLow-Eガラス、食洗器、床暖房、壁・出隅R、自転車置き場、散水栓など。

 販売担当のフージャースコーポレーション営業本部営業二部営業二課課長代理・大岩忠之氏は、「コロナが流行り出したころは、在庫が続出するのではないかと心配していたのですが、今期の売上計上進捗率はほとんど100%近く、ここも今期経常予定の13戸は引き渡し済みで、残りは4戸のみ。竣工予定の6月ころには完売できそうです。仕入れが厳しく、いまのところ次の現場は決まっていません」と話している。

 大岩氏はまた、「周辺の戸建てを見ている方には『高い』と仰る方もいれば、それらに飽き足りない方、マンションを探している方も多い」とも話した。

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モデルハウス

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階段部分にアクリルガラスの引き戸を設置したのが好評とか

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 添付した記事の通り、フージャースホールディングスの業績が絶好調だ。分譲マンションは今期引き渡し予定戸数1,205戸に対して12月末の契約進捗は1,199戸(進捗率99.5%)、分譲戸建ては引き渡し予定123戸に対して124戸(同100.8%)となっている。

 その売れ行きを確認すべく、「デュオアベニュー東伏見」の取材を申し込み、快く受けていただいた。同社に感謝する。

 「東伏見」を選んだのは、その立地条件と全21区画という規模に注目したからだ。「東伏見」は、飯田グループのタクトホームの本社所在地だし、同じ西武新宿線には田無駅のアーネストワン、花小金井駅の東栄住宅の本社がそれぞれ存在する、いわば飯田グループの本丸・牙城だ。ここに攻め入り(用地取得)したのは立派の一言だ。敷地は駐車場だったようだ。まだ用地争奪戦が始まる前に取得したのだろうか。

 同社の分譲戸建てを見学するのは久々だったが、まずまずの商品企画だ。オープンコートを3か所に設置し、敷地延長の難点を克服しているのがいい。敷地面積が地役権部分を除き100㎡以下というのは残念ではあるが、どんどん狭くなる最近の傾向を考えればやむを得ないのか。他社が用地を取得していたら敷地は20坪くらいで3階建てになっていたかもしれない。西東京市には開発行為(基本的に500㎡以上)に伴う最低敷地面積を定めた条例はあるが、戸建てに対する規制は緩く、対象となる事案は少ないはずだ。

 もう一つ。同社が2017年に分譲開始したつくばエクスプレス柏たなか駅から徒歩3分の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」253戸(坪単価150万円)が前期までに完売していることを聞いた。

 4年前に取材したとき、記者は年に50戸として完売まで5年はかかるのではと思ったので、その通りに質問した。ところが、取材している途中で「〝ひょっとしたら年間80戸、3年間くらいで売れるかも〟に変わった。それだけ友野氏の説明は説得力があった」と書いた。

 結果は後者だ。とても嬉しくなった。友野さんはいま何を担当されているのか。取材を申し込んだら受けてくれるか…。

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フージャースHD 今期分譲引き渡し予定1,632戸に対して契約進捗は95.6%(2021/1/14)

沈滞ムードを吹き飛ばすか フージャースコーポ「柏たなか」(2017/3/17)

環境難をランドスケープデザインで克服するか 「デュオアベニュー東府中」(2016/6/14)

大手の商品企画に学ぶ フージャース「デュオアベニュー八王子」(2014/9/29)

フージャースの戸建て「デュオアベニュー成城」早期完売か(2014/2/10)

〝大手と互角に戦える〟フージャースアベニュー「デュオアベニュー国立」(2013/10/15)

 

 


 

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 昨日(2月19日)は、スタイルアクトの調査による首都圏分譲戸建て市場に関する記事を書いた。住宅着工戸数を上回る戸数が新規発売され、着工戸数を1万戸以上も上回る戸数が成約したなどとする吃驚仰天の記事なのだが、その真偽のほどを確認する材料を記者は持たない。

 新型コロナの影響で時間はあるのに分譲戸建ての取材が激減し、どうなっているのかさっぱりわからない記者に、万里の長城のような〝ビッグデータ〟を持ち出されたらぐうの音も出ない。

