シンプル・イズ・ベスト 記者の一押しは「静」 積水ハウス「6 HOUSES」
「6 HOUSES」
〝百聞は一見に如かず〟-積水ハウスは8月28日、顧客の“感性”を住まいに映し出すデザイン提案システム「life knit design」を体感できるリアルサイズの6棟からなる「6 HOUSES」のメディア向け見学会を「コモンステージみどりのⅡ」(茨城県つくば市)で行った。この良さは体感しないとわからない。「コモンステージみどりのⅡ」は8月24日にオープン、10月7日までの期間限定。すべての関係者に見ていただきたい。持家も賃貸も分譲も目指すべき方向性が見えてくるはずだ。
「Life knit design」は、2023年6月に発売したもので、従来の「テイスト」によるデザイン提案から、空間における色や素材、カタチなどから受ける印象を言語化し導き出した独自の「6つの感性フィールド」(「静peaceful」「優tender」「凛spirit」「暖cozy」「艶luxe」「奏playful」)に基づき、顧客の感性に寄り添った住宅・暮らしを提案するもの。現在、感性に響くこだわりの住まいがデザインされる場として「life knit atelier」を全国84か所で展開している。顧客からは「家族間で異なる感性を、写真やコメントで共有しコミュニケーションをとりながら家づくりができる」「潜在的な感性を引き出してくれる」などの声が寄せられている。
「6 HOUSES」は、これまで培ってきた同社のノウハウを注ぎ込み、リアルサイズ(約100㎡)の「6つの感性フィールド」すべてを同じ間取りで設計し、営業担当と顧客が最適解を導き出そうという試み。
外観・外構は、同社の「5本の樹」計画に基づき、在来種を中心とした低木・中高木を配することで、四季の移ろいを感じることができるようにしているのが特徴。建物の構造は鉄骨と木造のシャーウッドが半々。
静
暖
優
凛
奏
艶
◇ ◆ ◇
「life knit design」については昨年6月の記事を読んでいただきたい。この日(8月28日)は、ほぼ同じ間取りのリアルサイズ(約100㎡)の「6つの陥穽(わがパソコンはどうしてこのような意地悪をするのか。もちろん感性)」を比較体感できるというのでワクワクしながら見学会に臨んだ。
1棟当たり見学時間は15分という制限が設けられていた。記者一人なら十分だが、同時に数人の記者が見学するのだから、こまごまとしたことは聞けず、自分が興味あるものに絞り、自分の〝見る目〟を信じて評価することにした。
最初に見たのは「静」だった。ネーミングからは嫌な予感がした。お医者さんごっこまでした幼馴染の「静子」さんが思い出されたのだ。静子さんは名前とは真逆のお転婆だったので大人になるまで好きになれなかった…。
そんな嫌な思い出を振り払い、ままよと玄関を開けた、そのとたん、「白」の世界が飛び込んできた。カラーリングはほとんど白だ。収納は天井まであり、地窓からは庭が眺められ、リビングサッシ窓の向こうからは同社の「5本の樹」計画の樹木が優しく迎え入れてくれた。
この段階で、記者は「6 HOUSES」の中でこれが一番好きだろうと確信した。〝シンプル・イズ・ベスト〟-17年も昔の「加賀レジデンス」がよみがえった。何といっても美しいのは「白」だし、さらに言えば、白はどのような感性も受け入れ、その感性を際立てる役割を果たす。白鳥は悲しいのではない。空の青にも海の青にも染まず悠然と泳ぐ姿は実に凛々しく清々しい。
ほれ込んだのはデザインだけではない。住宅の基本性能・設備仕様レベルも高い。1階リビング天井高もサッシ窓も収納扉も2700ミリ、階段はメーターモジュール、引き戸はソフトクローズ機能付き、建具・家具などは角をアール状にしたユニバーサルデザインが施されていた。床はメープル材で、フェンスも庭のデッキも本物の木が使われている。
「静」を見終わってから、「暖」「奏」「凛」「優」「艶」の順に見学した。企画意図はそれぞれ伝わってきた。
「暖」の床はウォルナットで、天井にも同じ素材の木を張るなど木の豊かさや素材感を演出している。
「奏」は字のごとく、楽しくなりそうな家具などの配置で、子育て世代にぴったりだと思った。
「凛」は「緊張感のある空気感」がテーマで、家具の面取りがシャープだったり、床材のセンはアトランダムに配されていたり、主寝室は触れればただでは済まなさそうなツインベッド(ほかはダブルベッドが多かった)。「凛」の字はとても好きだが、小生の性格にはあわない。
「優」はよくある重厚感のある建具・家具が配されており、床はオーク材。小生より誕生日が2日か3日早い同学年の〝優秀〟な住宅評論家・H氏が「これが一番」と話した。そうだろうと思った。好みには性格が反映する。
「艶」はなまめかしい艶子さんを連想したのだが、肩透かし。床材は濃い目のウォルナットで、これまた軽佻浮薄そのものの記者にはあわないと選外。結局、「静」が最後まで残った。
見学の事前も事後も気になったのは、夫婦の好みが一致するのはまれだろうから、夫婦喧嘩に発展しないかということだ。結局は腕力か金力がものをいうのだろうか。担当者に聞いたら「それがいいんです」と全然気にしていないようだった。
エントランス
静
窓からの庭
静のドア
H氏(艶の庭のデッキで)
凛の床(見づらいが床材は幅も長さもいろいろ)
◇ ◆ ◇
とてもうれしかったのは、やはり「5本の樹」計画が徹底されていたことだ。各住棟の敷地面積は54坪(180㎡)で、建築面積は20坪(66㎡)くらいだろう。敷地北側の道路を川に見立て、エントランス部分は入江=里山だ。2台駐車のガレージにはさざ波が打ち寄せる入り江をイメージしたデザインが施されており、地産地消の景石も配されている。敷地南側の庭は「山」をイメージし、起伏を設けて自然の山のように中高木をふんだんに配し、ウッドデッキで本を読んだり家族で楽しんだりできるよう演出されている。
数えたわけではないが、敷地内には20本くらいの中高木が植えられていた。昭和の時代の建売住宅の敷地面積は40~60坪が普通で、外構をしっかり造り込んだものも少なくはなかったが、20本もの中高木を植えたデベロッパーはほとんどいなかった(皆無ではなかった)。
担当者に中高木・低木の主な樹種を聞いた。アオダモ、モミジ、ヤマボウシ、シラカシ、ナナミノキ、フェイジョア、オリーブ、ユズリハ、ヤマツツジ、ハクサンボク、セイヨウシャクナゲ、ナツハゼ、クロガネモチ、イヌシデ、ヒサカキ…。これらを植栽デザインの樹本である不等辺三角形の形で植えるのだそうだ。
いま、地球温暖化防止対策として街路樹を含めた緑被率(樹冠被覆率)を高めるのが有効とされているが、この日見学した「6 HOUSES」の緑被率は50%近くあるのではないか。
優のウッドデッキ
顧客の“感性”を住まいに映し出す新デザイン「life knit design」始動 積水ハウス(2023/6/20)
これほど〝美しい〟マンション見たことない 鹿島建設「加賀レジデンス」(2007/5/18)
首都圏中古マンション 坪単価 10年間でほぼ倍増 東日本レインズ調査
別表1
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は8月8日、2024年度の首都圏の不動産流通市場動向をまとめ発表した。
中古マンション成約件数は36,595件(前年度比3.4%増)、成約坪単価は243.1万円(同7.5%増)、成約価格は4,700万円(同8.2%増)、専有面積は63.80㎡(同0.7%増)、築年数は23.83年(同0.23年増)となった。坪単価は2013年度から10年連続して上昇しており、築年数は1992年の11.19年から約10年増加している。
中古戸建ての成約件数は18,109件(同3.5%増)、成約価格は3,928万円(同1.1%増)、土地面積は137.61㎡(同1.3%減)、建物面積は102.51㎡(同0.2%減)、築年数は21.74年(同0.22年増)となった。築年数は1992年の12.65年からほぼ一貫して増加している。
別表1は、中古マンションの成約件数と成約価格の推移を見たものだ。件数は1992年の20,580件から2024年度は77.8%の増加。ただ、2019年の37,912件からここ5年間は頭打ちとなっている。坪単価は2012年の126.7万円を底に12年連続上昇、ほぼ倍増している。
別表2は、中古マンションの坪単価と専有面積の関係を見たものだ。坪単価が上昇すると専有面積は減少しており、相関関係があることがわかる。
別表2
別表3は、中古マンションの駅からの交通別成約件数の推移を見たものだ。居住性能より通勤・通学・通院などの利便性や資産性を重視する消費者の物件選好の変化、デベロッパーの〝駅近〟戦略が奏功しているのか、駅から徒歩10分以内が60%台の後半で推移している。2023年度の成約件数24,741件のうち68.9%を占め、坪単価は284.2万円、成約価格は5,315万円、専有面積は61.86㎡となっている。
別表3
別表4は、中古戸建ての駅からの交通別成約件数の推移を見たものだ。マンションとは対照的に、駅から徒歩10分以内は30%を割っており、徒歩10分以内の成約物件の価格は全体の成約価格より約1,000万円高く、土地面積は117.31㎡で、全体の134.70㎡より、約17㎡(5.3坪)狭くなっている。
別表4
別表5は、中古のマンションと戸建てを合計した中古住宅の成約件数の推移を見たものだ。着工戸数はマンションと戸建てはほとんど変わらないか、むしろ戸建てのほうが多いのに、中古市場ではマンションが圧倒的多数派を占める。2023年度では、全体の成約件数53,447件のうちマンションは35,907件(67.18%)で、戸建ては17,540件(32.82%)だ。
これほどの差が出るのは、分譲マンションはそもそも二世帯同居を想定していないことと、戸建て居住の子世代が世帯分離によりマンションを購入し、親世代は引き続き戸建てに住み続けるからだと考えられる。一方で、ファミリー向け賃貸の質は低いままで、住宅総数は6,502万戸(2023年10月1日現在)で、うち空き家は900万戸に達している-このいびつな構造をどう理解すればいいのか。
別表5
アプローチ最高 長期優良住宅認定の戸建て 大和地所レジデンス「浜田山」
「ヴェレーナガーデン浜田山」
大和地所レジデンスは8月6日、分譲中の戸建て「ヴェレーナガーデン浜田山」をメディアに公開した。約4.3haの「柏の宮公園」と神田川に近接する第一種低層住居専用地域に位置する全8戸で、長期優良住宅認定を取得、価格は1億4,000万円台~1億7,000万円台。