 だが、しかし、各社が発表する決算数値などから市場動向の一端を捉えることはできる。以下、ガリバー企業の飯田グループホールディングスをはじめ供給2位グループのオープンハウス、ケイアイスター不動産、ポラス、さらにはこれら各社とは一線を画す三井不動産、野村不動産の分譲戸建ての動向について書く。スタイルアクトのレポートが事実なら記者は大恥を〝書く〟ことになるが…。

◇       ◆     ◇

 まず、分譲戸建て市場の30%を占めるガリバー企業・飯田グループホールディングスから。

 飯田グループ6社の2020年3月期の戸建事業の売上高は1兆2,159億円で、売上棟数は45,773戸だ。2020年度の分譲戸建ての着工戸数は146,154戸なので、同社のシェアは30.8%にも達する。今期も業績を伸ばしており、土地仕入れ原価、建築費の上昇を価格に転嫁できており、売上高、棟数、利益とも上昇し、課題だった在庫数も減らしている。

 同社の最大の強みは47都道府県のうち営業拠点の空白県は鳥取、島根、長崎県のみ(前期は高知、大分、宮崎に進出)という全国展開力と他社を圧倒する価格の安さだ。

 価格の安さでは、同社の1戸当たり全国平均価格は2020年3月期で2,650万円だ。エリア別は公表されていないが、首都圏でも3,000~3,500万円くらいではないかと記者は予想する。

 どれだけ安いか。仮に建物を30坪としたら飯田グループは坪117万円だ。マンションならどうか。首都圏のどんな山奥でも坪150万円以下は絶無だろうから20坪でも3,000万円、30坪だと4,500万円だ。飯田グループにかなわないことが素人でもわかる。

 しかし、一口に分譲戸建てといっても他の商品と同様ピンとキリがある。飯田グループと対極に位置するのが三井不動産(三井不動産レジデンシャル)だ。

 同社の2020年3月期の売上戸数は481戸で、1戸当たり価格は6,785万円だ。これには地方物件も含まれるはずで、首都圏に限れば7,000万円を突破するのではないか。つまり、飯田と三井の首都圏戸建て価格は1:2ほどの差がある。

 これほど差があるのに、三井不動産は売れていないわけではない。その逆だ。同社は2015年3月期、過去最多の916戸を計上したが、その時の1戸当たり価格は5,425万円だった。その後、戸数を減らしているが、1戸当たりの価格は6年間の間に1,360万円も上昇している。戸数をほぼ半減させながら、売上高は496億円から328億円へと34%減にとどまっている。ここが機を見るに敏な同社のすごいところだ。競争力の強い利益率の高い都心部に注力しているのは間違いない。

 それでも売れ行きは好調だ。2020年3月期末では58戸だった完成在庫は2020年12月末で36戸しかない。(飯田グループの2020年3月期末の完成在庫は10,104戸)

 他社はどうか。〝東京に、家を持とう〟〝オペンホウセ〟をキャッチフレーズに別表のように驚異的な伸びを見せるオープンハウスは、2021年9月期を初年度とする中期経営計画の中で「行こうぜ1兆!2023」を打ち出し、2023年9月期のグループ売上高1兆円を目標にすると発表した。

 大手デベロッパーでも売上1兆円以上は数えるほどしかないのに、1997年創業の、人間でいえばまだ20歳を少し超えたばかりの企業がそれを眼前に掲げるまでに成長したのに驚くほかない。

 記者は2012年、荒井正昭社長にインタビューしたことがある。その時、荒井社長は将来の目標について「夢は1兆円といいたいところだが、売上は2,000~3,000億円ぐらいには伸ばしたい。飯田一男さんを見習いたい。不動産会社を興した人で、いまも伸ばしているのは飯田さんとこぐらい。最近、お会いした」と話した。

 「飯田一男さん」を知らない人は多いだろうから少し書く。記事も添付したので読んでいただきたい。

 飯田一男氏は、飯田グループの核をなす一建設の創業者で、荒井社長と会ったその翌年の2013年12月に亡くなられた。その1か月前には飯田グループホールディングスが設立され、グループ会社の合計売上高は9,075億円だった。

 飯田氏には年に1、2度うかがい、「数字だけは教えるが、オレのことや会社のことについて記事にするな。写真はもちろんメモも取るな」「ただで話すのだから新聞購読料をただにしろ」という条件つきで取材し、1時間も2時間も話し込んだ。当時の本社屋は駅から遠く、プレハブ造りでエアコンなどなく、コンクリ床にストーブが1つしかなかった。