物件は、京王井の頭線浜田山駅から徒歩10分(1~7号棟)~11分(8号棟)、杉並区浜田山二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する在来工法2階建て全8戸。敷地面積は127.65~137.80㎡、建物面積は94.51~102.10㎡、第1期6戸の価格は14,990万~17,490万円。竣工は2024年6月~7月。施工は東栄住宅。
これまでのエントリー数は370件、7月2日からオープンしたモデルハウス来場者は45組。第1期6戸を8月4日に分譲し、2戸に申し込みが入った。来場者の約3割が杉並区居住者で、年代は30~40代のパワーカップルが中心。
全戸とも長期優良住宅認定を取得しており、太陽光発電システムを搭載し、TESハイブリッド暖給により一次消費エネルギー削減率は22%で、ZEH水準をクリア、ウルトラファインバブル熱源機を採用している。1階の天井高は2600ミリ。
リビング
◇ ◆ ◇
物件の特徴の一つは、建ぺい率40%、容積率80%1低層で、約4.3haの「柏の宮公園」に近接し、8号棟は神田川に隣接しているなど緑豊かな閑静な住宅街に位置していることだ。駅からの徒歩時間約10分の大半は公園と、「パークシティ浜田山」に沿ったケヤキの街路樹が見事な通りを利用できる。「三井の森公園」にも近い。参考までに、「パークシティ浜田山」について触れた、光井純氏のインタビュー記事を添付する。
このアプローチの良さを加味したら、価格は2億円超もあるかと思ったが、安全策を選択したようだ。
施工が東栄住宅というのにも注目したい。東栄住宅は飯田グループの中ではもっとも早くから長期優良住宅取得に取り組んできた。大和地所レジデンスが11月に分譲する「ヴェレーナガーデン横浜鴨居」(33区画)の施工も東栄住宅だ。
飯田グループでは、一建設はこれから引き渡す自社分譲戸建ての8~9割を長期優良住宅認定とし、飯田産業は大和ハウス工業の分譲戸建ての設計・施工を埼玉の物件で担当する。飯田グループの動きから目が離せない。
「HARUMI FLAG」で美しい花を咲かせたい光井純氏建築美を語る(2023/1/30)
オープンハウス 「これから家を買うなら…」新築戸建て一都三県駅圏ランキング
オープンハウスグループは8月1日、「これから家を買うなら注目しておきたい駅ランキング~共働き子育て世帯編~」を発表した。LIFULL(ライフル)の「『理想の住宅立地』に関する調査」と同社の独自データを掛け合わせ、通勤1時間以内、乗り換え1回+徒歩15分以内、家賃との差額は+3万以内などを条件に、夫婦と子ども1人の3人家族で75㎡の新築戸建てを購入するならどこがいいかをあぶりだしたもの。首都圏の東京、神奈川、埼玉、千葉のそれぞれのベスト3は、マンション価格が〝暴騰〟している〝コスパ&タイパの両立する穴場〟駅圏がランクインした。
LIFULLの最新調査で判明した重視する(妥協できない)3大条件は、①通勤距離より駅からの近さ②理想の(許容できる)通勤電車時間は30分以上1時間未満③乗り換えの許容回数は1回-であることに着目し、同社の顧客が求める条件(2021年購入契約者9,516組アンケート調査)をかけ合わせ、共働き子育て世帯の求める住まい選びの3大条件は①通勤は1時間未満、乗り換え1回以内+徒歩15分未満(駅チカ)②現在の住まいから2㎞圏内③家賃との差額は+3万以内-とし独自ランキングを作成した。各都県の上位3駅は次の通り。75㎡換算で、住宅ローンは変動金利35年(金利:0.32%)、フルローン、ボーナス払いなし。
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記者はこの種のランキングをあまり信用しない。住宅購入検討購入者のことなど全然考えていないと思えるからだ。SBIアルヒの「本当に住みやすい街大賞」がその典型だ。毎年のようにお笑いタレントを起用し、面白おかしく発表していたのに、昨年は何の説明もなしにやめてしまった。無責任そのものだ。
さて、今回の同社ランキングはどうか。他のランキングと異なるのは、実際に同社が扱っている新築戸建てとローン支払い額、家賃相場を紹介しながら、駅圏を選んでいることだ。
東京都の3駅については次のようにコメントしている。「1位は今大人気の綾瀬駅の隣駅、北綾瀬駅。駅周辺は、2025年に向けて再開発が完成し始め、高級タワマンも建築中と、ますます魅力があふれる街として人気になりそうです。始発駅なので出勤時に座れるのも大きなポイントです。2位の武蔵小金井、3位の東小金井は、乗り換えなしで東京駅に出られるという都心部への出やすさと教育施設や公園なども多く、暮らしやすさですでに人気が出ているものの、2027年完成に向けて再開発が進んでおり、今後も人気が上がり続けそうです。特に武蔵小金井は数が少ないものの、始発電車があるため通勤時に座れる可能性もあります」
須藤氏
一つ一つの駅圏について記者はコメントする立場にないが、記者発表会に登壇した同社開発事業部営業推進部長・須藤光輝氏の自分のケースを交えた説明がとても面白かった。記事化することの了解を得たので紹介する。
須藤氏は2020年、西大井駅圏の同社の分譲マンションを坪単価420万円かで購入した。「(同社本社がある東京駅1分のJPタワーまで)ドア・ツー・ドアで35分。妻も働いており、神奈川県の馬車道まで1時間」と話した。また埼玉の「穴場」として紹介した「三郷中央」について、「千葉県トップの流山おおたかの森より都心に近い。街も美しい。私の部下が住んでおり、部下は『今の(静かな)環境がいいからあまり知られたくない』と話しています」と語った。
〝いじわる爺さん〟そのものの記者はチクリと批判した。「『西大井』を選択したのは夫の須藤さんの希望を優先したということか。住むなら『馬車道』のほうが絶対いい。『三郷中央』を穴場とおっしゃったが、私は約30年、毎年RBA野球大会の取材で駅を利用しているが、飲食店など生活利便施設が貧弱」と。
-まあ、しかし、住宅選好は何を重視するかで異なってくる。住めば都だ。この種のランキングは参考にとどめ、家族のライフスタイルしっかり見定め考えてほしい。
〝めっちゃ〟10連発井上咲楽さん LIFULL HOME'S「住みたい街ランキング」発表(2024/1/31)
越年しても発表されないSBIアルヒ「本当に住みやすい街大賞」なぜか(2024/1/13)
城東エリアも坪単価400万円超へ駅1分×沿線最大住友不「シティタワー綾瀬」(2023/11/14)
幸福とは何か人口0.6%のモニタにバイアスはないか「幸福度」1位の鳩山町(2022/9/8)
頂門の一針、蜂の一刺しにならないがアルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判(2021/12/12)
三井不レジ馬車道駅直結の商業・文化施設「横浜北仲ノット」完成(2020/6/18)
全国5,000人の女性の声反映東武鉄道「ソライエ流山おおたかの森」大健闘(2018/8/9)
飯田グループHD中核企業の一建設 分譲戸建ての長期優良住宅認定を標準仕様に
鈴木氏(左)と茂庭氏
飯田グループホールディングスの中核企業である一建設は8月1日、記者説明会を開催し、長期優良住宅認定制度に対応した分譲戸建住宅の供給(引渡し)を2024年8月から全国の営業エリアで順次開始すると発表した。対象となるのは、今年度供給目標戸数10,500棟の8~9割になる模様。飯田グループ全体で同様の対応をするかどうかは未定だが、標準仕様となるのは間違いなさそうだ。
長期優良住宅認定制度は、2009年6月からスタートした「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定するもので、令和5年度末までの一戸建ての累計認定実績は約156万件。「長期優良住宅」として認定を受けるためには、8つの認定基準にクリアする必要がある。認定物件は地震保険料の割引、住宅ローン金利の優遇、不動産取得税、固定資産税などの特例措置が受けられる。
同社は、2022年4月以降の「住宅性能評価」の5分野のうち「劣化対策等級3」「耐震等級3」「断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6」など7項目で最高等級を取得しており、長期優良住宅認定を受けるための条件をクリアしている。
分譲戸建ての供給(引渡し)を行うのは、2024年4月1日以降の確認申請分で、群馬を中心とする北関東や埼玉県の物件が先行し、順次全国で開始する。対象となる住宅は、2025年3月期の供給目標10,500棟の8~9割になる模様。
記者説明会に臨んだ同社執行役員東日本第3戸建事業本部本部長・鈴木里司氏は「2025年から施行される東京都の『太陽光パネル設置義務化条例』をにらんで検討を進めてきたもので、体制が整った。一部、3階建てや土砂災害警戒区域に指定されているエリアを除き、当社が供給する物件の8~9割が対象となる。物件を仲介する会社からは『売り』になると評価していただいている。トータルで供給増につなげたい」と語った。
◇ ◆ ◇
長期優良住宅認定は間違いなく販売促進に結びつくと思う。飯田グループ全体で取り組むかどうかだが、同社経営企画部部長・江角大樹氏は「他社のことは現段階で何とも言えないが、TCFDレポートも発表しているのでグループ全体に広がるのではないか」と話した。同社グループでは東栄住宅は早くから長期優良住宅に取り組んでいる。
もう一つ、ZEHについて。飯田グループHDが2023年7に公表したTCFDレポートでは「2025年の『ZEH水準比率100%』等の検討を始めております」としているように、現段階で同社グループの分譲戸建ては「ZEH水準」をほぼ満たしていると思われる。
記者は「ZEH水準をZEHに引き上げる計画はないか」と質問した。一建設設計部次長・茂庭光広氏は「太陽光パネルを搭載して創エネに対応することは現段階では考えていない」と答えた。
◇ ◆ ◇
皆さんは、全国47都道府県でただ一つ島根県には飯田グループHDの営業拠点がないことをご存じか。江角氏が明らかにした。理由を尋ねたら「島根県は私の出身ですが、注文住宅が中心でして…」と話した。ネットで調べた。大和ハウス工業は山形県には一つも事業所がなく、滋賀県は全国唯一の「ドトールコーヒーなし県」のようだ。