 荒井社長と飯田氏がどのような話をしたか知らないが、荒井社長はその時から売上1兆円を夢に描いたのは間違いない。荒井氏ほど時代を読む能力の高い人を記者はしらない。

 同社の2020年9月期の分譲戸建て計上戸数は2,804戸で、ポラス、アイダ設計、ケイアイスター不動産などを一挙に抜き去った。注目すべきは1戸当たり平均価格が前期比140万円減の4,160万円に抑制できたことだ。比率にすれば3.4%だがこれは大きい。

 同じように業績が急伸しているケイアイスター不動産はどうか。同社は2月9日、2021年3月期通期業績予想を上方修正。売上高1,480億円(前期比22.6%増)、経常利益116億円(同83.6%増)、当期利益70億円(同95.3%増)と全段階で過去最高を予想。期末配当も前回予想の44円から95円へ増配すると発表した。

 ものすごい数字だ。記者はこの会社が急成長したのは、ポラス出身の専務取締役・瀧口裕一氏と取締役第二分譲事業部長・浅見匡紀氏の功績が大きいと思っている。オープンハウス荒井社長にインタビューした翌年の2013年、瀧口氏にインタビューしている。瀧口氏は2008年1月、同社に請われて入社。いきなり常務取締役に就任した。浅見氏は瀧口氏より2か月後の2008年4月に入社している。お二人の記事も添付したので読んでいただきたい。

 同社には大変失礼だが、瀧口氏を最初に取材したときは、本社屋は高崎線の本庄、しかもバス便で、地元や群馬県、栃木県が営業エリアだったので、ポラス商圏では戦えず、せいぜい埼玉県の北西部から群馬県、栃木県のビルダーにとどまるのだろうと思った。とんでもない見込み違い誤算だった。

 同社は2015年に東証2部、翌年に東証1部に指定替えとなり、東京本社を設置したあたりから業績が急伸した。2016年は43店舗だったのを今期末には121店舗に拡大する。この間、ローコストの商品開発、FC展開などを矢継ぎ早に打ち出し、M&Aも進めた。現在のグループ販売棟数は4,457棟に達するというではないか。

 オープンハウス、ケイアイスターの後発の急襲を受け、売上戸数では瞬く間に抜かれたポラスはどうか。

 グループ代表の中内晃次郎氏の本心は分からないが、唯我独尊我が道を行くではないかと思う。上場する気などまったくなく、越谷にある本社から車でスピーディーに駆けつけられる埼玉県・千葉県・東京都の一部エリアのみを商圏とする方針に変わりはないはずだ。

 同社の2021年3月期業績予想は、売上高2,300億円(前期比1.9%増)、経常利益170億円(同10.4%増)、純利益47億円(同7.4%増)と過去最高を目指すが、関係者からは〝絶好調〟の声も聞かれる。業績予想を上回る可能性が高いと見た。

 デベロッパーでは、野村不動産が2018年に初めて三井不動産を上回る607戸(三井は501戸)を計上したが、その後はやや頭打ちだ。最近は準都心・郊外の大規模から三井不の独壇場だった都心部への攻勢を強めている。

 この二強に割って入るデベロッパーはないのか注目しているのだが、いまのところその気配はない。

 分譲戸建て市場は、好況と逆行するように首都圏着工戸数は2019年の63,360戸から2020年は54,340戸へと14.2%も減少しており、用地争奪戦が激化していることを裏付けている。これが質の低下につながらないことを願うほかない。

驚天動地 首都圏着工を上回る新規戸建て分譲 成約戸数!スタイルアクト調査(2021/2/19)

旧聞のみ 実態に迫れず羊頭狗肉の記事 週刊住宅1/18号〝ミニ戸建てがブーム〟(2021/1/21)

敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」 都心部は軒並み50%超 最少の練馬は1.9%(2019/8/19)

建売住宅のガリバー企業誕生 飯田グループホールディングス(2013/11/2)

オープンハウス荒井社長「いまは踊り場。成長戦略を構築する」(2012/1/19)