全住戸に7本の中高木設備はほとんど自前製品一建設の分譲戸建て「大泉学園」(2024/7/27)
全住戸に7本の中高木 設備はほとんど自前製品 一建設の分譲戸建て「大泉学園」
「リーブルガーデンズ練馬区大泉町2丁目」(右から1、2、3号棟)
飯田グループホールディングス一建設が分譲中の戸建て「リーブルガーデンズ練馬区大泉町2丁目」を見学した。駅からバス8分徒歩9分の全5棟現場で、敷地には7本の中高木が植えられており、設備はほとんど同社グループによる自前製品だったのに驚愕した。
物件は、西武池袋線大泉学園駅バス8分、バス停徒歩9分、練馬区大泉町2丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全5棟(うち2棟は成約済み)。分譲中の3棟の土地面積は101.81~119.89㎡、建物面積は90.91~106.11㎡、価格は5,080万円・5,380万円・5,780万円。建物は一棟を除き完成済み。販売開始は5月。
現地は、練馬区景観条例による景観まちづくり地区に指定されており、道路沿いのみどりを育むみどりが映える色彩とする、緑豊かな外観となるようみどりを増やし、心地よいまちなみをつくるなどの条件を満たすため敷地内に中木のハイノキ、高木のエゴノキの合計7本が植えられているのが特徴。
基本性能・設備仕様は、住宅性能表示制度5分野7項目最高等級取得(耐震等級3、劣化対策等級3、維持管理対策等級3、一次エネルギー消費量等級6など)、Low-Eガラス、食洗機、天井高2400ミリ、オリジナルキッチン・洗面・その他設備など。
主な生活利便施設は、練馬区立大泉第一小学校へ800m、練馬区立八坂中学校へ1500m、北大泉保育園へ600mなど。
5号棟
3号棟外構
植栽
リビング(18.75帖)
キッチン
トイレ
玄関
◇ ◆ ◇
記者は、飯田グループHD創業社長の故・飯田一男氏(2013年12月死去、享年75歳)が飯田建設工業社長として采配を揮っていたころ、〝記事にしない〟のを条件に毎年1~2度、インタビューしていた。約束の時間に現れることはまずなく、1時間以上待たされることもしばしばあった。そればかりか、「本音で話してやるのだから(新聞)購読料をただにしろ」とまで言い放った。カッとなったが、情報を得るのが目的だから、ぐっとこらえて話を聞いた。飯田氏は話し出すと止まらず、1時間も2時間も話した。いつも強気で通したが、リーマン・ショック後はさすがに弱音を吐いた。倒産も覚悟したようだった。ところが、メインバンクが商工中金からみずほ銀行に移ってから不死鳥のように蘇った。ホールディングス体制に移行したときは、自宅まで押しかけコメントを得ようとしたが、玄関払いされた。
飯田氏が死去してから10年余。同社グループの分譲戸建てを見学するのも実に十数年ぶりだった。取材をセットしていただいた一建設広報担当者にまずお礼申し上げる。
物件の良否はさておく。判断するのは記者でない。消費者だ。驚いたのは、梁や柱に使われている木材(プレカット材)はファーストウッド、床材はオリエント、キッチンはファーストプラス、窓はIGウインドウズなどほとんどすべての構造躯体・設備が飯田グルーフHD自前で調達していることだった。異なるのは食洗機は三菱電機、浴槽・便器はTOTO、玄関ドアはリクシル製くらいだった。圧倒的な価格の安さでシェアを拡大してきたのは、この自前による資材・設備の調達にあるのではないか。
驚いたのは他にもあった。同社グループの最近の戸建ては〝ぺんぺん草〟も生えないものばかりだと思っていたが、この現場には〝5本の樹〟計画を上回る、中木のハイノキ、高木のエゴノキの合計7本(いずれも幼木だったが)か植えられていたことだ。同社の現場監督担当者によると、これは練馬区の景観条例による指導によるもので、同社が自主的に植えたものではないということだった。
同社は8月1日、多分、創業以来初めてとなる記者発表会を行い、長期優良住宅制度に適用させる戸建て分譲にシフトすることを発表する。
現場近くの白子川
国産材100%のZEH平屋住宅「杜和(とわ)」販売開始 菊池建設
「杜和(とわ)」
ナイスグループの菊池建設は7月19日、長期優良住宅仕様のZEH平屋住宅「杜和(とわ)」の販売を開始したと発表した。
高性能グラスウール断熱材をはじめとした断熱性の高い建材を採用し、断熱等性能等級6の取得が可能で、和瓦葺きの屋根と調和する屋根材一体通気型の太陽光発電システムを採用。主要木材の国産材使用率を100%としている。
住戸プランは、延べ床面積52.17㎡(15.75坪)から79.49㎡(24坪)まで、5タイプを用意している。
住宅と外構はセット 分譲戸建ての緑化に力を 大和ハウス 戸建住宅事業説明会
永瀬氏
大和ハウス工業は7月18日、メディア向け「戸建住宅事業 計画説明会」を行い、同社取締役常務執行役員・永瀬俊哉氏は次のように説明した。
2024年3月期の住宅事業は、売上高,510億(うち海外4,967億円)、営業利益351億円(うち海外315億円)、営業利益率3.7%に対して、2025年3月期売上高は11,120億円(うち海外6,190億円)、営業利益は580億円(うち海外470億円)、営業利益率は5.2%を見込む。請負住宅の棟数3,000棟(前期は3,424棟)を維持しつつ、分譲住宅を4,000棟(同1,760棟)に拡大し、注文住宅は高額商品の投入に加え、規格・セミオーダー住宅を強化することで、オーダー:規格・セミオーダーを30:70にする(現在は59:41)。2027年度目標は請負3,000棟、分譲住宅7,000棟の合計10,000棟とする。
改正労働基準法(建設業2024年問題)への対応では、各工程での改善施策を推進したことで従業員の残業時間を前期から約31%削減した。
ZEH率・太陽光発電搭載率は、2023年度の戸建住宅のZEH(ゼッチ)率:97%、太陽光発電搭載率:96%、分譲住宅はZEH率100% を達成した。
CS向上については、家づくりを楽しんでもらうことを目的に施工中の報告・連絡を毎日実施したことでお客さま満足度は飛躍的に向上し、今後も毎日報告を継続することで、顧客の紹介による受注増につなげていく。
分譲住宅7,000棟へ向けた体制づくりとしては、分譲設計に特化した「まちなみ設計」を各事業所に配置し、事業所毎でバラツキがある分譲物件を全体最適で効率的に対応。建設は、グループ会社の大和ランテックが担当することで、品質向上と生産性向上を図る。
注文住宅では、注文住宅のフラッグシップ商品として最新フルスペック仕様を搭載した最上位パッケージとして軽量鉄骨の「xevoΣ PREMIUM SMILE Edition」と木造の「PREMIUM GranWood SMILE Edition」を投入する。販売目標は前者が年間50棟、後者が20棟、販売価格は175万円から/坪。
国内の販売戦略として、規格商品とセミオーダー商品を「Smart Made Housing.」(スマートメイドハウジング)として新たに訴求し、分譲住宅の「Ready Made Housing.」と合わせて、住宅一次取得層へのアプローチを強化する。好調な海外事業(米国)は2026年度に10,000棟超を目指す。
カーボンニュートラルへの取り組みとしては、CO2排出量の多い鉄骨造から木造へのシフトを強化し、新たな戦略商品としてZEH・耐震等級3・構造と防水の初期保証30年にした分譲商品「Comfort Wood」の建設を推進。第1弾「セキュレア飾磨区城南町」を供給した。
リブネス事業(住宅ストック事業)を更に加速させるため、「自社物件」に限らず「他社戸建住宅」や「区分マンション」などの買取再販を拡大。1棟賃貸マンション仲介(オーナーチェンジ)も取り組む。
◇ ◆ ◇
記者はこの30年来、男女の性差がなくなる社会と同じように、住宅は分譲も賃貸も、マンションも戸建も、新築もと中古も、オーダーもレディメイドも関係なく、ライフスタイルによって自由に選択できる時代がやってくるのではないかとずっと考えてきた。各種の調査結果からもその傾向が強まっていることがうかがえる。住宅着工戸数で、持家が2021年12月以降29か月連続して前年同月比でマイナスになっているのもその一つだではないか。
この日の永瀬氏の話も時代の流れに沿ったもので、市場縮小が続く注文住宅は現状を維持し、規格・セミオーダー比率を高め、分譲戸建てを強化するというのも説得力がある。分譲を7,000棟に伸ばすというのは、地方のビルダーや不動産会社との連携は必要だろうが、圧倒的なブランド力を誇る同社が本気で取り組めば不可能な数字ではないはずだ。賃貸から注文、分譲への提案も可能だろうし、リブネス事業(住宅ストック事業)はまだまだ伸ばせる余地があると思う。
分譲を強化する意味で参考になるのは、記事にもした「セキュレア多摩聖蹟桜ヶ丘」だ。1棟現場だが、周辺の戸建て環境に負けない植栽計画が秀逸だし、リビング天井高を3.16m確保して差別化を図っているのもいい。
課題を指摘すれば、外構ではないか。説明会で記者団から「外構計画」について質問があったが、永瀬氏は「2~5棟現場ではコストがかからないよう華美にはしない」と答えた。
この「華美」はどのような意味か分からないが、昨年見学した「セキュレア西大宮V」でも、説明会で紹介された4棟現場の「セキュレア飾磨区城南町」の画像も樹木は貧弱だった。
いわゆるパワービルダーの分譲戸建てなどはぺんぺん草も生えないものばかりだが(敷地が30坪では植栽はほとんど無理だが)、住宅と外構=植栽はセットだ。しっかり緑化を図るべきだと思う。野村不動産やポラスグループは〝街をつくる〟を掲げ、小規模区画でも植栽には力を入れ、差別化を図っている。
「駐車スペースの緑化」で検索したら、同社グループ大和リースのホームページがヒットした。「景観が良くなる」「温度の上昇を抑えられる」「地域に貢献できる」などとあり、様々な提案がなされている。分譲もそうすべきではないか。同社に限ったことではないが、「5本の樹」計画の独走を許していいのか。
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【お詫び&訂正】大和ハウス分譲戸建て 発注先「飯田産業」⇒「飯田グループ」
永瀬氏
2024年7月19日付の当Web記事「大和ハウス 飯田グループ飯田産業と分譲戸建ての設計・施工契約 トップの深謀遠慮か」の記事中、「飯田産業」は誤りにつき「大和ハウス 飯田グループと分譲戸建ての設計・施工契約…」に変更します。ご迷惑をおかけした関係者にお詫びするとともに、記事を以下のとおり、訂正し再掲載します。