〝不惑超え〟エース 本業も率先垂範 好調ケイアイスター・浅見匡紀氏(41)に聞く(2020/7/7)

「人は宝」 急伸するケイアイスター不動産 瀧口専務が語る(2013/10/22)

カテゴリ: 2020年度

 小規模開発が圧倒的に多く、杳として知れないのが実態とされてきた新築分譲戸建て市場が、ひょっとしたらこのコロナ禍にもかかわらずバブル期を凌ぐ活況を呈していると受け取れるデータの出現などについて書く。

 不動産経済研究所は昨年3月、数十年間にわたって調査を続けてきた首都圏の建売住宅市場動向調査(以下、分譲戸建て市場)をやめた。調査対象を原則として10戸以上の開発規模としてきたため、市場全体の1割未満しか捕捉できないことが大きな理由だと思われる。

 同社の決断は正解だと思う。そもそも十把ひとからげのマクロデータはあてにならない。株価だってバブル崩壊後最高値を付けたからと言ってみんな上昇しているわけでも、実体経済を反映しているわけでもない。

 分譲戸建てでいえば、直近のテータによると飯田グループの1戸当たり平均価格は2,756万円で、三井不動産のそれは6,663万円だ。これを足して2で割った4,710万円が平均価格なのか、そして飯田グルーフの住戸が売れて三井不が売れ残り、あるいはその逆だったら、契約率は50%でも中身はまったく異なる。好調なのか不調なのか誰も正解を出せない。

 ところが、不動研の〝撤退〟に呼応するのか待ち構えていたのかよくわからないが、分譲戸建て市場の全体像に迫ろうとする調査がある。

 一つは、2015年4月から公表されている東京カンテイの「一戸建て住宅データ白書」だ。最新の2020年版では全国で110,938戸、首都圏で52,193戸がそれぞれ供給され、首都圏の1戸当たり平均価格は3,997万円、平均土地面積は115.7㎡、平均建物面積は98.9㎡とある。

 国土交通省の2020年の分譲戸建て着工戸数は全国で130,753戸、首都圏で54,340戸だから、同社レポートの捕捉率は驚異的だ。刮目に値する。

 レポートでは首都圏供給戸数は着工戸数より約2,100戸少ないのは、同社は調査対象を最寄駅から徒歩30分以内かバスで20分以内、さらに土地面積が50㎡以上で300㎡以下としているからだと解すれば、東京都で増加していると思われる土地面積が50㎡以下の相当数の物件がこの中に含まれていると合点がいく。

 ただ残念なのは、同社のレポートは分譲された物件のうちどれだけ売れたのか、成約価格は売り出し価格とどれほどの乖離があるのか、売主ごとの販売状況はどうなのかはわからないことだ。冒頭にも書いたように、分譲戸建てをマクロデータにまとめただけでは参考にならない。詳細な分析結果を知りたい。   

 さらに言えば、同社は各社の物件ホームページや住宅検索WEBなどから調査しているはずなので、広告する前に売れてしまった物件の調査漏れはないのか、その逆に多数あるといわれるダブロカウントはないのかも気にかかる。

 それにしても、よくぞここまで捕捉したものだ。脱帽するしかない。記者も昔、分譲戸建ての販売動向を調べていたことがあるが、捕捉率は5~6割くらいだった。

 もう時効だろうから書く。同社は1979年10月、都心部でレベルの高いマンションを分譲していた朝日建物の子会社として設立された。同時期に取材したのを覚えている。目黒駅前の小さな雑居ビルだった。規模は数人だったはずだ。

 親会社の朝日建物はマンション専業に徹していればよかったのだが、バブル期にマンション転がしに手を染めたのがいけなかった。創業社長の長田高明氏の実兄が東京相和銀行(現・東京スター銀行)の頭取だったことから湯水のように事業資金が注ぎ込まれ、同社はそれで中古マンションを買い漁った。年間数百戸を転がしていたはずだ。

 そして、バブル崩壊後の1999年に朝建は破綻した。その後、セコムが営業権を譲り受け、やはり破綻したホリウチコーポレーション(堀内建設)と合併させてセコムホームライフとしてマンション分譲を継続してきた。そのセコムホームライフは昨年10月、穴吹興産グループ入りし、社名もあなぶきホームライフに変更された。