大和ハウス工業が飯田グループの飯田産業と設計・施工契約-大和ハウス工業は7月18日、メディア向け「戸建住宅事業 計画説明会」を行い、同社取締役常務執行役員・永瀬俊哉氏は、この8月に埼玉県で完成する分譲戸建て3戸の設計・施工を分譲戸建てのガリバー企業集団・飯田グループホールディングスの1社に発注し、同社が売主になると話した。同様の契約を分譲戸建て供給ナンバー2のオープンハウスとも結ぶ計画が進行しているとも語った。
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これには、記者は心臓が飛び出さんばかりの衝撃を受けた。同社が2021年9月に行った基準地価に関する記者レクチャー会で、同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏が、「いわゆるパワービルダーの市場占有率が高い北関東などでは苦戦が続いている」と語ったのに対し、記者は「そもそも建築単価が倍くらい違う分譲戸建て御三家とは争わないで、大手デベロッパーのように都市型に絞り、経営資源もそこに集中したほうがいいのでは」と質問したところ、本間氏は「仰る通り。当社も含め大手ハウスメーカーは互角に戦えない。人的資源を都市部に移すよう着手している」と答えていたからだ。飯田グループへの設計・施工依頼は、戦わないで手を組むとも受け取れる。
だが、しかし、よくよく考えてみると、これもありかと思う。今回の飯田グループとの契約について永瀬氏は、同社・芳井敬一社長の決断であることを明らかにした。大和ハウス工業と大東建託は今年3月、「災害における連携及び支援協定」を締結したが、これも同社・芳井社長と大東建託・竹内啓社長のトップ同士の決断だった。そういえば、先の積水ハウスの「都市の生物多様性フォーラム2024」にはデベロッパーの東急不動産ホールディングスと三菱地所レジデンスも参加していた。企業トップの深謀遠慮が見え隠れする。三井不動産レジデンシャルは浦和美園の分譲戸建てに施工したポラスをパンフレットやチラシに大書きして宣伝したのも思い出す。
記者は飯田グループ6社が経営統合した2013年以降ほとんど見学・取材はしていないが、それまではグループ内の2社は結構取材している。レベルの高い大規模開発を両社は行っていた。
また、飯田グループも新しい動きがある。「飯田グループホールディングスTCFDレポート2023」(発行日:2023年7月11日)では「2023年3月時点の基準において、当社グループで供給する約80%の住宅は、ZEH(ゼッチ)水準である『断熱等性能等級5』かつ『一次エネルギー消費量等級6』を取得しています。この性能の住宅は一般的な住宅と比べて約20%の削減効果があります」と公表した。飯田グループの中核企業である一建設は長期優良住宅認定制度に対応した分譲戸建住宅の供給を2024年8月末より全国の営業エリアで順次開始するとし、その記者説明会を8月1日に行う。
全国の分譲戸建ての着工戸数は令和4年までは増え続けてきたが、令和5年からは減る一方で、令和6年6月現在、19か月連続して前年同月を下回っている。直近4か月は二ケタ台マイナスだ。
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以下は、記事掲載から今日までの経緯。問題になった記事について、飯田グループホールディングス広報から7月25日付で「飯田産業の築地社長に確認したところ、記載されているような事実は全くないことが確認されました。よって、本記事の削除をお願い申し上げます」とのメールが届いた。記者は「永瀬氏が明言しましたので、記事に誤りはないと思います」と記事削除の依頼を断った。
しかし、その後、「飯田産業」は「東栄住宅」の誤りではないかと思い、記事を非公開にするとともに、8月中旬に大和ハウス工業広報に事実確認のお願いをしていたところ、9月4日付で同社広報から「正しくは、飯田グループホールディングスの1社に発注となります」との連絡が入った。
大和ハウスがどうして間違ったか不明だが、永瀬氏の当時のトークをアーカイブ用視聴URLから再現する。以下の通りだ。
「あの…言っていいのか…大丈夫なの…他社…デベロッパー…大丈夫かい? あの…、えっと、実はいま埼玉で、飯田産業さんに…3棟かな、3棟発注させていただいて…これは、えーっと、当社の社長の芳井と飯田産業さんのトップの方が財界活動の中で案外親しくされているみたいなんですけど、そういう話の中で、ちょっと一緒にJVの形でやってみようかということになり…我々が買った土地で分譲住宅を計画していたんですけど、ちょっと計画していただけませんかとプランを出していただいて、設計・施工でやっていただいてます。それが8月くらいに竣工して、それを売主・大和ハウス工業、設計・施工は飯田グループさんの…飯田さん…なんちゅうところでしたか…あそこは何社かありますよね…そういう形で販売しようということでやってます。
実は、ほかのエリアでも、例えばオープンハウスさんとそういうチャレンジしてみたいとやってますので、自社施工の分、グループの大和ランテックに施工してもらう分と、他社に純粋に設計・施工をお願いして、我々としてはデベロッパーだけでやっていこうという分…いろいろやり方を試しているということです」
いかがか。永瀬氏は前半の部分で2度も「飯田産業」を口にした。後半の部分で言いよどんだのが引っ掛かるが、文脈からして「飯田産業」と受け取るのが自然だ。
しかし、記者にも責任がある。永瀬氏が後半の部分で言いよどんだ理由を聞くべきだった。なぜそうしなかったか。言い訳になるが、勉強会が終わったのは午後2時半ころ。個別質問の列に加わればよかったのだが、この日は午後4時に、同社の聖蹟桜ヶ丘駅圏の分譲戸建ての取材が入っており、時間的余裕はなかった。
これで一件落着となり、恥をかいたのは小生だけなのだが、新たな疑問も浮上してくる。先述したように、永瀬氏はリアルとオンライン合わせて40人くらい参加したと思われる説明会で、「飯田産業」に設計・施工を発注すると話した。
ところが、それを伝えたのはどうやら小生だけのようだ。これが解せない。売上高5兆2,029億円(2023年度)のわが国最大のハウスメーカー・デベロッパーの同社と、全国分譲戸建て市場の約3割、年間約40,000棟を販売するガリバー企業・飯田グループが手を組むという、人が犬を咬むようなビッグニュースを伝えないメディアはリテラシーが欠落していると言わざるを得ない。例えて言えば、歌を忘れたカナリア、盗人に尻尾を振る番犬、ネズミを追わなくなった飼い猫、1週間遅れのコピペ記事を書くのに何の痛痒を感じなくなったゆでガエル記者と一緒といったら失礼か。
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「セキュレア多摩聖蹟桜ヶ丘」
大和ハウス工業が分譲中の戸建て「セキュレア多摩聖蹟桜ヶ丘」を7月18日見学した。見学する前に同社のメディア向け「戸建住宅事業 計画説明会」が行われ、同社取締役常務執行役員・永瀬俊哉氏が2027年度に分譲戸建てを7,000戸に拡大するなどと語ったのだが(2023年度は1,760戸)、この「多摩聖蹟桜ヶ丘」は永瀬氏の話を補完・補強する見本でもあり、あるいは同社の戸建て分譲のあるべき姿を示唆する物件だ。
物件は、京王電鉄京王線聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩8分、多摩市関戸二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率80%)に位置する敷地面積121.94㎡、軽量鉄骨2階建て延床面積97.13㎡、価格は8,490万円。建物は6月に完成済み。
現地は、同駅圏の閑静な戸建て住宅街の一角。三方角地に位置しており、基本性能・設備仕様は、xevoΣ(ジーヴォシグマ)仕様で、ZEH対応、1階LDK天井高2.7mからリビング部分は床面を約40cm下げたロースタイル天井高3.16m(吹き抜け5.64m)、アルミ・樹脂複合サッシ、階段ステップ15段など。多摩川へは徒歩1~2分。
企画、販売担当の同社東京西支店住宅営業所南多摩住宅営業所分譲三課・塩谷心氏は「三方角地の立地特性を考え。日差しが日常的に入るよう窓面を多くし、1階は吹き抜けを含めてリビング天井高を3m以上確保して、外構も周辺の戸建て住宅街と調和するよう植栽にも力を入れました。ターゲットは地域の富裕層です」と話した。
リビング
吹き抜け
エントランス
◇ ◆ ◇
取材が実現した種明かしから。30年以上前から取材しているRBA野球大会の試合終了後だ。昔は強かった時期もあったが、この十数年間はほとんど〝出ると負け〟(くじ運に恵まれて1勝か2勝したときもあったが)を繰り返してきた、大和ハウス工業の主力メンバーの一人、足立英彦氏(同社東京西支店住宅営業所南多摩住宅営業所分譲一課上席主任)がチラシを持って現れた。「不動産会社向けに6現場の分譲住宅見学会を7月18,19日に行う。ぜひどうぞ」と記者に声を掛けた。
渡りに船だ。見学会が行われる7月18日は、同社の「戸建住宅事業 計画説明会」を取材することになっていたので、その後の取材・見学を申し込み実現した。足立氏と、見学に同行していただいた同社広報担当者に感謝申し上げる。
結果は大成功。駅からの現地までの道すがら〝劣悪な物件だったらどうしよう〟とずっと考えていたのだが、外構の植栽を見てこの不安は吹っ飛んだ。素晴らしい。1階のLDKや洗面・浴室、この洗面・浴室と一体利用できる北側のテラスの提案もいい。わが多摩市の分譲戸建ては20年くらい見ていないが、どこの物件と比較しても負けないはずだ。
足立氏は、「この『聖蹟桜ヶ丘』は塩谷が企画に力を入れた物件。18日、19日の見学会には100人くらいの見学を予定している。地域の不動産会社の方の声を聴き、情報を収集し、今後の事業展開に生かしていきたい」と話した。
冒頭に「永瀬氏の話を補完・補強する見本でもあり、あるいは同社の戸建て分譲のあるべき姿を示唆する」と書いたが、詳細については明日書く。
左から足立氏、塩谷氏、同社東京西支店建築営業所営業課・林太陽氏(足立氏は母校の攻玉社が17日行われた高校野球東東京大会3回戦の対板橋高戦で最終回、0-6から同点に追いつき、タイブレークでサヨナラ勝ちしたと話した)