 朝日建物のブランドはこれで完全に消えたが、東京カンテイとマンション管理の朝日管理は健在だ。社長は長田千江美氏とあるから、長田家と姻戚関係のある方だろう。現在の従業員は250名とある。すごい会社に成長したものだ。

◇      ◆     ◇

 東京カンテイのレポートに驚嘆するのだが、もっとすごいのが出現した。〝住まいサーフィン〟〝沖式儲かる確率〟で知られるスタイルアクト(旧社名:アトラクターズ・ラボ)の「首都圏新築分譲戸建の市場動向2020年のまとめ」と題するレポートだ。おおよそ次のようにある。

 ・年間売出戸数は57,331戸で住宅着工戸数とほぼ同数(売出時期は着工時期とほぼ同じ)
 ・年間販売戸数は65,104戸で、年間売出より約1,000戸上回る
 ・在庫戸数は2019年12月の32,437戸から、2020年12月の24,664戸になり、7,773戸と大幅減少した
 ・販売月数は首都圏平均で4.9か月まで下がり、売れ行き好調の目安である5か月を割り込んでいる
 ・2020年12月には24,664戸と5か月分の適正在庫に収まっており、売れ行きは順調である
 ・首都圏の平均売出価格は4,105万円、㎡単価は41.6万円で前年水準を維持した

 これを読んで、記者はわが目を疑った。年間売出戸数は東京カンテイの調査より約5,000戸も多いのはさておくとして、2019年度末で32,437戸もあった在庫(完成在庫の意味か)が2020年12月末で24,664戸へと年間で7,773戸減少し、一方で新規売出戸数が57,331戸ということは、32,437戸+57,331戸-24,664戸=65,104戸が成約することなどありうるのか。これが事実なら、かつてのバブル期など比較にならない。狂乱どころではない。驚天動地だ。

 信じられないのは他にもある。レポートは「年間売出戸数は57,331戸で住宅着工戸数とほぼ同数(売出時期は着工時期とほぼ同じ)」としているが、これはありえない。明らかに間違いだ。前述したように2020年の首都圏着工戸数は54,340戸だ。それより約2,700戸も多く分譲されるはずがない。着工=建築確認済みとは限らないだろうが、建築確認前に分譲すれば宅建業法違反になるではないか。推察するに、この約2,700戸はいわゆる売り建てか、2019年に着工した63,360戸のうちの相当分が2020年に分譲されたのではないか。これだと辻褄があう。そうであればきちんとレポートに書くべきだ。

 「販売月数は首都圏平均で4.9か月まで下がり、売れ行き好調の目安である5か月を割り込んでいる」「5か月分の適正在庫に収まっている」としているのもいま一つよくわからない。売り出しから4.9カ月で完売するのなら、着工から完成まで3~6カ月と仮定すれば、完成まで完売になる計算だ。在庫となるのは9月以降に分譲した数千戸くらいにとどまるはずだ。どうして桁違いの在庫が出るのか。そしてまた、在庫が順繰りに売れればいいが、そうでないと「新築」として売れなくなるのではないか。適正在庫が年間供給の5か月分というのも信じられない。在庫を抱えないのが分譲事業の鉄則ではなかったのか。年間分譲の5か月分の完成在庫を抱えたら社長のクビは飛ばないのか。

 これも善意に解釈すれば、在庫とは完成在庫ではなく、仕掛物件も含まれると理解すればそれなりに納得はいくのだが…。

 解せないのはまだある。「首都圏の平均売出価格は4,105万円、㎡単価は41.6万円で前年水準を維持した」とあるが、日本不動産流通機構(東日本レインズ)は2020年の新築戸建住宅の成約件数は6,334件(前年比7.9%増)で、成約価格は平均3,486万円(前年比0.7%下落)と発表した。レポートでは成約価格の値引き率は売出価格の2.2%(約90万円)としているが、この乖離はどう説明するのか。また、「㎡単価」はいったい何を指すのか。土地面積なのか建物面積なのか説明しないとわからない。

 これらの疑問点について同社にメールで問い合わせているのだが、10日以上経過しても回答が得られない。記者は9年前、同社を批判する記事を書いたが、それが影響していると思いたくないが…。疑問に答えていただきたい。

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カテゴリ: 2020年度
 

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